説明

難溶物を含有するカプセルとその製造方法

【課題】オクタノール/水分配係数(Log Pow)が1.0以上の難溶物を安定に易水溶化するためのカプセルとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のカプセルは、融点が25℃以上である界面活性剤、油脂および/あるいは、油成分より選ばれた1種以上の混合物に分散されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶物を含有するカプセルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新技術が開発されるとともに、年々、膨大な数の化合物の合成や多数の候補化合物の評価スクリーニングが可能となったが、また同時に、探索される新薬候補化合物の多くは、水に溶けない、あるいは、溶解度が極めて低いといった難溶性化合物が多くなり、医薬品開発を困難なものにしている。
【0003】
これらの問題は、医薬品が、生体に吸収されて利用されるという視点に欠けていることにある。例えば、医薬品を服用した場合、食物摂取と同様、消化管を移動する中で、唾液から始まり、胃液や腸液で様々な消化を受けた上で、腸管吸収されるので、水への可溶化は不可欠である。それ以上に、生体内に直接投与する注射剤や輸液、あるいは点眼剤は、澄明に溶解することが不可欠であるので、難溶物の可溶化は、大きな問題となっている。
【0004】
これらの問題は、医薬品に限ったことだけでなく、化粧品や食品などにおいても、多くの難溶物が存在することで、その利用方法も制限されていることもあり、その可溶化は、製品化の領域を大きく広げることができる。
【0005】
このような背景から、難溶物の可溶化法としてこれまで、多くの方法が開発された。例えば、天然由来合成の非イオン性界面活性剤であるグリセリン脂肪酸エステルの一つであるモノステアリン酸グリセリンの親水性を高めるために、脂肪酸石鹸もしくはEO付加型の非イオン界面活性剤を添加した自己乳化型製剤を始めとして、シクロデキストリンを用いた包接、シリカなど無機質の多孔性担体への吸着、疎水性高分子化合物や高分子ミセルによる被覆、ナノ粒子含有マイクロコンポジット粒子への吸着(特許文献1)など様々な方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらの多くは、乳化であり、あるいは、固形担体へ吸着させてからの放出であり、少なくとも溶解ではない。
【0007】
この点からいえば、シクロデキストリンは、難溶物の中でも、疎水性難溶物を包接することで水に溶解する優れた可溶化法であるが、化合物の分子形状と分子量によって包接は制限される。
【0008】
同様に、疎水性難溶物を、分散媒として油脂や油成分、あるいは、有機溶媒に予め溶解した後、水に混合することで、Oil in Water(O/W)エマルションとして乳化することができる。前者は、短期的には比較的安定であるものの、長期保管時に分離し、後者は、不安定であるだけでなく、溶媒そのものが問題となる。
【0009】
このような点から、発明者は、このように難溶物を溶解した有機溶媒と水から成るO/Wエマルションから脱溶媒し、再度、水に溶解することでSolid in Water(S/W)エマルションを得る方法を考案した(特許文献2)。S/Wエマルションは、粒子径も小さく、水への分散性に優れているが、Oil−in−Water(O/W)エマルションと同様、難溶物が外水相に恒常的に浸漬した状態であることから、加水分解を受けやすい難溶物では、安定化を図ることができないことが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2009−523843号公報
【特許文献2】国際公開第2009/057808号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水への親和性が極めて乏しい水難溶物、すなわち、本発明でいう難溶物は、そのままでは、水に分散することはできないため、乳化剤を用いて可溶化することになる。
【0012】
これまで皮膚や腸管など生体吸収性を高めるために、親水性の化合物に脂肪酸を付けた脂溶性の誘導体が多数開発されたが、これらの化合物は、生体内に吸収された後、直ちに加水分解することが特徴である。
【0013】
従って、これらの脂溶性化合物は、乳化剤を用いて水に可溶化(O/Wエマルション化)すると、常に外水相に浸漬された状態となり、加水分解を受ける。同様に、S/Wエマルションのような内相が固体であっても、外水相が内相の脂溶性化合物に浸漬するので、O/Wエマルションと同様、加水分解を受けることになり、安定化を図れない。
【0014】
このような問題は、何も加水分解だけに限ったことではなく、分散する水溶液中の添加物や他の化合物などとの相互干渉など安定化に影響する要因は多い。
【0015】
従って、このような水難溶物を安定化させ、保護を図るためには、カプセルに完全に内包することが望ましいが、カプセルは、カプセルそのものの表面は、水に親和性を有しながら、その内側では水から難溶物を保護するという相矛盾した機能を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この問題を解決する方法として、本発明者は、難溶物が、生体で利用されることに注目し、水に親和性を持ち、常温では固体でありながら、生体温に近い35℃以上になると流動化する特徴を持つカプセルを発明するに至った。
【0017】
すなわち、本発明のカプセルは、融点が25℃以上の界面活性剤(好ましくはHLB値が6.0以上の界面活性剤)、油脂類、油成分の少なくとも一種を用いて難溶物を分散、内包したカプセルである。上記カプセルは、a)融点が25℃以上の界面活性剤を加温溶解する工程、b)難溶物を有機溶媒に溶解あるいは分散する工程、c)油脂及び油性分を溶解する(好ましくは加温溶解して、融点が35℃以上のものを調製する)工程、d)上記a〜cで得られたものを混合する(好ましくは、融点35℃以上に調整する)工程、e)上記dで得られた混合物を乾燥する工程、f)水溶性高分子および/または糖類を精製水に溶解する工程、g)上記eで得られた乾燥物を、精製水、または上記fで得られた溶解液に溶解および/または分散し、カプセル分散液を得る工程、h)上記gで得られたカプセル分散液を脱水、乾燥する工程、の各工程を経て製造されるものである。
【0018】
このようにして製造された難溶物を内包する本発明のカプセルは、(ア)上記gに記載のように、精製水、あるいは、水溶性高分子および/または糖類が精製水に溶解された水溶液中に分散されたウェットな状態、あるいは、(イ)このように分散した上で、上記hに記載のように脱水したドライな状態のずれにおいても、常温(25℃)で固化することで難溶物の安定化が図られ、35℃以上で流動化する熱感受性の機能性カプセルである。
【0019】
具体的には上記課題を解決し得た本発明のカプセルは、融点が25℃以上の界面活性剤、油脂、および/または油成分より選ばれた1種以上の混合物に分散された難溶物を含有するところに要旨を有するものである。
【0020】
好ましい実施形態において、前記難溶物は、オクタノール/水での分配係数(Log Pow)が1.0以上の疎水性難溶物である。
【0021】
好ましい実施形態において、前記難溶物は、疎水性化合物、および/または、化合物と界面活性剤から成る脂溶性複合体である。
【0022】
好ましい実施形態において、前記化合物と界面活性剤から成る脂溶性複合体は、W/Oエマルション、あるいは、そのドライエマルションである。
【0023】
好ましい実施形態において、前記界面活性剤のHLB値は6.0以上の界面活性剤である。
【0024】
好ましい実施形態において、前記油脂は、パーム油、シアバター、牛脂、馬脂の天然油脂、硬化ヒマシ油の水素添加油脂、トリアシルグリセロールの合成グリセライドから選ばれた1種以上である。
【0025】
好ましい実施形態において、前記油成分は、高級脂肪酸、高級アルコール、及びワックスエステルから選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
好ましい実施形態において、前記油脂および/または前記油成分の融点は35℃以上である。
【0027】
また、上記課題を解決し得た上記カプセルの製造方法は、下記a)〜h)の工程を含むところに要旨を有するものである。
a)融点が25℃以上の界面活性剤を溶解する工程、
b)難溶物を有機溶媒に溶解あるいは分散する工程、
c)油脂及び油成分を溶解する工程、
d)前記工程a、前記工程b、または前記工程cで得られたものを混合する工程、
e)前記工程dで得られたものを乾燥する工程、
f)水溶性高分子および/または糖類を精製水に溶解する工程、
g)前記工程eで得られた試料を、前記工程fで調製した水溶液に溶解および/または分散する工程、
h)前記工程gで得られた試料を乾燥する工程。
【0028】
好ましい実施形態において、前記難溶物1質量部に対して、前記界面活性剤を5質量部以上加えるものである。
【0029】
好ましい実施形態において、前記水溶性高分子は、アルギン酸塩、ペクチン、カードラン、タマリンドシードガム、グルコマンナン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン及びジェランガムから選ばれる少なくとも1種である。
【0030】
好ましい実施形態において、前記水溶性高分子は、カプセル全体に対して0.1〜20質量%含まれる。
【0031】
好ましい実施形態において、前記糖類はトレハロース、スクロースの二糖、グリセリン、ソルビトール、マンニトールの糖アルコールから選ばれる少なくとも1種である。
【0032】
好ましい実施形態において、前記糖類は、カプセル全体に対して0.1〜20質量%含まれる。
【0033】
好ましい実施形態において、前記難溶物は、医薬品、栄養因子、添加物、化粧品、食品、及びこれらの組み合わせから選ばれるものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が1.0以上の難溶物を内包するカプセルとその製造方法に関するものであり、本発明により難溶物を安定に水溶化することができる。本発明により、これまで可溶化できずに利用範囲が制限されてきた難溶物の液剤化が図られることを始め、固形製剤など様々な剤形に応用することができる。また、副次的に薬物をマスキングするので、服用する際の苦味などを回避することができ、また、薬物相互の干渉を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1において、透析チューブに充填した難溶物を含有するカプセル分散液を精製水で透析することで、水に対する安定性を調べるための試験方法を模式的に示す図である。
【図2】実施例1において、脂溶性ビタミンC誘導体(VC−IP)含有カプセルの常温下の水中での安定性を調べたもので、可溶化法(比較例1)とカプセル化法(製剤例1)を比較した結果を示すグラフである。
【図3】実施例2において、水溶液中におけるVC−IP含有カプセルの加温による影響を調べた結果を示すグラフである。
【図4】実施例3において、CoQ10含有カプセルの精製水への分散性(カプセル粒子径の粒度分布)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の難溶物含有カプセルは、易水溶性であり、上記難溶物が、融点が25℃以上(好ましくはHLB値が6.0以上)の界面活性剤、同じく融点が25℃以上の油脂や油成分の少なくとも一種の混合物に分散されており、生体温に近い35℃以上の水溶液中で溶解し、流動化することを特徴とする。
【0037】
好ましくは、融点が35℃以上に調製した脂質および/または脂溶成分中に難溶物を分散し、その外層を界面活性剤で覆うことで親水性に変え、それを水溶性高分子のポリマーで包み込んだカプセルにすることで、易水溶化を図るとともに、加水分解から保護するだけでなく、添加された他の薬物との薬物間相互作用を防ぎ、服用時の苦味や匂いなどをマスキングすることができる。
【0038】
本発明のカプセルは、従来技術に掲げた特許文献2のものと、以下の点で相違している。まず、物としてみた場合、両者は難溶性薬物を包みこむ外層が相違している。即ち、特許文献2は、難溶性薬物の外層を脂溶性の高い界面活性剤で包み込み、ドライにした上で、その最外層に親水性に高い界面活性剤で包みこむことで、水溶化を図るが、本発明は、油脂及び油性分と界面活性剤の混合物で難溶性薬物をカプセル化した上で、水溶性多糖類で最外層を包みこむ点で大きく異なる。また製造方法を対比した場合、両者はカプセル化の点で相違している。即ち、特許文献2は、難溶物を界面活性剤で包みこんで、凍結乾燥あるいは減圧乾燥してマスクするが、本発明は、高融点の油脂を使って、温度を下げることで固化、カプセル化する点で異なる。
【0039】
本発明における難溶物とは、例えば天然物、化合物の単体、あるいは、それら1種類以上の化合物から成る複合体であってもよく、オクタノール/水での分配係数(以下、log Powと略す)が1.0以上の疎水性のものを示す。また、本発明のカプセルの製造に使用される界面活性剤、油脂及び油成分、難溶物を溶解する有機溶媒、水分散するための水溶性高分子や糖類を始め、必要に応じて添加される添加物は、医薬品、化粧品、あるいは食品などで使用されるものであれば、いずれを選んでも良い。以下、本発明に好適に用いられる例を記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
上記難溶物を溶解するための有機溶媒は、酢酸、蟻酸、エタノール、メタノールあるいはプロパノールといったプロトン性極性溶媒であっても、アセトン、アセトニトリルあるいはジメチルスルホキシド(DMSO)といった非プロトン性極性溶媒、あるいは、へキサン、トルエンあるいは酢酸エチルといった非極性溶媒のいずれを選んでも良い。
【0041】
本発明に使用される界面活性剤は、融点が25℃以上で、好ましくはHLB値(Hydrophilic Lipophilic Balance)が約6.0以上の界面活性剤であってO/Wエマルション形成作用があり、医薬品、化粧品、食品などで使用可能なものであれば自由に選択することができる。
【0042】
ここで上記界面活性剤、油脂、及び油成分の融点が25℃以上のものは、常温状態で固化安定化するものである。また、これらの混合物の融点が35℃以上とは、生体温度で溶解するものである。難溶物がタンパク質や酵素、ペプチドなどである場合、これらの変性を避けるためには、攪拌、溶解は、85℃以下で行うことが好ましい。
【0043】
本発明のカプセルは、常温(25℃)以下では固化しているが、生体に投与された際に、体温(35℃)以上で水に分散するか、あるいは、皮膚などの不感蒸泄により吸湿した際に、難溶物を溶出し流動化する熱感受性機能性カプセルである。
【0044】
本発明に使用される界面活性剤は、医薬品をはじめ、化粧品や食品など用い得るものであれば特に制限なく、例えば、非イオン性界面活性剤や陰イオン性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤や両性界面活性剤や胆汁酸塩を挙げることができる。
【0045】
本発明のカプセルに使用される界面活性剤は、以下の通りである。
アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型があり、脂肪酸石けん、ナフテン酸石けん、長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル、脂肪酸モノアルカノールアミド硫酸エステル、アルカリスルホン酸塩、α―スルホ脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどが用いられる。
【0046】
上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型、アルキルアミン塩型、ピリジン環を有する物質があり、長鎖第1級アミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリンが用いられる。
【0047】
上記両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾ―ル型、アミノ酸型及びアミンオキシド型があり、N−アルキルβ−アミノプロピオン酸塩、N−アルキルβ−イミノジプロピオン酸塩などが用いられる。
【0048】
上記非イオン性界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アリキルグリコシド型及び高級アルコール型があり、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが用いられる。
【0049】
上記の中でも、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが用いられる。
【0050】
特に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート(例えば商品名:レオドールTW−S106V,花王(株))やポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(例えば商品名:レオドールTW−S320V,花王(株))などが好適である。
【0051】
また、上記ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、特に、ポリエチレングリコールモノステアレート(例えば商品名:エマノーン3199V、花王(株))、ポリエチレングリコールジステアレート(例えば商品名:エマノーン3299V、花王(株))、エチレングリコールジステアレート(例えば商品名:エマノーン3199RV、花王(株))、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好適であり、中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(クレモフォールCO40、BASFジャパン(株))、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(クレモフォールCO60、BASFジャパン(株))などが好適である。
【0052】
更に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール共重合体である、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(商品名:エマルゲンPP−290、花王(株))などが好適である。
【0053】
また、更に、ショ糖脂肪酸エステルである、ショ糖パルミチン酸エステル類(例えば商品名:P−1615,1616、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ミリスチン酸エステル類(例えば商品名:J−1416、三菱化学フーズ(株))ショ糖ステアリン酸エステル類(例えば商品名:J−1809,1811,1811F,1815,1816、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ラウリン酸エステル類(例えば商品名:J−1216、三菱化学フーズ(株)),ショ糖オレイン酸エステル類(例えば商品名:J−1715、三菱化学フーズ(株))などが好適である。
【0054】
一方、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば商品名:エマルゲン123P,花王(株))、ポリオキシエチレンセチルエーテル(例えば商品名:エマルゲン210,花王(株))、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(例えば商品名:エマルゲン320P,花王(株))、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(例えば商品名:エマルゲン409V,420,花王(株))などが好適である。
【0055】
また、グリンセリン酸脂肪酸エステルとしては、グリセロールモノステアレート(例えば商品名:レオドールMS−165V,花王(株))などが好適である。
【0056】
本発明で使用される油脂類は、融点が25℃以上のパーム油、シアバター、マンゴバター、ココナッツ油、カカオ油などの植物油、馬油や牛脂などの動物油、あるいはそれら動植物油の水素添加油など、医薬品、化粧品、食品で使用できるものであれば、いずれを使用することもできる。
【0057】
また、本発明で使用される油成分として、融点が25℃以上のミツロウ、白蝋、カルナウバロウ、パルミチン酸セチルなどのワックスエステル、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコールや高級脂肪酸、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコールなどのアルキルグリセリルエーテルなど、医薬品、化粧品、食品で使用できるものであれば、いずれを使用することができる。
【0058】
特に、これらの油脂類や油成分の中でも、融点が60℃以上の硬化ヒマシ油、硬化綿実油、硬化ダイズ油などの水素添加植物油が好ましく用いられる。あるいは、ミツロウやカルナウバロウといったワックスエステルに、中鎖脂肪酸トリグリセリドや脂溶性界面活性剤を加えて融点を35℃以上に調製したものも好ましく用いられる。
【0059】
あるいは、これらの油脂類に、高級脂肪酸エステルトリグリセリド/ジグリセリド/モノグリセリドの混合物(Sasol Germany GmbH社;ウイテプゾールW−35、ウイテプゾールE85)、イソカカオ(商品名:花王製)、ファーマゾール(商品名:日本油脂製)等の市販品を利用しても良い。
【0060】
本発明のカプセルの製造における乾燥は、真空凍結乾燥、減圧乾燥、マイクロ波膨化乾燥、凍結粉砕乾燥、スプレードライ乾燥等の手段により行なうことができるので、自由に選択することができる。
【0061】
上記のようにして乾燥して得た常温下での固体を、分散する水溶液に使用される水溶性高分子としては、アルギン酸塩、カードラン、ペクチン、タマリンドシードガム、サイリウムシード、ファーセルラン、グルコマンナン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン及びジェランガムから選ばれる1種以上が挙げられる。また、上記水溶性高分子と同時に、あるいは別途に使用される糖類としては、トレハロースやスクロースなどの二糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖、グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール等の糖アルコールから選ばれる1種以上が挙げられる。ここで添加される水溶性高分子および糖類の量は、それぞれカプセル全体の0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0062】
本発明のカプセルを製造する場合、難溶物1質量部に対して、少なくとも界面活性剤は5質量部以上とすることが好ましい。また、難溶物を有機溶媒で溶解したものに油脂類や油成分を添加した混合物の場合、上記混合物1質量部に対して界面活性剤は、5質量部以上添加することが好ましい。
【0063】
本発明では、上記カプセル分散液を乾燥することで、ドライカプセルが得られる。また本発明では、水溶性高分子液に分散せずに、そのまま乾燥、常温固化したものを、(ア)そのまま精製水に分散し、使用することもできるし、あるいは、(イ)水溶性高分子および/または糖類を添加した水溶液をそのまま分散、使用することもできる。
【0064】
本発明の難溶物含有カプセルは、粒径が極微小のため、散剤、顆粒剤、錠剤及びカプセル剤として経口投与することができる。あるいは、水に分散した上で内服液剤や外用剤、あるいは、注射剤、輸液、経腸栄養剤、点眼剤、点鼻剤、エアロゾルなどの医薬品を始めとして、使用用途に応じて好ましい剤形を選ぶことができるだけでなく、医薬品に限ることなく、化粧品や食品など多岐に使用することができる。
【0065】
特に、本発明のカプセルに疎水性難溶性薬物を含有させれば、散剤、顆粒剤、カプセル剤、及び錠剤などの固形製剤として、溶出試験や崩壊試験で速やかに溶出することができる。同様に、疎水性難溶性薬物含有カプセルは、水に安定に分散できる液剤として、これまで製剤化が困難であった注射液や輸液などに使用できる。同様に、化粧品においては、難溶物のローションを始め水系化粧品に、また、食品においてはスポーツドリンクなどの清涼飲料水などを始めその利用は多岐にわたる。
【0066】
更に、化合物と界面活性剤から成るW/Oエマルションやそのドライエマルションといった脂溶性複合体を、カプセル化することができる。
【0067】
また更に、難溶物を易水溶化することにより、ポリ乳酸ポリマーなど生分解性高分子ポリマーを使った、難溶性薬物の徐放性製剤の製造など使用目的に応じて、様々な利用が可能であり、本発明のカプセルの使用目的は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
【0068】
本発明における、オクタノール/水の分配係数(Log Pow)が1.0以上の難溶物として、ここに示す例に限定されるものではないが、例えば、動植物由来のテルペノイド、アルカノイド、フラボノイド、ポリフェノール、ステロイド、マクロライド、芳香族化合物、補酵素類、あるいは、医薬品として、アシクロビルなどの抗ウイルス薬、デキサメサゾン、ブレドニゾロンなどのステロイド系、あるいはインドメタシンやジクロフェナクナトリウムなどの非ステロイド薬抗炎症薬、ニフェジピンなどの抗高血圧薬、パクリタキセル、アドレアマイシン、ドセタキセル、タキソール、それらの誘導体などの抗ガン薬、アイロタイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質、アンフォテリシンB、イトラコナゾールなどの抗真菌薬、エストラジオール、テストステロン、その誘導体などのホルモン、シロスタゾールなどのプロスタグランジン系、プロスタサイクリン系の薬物などが挙げられる。
【0069】
本発明に用いられる薬物は、ここに挙げられたものに特に制限されることもなく包含され、例えば、消化管傷害を発症するNSAIDs薬、薬物代謝速度の速い頻尿の治療薬、服用が困難な制吐剤、偏頭痛薬、抗痴呆症薬、パーキンソン病治療薬、高血圧薬、高脂血症治療薬、喘息薬、アトピー治療薬、乾癬治療薬、抗リューマチ薬、白斑病治療薬、切迫性流産阻止薬など服用の困難な幼児から老人に至るまで、あらゆる難溶性の薬剤が挙げられる。
【0070】
更に、難溶性化合物・界面活性剤複合体を始め、親水性化合物・界面活性剤複合体や、更に、これらに油脂類や油性分を添加した難溶性/親水性化合物・油脂・界面活性剤複合体なども、分配係数(Log Pow)が1.0以上であれば、難溶物ということができる。
【0071】
本発明のカプセルを製造する方法は、以下の工程を含む。
a)融点が25℃以上の界面活性剤を加温溶解する工程、
b)難溶物を有機溶媒に溶解または分散する工程、
c)油脂類および/または油成分(好ましくはこれらの融点が25℃以上)を溶解する工程、
d)上記工程aで得られたものと上記工程bで得られたものを混合する工程;あるいは、上記工程aで得られたものと上記工程cで得られたものを混合した上で、更に上記工程bで得られたものと混合する工程、
e)上記工程dで得られた混合物を乾燥する工程、
f)水溶性高分子および/または糖類を精製水に溶解する工程、
g)上記工程eで得られた乾燥物を、精製水、あるいは、上記工程fで得られた溶解液に溶解する工程、
h)得られたカプセル分散液を乾燥する工程。
以下各工程について、更に詳しく説明する。
【0072】
上記工程a(界面活性剤の溶解)について
上記工程aでは、融点が25℃以上で、HLB値が6.0以上の界面活性剤を、乳化機で85℃まで昇温、攪拌した後、40〜60℃まで減温させ、界面活性剤溶液を調製する。ここで用いられる界面活性剤は前にも述べたが、例えば、以下に記載したアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性の界面活性剤が挙げられる。
【0073】
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石けん、ナフテン酸石けん、長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル、脂肪酸モノアルカノールアミド硫酸エステル、アルカリスルホン酸塩、α―スルホ脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどが用いられる。
【0074】
上記カチオン性界面活性剤としては、長鎖第1級アミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリンが用いられる。
【0075】
上記両性界面活性剤としては、N−アルキル β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル β−イミノジプロピオン酸塩などが用いられる。
【0076】
上記非イオン性界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アリキルグリコシド型及び高級アルコール型があり、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが用いられる。
【0077】
上記の中でも、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。
【0078】
特に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート(例えば商品名:レオドールTW−S106V,花王(株))やポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(例えば商品名:レオドールTW−S320V,花王(株))などが好適である。
【0079】
また、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、特に、ポリエチレングリコールモノステアレート(例えば商品名:エマノーン3199V、花王(株))、ポリエチレングリコールジステアレート(例えば商品名:エマノーン3299V、花王(株))、エチレングリコールジステアレート(例えば商品名:エマノーン3199RV、花王(株))、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好適であり、中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(クレモフォールCO40、BASFジャパン(株))、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(クレモフォールCO60、BASFジャパン(株))などが好適である。
【0080】
更に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール共重合体である、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(商品名:エマルゲンPP−290、花王(株))などが好適である。
【0081】
また、更に、ショ糖脂肪酸エステルである、ショ糖パルミチン酸エステル類(例えば商品名:P−1615,1616、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ミリスチン酸エステル類(例えば商品名:J−1416、三菱化学フーズ(株))ショ糖ステアリン酸エステル類(例えば商品名:J−1809,1811,1811F,1815,1816、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ラウリン酸エステル類(例えば商品名:J−1216、三菱化学フーズ(株)),ショ糖オレイン酸エステル類(例えば商品名:J−1715、三菱化学フーズ(株))などが好適である。
【0082】
一方、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば商品名:エマルゲン123P,花王(株))、ポリオキシエチレンセチルエーテル(例えば商品名:エマルゲン210,花王(株))、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(例えば商品名:エマルゲン320P, 花王(株))、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(例えば商品名:エマルゲン409V,420,花王(株))などが好適である。
【0083】
また、グリンセリン酸脂肪酸エステルとしては、グリセロールモノステアレート(例えば商品名:レオドールMS−165V,花王(株))などが好適である。
【0084】
これらの界面活性剤は、いずれか1種であっても、また、2種以上から選ばれて使用することができる。
【0085】
上記工程b(難溶物の有機溶媒への溶解及び/又は分散)について
本難溶物を溶解するための有機溶媒は、低沸点のものでは、界面活性剤と混和した際に、突沸を起こすので、沸点が少なくとも60℃以上のエタノールやプロパノールのプロトン性極性溶媒、アセトニトリルあるいはジメチルスルホキシド(DMSO)といった非プロトン性極性溶媒、あるいは、へキサンやトルエンといった非極性溶媒のいずれを選び、水/オクタンでの分配係数(log Pow)が1.0以上の、難溶物を溶解する。具体的には、50℃まで昇温しながら緩やかに攪拌、溶解した後、40℃まで減温することで、難溶物溶解液を得る。
【0086】
上記工程c(油脂類及び油成分の溶解)について
融点が25℃以上の油脂類および/または油成分を、85℃まで昇温溶解した後、40℃まで減温し、溶解液を得る。あるいは、油脂類として、融点が60℃以上の硬化ヒマシ油、硬化綿実油、硬化ダイズ油などの水素添加植物油、あるいは、ミツロウやカルナウバロウといったワックスエステルを85℃まで昇温、攪拌し、完全に溶解した後、これらの油脂類及び/あるいは油成分100質量%に対して、中鎖脂肪酸トリグリセリド、および/または、脂溶性界面活性剤を0.1〜20質量%加えて、澄明性を確認しながら40〜60℃まで減温し、溶解液を得ることもできる。あるいは、高級脂肪酸エステルトリグリセリド/ジグリセリド/モノグリセリドの混合物(Sasol Germany GmbH社;ウイテプゾールW−35、ウイテプゾールE85)を85℃まで昇温、溶解し、これら100質量%に対して、1〜30質量%のミツロウを添加、溶解した後、40〜60℃まで減温し、油脂溶解液を得る。なお、硬化油やミツロウなどのハードファットを用いた混合油脂の融点を調製するための油性基剤として、医薬品や化粧品、食品に用いことができる低融点の油成分を用いることができ、例えば、植物油、動物油、中性脂質(モノ置換、ジ置換、又はトリ置換のグリセライド)、合成油脂、ステロール誘導体を挙げることができる。
【0087】
本発明に用いられる油成分は、植物油、鉱物油、ワセリン、パラフィン類、中鎖飽和脂肪酸などの飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸からなる油脂、ワックス類、ラノリン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、グリセリン、エタノールなどからのいずれか一種、あるいは、2種以上から選ぶことができる。
【0088】
上記植物油として、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、オリーブスクワラン、ホホバ油、シソ油、クランべアビニシカ油等を、動物油として牛脂、豚油、魚油等を、中性脂質として、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリステアリン、トリミリスチン、トリアラキドニン、スクワランやスクワレン等を、合成脂質としてアゾン等を、ステロール誘導体としてコレステリルオレエート、コレステリルリノレート、コレステリルミリステート、コレステリルパルミデート、コレスレリルアラキデート等を挙げることができ、いずれか1種、あるいは2種以上を選択することができる。
【0089】
ハードファットを使った混合油の融点調製に好ましい油成分としては、中鎖脂肪酸トリグリセライドやこれを主成分とする植物油を挙げることができる。
【0090】
当該油成分の含有量は、油成分の融点や構成成分によって大きく異なるが、例えば、カプセル100質量%に対し、1〜40質量%の範囲内が好ましく、更に言えば、1〜30質量%の範囲内が好ましい。
【0091】
上記工程dについて
上記工程dでは、上記工程aによって得られた界面活性剤溶解液に対して、上記工程bによって得られた難溶物溶液、および/または、上記工程cによって得られた油脂・油性分の混合液から成る混合物を、加温、溶解する。好ましくは、界面活性剤5〜100質量%に対して、難溶物を約1質量%混合する。あるいは、難溶物1〜20質量%に対して、油脂を約100質量%の割合で混和、溶解した混合物を1質量%加えて混合する。
【0092】
上記工程eまたはhの乾燥工程について
上記工程eまたはhでの、脱溶媒および/または脱水などの乾燥工程は、公知の方法で行えばよく、例えば、真空凍結乾燥や減圧乾燥、窒素パージなどで行われるが、これらの方法に限定されるものではなく、目的に応じて最適な乾燥方法を選べばよい。このようにして得られた乾燥物は、融点が35℃以上である。
【0093】
上記工程f(水溶性高分子および/または糖類添加水溶液の調製)について
上記工程fでは、精製水に水溶性高分子を溶解するか、あるいは、更に、糖類を添加する。
本発明に用いられる水溶性高分子は前にも述べたが、例えば、アルギン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースキ、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、ペクチン、ジェランガム、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などが挙げられる。
【0094】
好ましくは、キサンタンガム(Kelco Biopolymers社;KELTOROL F)、やローカストビーンガム(CP Kelco ApS社、GENUガム)、プルラン(林原商事(株)、プルラン)であり、これらは、いずれか1種以上で使用することができる。
【0095】
一方、本発明に用いられる糖類として、グルコースやガラクトースなどの単糖類、ラクトースやショ糖及びトレハロースなどのオリゴ糖類、エリトリトール、グリセリン、マルチトール、マンニトールやソルビトール及びキシリトールなどの糖アルコール類等を挙げることができる。
【0096】
好ましくは、トレハロース(林原商事(株)、トレハ)やスクロースであり、いずれか1種か、あるいはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
カプセル全体を100質量%とすると、水溶性高分子、及び/あるいは、糖類を加えた複合物として、0.1〜20質量%添加するが、好ましくは、1〜10質量%の添加である。
【0098】
上記工程h(工程eによって得られた乾燥物を、精製水、または工程fによって得られた溶解液に溶解する工程)について
前述したいずれかの乾燥方法で、脱溶媒した後、常温固化した乾燥物(工程eによって得られた乾燥物)を、例えば約40℃以上に加温したまま、同じく加温された精製水にそのまま加えて分散するか、あるいは、上記工程fによって得られた溶解液にそのまま加えて分散する。
【0099】
これらの水溶液の調製は、必要に応じて塩類を加えることができる。
上記塩類として、例えば、塩酸や硫酸などの無機の酸及びその各種塩類、苛性ソーダや水酸化カリウム及び水酸化カルシウムなどの無機の塩基及びその各種塩類、コハク酸やクエン酸、ステアリン酸などの有機酸及びその各種塩類、アミノ酸や有機塩基及びその塩類などが等を挙げることができる。これらは、2種類以上を併用してもよい。
【0100】
本発明における混合、攪拌は、薄膜旋回型高速撹拌機、ハイドロマックスミキサー、インペラー攪拌機、アジホモミキサーなどから自由に選択すればよい。また、この混合、攪拌工程を、超高圧乳化装置であるナノマイザーマシンで行うか、あるいは、このような機械的撹拌に代わって、液相レーザーアブレーション装置や超音波を使った乳化装置で行ってもよく、要するに微小な乳化を図ることができればよく、その他の製造機器の利用を何ら制限するものではない。
【0101】
以下にその製造例と実施例を示すが、それによって本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0102】
(製造例1)
〔難溶物溶解液の調製〕
テトラへキシルデカン酸アスコルビル(以下、VC−IPと略す)50gを、200gのヘキサンに溶解した後、予め60℃で加温溶解した硬化ヒマシ油1gとホスコH−15(丸石製薬)9gを加えてよく混和、溶解した。これを、85℃で加温溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(NIKKOL製のHCO−60)500g溶液に加えて攪拌した後、エバポレーターを使った減圧乾燥により脱溶媒した。
【0103】
〔高分子水溶液の調製〕
1000gの精製水にキサンタンガム2.5g、プルラン5gを分散、溶解し、高分子水溶液を得た。
【0104】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記難溶物溶解液200gを、室温中、400gの高分子水溶液に加えて攪拌した後、真空凍結乾燥することで、カプセルを得た。
【0105】
(比較製造例1)
〔VC−IP(S/W)の調製〕
テトラへキシルデカン酸アスコルビル(以下、VC−IPと略す)50gを、200gのヘキサンに溶解した後、これを、あらため85℃で加温溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)45質量%の水溶液1000gに加えて攪拌した後、真空凍結乾燥により脱水及び脱溶媒し、VC−IP(S/W)を得た。
【0106】
(実施例1)
(外水相に対するVC−IP含有カプセルの室温での安定性)
製造例1で得られたVC−IP含有カプセルの分散液、および比較製造例1で得られたS/W化したVC−IPの各サンプルついて、常温(25℃)下での水に対する安定性を、図1に示すようにして行った。まず、上記のサンプルを、一方の片端をクローサーで封じたセルロース系透析チューブ(ポアサイズ:<MW.3,500)に充填した。
【0107】
その後、透析チューブの、他方の開放された片端をクローサーで閉じて、もれないことを確認した上で、精製水(以下、外水相という)を入れたビーカーに入れた。この透析チューブを入れたビーカーを、加温式のマグネティックスターラーの上に静置して回転子を回転させることで水に暴露し、上記サンプルの安定性を経時的に調べた。安定性の評価は、上記サンプルを、透析チューブを通して、外水相に経時的に暴露することで、透析チューブ内のVC含量を2,4−ジニトロフェニルヒドラジン法で定量することによって行なった。試験開始時の各サンプル中のVC含量を100%として、透析後の各サンプル中のVC含量(%)を測定した結果を図2に示す。
【0108】
図2に示すように、比較製造例1のS/W化したVC−IPでは、常温下(25℃)で外水相に暴露することでVC含量が減少したが、製造例1のVC−IP含有カプセルでは、VC含量の低下は見られず安定であった。
【0109】
(実施例2)
(VC−IP含有カプセルの温度依存性の溶出)
実施例1と同様にして、製造例1で製造したVC−IP含有カプセルを透析チューブに入れて精製水(外水相)で透析しつつ、外水相を徐々に室温から50℃まで加温しながら、外水相に溶出したVC含量を定量した。これらの結果を図3に示す。図3に示すように、外水相のVC量は、外水相の温度(外水温)が約35℃を超えると低下したが、約35℃下では、VC含量の低下は見られず安定であった。
【0110】
(製造例2)
〔難溶物溶解液の調製〕
コエンザイムQ10(以下、CoQ10と略す)50gを、200gのヘキサンに溶解した後、60℃で加温溶解したパルミチン酸セチル(7g)とホスコH−15(3g)を加えてよく混和、溶解した。これを、85℃で加温溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)440g溶液に加えて攪拌した後、減圧乾燥により脱溶媒した。
【0111】
〔高分子水溶液の調製〕
1000gの精製水にキサンタンガム2g、ローカストビーンガム0.5g、プルラン5gを分散、溶解し、高分子水溶液を得た。
【0112】
〔難溶物含有カプセの調製〕
上記難溶物溶解液200gを、室温下で900g高分子溶液に加えて攪拌後、真空凍結乾燥することで、CoQ10含有カプセルを得た。
【0113】
(比較製造例2)
〔VC−IP(S/W)の調製〕
50gのCoQ10を、200gのヘキサンに溶解した後、これを、ポリオキシエチレ硬化ヒマシ油(HCO−60)が45質量%の水溶液1000gに加えて攪拌した後、真空凍結乾燥により乾燥して、CoQ10(S/W)を得た。
【0114】
(実施例3)
(外水相への分散時の粒子径)
製造例2のCoQ10含有カプセルを製造する際に、製造工程(f)の水溶性高分子水溶液中に分散した際の粒子径と、製造工程(g)の乾燥後、水に再溶解した後に、ゼータサイザーナノZS−90(Malvern社製)を用いて動的光散乱法で粒子径を計測した。図4中、上段は、製造工程(f)の水溶性高分子水溶液中に分散した際の粒子径の粒度分布を、また下段は、製造工程(g)の乾燥後、水に再溶解した後の粒度分布を示すが、いずれにおいても、粒度分布は、ほぼ同じであった。
【0115】
(製造例3)
〔難溶物溶解液の調製〕
キニーネ1gを、50gのエタノールに溶解し、そこに150gのヘキサンを加えた後、加温溶解したパルミチン酸セチル(6g)とホスコH−15(3g)を加えてよく混和、溶解した。これを、85℃で加温溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)90g溶液に加えて攪拌した後、減圧乾燥により脱溶媒した。
【0116】
〔高分子水溶液の調製〕
180gの精製水にキサンタンガム5g、ローカストビーンガム2.5g、プルラン12.5gを分散、溶解し、高分子水溶液を得た。
【0117】
上記難溶物20gを、室温下で200g高分子溶液に加えて攪拌後、真空凍結乾燥することで、キニーネ含有カプセルを得た。
【0118】
(比較製造例3)
〔難溶物溶解液の調製〕
1gのCoQ10に150gのヘキサンを加えた後、加温溶解したパルミチン酸セチル(6g)とホスコH−15(3g)を加えてよく混和、溶解した。これを、85℃で加温溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)90g溶液に加えて攪拌した後、減圧乾燥により脱溶媒した。
【0119】
〔高分子水溶液の調製〕
180gの精製水にキサンタンガム5g、ローカストビーンガム2.5g、プルラン12.5gを分散、溶解し、高分子水溶液を得た。
【0120】
上記難溶物20gを、室温下で200g高分子溶液に加えて攪拌後、真空凍結乾燥することで、CoQ10含有カプセル(プラセボ)を得た。
【0121】
(実施例4)
試験試料として、製造例3で製造したキニーネ含有カプセル(キニーネ含量として、0.1質量%になるように調整)、陽性対照として同濃度のキニーネ水溶液、陰性対象として同濃度の比較製造例3で製造したCoQ10水溶液を、10mm×80mmの長さに裁断されたろ紙の先端に、20μlづつ染込ませた後、以下の官能試験を実施した。
【0122】
成人健常者5名に、ランダムに、上記の試験試料液、陰性対象液、陽性対照液をそれぞれ含ませたろ紙を、口にくわえさせ、苦味を判定した。試験は、ランダムに飲料水で口腔内をその都度ゆすぎながら、3回繰り返し実施した。その結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

以上の結果から、試験試料液投与のものでは、合計15例(5名×3回で15例の結果が得られたことになる)中、苦くない(−)が13例、やや苦い(±)が2例であった。これに対して、陰性対照液投与のものでは、15例中、苦くない(−)が11例、やや苦い(±)が4例あり、陽性対照では、15例全例が、苦い(+)か、かなり苦い(++)であった。これらのことから、試験試料では、明らかにカプセル化することで、キニーネの苦味をマスクできることが示された。
【0124】
(製造例4)
〔難溶物溶解液の調製〕
パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム(Trisodium L−ascorbyl 2−(hydrogen phosphate) 6−hexadecanote;以下、APと略す)4gを、85℃で溶解した1,2−へキサンジオール(1,2−Hexanediol)4gに分散し、85℃にしたミツロウ19gとパーム油76gの溶解液に加えて混和した。この溶解液を、85℃に加温溶解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)400g溶液に加えて攪拌した後、冷却した。
【0125】
〔高分子水溶液の調製〕
1000gの精製水にジェランガム1g、プルラン10gを分散、溶解し、高分子水溶液を得た。
【0126】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記調製物100gを、室温下で1,000gの上記高分子溶液に加えて攪拌後、真空凍結乾燥することで、AP含有カプセルを得た。
【0127】
(製造例5)
〔難溶物溶解液の調製〕
10%グリコール酸50gと、ミツロウ1gとパーム油4gからなる溶液とを、よく混和後、85℃で加温溶解したポリオキシエチレ硬化ヒマシ油(HCO−60)95g溶液に加えて攪拌し、真空凍結乾燥により脱溶媒した。
【0128】
〔高分子水溶液の調製〕
1,000gの精製水にキサンタンガム1g、プルラン10g、ジェランガム0.5g、スクロース0.1gを添加し溶解し、高分子水溶液を得た。
【0129】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記難溶物溶解液50gを、室温下で500gの上記高分子溶液に加えて攪拌した後、真空凍結乾燥することで、グリコール酸含有カプセルを得た。
【0130】
(製造例6)
〔難溶物溶解液の調製〕
50gのCoQ10を、200gのヘキサンに溶解した後、加温溶解した硬化ヒマシ油(30g)と中鎖脂肪酸トリグセリド(20g)を加えてよく混和、溶解した。これを、85℃で加温溶解したモノパルミチン酸ソルビタン(レオドールSP−10)450g溶液に加えて攪拌した後、減圧乾燥により脱溶媒した。
【0131】
〔高分子水溶液の調製〕
1000gの精製水に寒天10g、グリセリン1gを加え、90℃に昇温することで高分子水溶液を得た。
【0132】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記調製物100gを、60℃に加温した900gの上記高分子溶液に加えて攪拌、溶解した後、真空凍結乾燥することで、CoQ10含有カプセルを得た。
【0133】
(製造例7)
〔難溶物溶解液の調製〕
単離精製した1gのセファランチンを、50gの塩化メチレンに溶解した後、加温溶解した硬化ヒマシ油(30g)と中鎖脂肪酸トリグセリド(20g)を加えてよく混和、溶解した。これを、60℃で加温溶解したモノパルミチン酸ソルビタン(レオドールSP−10)500gに加えて攪拌した後、減圧乾燥により脱溶媒した。
【0134】
〔高分子水溶液の調製〕
1,000gの精製水に寒天10g、グリセリン1gを加え、90℃に昇温することで高分子水溶液を得た。
【0135】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記調製物100gを、60℃に加温した900gの上記高分子溶液に加えて攪拌、溶解した後、真空凍結乾燥することで、セファランチン含有カプセルを得た。
【0136】
(製造例8)
〔難溶物溶解液の調製〕
1gのリン酸アスコルビルマグネシウム(Ascorbyl−2−phosphate magnesium;以下、APM)を50gの精製水に溶解した後、ホスコ−E75(丸石製薬)を2g加え攪拌した。85℃で加温溶解した硬化ヒマシ油(20g)と中鎖脂肪酸トリグセリド(30g)に上述のAPM水溶液を少しずつ加えてW/Oエマルションを製造した。これを、予め85℃で加温溶解したポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王、エマルゲン123P)500g溶液に加えて攪拌した後、減圧乾燥した。
【0137】
〔高分子水溶液の調製〕
1000gの精製水にプルラン10g、ポリビニルアルコール2g、グリセリン1gを添加し溶解することで、高分子水溶液を得た。
【0138】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記調製物100gを、室温下で900gの上記高分子溶液に加えて攪拌、溶解した後、真空凍結乾燥することで、APM含有カプセルを得た。
【0139】
(製造例9)
〔難溶物溶解液の調製〕
1gのコレカルシフェロール(V.D)を、40gのヘキサンに溶解した後、硬化ヒマシ油(0.2g)とホスコH−15(1.8g)を加えてよく混和、溶解した。これを、85℃で加温溶解したポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王、エマルゲン123P)溶液88gに加えて攪拌した後、減圧乾燥により脱溶媒した。
【0140】
〔高分子水溶液の調製〕
100gの精製水にプルラン1g、グリセリン0.1gを添加し溶解することで、高分子水溶液を得た。
【0141】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記難溶物溶解液90gを、室温下で810gの上記高分子溶液に加えて攪拌した後、真空凍結乾燥することで、V.D.含有カプセルを得た。
【0142】
(製造例10)
〔難溶物溶解液の調製〕
10gのリン酸L−アスコルビン酸マグネシウム(APM)を150gの精製水に溶解したAPM溶解液に、150gのへキサンに90gのショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ、商品名;サーフホープc2102)を溶解したショ糖脂肪酸エステル溶解液を加えて、W/Oエマルション化した後、更に、硬化ヒマシ油10gにクロピュア−シアバター90gを加えた溶液に分散した。この分散物を、85℃のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油溶液1,000gに加え、よく攪拌、混和した後、減圧乾燥した。
【0143】
〔高分子水溶液の調製〕
1,000gの精製水にカードラン1g、マルトース0.1g、キサンタンガム0.1g、グリセリン0.1gを添加し溶解することで、高分子水溶液を得た。
【0144】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記難溶物溶解液100gを、室温下で900gの上記高分子溶液に加えて攪拌した後、真空凍結乾燥することで、APM含有カプセルを得た。
【0145】
(製造例11)
アセチルサルチル酸10gを100gのエタノールに溶解した後、ホスコ−E75(丸石製薬)を2g加え攪拌した。これを、85℃で加温溶解した硬化ヒマシ油(20g)と馬油(30g)の溶液中に少しずつ加えた後、更に、加温したポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(花王、レオドールTW−S320V)500gの溶液に加えて攪拌し、減圧乾燥した。
【0146】
〔高分子水溶液の調製〕
1,000gの精製水にプルラン1g、ジェランガム0.1g、タマリンドシードガム0.1g、グリセリン0.1gを添加し溶解することで、高分子水溶液を得た。
【0147】
〔難溶物含有カプセルの調製〕
上記難溶物溶解液100gを、室温下で900gの上記高分子溶液に加えて攪拌した後、真空凍結乾燥することで、アセチルサルチル酸含有カプセルを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が25℃以上の界面活性剤、油脂、および/または油成分より選ばれた1種以上の混合物に分散された難溶物を含有するカプセル。
【請求項2】
前記難溶物が、オクタノール/水での分配係数(Log Pow)が1.0以上の疎水性難溶物である請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記難溶物が、疎水性化合物、および/または、化合物と界面活性剤から成る脂溶性複合体である請求項1または2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記化合物と界面活性剤から成る脂溶性複合体が、W/Oエマルション、あるいは、そのドライエマルションである請求項3に記載のカプセル。
【請求項5】
前記界面活性剤のHLB値が6.0以上の界面活性剤である請求項1〜4のいずれかに記載のカプセル。
【請求項6】
前記油脂が、パーム油、シアバター、牛脂、馬脂の天然油脂、硬化ヒマシ油の水素添加油脂、トリアシルグリセロールの合成グリセライドから選ばれた1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載のカプセル。
【請求項7】
前記油成分が、高級脂肪酸、高級アルコール、及びワックスエステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載のカプセル。
【請求項8】
前記油脂および/または前記油成分の融点が、35℃以上である請求項1〜7のいずれかに記載のカプセル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のカプセルを製造する方法であって、下記a)〜h)の工程を含むことを特徴とするカプセルの製造方法。
a)融点が25℃以上の界面活性剤を溶解する工程、
b)難溶物を有機溶媒に溶解あるいは分散する工程、
c)油脂及び油成分を溶解する工程、
d)前記工程a、前記工程b、または前記工程cで得られたものを混合する工程、
e)前記工程dで得られたものを乾燥する工程、
f)水溶性高分子および/または糖類を精製水に溶解する工程、
g)前記工程eで得られた試料を、前記工程fで調製した水溶液に溶解および/または分散する工程、
h)前記工程gで得られた試料を乾燥する工程。
【請求項10】
前記難溶物1質量部に対して、前記界面活性剤を5質量部以上加えるものである請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記水溶性高分子が、アルギン酸塩、ペクチン、カードラン、タマリンドシードガム、グルコマンナン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン及びジェランガムから選ばれる少なくとも1種である請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記水溶性高分子が、カプセル全体に対して0.1〜20質量%含まれる請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記糖類が、トレハロース、スクロースの二糖、グリセリン、ソルビトール、マンニトールの糖アルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記糖類が、カプセル全体に対して0.1〜20質量%含まれる請求項9〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記難溶物が、医薬品、栄養因子、添加物、化粧品、食品、及びこれらの組み合わせから選ばれる請求項9〜14のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17326(P2012−17326A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131568(P2011−131568)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(593202726)
【Fターム(参考)】