説明

難燃性ポリエステル布帛及びその製造方法

【課題】非ハロゲン系難燃剤を使用した難燃性の付与及び柔軟性、耐候性、刃漏れチキソ性の改善並びにリサイクル可能な難燃性ポリエステル布帛及び製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維糸条で製編織された基布の少なくとも片面に、非晶性ポリエステルと、ヒドラジン誘導体/アゾ化合物、リン系化合物、スルホン酸化合物のいずれかよりなる非ハロゲン系難燃化剤、及び難燃補助剤を主成分とするポリエステル難燃樹脂組成物により、積層及び/又は含漬処理により被覆された難燃性ポリエステル布帛及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ハロゲン系難燃剤を使用した難燃性の付与と共に、柔軟性並びに塗工時における刃もれチキソ性の改善、及びリサイクル可能な難燃性ポリエステル布帛及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維からなる布帛について、難燃性加工するに当たりハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤、赤燐難燃剤、イソシアヌレート難燃剤及びメラミン系難燃剤等が一般に使用されている。ハロゲン系難燃剤は公害問題があり、有機リン系難燃剤は化合物の一部が水に溶出する欠陥がある。また、赤燐は着色しており、特定の色相のものにしか適用できない。イソシアヌレート難燃剤及びメラミン系難燃剤も無公害とは言えないものがあり難燃性にも問題がある。コーティング樹脂については、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂、クロロスルフォン化ポリエチレン樹脂等で塗布されていた。
【0003】
ポリエステル樹脂は市販されている溶剤型のものは比較的硬いものが多く柔軟性のある樹脂は殆ど見受けられなかった。また、塩化ビニール樹脂、クロロスルフォン化ポリエチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂は基布と異なるため、ペレツト化して再利用することができない。
【特許文献1】特開2001−1452 請求項1 ポリエステル繊維から構成された基布の少なくとも一方の面に、ポリエステル系エラストマーが被覆されていることを特徴とするテント・幌用防水シート。
【0004】
請求項5 ポリエステル系エラストマーが、テレフタル酸成分及びテトラメチレングリコール成分以外の共重合成分が全ジカルボン酸成分に対して40モル%以下であるポリブチレンテレフタレート系ポリエステル単位からなるハードセグメント(H)と、芳香族ジカルボン酸成分及びヒドロキシル基の間の主鎖中の炭素原子数が5〜15の長鎖ジオール成分から主として構成され、融点が100℃未満又は非晶性であるポリエステル単位からなるソフトセグメント(S)とを含み、且つ両者の組成重量比(H:S)が20:80〜70:30である請求項1記載のテント・幌用防水シート。
【0005】
上記文献は、融点が100℃未満又は非晶性ポリエステル樹脂を用い、フィルム化したシートを貼り合わせたテント・幌用防水シートで、基布は編物であり中空ポリエステルを使用した防水シートであり、鞄材等には不向きである。また、難燃化はポリリン酸アンモニウム塩を使用し消火方式はリン酸塩によるものである。さらにラミネート方式でのフィルム接着性はコーティングよりかなり劣る。
【特許文献2】特開平9−227662号公報 請求項1 ポリエステル繊維糸条で製編織されてなる基布が、テレフタル酸とイソフタル酸または脂肪族ジカルボン酸である酸成分と、炭素数2〜6個の直鎖グリコールと炭素数2〜6個の側鎖グリコールまたはエーテルグリコールであるアルコール成分からなる高周波ウエルダー接着が可能な共重合ポリエステルにより被覆された樹脂被覆体であり、高周波ウェルダー接着部において該被覆体の引張強力に対し60%以上の接着強力を有し、かつ、耐水圧が1000mmH2 O以上であることを特徴とする防水布。
【0006】
上記文献には、水またはアミン水溶液中に分散させた共重合ポリエステルでポリエステル繊維糸条により製編織された基布を被覆した防水布でウェルダー接着を目的とするもので、加工法はディッピングによる樹脂の塗布である。難燃剤は毒性の強い三酸化アンチモンを使用しており、補助剤の記載がない。防水性の為塩化ビニールが使用されており、リサイクルができない。
【特許文献3】特開2005−132995号公報 請求項1 ポリエステル樹脂(A)と、グリシジル基および/またはイソシアネート基を1分子あたり2個以上含有し、重量平均分子量200以上50万以下であるアクリル樹脂系反応性化合物(B)を含むコーティング用ポリエステル系樹脂組成物。
【0007】
上記文献は、非晶性ポリエステルからなるコーティング用ポリエステル系樹脂組成物であり、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が40℃以上120℃未満である。難燃効果のある物質が含まれておらず難燃効果は期待できない。
【特許文献4】特開2000−160036号公報 (A)熱可塑性樹脂100重量部および(B)一般式(1)または一般式(2)で表されるホスホン酸と、アンモニアあるいは一般式(3)で表されるトリアジン系化合物からなるホスホン酸塩1〜100重量部を含有せしめてなる難燃性樹脂組成物。
【0008】
上記文献には、ホスホン酸とアンモニア、トリアジン系化合物とからなるホスホン酸1〜100重量部を有する難燃性樹脂組成物が記載されている。ヒドラジン誘導体、アゾ化合物を主成分とするものであり、電線被覆材、成形品用途、機械部品、電子部品であり、テント、シート、鞄材、被服類用途には不向きである。
【特許文献5】特開2003−89982号公報 請求項1 ポリステル繊維からなる基布の少なくとも片側面が、ポリエステル系エラストマーの発泡構造で被覆され、50%圧縮回復率が80%以上である鞄地。
【0009】
上記文献は、ポリエステル基布をポリエステル系エラストマーの発泡構造で被覆された鞄地及びその製造方法であり、ポリエステル系エラストマー発泡体を用い、また、ポリエステル繊維は中空糸、原着糸を使用する。柔軟性、軽量化のためポリエステル発泡体を使用しているが、本願発明では発泡体を使用せず、ポリエステル難燃性樹脂組成物を積層及び/又は含浸した構成である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明において解決しようとする問題点は、従来ポリエステルの難燃化にはハロゲン系有機化合物、さらに難燃補助剤としてアンチモン化合物等が使用されてきており、ハロゲン系化合物を用いたガス発生による消火法が開発されて以来、永年にわたり使用され良い結果が得られていたが、近年の環境公害問題の高まりからも燃焼の際の発煙量が多い他、ガスが有毒性を帯びている等の問題点を有している。本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、携帯テント、軒出しテント、鞄材等に用いられるポリエステル製品を火災から護り、焼却時にも有害ガスを発生させない。また、使用済み製品に対しては、ポリエステルの属性を生かして溶融させペレット化して、元の資源に戻しても有害物質がなく、再利用された材料から二次公害が発生しないものを提供する。即ち、本発明においては、ポリエステル織編物に非ハロゲン系難燃剤を採択し難燃性付与と共に、従来ポリエステル織編物への積層及び/又は含浸加工で仕上がりが比較的硬い風合い剛軟度の点について、難燃可塑剤の選択と併せての柔軟性風合いの改善、さらにポリエステル樹脂溶液は積層コーティング時での刃もれが強くチキソ性が悪い為に、コーティング操作を困難にしている点の改善並びにリサイクル活用が可能なポリエステル布帛及び製造方法を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点にかんがみ、第一の目的は、ポリエステル織編物に非ハロゲン系難燃剤を採択し難燃性付与する為、ポリエステル編織物の少なくとも片面にポリエステル難燃樹脂組成物が積層及び/又は含浸により被覆した構成である。その技術的思想は、ポリエステル編織物の溶融温度と、好ましくはその分解温度が近似領域にある非ハロゲン系難燃剤の選択並びにそれとの組み合わせに着目し、ガス(N2 )の発生量が大きい為、ポリエステル編織物の着火と同時にガスが発生して消火作用を発揮するように働く。また、第二の目的は、従来ポリエステル織編物への樹脂加工で仕上がりが比較的硬い剛軟度の点について、好ましくは柔軟性を付与できる難燃補助剤ないし難燃可塑剤の選択により難燃性と併せ柔軟性の改善、さらに第三の目的は、ポリエステル樹脂溶液は積層コーティング時での刃もれが強く、チキソ性が悪い為にコーティング操作を困難にしている点のこれらについての改善、並びにリサイクル活用が可能なポリエステル布帛及び製造方法を達成することができるとの知見に達したものである。
【0012】
本発明において、使用するポリエステル基布は、経編物、織物においては基布重量が、300g/m2 以下の汎用品や加工糸織物に適用することができる。
【0013】
また、ポリエステル樹脂は、非晶性から選ばれる分子量23×103 、Tg(ガラス転移温度)が、−15〜5℃、水酸基価4〜8KOHmg/g・酸価2KOHmg/g以下を使用することにより達成することができる。
【0014】
本発明において、ポリエステル難燃性付与手段として、下記化学式で表される難燃性樹脂組成物を使用することができる。
(1)難燃化剤(ヒドラジン誘導体/アゾ化合物)

たとえば、上記の3者は、分解温度 210〜245℃、ガス発生量が160〜250mg/gであり、燃焼と同時に窒素系ガスが発生して消化作用を促す。ポリエステル樹脂に対して、100:30〜80重量部なる難燃樹脂組成物を使用することにより本発明に係る課題を解決することができる。
(2)ポリエステル編織物に難燃性を付与のための難燃性樹脂組成物として使用するリン系化合物として下記化学式で表せるものを使用することができる。
【0015】

(3)ポリエステル編織物に難燃性を付与のための難燃性樹脂組成物として使用するホスホン酸化合物として下記化学式で表せるものを使用することができる。
【0016】

また、難燃補助剤として、ポリ燐酸アンモニウム、燐酸や燐酸エステル等を使用することができる。さらに、従来ポリエステル織編物への樹脂加工で仕上がりが比較的硬い剛軟度の点について、本発明において、上記3者のいずれかより選ばれた非ハロゲン系難燃剤を採択するに当たり難燃補助剤として、その機能を発揮し得るのみならず、併せて柔軟性の改善に寄与することのできる、上記ポリ燐酸アンモニウム、燐酸や燐酸エステルのほか難燃剤補助剤であると同時に、柔軟性付与できる難燃剤可塑剤を選択し採択することにより、難燃性と併せて柔軟性の複合効果を発揮し得るように働く。
【0017】
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂(A)は、増粘されるとコーティング作業時に刃漏れが発生して布帛上に汚点を残す為、この実施上の阻害要因であるチキソ性の改善が必要である。この改善手段として、疎水性マイクロナイズドシリカ、平均粒径2.7〜3.9を5〜9重量部添加することによりチキソ性(刃漏れ)を改善することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリエステル繊維からなる布帛に非ハロゲン系難燃剤を使用した難燃性の付与により毒性を含まず産業資材用途のみならず食品衛生法にも適合できると共に、風合い柔軟性及び耐候性といった付加価値の付与、改善を図ることができる。また、基布を構成する繊維がポリエステル、被覆層は非晶性ポリエステル系難燃樹脂組成物と両者が同系統であるために製品加工後の分別回収はもとより、リサイクルが極めて容易であり、携帯テント、軒だしテント及び鞄材として優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、使用する基布は、ポリエステル100%編織物に限定し、他繊維の混紡品、交織品は使用しない。ただし加工糸、編織物は使用しても差し支えない。
【0020】
また、ポリエステル繊維の糸番手は、20〜500デニール、又は短繊維については、10〜80番手からなる基布を採択することができる。基布の目付については、たとえば携帯テント、シートの用途では、軽いものが適当であり、40〜200g/m2 以下が好ましい。
【0021】
本発明において使用されるポリエステル樹脂は、非晶性のポリマー単位を主とする構成成分のポリエステルブロック共重合体であればよい。これらの樹脂中には、顔料、滑剤、安定剤、酸化防止剤、ポリイソシアネート、助剤を添加することができる。
【0022】
上記ポリエステル難燃組成物を、積層及び/又は含浸する手段について説明する。本発明において、難燃性ポリエステル布帛は、ポリエステル繊維からなる基布に、上述のポリエステル難燃組成物を積層及び/又は含浸することにより達成することができる。この手段については、一般に使用されている装置ないし設備を使用することができる。例えば、積層形態では一般的な塗布形式のコーティングについては、フローティングナイフによる片面、或いは両面のコーティング、又は2連式ナイフコーターによる積層コーティング、コンマコーターによるコンマロール式コーター、ロールスクリーン式コーター等がある。
【0023】
含浸法では、基布を溶液に浸漬させ2本マングルで絞る含浸法がある。比較的加工しやすい装置としては、フローティングナイフコーティングが挙げられる。溶融ラミネート法は、原料の樹脂を溶剤に溶かす必要がないので、最も安易な方法といえるが、難燃性付与や他の成分の配合にはかなり難しい工程を經なければならない。しかし溶液化した樹脂に配合すれば変化に富んだ難燃樹脂組成物を形成することができ、コーティング式塗布法を採用することができる。
【0024】
本発明において、基布に対する樹脂の塗布量は加工手段によって相違するが、基布に対して40〜200g/m2 が好ましく、難燃性能を付与するには基布に対する重量比は1:0.5〜2の範囲が好ましい。
(1)本発明において、ポリエステル繊維糸条で製編織された基布の少なくとも片面に、ポリエステル難燃樹脂組成物を積層及び/又は含浸処理により被覆するに際し、非ハロゲン系難燃剤の採択に当たり、ポリエステル編織物の着火と同時にガスが発生して消火作用を発揮せしめるが、ポリエステル編織物の溶融温度と、その分解温度が近似領域にある非ハロゲン系難燃剤を選択することにより、ガス(N2 )の発生量が大きい為好ましい。
(2)柔軟性風合いの付与に際し、従来ポリエステル織編物への樹脂加工で仕上がりが比較的硬い剛軟度の改善について、好ましくは柔軟性を付与できる難燃補助剤ないし難燃可塑剤の選択ないし採択により難燃性と併せて柔軟性風合いの改善を図ることができる。
(3)本発明において、難燃樹脂組成物による積層及び/又は含浸処理において、ポリエステル樹脂溶液は積層コーティング時での刃もれが強く、チキソ性が悪い為にコーティング操作を困難にしている点は、チキソ性改善剤の採択により改良を図ることがでる。
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0026】
実施例中における各特性値は下記の測定方法により計測した。
(1)難燃性 JIS−L−1091 A−1法 (45°ミクロバーナー法)に準じ、試料を45°に保持し、ミクロバーナーで加熱して、炭化面積、残炎時間を測定した。
(2)剛軟性 JIS−L−1096−6.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準じて測定した。表1内の数値は、タテ方向とヨコ方向の合計値を表示している。
(3)耐候性 JIS−K−7102に準じ、サンシャインウェザーオーメーターを用いて63°の雨なし条件下での1000時間経過後の樹脂面における表面状態を評価した。
【実施例1】
【0027】
ポリエステルフィラメント,20デニール・リップタフタを用い、(1)下記配合により撥水性並びに柔軟性付与処理を行い、含浸(2本マングルで絞る)して乾燥する。絞り率55%、乾燥温度は120℃で行った。
[撥水及び柔軟性配合]
フッ素系撥水剤 アサヒガードAG710(明成化学工業) 3%
浸透剤 イソプロピールアルコール 2%
柔軟剤 ハイソフターK−15(明成化学工業) 5%
(2)続いて、下記コーティング配合組成の溶液粘度10000cpsの難燃樹脂組成物からなるコーティング溶液を作成し、フローティングナイフ式コーティング機を用いて、塗布量80g/m2 で積層コーティングを行った。
[コーティング配合]
非晶性ポリエステル樹脂(A) 100重量部
難燃剤 ヒドラゾジカルボンアミド FE823(永和化成工業) 50重量部
難燃可塑剤 レオフォース35(味の素) 15重量部
コート面撥水剤 パラフィン135°F 1重量部
希釈剤 酢酸エチル 40重量部
ポリイソシアネート系架橋剤 バーノックDN950(大日本インキ化学工業)
5重量部
架橋促進剤 クリスボンアクセルT(大日本インキ化学工業) 3重量部
耐候向上剤 チヌビンP(チバスペシャルティーケミカルズ) 1重量部
酸化防止剤 リサイクロソルブ550(チバスペシャルティーケミカルズ)1重量部
チキソ性改良剤 疎水性マイクロナイズドシリカ・
サイロホービック#507(富士シリシア化学) 5重量部
上記によって、軽量で、折り畳みも自由にできる耐水性、撥水性、耐候性、美観も良好で、かつ分別回収でき、リサイクル活用が可能な軒出しテントまたは鞄材として使用できる布帛基材を得た。
【実施例2】
【0028】
ポリエステル短繊維100%・30番手厚織で経糸90、緯糸60本/2.54cmの基布に、上記と同様の配合の水溶液を通し撥水性並びに柔軟性付与処理を行い、含浸(2本マングルで絞る)して乾燥する。絞り率は70%とし、乾燥温度は120℃で行った。[撥水及び柔軟性配合]
フッ素系撥水剤 アサヒガードAG710(明成化学工業) 3%
浸透剤 イソプロピールアルコール 2%
柔軟剤 ハイソフターK−15(明成化学工業) 5%
(2)続いて、下記コーティング配合の溶液粘度10000cpsの難燃樹脂組成物からなるコーティング溶液を作成し、フローティングナイフ式コーティング機を用いて、塗布量120g/m2 で積層コーティングを行った。
[コーティング配合]
非晶性ポリエステル樹脂(A) 100重量部
コート面撥水剤 パラフィン135°F 1重量部
希釈剤 酢酸エチル 40重量部
難燃剤 アゾジカルボンアミド FBH30(大塚化学) 50重量部
難燃補助剤 ポリ燐酸メラミン プラネロンNP(三井化学ファイン)15重量部
ポリイソシアネート系架橋剤 バーノックDN950(大日本インキ化学工業)
5重量部
架橋促進剤 クリスボンアクセルT(大日本インキ化学工業) 3重量部
耐候向上剤 チヌビンP(チバスペシャルティーケミカルズ) 1重量部
酸化防止剤 リサイクロソルブ550(チバスペシャルティーケミカルズ)1重量部
チキソ性改良剤 疎水性マイクロナイズドシリカ・
サイロホービック#507(富士シリシア化学) 5重量部
上記によって、耐水性、撥水性、耐候性、美観も良好で、かつ分別回収でき、リサイクル活用が可能な軒出しテントまたは鞄材として使用できる布帛基材を得た。
【実施例3】
【0029】
ポリエステルフィラメント・リップタフタの基布を用い、下記の配合からなる溶液粘度10000cpsの難燃樹脂組成物を作成し、ナイフコーティング機を用い塗布量100g/m2 でコーティングを行った。
[コーティング配合]
非晶性ポリエステル樹脂(A) 100重量部
難燃剤 4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド
ネオソルボンN7000(永和化成工業) 50重量部
難燃剤補助剤 ビゴールFV460(大京化学) 4重量部
難燃可塑剤 レオフォース35(味の素) 30重量部
希釈剤 酢酸エチル 30重量部
ポリイソシアネート系架橋剤
バーノックDN950(大日本インキ化学工業) 5重量部
架橋促進剤 クリスボンアクセルT(大日本インキ化学工業) 3重量部
耐候向上剤 チヌビンP(チバスペシャルティーケミカルズ) 1重量部
酸化防止剤 リサイクロソルブ550(チバスペシャルティーケミカルズ)1重量部
チキソ性改良剤 疎水性マイクロナイズドシリカ・
サイロホービック#507(富士シリシア化学) 6重量部
上記によって、耐候性、美観も良好で、かつ分別回収でき、リサイクル活用が可能な室内装飾用壁材を得た。
比較例1
【0030】
ポリエステルフィラメント,20デニール・タフタを用い、(1)下記配合により撥水性を付与する処理を行い、含浸(2本マングルで絞る)して乾燥する。絞り率55%、乾燥温度は120℃で行った。
[撥水配合]
フッ素系撥水剤 アサヒガードAG710(明成化学工業) 3%
浸透剤 イソプロピールアルコール 2%
(2)続いて、下記配合のコーティング溶液で、溶液粘度10000cpsのコーティング溶液を作成し、フローティングナイフ式コーティング機を用いて、塗布量80g/m2 でコーティングを行った。
[コーティング配合]
ウレタン樹脂 クリスボン2026EL(大日本インキ化学工業) 100重量部
難燃剤 フランDDA−S(大和化学工業) 50重量部
希釈剤 酢酸エチル 40重量部
ポリイソシアネート系架橋剤
クリスボンNX(大日本インキ化学工業) 5重量部
架橋促進剤 クリスボンアクセルHM(大日本インキ化学工業) 3重量部
比較例2
【0031】
ポリエステル短繊維100%・30番手厚織で経糸90、緯糸60本/2.54cmの基布に、上記と同様の配合の水溶液を通し撥水性並びに柔軟性付与処理を行い、含浸(2本マングルで絞る)して乾燥する。絞り率は70%とし、乾燥温度は120℃で行った。[撥水配合]
フッ素系撥水剤 アサヒガードAG710(明成化学工業) 3%
浸透剤 イソプロピールアルコール 2%
(2)続いて、下記コーティング配合の溶液粘度10000cpsのコーティング溶液を作成し、フローティングナイフ式コーティング機を用いて、塗布量120g/m2 でコーティングを行った。
[コーティング配合]
ウレタン樹脂 クリスボン2026EL(大日本インキ化学工業) 100重量部
難燃剤 フランDDA−S(大和化学工業) 70重量部
希釈剤 酢酸エチル 50重量部
ポリイソシアネート系架橋剤
クリスボンNX(大日本インキ化学工業) 5重量部
架橋促進剤 クリスボンアクセルHM(大日本インキ化学工業) 3重量部 比較例3
【0032】
ポリエステルフィラメント・リップタフタの基布を用い、下記の配合からなる溶液粘度10000cpsのコーティング溶液を作成し、フローティングナイフ式コーティング機を用い、塗布量100g/m2 でコーティングを行った。
[撥水配合]
フッ素系撥水剤 アサヒガードAG710(明成化学工業) 3%
浸透剤 イソプロピールアルコール 2%
[コーティング配合]
ウレタン樹脂 クリスボン2026EL(大日本インキ化学工業) 100重量部
難燃剤 フランDDA−S(大和化学工業) 60重量部
希釈剤 酢酸エチル 40重量部
ポリイソシアネート系架橋剤 クリスボンNX(大日本インキ化学工業) 5重量部
架橋促進剤 クリスボンアクセルHM(大日本インキ化学工業) 3重量部 上記実施例1,2,3及び比較例1,2,3の性能評価の対比を表1に示す。
【表1】

・記号の説明
難燃試験 ○:合格。△:残炎のみ不合格
刃漏れ ○:汚点は発生しない △:汚点発生が5〜10ケ所/50m程度
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の難燃性ポリエステル布帛及びその製造方法によれば、非ハロゲン系難燃剤による難燃性付与と共に、柔軟性風合い及び耐候性の付加価値の付与、塗工時の刃漏れの改善が図ることができる。たとえばポリウレタン軒出しテントと比較すると、耐候性に優れ、経時における黄変や劣化が少ない。また、従来の軒出しテントは交換廃棄後は焼却処分が主流であったが、本発明の難燃性ポリエステル布帛では、基布のポリエステルと被覆層がポリエステル系難燃樹脂組成物と同系統のためリサイクルが極めて容易であり、携帯テント、軒出しテント及び鞄材として利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維糸条で製編織された基布の少なくとも片面に、ポリエステル難燃樹脂組成物が積層及び/又は含漬処理により被覆されていることを特徴とする難燃性ポリエステル布帛。
【請求項2】
前記ポリエステル難燃樹脂組成物が、非晶性ポリエステル樹脂と、非ハロゲン系難燃化剤及び難燃補助剤を主成分とするものである請求項1記載の難燃性ポリエステル布帛。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステル(A)が、テレフタール酸成分及び/又はイソフタール酸を含むポリエステルと、芳香族モノカルボン酸と多価アルコール成分が反応してなるエステル化合物とを含有してなる請求項1〜2のいずれか記載の難燃性ポリエステル布帛。
【請求項4】
前記難燃化剤ヒドラジン誘導体/アゾ化合物(B)が、ヒドラジンカルボンアミド、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のいずれか記載の難燃性ポリエステル布帛。
【請求項5】
前記難燃化剤リン系化合物(C)が、ポリリン酸化合物、メラミン化リン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のいずれか記載の難燃性ポリエステル布帛。
【請求項6】
前記難燃化剤ホスホン酸化合物(D)が、ホスホン酸エステル化合物である請求項1〜3のいずれか記載の難燃性ポリエステル布帛。
【請求項7】
ポリエステル繊維糸条で製編織された基布の少なくとも片面に、非晶性ポリエステル樹脂(A)と、難燃化剤ヒドラジンカルボンアミド、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドからなる群から選ばれるヒドラジン誘導体/アゾ化合物(B)、或いはポリリン酸化合物、メラミン化リン酸化合物からなる群から選ばれるリン系化合物(C)、スルホン酸エステル化合物からなる群から選ばれるスルホン酸化合物(D)のいずれかよりなる難燃化剤とを主成分とするポリエステル難燃樹脂組成物により、積層及び/又は含漬処理により被覆することを特徴とする難燃性ポリエステル布帛の製造方法。

【公開番号】特開2008−168519(P2008−168519A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4348(P2007−4348)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(390040855)朝日加工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】