説明

難燃性放射線硬化性組成物

本発明は、少なくとも1種のポリマー前駆体と、式(I)に対応する環状ホスホン酸エステルから選択される少なくとも1種の難燃剤(A)と、式(I)の環状ホスホン酸エステルと異なるリン誘導体から選択される少なくとも1種の難燃剤(B)とを含む難燃性組成物に関し、耐火性合わせガラスを製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性組成物、並びに耐火性の合わせガラスを製造するためのその使用及びそれにより得られた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板を積層する技術、すなわち中間層によって2枚以上のガラス板を永久的な形で一緒に結合する技術は、よく知られ、一般に利用されている。このような合わせガラスは、例えば自動車や建築といった用途に使用されている。積層することにより、ガラスが破壊された場合に人々が破片から保護され、板ガラスの耐衝撃性又は遮音性を向上させることも可能になる。合わせガラスは、液体樹脂をその場で重合させることによって製造することができる。この技術では、2枚のガラス板が両面接着テープによって接合され、両面テープは距離を維持するのにも機能する。次いで、こうして作り出された2枚のシート間の空洞が、液体樹脂により充填される。次いで、この液体樹脂は、放射線によって又は適切な触媒及び促進剤により化学的に重合される、(いわゆる「硬化」である)。この重合が完結した後、固体中間層が形成される。ガラスの積層に使用される液体樹脂の化学的特性は、種々の種類、すなわちポリエステル、ポリウレタン、シリコーン又はアクリル樹脂のいずれかのものとすることができる。今日主として利用されるのは紫外線樹脂であり、低強度の紫外光の作用によって反応が開始される。紫外線はこの系の反応性モノマーを活性化し、重合を開始させる。紫外線硬化性液体樹脂系は、例えばEP0108631において記述されている。
【0003】
難燃性合わせガラスは、例えばWO2004/035308において記述されている。
【0004】
WO2005/054330においても、良好な難燃特性、すなわちUL94 V0という厳しい燃焼性の格付けを満たすとされる難燃性組成物が記述されている。WO2005/054330は、異なる種類の化合物に属する少なくとも2種の難燃剤を含む難燃性硬化性組成物、特に、臭素化難燃剤と水酸化アルミニウム及びリン含有化合物との組み合わせに関する。ハロゲン化難燃性組成物の使用は、あまり所望されない。火災において、ハロゲン基は、有毒且つ腐食性の燃焼生成物を発生する恐れがある。腐食性ガスは、生体に有毒な影響を有する。その上、これらの腐食性燃焼生成物は、例えば電子部品への著しい損傷を引き起こす恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、高い耐衝撃性状と高い耐火性とを兼備する耐火性ガラスを見出す必要性が依然として存在する。その上、これらのガラスは、調製が容易で、取扱いが容易であり、透明なものとすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、選択された環状ホスホン酸エステルと他のリン含有化合物との特定の組合せ物を含む組成物により、これらの問題を克服することが可能になり、UL94試験のもとで優れた耐火性を有し、透明であり且つ高い耐衝撃性を有する耐火性の合わせガラスを製造することが可能になることを今回見出した。
【0007】
したがって、本発明は、少なくとも1種のポリマー前駆体と、式(I)
【化1】


(式中、nは1、2又は3であり、mは0、1又は2であり、pは0又は1であり、但し、n+m+p=3であり、
は、場合によりヒドロキシル基によって置換されている、炭素原子1〜4個を含むアルキルを表し、
は、炭素原子1〜4個を含むアルキルを表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子1〜8個を含むアルキル、フェニル(場合により1個若しくは複数のハロゲン又はヒドロキシルによって置換されている)、トリル、キシリル、ベンジル、フェネチル、ヒドロキシエチル、フェノキシエチル又はジブロモフェノキシエチルを表す)に対応する環状ホスホン酸エステルから選択される少なくとも1種の難燃剤(A)と、
式(I)の環状ホスホン酸エステルと異なるリン誘導体から選択される少なくとも1種の難燃剤(B)と
を含む放射線硬化性難燃性組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
難燃性組成物は、少なくとも1種のポリマー前駆体を含む。ポリマー前駆体という用語は、適切な重合可能な機能を有する、好ましくは分子鎖末端において又は分子鎖に沿って側方に1個若しくは複数のアクリル、メタクリル若しくはビニル基を含むモノマー若しくはオリゴマー又はこれらの混合物を示すのに使用される。
【0009】
本発明において使用される用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の両方並びにそれらの混合物を包含する意味である。
【0010】
本発明による組成物は、一般に、25〜94重量%の、好ましくは45〜90重量%の、最も好ましくは50〜80重量%の、1種又は複数のポリマー前駆体を含有する。
【0011】
放射線硬化性ポリマー前駆体は一般に、1個若しくは複数の(メタ)アクリル基を含むモノマー及びオリゴマーから選択される。
【0012】
これらのモノマーは、一般にモノ−、ジ−、トリ−及び/又はテトラ−(メタ)アクリレートである。適切なモノマーには、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート、モノ(メタ)アクリレート、2−(−2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カージュラ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート並びにそれらのオキシエチル化又は/及びオキシプロピル化誘導体が含まれる。好ましいものは、モノ(メタ)アクリレート、特に、アクリル酸、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びイソボルニルアクリレートである。より好ましいものは、n−ブチルアクリレート、アクリル酸及び2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0013】
ポリマー前駆体として使用されるモノマー(単数又は複数)の合計量は、本組成物中に使用されるポリマー前駆体の合計量に対して一般に0〜100重量%である。モノマーの量は、ポリマー前駆体の、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも45重量%である。モノマーの合計量は、通常、ポリマー前駆体の全重量の95重量%を超えず、好ましくは90重量%を超えない。
【0014】
本発明による組成物中に使用される好ましいオリゴマーは、1000〜10000の分子量MWを有するものである。好ましくは、少なくとも2000のMWを有するものであり、とりわけ少なくとも4000のMWを有するものである。好ましいオリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した際に、最大7000のMWを有し、より好ましくは最大6000のMWを有する。
【0015】
上記に示した数平均分子量(Mn)は、GPC(THF中、3×PLゲル5μm混合−D LS300×7.5mmカラム、MW範囲162〜377400g/モル、40℃においてポリスチレン標準により較正、Merck−Hitachi装置を使用)により測定される。
【0016】
好ましいオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートから選択され、より具体的には、破断点伸度10〜500%、より好ましくは50〜300%、を有する柔軟なウレタン及びエポキシ(メタ)アクリレートから選択される。破断点伸度は、ASTM D638により放射線硬化した薄いオリゴマーフリーの膜(a radiation−cured thin free−film of the oligomer)の引張試験によって測定される。
【0017】
ウレタン(メタ)アクリレートは、当技術分野でよく知られ、市販されている製品である。適切なウレタン(メタ)アクリレートは、例えばWO2004/037599に記載されている。適切なウレタン(メタ)アクリレートの例は、Cytec Surface Specialties社から市販のウレタンアクリレート、EBECRYL(登録商標)230及びEBECRYL(登録商標)270である。
【0018】
エポキシ(メタ)アクリレート、すなわちエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステルも、当技術分野でよく知られている。適切なエポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、Technical Conference Proceedings−RadTech 2002;The Premier UV/EB,Conference & Exhibition,Indianapolis,IN,United States,Apr.28〜May 1,2002(2002),171〜181 Publisher:RadTech International North America,Chevy Chase,Md.に記載されている。適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例は、EBECRYL(登録商標)3708及びEBECRYL(登録商標)3302の名称のもとに商品化されているものである。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレート、特に脂肪族ウレタンアクリレートが特に好ましい。
【0020】
ポリマー前駆体として使用されるオリゴマー(単数又は複数)の合計量は、一般に本組成物中に使用されるポリマー前駆体の合計量に対して0〜100重量%である。オリゴマーの合計量は、本組成物中に使用されるポリマー前駆体の合計量に対して好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%である。オリゴマーの量は、本組成物中に使用されるポリマー前駆体の合計量に対して好ましくは80重量%を超えず、より好ましくは70重量%を超えず、最も好ましくは55重量%を超えない。
【0021】
本発明において使用される組成物は、ポリマー前駆体として本明細書において上記に記述したものなどの、少なくとも1種のオリゴマー及び少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。
【0022】
本発明による組成物中に使用される難燃剤(A)は、式(I)(式中、nは1又は2であり、mは0又は1であり、pは1である)の化合物から選択されることが好ましい。好ましいものは、R、R、R及びRが、それぞれ独立に、炭素原子1〜4個を含むアルキル基から選択される化合物である。特に好ましいものは、Rがエチルであり、R、R及びRがメチルである化合物である。
【0023】
とりわけ好ましいものは、式(II)及び(III)
【化2】


に対応する化合物、並びにそれらの混合物である。
【0024】
これらの難燃剤は、米国特許第3,789,091号及び米国特許第3,849,368号において記述されており、それらの内容を本明細書に組み込む。
【0025】
本難燃性放射線硬化性組成物は、一般に3〜40重量%の難燃剤(A)を含有する。本組成物は、好ましくは少なくとも5重量%の、より好ましくは少なくとも10重量%の難燃剤(A)を含む。難燃剤(A)の全量は、通常35重量%を超えない。
【0026】
難燃剤(B)は、一般にホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト及びホスフィンオキシドから選択され、好ましくは有機ホスフェート及びホスホネートから選択される。
【0027】
難燃剤(B)として使用することができるホスフェートの例としては、ポリアリールリン酸エステル(例えばリン酸トリフェニル、トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニルキシリルホスフェート、2−ビフェニリルジフェニルホスフェートなど);アルキル化ポリアリールホスフェートエステル(例えばブチル化トリフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(t−ブチル)フェニルホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、イソプロピル化t−ブチル化トリフェニルホスフェート、t−ブチル化トリフェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、3,4−ジイソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニルジフェニルホスフェート、ノニルフェニルジフェニルホスフェート、4−[4−ヒドロキシフェニル(プロパン−2,2−ジイル)]フェニルジフェニルホスフェート、4−ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ビス(ジトリル)イソプロピリデンジ−p−フェニレンビス(ホスフェート)、O,O,O’,O’−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−O,O’−m−フェニレンビスホスフェートなど);アルキルアリールホスフェートエステル(例えば2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、ジエチルフェネチルアミドホスフェート、ジイソデシルフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、メチルジフェニルホスフェート、ブチルジフェニルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、イソオクチルジフェニルホスフェート、イソプロピルジフェニルホスフェート、ジフェニルラウリルホスフェート、テトラデシルジフェニルホスフェート、セチルジフェニルホスフェート、タール酸クレジルジフェニルホスフェートなど);トリアルキルホスフェートエステル(例えばトリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェートなど);3−(ジメチルホスフェート)プロピオン酸メチルアミド;及びペンタエリトリトール環状ホスフェートがある。
【0028】
難燃剤(B)として使用することができるホスホネートの例としては、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルエチルホスホネート、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、ジエチル(2−オキソプロピル)ホスホネート、ジメチルプロピルホスホネートがある。
【0029】
ホスファイトの例は、アルキルホスファイト及びアリールホスファイト(例えばトリフェニルホスファイトなど)である。
【0030】
難燃剤(B)は、好ましくは有機ホスフェート及びホスホネートから選択され、とりわけアルキルホスフェートエステル、アリールホスフェートエステル、アルキルアリールホスフェートエステル、アルキルホスホネートエステル、アリールホスホネートエステル、アルキルアリールホスホネートエステルから選択される。
【0031】
特に好ましいものは、ポリアリールホスフェートエステルであり、より好ましいものはビスフェノールA由来のリン酸エステル(例えばビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)など)である。
【0032】
本難燃性放射線硬化性組成物は、一般に3〜35重量%の難燃剤(B)を含有する。本難燃性放射線硬化性組成物は、一般的に好ましくは少なくとも5重量%の、より好ましくは少なくとも10重量%の難燃剤(B)を含有する。難燃剤(B)の全量は、通常30重量%を超えない。
【0033】
本放射線硬化性組成物中における難燃剤(B)に対する難燃剤(A)のそれぞれの重量の比率は、通常0.1〜10、好ましくは0.2〜2、より好ましくは0.5〜1である。
【0034】
本発明による難燃性放射線硬化性組成物は、ハロゲン含有放射線硬化性前駆体を含まず、且つハロゲン含有難燃剤を含まないことが好ましい。
【0035】
本発明による組成物は、一般に光化学開始剤及び/又は化学開始剤を含む。光化学開始剤(光開始剤とも呼ばれる)は、光を、典型的には紫外光を吸収することによりラジカルを発生させることができる化合物である。典型的な光化学開始剤は、「The chemistry of free radical polymerization」edited by Graeme Moad and David H.Solomon;Pergamon(1995),pages 84 to 89に記述されている。別法として、光開始剤を含まない同一の組成物を、電子線により硬化させることができる。
【0036】
化学開始剤は、典型的には、熱、光又はレドックスプロセスの適用により分解されてラジカルとなるアゾ化合物又は過酸化物である。その機構は、「The chemistry of free radical polymerization」edited by Graeme Moad and David H.Solomon;Pergamon(1995),pages 53〜95に記述されている。
【0037】
本発明による組成物は、典型的には、0〜5重量%の少なくとも1種の光開始剤を含有する。本組成物中に、光開始剤を0.01〜3重量%含むことが好ましい。
【0038】
本発明による放射線硬化性組成物は、例えば接着促進剤、安定剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤などの他の化合物を含むこともできる。他の化合物の量は、通常10重量%を超えない。本組成物は、0.01〜3重量%の接着促進剤、特にシランから選択されるものを含むことが好ましい。
【0039】
本発明による放射線硬化性組成物は、一般に、難燃剤(単数又は複数)を、1種若しくは複数のポリマー前駆体(単数又は複数)に、特に1種若しくは複数のモノマー又はポリマー前駆体の混合物に、単一相溶液が得られるまで添加することによって調製される。混合は、一般に温度5〜100℃で行われる。別法として、難燃剤は、ポリマー前駆体の一部に溶解してもよく、次いでこの混合物にポリマー前駆体の残部が添加される。別法として、ポリマー前駆体を、難燃剤に添加することができる。
【0040】
本放射線硬化性難燃性組成物は、コーン及びプレート型粘度計を使用して測定した場合、一般に、25℃において1〜10000mPa・s、好ましくは10〜1000mPa・s、より好ましくは10〜250mPa・sの粘度を有する。
【0041】
本発明による放射線硬化性難燃性組成物により、膜厚1mmにおいてUL−94試験のV2以上の格付けを(V1及びV0さえも)満たすことが可能になる。本組成物は、透明な層を生成させることを可能にする。本発明による組成物は、改良された難燃特性、高い耐衝撃性、防音性、耐老化性及び積層体への接着性を示す。
【0042】
したがって、本発明による放射線硬化性組成物は、数多くの用途、例えば合わせガラス用注型樹脂などに、より具体的には耐火性合わせガラス、ポリカーボネート積層体、紫外線硬化性接着剤及び難燃性塗料に適している。
【0043】
本発明による放射線硬化性組成物は、積層体、とりわけ合わせガラスを製造するのに特に有用である。
【0044】
合わせガラスとは、少なくとも1枚のガラス板を含む積層体として理解される。
【0045】
本説明において、用語「ガラス」は、ガラス製の、又はガラスの外観を有する物体を示すのに使用される。ポリカーボネート板などのガラスの外観の物体を使用することができるが、火災の際の挙動が良くないため、あまり好ましくない。このガラスの物体は、強化(tempered)若しくは非強化にかかわらず、普通のソーダ石灰ガラス(フロートガラス)、又はホウケイ酸ガラス(強化若しくは非強化にかかわらず)若しくはセラミックガラスなどの特殊ガラス及び網入りガラスから作ることができる。この用語は、無機及び有機の膨張性中間層を有する耐火性板ガラスの積層体にも使用することができる。
【0046】
本積層体には、石/ガラス積層体も含まれる。
【0047】
本発明はまた、本発明による積層体の製造方法であって、(i)本明細書において上記に記述した難燃性組成物を準備するステップと、(ii)この難燃性組成物を、少なくともその一方がガラスである2枚の板の間に入れるステップと、(iii)この組成物を硬化させて、それらの板の間で中間層を構成するポリマーを形成するステップとを含む上記方法をも提供する。
【0048】
本特許請求方法に包含されるステップ(i)、(ii)及び(iii)は、必ずしも、はっきり識別された、連続した、別個のステップである必要はない。好ましい実施形態では、本硬化性組成物を、板の間に入れ、紫外光下で照射することにより硬化させて、それらの板を一緒に接合する硬化された組成物層(「中間層(interlayer)」)を有する積層体を形成することができる。
【0049】
本難燃性組成物は、2つの相対する外側層であって、それらの間にある周囲スペーサーによって互いに隔てられ、離れて配置される、2つの相対する外側層を有する注型セル内で「注型され(cast)」、そのセル内で硬化することがより好ましい。このような技術はよく知られ、例えば、GB−A−2015417及びGB−A−2032844、並びにEP−A−0200394において記述されている。硬化するステップは、好ましくは照射によって、より好ましくは紫外光によって、特に低強度の紫外光の作用によって行われる。典型的には、1〜10、好ましくは1.5〜2.5mW/cmの強度が用いられる。
【0050】
典型的には、紫外線オーブン内の滞留時間は、5〜60分、好ましくは15〜30分である。
【0051】
本発明の一変形形態によれば、多シート積層体、すなわち2枚以上のガラス板及び/又は2枚以上の他の板を有する積層体を使用することができる。本発明において使用されるガラス板は、同一又は異なる特性のものとすることができる。例えば、フロートガラス/セラミックガラス又はホウケイ酸ガラスである。中間層によって互いに結合されたいくつかの積層体を含むこのような多シート積層体において、それぞれの中間層は、同一の又は異なる組成のものとすることができ、難燃性又は非難燃性のものとすることができる。
【0052】
本発明において使用されるガラスは、強化された(fempered)若しくは非強化のものとすることができる。
【0053】
難燃性成分を含む放射線硬化性組成物は、2枚のガラスシートを接合して、合わせガラスを形成し、難燃性積層体に所望される特性の有利な組み合わせを提供することを可能にする点が観認されている。
【0054】
本発明はまた、本発明による難燃性組成物から得られる少なくとも1層の中間層を有する合わせガラスに関する。本発明による積層体は、良好な耐火性を提供する。それらの積層体は、著しく改良された耐衝撃性及び安全衝撃性能をも有する。それらの積層体はハロゲンを含まない。
【0055】
本発明による積層体は、取扱いが容易であり、ガラスが強化されない場合、寸法に基づいて切断することができる。
【0056】
本難燃性放射線硬化性組成物は、透明な製品が要求される場合、すなわち窓として使用される耐火性積層体の中間層として、透明なものとすべきである。用語「透明な(transparent)」は、本明細書において、光を透過し、そのため窓ガラス用として適しており、無色又は無色ではない透明な、曇りのない見通しの良い視界をもたらす製品及び材料を記述するのに使用される。
【0057】
この液体樹脂系の強力な技術的利点は、2枚のガラス間の空洞が、液体樹脂で完全に充填され、ガラス表面の形状若しくは粗さが、樹脂中間層との接合には全く重要ではない点である。最も多くの場合適正なシランである接着促進剤(単数又は複数)を組み込むことにより、ガラス表面上のシラノール(−Si−OH)官能基と、この中間層との間で化学結合を作り出すことが可能になる。
【0058】
本発明は、下記の、非限定的実施例により例証される。
【実施例】
【0059】
以下の表1に記載される種々の化合物を混合することによって、例1〜7及び比較例8R〜12Rの組成物を調製した。特に指定されない限り種々の化合物の量はgで示される。
【表1】

【0060】
これらの組成物の特性を測定し、表2において報告する。
【0061】
粘度は、コーン及びプレート型粘度計(Modular Compact Rheometer MCR−100;使用したコーン:CP50−1コーン;せん断速度20s−1)を使用して測定した。
【0062】
いわゆるUL−94試験は、燃焼性を測定するための標準試験であり、アメリカ保険業者安全試験所(Undewriters Laboratories)UL94、プラスチック材料の燃焼性のための試験(Test for flammability of Plastic Materials)−UL94,Jul.29,1997において記述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込む。この試験において、材料は、その難燃性能に応じてV0、V1又はV2として格付けされる。
【0063】
127mm×12.7mm垂直燃焼試験用UL94試験片を1mmの膜厚で調製した。液体を保持するため1mm厚テープを使用して、組成物をシリコーン剥離紙上に注ぐことによりフリーフィルムを調製した。ポリエステルフィルムにより液体を覆い、一般的な紫外線オーブン内において紫外光下で硬化させた。強度は、20〜25分間1.5〜2.5mW/cmであった。硬化した後、試験片を寸法に基づいて切断し、シリコーン剥離紙及びポリエステルフィルムを除去した。NCは、格付けされないとの意味であり、それらがV0、V1又はV2のいずれでもなかったことを意味する。
【0064】
30×30cm、公称厚4mmの2枚のソーダ石灰(フロート)ガラス板を、厚さ1mmの両面テープで接合することにより、合わせガラスを作製した。前述の表において記述した組成物を、漏斗を使用して、その中間の空間に導入した。一般的な紫外線オーブン内において硬化を行った。中間層について測定した強度は1.5〜2.5mW/cmであった。硬化時間は20〜25分であった。
【0065】
合わせガラスの外観を表2において報告する:透明(trans)は、透明な積層体が得られたことを意味する;曇り(haze)は、曇った積層体が得られたことを意味する;不透明(opaq)は、得られた積層体がほぼ不透明であったことを意味する。
【0066】
合わせガラスの安全性能を、上述の30cm×30cmソーダ石灰合わせガラス上に高さ1.5mから2.2kgの鋼球を落下させる、NBN S23−002(=STS38)と同様の衝撃試験によって評価した。鋼球が積層体を貫通するまで、試験を繰り返した。衝撃数は、鋼球が積層体を貫通する前に、積層体が耐えることができた最大衝撃回数と定義される。
【表2】

【0067】
表2において提示された結果は、本発明による少なくとも2種の難燃剤を含む組成物が、V1又はより良好な(V0)UL94の格付けを達成し、且つ同時に良好な耐衝撃性を有する膜によって、非常に良好な難燃性を有する透明な積層体を得ることを可能にしていることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマー前駆体と、式(I)
【化1】


(式中、nは1、2又は3であり、mは0、1又は2であり、pは0又は1であり、但し、n+m+p=3であり、
は、ヒドロキシル基によって場合により置換されている、炭素原子1〜4個を含むアルキルを表し、
は、炭素原子1〜4個を含むアルキルを表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子1〜8個を含むアルキル、フェニル(1個若しくは複数のハロゲン又はヒドロキシルによって場合により置換されている)、トリル、キシリル、ベンジル、フェネチル、ヒドロキシエチル、フェノキシエチル又はジブロモフェノキシエチルを表す)に対応する環状ホスホネートエステルから選択される少なくとも1種の難燃剤(A)と、
式(I)の環状ホスホネートエステルと異なるリン誘導体から選択される少なくとも1種の難燃剤(B)と
を含む放射線硬化性難燃性組成物。
【請求項2】
難燃剤(A)が、nが1又は2であり、mが0又は1であり、pが1である式(I)の化合物から選択される、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
難燃剤(A)が、式(II)及び(III)
【化2】


の化合物、並びにそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
難燃剤(B)が、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト及びホスフィンオキシドから選択される、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
難燃剤(B)が、アルキルホスフェートエステル、アリールホスフェートエステル、アルキルアリールホスフェートエステル、アルキルホスホネートエステル、アリールホスホネートエステル、アルキルアリールホスホネートエステルから選択される、請求項4に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
難燃剤(B)が、ビスフェノールA由来のポリアリールホスフェートエステルから選択される、請求項5に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項7】
25〜94重量%の1種又は複数のポリマー前駆体と、3〜40重量%の難燃剤(A)と、3〜35重量%の難燃剤(B)とを含む、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項8】
前記ポリマー前駆体が、少なくとも20重量%の、モノ−、ジ−、トリ−及び/又はテトラ−(メタ)アクリレートから選択される1種又は複数のモノマーを含む、請求項7に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
前記モノマーが、モノ(メタ)アクリレートから選択される、請求項7に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
前記ポリマー前駆体が、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートから選択される、少なくとも5重量%の1種又は複数のオリゴマーを含む、請求項7又は8に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
前記ポリマー前駆体が、少なくとも1種のオリゴマー及び少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項12】
本発明による積層体の製造方法であって、(i)請求項1に記載の難燃性組成物を準備するステップと、(ii)該難燃性組成物を、少なくともその一方がガラスである2枚の板の間に入れるステップと、(iii)該組成物を硬化させて、該板の間で中間層を構成するポリマーを形成するステップとを含む上記方法。
【請求項13】
請求項1に記載の難燃性組成物から得られた少なくとも1層の中間層を備える合わせガラス。

【公表番号】特表2011−530612(P2011−530612A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521552(P2011−521552)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060040
【国際公開番号】WO2010/015603
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】