説明

難燃性組成物

本発明は、ポリオレフィンポリマー、ナノシリケート、金属水酸化物、および、炭酸カルシウムを含む、難燃性組成物である。本発明はまた、前記難燃性組成物から製造された被覆、ならびに、電線またはケーブルに対しかかる被覆を施して製造した、電線・ケーブル構造物も含む。本発明はまた、前記難燃性組成物から製造した物品を含み、その例としては、押出シート類、熱成形シート類、射出成形物品類、コーティング布類、屋根材メンブレン類、および、壁紙類が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線・ケーブル用途に有用な、難燃性組成物に関する。本発明はまた、前記難燃性組成物から製造された電線・ケーブル構造物類(constructions)に関する。さらに、本発明の難燃性組成物は、押出または熱成形シート類、射出成形物品類、コーティング布類、建材(例えば、屋根材用メンブレン類、および、壁紙類)、ならびに自動車向けのような、難燃性を要する用途に一般的に有用である。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車、船舶、建築物、および、工場のような密閉空間内で用いるケーブル類は、難燃性であることが必要とされる。ケーブルの難燃性能は、多くの場合、ケーブル絶縁体または外被を、難燃性添加剤とポリマー性材料のブレンドより製造することによって得られる。
【0003】
難燃性添加剤、および、それをポリマーと共に用いる手順の例は、Menachem Lewis & Edward D. Weil, Mechanisms and Modes of Action in Flame Retardancy of Polymers, in FIRE RETARDANT MATERIALS 31-68 (A. R. Horrocks & D. Price eds. , 2001)、および、Edward D. Weil, Synergists, Adjuvants, and Antagonists in Flame-Retardant Systems, in FIRE RETARDANCY OF POLYMERIC MATERIALS 115-145 (A. Grand and C. Wilke eds.,2000)に記載されている。
【0004】
ポリオレフィン系組成物に用いられる難燃剤としては、金属水酸化物およびハロゲン化合物が挙げられる。有用な金属水酸化物としては、水酸化マグネシウムおよびアルミニウムトリヒドロキシドが挙げられ、有用なハロゲン化合物としては、デカブロモジフェニルオキシドが挙げられる。
【0005】
難燃剤から製造されるか、それらを含むポリマー性組成物の燃焼を抑制する1つ以上の作用によって、難燃剤が機能するのに対して、金属水酸化物は、燃焼中の熱によって吸熱反応的に水分を遊離する。ポリオレフィン系組成物に用いる場合、望ましくないことに、金属水酸化物類は加工温度が上昇すると水分を遊離し、それによって絶縁または被覆層の製造および押出に悪影響を及ぼすことがある。重要なことには、このような水分の遊離はまた組成物の発泡をも引き起こし、その結果表面の荒れや、絶縁層もしくは被覆層中の間隙を生じたりすることがある。
【0006】
ポリオレフィン系組成物中の難燃剤の量は、組成物の難燃性能に直接影響しうるため、多くの場合、組成物中に高レベルの難燃性添加剤を用いることが必要である。例えば、電線・ケーブル組成物は、65重量パーセントもの無機充填剤または25重量パーセントものハロゲン化添加剤を含む場合がある。望ましくないことに、高レベルの難燃性添加剤を用いると、費用が高くなり、組成物の加工性が低下するだけではなく、絶縁層または被覆層の電気的、物理的、および機械的特性を低下させることがある。従って、難燃性能に対する費用、加工特性、および、他の特性のバランスを取ることが必要な場合がある。
【0007】
EP0370517B1、EP1052534A1、WO00/52712、WO00/66657、WO00/68312およびWO01/05880は、様々なクレーおよび他の層状シリケート類を用い、種々のポリマー類の燃焼特性を改善することを記載する。これらの参考文献には、一般的に不活性充填剤炭酸カルシウムと共に用い、最大50重量パーセントの難燃性金属水酸化物に置き換えることを教示したものはない。米国特許第4,826,899号は、熱可塑性マルチ−ブロックコポリエステル(multi-block copolyester)組成物中で、炭酸カルシウムと共に用い、最大50重量パーセントの酸化アルミニウム三水和物に置き換えることを記載するが、その発明者らは、組成物がまた最低でも12重量パーセントの水酸化マグネシウムおよび臭化物難燃剤を含むことも要求している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
望ましい難燃特性を維持しながら、従来の組成物よりも望ましい加工特性および費用面での優位性を有する、ポリオレフィン系難燃性組成物が必要とされている。さらに詳細には、炭酸カルシウムの最大含有量が、金属水酸化物成分の総量である、ポリオレフィン系難燃性ケーブル組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリオレフィンポリマー、ナノシリケート、金属水酸化物、および、炭酸カルシウムを含む、難燃性組成物である。本発明はまた、前記難燃性組成物から製造されたコーティング、ならびに、電線またはケーブルに対しかかる被覆を施して製造した、電線・ケーブル構造物も含む。本発明はまた、前記難燃性組成物から製造した物品を含み、その例としては、押出シート類、熱成形シート類、射出成形物品類、コーティング布類、屋根材メンブレン類、および、壁紙類が挙げられる。
【0010】
電線またはケーブルに対しこの被覆を施して製造可能な適切な電線・ケーブル構造物としては、(a)電話銅線、同軸ケーブル、および、中・低電圧電力ケーブルの絶縁および被覆、ならびに、(b)光ファイバーの緩衝剤(fiber optic buffer)およびコアチューブ類が挙げられる。適切な電線・ケーブル構造物の他の例は、ELECTRIC WIRE HANDBOOK (J. Gillett & M. Suba, eds., 1983) 、および、POWER AND COMMUNICATION CABLES THEORY AND APPLICATIONS (R. Bartnikas & K. Srivastava eds., 2000)に記載されている。加えて、適切な電線・ケーブル構造物のさらなる例は、当業者には容易に明白となるであろう。これらの構造物はいずれも、本発明の組成物を用いて有利に被覆可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の難燃性組成物は、ポリオレフィンポリマー、ならびに、有効量のナノシリケート、金属水酸化物、および、炭酸カルシウムを含む。適切なポリオレフィンポリマー類としては、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類、および、それらのブレンド類が挙げられる。
【0012】
本明細書で用いるエチレンポリマーの語は、エチレンのホモポリマー、または、エチレンと、エチレンよりは少量の、1種以上の3から12の炭素原子、および好適には4から8の炭素原子を有するアルファ−オレフィン、および場合によってジエン、とのコポリマー、または、そのようなホモポリマーおよびコポリマーの混合物もしくはブレンドである。混合物は、機械的ブレンドでもよいし、またはリアクター内ブレンド(in situ blend)でもよい。アルファ−オレフィン類の例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および、1−オクテンが挙げられる。ポリエチレンはまた、エチレンと、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、または、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル)のような不飽和エステルとのコポリマー、エチレンと、アクリル酸のような不飽和酸とのコポリマー、または、エチレンと、ビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン)とのコポリマーでもよい。
【0013】
ポリエチレンは均一性でも不均一性でもよい。通常、均一性ポリエチレンの多分散性(Mw/Mn)は1.5から3.5の範囲であり、そして、コモノマー分布は本質的に均一であり、このようなポリエチレンは示差走査熱量計で測定した融点が単一で、かつ比較的低いことにより特徴づけられる。不均一性ポリエチレンは通常、多分散性(Mw/Mn)が3.5より大きく、均一なコモノマー分布を有さない。Mwは重量平均分子量と定義され、Mnは数平均分子量と定義される。
【0014】
ポリエチレン類は、密度が0.860から0.960グラム/立方センチメートルの範囲、好適には密度が0.870から約0.955グラム/立方センチメートルの範囲をとりうる。これらのメルトインデックスは、0.1グラム/10分から50グラム/10分の範囲をとりうる。ポリエチレンがホモポリマーの場合、そのメルトインデックスは、好適には0.75から3グラム/10分である。メルトインデックスは、ASTM D−1238、条件Eに基づき、190℃および2160グラムの条件で測定する。
【0015】
ポリエチレンは、低圧または高圧プロセスで製造可能である。これらは気相法、または、液相法(すなわち溶液法またはスラリー法)で、従来の技術によって製造可能である。低圧プロセスは一般的に1000ポンド/平方インチ(psi)より低い圧力で行われるのに対して、高圧法は一般的に15,000psiを超える圧力で行われる。
【0016】
これらのポリエチレン類の製造に用いる一般的な触媒系としては、マグネシウム/チタニウム系触媒系、バナジウム系触媒系、クロム系触媒系、メタロセン触媒系、および、他の遷移金属触媒系が挙げられる。これらの触媒系の多くは、しばしばチーグラー・ナッタ触媒系、または、フィリップス触媒系と呼ばれる。有用な触媒系としては、シリカ−アルミナ支持体上のクロムまたはモリブデン酸化物を用いる触媒が挙げられる。
【0017】
有用なポリエチレン類としては、高圧法で製造された低密度のエチレンホモポリマー(HP−LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびメタロセンコポリマーが挙げられる。
【0018】
高圧法は、一般的には、フリーラジカルで開始される重合であり、管型反応器または攪拌付きオートクレーブ中で行われる。管型反応器においては、圧力は25,000から45,000psiの範囲内であり、温度は200から350℃の範囲内である。攪拌付きオートクレーブにおいては、圧力は10,000から30,000psiの範囲内であり、温度は175から250℃の範囲内である。
【0019】
エチレンと不飽和エステル類または酸類を含むコポリマー類は公知であり、従来の高圧法技術で製造可能である。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル類、メタクリル酸アルキル類、または、カルボン酸ビニル類であってもよい。アルキル基は、1から8の炭素原子を有していてもよく、好適には1から4の炭素原子を有する。カルボン酸エステル(carboxylate)基は、2から8の炭素原子を有していてもよく、好適には2から5の炭素原子を有する。エステルコモノマーに由来するコポリマーの部分は、コポリマーの重量を基準として5から50重量パーセントの範囲であってよく、好適には15から40重量パーセントの範囲である。アクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類の例は、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、および、アクリル酸2−エチルヘキシルである。カルボン酸ビニル類の例は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、および、ブタン酸ビニルである。不飽和酸類の例は、アクリル酸類またはマレイン酸類である。
【0020】
エチレン/不飽和エステルコポリマー類またはエチレン/不飽和酸コポリマー類のメルトインデックスは、0.5から50グラム/10分の範囲であってもよく、好適には2から25グラム/10分の範囲内である。
【0021】
また、エチレンとビニルシラン類のコポリマー類を用いてもよい。適切なシラン類の例は、ビニルトリメトキシシラン、および、ビニルトリエトキシシランである。このようなポリマー類は、一般的には高圧法を用いて製造する。水分架橋型組成物を所望の場合は、このようなエチレンビニルシランコポリマー類を用いることが望ましい。場合により、フリーラジカル開始剤の存在下でビニルシランによってグラフトされたポリエチレン(polyethylene grafted with a vinyl silane)を用いて、水分架橋型組成物を得ることも可能である。シラン含有ポリエチレンを用いる場合はまた、配合中に架橋触媒(例えば、ジブチルスズジアラウラート、または、ドデシルベンゼンスルホン酸)、または、他のルイスもしくはブレンステッド酸もしくは塩基触媒を含むことが望ましい場合がある。
【0022】
VLDPEまたはULDPEは、エチレンと、3から12の炭素原子、好適には3から8の炭素原子を有する1つ以上のアルファ−オレフィンのコポリマーであってもよい。VLDPEまたはULDPEの密度は、0.870から0.915グラム/立方センチメートルの範囲内であってもよい。VLDPEまたはULDPEのメルトインデックスは、0.1から20グラム/10分の範囲内であってもよく、好適には0.3から5グラム/10分の範囲内である。エチレン以外のコモノマーに由来するVLDPEまたはULDPEの割合は、コポリマーの重量を基準として、1から49重量パーセントの範囲であってよく、好適には15から40重量パーセントの範囲である。
【0023】
第3のコモノマーが含まれていてもよく、例えば、他のアルファ−オレフィン、または、エチリデン ノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、またはジシクロペンタジエンのようなジエンである。エチレン/プロピレンコポリマー類は一般的にEPR類とよばれ、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー類は一般的にEPDMとよばれる。第3のコモノマーは、コポリマーの重量を基準として1から15重量パーセントの量で存在していてもよく、好適には、1から10重量パーセントの量で存在する。コポリマーは、エチレンをいれて2または3つのコモノマーを含むことが望ましい。
【0024】
LLDPEは、VLDPE、ULDPEおよびMDPEを含んでもよく、それらもまた直鎖状であるが、しかし、一般的に0.916から0.925グラム/立方センチの範囲の密度を有する。それは、エチレン、および、3から12の炭素原子、好適には3から8の炭素原子を有する1つ以上のアルファ−オレフィンのコポリマーであってもよい。そのメルトインデックスは、1から20グラム/10分の範囲であってもよく、好適には3から8グラム/10分の範囲である。
【0025】
任意のポリプロピレンをこれらの組成物に用いてもよい。例としては、プロピレンのホモポリマー類、プロピレンと他のオレフィン類のコポリマー類、ならびに、プロピレン、エチレン、および、ジエン類(例えばノルボルナジエンおよびデカジエン)のターポリマー類が挙げられる。さらに、ポリプロピレン類を、EPRまたはEPDMのような他のポリマー類に分散したり、またはブレンドしてもよい。ポリプロピレン類の例は、POLYPROPYLENE HANDBOOK: POLYMERIZATION, CHARACTERIZATION, PROPERTIES, PROCESSING, APPLICATIONS 3-14,113-176 (E. Moore, Jr. ed., 1996)に記載されている。
【0026】
適切なポリプロピレン類は、TPE類、TPO類およびTPV類の構成成分であってもよい。これらのポリプロピレン含有TPE類、TPO類およびTPV類を、本出願中で用いることができる。
【0027】
ナノシリケートは、少なくとも1つの寸法(dimension)が0.9から200ナノメートル、好適には0.9から150ナノメートル、より好適には0.9から100ナノメートル、および最も好適には0.9から30ナノメートルの寸法範囲である。ナノシリケート類は、配合全体を基準とした組成物中の濃度が、0.1から15重量パーセントであるのが効果的である。
【0028】
好適には、前記ナノシリケート類は層状(layered)であり、例えば、モンモリロナイト、マガディアイト、フッ化合成マイカ、サポナイト、フラーヘクトライト(fluorhectorite)、ラポナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ヘクトライト、ベイデライト、バーミキュライト、カオリナイト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、ステベンサイト、パイロサイト(pyrosite)、ソーコナイト、および、ケニヤアイトのようなナノシリケート類が挙げられる。さらに好適な実施態様においては、本発明の層状ナノシリケート類は、モンモリロナイトまたはマガディアイトである。層状ナノシリケート類は、天然物でも合成物でもよい。
【0029】
ナノシリケートを有機カチオン含有化合物で処理することにより、ナノシリケートのカチオンの一部(例えばナトリウムイオン)を、有機カチオンと交換してもよい。あるいは、カチオンは水素イオン(プロトン)を含んでもよく、または、水素イオンと置き換えられてもよい。電線・ケーブル組成物において好適な交換カチオン類は、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、および、ポリアルキルアンモニウムである。適切なアンモニウム化合物の例は、ジメチルジ(水素化タロー(hydrogenated tallow))アンモニウムである。好適には、層状ナノシリケートとカチオン性コーティングの合計重量を基準として、15から50重量パーセントのカチオン性コーティングが存在する。最も好適な実施態様においては、層状ナノシリケートとカチオン性コーティングの合計重量を基準として、30重量パーセントより多いカチオン性コーティングが存在する。他の好適なアンモニウムコーティングは、オクタデシルアンモニウムである。
【0030】
本発明の組成物は、ポリオレフィンポリマーとナノシリケートの間の相溶性を改良するため、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤の例としては、シラン類、チタネート類、ジルコネート類、および、無水マレイン酸でグラフトされた種々のポリマー類が挙げられる。他のカップリング手法は、当業者には容易に明白となるであろうし、本発明の範囲内で参酌される。
【0031】
適切な金属水酸化物化合物としては、アンモニウムトリヒドロキシド(ATHまたは酸化アルミニウム三水和物としても知られる)および水酸化マグネシウム(マグネシウムジヒドロキシドとしても知られる)が挙げられる。他の難燃性金属水酸化物類は、当業者に公知である。これらの金属水酸化物類を用いることは、本発明の範囲内であると考えられる。
【0032】
炭酸カルシウムもまたこの分野でよく知られている。
【0033】
金属水酸化物および/または炭酸カルシウムの表面は、1つ以上の材料でコーティングされていてもよく、前記材料としてはシラン類、チタネート類、カルボン酸類、および、無水マレイン酸でグラフトされたポリマー類が挙げられる。適切なコーティングとしては、米国特許第6,500,882号に開示のものが挙げられる。平均粒径は、0.1マイクロメートル未満から、50マイクロメートルの範囲をとることができる。場合によって、金属水酸化物および/または炭酸カルシウムが、ナノスケールの粒径を有することが望ましいことがある。金属水酸化物および/または炭酸カルシウムは、天然物でも合成物でもよい。
【0034】
本発明の難燃性組成物は、他の難燃剤類を含んでいてもよい。他の適切な非ハロゲン性難燃剤としては、赤リン、シリカ、アルミナ、酸化チタン類、タルク、クレイ、有機改質クレイ、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、珪灰石、マイカ、シリコン樹脂類、リン酸エステル類、ヒンダードアミン安定剤類、アンモニウムオクタモリブデート、膨張性化合物類(intumescent compounds)、および、膨潤性グラファイト(expandable graphite)が挙げられる。適切なハロゲン化難燃剤としては、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、およびデクロランプラスが挙げられる。
【0035】
加えて、本発明の組成物は、酸化防止剤類、安定剤類、発泡剤類、カーボンブラック、顔料類、加工助剤類、過酸化物類、硬化促進剤類、ならびに、組成物中に存在しうる充填剤を処理する表面活性剤類のような、他の添加剤類を含んでもよい。さらに、組成物は熱可塑性であっても、架橋されていてもよい。
【0036】
好適な実施態様においては、本発明の難燃性組成物は、(a)エチレンポリマー類およびプロピレンポリマー類からなる群より選択される、ポリオレフィンポリマー、(b)モンモリロナイトおよびマガディアイトからなる群より選択される、層状ナノシリケート、(c)アルミニウムトリヒドロキシドおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される、金属水酸化物、ならびに、(d)炭酸カルシウムを含む。
【0037】
本発明の別の実施態様においては、本発明は難燃性組成物より製造される被覆である。
【0038】
本発明のさらに別の実施態様においては、適切な電線・ケーブル構造物を製造する種々の方法が検討されており、また、これらは当業者にとって容易に明白となるであろう。例えば、従来の押出プロセスを用いて、電線またはケーブルに対する被覆として難燃性組成物を適用することによって、難燃性電線・ケーブル構造物を製造してもよい。
【0039】
本発明の別の実施態様においては、本発明は難燃性組成物から製造された物品であって、ここで前記物品は、押出シート類、熱成形シート類、射出成形物品類、コーティング布類、屋根材用メンブレン類、および、壁紙類からなる群より選択される。これらの用途向けには、押出、熱成形、射出成形、カレンダー成形、およびブロー成形だけでなく、当業者に容易に明白となる他のプロセスをも含む種々のプロセスで、難燃性組成物を用いて物品を製造することが検討されている。
【実施例】
【0040】
以下は、本発明を説明する非制限的な実施例である。
【0041】
実施例1:ナノシリケートマスターバッチ
エチレン酢酸ビニルコポリマー中のモンモリロナイトマスターバッチを、250ml混合ボウルを備えたBrabender(商標)ミキサーを用いて製造した。ミキサーを、混合温度120℃、および、混合速度100RPMに設定した。ミキサーには、最初にDuPont Elvax 265(商標)エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA−1)、および、Irganox 1010FF(商標)テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナマート)]メタンを充填した。このエチレン酢酸ビニルコポリマーは、28重量パーセントの酢酸ビニルを含有し、メルトインデックスは3グラム/10分であった。混合物が完全に溶融した後、続いてミキサーに、30重量パーセントのオクタデシルアンモニウムで処理された、Nanocor,Inc.より市販のNanomer I.30P(商標)モンモリロナイトクレーを充填した。
【0042】
3つの成分は、EVA−1:モンモリロナイト:Irganox 1010FF(商標)テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナマート)]メタンが、重量比で49.80:50.00:0.20となるように加えた。成分を加えた後、混合を15分間継続した。
【0043】
実施例2〜44:比較試験片
実施例2〜44の準備として、250ml混合ボウルを備えたBrabender(商標)ミキサーをまた用いた。ミキサーを、混合温度110℃、および、混合速度80RPMに設定した。
【0044】
ミキサーには、最初にエチレン酢酸ビニルコポリマーおよび0.20重量パーセントのIrganox 1010FF(商標)テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナマート)]メタンを充填した。用いたエチレン酢酸ビニルコポリマーは、DuPont Elvax 260(商標)エチレン酢酸ビニルコポリマーであり、28重量パーセントの酢酸ビニルを含有し、メルトインデックスは6グラム/10分であった。
【0045】
EVA−2混合物が完全に溶融した後に、残りの成分を以下の割合で順次加えた。(1)ナノシリケートマスターバッチ、(2)金属水酸化物、(3)炭酸カルシウム、および、(4)10重量パーセントの、無水マレイン酸グラフトポリエチレン。続いて、混合を15分間継続した。
【0046】
金属水酸化物が水酸化マグネシウムの場合は、当該金属水酸化物は、BET法で測定した表面積が6.1m/gであり、平均粒径が0.8ミクロン(800ナノメートル)であり、そして、それを0.1重量パーセントのオレイン酸で表面処理した。金属水酸化物がアルミニウムトリヒドロキシドの場合は、当該金属水酸化物は、BET法で測定した表面積が5.2m/gであり、平均粒径が1.1ミクロン(1100ナノメートル)であった。
【0047】
炭酸カルシウムは摩砕され、BET法で測定した表面積が3m/gであり、平均粒径が3.5ミクロン(3500ナノメートル)であった。無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、0.3重量パーセントの無水マレイン酸でグラフトされた直鎖状低密度エチレン−ヘキセンコポリマーであり、メルトインデックスが3.2グラム/10分であり、密度が0.917グラム/ccであった。
【0048】
実施例2〜44では、ナノシリケート、金属水酸化物、および、炭酸カルシウム成分の合計が、全組成物の35重量パーセント、50重量パーセント、または65重量パーセントを構成する組成物を得た。
【0049】
続いて組成物をミキサーから除去し、UL−94垂直燃焼試験に適する試験片を製造した。試験結果を表I〜IIIに示す。
【0050】
UL−94試験においては、試験片に2回接炎し、それぞれの接炎後の燃焼時間を記録する。時間が短いほど性能がよい。UL−94試験の評価V0は最良の評価であり、燃焼中に燃焼物の落下がなく、材料が速やかに自己消火することを示す。
【0051】
試験片の厚みは125milであった、 1回目および2回目の接炎における各試験片の燃焼時間を秒で示し、スラッシュで区分する。表にスラッシュが表示されていない場合は、2回目の接炎が行われなかった。総有炎燃焼時間は、5つ未満のサンプルを燃焼させた場合を除き、5つのサンプル全ての1回目および2回目の燃焼時間を合計したものである。5つ未満のサンプルを燃焼させた場合は、総有炎燃焼時間は、1回目および2回目の燃焼時間を、燃焼させた全てのサンプルについて合計したものである。
【0052】
A.35パーセント試験片
実施例2〜7および8〜16は、成分が35重量パーセントの組成物を表す。35パーセント組成物から製造した試験片のうち、評価V0を達成したものはなかった。
【0053】
B.50パーセント試験片
実施例17〜21および22〜29は、成分が50重量パーセントの組成物を表す。50パーセント組成物から製造した試験片のうち、評価V0を達成したものはなかった。
【0054】
C.65パーセント試験片
実施例30〜35および36〜44は、成分が65重量パーセントの組成物を表す。実施例35および44に示すような、65重量パーセントの金属水酸化物のみを含む難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片は、評価V0を達成した。実施例42に示すような、65重量パーセントの炭酸カルシウムのみを含む難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片は、評価V0を達成できなかった。
【0055】
実施例33および41に示すような、62重量パーセントの金属水酸化物および3重量パーセントのナノシリケートを含む2成分の難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片もまた、評価V0を達成した。実施例31および38に示すような、59重量パーセントの金属水酸化物および6重量パーセントのナノシリケートを含む2成分の難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片もまた、評価V0を達成した。
【0056】
実施例39に示すような、62重量パーセントの炭酸カルシウムおよび3重量パーセントのナノシリケートを含む2成分の難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片は、評価V0を達成できなかった。実施例36に示すような、59重量パーセントの炭酸カルシウムおよび6重量パーセントのナノシリケートを含む2成分の難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片もまた、評価V0を達成できなかった。
【0057】
実施例34および43に示すような、32.5重量パーセントの金属水酸化物および32.5重量パーセントの炭酸カルシウムを含む2成分の難燃性添加剤混合物を含む組成物から製造した試験片は、評価V0を達成できなかった。
【0058】
特筆すべきことに、3成分の難燃性添加剤を以下の添加剤レベルで含む組成物から製造された試験片は、評価V0を達成した。(a)実施例30および37に示す、29.5重量パーセントの金属水酸化物、29.5重量パーセントの炭酸カルシウム、および、6重量パーセントのナノシリケート、ならびに、(b)実施例32および40に示す、31重量パーセントの金属水酸化物、31重量パーセントの炭酸カルシウム、および、3重量パーセントのナノシリケート。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリオレフィンポリマー、
b)ナノシリケート、
c)金属水酸化物、および、
d)炭酸カルシウム、
を含む、難燃性組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンポリマーが、エチレンポリマー類、および、プロピレンポリマー類からなる群より選択される、請求項1の難燃性組成物。
【請求項3】
前記ナノシリケートが、層状ナノシリケートである、請求項1の難燃性組成物。
【請求項4】
前記ナノシリケートが、0.1重量パーセントから15重量パーセントの間の量で存在する、請求項3の難燃性組成物。
【請求項5】
前記ナノシリケートが、モンモリロナイト、マガディアイト、フッ化合成マイカ、サポナイト、フルオロヘクトライト、ラポナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ヘクトライト、ベイデライト、バーミキュライト、カオリナイト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、ステベンサイト、パイロサイト、ソーコナイト、および、ケニヤアイトからなる群より選択される、請求項3の難燃性組成物。
【請求項6】
前記ナノシリケートが、モンモリロナイトおよびマガディアイトからなる群より選択される、請求項5の難燃性組成物。
【請求項7】
前記ナノシリケートが、有機カチオンで処理されている、請求項3の難燃性組成物。
【請求項8】
前記有機カチオンが、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、および、ポリアルキルアンモニウムからなる群より選択される、請求項7の難燃性組成物。
【請求項9】
前記金属水酸化物が、アルミニウムトリヒドロキシド、および、水酸化マグネシウムからなる群より選択される、請求項1の難燃性組成物。
【請求項10】
前記金属水酸化物の表面が、シラン類、チタネート類、ジルコネート類、カルボン酸類、および、無水マレイン酸グラフトポリマー類からなる群より選択される材料で被覆されている、請求項1の難燃性組成物。
【請求項11】
前記炭酸カルシウム類の表面が、シラン類、チタネート類、ジルコネート類、カルボン酸類、および、無水マレイン酸グラフトポリマー類からなる群より選択される材料で被覆されている、請求項1の難燃性組成物。
【請求項12】
請求項1の難燃性組成物より製造されるコーティング。
【請求項13】
電線またはケーブルに対して請求項12の被覆を施して製造される、難燃性電線またはケーブル構造物。
【請求項14】
請求項1の難燃性組成物から製造された物品であって、前記物品が、押出シート類、熱成形シート類、射出成形物品類、コーティング布類、屋根材用メンブレン類、および、壁紙類からなる群より選択される、物品。
【請求項15】
a)エチレンポリマー類およびプロピレンポリマー類からなる群より選択される、ポリオレフィンポリマー、
b)モンモリロナイトおよびマガディアイトからなる群より選択される、層状ナノシリケート、
c)アルミニウムトリヒドロキシドおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される、金属水酸化物、ならびに、
d)炭酸カルシウム、
を含む、難燃性組成物。
【請求項16】
請求項15の難燃性組成物より製造されるコーティング。
【請求項17】
電線またはケーブルに対して請求項16の被覆を施して製造された、難燃性電線またはケーブル構造物。
【請求項18】
請求項15の難燃性組成物から製造された物品であって、前記物品が、押出シート類、熱成形シート類、射出成形物品類、コーティング布類、屋根材用メンブレン類、および、壁紙類からなる群より選択される、物品。

【公表番号】特表2006−519895(P2006−519895A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503529(P2006−503529)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/004154
【国際公開番号】WO2004/074361
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(591123001)ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス・テクノロジー・コーポレイション (85)
【Fターム(参考)】