説明

電力供給補助装置、電力供給補助装置と通信する端末、および、端末用のプログラム

【課題】車載情報機器と車両外部の通信機器との間で通信を行う技術において、補機用バッテリから車載情報機器への電力供給を安定化させると共に、補機用バッテリの電圧低下も防止する。
【解決手段】制御部54と、高圧電力線21から受けた電源の電圧を変換して補機用バッテリ4に充電可能な電圧変換機51と、高圧電力線21に接続され、高圧電力線21を電力線搬送通信の通信回線として使用することで、車載情報機器3d〜3gまたは制御部54が高圧電力線21を介して車両10の外部の通信機器36と通信を行うことができるようにするPLCモデム52と、を備え、制御部54は、補機用バッテリ4の端子電圧を検出し、補機用バッテリ4が充電中でない状態で端子電圧が第1閾値を下回ると電圧変換機51を制御して補機用バッテリ4を充電し、充電されている状態で端子電圧が第2閾値を上回ると補機用バッテリ4への充電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給補助装置、電力供給補助装置と通信する端末、および、端末用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された車載情報機器と、車両外部の端末との間で通信を行う技術において、車載情報機器への電力供給を安定化させるため、車両の駐車中等に、車載バッテリの端子電圧を推定し、推定電圧が所定値よりも低い場合には、車両のエンジンを始動させて車載情報機器への電源供給を行うことが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の技術では、エンジン始動により一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物などの有害物質を排出すると共に近年世界的に削減目標設定している二酸化炭素を排出し地球環境にも悪影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
この問題に対処する技術として、特許文献2では、車両を外部の電源に接続し、車載情報機器への電力供給元を車載バッテリからこの外部電源に切り替える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−241095号公報
【特許文献2】特開2009−250853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような技術では、車載バッテリの低下を防止することはできない。したがって、仮に車載情報機器に安定的に電力供給して通信できていたとしても、何らかの原因で車載バッテリの端子電圧が低下してしまい、その結果、ユーザが車両に搭乗してエンジンを始動させようとしても、電圧低下のために始動できないといった事態が発生してしまう恐れがある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、車両に搭載された車載情報機器と、車両外部の通信機器との間で通信を行う技術において、車載情報機器への電力供給を安定化させると共に、車載バッテリの電圧低下も防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、モータの発生する動力を駆動動力として走行する車両(10)であって、前記モータに作動用の電力を供給する車両駆動用バッテリ(1)と、車載情報機器(3d〜3g)と、前記車載情報機器(3d〜3g)に作動用の電力を供給する補機用バッテリ(4)と、前記車両(10)の外部の電源から前記車両駆動用バッテリ(1)の充電のための電力供給を受けるための高圧電力線(21)と、前記補機用バッテリ(4)から前記車載情報機器(3d〜3g)に電力を供給するための低圧電力線(22)と、を備えた車両(10)に搭載される電力供給補助装置であって、制御部(54)と、前記制御部(54)の制御に従って、前記高圧電力線(21)から受けた前記外部の電源の電圧を変換して前記補機用バッテリ(4)に充電可能な電圧変換機(51)と、前記高圧電力線(21)に接続され、前記高圧電力線(21)を電力線搬送通信の通信回線として使用することで、前記車載情報機器(3d〜3g)または前記制御部(54)が前記高圧電力線(21)を介して前記車両(10)の外部の通信機器(36)と通信を行うことができるようにするPLCモデム(52)と、を備え、前記制御部(54)は、車両のACCがオフのとき、前記補機用バッテリ(4)の端子電圧を検出し、前記補機用バッテリ(4)が充電中でない状態で、検出した前記端子電圧が第1閾値を下回ると、前記電圧変換機(51)を制御して前記外部の電源で前記補機用バッテリ(4)を充電し、前記補機用バッテリ(4)が充電されている状態で、検出した前記端子電圧が第2閾値を上回ると、前記電圧変換機(51)を制御して前記補機用バッテリ(4)への充電を停止することを特徴とする電力供給補助装置である。
【0009】
このように、電圧変換機(51)は、車両駆動用バッテリ(1)の充電用の電力を流用して補機用バッテリ(4)を充電できるようになっており、制御部(54)は、補機用バッテリ(4)の端子電圧を検出し、検出した端子電圧に応じて、電圧変換機(51)から補機用バッテリ(4)への充電の有無を制御する。したがって、車両に搭載された車載情報機器(3d〜3g)と車両(10)の外部の通信機器(36)との間でPLCモデム(52)を介した通信を行う技術において、補機用バッテリ(4)から車載情報機器(3d〜3g)への電力供給を安定化させると共に、補機用バッテリ(4)の電圧低下も防止することができ、また、補機用バッテリ(4)の過充電も防止できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記電圧変換機(51)は、請求項1に記載の電力供給補助装置において、前記車載情報機器(3d〜3g)から送信された前記車両(10)の状態を示す車両情報を収集し、収集できた前記車両情報を、前記PLCモデム(52)および前記高圧電力線(21)を介して前記車両(10)の外部の通信機器(36)に送信することを特徴とする。
【0011】
このようになっていることで、車両(10)の外部の通信機器(36)側では、車両駆動用バッテリ(1)への充電が実行されている最中、車両(10)の状態をモニタリングすることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、電力会社の電力系統から電力供給を受けるようになっている屋内電力線(32)と、前記屋内電力線(32)に接続されるPLCモデム(35)が配置された建造物(30)内で用いられる端末であって、前記PLCモデム(35)および前記屋内電力線(32)を介して、車両駆動用バッテリ(1)の充電のために前記屋内電力線(32)に接続された車両(10)内の通信装置(54、3d〜3g)と通信することで、前記通信装置(54、3d〜3g)から送信された前記車両(10)の状態を示す車両情報を受信して表示する受信・表示制御手段と、前記通信装置(54、3d〜3g)との接続が途絶したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が途絶したと判定したことに基づいて、警告メッセージを出力させる警告手段と、を備えた端末である。
【0013】
このように、端末は、車両(10)が車両駆動用バッテリ(1)の充電のために屋内電力線(32)に接続されているとき、屋内電力線(32)を介して車両内の通信装置(54、3d〜3g)と通信し、その通信装置(54、3d〜3g)との接続が途絶したと判定した場合に、警告メッセージを表示する。したがって、単に通信装置(54、3d〜3g)との接続が正常でないことのみならず、充電が正常に行われていないことも、警告メッセージによって知ることができる可能性が高くなる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、電力会社の電力系統から電力供給を受けるようになっている屋内電力線(32)と、前記屋内電力線(32)に接続されるPLCモデム(35)が配置された建造物(30)内で用いられる端末に用いられるプログラムであって、
前記PLCモデム(35)および前記屋内電力線(32)を介して、前記屋内電力線(32)に接続された車両(10)内の通信装置(54、3d〜3g)と通信することで、前記通信装置(54、3d〜3g)から送信された前記車両(10)の状態を示す車両情報を受信して表示する受信・表示制御手段、前記通信装置(54、3d〜3g)との接続が途絶したか否かを判定する判定手段、および、前記判定手段が途絶したと判定したことに基づいて、警告メッセージを出力させる警告手段として、前記端末を機能させることを特徴とするプログラムである。このように、請求項3に係る発明の特徴は、プログラムとしても把握することができる。
【0015】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成図である。
【図2】電力供給補助装置の制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図3】電力供給補助装置の制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図4】ユーザ端末の制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図5】ユーザ端末の表示部における表示例を示す図である。
【図6】ナビゲーション装置等が実行する処理のフローチャートである。
【図7】ユーザ端末の表示部における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る通信システムの構成を示す。この通信システムは、車両10に搭載される車載システムと、建造物30に配置される建造物30側設備とから成る。
【0018】
車両10は、内燃機関であるエンジンの発生する動力と、車両駆動用の電気モータ(以下、単にモータという)の発生する動力とを駆動動力として走行するプラグインハイブリッド車両である。建造物30には、コンセント31、33が設置され、これらコンセント31、33には、電力会社の電力系統から家庭用電力の供給を受ける屋内電力線32が接続されている。
【0019】
車載システムは、車両駆動用バッテリ1、充電システム2、補機3a〜3g、補機用バッテリ4、電力供給補助装置5、プラグ20、高圧電力線21、低圧電力線22、ACC供給線23、通信線24、ACC信号線25を備えている。
【0020】
車両駆動用バッテリ1は、モータに作動用の電力を供給する二次電池としての電気走行用バッテリである。この車両駆動用バッテリ1は、エンジンの作動中は、エンジンの動力および減速時の車軸の回転トルクを電力に変換する発電機(図示せず)からの電力供給を受けて充電可能となっている。またこの車両駆動用バッテリ1は、充電システム2および高圧電力線21を介して車両10の外部の電力源から電力供給を受けることで充電可能となっている。
【0021】
充電システム2は、高圧電力線21に接続されており、プラグ20がコンセント31に接続されたときに、高圧電力線21を介して建造物30側から受けた家庭用電力(AC100V〜200V)を200V〜500Vの直流に変換し、変換後の直流を車両駆動用バッテリ1に出力することで、車両駆動用バッテリ1を充電する周知の装置である。この充電システム2は、車両駆動用バッテリ1の電圧の状態に応じ、車両駆動用バッテリ1への出力を調整する周知の機能を兼ね備えている。
【0022】
高圧電力線21は、車両10の外部の電源から車両駆動用バッテリ1の充電のための電力供給を受けるための電力線である。この高圧電力線21の一端に設けられているプラグ20をコンセント31に接続させることで、屋内電力線32から高圧電力線21を介し、高圧電力線21の他端に接続されている充電システム2に、家庭用電力を供給することができる。
【0023】
このような充電システム2および高圧電力線21の機能により、プラグ20をコンセント31に接続させることで、家庭用電力で車両駆動用バッテリ1を充電することができる。
【0024】
補機3a〜3gは、モータの車載の電気機器(車両負荷)であり、ヘッドランプ3a、車幅灯3b、ルームランプ3c、ナビゲーション装置3d、メーターECU3e、ボデーECU3f、エンジンECU3g等から成る。これら補機3a〜3gのうち、ナビゲーション装置3d、メーターECU3e、ボデーECU3f、エンジンECU3gのそれぞれを、車載情報機器という。
【0025】
車載情報機器3d〜3gは、車両10の状態を示す車両情報を取得し、また、取得した車両情報を送信することができるようになっている。例えば、ナビゲーション装置3dは車両駆動用バッテリ1の充電率(すなわちSOC)を検出するセンサ(図示せず)、車両駆動用バッテリ1が充電中か否かを検出するセンサ(図示せず)、補機用バッテリ4が充電中か否かを検出するセンサ(図示せず)からの検出信号に基づいて、車両駆動用バッテリ1の充電率、車両駆動用バッテリ1が充電中か否か、補機用バッテリ4が充電中か否か等の車両情報を取得し、取得した車両情報を定期的に送信するようになっている。また例えば、メーターECU3eは、車両の走行距離、燃費、ガソリン残量、車両ワーニング(半ドア警告、ヘッドランプ消し忘れ警告、車幅灯消し忘れ警告、室内灯消し忘れ警告、タイヤ空気圧警告、盗難警告等)の有無等の車両情報を周知の方法で取得し、取得した車両情報を定期的に送信するようになっている。また例えば、ボデーECU3fは、車両のヘッドランプ3aの点灯の有無、車幅灯3bの点灯の有無、ルームランプ3cの点灯の有無等の車両情報を周知の方法で取得し、取得した車両情報を定期的に送信するようになっている。
【0026】
補機用バッテリ4は、補機3a〜3gに電力を供給すると共に、エンジン始動時にエンジン始動用モータ(図示せず)に作動電力を供給する、二次電池としてのエンジン走行用バッテリである。補機用バッテリ4の正極と、これら補機3a〜3gとが、低圧電力線22を介して接続されている。したがって、低圧電力線22を介して補機用バッテリ4から車載情報機器3d〜3gに、作動用の電力が供給される。なお、補機用バッテリ4の通常時の端子電圧は、車両駆動用バッテリ1の通常時の端子電圧よりも低くなっている。
【0027】
電力供給補助装置5は、電圧変換機51、PLCモデム52、スイッチ53、および制御部54を備えている。
【0028】
電圧変換機51は、プラグ20がコンセント31に接続されたときに、プラグ20と電圧変換機51を接続する高圧電力線21から受けた家庭用電力(AC100V〜200V)を3.3V等の直流に変換して制御部54に出力する。制御部54に出力された直流により、制御部54は電力供給を受けて作動開始する。
【0029】
また電圧変換機51は、プラグ20がコンセント31に接続されたときに、補機用バッテリ4の端子電圧の状態に応じた制御部54の制御に従って、必要に応じて、高圧電力線21から受けた家庭用電力(AC100V〜200V)を15V等の直流に変換して低圧電力線22に出力することができる。低圧電力線22に出力された直流により、補機用バッテリ4への充電および補機3a〜3gへの電力供給が可能となる。このように、電圧変換機51は、車両駆動用バッテリ1の充電用の電力を流用して補機用バッテリ4を充電できるようになっている。またこの補機用バッテリ4は、エンジンの作動中は、エンジンの動力を電力に変換する発電機(図示せず)からの電力供給を受けて充電可能となっている。
【0030】
PLC(Power Line Communication;電力線搬送通信)モデム52は、高圧電力線21に接続され、高圧電力線21を電力線搬送通信の通信回線として使用する機器である。制御部54はこのPLCモデム52に接続され、PLCモデム52および高圧電力線21を介して車両10の外部の通信機器(具体的にはユーザ端末36)と通信を行うことができる。また、車両内の補機の一部である車載情報機器3d〜3g(ナビゲーション装置3d、メーターECU3e、ボデーECU3f、エンジンECU3g)のそれぞれは、通信線24を介してPLCモデム52と接続されており、このPLCモデム52を介して車両10の外部の通信機器(具体的にはユーザ端末36)と通信を行うことができる。
【0031】
スイッチ53は、制御部54の制御に従って、車両のACC信号線55をACC供給線23に接続させるオフ状態(端子53aと端子53bが接続された状態)と、低圧電力線22をACC供給線23に接続させるオン状態(端子53aと端子53cが接続された状態)とを相互に切り替えることができる。
【0032】
ACC供給線23は、車載情報機器3d〜3gのACC入力端子にACC信号を供給するための線であり、車載情報機器3d〜3gは、ACC入力端子に入力される電圧がオン(ハイ)になったこと等に基づいて起動するようになっている。
【0033】
ACC信号線25は、車両のACCスイッチがオンとなったときに電圧がオン(ハイ)となり、車両のACCスイッチがオフとなったときに電圧がオフ(ロー)となる。通常は、スイッチ53は、オフ状態に維持されているので、車両のACCスイッチがオンとなると共に車載情報機器3d〜3gのACC入力端子に入力される電圧がオンとなり、その結果車載情報機器3d〜3gが起動し、車両のACCスイッチがオフとなると共に車載情報機器3d〜3gのACC入力端子に入力される電圧がオフとなり、その結果車載情報機器3d〜3gが非作動状態となる。
【0034】
本実施形態では、車両のACCスイッチがオフのときも、必要に応じて車載情報機器3d〜3gを起動できるよう、スイッチ53をオン状態に切り替えることができるようになっている。
【0035】
制御部54は、CPU、RAM、ROM等を有する周知のマイクロコントローラであって、ROMに記録されているプログラムをCPUが実行することで、各種処理を実現する。その処理の際に、制御部54は、必要に応じて、低圧電力線22の電圧を検出し、電圧変換機51、スイッチ53、を制御し、また、PLCモデム52を介して車両10の外部の通信機器(具体的にはユーザ端末36)と通信を行うことができる。
【0036】
次に、建造物30の設備について更に説明する。建造物30には、上述のコンセント31、屋内電力線32、コンセント33に加え、PLCモデム35、ユーザ端末36が配置されている。
【0037】
PLCモデム35は、PLCモデム52と同等の機能を有する装置である。プラグ34がコンセント33に接続されることで、PLCモデム35が屋内電力線32と接続し、それによりPLCモデム35は、屋内電力線32を電力線搬送通信の通信回線として使用できるようになる。
【0038】
ユーザ端末36は、このPLCモデム35に接続され、PLCモデム35を介して建造物30の外部の通信機器(具体的には車両10内の制御部54、車載情報機器3d〜3g)と通信を行うことができる装置である。
【0039】
ユーザ端末36は、表示部36a、操作部36b、記憶部36c、および制御部36dを有している。表示部36aは、制御部36dの制御に従って文字または画像を表示する装置である。操作部36bは、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を制御部36dに出力する。記憶部36cは、不揮発性の記憶媒体である。制御部36dは、図示しないCPU、RAM、ROMを有する周知のマイクロコントローラであって、ROMに記録されているプログラムをCPUが実行することで、各種処理を実現する。
【0040】
次に、以上のような構成の通信システムの作動について説明する。まず、車両10の乗員が車両10のACCスイッチをオフにし、車両10から降り、車両10が駐車状態となったとする。そのとき、プラグ20がコンセント31に接続されると、屋内電力線32から、高圧電力線21に電力が供給され、充電システム2を介して車両駆動用バッテリ1が充電される。それと共に、制御部54が高圧電力線21、電圧変換機51を介して屋内電力線32から電力供給を受け、それによって起動する。起動した制御部54は、低圧電力線22の電圧(補機用バッテリ4の端子電圧と同等である)を繰り返し検出し始める。
【0041】
更に制御部54は、図2、図3に示す処理の実行を開始する。図2の処理は、補機用バッテリ4への充電の有無を制御するための処理であり、図3の処理は、車載情報機器3d〜3gおよびユーザ端末36との通信のための処理である。これらの処理は、同時並行的に実行される。
【0042】
なお、高圧電力線21から電圧変換機51、制御部54に電力が供給され始めて制御部54が起動した時点では、電圧変換機51は低圧電力線22に電力供給を行わないようになっており、また、スイッチ53はオフ状態になっている。
【0043】
図2の処理においては、制御部54が起動すると、補機用バッテリ4が充電中でない状態で、まずステップ120を実行する。ステップ120では、検出した補機用バッテリ4の端子電圧が第1閾値BL(例えば、12V)を下回っているか否かを判定し、下回っていない場合は、このステップ120の判定を繰り返す。
【0044】
第1閾値BLを下回っていると判定すると、続いてステップ130に進み、電圧変換機51を制御して電圧変換機51から低圧電力線22への直流の出力を開始することで、補機用バッテリ4を充電すると共に補機3d〜3gに作動用の電力を供給する。
【0045】
その後、補機用バッテリ4が充電されている状態で、検出した端子電圧が第2閾値BH(例えば、第1閾値BLよりも大きい14V)を上回るか否かを判定し、上回っていない場合は、このステップ140の判定を繰り返す。
【0046】
第2閾値BLを上回っていると判定すると、続いてステップ150に進み、電圧変換機51を制御して電圧変換機51から低圧電力線22への直流出力を停止することで、補機用バッテリ4への充電を停止すると共に補機3d〜3gへの電力供給を停止し、再度ステップ120に進む。
【0047】
ここで、第1閾値BLは、エンジンのスタータモータ(図示せず)を補機用バッテリ4の電力で作動させることができる程度に高い値となっている。
【0048】
エンジン回転時およびモータの回転による走行時に、オルタネータ(図示せず)が補機用バッテリ4を充電するが、このオルタネータも、図2と同様の処理で、補機用バッテリ4への充電の実行、非実行を制御している。オルタネータと制御部54で、第1閾値BLの値が同じであってもよいし、第2閾値BHの値も同じであってもよい。
【0049】
このように、制御部54は、補機用バッテリ4の端子電圧を検出し、検出した端子電圧に応じて、電圧変換機51から補機用バッテリ4への充電の有無を制御する。したがって、補機用バッテリ4から車載情報機器3d〜3gへの電力供給を安定化させると共に、車幅灯、ルームランプの消し忘れ等による予期せぬ補機用バッテリ4の電圧低下を防止すると共に、補機用バッテリ4過充電も防止することができる。
【0050】
次に、車載情報機器3d〜3gおよびユーザ端末36との通信のための図3の処理について説明する。起動した制御部54は、まずステップ210で、建造物30内のユーザ端末36において所定の通信アプリケーションが作動しているか否かを判定する。ユーザ端末36において所定の通信アプリケーションが作動しているか否かは、高圧電力線21、PLCモデム52を介して、所定のアプリ作動情報を受信しているか否かで判定する。
【0051】
ユーザ端末36の制御部36dは、図4に示す処理(所定の通信アプリケーションに相当する)を実行している最中、定期的にこのアプリ作動情報を送信するようになっている。したがって、所定のアプリ作動情報は、ユーザ端末36が所定の通信アプリケーションを実行していることを示す情報である。
【0052】
ユーザ端末36において所定の通信アプリケーションが作動していると判定した場合は、続いてステップ220で、スイッチ53をオン状態に設定する。これにより、補機用バッテリ4または電圧変換機51から、低圧電力線22およびACC供給線23に電圧が印加され、その結果、車載情報機器3d〜3gのACC入力端子がオンとなり、車載情報機器3d〜3gが起動する。起動した車載情報機器3d〜3gのそれぞれは、上述の通り車両情報を取得して制御部54宛に通信線24に送出する。するとそれら送信された車両情報は、PLCモデム52を介して制御部54で受信される。
【0053】
制御部54は、ステップ220の後、ステップ230で、所定の期間(例えば1秒)、車両情報を受信するのを待ち、受信した車両情報をRAM等に収集する。その際、制御部54が独自に取得した車両情報(例えば、車両駆動用バッテリ1のSOC、補機用バッテリ4の端子電圧)も収集する。そして、所定の期間の経過後、続いてステップ240に進み、直前のステップ230で収集した車両情報が1つでもあるか否かを判定し、なければステップ210に処理を戻し、あれば、続いてステップ250で、その収集した車両情報を、PLCモデム52を介してユーザ端末36に送信し、その後ステップ210に戻る。
【0054】
このようにすることで、PLCモデム35、屋内電力線32、高圧電力線21、PLCモデム52を介して制御部54とユーザ端末36が通信可能であり、かつ、ユーザ端末36が所定の通信アプリケーションを実行している間は、繰り返し定期的に制御部54からユーザ端末36に車両情報(ガソリン残量、タイヤ空気圧、ヘッドランプ3aの点灯の有無、車両駆動用バッテリ1のSOC、補機用バッテリ4の端子電圧等)が送信される。
【0055】
このようになっていることで、車両10の外部のユーザ端末36側では、後述する通り、車両駆動用バッテリ1への充電が実行されている最中、車両10の状態をモニタリングすることができる。
【0056】
なお、ユーザ端末36で所定の通信アプリケーションを実行していない場合、および、制御部54とユーザ端末36が通信不可能な場合、ステップ210では、ユーザ端末36において所定の通信アプリケーションが作動していないと判定し、続いてステップ260で、スイッチ53をオフ状態に設定する。すると、車載情報機器3d〜3gは作動を停止してオフ状態となる(ACCスイッチはオフであるとする)。
【0057】
このように、ユーザ端末36で所定の通信アプリケーションを実行しているという情報をユーザ端末36から受信している場合に限り、擬似的にACC信号を車載情報機器3d〜3g入力し、車載情報機器3d〜3gを作動させるので、車載情報機器3d〜3gによる無駄な電力消費を抑えることができる。
【0058】
次に、ユーザ端末36の制御部36dの作動について説明する。制御部36dは、制御部54から送信される車両情報を受信するために、図4に示す処理(所定の通信アプリケーションに相当する)を、実行するようになっている。なお、制御部36dは、操作部36bに対して建造物30内のユーザが所定の実行開始操作を行ったことに基づいて、図4に示す処理の実行を開始する。
【0059】
まずステップ310では、PLCモデム35を介して電力供給補助装置5の制御部54と接続しているか否かを判定する。具体的には、PLCモデム35を介して制御部54に対して問い合わせ信号(例えばPING)を送信し、制御部54から当該問い合わせ信号に対する応答を受信したか否かで、制御部54と接続しているか否かを判定する。なお、問い合わせの送信先のアドレス(すなわち、制御部54のアドレス)は、あらかじめ決められてユーザ端末36の記憶部36cに記録されているものを用いる。
【0060】
そして、制御部54と接続していると判定している間は、続いてステップ305に進み、上述のアプリ作動情報を制御部54に送信する。続いてステップ320では、所定の期間(例えば1秒)、車両情報を受信するのを待ち、受信した車両情報をRAM等に収集する。所定の期間が経過した後、続いてステップ330では、直前のステップ320で受信、収集した車両情報(例えば、ガソリン残量、タイヤ空気圧、ヘッドランプ3aの点灯の有無、車両駆動用バッテリ1のSOC、補機用バッテリ4の端子電圧、車両駆動用バッテリ1が充電中か否か、補機用バッテリ4が充電中か否)を、例えば図5に示すような形式で、表示部36aに表示させる。この際、電力供給補助装置5と接続している旨の表示41も行う。
【0061】
なお、図6の表示には、操作部36bを用いてユーザが選択可能なボタン42、43、44も表示する。続いてステップ340では、ユーザが操作部36bを用いてボタン42、43、44のいずれか1つを選択したか否かを判定する。1つも選択していないと判定すると、再度ステップ310に処理を戻す。
【0062】
したがって、ユーザ端末36が制御部54と接続しており、ユーザがボタン42、43、44のいずれも選択しない間は、ステップ310、315、320、330、340の処理が繰り返されることで、繰り返しアプリ作動情報が制御部54に送信されると共に、制御部54を繰り返し受信し、受信した最新の車両情報を表示部36aに表示させる。
【0063】
ただし、その繰り返しの間に、ユーザが選択可能なボタン42、43、44のいずれかを選択したとステップ340で判定すると、処理はステップ350に進み、選択されたボタンが終了ボタン44であるか否かを判定し、終了ボタン44であると判定すると、そのまま図4の処理を終了する。
【0064】
また、選択されたボタンが終了ボタン44でないと判定すると、続いてステップ360に進む。ステップ360では、選択されたボタンに対応したデータを記憶部36cから読み出し、読み出したデータを車載情報機器3d〜3gのうち、選択されたボタンに対応した車載情報機器に送信する。
【0065】
具体的には、ナビゲーション更新ボタン42が選択された場合は、あらかじめ記憶部36cに記憶しておいた新しいバージョンの地図データ(またはユーザ端末36においてあらかじめ編集して作成された経路案内データ)を読み出し、読み出した地図データを、PLCモデム35を介してナビゲーション装置3dに送信する。また、オーディオ更新ボタン43が選択された場合は、あらかじめ記憶部36cに記憶しておいた楽曲データを読み出し、読み出した楽曲データを、PLCモデム35を介してナビゲーション装置3dに送信する。なお、送信先のナビゲーション装置3dのアドレスは、あらかじめ決められてユーザ端末36の記憶部36cに記録されているものを用いる。
【0066】
これらを受信する側のナビゲーション装置3dは、図6に示すように、ユーザ端末36からデータを受信するのを待ち(ステップ410)、受信すると、受信したデータを記憶媒体に記録する。なお、ナビゲーション装置3dは、受信した地図データを用いて、地図表示、目的地までの誘導経路の算出、算出した誘導経路の案内等を行う。また、ナビゲーション装置3dは、車両10内の操作装置に対するユーザの再生操作に基づいて、受信した楽曲データを再生する。
【0067】
また、制御部36dは、図4のステップ310、315、320、330、340の繰り返しにおいて、ステップ310で、制御部54との接続していないと判定すると、続いてステップ380に進み、連続してステップ310で接続していないと判定している期間が所定のタイムアウト期間を経過したか否か(タイムアウトしたか否か)を判定し、タイムアウトしないうちは、再度ステップ310を実行する。接続が切れたままタイムアウトしたと判定すると、続いてステップ390に進み、表示部36に、図7に示すような警告メッセージを所定期間表示させ、その後、図4の処理を終了する。この警告メッセージは、電力供給補助装置5が接続されていない旨を通知するメッセージである。
【0068】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0069】
(1)上記実施形態のステップ330、390では、ユーザ端末36の表示部36aに警告メッセージを表示しているが、ユーザ端末36の音声出力装置(図示せず)を用いて警告メッセージの音声(例えばアラーム音)を出力するようになっていてもよい。あるいは、ユーザ端末36がインターネット等の広域ネットワークに接続できる場合は、その広域ネットワークを介して、ユーザのメールアドレス(あらかじめ登録済み)に警告メッセージ文を送信するようになっていてもよい。つまり、警告メッセージは、ユーザに伝わる方法なら、どのような方法で出力してもよい。そして、ユーザ端末36における警告メッセージの出力方法は、ユーザ端末36の操作部36cに対する設定操作によって設定可能となっていてもよい。
【0070】
(2)上記実施形態の図4の処理においては、ステップ380でタイムアウトしたと判定した場合に、図7に示すようなメッセージを表示しているが、ステップ310で電力供給補助装置5が接続していないと判定した時点で、図7のような表示を表示部36aに行わせ、ステップ380でタイムアウトしたと判定した場合に、ステップ390で警告メッセージの音声を出力させるようになっていてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、車載情報機器3d〜3gが送信した車両情報を制御部54が受信し、制御部54がそれら車両情報をユーザ端末36へ送信している。しかし、このように車載情報機器3d〜3gが取得した車両情報を制御部54が中継してユーザ端末36へ送信するようになっておらずともよく、例えば、車載情報機器3d〜3gの各々が制御部54を介さずユーザ端末36に送信するようになっていてもよい。
【0072】
(4)また、制御部54および車載情報機器3d〜3gで取得され、制御部54(または車載情報機器3d〜3g)からユーザ端末36に送信される車両情報としては、上記実施形態のようなものに限らず、走行距離、燃費、残燃料、充電状態、車両ワーニング(半ドア警報、ヘッドランプ消し忘れ警報、車幅灯消し忘れ警報、室内灯消し忘れ警報、タイヤ空気圧警報、盗難警報等)であってもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、第1閾値BHは第2閾値BLよりも値が小さかったが、第1閾値BHと第2閾値BLは同じ値であってもよい。
【0074】
(6)上記の実施形態において、制御部54、36dがプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車両駆動用バッテリ
2 充電システム
3a〜3g 補機
3d〜3g 車載情報機器
4 補機用バッテリ
5 電力供給補助装置
10 車両
21 高圧電力線
22 低圧電力線
23 ACC供給線
24 通信線
25 ACC信号線
32 屋内電力線
35 PLCモデム
36 ユーザ端末
51 電圧変換機
52 PLCモデム
53 スイッチ
54 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの発生する動力を駆動動力として走行する車両(10)であって、前記モータに作動用の電力を供給する車両駆動用バッテリ(1)と、車載情報機器(3d〜3g)と、前記車載情報機器(3d〜3g)に作動用の電力を供給する補機用バッテリ(4)と、前記車両(10)の外部の電源から前記車両駆動用バッテリ(1)の充電のための電力供給を受けるための高圧電力線(21)と、前記補機用バッテリ(4)から前記車載情報機器(3d〜3g)に電力を供給するための低圧電力線(22)と、を備えた車両(10)に搭載される電力供給補助装置であって、
制御部(54)と、
前記制御部(54)の制御に従って、前記高圧電力線(21)から受けた前記外部の電源の電圧を変換して前記補機用バッテリ(4)に充電可能な電圧変換機(51)と、
前記高圧電力線(21)に接続され、前記高圧電力線(21)を電力線搬送通信の通信回線として使用することで、前記車載情報機器(3d〜3g)または前記制御部(54)が前記高圧電力線(21)を介して前記車両(10)の外部の通信機器(36)と通信を行うことができるようにするPLCモデム(52)と、を備え、
前記制御部(54)は、車両のACCがオフのとき、前記補機用バッテリ(4)の端子電圧を検出し、前記補機用バッテリ(4)が充電中でない状態で、検出した前記端子電圧が第1閾値を下回ると、前記電圧変換機(51)を制御して前記外部の電源で前記補機用バッテリ(4)を充電し、前記補機用バッテリ(4)が充電されている状態で、検出した前記端子電圧が第2閾値を上回ると、前記電圧変換機(51)を制御して前記補機用バッテリ(4)への充電を停止することを特徴とする電力供給補助装置。
【請求項2】
前記電圧変換機(51)は、前記車載情報機器(3d〜3g)から送信された前記車両(10)の状態を示す車両情報を収集し、収集できた前記車両情報を、前記PLCモデム(52)および前記高圧電力線(21)を介して前記車両(10)の外部の通信機器(36)に送信することを特徴とする請求項1に記載の電力供給補助装置。
【請求項3】
電力会社の電力系統から電力供給を受けるようになっている屋内電力線(32)と、前記屋内電力線(32)に接続されるPLCモデム(35)が配置された建造物(30)内で用いられる端末であって、
前記PLCモデム(35)および前記屋内電力線(32)を介して、車両駆動用バッテリ(1)の充電のために前記屋内電力線(32)に接続された車両(10)内の通信装置(54、3d〜3g)と通信することで、前記通信装置(54、3d〜3g)から送信された前記車両(10)の状態を示す車両情報を受信して表示する受信・表示制御手段(320、330)と、
前記通信装置(54、3d〜3g)との接続が途絶したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が途絶したと判定したことに基づいて、警告メッセージを出力させる警告手段と、を備えた端末。
【請求項4】
電力会社の電力系統から電力供給を受けるようになっている屋内電力線(32)と、前記屋内電力線(32)に接続されるPLCモデム(35)が配置された建造物(30)内で用いられる端末に用いられるプログラムであって、
前記PLCモデム(35)および前記屋内電力線(32)を介して、前記屋内電力線(32)に接続された車両(10)内の通信装置(54、3d〜3g)と通信することで、前記通信装置(54、3d〜3g)から送信された前記車両(10)の状態を示す車両情報を受信して表示する受信・表示制御手段、
前記通信装置(54、3d〜3g)との接続が途絶したか否かを判定する判定手段、および、
前記判定手段が途絶したと判定したことに基づいて、警告メッセージを出力させる警告手段として、前記端末を機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110155(P2012−110155A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258075(P2010−258075)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】