説明

電力変換装置

【課題】各半導体モジュールの制御端子に接続した制御回路の誤動作を防止し、電源又は回転電機に対するパワー端子の接続組付性を向上させることができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、複数の半導体モジュール3を回路基板2に配列して、回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる。各半導体モジュール3は、その一方側に、電源又は回転電機に接続されるパワー端子33を配設すると共に、その他方側に、制御回路に接続される制御端子34を配設してなる。複数の半導体モジュール3は、回路基板2の一方の表面側における平面方向Fの一方側F1と他方側F2とに並列に並ぶ状態で配列してある。複数の半導体モジュール3は、回路基板2において、パワー端子33を回路基板2の平面方向Fにおける外側に向けると共に制御端子34を回路基板2の平面方向Fにおける内側に向けた状態で配列してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子によって回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車等に用いるモータジェネレータ等は、インバータ回路等の電力変換回路によって制御され、電力変換回路は、スイッチング素子をモールド樹脂によって覆って形成した複数の半導体モジュールを用いて構成されている。
例えば、特許文献1のインバータ装置においては、昇圧用のリアクトル、各相用スイッチングユニット、昇圧用スイッチングユニット、昇圧前平滑用コンデンサ、及び昇圧後平滑用コンデンサを含む複数の回路構成部品の中の一部を、冷却プレートの一方の面に当接させ、残りを冷却プレートの他方の面に当接させて配置している。そして、インバータ装置の各回路構成部品を効率的に冷却し、各回路構成部品を1つにまとめて効率的に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体モジュールにおいては、電源又は回転電機に接続されるパワー端子の他に、スイッチング素子の制御信号や、各種のセンサ信号等に用いる制御端子が設けられることが多い。この場合に、複数の半導体モジュールを回路基板に配列する際に何らの工夫を行わなければ、パワー端子と制御端子とが接近しているときには、パワー端子に流れる大電流によって、制御端子にノイズ電流が流れてしまうおそれが生じる。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、各半導体モジュールの制御端子に接続した制御回路の誤動作を防止し、電源又は回転電機に対するパワー端子の接続組付性を向上させることができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スイッチング素子をモールド樹脂によって覆って形成した複数の半導体モジュールを回路基板に配列してなり、上記スイッチング素子によって回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる電力変換装置において、
上記半導体モジュールは、その一方側に、電源又は上記回転電機に接続されるパワー端子を配設すると共に、その他方側に、制御回路に接続される制御端子を配設してなり、
上記複数の半導体モジュールは、上記回路基板の一方の表面側における平面方向の一方側と他方側とに並列に並ぶ状態で配列してあり、かつ上記パワー端子を上記回路基板の上記平面方向における外側に向けると共に上記制御端子を上記回路基板の上記平面方向における内側に向けた状態で配列してあることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【0007】
本発明の電力変換装置は、パワー端子と制御端子とを互いに反対側に配設してなる半導体モジュールを用い、回路基板に対する複数の半導体モジュールの配列の仕方に工夫を行っている。すなわち、複数の半導体モジュールは、回路基板の一方の表面側における平面方向の一方側と他方側とに並列に並ぶ状態で配列してある。そして、一方側及び他方側の両側における各半導体モジュールについて、各パワー端子を回路基板の平面方向における外側に向けると共に、各制御端子を回路基板の平面方向における内側に向けている。これにより、各半導体モジュールにおける制御端子同士が、回路基板の平面方向における内側において向き合い、各半導体モジュールにおけるパワー端子は、いずれも制御端子から最も離れる方向に向けることができる。
なお、平面方向とは、回路基板の表面側において、この表面に平行な二次元の平面の方向のことをいう。
【0008】
そのため、パワー端子に流れる大電流が、制御端子にノイズ電流として重畳してしまうことを抑制することができ、制御端子に接続した制御回路の誤動作を防止することができる。また、制御端子に比べて断面積が大きいパワー端子を、互いに反対の方向として平面方向における外側に向けることができ、電源又は回転電機に対するパワー端子の接続組付性を向上させることができる。
【0009】
それ故、本発明の電力変換装置によれば、各半導体モジュールの制御端子に接続した制御回路の誤動作を防止し、電源又は回転電機に対するパワー端子の接続組付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例において、電力変換装置における各半導体モジュールの平面配置状態を示す説明図。
【図2】実施例において、電力変換装置を示す図で、図1におけるA−A線矢視断面説明図。
【図3】実施例において、電力変換装置を示す図で、図1におけるB−B線矢視断面説明図。
【図4】実施例において、半導体モジュールの平面状態を示す説明図。
【図5】実施例において、電力変換回路の概略的な構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の電力変換装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記半導体モジュールにおいて、電源に接続されるパワー端子とは、電源に直接接続されることのみを意味せず、平滑コンデンサ等を介して電源に接続されることも意味する。例えば、電源の電圧を昇圧する昇圧回路を用いる場合には、パワー端子は、昇圧後の平滑コンデンサを介して電源に接続することができる。
【0012】
また、上記回路基板の上記平面方向の一方側に配列した複数の半導体モジュールの本体部と、上記回路基板の上記平面方向の他方側に配列した複数の半導体モジュールの本体部とは、上記回路基板の上記平面方向の一方側と他方側とに対称に配列してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、回路基板の一方の表面側に対して複数の半導体モジュールを効率よく整列させて配置することができ、電力変換装置をコンパクトに形成することができる。
なお、上記半導体モジュールの本体部とは、スイッチング素子をモールド樹脂によってモールド成形した部分のことをいい、上記パワー端子及び制御端子がモールド樹脂から引き出された部分を除く部分のことをいう。
【0013】
また、上記半導体モジュールにおける上記スイッチング素子は、2つの上記回転電機を別々に制御するために2つのブリッジ回路を構成しており、一方の回転電機を制御する第1ブリッジ回路を構成する半導体モジュールが、上記回路基板の上記平面方向の一方側に配列してあり、他方の回転電機を制御する第2ブリッジ回路を構成する半導体モジュールが、上記回路基板の上記平面方向の他方側に配列してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、電力変換装置によって2つの回転電機を制御する際に、制御回路の誤動作を防止及びパワー端子の接続組付性の向上を図ると共に、2つのブリッジ回路を構成する半導体モジュールを効率よく整列させて配置することができ、電力変換装置をコンパクトに形成することができる。
【0014】
また、上記電力変換回路は、上記回転電機を制御するインバータ回路と、該インバータ回路へ供給する電圧を昇圧する昇圧回路とからなり、上記インバータ回路を構成する上記半導体モジュールであるインバータ用モジュールは、上記第1ブリッジ回路と上記第2ブリッジ回路とを形成しており、上記昇圧回路を構成する上記半導体モジュールである昇圧用モジュールは、上記回路基板の上記平面方向の一方側において、上記第1ブリッジ回路を構成する上記インバータ用モジュールと並ぶ第1昇圧用モジュールと、上記回路基板の上記平面方向の他方側において、上記第2ブリッジ回路を構成する上記インバータ用モジュールと並ぶ第2昇圧用モジュールとからなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、電力変換装置において電源電圧の昇圧を行って2つの回転電機を制御する際に、回路基板の一方の表面側に対して、インバータ用モジュールと昇圧用モジュールとを効率よく整列させて配置することができ、電力変換装置をコンパクトに形成することができる。
【0015】
また、上記複数の半導体モジュールの両表面の少なくとも一方には、金属材料からなる筒形状のフレーム内に冷媒を通過させる冷媒通路を形成してなる冷却器が配置してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、冷却器によって、半導体モジュールから回路基板の側及びその反対側の少なくとも一方に向けて放出されるノイズを遮蔽することができ、電力変換装置における低ノイズ化をより効果的に図ることができる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の電力変換装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の電力変換装置1は、図1〜図3に示すごとく、スイッチング素子31をモールド樹脂32によって覆って形成した複数の半導体モジュール3を回路基板2に配列してなり、図5に示すごとく、スイッチング素子31によって回転電機5A、5Bを制御する電力変換回路6を形成してなる。同図に示すごとく、各半導体モジュール3は、その一方側に、昇圧後平滑コンデンサ64又は回転電機5A、5Bに接続されるパワー端子33を配設すると共に、その他方側に、スイッチング素子を駆動するドライブ回路やECU(電子制御ユニット)等の制御回路に接続される制御端子34を配設してなる。
図1に示すごとく、複数の半導体モジュール3は、回路基板2の一方の表面側Eにおける平面方向Fの一方側F1と他方側F2とに並列に並ぶ状態で配列してある。また、複数の半導体モジュール3は、回路基板2において、パワー端子33を回路基板2の平面方向Fにおける外側に向けると共に制御端子34を回路基板2の平面方向Fにおける内側に向けた状態で配列してある。ここで、平面方向Fとは、回路基板2の表面側Eにおいて、この表面に平行な二次元の平面の方向のことをいう。
【0017】
以下に、本例の電力変換装置1につき、図1〜図5を参照して詳説する。
図5に示すごとく、本例の電力変換装置1は、ハイブリッド自動車又は電気自動車において車両駆動用(車両走行用)の回転電機(モータジェネレータ)5A、5Bを制御するために用いる。本例の電力変換装置1は、自動車に配設した車両駆動用の2つの回転電機5A、5Bを制御するよう構成してある。
本例の電力変換回路6は、回転電機5A、5Bを制御するインバータ回路6Aと、インバータ回路6Aへ供給する電圧を昇圧する昇圧回路6Bとからなる。回路基板2の一方の表面側Eにおいては、インバータ回路6Aを構成する半導体モジュール3であるインバータ用モジュール3A、3Bと、昇圧回路6Bを構成する半導体モジュール3である昇圧用モジュール3C、3Dとが配列してある。回路基板2の一方の表面側Eにおいては、回路基板2の平面方向Fにおける一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3Aのスイッチング素子31によって、一方の回転電機5Aを制御する第1ブリッジ回路6A(1)が形成してあり、回路基板2の平面方向Fにおける他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3Bのスイッチング素子31によって、他方の回転電機5Bを制御する第2ブリッジ回路6A(2)が形成してある。
【0018】
電源61には、昇圧前平滑コンデンサ62が設けてあり、昇圧後のプラス側とマイナス側の配線の間には、昇圧後平滑コンデンサ64が設けてある。昇圧回路6Bは、リアクトル63及び昇圧用モジュール3C、3Dにおけるスイッチング素子31のスイッチング動作によって昇圧した電圧を、昇圧後平滑コンデンサ64によって平滑して蓄えるよう構成してある。
【0019】
図5に示すごとく、各半導体モジュール3(各インバータ用モジュール3A、3B及び各昇圧用モジュール3C、3D)は、還流ダイオード65を並列に接続し、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)から構成したスイッチング素子31を、2つ直列に接続して構成してある。なお、スイッチング素子31は、MOSFET(電界効果トランジスタ)等から構成することもできる。また、図4に示すごとく、各半導体モジュール3は、板形状に形成してあり、板形状の平面方向Fにおける一方側からパワー端子33を引き出し、他方側から制御端子34を引き出して形成してある。
【0020】
図4、図5に示すごとく、各半導体モジュール3は、パワー端子33として、一方のスイッチング素子31のコレクタ端子(又はドレイン端子)が昇圧後平滑コンデンサ64のプラス側に接続されるP端子と、他方のスイッチング素子31のエミッタ端子(又はソース端子)が昇圧後平滑コンデンサ64のマイナス側に接続されるN端子と、両方のスイッチング素子31同士の間からO端子(出力端子)とを有している。また、各半導体モジュール3は、制御端子34として、各スイッチング素子31のゲート端子にスイッチング信号を送信するための端子、スイッチング素子31に流れる電流を測定するための端子、スイッチング素子31の温度を測定するための端子等を有している。本例の半導体モジュール3においては、各スイッチング素子31について、5本ずつ制御端子34が形成されている。図4、図5において、各半導体モジュール3のO端子(出力端子)を記号Oで示し、P端子を記号Pで示し、N端子を記号Nで示す。
【0021】
図5に示すごとく、本例の昇圧回路6Bにおいては、2つの昇圧用モジュール3C、3Dを昇圧後平滑コンデンサ64に対して並列に接続して構成してある。図1に示すごとく、第1昇圧用モジュール3Cは、回路基板2の平面方向Fにおける一方側F1において、3つの第1インバータ用モジュール3Aと並んで配置してある。第2昇圧用モジュール3Dは、回路基板2の平面方向Fにおける他方側F2において、3つの第2インバータ用モジュール3Bと並んで配置してある。
そして、回路基板2の一方の表面側Eにおいては、平面方向Fの一方側F1において、3つの第1インバータ用モジュール3Aと1つの第1昇圧用モジュール3Cとが1列に整列して配設してあり、平面方向Fの他方側F2において、3つの第2インバータ用モジュール3Bと1つの第2昇圧用モジュール3Dとが1列に整列して配設してある。
【0022】
また、図1に示すごとく、回路基板2の一方の表面側Eにおいて、平面方向Fの一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3Aの本体部と、平面方向Fの他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3Bの本体部とは、回路基板2の一方の表面側Eにおける平面方向Fの一方側F1と他方側F2とに対称に配列してある。また、回路基板2の一方の表面側Eにおいて、平面方向Fの一方側F1に配置した1つの第1昇圧用モジュール3Cの本体部と、平面方向Fの他方側F2に配置した1つの第2昇圧用モジュール3Dの本体部とは、回路基板2の一方の表面側Eにおける平面方向Fの一方側F1と他方側F2とに対称に配列してある。
なお、各モジュール3A〜Dの本体部とは、スイッチング素子31をモールド樹脂32によってモールド成形した部分のことをいい、パワー端子33及び制御端子34がモールド樹脂32から引き出された部分を除く部分のことをいう。
【0023】
また、図2に示すごとく、回路基板2の一方の表面側Eにおいて、平面方向Fの一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3A及び1つの第1昇圧用モジュール3Cにおける各パワー端子33は、平面方向Fの一方側F1の外側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向とは反対側に屈曲している。一方、回路基板2の一方の表面側Eにおいて、平面方向Fの一方側F1に配列した3つの第1インバータ用モジュール3A及び1つの第1昇圧用モジュール3Cにおける各制御端子34は、平面方向Fの内側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向に屈曲している。
【0024】
また、回路基板2の一方の表面側Eにおいて、平面方向Fの他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3B及び1つの第2昇圧用モジュール3Dにおける各パワー端子33は、平面方向Fの他方側F2の外側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向とは反対側に屈曲している。一方、回路基板2の一方の表面側Eにおいて、平面方向Fの他方側F2に配列した3つの第2インバータ用モジュール3B及び1つの第2昇圧用モジュール3Dにおける各制御端子34は、平面方向Fの内側に向けて引き出され、回路基板2の配設方向に屈曲している。
そして、各パワー端子33は、昇圧後平滑コンデンサ64のプラス側もしくはマイナス側、又は回転電機5A、5Bのコイル(本例では3相のステータにおけるコイル)に、バスバー等を介して接続される。また、各半導体モジュール3における制御端子34は、回路基板2に配線される。
【0025】
図1に示すごとく、すべての半導体モジュール3の両表面には、アルミニウム材料からなる筒形状のフレーム内に冷媒を通過させる冷媒通路411を形成してなる冷却器41が配置してある。この冷却器41は、ラジエータからポンプによって送られる冷媒を通過させるよう構成されている。本例の冷却器41は、回路基板2の一方の表面側Eの平面方向Fにおける一方側F1に形成した部分と、回路基板2の一方の表面側Eの平面方向Fにおける他方側F2に形成した部分とを、一方側F1に配置した半導体モジュール3と他方側F2に配置した半導体モジュール3とが対向する対向方向に直交する方向の端部において接続して、U字形状に形成されている。
【0026】
図2、図3に示すごとく、本例の電力変換装置1は、すべての半導体モジュール3の両表面に冷却器41を配置してなるパワースタック30に対する一方の表面側Eには、回路基板2との間に板バネ42及びバックプレート43を積層して配置し、パワースタック30に対する他方の表面側には、支持部材44を積層して配置している。バックプレート43は、パワースタック30における冷却器41に対面配置し、板バネ42による局所的な弾性荷重を受ける。そして、板バネ42と支持部材44とを、支持部材44に形成した支柱442を介してビス等によって固定したときには、これらの間に配置するパワースタック30に、板バネ42による押圧荷重を作用させて、各半導体モジュール3に冷却器41を密着させる。また、支持部材44には、パワースタック30を配設した側と反対側に、コンデンサ62、64及びリアクトル63が配設してある。また、回路基板2と支持部材44とは、支持部材44に形成した支柱441を介してビス等によって固定される。
【0027】
本例の電力変換装置1は、パワー端子33と制御端子34とを互いに反対側に配設してなる半導体モジュール3を用い、回路基板2に対する複数の半導体モジュール3の配列の仕方に工夫を行っている。
具体的には、本例の複数の半導体モジュール3としてのインバータ用モジュール3A、3B及び昇圧用モジュール3C、3Dは、回路基板2の一方の表面側Eにおける一方側F1と他方側F2とに並列に並ぶ状態で、回路基板2の一方の表面側Eにおける平面方向Fの一方側F1と他方側F2とに対称に配列してある。そして、一方側F1及び他方側F2の両側におけるインバータ用モジュール3A、3B及び昇圧用モジュール3C、3Dについて、各パワー端子33を回路基板2の平面方向Fにおける外側に向けると共に、各制御端子34を回路基板2の平面方向Fにおける内側に向けている。
【0028】
これにより、各半導体モジュール3における制御端子34同士が、回路基板2の平面方向Fにおける内側において向き合い、各半導体モジュール3におけるパワー端子33は、いずれも制御端子34から最も離れる方向に向けることができる。
そのため、パワー端子33に流れる大電流が、制御端子34にノイズ電流として重畳してしまうことを抑制することができ、制御端子34に接続した制御回路の誤動作を防止することができる。また、制御端子34に比べて断面積が大きいパワー端子33を、互いに反対の方向として平面方向Fにおける外側に向けることができ、昇圧後平滑コンデンサ64又は回転電機5A、5Bに対するパワー端子33の接続組付性を向上させることができる。なお、このパワー端子33は、バスバー等を介して昇圧後平滑コンデンサ64又は回転電機5A、5Bに接続することができる。
【0029】
また、本例においては、電源61の電圧の昇圧を行って2つの回転電機5A、5Bを制御する際に、回路基板2の一方の表面側Eに対して、インバータ用モジュール3A、3Bと昇圧用モジュール3C、3Dとを効率よく整列させて配置することができ、電力変換装置1をコンパクトに形成することができる。
さらに、本例においては、冷却器41によって、半導体モジュール3から回路基板2の側及びその反対側に向けて放出されるノイズを遮蔽することができ、電力変換装置1における低ノイズ化をより効果的に図ることができる。
【0030】
それ故、本例の電力変換装置1によれば、各半導体モジュール3の制御端子34に接続した制御回路の誤動作を防止し、昇圧後平滑コンデンサ64又は回転電機5A、5Bに対するパワー端子33の接続組付性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 電力変換装置
2 回路基板
3 半導体モジュール
3A、3B インバータ用モジュール
3C、3D 昇圧用モジュール
31 スイッチング素子
33 パワー端子
34 制御端子
41 冷却器
5A、5B 回転電機
6 電力変換回路
6A インバータ回路
6B 昇圧回路
61 電源
E 一方の表面側
F 平面方向
F1 一方側
F2 他方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子をモールド樹脂によって覆って形成した複数の半導体モジュールを回路基板に配列してなり、上記スイッチング素子によって回転電機を制御する電力変換回路を形成してなる電力変換装置において、
上記半導体モジュールは、その一方側に、電源又は上記回転電機に接続されるパワー端子を配設すると共に、その他方側に、制御回路に接続される制御端子を配設してなり、
上記複数の半導体モジュールは、上記回路基板の一方の表面側における平面方向の一方側と他方側とに並列に並ぶ状態で配列してあり、かつ上記パワー端子を上記回路基板の上記平面方向における外側に向けると共に上記制御端子を上記回路基板の上記平面方向における内側に向けた状態で配列してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、上記回路基板の上記平面方向の一方側に配列した複数の半導体モジュールの本体部と、上記回路基板の上記平面方向の他方側に配列した複数の半導体モジュールの本体部とは、上記回路基板の上記平面方向の一方側と他方側とに対称に配列してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記半導体モジュールにおける上記スイッチング素子は、2つの上記回転電機を別々に制御するために2つのブリッジ回路を構成しており、
一方の回転電機を制御する第1ブリッジ回路を構成する半導体モジュールが、上記回路基板の上記平面方向の一方側に配列してあり、
他方の回転電機を制御する第2ブリッジ回路を構成する半導体モジュールが、上記回路基板の上記平面方向の他方側に配列してあることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3において、上記電力変換回路は、上記回転電機を制御するインバータ回路と、該インバータ回路へ供給する電圧を昇圧する昇圧回路とからなり、
上記インバータ回路を構成する上記半導体モジュールであるインバータ用モジュールは、上記第1ブリッジ回路と上記第2ブリッジ回路とを形成しており、
上記昇圧回路を構成する上記半導体モジュールである昇圧用モジュールは、上記回路基板の上記平面方向の一方側において、上記第1ブリッジ回路を構成する上記インバータ用モジュールと並ぶ第1昇圧用モジュールと、上記回路基板の上記平面方向の他方側において、上記第2ブリッジ回路を構成する上記インバータ用モジュールと並ぶ第2昇圧用モジュールとからなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記複数の半導体モジュールの両表面の少なくとも一方には、金属材料からなる筒形状のフレーム内に冷媒を通過させる冷媒通路を形成してなる冷却器が配置してあることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172147(P2010−172147A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13925(P2009−13925)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】