説明

電動ハブユニット

【課題】本発明は、モータ部の回転不良を回避させるようにした電動ハブユニットを提供する。
【解決手段】電動ハブユニット1においては、遊星歯車機構6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とを仕切るように、軸線Lに対して垂直に配置された円板状の仕切板36が、モータケース10内で別部品として配置され、仕切板36は、遊星歯車23を支持する軸部26の遊端にネジ37により固定されている。遊星歯車機構6で発生した歯車21,22,23の摩耗粉が、遊星歯車機構6に塗布されたグリースと一緒に飛散しても、仕切板36によって、摩耗粉がロータ14やステータ13に付着し難く、摩耗粉の噛み込みによるモータ部3の回転不良を回避させることができる。また、モータケース10の開口部10a内に遊星歯車機構6が配置されているので、ハブ4に関しては、軸線L方向即ち車幅方向の長さを短くすることができ、ハブ4を薄型化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車(例えば、電動自転車、電動アシスト自転車、歩行介助車など)に利用される電動ハブユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2002−362467号公報がある。この公報に記載された電動ハブユニットは、コイル及びマグネットを収容したモータケーシングと、モータの周囲で車軸を中心に回転するハブと、モータの出力を減速させてハブに伝達する遊星歯車機構と、コイルへの通電を制御する回路基板と、を備えている。そして、遊星歯車機構は、モータケーシング内に収容され、回路基板は、モータケーシングの外壁に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−362467号公報
【特許文献2】特開2000−53068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の電動ハブユニットでは、遊星歯車機構で発生した歯車の摩耗粉がグリースと一緒に飛散すると、摩耗粉がコイルやマグネットに付着し易く、これによって、モータの回転不良が起こり易いといった問題点があった。
また、特開2000−53068号公報に開示された電動ハブユニットの回路基板は、モータのケーシング内に既に格納されているので、歯車の摩耗粉が回路基板に付着することはないが、このような構成は、回路基板上の電子部品がコイルから発生する熱の影響を受け易く、電子部品の寿命を縮めたり、電子部品に誤作動を発生させて、モータの回転不良の原因になる。
【0005】
本発明は、モータ部の回転不良を回避させるようにした電動ハブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車軸の軸線を中心に回転するハブ内に、モータ部が内蔵された電動ハブユニットにおいて、
ハブ内には、
モータケース内にロータ及びステータが収容されたモータ部と、
ロータの回転を減速してハブに伝達する減速歯車部と、
ロータの回転を制御する回路基板と、を備え、
モータケースの軸線方向における一端部には、軸線を中心としたリング状の開口部が形成され、開口部内には減速歯車部が配置され、モータケースの軸線方向における他端部とハブとの間に回路基板が配置され、モータケース内には、減速歯車部とモータ部内のロータ及びステータとを仕切る仕切板が配置されていることを特徴とする。
【0007】
この電動ハブユニットにおいては、モータケースによって減速歯車部と回路基板とが分離され、仕切板によって減速歯車部とモータ部のロータ及びステータとが分離されている。また、モータケースの開口部内に減速歯車部が配置されているので、ハブに関しては、軸線方向即ち車幅方向の長さを短くすることができ、ハブを薄型化させることができる。この薄型化の達成のために、減速歯車部をモータケース内に配置させた結果として、減速歯車部とモータ部のロータ及びステータとが接近し、歯車の摩耗粉の影響をロータ及びステータが受け易くなっているが、減速歯車部で発生した歯車の摩耗粉がグリースと一緒に飛散しても、仕切板によって摩耗粉がロータやステータに付着し難く、モータ部の回転不良を回避させることができる。更に、回路基板は、モータケース内に配置された減速歯車部から遠く離されて、モータケースの外に配置されているので、歯車の摩耗粉が極めて付着し難い。そして、回路基板は、モータケースによってコイルから隔てられているので、コイルから発生する熱は、モータケースによって回路基板に直接伝達し難く、回路基板上の電子部品の寿命低下や、電子部品の誤作動を防止することができる。
【0008】
また、減速歯車部は、遊星歯車機構からなり、減速歯車部の遊星歯車は、ハブの軸線方向における一端部からハブの内方に向けて、軸線方向に突出する軸部に回転自在に取り付けられ、遊星歯車は、ハブの一端部と仕切板との間に配置され、仕切板は、軸部の遊端にネジにより固定されていると好適である。
ハブから突出して遊星歯車の回転を支持する軸部を有効に利用することで、仕切板をネジによって簡単に固定させることができる。そして、仕切板をハブに固定すると、ハブ内にモータ部を組み付ける際に遊星歯車が落下することがないので、組立て作業性が良好になる。また、電動ハブユニットの内部の分解掃除の際に、ネジの採用によって仕切板を容易に外すことができ、遊星歯車機構にグリースを注入し易い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータ部の回転不良を回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電動ハブユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示された電動ハブユニットの分解断面図である。
【図3】遊星歯車機構及び仕切板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る電動ハブユニットの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、電動ハブユニット1は、電動自転車、電動アシスト自転車、電動バイク、電動自動車などの車輪に利用される。この電動ハブユニット1は、車軸2が貫通したモータ部3と、車軸2を中心に回転するハブ4と、モータ部3の出力を減速させてハブ4に伝達する減速歯車部6と、モータ部3を制御する回路基板7と、車軸2に対してハブ4を回転自在に支持する左右一対の軸受部30,31と、を主たる構成部品として備えている。そして、ハブ4内には、モータ部3と減速歯車部6と回路基板7とが収容されている。
【0013】
モータ部3は、車軸2の軸線L方向における一端が開放されて他端に車軸2が固定されたモータケース10を有し、モータケース10の周囲でハブ4は回転するので、モータケース10の外周壁10bは、ハブ4から離間させられている。このようなモータケース10内には、コア11にコイル12が巻かれたステータ13と、ステータ13に対して回転するロータ14とを備えている。ステータ13は、樹脂によるモールド部M1によって封止され、ロータ14は、ステータ13より内側に位置する円筒状のマグネット16と、マグネット16と車軸2との間に介装されて、モータ部3が電気的にロックされてもハブ4の回転を可能にするスリップ制御手段17と、で構成されている。
【0014】
モータケース10の軸線L方向における一端部には、軸線Lを中心としたリング状の開口部10aが形成されている。この開口部10aは、モータケース10の平坦な端面の略全体に渡って形成され、開口部10a内には、減速歯車部としての遊星歯車機構6が配置されている。
【0015】
遊星歯車機構6は、ロータ14の一部として構成されると共に、開口部10aの位置で車軸2の周囲を回転する太陽歯車21と、開口部10aの位置でモータケース10の外周壁10bの端部に形成された内歯車22と、キャリアとして機能するハブ4に軸支されると共に、太陽歯車21と内歯車22との間に配置されて、太陽歯車21及び内歯車22と噛合する4個の遊星歯車23と、を備えている(図3参照)。そして、各遊星歯車23は、ハブ4の軸線L方向における一端部からハブ4の内方に向けて軸線L方向に突出する軸部26に、軸受27を介して回転自在に取り付けられている。
【0016】
このような遊星歯車機構6では、ロータ14と一緒に太陽歯車21が回転し、太陽歯車21の周囲で遊星歯車23が公転することでハブ4が回転し、ロータ14の回転は減速されてハブ4に伝達される。そして、遊星歯車機構6は、偏平であるので、開口部10aを塞ぐように配置させることができ、ハブ4の薄型化に寄与している。
【0017】
ドラム状のハブ4は、カップ形状をなすハブ本体部4Aと、ハブ本体部4Aの開口端4aを閉鎖する偏平なカバー部4Bとからなる。ハブ本体部4Aに形成されたフランジ部4eと、カバー部4Bに形成されたフランジ部4bとを突き合わせた状態で、ネジ28により、ハブ本体部4Aとカバー部4Bとが一体化されている。そして、ハブ本体部4Aとカバー部4Bとの重なり部分には、リング状のシールゴム29が介装されている。
【0018】
さらに、軸線L方向において、ハブ本体部4Aの端部に形成された車軸突出孔4cには、車軸2に対するハブ4の回転を支持するための転がり軸受からなる第1の軸受部30が装着され、カバー部4Bの端部に形成された車軸突出孔4dには、車軸2に対するハブ4の回転を支持するための転がり軸受からなる第2の軸受部31が装着されている。そして、車軸2の一端部には、第1の軸受部30を保持する第1のナット部32が螺着され、第1の軸受部30の外輪30aがハブ4のハブ本体部4Aに当接し、第1の軸受部30の内輪30bが第1のナット部32に当接することで、第1の軸受部30の脱落を防止している。同様に、車軸2の他端部には、第2の軸受部31を保持する第2のナット部33が螺着され、第2の軸受部31の外輪31aがハブ4のカバー部4Bに当接し、第2の軸受部31の内輪31bが第2のナット部33に当接することで、第2の軸受部31の脱落を防止している。
【0019】
カバー部4Bとモータケース10の端壁10cと第2の軸受部31とで画成された空間内に円板状の回路基板7が配置され、電子部品が実装された回路基板7は、樹脂によるモールド部M2によって封止されている。この回路基板7の中央開口7a内には、モータケース10の端壁10cから車軸2に沿って突出する突起部10dが挿入され、回路基板7は、モータケース10の端壁10cに接近され且つ平行に配置されている。そして、回路基板7に結線された配線34は、第2の軸受部31の内輪31bを貫通して外部に排出され、第2の軸受部31の内輪31bに形成された配線引出し孔35には、シール材39が充填されている。
【0020】
この電動ハブユニット1においては、遊星歯車機構(減速歯車部)6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とを仕切るように、軸線Lに対して垂直に配置された円板状の仕切板36が、モータケース10内で別部品として配置され、この仕切板36は、遊星歯車23を支持する軸部26の遊端に当接し、軸部26の雌ねじ部26aに螺着されたネジ37により固定されている。図3では、4カ所の軸部26全てにネジ37を螺着して仕切板36を固定したが、軸受27の脱落が防止できれば、軸部26と仕切板36との当接箇所全てで固定する必要はない。仕切板36の外周端は、モータケース10の外周壁10bに近接され、仕切板36の中央開口部36aには、車軸2が貫通し、中央開口部36aから太陽歯車21を突出させている。また、ネジ37は、緩み止めのためにワッシャ38を介して仕切板36に挿入されている。
【0021】
この仕切板36によって、減速歯車部6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とが分離され、モータケース10によって減速歯車部6と回路基板7とが分離されている。また、モータケース10の開口部10a内に減速歯車部6が配置されているので、ハブ4に関しては、軸線L方向即ち車幅方向の長さを短くすることができ、ハブ4を薄型化させることができる。
【0022】
この薄型化の達成のために、減速歯車部6をモータケース10内に配置させた結果として、減速歯車部6とモータ部3内のロータ14及びステータ13とが接近し、歯車21,22,23の摩耗粉の影響をロータ14及びステータ13が受け易くなっているが、減速歯車部6で発生した歯車21,22,23の摩耗粉が、減速歯車部6に塗布されたグリースと一緒に飛散しても、仕切板36によって、摩耗粉がロータ14やステータ13に付着し難く、摩耗粉の噛み込みによるモータ部3の回転不良を回避させることができる。更に、回路基板7は、モータケース10内に配置された減速歯車部6から遠く離されて、モータケース10の外に配置されているので、歯車21,22,23の摩耗粉が極めて付着し難い。そして、回路基板7は、モータケース10によってコイル12から隔てられているので、コイル12から発生する熱は、モータケース10によって回路基板7に伝達し難く、回路基板7上の電子部品の寿命低下や、電子部品の誤作動を防止することができる。
【0023】
そして、遊星歯車23の回転を支持する軸部26を有効に利用することで、仕切板36をネジ37によって簡単に固定させることができる。そして、仕切板36をハブ4に固定すると、ハブ4内にモータ部3を組み付ける際に遊星歯車23が落下することがないので、ハブ4のハブ本体4A内にモータ部3を組み込む際の作業性が良好になる。また、電動ハブユニット1の内部の分解掃除の際に、ネジ37の採用によって仕切板36を容易に外すことができる。
【0024】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、仕切板36は、軸部26の遊端に溶接やカシメ等により固定されてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…電動ハブユニット 2…車軸 3…モータ部 4…ハブ 6…減速歯車部(遊星歯車機構) 7…回路基板 10…モータケース 10a…開口部 13…ステータ 14…ロータ 23…遊星歯車 26…軸部 36…仕切板 37…ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸の軸線を中心に回転するハブ内に、モータ部が内蔵された電動ハブユニットにおいて、
前記ハブ内には、
モータケース内にロータ及びステータが収容された前記モータ部と、
前記ロータの回転を減速して前記ハブに伝達する減速歯車部と、
前記ロータの回転を制御する回路基板と、を備え、
前記モータケースの軸線方向における一端部には、前記軸線を中心としたリング状の開口部が形成され、前記開口部内には前記減速歯車部が配置され、前記モータケースの前記軸線方向における他端部と前記ハブとの間に前記回路基板が配置され、前記モータケース内には、前記減速歯車部と前記モータ部内の前記ロータ及び前記ステータとを仕切る仕切板が配置されていることを特徴とする電動ハブユニット。
【請求項2】
前記減速歯車部は、遊星歯車機構からなり、前記減速歯車部の遊星歯車は、前記ハブの軸線方向における一端部から前記ハブの内方に向けて、軸線方向に突出する軸部に回転自在に取り付けられ、
前記遊星歯車は、前記ハブの前記一端部と前記仕切板との間に配置され、前記仕切板は、前記軸部の遊端にネジにより固定されていることを特徴とする請求項1記載の電動ハブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−156911(P2011−156911A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18408(P2010−18408)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】