説明

電動バルブ装置の駆動制御方法

【課題】電動バルブ装置において、弁閉させる際のバルブの回転動作を制御することによりシート部材の摩耗を抑制する。
【解決手段】ボールバルブ34を弁閉状態とする場合、該ボールバルブ34の弁閉方向への回転角度が角度センサ60で検出され、バルブ検出角度がコントローラ12へと出力される。そして、コントローラ12において、バルブ検出角度に基づき、駆動源56に対して通電を行う通電開始タイミングと、その通電時間とが算出される。この通電開始タイミング及び通電時間で駆動源56に対して通電を行うことにより、駆動源56の駆動作用下にボールバルブ34の回転速度が低下し、該ボールバルブ34をバルブシート24に対して緩やかに着座させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部の駆動作用下にバルブを開閉させ、流路を流通する流体の流通状態を切り換える電動バルブ装置の駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流体の流通する流路に接続され、該流路の連通状態を弁体の回転作用下に切り換えて前記流体の流通状態を制御するバルブ装置が知られている。このようなバルブ装置は、例えば、流路を有した弁箱の内部に、断面U字状の弁体が回転自在に設けられ、該弁体が前記流路に設けられたシートリングの弾性体に当接することによって流路が閉塞され、一方、該弁体が前記弾性体から離間することによって前記流路が開口し、前記弁体との間を通じて流体が流通する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−161505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなバルブ装置を、例えば、アクチュエータ等の駆動手段によって弁体を回転させる電動式とした場合、一般的に、通電時に前記弁体をシートリングから離間させる方向に回転させ弁開状体とし、反対に、通電を停止した非通電時には、スプリング等の弾発部材の弾発力を利用し、前記弁体を反対方向に回転させ弁閉状態とする構成としている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るバルブ装置において、このような構成とした場合には、弁体が弾発力によって強制的に弁閉方向へと回転させられ、前記弁体とシートリングとの摺動抵抗によって接触部位の摩耗が進行し、それに伴って、弁閉時における流体の漏れが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、弁閉させる際のバルブの回転動作を制御することにより、シート部材の摩耗を抑制することが可能な電動バルブ装置の駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、流体の流通する通路を有したボディと、前記通路に配置され少なくとも外周面の一部が球面に形成された球面形状部を有し、該球面形状部の曲率中心から外れた軸線を有したシャフトを介して回動可能に設けられたバルブと、前記通路に設けられ前記バルブが着座するシート部材と、前記バルブを弁閉方向に付勢して前記シート部材に着座させる弾性部材と、通電によって前記バルブを弁開方向へと回動させる駆動部と、前記バルブの回転角度を検出する検出部とを備える電動バルブ装置の駆動制御方法において、
前記バルブが前記シート部材側に向かって回動する閉動作に移行したか否かを前記検出部で検出された検出角度に基づいて判断する工程と、
前記バルブの閉動作中において前記駆動部に対して通電を行う工程と、
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、バルブをシート部材側に向かって閉動作させる際、検出部で検出されたバルブの回動角度に基づいて、該バルブの閉動作への移行が確認された後、駆動部に対して通電を行うことによりバルブを弁開方向へと駆動力を付与する。すなわち、バルブに対して閉動作する際の回動方向とは反対方向の回転力を付与する。
【0009】
従って、閉動作中にあるバルブに対して弁開方向への駆動力を付与することによって前記バルブの回転速度を低下させることができるため、前記バルブがシート部材に対して着座する際の摺動抵抗を低減し、該シート部材の摩耗を抑制することができる。
【0010】
また、駆動部に対する通電時間、通電開始タイミングを算出する工程を備えるとよい。
【0011】
さらに、通電時間及び通電開始タイミングは、バルブが弁開状態から弁閉方向へと回動する際に検出される接触余裕角度に基づいて設定され、前記検出角度が、前記接触余裕角度と同じ若しくは大きい場合に駆動部に対する通電するとよい。
【0012】
さらにまた、通電時間及び通電開始タイミングは、バルブが弁開状態からシート部材に着座するまでの回動角度内に設定される接触余裕角度に基づいて設定されるとよい。
【0013】
また、検出角度を、バルブが閉動作に移行し始めた時点で検出された角度とするとよい。
【0014】
また、バルブの弁閉角度を、全閉時に検出されたバルブ角度に基づいて補正し、通電時間及び通電開始タイミングを、該補正された弁閉角度に基づいて補正するとよい。
【0015】
また、通電時間は、バルブが接触余裕角度に到達した時点から弁閉状態となるまでの時間とするとよい。
【0016】
さらに、バルブの回動速度を、該バルブがシート部材に接近するのに伴って徐々に低下させるとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
すなわち、バルブをシート部材側に向かって閉動作させる際、検出部で検出されたバルブの回動角度に基づいて、該バルブの閉動作への移行が確認された後、駆動部に対して通電を行うことによりバルブを弁開方向へと回動させることにより、前記バルブの回転速度を減速させ、前記バルブがシート部材に対して着座する際の摺動抵抗を低減することができるため、該シート部材の摩耗を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動バルブ装置の駆動制御方法を行う駆動制御システムの概略構成図である。
【図2】図1に示す電動バルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブの一部断面斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4Aは、図1の排気ガス再循環バルブの駆動制御方法を示すフローチャートであり、図4Bは、第2の実施の形態に係る電動バルブ装置の駆動制御方法を示すフローチャートであり、図4Cは、第3の実施の形態に係る電動バルブ装置の駆動制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る電動バルブ装置の駆動制御方法について、それを実施する電動バルブ装置との関連で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の第1の実施の形態に係る電動バルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ14を含む駆動制御システム10について、図1を参照しながら説明する。
【0022】
この駆動制御システム10は、図1に示されるように、車両(図示せず)に搭載されるコントローラ12(例えば、ECU)と、該コントローラ12から出力される制御信号に基づいてガスの流通状態を切り換える排気ガス再循環バルブ14とからなり、前記コントローラ12は、演算等を行う制御部16と、後述する各種データの収納されたメモリ18と、前記制御信号の出力するタイミングを計測するためのタイマー20とを含む。
【0023】
次に、上述した排気ガス再循環バルブ14の構成について図2及び図3を参照しながら説明する。
【0024】
排気ガス再循環バルブ14は、図2及び図3に示されるように、ボディ本体(ボディ)22と、該ボディ本体22の内部に回転自在に設けられるボールバルブ(バルブ)34と、前記ボールバルブ34の外周面に当接するバルブシート(シート部材)24と、前記ボディ本体22の上部に設けられ、前記ボールバルブ34に対して回転駆動力を付与する駆動力伝達機構26とを含む。
【0025】
このボディ本体22には、排気ガスの供給されるガス流入口28と、その反対側に設けられ、前記排気ガスを導出して内燃機関(図示せず)へと循環させるガス流出口30が設けられ、前記ガス流入口28とガス流出口30との間に設けられる連通室32には、略球状のボールバルブ34が回転自在に配設される。
【0026】
また、ボディ本体22には、連通室32とガス流入口28との間に装着孔36が形成され、該装着孔36にボールバルブ34の外周面に摺接するバルブシート24が設けられる。
【0027】
このバルブシート24は、連通室32側に形成されボールバルブ34の当接するシート部38を有すると共に、前記装着孔36において軸方向及び径方向に移動自在に設けられる。
【0028】
そして、バルブシート24は、装着孔36の連通室32側(矢印A1方向側)に設けられたリング状のストッパ40との間にスプリング42が介装され、該スプリング42によって前記バルブシート24がガス流入口28側(矢印A2方向)へと付勢されている。
【0029】
一方、ボディ本体22の略中央部には、図1に示されるように、連通室32から鉛直上方に向かって貫通したシャフト孔44が形成され、後述する駆動力伝達機構26の第2シャフト50が挿通される。
【0030】
ボールバルブ34は、その上部及び下部が平面状に形成され、前記上部及び下部を除いた部分の外周面は球面形状部46として構成されており、この球面形状部46の表面でバルブシート24に対して当接する。
【0031】
また、ボールバルブ34の下部には、第1シャフト48が連結され、一方、前記ボールバルブ34の上部には、第2シャフト50が連結されている。第1シャフト48は、ボディ本体22の下部に装着された軸受52aによって回転自在に支持されている。第2シャフト50は、前記ボディ本体22の上部に装着された軸受52bにより回転自在に支持されている。
【0032】
第1シャフト48及び第2シャフト50の軸線B1の位置は、図3に示されるように、ボールバルブ34における球面形状部46の曲率中心(ほぼ球状のボールバルブ34の場合、その中心)を通る軸線B2から偏心した位置に設定されている。このため、ボールバルブ34は、軸線B2から偏心した位置に設定された軸線B1を中心として回転(揺動)するように連通室32内に設置されている。
【0033】
駆動力伝達機構26は、ボールバルブ34の上部に連結される第2シャフト50と、前記第2シャフト50の上端部に連結されるバルブギア54と、ボディ本体22の上部に連結され、前記バルブギア54を介して前記第2シャフト50を回転駆動させる駆動源(駆動部)56と、前記第2シャフト50を介してボールバルブ34を弁閉方向へと回転させるリターンスプリング(弾性部材)58と、前記第2シャフト50の回転量(回転角度)を検出可能な角度センサ(検出部)60とを含む。なお、リターンスプリング58は、バルブギア54とボディ本体22との間に介装されたコイルスプリングからなり、前記バルブギア54を介して第2シャフト50に回転力が付与される。
【0034】
第2シャフト50は、バルブギア54の略中央部に挿通されてナット62を締め付けることによって固定されている。
【0035】
駆動源56は、コントローラ12に対して電気的に接続され、該コントローラ12からの制御信号に基づいて回転駆動するステッピングモータやロータリーアクチュエータからなる。そして、駆動源56の回転駆動力がリターンスプリング58の弾発力に抗してバルブギア54及び第2シャフト50へと伝達されることにより、第2シャフト50に連結されたボールバルブ34が軸線B1を中心としてボールバルブ34の弁開方向へと所定角度だけ回転動作する。
【0036】
一方、コントローラ12から駆動源56への通電が停止された際、該駆動源56の回転駆動力が滅勢されるため、第2シャフト50及びボールバルブ34がリターンスプリング58の弾発力によって前記とは反対方向に回転し、該ボールバルブ34がバルブシート24に着座した弁閉状態となる(図3参照)。
【0037】
角度センサ60は、例えば、エンコーダからなり、前記第2シャフト50及び駆動源56と同軸上に配置され、前記駆動源56及び第2シャフト50の回転量(回転角度)を検出する。そして、検出された第2シャフト50の回転量を検出信号としてコントローラ12へと出力し、例えば、メモリ18等にデータとして保存される。すなわち、角度センサ60によって第2シャフト50の回転量に基づいたボールバルブ34の回転角度(バルブ検出角度θ)が検出できる。
【0038】
本発明の第1の実施の形態に係る電動バルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ14は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図2及び図3に示されるように、ボールバルブ34がバルブシート24のシート部38に着座し、ガス流入口28とガス流出口30との間の流路が前記ボールバルブ34によって遮断された弁閉状態を初期位置として説明する。
【0039】
図3に示すようなバルブシート24の弁閉状態から、図2に示す駆動源56が駆動すると、該駆動源56の回転駆動力がバルブギア54を介して第2シャフト50へと伝達され、前記第2シャフト50に連結されたボールバルブ34がリターンスプリング58の弾発力に抗して軸線B2から偏心した位置に設定された軸線B1を中心として反時計回り(矢印C1方向)に所定角度だけ回転する。このように、偏心した軸線B1を中心にボールバルブ34が回転することにより、前記ボールバルブ34はバルブシート24から離間する方向に変位する。
【0040】
そして、駆動源56の駆動作用下にさらにボールバルブ34を回転させることにより、該ボールバルブ34がバルブシート24から徐々に離間し、前記ボールバルブ34が初期位置から、例えば、約90°回転した状態で完全な弁開状態(全開状態)となる(図3中、二点鎖線形状)。このような弁開状態において、ガス流入口28に供給されたガスが、バルブシート24の連通孔、連通室32を通じてガス流出口30へと流通し、図示しない内燃機関へと供給される。
【0041】
次に、上述したボールバルブ34の弁開状態から再び弁閉状態へと切り換える場合の駆動制御方法について、図4Aのフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下の説明では、コントローラ12からの制御信号に基づいて駆動源56が駆動してボールバルブ34の弁開状態(図3中、二点鎖線形状)を、該ボールバルブ34の角度が0°として説明する。
【0042】
先ず、車両に搭載された各種センサで検出されコントローラ12へと入力される検出結果に基づき、コントローラ12で内燃機関へのガスの供給を停止させる場合に、該コントローラ12から駆動源56に対してボールバルブ34を弁閉状態へと切り換える全閉信号が出力される。この全閉信号によってコントローラ12から駆動源56への通電が停止する(ステップS1)。これにより、駆動源56から第2シャフト50を介してボールバルブ34に付与されていた弁開方向(図3中、反時計回り、矢印C1方向)への回転力が滅勢される。
【0043】
これにより、リターンスプリング58の弾発力がバルブギア54を介して第2シャフト50へと付与され、該第2シャフト50及びボールバルブ34がバルブシート24側に向かって時計回り(矢印C2方向)へと回転し始める。
【0044】
この全閉信号が出力された後、角度センサ60によってボールバルブ34の弁開状態からの回転角度(バルブ検出角度θ)が検出され、このバルブ検出角度θがコントローラ12のメモリ18へと出力されて収納される(ステップS2)。すなわち、バルブ検出角度θは、ボールバルブ34の全開状態を0°とし、弁閉側(矢印C2方向)に所定角度だけ回転した角度となる。
【0045】
次に、ステップS2で検出されたバルブ検出角度θに基づいてメモリ18に予め収納されたデータから駆動源56に対して通電を行う通電開始タイミングTonと、その通電時間Tdとが算出される(ステップS3)。なお、このデータは、例えば、実験等によって予め計測されメモリ18に収納される。
【0046】
次に、ステップS4において、コントローラ12のタイマー20を起動させ、該タイマー20の起動時から現時点までの経過時間Tを計測し(ステップS5)、ステップS6において前記経過時間Tが、先に算出された通電開始タイミングTonに到達したか否かが判断される。この経過時間Tが、前記通電開始タイミングTonに到達したと判断されると(ステップS6中、YES)、コントローラ12から駆動源56に対して設定された通電時間Tdだけ通電がなされる(ステップS7)。
【0047】
これにより、駆動源56が第2シャフト50及びボールバルブ34に対して弁開方向(図3中、反時計回り)への回転力を付与するため、閉動作中にあるボールバルブ34のリターンスプリング58による時計方向(矢印C2方向)への回転力(弾発力)が若干だけ滅勢され、前記ボールバルブ34の回転速度が低下することとなる。その結果、バルブシート24に接近しているボールバルブ34を減速させた後、バルブシート24に対して緩やかな速度で摺動させながら弁閉状態とすることができる。そして、通電時間Tdが完了した後、駆動源56に対する通電が停止され、ボールバルブ34の駆動制御(弁閉制御)が完了する。
【0048】
なお、駆動源56から付与される弁開方向(矢印C1方向)への回転力は、弁閉方向(矢印C2方向)に付勢するリターンスプリング58の弾発力に対して小さくなるように設定される。また、駆動源56への制御信号によって回転力を一定ではなく徐々に大きくなるように設定することにより、ボールバルブ34の回転速度を通電時間Tdの経過に伴って徐々に減速させるようにしてもよい。このような駆動制御の場合には、ボールバルブ34のバルブシート24に対する摺動抵抗をより一層低減することができ、効果的に摩耗の抑制を図ることが可能となる。
【0049】
一方、ステップS5において、経過時間Tが通電開始タイミングTon未満である場合(T>Ton)には(ステップS6中、NO)、駆動源56への通電を行うことなく、該通電開始タイミングTonに到達するまで前記経過時間Tを計測し続ける。そして、経過時間Tが通電開始タイミングTonに到達した際、上述したステップS7へと進み、駆動源56に対してコントローラ12から通電時間Tdだけ通電がなされる。
【0050】
なお、上述したステップS1の全閉信号が出力される場合は、排気ガス再循環バルブ14が搭載された車両のイグニッションがオン状態からオフ状態へと切り換えられたイグニッションオフ時も含まれる。
【0051】
以上のように、第1の実施の形態に係る駆動制御方法では、ボールバルブ34を弁開状態から弁閉状態へと回転させる際、該ボールバルブ34の弁閉方向(図3中、矢印C2方向)への回転角度(バルブ検出角度θ)を角度センサ60で検出し、このバルブ検出角度θをコントローラ12へと出力することで、駆動源56に対して通電を行う通電開始タイミングTonと通電時間Tdとが算出される。
【0052】
この通電開始タイミングTon及び通電時間Tdに基づいて駆動源56へ通電を行うことにより、リターンスプリング58の弾発力に抗する反対方向(矢印C1方向)に回転駆動力を付与できるため、弁閉方向(矢印C2方向)に向かって回転しているボールバルブ34の回転速度を減速することが可能となる。その結果、ボールバルブ34をバルブシート24へと着座させる際、所定速度より緩やかな速度で摺動させることができるため、該バルブシート24のシート部38における摩耗を低減することが可能となる。
【0053】
すなわち、ボールバルブ34が弁閉する際の回転速度を、バルブシート24への接近に対応して減速させることによって前記ボールバルブ34とバルブシート24との摺動抵抗を軽減し、摩耗を抑制することが可能となる。
【0054】
また、駆動源56に対する通電時間Td、通電開始タイミングTonがバルブ検出角度θに基づいて設定されるため、最小限の通電でバルブシート24の摩耗を抑制することができ、その消費電力の抑制を図ることが可能である。
【0055】
次に、第2の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ14の駆動制御方法について、図4Bのフローチャートを参照しながら説明する。なお、この第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ14及び該排気ガス再循環バルブ14を駆動制御するための構成は同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0056】
この排気ガス再循環バルブ14の駆動制御方法では、ボールバルブ34が弁開状態から弁閉方向に向かって回転し、バルブシート24に対して接触(着座)する前の回転角度が接触余裕角度θαとして予め設定され、メモリ18に収納されている。詳細には、この接触余裕角度θαは、例えば、ボールバルブ34の全開状態(図3中、二点鎖線形状)を角度0°とした場合に、ボールバルブ34がバルブシート24に対して接触する回転角度θβに対して小さくなるように設定される(0<θα<θβ)。
【0057】
先ず、ステップS11において、コントローラ12から駆動源56に対してボールバルブ34を弁閉状態へと切り換える全閉信号が出力されると、該全閉信号に基づいてコントローラ12から駆動源56への通電が停止する。これにより、駆動源56から第2シャフト50を介してボールバルブ34に付与されていた弁開方向(図3中、反時計回り)への回転駆動力が滅勢される。
【0058】
これにより、リターンスプリング58の弾発力がバルブギア54を介して第2シャフト50へと付与され、該第2シャフト50及びボールバルブ34がバルブシート24側に向かって時計回り(図3中、矢印C2方向)へと回転し始める。
【0059】
この全閉信号が出力された後、角度センサ60によってボールバルブ34の弁開状態からの回転角度(バルブ検出角度θ)が検出され、このバルブ検出角度θがコントローラ12のメモリ18へと出力されて収納される(ステップS12)。
【0060】
そして、ステップS13では、コントローラ12において、ステップS12で検出されたバルブ検出角度θと、メモリ18に予め収納された接触余裕角度θαとの比較が行われ、該バルブ検出角度θが、前記接触余裕角度θαに対して大きい若しくは同等(θα≦θ)の場合(ステップS13中、YES)、前記接触余裕角度θαに基づいた通電開始タイミングTon及び通電時間Tdがメモリ18に収納されたデータから算出される(ステップS14)。
【0061】
次に、ステップS15でコントローラ12のタイマー20を起動させ、該タイマー20の起動時からの経過時間Tを計測し(ステップS16)、ステップS17において前記経過時間Tが、先に算出された通電開始タイミングTonに到達したか否かが判断される。
【0062】
この経過時間Tが、通電開始タイミングTonであると判断されると(ステップS17中、YES)、コントローラ12から駆動源56に対して設定された通電時間Tdだけ通電される(ステップS18)。
【0063】
これにより、駆動源56の駆動作用下にボールバルブ34に対して弁開方向(図3中、反時計回り)への回転力が付与され、それに伴って、リターンスプリング58による時計方向(矢印C2方向)への回転力(弾発力)が若干だけ滅勢される。その結果、ボールバルブ34の回転速度が低下し、該ボールバルブ34をバルブシート24に対して緩やかな速度で摺動させながら弁閉状態とすることができる。そして、通電時間Tdが完了した後、駆動源56に対する通電が停止され、ボールバルブ34の駆動制御が完了する。
【0064】
一方、ステップS13において、バルブ検出角度θが接触余裕角度θαに対して小さい場合(θα>θ)には、角度センサ60によってボールバルブ34の回転角度を検出し続け、前記バルブ検出角度θが前記接触余裕角度θαに対して大きい若しくは同等となった際に、ステップS14へと進む。
【0065】
また、ステップS17において、経過時間Tが通電開始タイミングTon未満である場合(T>Ton)には(ステップS17中、NO)、駆動源56への通電を行うことなく、該通電開始タイミングTonに到達するまで前記経過時間Tを計測し続け、前記経過時間Tが通電開始タイミングTonに到達した際、上述したステップS17、ステップS18へと進み、駆動源56に対してコントローラ12から通電時間Tdだけ通電がなされる。
【0066】
なお、上述したステップS11の全閉信号が出力される場合は、排気ガス再循環バルブ14が搭載された車両のイグニッションがオン状態からオフ状態へと切り換えられたイグニッションオフ時も含まれる。
【0067】
以上のように、第2の実施の形態に係る駆動制御方法では、ボールバルブ34がバルブシート24に対して接触(着座)する手前となる接触余裕角度θαを予め設定し、コントローラ12のメモリ18に収納しておくことにより、角度センサ60によって検出されるバルブ検出角度θが前記接触余裕角度θαに対して同等若しくは大きくなった場合に、駆動源56に対して所定の通電開始タイミングTon及び通電時間Tdで通電して駆動させ、ボールバルブ34の回転速度を減速させてバルブシート24に対して緩やかな速度で着座させることが可能となる。
【0068】
すなわち、ボールバルブ34の回転角度毎の通電開始タイミングTon、通電時間Tdのデータをメモリ18に収納している第1の実施の形態に係る駆動制御方法と比較し、メモリ18に予め収納しておくデータ量を抑制することができるため、例えば、少ない容量のメモリ18で対応することが可能となる。また、コントローラ12の負荷を軽減することも可能である。
【0069】
また、駆動源56に対する通電時間Td、通電開始タイミングTonが接触余裕角度θαに基づいて設定されるため、最小限の通電でバルブシート24の摩耗を抑制することができ、消費電力の抑制を図ることが可能である。
【0070】
次に、第3の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ14の駆動制御方法について、図4Cのフローチャートを参照しながら説明する。なお、この第3の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ14及び該排気ガス再循環バルブ14を駆動制御するための構成は同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0071】
この排気ガス再循環バルブ14の駆動制御方法では、第2の実施の形態に係る駆動制御方法と同様に、予め設定された接触余裕角度θαがメモリ18に収納されている。
【0072】
先ず、ステップS21において、コントローラ12から駆動源56に対してボールバルブ34を弁閉状態へと切り換える全閉信号が出力されると、該全閉信号に基づいてコントローラ12から駆動源56への通電が停止する。これにより、駆動源56から第2シャフト50を介してボールバルブ34に付与されていた弁開方向(図3中、反時計回り)への回転駆動力が滅勢される。これにより、リターンスプリング58の弾発力がバルブギア54を介して第2シャフト50へと付与され、該第2シャフト50及びボールバルブ34がバルブシート24側に向かって時計回り(矢印C2方向)へと回転し始める。
【0073】
この全閉信号が出力された後、角度センサ60によってボールバルブ34の全開状態からの回転角度が検出され、このバルブ検出角度θがコントローラ12のメモリ18へと出力されて収納される(ステップS22)。
【0074】
そして、ステップS23では、コントローラ12において、ステップS22で検出されたバルブ検出角度θと、メモリ18に予め収納された接触余裕角度θαとの比較が行われ、該バルブ検出角度θが、前記接触余裕角度θαに対して大きい若しくは同等(θα≦θ)の場合(ステップS23中、YES)、駆動源56に対して通電を行う(ステップS24)。これにより、駆動源56の駆動作用下にボールバルブ34に対して弁開方向(図3中、反時計回り)への回転力が付与され、それに伴って、リターンスプリング58による反時計方向(矢印C2方向)への回転力(弾発力)が若干だけ滅勢し、ボールバルブ34の回転速度を低下させた状態で回転動作させることができる。
【0075】
次に、角度センサ60によって検出されるバルブ検出角度θに基づいて、ステップS25においてボールバルブ34がバルブシート24に対して着座した弁閉状態であるか否かを判断する。そして、ボールバルブ34がバルブシート24に着座したこと、すなわち、バルブ検出角度θが90°であることが確認された後(ステップS25中、YES)、ステップS26へと進んで駆動源56に対する通電が停止されボールバルブ34の駆動制御が完了する。
【0076】
一方、ステップS23において、バルブ検出角度θが接触余裕角度θαに対して小さい場合(θα>θ)には、角度センサ60によってボールバルブ34の回転角度を検出し続け、前記バルブ検出角度θが前記接触余裕角度θαに対して大きい若しくは同等となった際に、ステップS24へと進む。
【0077】
また、ステップS25において、バルブ検出角度θに基づいてボールバルブ34がバルブシート24に着座していないと判断された場合には、該ボールバルブ34が着座するまで駆動源56に対する通電が継続され、バルブシート24に着座したことが確認されるとステップS26へと進んで通電が停止される。
【0078】
なお、上述したステップS21の全閉信号が出力される場合は、排気ガス再循環バルブ14が搭載された車両のイグニッションがオン状態からオフ状態へと切り換えられたイグニッションオフ時も含まれる。
【0079】
以上のように、第3の実施の形態に係る駆動制御方法では、ボールバルブ34がバルブシート24に対して接触(着座)する手前となる接触余裕角度θαを予め設定し、コントローラ12のメモリ18に収納しておくことにより、角度センサ60によって検出されるバルブ検出角度θが前記接触余裕角度θαに対して同等若しくは大きくなった場合に、ボールバルブ34がバルブシート24に対して着座するまでの間、駆動源56に対して通電し続けるため、前記ボールバルブ34の回転速度を減速させた状態でバルブシート24に対して緩やかに着座させることが可能となる。
【0080】
また、第1及び第2の実施の形態に係る駆動制御方法で設定していた駆動源56に対する通電開始タイミングTon及び通電時間Tdを算出する必要がないため、制御の簡素化を図ることができる。
【0081】
一方、上述したような電動バルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ14では、例えば、製造時における組付ばらつき等が原因で、弁閉状態におけるボールバルブ34が回転方向にずれていることがある。このような場合には、全閉信号が発せられ、第1〜第3の実施の形態に係る駆動制御方法のステップS21より後において、角度センサ60で前記ボールバルブ34の角度を検出し、そのバルブ検出角度θをコントローラ12へと出力し、制御部16において予め収納されたボールバルブ34の初期角度と前記バルブ検出角度θとの絶対値を算出する。なお、この初期角度とは、ボールバルブ34が組み付けられた際の弁閉時における角度である。
【0082】
この絶対値がボールバルブ34のずれであるため、初期角度に絶対値分を加えた補正角度を算出し、該補正角度に基づいてコントローラ12に収納されたバルブ検出角度θと通電時間Td、通電開始タイミングTonとの関係を補正する。そして、この補正されたデータに基づいてボールバルブ34を弁閉状態とする際の駆動制御を行うようにしてもよい。
【0083】
このような駆動制御方法を用いることにより、より適切な通電タイミング、通電時間によってボールバルブ34の全閉制御を行うことができ、前記ボールバルブ34とバルブシート24との摩耗の拡大を防止できる。
【0084】
なお、本発明に係る電動バルブ装置の駆動制御方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0085】
10…駆動制御システム 12…コントローラ
14…排気ガス再循環バルブ 16…制御部
18…メモリ 20…タイマー
22…ボディ本体 24…バルブシート
26…駆動力伝達機構 28…ガス流入口
30…ガス流出口 34…ボールバルブ
48…第1シャフト 50…第2シャフト
56…駆動源 58…リターンスプリング
60…角度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通する通路を有したボディと、前記通路に配置され少なくとも外周面の一部が球面に形成された球面形状部を有し、該球面形状部の曲率中心から外れた軸線を有したシャフトを介して回動可能に設けられたバルブと、前記通路に設けられ前記バルブが着座するシート部材と、前記バルブを弁閉方向に付勢して前記シート部材に着座させる弾性部材と、通電によって前記シャフト及びバルブを弁開方向へと回動させる駆動部と、前記バルブの回動角度を検出する検出部とを備える電動バルブ装置の駆動制御方法において、
前記バルブが前記シート部材側に向かって回動する閉動作に移行したか否かを前記検出部で検出された検出角度に基づいて判断する工程と、
前記バルブの閉動作中において前記駆動部に対して通電を行う工程と、
を有することを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の制御方法において、
前記駆動部に対する通電時間、通電開始タイミングを算出する工程を備えることを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項3】
請求項2記載の制御方法において、
前記通電時間及び通電開始タイミングは、前記バルブが弁開状態から弁閉方向へと回動する際に検出される検出角度に基づいて設定されることを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項4】
請求項2記載の制御方法において、
前記通電時間及び通電開始タイミングは、前記バルブが弁開状態から前記シート部材に着座するまでの回動角度内に設定される接触余裕角度に基づいて設定され、前記検出角度が、前記接触余裕角度と同じ若しくは大きい場合に前記駆動部に対する通電がなされることを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項5】
請求項3記載の制御方法において、
前記検出角度は、前記バルブが閉動作に移行し始めた時点で検出された角度であることを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記バルブの弁閉角度は、全閉時に検出されたバルブ角度に基づいて補正され、前記通電時間及び通電開始タイミングは、該補正された弁閉角度に基づいて補正されることを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項7】
請求項4記載の制御方法において、
前記通電時間は、前記バルブが前記接触余裕角度に到達した時点から弁閉状態となるまでの時間であることを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記バルブの回動速度は、該バルブが前記シート部材に接近するのに伴って徐々に低下することを特徴とする電動バルブ装置の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−215247(P2012−215247A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81211(P2011−81211)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】