説明

電動パワーステアリング装置

【課題】電動モータを駆動制御する制御ユニットを小型化するとともに、電気的接続を容易に行うことができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリングホイールに伝達された操舵トルクを、ステアリングシャフトを介して転舵輪に伝達するステアリング機構に対して操舵補助力を付与する電動モータ12と、該電動モータ12に内蔵されたレゾルバと、前記電動モータを駆動制御する制御ユニット20とを備え、前記制御ユニット20は、前記電動モータ12に形成された接続端子を有するモータ側端子台16に近接して配置し、且つ当該モータ側端子台に連接する制御ユニット側端子台24を形成し、前記モータ側端子台の接続端子及び前記制御ユニット側端子台の接続端子を電気的に接続し、前記モータ側端子台の接続端子及び前記制御ユニット側端子台の接続端子は、夫々3個の給電用端子と、4個のレゾルバ用端子とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシャフトに操舵補助力を付与する電動モータを制御ユニットで駆動制御するようにした電動パワーステアリング装置に関し、特に電動モータに内蔵したレゾルバと制御ユニットとの間の電気的接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動パワーステアリング装置としては、従来、電動モータのハウジングの上部に形成されたブラケットに電動モータの駆動を制御する制御装置が固定され、この制御装置内に、パワー本体及び制御本体を搭載し、周縁部に複数の溶接パッド部を形成した金属基板を設け、制御装置内で、金属基板と近接対向する位置に電動モータの巻線端子にネジ留めされるモータ端子を有する導電板と電動モータに内蔵された回転位置センサのコネクタに接続される6個のセンサ端子とを備えたフレームが配設され、このフレームのモータ端子及びセンサ端子の他端に形成されたモータ用パッド部及びセンサ用パッド部と、金属基板の各溶接パッド部とが両者間にパワー用金属片及び信号用金属片を溶接することにより電気的に接続された構成を有する電動パワーステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電動モータのハウジングの上部に形成されたブラケットに電動モータの駆動を制御する制御装置が固定され、この制御装置内に、パワー本体及び制御本体を搭載し、縁部付近に複数の溶接パッド部を形成した金属基板を設け、この金属基板の片側に3個のモータ用パッド部及び6個のセンサ用パッド部が形成された第1の端子台が配設され、この第1の端子台のモータ用パッド部及びセンサ用パッド部とこれらに対応する金属基板の溶接パッド部と間に金属片をレーザ溶接して電気的に接合し、第1の端子台のモータ用パッド部に接続されたモータ端子を電動モータの巻線端子にネジ留めするとともに、センサ用パッド部に接続されたセンサコネクタ部を電動モータに内蔵された回転位置出センサのコネクタ部と嵌合することにより、電動モータと制御装置とを電気的に接続するようにした電動パワーステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−294533号公報
【特許文献2】特開2008−100618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の従来例にあっては、制御装置と電動モータに内蔵された回転角検出センサの内で、金属基板の溶接パッド部と3個のモータ用パッド部及び6個のセンサ用パッド部との間を個別に金属片を溶接することにより電気的に接続し、モータ用パッド部に連結されたモータ端子を電動モータの巻線端子とをネジ留めし、センサパッド部を電動モータ内に配設された回転位置センサにコネクタ接続するようにしており、電動モータに内蔵された回転位置センサと制御装置の金属基板との電気的接続は、モータ端子に接続する給電ラインが3本であり、回転位置センサに接続する信号接続ラインが6本であり、電動モータと制御装置との間の電気的接続を、金属片をレーザ溶接することにより行う場合インタフェース(I/F)構造が大きくなるため、制御装置の外形が大きくなるとともに、電気的接続に時間が掛かるという未解決の課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電動モータに内蔵した回転位置センサと制御ユニットとの電気的接続を4本の接続ラインで行うことにより、制御ユニットの外形を小型化することができるとともに、電気的接続を短時間で行うことができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに伝達された操舵トルクを、ステアリングシャフトを介して転舵輪に伝達するステアリング機構に対して操舵補助力を付与する電動モータと、該電動モータに内蔵されたレゾルバと、前記電動モータを駆動制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、前記制御ユニットは、前記電動モータに形成された接続端子を有するモータ側端子台に近接して配置し、且つ当該モータ側端子台に連接する制御ユニット側端子台を形成し、前記モータ側端子台の接続端子及び前記制御ユニット側端子台の接続端子を電気的に接続し、前記モータ側端子台の接続端子及び前記制御ユニット側端子台の接続端子は、夫々3個の給電用端子と、4個のレゾルバ用端子とで構成されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の形態に係る電動パワーステアリング装置は、前記4個のレゾルバ用端子は、共通グランド端子と、レゾルバ励磁信号端子と、レゾルバ出力正弦波信号端子と、レゾルバ出力余弦波信号端子とで構成されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電動パワーステアリング装置は、前記制御ユニットは、レゾルバ励磁信号を形成するレゾルバ励磁信号形成回路と、レゾルバ出力正弦波信号を検出するレゾルバ正弦波信号検出回路と、レゾルバ出力余弦波信号を検出するレゾルバ余弦波信号検出回路と、前記レゾルバ正弦波信号検出回路及び前記レゾルバ余弦波信号検出回路の検出信号に基づいて回転位置を検出する回転位置演算部とを備えていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電動パワーステアリング装置は、前記モータ側端子台及び前記ユニット側端子台は、夫々露出されて対向しており、前記給電用端子及びレゾルバ用端子が平行配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動モータとこの電動モータを駆動制御する制御ユニットとの間の電気的接続を、モータ側端子台及びユニット側端子台に設けた3個の給電用端子と4個のレゾルバ用端子との計7個の端子で済むので、制御ユニットの外形を小型化することができるという効果が得られる。
また、モータ側端子台及びユニット側端子台を電動モータ及び制御ユニットから露出して設けることにより、両者間の導電性金属片の接続を容易に行うことができ、導電性金属片の接続を制御ユニット内で行う場合に比較して、制御ユニットをより小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】制御ユニットを装着した電動モータを示す斜視図である。
【図3】制御ユニットを装着した電動モータを示す正面図である。
【図4】電動モータと制御ユニットとの電気的接続部を拡大して示す拡大図である。
【図5】給電用導電性金属片及び信号用導電性金属片を示す斜視図である。
【図6】制御ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図7】制御ユニットのモータ角度検出回路の具体的構成を示す回路図であって、(a)はレゾルバ励磁回路、(b)はレゾルバ正弦波信号検出回路、(c)はレゾルバ余弦波信号検出回路である。
【図8】本発明の制御ユニットを装着した電動モータの他の例を示す斜視図である。
【図9】図8の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す概略構成図である。図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
【0012】
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって左右の転舵輪WL,WRを転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構8は、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで車幅方向の直進運動に変換して、タイロッド9に伝達する。
【0013】
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した例えばウォームギヤで構成される減速ギヤ機構11と、この減速ギヤ機構11に連結された操舵補助力を発生する例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
また、減速ギヤ機構11のステアリングホイール1側に連接されたトルクセンサ収納部15に操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気変化や抵抗変化として検出し、それを電気信号に変換するように構成されている。
【0014】
電動モータ12は、図2及び図3に示すように、有底円筒状のモータフレーム12aと、このモータフレーム12aの開放端面を覆う中心開口12bを有するモータフランジ12cと、モータフランジ12cの中心開口12bから突出する回転軸12dとを備えている。
モータフランジ12cには、中心開口12bの周囲に減速ギヤ機構11にインロー結合するインロー部12eが形成されているとともに、中央左右両端部に制御ユニット20に固定するためのボルト挿通孔12fが形成され、これらボルト挿通孔12fの上部側に所定距離離間して上方に突出する一対の支持板部12gが形成されている。
【0015】
一対の支持板部12g間には、図4で特に明らかなように、電動モータ12の給電用端子としての3個の3相給電用バスバーBBu、BBv及びBBwと、モータフレーム12a内に配設されたロータ(図示せず)の回転角を検出する後述するレゾルバ53のレゾルバ用端子としての4個の信号用端子ST1〜ST4とが軸直角方向に平行して突出されて露出するモータ側端子台16が形成されている。
さらに、電動モータ12の一対の支持板部12gの背面側に電動モータ12を駆動制御する制御ユニット20がボルト21によって固定されている。この制御ユニット20は、箱状の制御ユニット本体22と、この制御ユニット本体22の減速ギヤ機構11側の左右位置に配設された支持腕部23とで構成されている。
【0016】
また、制御ユニット本体22の支持腕部23に連接する減速ギヤ機構11側の端部に外部に露出したユニット側端子台24が配設されている。このユニット側端子台24は、図4に示すように、給電用端子としての3個の給電用溶接パッド部PPu、PPv及びPPwが電動モータ12の軸直角方向に並列に露出して配設されているとともに、これら給電用溶接パッド部PPu、PPv及びPPwと平行にレゾルバに対するレゾルバ用端子としての4個の信号用溶接パッド部SP1〜SP4が露出して配設されている。このユニット側端子台24の給電用溶接パッド部PPu〜PPwと信号用溶接パッド部SP1〜SP4とは、所定の位置決め治具を用いて位置決めした状態で、モータ側端子台16の給電用バスバーBBu〜BBwと信号用端子ST1〜ST4と所定距離を保って対向するように配設されている。
【0017】
そして、給電用溶接パッド部PPu〜PPwと給電用給電バスバーBBu〜BBwとが、給電用導電性金属片PMu〜PMwの一端を給電用溶接パッド部PPu〜PPwにレーザ溶接し、給電用導電性金属片PMu〜PMwの他端を給電用バスバーBBu〜BBwにレーザ溶接することにより、電気的に接続されている。
同様に、信号用溶接パッド部SP1〜SP4と信号用端子ST1〜ST4とが、信号用導電性金属片SM1〜SM4の一端を信号用溶接パッド部SP1〜SP4にレーザ溶接し、信号用導電性金属片SM1〜SM4の他端を信号用端子ST1〜ST4にレーザ溶接することにより、電気的に接続されている。
【0018】
ここで、給電用導電性金属片PMu〜PMwの夫々は、図5(a)に示すように、比較的幅広の帯状金属片をプレス加工して長手方向の中央部にコ字状に突出する応力緩和部31が形成されている。同様に、信号用導電性金属片SM1〜SM4の夫々は、図5(b)に示すように、比較的幅狭の帯状金属片をプレス加工して長手方向の中央部にコ字状に突出する応力緩和部32が形成されている。
【0019】
また、制御ユニット20は、図6に示すように、バッテリ41に接続される電源入力端子42と、この電源入力端子42にノイズフィルタ43を介し、電源リレー44及びダイオードD1を介して接続された制御電圧を形成する電源回路45を備えている。この電源回路45には、イグニッションスイッチ46から入力されるイグニッション電圧もダイオードD2を介して入力されている。電源回路45で形成される制御電圧はマイクロコントロールユニット(MCU)47に入力されている。
【0020】
このマイクロコントロールユニット47には、イグニッション電圧検出回路48で検出したイグニッションスイッチ46のイグニッションスイッチ電圧が入力されているとともに、トルクセンサ14に接続されたトルク検出回路49で検出したトルク検出値が入力され、さらに車速センサ50の車速検出値がコントローラエリアネットワーク(CAN)を介し、インタフェース回路51を介して入力されている。
【0021】
さらに、マイクロコントロールユニット47には、モータ電流検出回路52で検出した後述するインバータ回路から接地に流れる3相のモータ電流が入力されているとともに、電動モータ12に内蔵したレゾルバ53と接続されたモータ角度検出回路54からの角度信号が入力されている。
また、マイクロコントロールユニット47には、異常情報等を記憶する不揮発性メモリとしてのEEPROM55が接続されているとともに、マイクロコントロールユニット47の動作を監視する動作監視回路56が接続されている。
【0022】
そして、マイクロコントロールユニット47では、入力される操舵トルク検出値と車速検出値とに基づいて操舵補助トルク指令値を算出し、算出した操舵補助トルク指令値とモータ角度検出回路54から入力されるモータ角度及びこれを微分したモータ角速度とに基づいてd−q軸電流指令値を算出し、このd−q軸電流指令値をdq相−3相変換して、3相のモータ電流指令値を算出し、算出したモータ電流指令値とモータ電流検出回路52から入力されるモータ電流検出値との偏差を例えば比例・積分(PI)制御演算して、3相電圧指令値を算出し、算出したモータ電流指令値をパルス幅変調してFET駆動回路57に出力する。このFET駆動回路57は、電動モータ12に給電電力としてU相、V相及びW相電流を供給するインバータ回路58にゲート駆動信号を出力する。
【0023】
インバータ回路58は、電源リレー44を介してバッテリ電力が入力された6個のスイッチング素子としての電界効果トランジスタ(FET)Q1〜Q6を有し、2つの電界効果トランジスタを直列に接続した3つのスイッチングアームSAu、SAv及びSAwを並列に接続した構成を有し、各電界効果トランジスタQ1〜Q6のゲートにFET駆動回路57から出力されるゲート信号が入力されることにより、各スイッチングアームSAu、SAv及びSAwの電界効果トランジスタ間からU相電流、V相電流及びW相電流が出力され、これらのうちU相電流及びV相電流がモータリレー59u及び59bv介してユニット側端子台16の給電用溶接パッド部PPu、PPv及びPPwに接続されている。
【0024】
また、インバータ回路58の各スイッチングアームSAu、SAb及びSAwの接地との間に介挿されたシャント抵抗Ru、Rv及びRwの両端電圧がモータ電流検出回路52に入力されている。
また、電源リレー44は、マイクロコントロールユニット47に接続された電源リレー駆動回路60によって駆動され、モータリレー59u及び59vは同様にマイクロコントロールユニット47に接続されたモータリレー駆動回路61によって駆動される。
さらに、モータ角度検出回路54は、図7に示すように、レゾルバ励磁回路71、レゾルバ正弦波信号検出回路72及びレゾルバ余弦波信号検出回路73を備えている。
【0025】
レゾルバ励磁回路71は、図7(a)に示すように、所定周波数ωtの正弦波の励磁信号を増幅するオペアンプ71aと、抵抗R11及びR12によって図6のダイオードD1とダイオードD2との中間電圧Vbatを分圧した分圧電圧を増幅するオペアンプ71bと、両オペアンプ71a及び71bの出力電圧を差動増幅する差動増幅回路71cと、この差動増幅回路71cの出力側に接続されたB級プッシュプル回路71dとを備えており、このB級プッシュプル回路71dから出力される正弦波励磁信号sinωtが信号用溶接パッド部SP1を介し、信号用導電性金属片SM1及び信号端子ST1を介してレゾルバ53の励磁コイル53aの一端に供給され、この励磁コイル53aの他端が共通グランド端子となる信号端子ST4に接続されている。
【0026】
また、レゾルバ正弦波信号検出回路72は、図7(b)に示すように、レゾルバ53の一端が共通グランド端子に接続された正弦波コイル53bの他端が信号端子ST2及び信号用導電金属片SM2を介して信号用溶接バッド部SP2を介して入力され、この入力信号をオペアンプ72aで増幅し、さらに抵抗R21及びコンデンサC21で構成されるローパスフィルタ72bで高周波数ノイズ成分を除去して正弦波信号αsinθsinωt(α:レゾルバ内部の変圧比)をマイクロコントローラユニット47に出力する。
【0027】
レゾルバ余弦波信号検出回路73は、図7(b)に示すように、レゾルバ53の一端が共通グランド端子に接続された余弦波コイル53cの他端が信号端子ST3及び信号用導電金属片SM3を介して信号用溶接バッド部SP3を介して入力され、この入力信号をオペアンプ73aで増幅し、さらに抵抗R31及びコンデンサC31で構成されるローパスフィルタ73bで高周波数成分を除去して余弦波信号αcosθsinωt(α:レゾルバ内部の変圧比)をマイクロコントローラユニット47に出力する。
【0028】
マイクロコントローラユニット47では、モータ角度検出回路54から入力される正弦波信号αsinθsinωt及び余弦波信号αcosθsinωtを励磁信号sinωtの波高値タイミングでA/D変換器(図示せず)を介して読込み、デジタル信号に変換した正弦波信号sinθ及び余弦波信号cosθに基づいてArctan演算を行うことにより、モータ角度θを算出する。
【0029】
このように、レゾルバ53の励磁コイル53a、正弦波コイル53b及び余弦波コイル53cの他端を共通グランド端子となる信号端子ST4に接続し、この信号端子ST4を信号用導電性金属片SM4を介して信号用溶接パッド部SP4に接続して制御ユニット20に接続することにより、制御ユニット20と電動モータ12に内蔵したレゾルバ53との間の信号線を従来例の6本から4本に減らすことができる。
【0030】
次に、上記実施形態の電動モータ12への制御ユニット20の組付け方法を説明する。
先ず、電動モータ12の一対の支持板部12gの裏面側に制御ユニット20の一対の支持腕部23を接触させた状態で、所定の位置決め治具を使用して制御ユニット20を位置決めしてから支持板部12gのボルト挿通孔12fにボルトを挿通して支持腕部23に螺合させる。
【0031】
そして、電動モータ12への制御ユニット20の装着が完了すると、図4に示すように、電動モータ12のモータ側端子台16と制御ユニット20のユニット側端子台24とが上下に所定距離を保って対向する。この状態では、上述したように、両端子台16及び24の給電用溶接パッド部PPu〜PPwと給電用バスバーBBu〜BBwとが所定距離を保って対向するとともに、信号用溶接パッド部SP1〜SP4と信号用端子ST1〜ST4とが所定距離を保って対向する。
【0032】
したがって、例えば給電用溶接パッド部PPu〜PPwに給電用導電性金属片PMu〜PMwの一端をレーザ溶接し、これら給電用導電性金属片PMu〜PMwの他端を給電用バスバーBBu〜BBwにレーザ溶接することにより、給電用導電性金属片PMu〜PMwによって給電用溶接パッド部PPu〜PPwと給電用バスバーBBu〜BBwとを電気的に接続する。
【0033】
その後又はその前に信号用溶接パッド部SP1〜SP4に信号用導電性金属片SM1〜SM4の一端を溶接し、これら信号用導電性金属片SM1〜SM4の他端を信号用端子ST1〜ST4にレーザ溶接することにより、信号用導電性金属片SM1〜SM4によって信号用溶接パッド部SP1〜SP4と信号用端子ST1〜ST4とを電気的に接続する。
このように、電動モータ12のモータ側端子台16と制御ユニット20のユニット側端子台24とを制御ユニット20の外側で給電用導電性金属片PMu〜PMwと信号用導電性金属片SM1〜SM4とを使用して、給電用溶接パッド部PPu〜PPwと給電用バスバーBBu〜BBwとの間及び信号用溶接パッド部SP1〜SP4と信号用端子ST1〜ST4とをレーザ溶接によって電気的に接続するので、電動モータ12に内蔵するレゾルバ53と制御ユニット20との間の信号ラインを4本として従来例の6本の3分の2に減少させることができる。このため、接続インタフェース(I/F)としてのモータ側端子台16及びユニット側端子台24の端子数を減少させることができるので、レーザ溶接等の接続処理を短時間で容易に行うことができ、タクトを改善することができる。また、モータ側端子台16及びユニット側端子台24の幅を狭くすることができ、さらに制御ユニット20の内部に導電性金属片を使用したレーザ溶接部を形成する必要がないので制御ユニット20の外形も小さくして小型化することができる。
【0034】
しかも、電動モータ12に内蔵したレゾルバ53と制御ユニット20との間の信号ラインを4本にするために、モータ角度検出回路54をレゾルバ励磁回路71、レゾルバ正弦波信号検出回路72及びレゾルバ余弦波信号検出回路73の各2本の信号線の一方を共通グランド端子に接続し、この共通グランド端子をモータ角度検出回路54に信号端子ST4、信号用導電性金属片SM4及び信号用溶接パッド部SP4を介して接続するだけでよく、特別な回路等を必要としないので、安価に構成することができる。
【0035】
また、従来例のように制御ユニット20内でレーザ溶接するのではなく、制御ユニット20の外側でレーザ溶接を行うので、レーザ溶接時に発生する金属スパッタによって制御ユニット20内の電子部品や配線に電気的にショートが発生することを確実に防止することができ、制御ユニットの信頼性を向上させることができる。
また、従来例のようにモータ端子と巻線端子とを固定するネジを必要とすることがないので、より部品点数を減少させることができ、低コスト化することができる。
【0036】
しかも、給電用溶接パッド部PPu〜PPwと給電用バスバーBBu〜BBwとを電気的に接続する給電用導電性金属片PMu〜PMwと、信号用溶接パッド部SP1〜SP4と信号用端子ST1〜ST4とを電気的に接続する信号用導電性金属片SM1〜SM4との夫々にコ字状に突出した応力緩和部31及び32が形成されているので、電動パワーステアリング装置に伝達される振動によって、給電用導電性金属片PMu〜PMw及び信号用導電性金属片SM1〜SM4に
引張応力や圧縮応力が繰り返し作用する場合でも、これらの引張応力や圧縮応力を応力緩和部31及び32で緩和して疲労破壊を抑制することができる。
【0037】
そして、上記のように電動モータ12と制御ユニット20との電気的接続が完了した後に、車両の停止状態で、イグニッションスイッチ46をオン状態とすると、イグニッションスイッチ電圧が電源回路45に供給されて、この電源回路45から制御電圧がマイクロコントロールユニット47に供給されることにより、このマイクロコントロールユニット47が作動状態となる。このため、電源リレー駆動回路60が作動されて、電源リレー44がオン状態に制御されてバッテリ41からの電力がノイズフィルタ43及び電源リレー44を介して電源回路45に供給されて自己保持回路が構成される。これと同時に、モータリレー駆動回路61か作動されてモータリレー59u及び59vがオン状態となり、インバータ回路58から出力される3相駆動電流がユニット側端子台20及びモータ側端子台16を介して電動モータ12の3相コイルに供給される状態となる。
【0038】
このとき、ステアリングホイール1を操舵していない非操舵状態では、トルクセンサ14で検出される操舵トルクが零を維持するため、マイクロコントロールユニット47で、算出される操舵補助指令値が零となり、この操舵補助指令値をd−q軸変換したd軸電流指令値及びq軸電流指令値も零となり、これらをdq相−3相変換した3相電流指令値も零となる。また、電動モータ12は停止状態を維持しており、インバータ回路58で検出されるモータ電流検出値も零であるので、電流指令値及びモータ電流検出値の電流偏差も零となり、PI制御演算結果の3相電圧指令値も零となって、FET駆動回路57から出力されるゲート駆動信号が全て50%デューティ(duty)となり、インバータ回路58の電界効果トランジスタQ1〜Q6が全て50%デューティ(duty)状態を維持する。
【0039】
この車両の停止状態で、運転者がステアリングホイール1を操舵する所謂据え切りを行うと、トルクセンサ14の検出信号が供給されるトルク検出回路49で大きな操舵トルクが検出され、これがマイクロコントローラユニット47に入力される。このため、マイクロコントロールユニット47で大きな操舵補助指令値が演算され、これに応じてd−q軸変換したd軸電流指令値及びq軸電流指令値も大きくなって、これをdq相−3相変換した3相電流指令値も大きな値となる。この3相電流指令値と零を維持するモータ電流検出値との偏差がPI制御演算されることによって算出される3相電圧指令値も大きな値となることから、FET駆動回路57からゲート駆動信号がインバータ回路58の電界効果トランジスタQ1〜Q6に出力される。これに応じてインバータ回路58から大きな3相駆動電流がユニット側端子台24の給電用溶接パッド部PPu〜PPw、給電用導電性金属片PMu〜PMw及びモータ側端子台16の給電用バスバーBBu〜BBwを介して電動モータ12の3相コイルに供給されて電動モータ12の回転軸12dが回転駆動され、操舵トルクに応じた操舵補助力を発生する。電動モータ12で発生された操舵補助力は減速ギヤ機構11を介してステアリングシャフト2の出力軸2bに伝達されることにより、ステアリングホイール1を軽く操舵することができる。
【0040】
このように、電動モータ12が回転駆動されると、これに応じて電動モータ12に内蔵されたレゾルバ53の励磁コイル53aに供給されている正弦波励磁電流に応じて正弦波コイル53bから正弦波信号が出力されると共に、余弦波コイル53cから余弦波信号が出力される。これら正弦波信号及び余弦波信号はモータ側端子台16の信号用端子ST2及びST3、信号用導電性金属片SM2及びSM3並びにユニット側端子台24の信号用溶接バッド部SP2及びSP3を通じて制御ユニット20におけるモータ角度検出回路54のレゾルバ正弦波信号検出回路72及びレゾルバ余弦波信号検出回路73に供給されて、これらから正弦波信号αsinθsinωt及び余弦波信号αcosθsinωtが出力される。これら正弦波信号αsinθsinωt及び余弦波信号αcosθsinωtは励磁信号sinωtの波高値タイミングでA/D変換されてマイクロコントロールユニット47に入力され、このマイクロコントロールユニット47で例えばArctan演算を行うことによりモータ角θが算出される。このモータ角θ及びこれを微分したモータ角速度ωを使用してd−q軸電流指令値演算が行われる。
【0041】
その後、車両が発進すると、これに応じて路面抵抗が減少することにより、ステアリングホイール1を操舵したときの操舵トルクが小さくなるので、これに応じた操舵補助力指令値が演算されて、電動モータ12で操舵トルクに応じた補助補助力が発生される。
なお、上記実施形態においては、モータ側端子台16とユニット側端子台24とにおいて、給電用溶接パッド部PPu〜PPw及び信号用溶接バッド部SP1〜SP4と、給電用バスバーBBu〜BBw及び信号用端子ST1〜ST4とを詰めて配置した場合について説明したが、図8及び図9に示すように、給電用溶接パッド部PPu〜PPw及び信号用溶接バッド部SP1〜SP4と、給電用バスバーBBu〜BBw及び信号用端子ST1〜ST4とを一対の支持板部12g間を一杯に使って配置するようにしてもよい。この場合には、給電用溶接パッド部PPu〜PPw及び信号用溶接バッド部SP1〜SP4と、給電用バスバーBBu〜BBw及び信号用端子ST1〜ST4との間隔を空けることができるので、接続構造の寸法公差を緩和することができ、公差管理や位置決めのための治具を不要とすることができる。この分タクト及びコストをより改善することができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、導電性金属片をレーザ溶接することにより、電動モータ12及び制御ユニット20間の電気的接続を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、給電用バスバーBBu〜BBw及び信号用端子ST1〜ST4をユニット側端子台24にネジ留めするようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、制御ユニット20の外側で制御ユニット20と電動モータ12との電気的接続を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、制御ユニット20の内部で導電性金属片を使用してレーザ溶接によって接続するようにしても、信号ラインを2本分少なくできることにより、制御ユニット20を小型化することができる。
【0043】
さらに、上記実施形態では、給電用導電性金属片PMu〜PMw及び信号用導電性金属片SM1〜SM4にコ字状の応力緩和部31及び32を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、応力緩和部31及び32をU字状としたり円弧状としたりすることもでき、要は入力される引張応力や圧縮応力を緩和できる構成であればよいものである。
【0044】
また、制御ユニット20内部構成については上記実施形態に限定されるものではなく、モータ角度検出回路54を除いては任意の構成とすることができる。
また、上記実施形態においては、本発明をコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ピニオンアシスト式やラックアシスト式の電動パワーステアリング装置に本発明を適用しても上記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0045】
SM…ステアリング機構、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…ステアリングコラム、4…ユニバーサルジョイント、5…中間シャフト、7…ピニオンシャフト、8…ステアリングギヤ機構、9…タイロッド、WL,WR…転舵輪、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ、11a…ギヤケース、12…電動モータ、12a…モータフレーム、12c…モータフランジ、12d…回転軸、12g…支持板部、14…操舵トルクセンサ、16…モータ側端子台、BBu〜BBw…給電用バスバー、ST1〜ST4…信号用端子、20…制御ユニット、22…制御ユニット本体、23…支持腕部、24…ユニット側端子台、PPu〜PPw…給電用溶接パッド部、SP1〜SP4…信号用溶接パッド部、PMu〜PMw…給電用導電性金属片、SM1〜SM4…信号用導電性金属片、41…バッテリ、44…電源リレー、45…電源回路、46…イグニッションスイッチ、47…マイクロコントローラユニット(MCU)、49…トルク検出回路、50…車速センサ、53…レゾルバ、53a…励磁コイル、53b…正弦波コイル、53c…余弦波コイル、54…モータ角度検出回路、57…FET駆動回路、58…インバータ回路、59u,59v…モータリレー、71…レゾルバ励磁回路、72…レゾルバ正弦波信号検出回路、73…レゾルバ余弦波信号検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに伝達された操舵トルクを、ステアリングシャフトを介して転舵輪に伝達するステアリング機構に対して操舵補助力を付与する電動モータと、該電動モータに内蔵されたレゾルバと、前記電動モータを駆動制御する制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記制御ユニットは、前記電動モータに形成された接続端子を有するモータ側端子台に近接して配置し、且つ当該モータ側端子台に連接する制御ユニット側端子台を形成し、
前記モータ側端子台の接続端子及び前記制御ユニット側端子台の接続端子を電気的に接続し、
前記モータ側端子台の接続端子及び前記制御ユニット側端子台の接続端子は、夫々3個の給電用端子と、4個のレゾルバ用端子とで構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記4個のレゾルバ用端子は、共通グランド端子と、レゾルバ励磁信号端子と、レゾルバ出力正弦波信号端子と、レゾルバ出力余弦波信号端子とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、レゾルバ励磁信号を形成するレゾルバ励磁信号形成回路と、レゾルバ出力正弦波信号を検出するレゾルバ正弦波信号検出回路と、レゾルバ出力余弦波信号を検出するレゾルバ余弦波信号検出回路と、前記レゾルバ正弦波信号検出回路及び前記レゾルバ余弦波信号検出回路の検出信号に基づいて回転位置を検出する回転位置演算部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記モータ側端子台及び前記ユニット側端子台は、夫々露出されて対向しており、前記給電用端子及びレゾルバ用端子が平行配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−195131(P2011−195131A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67447(P2010−67447)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】