説明

電動パーキングブレーキ

【課題】
パーキングワイヤーの巻き取り部をウォームホイールのウォームとの係合部の内部に収納することにより、コンパクトで軽量であるとともに、製造コストの安い電動パーキングブレーキを得る。
【解決手段】
電動モータ1の出力にてウォーム2を介してウォームホイール3を駆動させ、パーキングワイヤー14を引いてパーキングブレーキを作動させる電動パーキングブレーキを前提とする。ウォームホイール3の外周面の両側部に、ウォーム2との係合部16を円周方向に形成し、この係合部16の間隔にウォームホイール3の円周方向に凹溝17を連続して凹設形成し、凹溝17に前記パーキングワイヤー14を挿通して一端を凹溝17内に固定することにより、ウォーム2とウォームホイール3との係合部16の内部に設けた凹溝17を前記パーキングワイヤー14の巻き取り部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に備える電動パーキングブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手動操作に代えて、電動にて制動力の発生及び停止を行う電動式のパーキングブレーキが公知となっており、例えば、特許文献1に示す如きものが知られている。この従来技術は、電動モータの出力で駆動するウォームにウォームホイールを係合し、このウォームホイールの側面にパーキングワイヤーを巻き取るための巻き取りドラムを一体に突出形成している。そして、電動モータの出力によりウォームを介してウォームホイール及び巻き取りドラムを回動させ、巻き取りドラムに接続したパーキングワイヤーを引いてパーキングブレーキを作動させるものである。
【0003】
また、特許文献2に示す如き電動パーキングブレーキも公知となっている。この従来技術は、電動モータの出力で駆動するウォームに、扇形のウォームホイールの弧状部を係合し、この弧状部の延長上にパーキングワイヤーの巻き取り部を一体形成している。そして、電動モータの出力によりウォームを介してウォームホイールを回動させ、パーキングワイヤーの巻き取り部に接続したパーキングワイヤーを引いてパーキングブレーキを作動させるものである。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−134036号公報
【特許文献2】特開2005−297777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に於ては、ウォームホイールの側面に巻き取りドラムを一体に突出形成するため、巻き取りドラムの突出厚み分だけ機構自体が肉厚なものとなり、小型化、軽量化を図ることが困難であった。また、巻き取りドラムを必要とするため部品点数が多く必要となり、製造コストの高いものとなっていた。
【0006】
また、特許文献2に於ては、ウォームホイールに上記の巻き取りドラムを形成することは行っていないが、ウォームホイールの弧状部の延長上にパーキングワイヤーの巻き取り部を形成するため、ウォームホイールと巻き取り部のスペースを円周方向に連続して確保する必要が有り、特許文献1と同様に小型化、軽量化を図ることが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、コンパクトで軽量であるとともに、製造コストの安い電動パーキングブレーキを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の如き課題を解決するため、電動モータと、この電動モータの出力で駆動するウォームと、このウォームと係合したウォームホイールと、このウォームホイールに接続したパーキングワイヤーとを有し、前記電動モータの出力にて前記ウォームを介してウォームホイールを駆動させ、前記パーキングワイヤーを引いてパーキングブレーキを作動させる電動パーキングブレーキを前提とするものである。
【0009】
そして、前記ウォームホイールの外周面の両側部には、前記ウォームとの係合部を一定の間隔を介して円周方向に形成し、この係合部の間隔に、前記ウォームホイールの円周方向に凹溝を連続して凹設形成する。そして、この凹溝に前記パーキングワイヤーを挿通して一端を凹溝内に固定することにより、この凹溝を前記パーキングワイヤーの巻き取り部としている。このようにウォームホイールに設けたウォームとの係合部の間隔に、パーキングワイヤーの巻き取り部を凹設することにより、パーキングワイヤーの巻き取り部がウォームホイールのウォームとの係合部の内部に収納されるものとなる。そのため、前記特許文献1の如くウォームホイールの外部に巻き取りドラムを突設したり、前記特許文献2の如くウォームホイールのウォームとの係合部のスペースに加えて巻き取り部のスペースを円周方向に連続して確保する必要がなく、機構自体をコンパクトで軽量なものとすることができる。また、巻き取りドラム等のパーキングワイヤーを巻き取るための機構をウォームホイールの外部に形成する必要がないため、部品点数を少なくすることができ、材料費を低く抑えて、廉価な製品を得ることが可能となる。
【0010】
また、ウォームホイールは、扇型に形成したものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く、ウォームホイールに設けたウォームとの係合部の間隔に、パーキングワイヤーの巻き取り部をウォームホイールと同一軸心に凹設しており、パーキングワイヤーの巻き取り部がウォームホイールのウォームとの係合部の内部に収納されるものとなる。そのため、前記特許文献1の如くウォームホイールの外部に巻き取りドラムを突設したり、前記特許文献2の如くウォームホイールのウォームとの係合部のスペースに加えて巻き取り部のスペースを円周方向に連続して確保する必要がなく、機構自体をコンパクトで軽量なものとすることができる。また、巻き取りドラム等のパーキングワイヤーを巻き取るための機構をウォームホイールの外部に形成する必要がないため、部品点数を少なくすることができ、材料費を低く抑えて、廉価な製品を得ることが可能となる。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を図1〜3において説明すると (1)は電動モータで、ウォーム(2)とウォームホイール(3)とから成るウォームギア(4)を収納するアクチュエータ(5)の外部に配置している。そして、この電動モータ(1)の駆動軸(6)をアクチュエータ(5)の内部に挿通するとともに、この駆動軸(6)にウォーム(2)の一端を接続している。
【0013】
このウォーム(2)は、アクチュエータ(5)の内部に形成したウォーム収納室(7)内に収納している。また、ウォーム(2)の両端には、一方隔壁(8)及び他方隔壁(10)を軸受け(11)(12)を介して配置し、この一方隔壁(8)及び他方隔壁(10)はウォーム収納室(7)内に於て軸方向に摺動可能としている。また、上記他方隔壁(10)と、ウォーム収納室(7)の駆動軸(6)とは反対側の内側面との間には、ウォーム(2)の軸方向に加えられる荷重を測定するための荷重センサ(13)を配置している。この荷重センサ(13)をこの位置に配置することにより、荷重センサ(13)がパーキングワイヤー(14)の動作に影響を受けることがないため、前記荷重センサ(13)に接続したケーブルがパーキングワイヤー(14)と接触し断線してしまうという事態を生じることがないとともに、荷重センサ(13)を設けるための広いスペースを必要とすることがないため、アクチュエータ(5)が大型化するおそれがない。また、アクチュエータ(5)内に上記荷重センサ(13)を設けることができるため、荷重センサ(13)が外気にさらされることなく耐久性を向上させることができる。また、この荷重センサ(13)の感知信号により電動モータ(1)の駆動を制御することができる。
【0014】
また、上記の如くアクチュエータ(5)に形成したウォーム収納室(7)の上方には、下端を円弧状とした半円形のウォームホイール収納室(15)を形成している。そして、このウォームホイール収納室(15)には、中心角約90度の扇型に形成したウォームホイール(3)を配置し、このウォームホイール(3)を前記アクチュエータ(5)に回転可能に軸支している。
【0015】
そして、このウォームホイール(3)には、図1、図2に示す如く外周面の両側部にウォーム(2)との係合部(16)を形成し、この係合部(16)をウォーム(2)と係合している。また、この係合部(16)の幅方向中央には、図1、図2に示す如く、前記ウォームホイール(3)の円周方向に凹溝(17)を連続して凹設形成している。また、凹溝(17)の底面(18)には、ウォームホイール(3)の回転方向の先端に、図1に示す如くパーキングワイヤー(14)の一端を固定しており、このパーキングワイヤー(14)の他端は、アクチュエータ(5)の貫通穴(9)を介して、ブレーキ装置(図示せず)に連通接続している。
【0016】
上記の如く構成したものに於いて、パーキングワイヤー(14)を引いてブレーキ装置に制動力を発生させるには、まず、電動モータ(1)を作動させ駆動軸(6)を介してウォーム(2)を回動し、このウォーム(2)に係合したウォームホイール(3)を、図3の矢印方向に回転させる。このウォームホイール(3)の回転により、前述の如くウォームホイール(3)の凹溝(17)の回転方向の先端の底面(18)に一端を固定したパーキングワイヤー(14)が、凹溝(17)の底面(18)に沿って円周方向に巻き取られるものとなる。即ち、本実施例に於ては、ウォームホイール(3)の係合部(16)の配置間隔に設けた凹溝(17)を、パーキングワイヤー(14)の巻き取り部としている。
【0017】
また、パーキングワイヤー(14)を戻してブレーキ装置の制動力を解除させるには、電動モータ(1)を制動時とは逆に作動させて駆動軸(6)及びウォーム(2)を上記制動の場合とは逆方向に回転させ、ウォーム(2)に係合したウォームホイール(3)を、図3の矢印方向とは逆の方向に回転させる。これにより、図1に示す如くパーキングワイヤー(14)の凹溝(17)への巻き取りが解除され、ブレーキ装置の制動力が解除される。
【0018】
そして、上述の如くウォームホイール(3)の係合部(16)に設けた凹溝(17)をパーキングワイヤー(14)の巻き取り部とすることにより、パーキングワイヤー(14)の巻き取り部がウォームホイール(3)とウォームとの係合部(16)の内部に収納されるものとなる。そのため、ウォームホイール(3)の側面に巻き取りドラムを一体に突出形成する場合の如く、機構自体が肉厚なものとなるおそれがないし、ウォームホイール(3)の延長上にパーキングワイヤー(14)の巻き取り部を形成する場合の如く、ウォームホイール(3)のウォーム(2)との係合部(16)のスペースに加えて巻き取り部のスペースを円周方向に連続して確保する必要もなく、機構自体をコンパクトで軽量なものとすることができる。また、巻き取りドラム等のパーキングワイヤー(14)を巻き取るための機構をウォームホイール(3)の外部に形成する必要がないため、部品点数を少なくすることができ、材料費を低く抑えて、廉価な製品を得ることが可能となる。なお、ウォームホイールの形状は扇型に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】パーキングワイヤー巻取り前の状態を示す断面図。
【図2】ウォームとウォームホイールの側面図。
【図3】パーキングワイヤー巻取り後の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 電動モータ
2 ウォーム
3 ウォームホイール
14 パーキングワイヤー
16 係合部
17 凹溝





【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、この電動モータの出力で駆動するウォームと、このウォームと係合したウォームホイールと、このウォームホイールに接続したパーキングワイヤーとを有し、前記電動モータの出力にて前記ウォームを介してウォームホイールを駆動させ、前記パーキングワイヤーを引いてパーキングブレーキを作動させる電動パーキングブレーキにおいて、前記ウォームホイールの外周面の両側部に、前記ウォームとの係合部を一定の間隔を介して円周方向に形成し、この係合部の間隔に、前記ウォームホイールの円周方向に凹溝を連続して凹設形成し、この凹溝に前記パーキングワイヤーを挿通して一端を凹溝内に固定することにより、この凹溝を前記パーキングワイヤーの巻き取り部としたことを特徴とする電動パーキングブレーキ。
【請求項2】
ウォームホイールは、扇型に形成したことを特徴とする請求項1の電動パーキングブレーキ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−79733(P2009−79733A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250681(P2007−250681)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】