電動車両の制御装置
【課題】電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、モータジェネレータ2と、モータ制御切り替え手段としての統合コントローラ20と、遅れ処理手段としてのモータコントローラ22と、を備える。モータコントローラ22は、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、モータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう。一方、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、モータジェネレータ2と、モータ制御切り替え手段としての統合コントローラ20と、遅れ処理手段としてのモータコントローラ22と、を備える。モータコントローラ22は、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、モータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう。一方、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転数制御とトルク制御を行う電動モータを走行用駆動源に備える電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転数制御とトルク制御を行う電動モータを走行用駆動源に備え、走行状況や車両状況に応じて回転数制御とトルク制御を切り替える制御を行うハイブリッド車両の駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来装置は、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクからトルク制御開始時の目標モータトルクに差が発生した場合、所定の変化率をつけてモータトルクを変化させる制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−174209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来装置にあっては、モータ制御を切り替える際、モータトルクの変化を所定の変化率とする変化量制限値を、アクセル踏み込み時のダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、高い復帰応答性を確保する値により与えるようにしている。このため、コースト減速中のローギヤ段へのダウン変速後、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、プロペラシャフト等のパワートレイン系に捩れショックが発生しやすい、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止することができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置は、電動モータと、モータ制御切り替え手段と、遅れ処理手段と、を備える手段とした。
前記電動モータは、走行用駆動源に設けられる。
前記モータ制御切り替え手段は、前記電動モータの制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替える。
前記遅れ処理手段は、前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行ない、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、前記加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう。
【発明の効果】
【0007】
よって、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル踏み込みによる加速側では、モータトルク差分に対し、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、大きなモータトルク差分になることがある加速側では、アクセル踏み込み操作にあらわれるドライバーの加速要求に応え、モータトルク差分が急勾配のトルク変化により繋がれることで、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが向上する。
一方、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、モータトルク差分に対し、加速用変化量制限値よりも小さいコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、コースト減速中のときには、捩れ振動によるショック感度が高いアクセル足離し状況であることに応え、モータトルク差分が緩勾配のトルク変化によりゆっくり繋がれることで、モータ制御の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
この結果、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。
【図3】実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。
【図4】実施例1の制御装置で用いられる定常目標トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。
【図5】実施例1の制御装置で用いられるエンジン始動停止線マップを示すマップ図である。
【図6】実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中要求発電出力を示す特性図である。
【図7】実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最良燃費線を示す特性図である。
【図8】実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。
【図9】実施例1の統合コントローラの変速制御部にて実行される変速制御処理の構成と流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例1のモータコントローラにてメインルーチンとして実行される回転数制御とトルク制御の切り替え処理の構成と流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例1のモータコントローラにてモータジェネレータを回転数制御からトルク制御に切り替える際にサブルーチンとして実行されるモータトルク変化の遅れ処理の構成と流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例1の制御装置を搭載したハイブリッド車両がアクセル踏み込みによる加速側でモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。
【図13】実施例1の制御装置を搭載したハイブリッド車両がアクセル足離しによるコースト減速中にモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。以下、図1に基づき、パワートレイン構成を説明する。
【0011】
実施例1のハイブリッド車両のパワートレイン系には、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2(電動モータ;以下、「MG」と記載する。)と、自動変速機3(以下、「AT」と記載する。)と、第1クラッチ4(以下、「CL1」と記載する。)と、第2クラッチ5(以下、「CL2」と記載する。)と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7,7と、を備えている。つまり、エンジン1と1モータ・2クラッチをパワートレイン系に備えた構成としている。
【0012】
前記エンジン1は、エンジン出力軸とモータジェネレータ2のモータ入力軸とが、トルク容量可変の第1クラッチ4を介して連結される。前記モータジェネレータ2は、モータ出力軸と自動変速機3の変速機入力軸とが、直接連結される。前記自動変速機3は、変速機出力軸にディファレンシャルギア6を介して駆動輪であるタイヤ7,7が連結される。
【0013】
前記第2クラッチ5は、自動変速機3のシフト状態に応じて異なる変速機内の動力伝達を担っているトルク容量可変のクラッチ・ブレーキによる複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を選択して用いている。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力と、を合成してタイヤ7,7へ出力する。
【0014】
前記第1クラッチ4としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる乾式単板クラッチや乾式多板クラッチ等を用いればよい。前記第2クラッチ5としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等を用いればよい。このパワートレイン系には、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードがあり、第1クラッチ4を切断したCL1開放状態では、モータジェネレータ2の動力のみで走行するEVモード(電気自動車走行モード)である。一方、第1クラッチ4を接続したCL1締結状態では、エンジン1とモータジェネレータ2の動力で走行するHEVモード(ハイブリッド車走行モード)である。
【0015】
前記パワートレインには、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
【0016】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。以下、図2に基づいて、制御システム構成を説明する。
【0017】
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、ソレノイドバルブ14と、ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ17と、ブレーキ油圧センサ23と、SOCセンサ16と、を備えている。
【0018】
前記統合コントローラ20は、パワートレイン系の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOと、バッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、選択した運転モードに応じ、モータコントローラ22に対し目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に対し目標エンジントルクを指令し、ソレノイドバルブ14,15に対し駆動信号を指令する。
【0019】
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。前記ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ17は、アクセル開度(APO)を検出する。前記ブレーキ油圧センサ23は、ブレーキ油圧(BPS)を検出する。前記SOCセンサ16は、バッテリ9の充電容量状態を検出する。
【0020】
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて、統合コントローラ20の構成を説明する。
【0021】
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
【0022】
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常駆動トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0023】
前記モード選択部200は、車速VSPおよびアクセル開度APOと、図5に示すエンジン始動停止線マップと、を用いて、運転モード(HEVモード、EVモード)を演算する。エンジン始動線とエンジン停止線は、エンジン始動線(SOC高、SOC低)とエンジン停止線(SOC高、SOC低)の特性に代表されるように、バッテリSOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下する特性として設定されている。なお、エンジン始動は、EVモード状態で図5に示すエンジン始動線をアクセル開度APOと車速VSPによる運転点が超えた時点で、スリップ締結状態が実現可能なように第2クラッチ5の締結トルク容量をドライバー要求駆動トルク相当に制御する。そして、第2クラッチ5がスリップ開始したとの判断後に第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなった時点で第1クラッチ4を完全に締結する。その後、第2クラッチ5をロックアップさせてHEVモードに遷移させる処理により行われる。
【0024】
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最良燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0025】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク,MGアシストトルクと目標モードと車速VSPと要求発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標CL2トルク容量と目標変速比とCL1ソレノイド電流指令を演算する。
【0026】
前記変速制御部500は、目標CL2トルク容量と目標変速比とから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。変速制御は、車速VSPとアクセル開度APOによる運転点と変速線マップに基づいて、現在のギヤ段から次ギヤ段をどのギヤ段にするかを判定する。そして、運転点が変速線マップのアップ変速線(図8の実線)またはダウン変速線(図8の点線)を横切るとアップ変速要求またはダウン変速要求を出し、変速要求に対応する自動変速機3の摩擦締結要素を締結/開放制御して変速させる。なお、実施例1では、変速時に自動変速機3の入力側に有するモータジェネレータ2による回転数制御を加えることで、油圧制御だけによる変速制御の場合に比べ、イナーシャフェーズ領域でのギヤ比変化を滑らかにする変速制御を行うようにしている。
【0027】
図9は、実施例1の統合コントローラ20の変速制御部500にて実行される変速制御処理の構成と流れを示す。以下、図9の各ステップについて説明する。
【0028】
ステップS1では、現ギヤ段と次ギヤ段が異なっていて、現ギヤ段から次ギヤ段への変速開始、もしくは、変速中であるか否かを判断する。YES(変速開始、もしくは、変速中)の場合はステップS2へ進み、NO(ギヤ段固定)の場合はリターンへ進む。
【0029】
ステップS2では、ステップS1での変速開始、もしくは、変速中であるとの判断に続き、変速時開放クラッチに開放指令を出力し、ステップS3へ進む。
ここで、変速に際しては、そのときの変速に関与する2つのクラッチのうち、一方のクラッチを開放し、他方のクラッチを締結するクラッチ掛け替えにより行われる。このクラッチ掛け替え時の開放側クラッチを「変速時開放クラッチ」といい、締結側クラッチを「変速時締結クラッチ」という。
【0030】
ステップS3では、ステップS2での変速時開放クラッチへの開放指令出力に続き、スリップ判定成立(自動変速機3の入力回転数と出力回転数の差が、確実にクラッチスリップしていると判定できる回転差閾値になった場合)であるか否かを判断する。YES(スリップ判定成立)の場合はステップS4へ進み、NO(スリップ判定不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、変速制御は、変速開始フェーズ→トルクフェーズ→イナーシャフェーズ→変速終了フェーズを経過して行われるが、イナーシャフェーズが開始されると自動変速機3の入力回転数と出力回転数に差が生じる。よって、このスリップ判定は、言い換えると、イナーシャフェーズ領域に入ったイナーシャフェーズ開始判定ということができる。
【0031】
ステップS4では、ステップS3でのスリップ判定成立であるとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=0(トルク制御)から回転数制御フラグ=1(回転数制御)に書き換え、ステップS5へ進む。
【0032】
ステップS5では、ステップS4での回転数制御フラグ=1への書き換えに続き、変速時締結クラッチに締結指令を出力し、ステップS6へ進む。
【0033】
ステップS6では、ステップS5での変速時締結クラッチへの締結指令出力に続き、回転数制御フラグ=0(図10のステップS25)、かつ、変速処理終了であるか否かを判断する。YES(変速終了条件成立)の場合はステップS7へ進み、NO(変速終了条件不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、変速処理終了は、例えば、変速時開放クラッチが完全開放で、変速時締結クラッチの油圧が所定値以上となった時をいう。
【0034】
ステップS7では、ステップS6での変速終了条件成立であるとの判断に続き、変速を終了し、リターンへ進む。
【0035】
図10は、実施例1のモータコントローラ22にてメインルーチンとして実行される回転数制御とトルク制御の切り替え処理の構成と流れを示す(モータ制御切り替え手段)。以下、図10の各ステップについて説明する。
【0036】
ステップS20では、回転数制御フラグ=1であるか否かを判断する。YES(回転数制御フラグ=1)の場合はステップS21へ進み、NO(回転数制御フラグ=0)の場合はステップS26へ進む。
つまり、変速制御処理を示す図9のステップS4にて回転数制御フラグ=1に書き換えられるとYESと判断され、後述するステップS25にて回転数制御フラグ=0に書き換えられるとNOと判断される。
【0037】
ステップS21では、ステップS20での回転数制御フラグ=1であるとの判断に続き、現ギヤ段と次ギヤ段で決まる変速モードに応じ、エンジン1にて実現する目標エンジントルクを算出し、ステップS22へ進む。
【0038】
ステップS22では、ステップS21での目標エンジントルクの算出に続き、現ギヤ段と次ギヤ段で決まる変速モードに応じ、モータジェネレータ2にて実現する目標MG回転数を算出し、ステップS23へ進む。
ここで、回転数制御の目標値である目標MG回転数は、アップ変速の場合、現ギヤ段での変速機入力回転数から徐々に次ギヤ段での変速機入力回転数まで低下するように算出される。一方、ダウン変速の場合、現ギヤ段での変速機入力回転数から徐々に次ギヤ段での変速機入力回転数まで上昇するように算出される。
【0039】
ステップS23では、ステップS22での目標回転数算出に続き、目標回転数に追従するようにモータトルクを算出し、ステップS24へ進む。
【0040】
ステップS24では、ステップS23でのモータトルクの算出に続き、回転数制御終了条件が成立しているか否かを判断する。YES(回転数制御終了条件成立)の場合はステップS25へ進み、NO(回転数制御終了条件不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、回転数制御終了条件成立とは、変速後の次ギヤ段でのギヤ比により決まる変速機入力回転数と変速機出力回転数の差が、ロックアップしていると判定できる回転差になったときをいう。言い換えると、変速機入力回転数が、変速後の次ギヤ段による変速機入力回転数に収束し、イナーシャフェーズ領域から抜け出したイナーシャフェーズ終了を判定していることになる。
【0041】
ステップS25では、ステップS24での回転数制御終了条件成立であるとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=1(回転数制御)から回転数制御フラグ=0(トルク制御)に書き換え、リターンへ進む。
【0042】
ステップS26では、ステップS20での回転数制御フラグ=0であるとの判断に続き、トルク制御を行う場合の目標値である目標エンジントルクと目標モータトルクを算出し、ステップS27へ進む。
【0043】
ステップS27では、ステップS26での目標エンジントルク・目標モータトルクの算出に続き、回転数制御フラグの前回値が回転数制御フラグ=1で、かつ、今回値が回転数制御フラグ=0であるか否か、つまり、回転数制御からトルク制御への切り替え開始条件が成立しているか否かを判断する。YES(切り替え開始条件成立)の場合はステップS28へ進み、NO(切り替え開始条件不成立)の場合はステップS29へ進む。
【0044】
ステップS28では、ステップS27での切り替え開始条件成立であるとの判断に続き、バックアップ用変化量制限値を選択するまでの時間を計測するタイマーをリセットし、ステップS30へ進む。
【0045】
ステップS29では、ステップS27での切り替え開始条件不成立であるとの判断に続き、図11に示すサブルーチンのフローチャートに基づく変化量制限値の選択による遅れ処理中であるか否かを判断する。YES(遅れ処理中)の場合はステップS30へ進み、NO(遅れ処理終了)の場合はリターンへ進む。
この遅れ処理とは、回転数制御からトルク制御へ切り替える際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルクとの間には差分が残っているため、このトルク差分を緩やかな変化勾配にて繋ぐ処理である。
【0046】
ステップS30では、ステップS28でのタイマーリセット、あるいは、ステップS29での遅れ処理中であるとの判断に続き、タイマーカウントを開始し、ステップS31へ進む。
【0047】
ステップS31では、ステップS30でのタイマーカウント開始に続き、図11のサブルーチンで決まったタイムアウト時間を選択し、ステップS32へ進む。
【0048】
ステップS32では、ステップS31でのタイムアウト時間の選択に続き、タイマーカウントによるタイマー値(回転数制御からトルク制御に切り替えてからの経過時間をあらわす)が、選択されたタイムアウト時間を超えているか否かを判断する。YES(タイマー>タイムアウト時間)の場合はステップS33へ進み、NO(タイマー≦タイムアウト時間)の場合はステップS34へ進む。
【0049】
ステップS33では、ステップS32でのタイマー>タイムアウト時間であるとの判断に続き、サブルーチンで選択される変化量制限値に代え、バックアップ用変化量制限値を選択し、ステップS35へ進む。
ここで、バックアップ用変化量制限値は、少なくともコースト用変化量制限値よりも大きな値で、加速用変化量制限値とコースト用変化量制限値の中間的な値に設定される。つまり、コースト用変化量制限値<バックアップ用変化量制限値<加速用変化量制限値という大小関係を持たせてそれぞれの値が設定される。
【0050】
ステップS34では、ステップS32でのタイマー≦タイムアウト時間であるとの判断に続き、サブルーチンで決まった変化量制限値(加速用変化量制限値またはコースト用変化量制限値)を選択し、ステップS35へ進む。
【0051】
ステップS35では、ステップS33またはステップS34での変化量制限値の選択に続き、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルクの差分に対し選択した変化量制限値による遅れ処理を行い、リターンへ進む。
【0052】
図11は、実施例1のモータコントローラ22にてモータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際にサブルーチンとして実行されるモータトルク変化の遅れ処理の構成と流れを示す(遅れ処理手段)。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0053】
ステップS291では、アクセル足離しによるコースト減速中であるか否かを判断する。YES(コースト減速中)の場合はステップS292へ進み、NO(加速側)の場合はステップS295へ進む。
【0054】
ステップS292では、ステップS291でのコースト減速中であるとの判断に続き、車速が下限値以上であるか否かを判断する。YES(車速≧下限値)の場合はステップS293へ進み、NO(車速<下限値)の場合はステップS295へ進む。
ここで、「下限値」は、クリープトルクが正トルクとなる車速で設定する。
【0055】
ステップS293では、ステップS292での車速≧下限値であるとの判断に続き、加速用変化量制限値よりも小さい値であり、トルク変化勾配が緩やかになるように設定したコースト用変化量制限値を選択し、ステップS294へ進む。
【0056】
ステップS294では、ステップS293でのコースト用変化量制限値の選択に続き、加速用タイマー時間(第1設定時間)より長いコースト用タイマー時間(第2設定時間)を選択し、リターンへ進む。
【0057】
ステップS295では、ステップS291での加速側であるとの判断、あるいは、ステップS292での車速<下限値であるとの判断に続き、コースト用変化量制限値よりも大きく加速要求に適合する値であり、トルク変化勾配が急になるように設定した加速用変化量制限値を選択し、ステップS296へ進む。
【0058】
ステップS296では、ステップS295での加速用変化量制限値の選択に続き、コースト用タイマー時間(第2設定時間)よりも短い加速用タイマー時間(第1設定時間)を選択し、リターンへ進む。
【0059】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「変速制御時におけるモータ制御切り替え作用」、「モータ制御切り替え時のトルク変化遅れ処理作用」、「遅れ処理中にバックアップ用変化量制限値への切り替え作用」、「コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値への切り替え作用」に分けて説明する。
【0060】
[比較例の課題]
モータ制御を切り替える際にトルク変化量を制限する変化量制限値を、アクセル踏み込み時のダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、高応答速度による復帰レスポンスを確保する一つの大きな値により与えるものを比較例1とする。
この比較例1の場合、加速側に適合する変化量制限値ではあるが、コースト側には変化量制限値が大き過ぎてしまい、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が急になる。このため、コースト減速中のローギヤ段へのダウン変速後の回転数制御からトルク制御に切り替わる際、プロペラシャフト等のパワートレイン系の捩れショックが発生しやすい。
【0061】
モータ制御を切り替える際にトルク変化量を制限する変化量制限値を、コースト減速中のダウン変速後に生じるモータトルク差分に対し、捩れショックの発生を抑える一つの小さな値により与えるものを比較例2とする。
この比較例2の場合、コースト側に適合する変化量制限値ではあるが、加速側には変化量制限値が小さ過ぎてしまい、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が緩やかになる。このため、アクセル踏み込み時のダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、高応答速度による復帰レスポンスを確保することができず、ドライバーの加速要求に応えることができない。
【0062】
そこで、モータ制御を切り替える際にトルク変化量を制限する変化量制限値を、比較例1の値と比較例2の値の中間値により与えるものを比較例3とする。
この比較例3の場合、回転数制御からトルク制御に切り替える際、変化量制限値が一つの中間値により与えられ、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が比較例1よりも緩やかで比較例2よりも急になる。このため、加速側においては、大きなモータトルク差分に対して、比較例2よりも応答速度を速くすることができるものの、大きなモータトルク差分の発生に対しドライバーが要求する復帰レスポンスを確保するまでには至らない。一方、コースト側においては、比較例1よりもトルク変化勾配を緩やかになるものの、ショック感度が高いコースト状態で捩れショックを防止するまでには至らない。
【0063】
このように、比較例1,2,3の場合、一つの変化量制限値の設定によりモータトルク差分を繋ぐようにしているため、比較例1,2の場合は、一方の性能要求は満足するものの、他方の性能要求を満足できない。そして、比較例3の場合、加速側での大きなモータトルク差分の発生やコースト側での高いショック感度を考慮していない妥協的な値の設定になる。このため、2つの性能要求を同時に満足するには至らなく、逆に、2つの課題を同時に露呈させてしまう結果になる。
【0064】
[変速制御時におけるモータ制御切り替え作用]
上記のように、本技術は、モータ制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、モータトルク差分を、如何に繋ぐかに係るものである。以下、前提となる変速制御時におけるモータ制御切り替え作用を説明する。
【0065】
まず、変速開始もしくは変速中であるがイナーシャフェーズが開始されてなくスリップ判定不成立である間は、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、変速動作としては、ステップS2において、変速時開放クラッチに対し開放指令が出力されるだけである。
【0066】
そして、イナーシャフェーズが開始されることでスリップ判定が成立すると、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、イナーシャフェーズの開始が判定されると、ステップS4において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられ、トルク制御から回転数制御へと切り替えられる。さらに、ステップS2とステップS5において、変速時開放クラッチと変速時締結クラッチに対し指令を出力することにより変速の進行が図られる。
【0067】
そして、変速終了条件が成立すると、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→リターンへと進み、ステップS7にて変速を終了する。変速を終了すると、次回からは、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→リターンへと進む流れが、次の変速が開始されるまで繰り返される。
【0068】
図9の変速制御処理のステップS4において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられると、図10のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→リターンへと進む流れが繰り返される。すなわち、ステップS24にて回転数制御終了条件が成立するまで、目標値を目標MG回転数とする回転数制御が継続されることになる。
【0069】
そして、変速制御でのイナーシャフェーズが終了し、ステップS24にて回転数制御終了条件が成立すると、図10のフローチャートにおいて、ステップS24からステップS25→リターンへと進む。つまり、イナーシャフェーズの終了が判定されると、ステップS25において、回転数制御フラグが1から0に書き換えられ、回転数制御からトルク制御へと切り替えられる。
【0070】
そして、次の制御周期では、図10のフローチャートにおいて、ステップS20からステップS26以降へ進む。つまり、回転数制御からトルク制御へと切り替えの際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルクの差分に対し選択した変化量制限値による遅れ処理を挟んでトルク制御が開始される。
【0071】
上記のように、モータ制御は、変速制御でイナーシャフェーズが開始するまではトルク制御が維持され、イナーシャフェーズが開始するとトルク制御から回転数制御に切り替えられ、イナーシャフェーズが終了するまで回転数制御が維持される。そして、イナーシャフェーズが終了すると、回転数制御からトルク制御に切り替えられ、この切り替えの際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルク差分に対し、選択した変化量制限値による遅れ処理が行われる。
【0072】
[モータ制御切り替え時のトルク変化遅れ処理作用]
上記比較例1,2,3の課題を解決するには、加速側で復帰レスポンスを確保しながら、コースト減速中における捩れショックの防止を達成する工夫が必要である。以下、これを反映するモータ制御切り替え時のトルク変化遅れ処理作用を説明する。
【0073】
モータジェネレータ2の制御が、回転数制御からトルク制御へと切り替えられると、最初の制御周期は、図10のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS28へ進み、ステップS28において、タイマーリセットされる。そして、次の制御周期からは、図10のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS29へ進み、ステップS29において、図11に示すサブルーチンのフローチャートにより遅れ処理が行われる。以下、回転数制御からトルク制御へ切り替えられた際、「加速側であるとき」と「コースト減速中であるとき」に分けてトルク変化遅れ処理作用を説明する。
【0074】
・加速側であるとき
回転数制御からトルク制御へ切り替えられた際、アクセル踏み込みによる加速側であるときは、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS295→ステップS296→リターンへと進む流れが繰り返される。このとき、ステップS295では、加速用変化量制限値が選択され、ステップS296では、加速用タイマー時間が選択される。
そして、図10のステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS34→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、遅れ処理の開始に合わせて開始されたタイマー時間が、選択された加速用タイマー時間を超えるまでは、サブルーチンにより選択された加速用変化量制限値により、モータトルク差分に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、大きなモータトルク差分になることがある加速側では、アクセル踏み込み操作にあらわれるドライバーの加速要求に応え、モータトルク差分が急勾配のトルク変化により繋がれることで、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが向上する。
【0075】
以下、加速側でモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図12のタイムチャートを用い、加速側でのトルク変化遅れ処理作用を説明する。
図12において、時刻t1はアクセル踏み込み開始時を示す。時刻t2はアクセル踏み込み終了時と3速から2速へのダウン変速要求時を示す。時刻t3はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t4は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t5は加速用タイマー時間Taの終了時を示す。時刻t6は加速側遅れ処理時間Tbの終了時を示す。時刻t7は比較例2での遅れ処理時間Tcの終了時を示す。
【0076】
加速側での3→2ダウン変速時には、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから正の目標トルクまでの大きなモータトルク差分になる。このとき、比較例2のように、小さい値による変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t4から目標モータトルクに到達する時刻t7までは、図12の細実線のモータトルク特性に示すように、緩勾配のモータトルク変化により繋がれる。つまり、回転数制御からトルク制御への切り替えに要する遅れ処理時間としてTcを要する。加えて、図12の点線による加速度特性に示すように、遅れ処理時間Tcにおける車両の加速度上昇が緩やかとなり、ドライバーの加速要求に応えることができない。
【0077】
これに対し、実施例1のように、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t4から加速用タイマー時間Taの終了時刻t5までは、図12の太実線のモータトルク特性に示すように、急勾配のモータトルク変化により繋がれる。そして、加速用タイマー時間Taの終了時刻t5において、モータトルクが目標モータトルクに近い値まで上昇し、時刻t6にてトルク制御での目標モータトルクに到達する。つまり、回転数制御からトルク制御への切り替えに要する遅れ処理時間がTbとなり、比較例2の遅れ処理時間Tcに比べて大幅に短縮されるというように、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが向上する。加えて、図12の実線による加速度特性に示すように、遅れ処理時間がTbにおける車両の加速度上昇が急となり、アクセル踏み込み操作にあらわれるドライバーの加速要求に応えることができる。
【0078】
・コースト減速中であるとき
一方、回転数制御からトルク制御へ切り替えられた際、アクセル足離しによるコースト減速中であるときは、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS292→ステップS293→ステップS294→リターンへと進む流れが繰り返される。このとき、ステップS293では、コースト用変化量制限値が選択され、ステップS294では、コースト用タイマー時間が選択される。
そして、図10のステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS34→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、遅れ処理の開始に合わせて開始されたタイマー時間が、選択されたコースト用タイマー時間を超えるまでは、サブルーチンにより選択された加速用変化量制限値よりも小さいコースト用変化量制限値により、モータトルク差分に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、コースト減速中のときには、捩れ振動によるショック感度が高いアクセル足離し状況であることに応え、モータトルク差分が緩勾配のトルク変化によりゆっくり繋がれることで、モータ制御の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
【0079】
以下、コースト減速中のときにモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図13のタイムチャートを用い、コースト減速中でのトルク変化遅れ処理作用を説明する。
図13において、時刻t1はアクセル足離し開始時を示す。時刻t2はアクセル足離し終了時を示す。時刻t3は3速から2速へのダウン変速要求時を示す。時刻t4はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t5は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t6は比較例3での遅れ処理の終了時を示す。時刻t7はコースト用タイマー時間Tdの終了時を示す。時刻t8はコースト減速中遅れ処理時間Teの終了時を示す。時刻t9はバックアップ処理を行わない時のコースト減速中遅れ処理時間Tfの終了時を示す。
【0080】
コースト減速中における3→2ダウン変速時には、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから負の目標モータトルク(2速)までの負のトルク領域での小さなモータトルク差分になる。このとき、比較例3のように、中間値による変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t6までは、図13の細実線のモータトルク特性に示すように、中間勾配のモータトルク変化により繋がれる。つまり、捩れ振動によるショックの感度が高いコースト減速中であるにもかかわらず、回転数制御からトルク制御に切り替わる際のトルク差分が予想以上の急勾配によるトルク変化で繋がれる。このため、図12の点線による加速度特性に示すように、時刻t6の直前領域にて加速度が急変する突き上げが生じ、ドライバーに捩れショック感を与えてしまう。
【0081】
これに対し、実施例1のように、加速用変化量制限値より小さいコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t5からコースト用タイマー時間Tdの終了時刻t7までは、図13の太線のモータトルク特性に示すように、かなり緩やかなモータトルク変化により繋がれる。つまり、捩れ振動によるショックの感度が高いコースト減速中であることに対応し、回転数制御からトルク制御に切り替わる際のトルク差分が緩勾配のトルク変化によりゆっくり繋がれる。このため、図13の実線による加速度特性に示すように、時刻t7の直前領域にて、ドライバーに捩れショック感を与えないレベルで加速度が緩やかに変化するだけで、モータ制御の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
【0082】
上記のように、実施例1では、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御とトルク制御のモータトルク差分に対し、加速側専用の変化量制限値と、コースト減速中専用の変化量制限値と、を用意しておく。そして、加速側であるかコースト減速中であるかの判断に基づいて、2つの変化量制限値を使い分ける構成を採用した。
この構成により、コースト減速中は、捩れ振動によるショックの感度が高く、回転数制御からトルク制御に切り替わる際のトルク差分をかなりゆっくりと繋ぐ必要があるが、この要求に応える。一方、加速側は、大きい変化量制限値で遅れ処理を行なうので、レスポンス等の課題も解決される。
したがって、モータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
【0083】
[遅れ処理中にバックアップ用変化量制限値への切り替え作用]
上記のように、遅れ処理を行うに際し、大きくかけ離れた値による加速用変化量制限値とコースト用変化量制限値を用意した。このため、処理終了までそれぞれの変化量制限値だけを選択した場合に生じる新たな課題への対策が必要である。以下、これを反映する遅れ処理中にバックアップ用変化量制限値への切り替え作用を、「加速側であるとき」と「コースト減速中であるとき」に分けて説明する。
【0084】
・加速側であるとき
加速側での遅れ処理中にタイマー時間が加速用タイマー時間Taを超えると、図10のフローチャートにおいて、ステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、加速側での遅れ処理開始からの経過時間が加速用タイマー時間Taを超えると、加速用変化量制限値の選択からバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられ、残ったモータトルク差に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
【0085】
すなわち、加速要求に適合する加速用変化量制限値を維持したままで目標モータトルクに到達するまでモータトルク変化の遅れ処理を行うと、図12の矢印Aの点線によるモータトルク特性に示すように、オーバーシュートによりモータトルクが目標モータトルクを超えることがある。このモータトルクのオーバーシュートを原因とし、図12の矢印Bの点線による加速度特性に示すように、車両の加速度が突出し、乗員に車両の飛び出し感を与える可能性がある。
【0086】
これに対し、実施例1では、加速用タイマー時間Taを、モータトルク差分の大きいとき、加速用変化量制限値による遅れ処理により目標モータトルクに到達する前までの時間に設定する。そして、切り替え開始時刻t4から、加速用タイマー時間Taを経過することで時刻t5に到達すると、選択されている加速用変化量制限値よりも小さい値によるバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられる。よって、図12の実線によるモータトルク特性に示すように、オーバーシュートによりモータトルクが目標モータトルクを超えることがなく、図12の実線による加速度特性に示すように、車両の加速度の突出が抑えられる。
【0087】
・コースト減速中であるとき
コースト減速中での遅れ処理中にタイマー時間がコースト用タイマー時間を超えると、図10のフローチャートにおいて、ステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、変化量制限値が、コースト用変化量制限値の選択からバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられ、残ったモータトルク差に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
【0088】
すなわち、コースト用変化量制限値を維持したままで目標モータトルクに到達するまでモータトルク変化の遅れ処理を行うと、図13の矢印Cの点線によるモータトルク特性に示すように、時刻t9にて目標モータトルクに到達する。よって、コースト減速中遅れ処理時間としてTfを要し、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスの悪化を招く。
【0089】
これに対し、実施例1では、コースト用タイマー時間Tdを、コースト用変化量制限値による遅れ処理により目標モータトルクに到達する前までの時間であって、加速用タイマー時間Taより長い時間に設定する。そして、切り替え開始時刻t5から、コースト用タイマー時間Tdを経過することで時刻t7に到達すると、選択されているコースト用変化量制限値よりも大きい値によるバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられる。そして、時刻t8にて目標モータトルクに到達する。よって、コースト減速中遅れ処理時間が、コースト減速中遅れ処理時間Tdとなり、コースト減速中遅れ処理時間Tfに比べて短縮される。
【0090】
上記のように、実施例1では、コースト用変化量制限値が選択されているとき、所定時間(コースト用タイマー時間Td)を経過すると、コースト用変化量制限値よりも大きい値に設定したバックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう構成を採用した。
この構成により、ショックに対して敏感なコースト減速中は、長い時間傾きをゆっくりにし、所定時間を過ぎたら傾きを急にしてトルク制御での目標モータトルクに向かう。
したがって、コースト減速中の遅れ処理において、捩れショックの防止を確保しつつ、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが改善される。
【0091】
実施例1では、バックアップ用変化量制限値を、加速用変化量制限値とコースト用変化量制限値の中間的な値に設定する。そして、加速用変化量制限値が選択されているとき、加速用タイマー時間Taを経過するとバックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう。一方、コースト用変化量制限値が選択されているとき、加速用タイマー時間Taより長いコースト用タイマー時間Tdを経過するとバックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう構成を採用した。
この構成により、遅れ処理の途中において、加速側とコースト減速中とで異ならせた経過時間により、バックアップ用変化量制限値へ切り替え選択される。
したがって、1つのバックアップ用変化量制限値を用いながらも、加速側での飛び出し感の防止と、コースト減速中における切り替えレスポンスの改善と、が両立される。
【0092】
[コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値への切り替え作用]
上記コースト減速中の遅れ処理は所定時間を要するため、処理途中において、アクセル踏み込みが行われたり、車速の急低下があったりした場合には、これらの状況変化に対応する工夫が必要である。以下、これを反映するコースト用変化量制限値から加速用変化量制限値への切り替え作用を説明する。
【0093】
まず、コースト減速中で、車速が下限値以上であるときには、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS292→ステップS293→ステップS294→リターンへと進む流れが繰り返され、ステップS293にてコースト用変化量制限値が選択される。
【0094】
このように、コースト用変化量制限値が選択されているとき、ドライバーによりアクセル踏み込み操作が行われると、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS295→ステップS296→リターンへと進む流れが繰り返され、ステップS295にて加速用変化量制限値が選択される。
したがって、コースト減速中の遅れ処理の途中にてアクセル踏み込みが行われると、コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値へと変速量制限値が切り替えられる。
【0095】
一方、コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が低下して下限値未満になると、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS292→ステップS295→ステップS296→リターンへと進む流れが繰り返され、ステップS295にて加速用変化量制限値が選択される。
すなわち、車両の急減速により変速処理が遅れ、コーストダウン変速がクリープ領域に突入した場合、コースト用変化量制限値によりトルク勾配が緩い状態を続けると、クリープトルクが出ないため、車両停止時のショックが悪化する。
これに対し、車速が下限値未満になり、クリープ領域まで低下したら、加速用変化量制限値に切り替えることで、クリープトルクを出すことが可能になる。
【0096】
上記のように、実施例1では、コースト用変化量制限値が選択されているとき、アクセル踏み込み操作が行われると、加速用変化量制限値の選択に切り替える構成を採用した。
この構成により、コースト用変化量制限値が選択されている遅れ処理途中でドライバーによる再踏み込み操作が行われると、加速用変化量制限値に切り替えられる。
したがって、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中でアクセル再踏み込み操作が行われたとき、ドライバーの加速要求に応えて回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが確保される。
【0097】
上記のように、実施例1では、コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が下限車速未満になると、加速用変化量制限値の選択に切り替える構成を採用した。
この構成により、コーストダウン変速の変速処理が遅れ、車両の急減速により車速がクリープ領域まで低下したとき、コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値に切り替えることで、クリープトルクを出すことが可能になる。
したがって、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中で車両の急減速により車速がクリープ領域まで低下したとき、車両停止時のショックが低減される。
【0098】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0099】
(1) 走行用駆動源に設けられる電動モータ(モータジェネレータ2)と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)の制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替えるモータ制御切り替え手段(図9)と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行ない、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、前記加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう遅れ処理手段(図10,図11)と、
を備える。
このため、電動モータ(モータジェネレータ2)を回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止することができるができる。
【0100】
(2) 前記遅れ処理手段(図10,図11)は、少なくとも前記コースト用変化量制限値よりも大きい値に設定したバックアップ用変化量制限値と、を有し、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、所定時間(コースト用タイマー時間Td)を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう(図10のステップS33)。
このため、(1)の効果に加え、コースト減速中の遅れ処理において、捩れショックの防止を確保しつつ、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスを改善することができる。
【0101】
(3) 前記遅れ処理手段(図10,図11)は、前記バックアップ用変化量制限値を、前記加速用変化量制限値と前記コースト用変化量制限値の中間的な値に設定し、前記加速用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間(加速用タイマー時間Ta)を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行ない、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間(加速用タイマー時間Ta)より長い第2設定時間(コースト用タイマー時間Td)を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう(図10のステップS33)。
このため、上記(2)の効果に加え、1つのバックアップ用変化量制限値を用いながらも、加速側での飛び出し感の防止と、コースト減速中における切り替えレスポンスの改善と、の両立を図ることができる。
【0102】
(4) 前記遅れ処理手段(図11)は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、アクセル踏み込み操作が行われると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替える(ステップS291)。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中でアクセル再踏み込み操作が行われたとき、ドライバーの加速要求に応えて回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスを確保することができる。
【0103】
(5) 前記遅れ処理手段(図11)は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が所定車速(下限値)未満になると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替える(ステップS292)。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中で車両の急減速により車速がクリープ領域まで低下したとき、車両停止時のショックを低減することができる。
【0104】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0105】
実施例1では、モータジェネレータ2の制御を、回転数制御からトルク制御に切り替える例として、3→2ダウン変速介入により切り替える例を示した。しかし、他のダウン変速介入により切り替える例や、アップ変速介入により切り替える例や、変速介入が無く第2クラッチCL2のスリップ制御の終了により回転数制御からトルク制御に切り替える例であっても良い。要するに、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際にモータトルク差分が発生する場合には、本発明を適用できる。
【0106】
実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0107】
実施例1では、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段として、第1クラッチ4を用いる例を示した。しかし、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段としては、例えば、プラネタリギア等のように、クラッチを用いることなくクラッチ機能を発揮するような差動装置や動力分割装置を用いる例としても良い。
【0108】
実施例1では、本発明の制御装置をハイブリッド車両に対し適用した例を示した。しかし、走行用駆動源にモータジェネレータを備えた電気自動車や燃料電池車、等の他の電動車両に対しても適用することができる。また、実施例1で示した1モータ・2クラッチのハイブリッド車両以外の駆動系形式によるハイブリッド車両に対しても勿論適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(電動モータ)
3 自動変速機
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
6 ディファレンシャルギア
7 タイヤ(駆動輪)
8 インバータ
9 バッテリ
10 エンジン回転センサ
11 MG回転センサ
12 AT入力回転センサ
13 AT出力回転センサ
14,15 ソレノイドバルブ
16 SOCセンサ
17 アクセル開度センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータコントローラ
23 ブレーキ油圧センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転数制御とトルク制御を行う電動モータを走行用駆動源に備える電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転数制御とトルク制御を行う電動モータを走行用駆動源に備え、走行状況や車両状況に応じて回転数制御とトルク制御を切り替える制御を行うハイブリッド車両の駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来装置は、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクからトルク制御開始時の目標モータトルクに差が発生した場合、所定の変化率をつけてモータトルクを変化させる制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−174209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来装置にあっては、モータ制御を切り替える際、モータトルクの変化を所定の変化率とする変化量制限値を、アクセル踏み込み時のダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、高い復帰応答性を確保する値により与えるようにしている。このため、コースト減速中のローギヤ段へのダウン変速後、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、プロペラシャフト等のパワートレイン系に捩れショックが発生しやすい、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止することができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置は、電動モータと、モータ制御切り替え手段と、遅れ処理手段と、を備える手段とした。
前記電動モータは、走行用駆動源に設けられる。
前記モータ制御切り替え手段は、前記電動モータの制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替える。
前記遅れ処理手段は、前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行ない、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、前記加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう。
【発明の効果】
【0007】
よって、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル踏み込みによる加速側では、モータトルク差分に対し、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、大きなモータトルク差分になることがある加速側では、アクセル踏み込み操作にあらわれるドライバーの加速要求に応え、モータトルク差分が急勾配のトルク変化により繋がれることで、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが向上する。
一方、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、モータトルク差分に対し、加速用変化量制限値よりも小さいコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、コースト減速中のときには、捩れ振動によるショック感度が高いアクセル足離し状況であることに応え、モータトルク差分が緩勾配のトルク変化によりゆっくり繋がれることで、モータ制御の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
この結果、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。
【図3】実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。
【図4】実施例1の制御装置で用いられる定常目標トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。
【図5】実施例1の制御装置で用いられるエンジン始動停止線マップを示すマップ図である。
【図6】実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中要求発電出力を示す特性図である。
【図7】実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最良燃費線を示す特性図である。
【図8】実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。
【図9】実施例1の統合コントローラの変速制御部にて実行される変速制御処理の構成と流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例1のモータコントローラにてメインルーチンとして実行される回転数制御とトルク制御の切り替え処理の構成と流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例1のモータコントローラにてモータジェネレータを回転数制御からトルク制御に切り替える際にサブルーチンとして実行されるモータトルク変化の遅れ処理の構成と流れを示すフローチャートである。
【図12】実施例1の制御装置を搭載したハイブリッド車両がアクセル踏み込みによる加速側でモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。
【図13】実施例1の制御装置を搭載したハイブリッド車両がアクセル足離しによるコースト減速中にモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。以下、図1に基づき、パワートレイン構成を説明する。
【0011】
実施例1のハイブリッド車両のパワートレイン系には、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2(電動モータ;以下、「MG」と記載する。)と、自動変速機3(以下、「AT」と記載する。)と、第1クラッチ4(以下、「CL1」と記載する。)と、第2クラッチ5(以下、「CL2」と記載する。)と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7,7と、を備えている。つまり、エンジン1と1モータ・2クラッチをパワートレイン系に備えた構成としている。
【0012】
前記エンジン1は、エンジン出力軸とモータジェネレータ2のモータ入力軸とが、トルク容量可変の第1クラッチ4を介して連結される。前記モータジェネレータ2は、モータ出力軸と自動変速機3の変速機入力軸とが、直接連結される。前記自動変速機3は、変速機出力軸にディファレンシャルギア6を介して駆動輪であるタイヤ7,7が連結される。
【0013】
前記第2クラッチ5は、自動変速機3のシフト状態に応じて異なる変速機内の動力伝達を担っているトルク容量可変のクラッチ・ブレーキによる複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を選択して用いている。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力と、を合成してタイヤ7,7へ出力する。
【0014】
前記第1クラッチ4としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる乾式単板クラッチや乾式多板クラッチ等を用いればよい。前記第2クラッチ5としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等を用いればよい。このパワートレイン系には、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードがあり、第1クラッチ4を切断したCL1開放状態では、モータジェネレータ2の動力のみで走行するEVモード(電気自動車走行モード)である。一方、第1クラッチ4を接続したCL1締結状態では、エンジン1とモータジェネレータ2の動力で走行するHEVモード(ハイブリッド車走行モード)である。
【0015】
前記パワートレインには、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
【0016】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。以下、図2に基づいて、制御システム構成を説明する。
【0017】
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、ソレノイドバルブ14と、ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ17と、ブレーキ油圧センサ23と、SOCセンサ16と、を備えている。
【0018】
前記統合コントローラ20は、パワートレイン系の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOと、バッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、選択した運転モードに応じ、モータコントローラ22に対し目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に対し目標エンジントルクを指令し、ソレノイドバルブ14,15に対し駆動信号を指令する。
【0019】
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。前記ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ17は、アクセル開度(APO)を検出する。前記ブレーキ油圧センサ23は、ブレーキ油圧(BPS)を検出する。前記SOCセンサ16は、バッテリ9の充電容量状態を検出する。
【0020】
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて、統合コントローラ20の構成を説明する。
【0021】
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
【0022】
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常駆動トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
【0023】
前記モード選択部200は、車速VSPおよびアクセル開度APOと、図5に示すエンジン始動停止線マップと、を用いて、運転モード(HEVモード、EVモード)を演算する。エンジン始動線とエンジン停止線は、エンジン始動線(SOC高、SOC低)とエンジン停止線(SOC高、SOC低)の特性に代表されるように、バッテリSOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下する特性として設定されている。なお、エンジン始動は、EVモード状態で図5に示すエンジン始動線をアクセル開度APOと車速VSPによる運転点が超えた時点で、スリップ締結状態が実現可能なように第2クラッチ5の締結トルク容量をドライバー要求駆動トルク相当に制御する。そして、第2クラッチ5がスリップ開始したとの判断後に第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなった時点で第1クラッチ4を完全に締結する。その後、第2クラッチ5をロックアップさせてHEVモードに遷移させる処理により行われる。
【0024】
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最良燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
【0025】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク,MGアシストトルクと目標モードと車速VSPと要求発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標CL2トルク容量と目標変速比とCL1ソレノイド電流指令を演算する。
【0026】
前記変速制御部500は、目標CL2トルク容量と目標変速比とから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。変速制御は、車速VSPとアクセル開度APOによる運転点と変速線マップに基づいて、現在のギヤ段から次ギヤ段をどのギヤ段にするかを判定する。そして、運転点が変速線マップのアップ変速線(図8の実線)またはダウン変速線(図8の点線)を横切るとアップ変速要求またはダウン変速要求を出し、変速要求に対応する自動変速機3の摩擦締結要素を締結/開放制御して変速させる。なお、実施例1では、変速時に自動変速機3の入力側に有するモータジェネレータ2による回転数制御を加えることで、油圧制御だけによる変速制御の場合に比べ、イナーシャフェーズ領域でのギヤ比変化を滑らかにする変速制御を行うようにしている。
【0027】
図9は、実施例1の統合コントローラ20の変速制御部500にて実行される変速制御処理の構成と流れを示す。以下、図9の各ステップについて説明する。
【0028】
ステップS1では、現ギヤ段と次ギヤ段が異なっていて、現ギヤ段から次ギヤ段への変速開始、もしくは、変速中であるか否かを判断する。YES(変速開始、もしくは、変速中)の場合はステップS2へ進み、NO(ギヤ段固定)の場合はリターンへ進む。
【0029】
ステップS2では、ステップS1での変速開始、もしくは、変速中であるとの判断に続き、変速時開放クラッチに開放指令を出力し、ステップS3へ進む。
ここで、変速に際しては、そのときの変速に関与する2つのクラッチのうち、一方のクラッチを開放し、他方のクラッチを締結するクラッチ掛け替えにより行われる。このクラッチ掛け替え時の開放側クラッチを「変速時開放クラッチ」といい、締結側クラッチを「変速時締結クラッチ」という。
【0030】
ステップS3では、ステップS2での変速時開放クラッチへの開放指令出力に続き、スリップ判定成立(自動変速機3の入力回転数と出力回転数の差が、確実にクラッチスリップしていると判定できる回転差閾値になった場合)であるか否かを判断する。YES(スリップ判定成立)の場合はステップS4へ進み、NO(スリップ判定不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、変速制御は、変速開始フェーズ→トルクフェーズ→イナーシャフェーズ→変速終了フェーズを経過して行われるが、イナーシャフェーズが開始されると自動変速機3の入力回転数と出力回転数に差が生じる。よって、このスリップ判定は、言い換えると、イナーシャフェーズ領域に入ったイナーシャフェーズ開始判定ということができる。
【0031】
ステップS4では、ステップS3でのスリップ判定成立であるとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=0(トルク制御)から回転数制御フラグ=1(回転数制御)に書き換え、ステップS5へ進む。
【0032】
ステップS5では、ステップS4での回転数制御フラグ=1への書き換えに続き、変速時締結クラッチに締結指令を出力し、ステップS6へ進む。
【0033】
ステップS6では、ステップS5での変速時締結クラッチへの締結指令出力に続き、回転数制御フラグ=0(図10のステップS25)、かつ、変速処理終了であるか否かを判断する。YES(変速終了条件成立)の場合はステップS7へ進み、NO(変速終了条件不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、変速処理終了は、例えば、変速時開放クラッチが完全開放で、変速時締結クラッチの油圧が所定値以上となった時をいう。
【0034】
ステップS7では、ステップS6での変速終了条件成立であるとの判断に続き、変速を終了し、リターンへ進む。
【0035】
図10は、実施例1のモータコントローラ22にてメインルーチンとして実行される回転数制御とトルク制御の切り替え処理の構成と流れを示す(モータ制御切り替え手段)。以下、図10の各ステップについて説明する。
【0036】
ステップS20では、回転数制御フラグ=1であるか否かを判断する。YES(回転数制御フラグ=1)の場合はステップS21へ進み、NO(回転数制御フラグ=0)の場合はステップS26へ進む。
つまり、変速制御処理を示す図9のステップS4にて回転数制御フラグ=1に書き換えられるとYESと判断され、後述するステップS25にて回転数制御フラグ=0に書き換えられるとNOと判断される。
【0037】
ステップS21では、ステップS20での回転数制御フラグ=1であるとの判断に続き、現ギヤ段と次ギヤ段で決まる変速モードに応じ、エンジン1にて実現する目標エンジントルクを算出し、ステップS22へ進む。
【0038】
ステップS22では、ステップS21での目標エンジントルクの算出に続き、現ギヤ段と次ギヤ段で決まる変速モードに応じ、モータジェネレータ2にて実現する目標MG回転数を算出し、ステップS23へ進む。
ここで、回転数制御の目標値である目標MG回転数は、アップ変速の場合、現ギヤ段での変速機入力回転数から徐々に次ギヤ段での変速機入力回転数まで低下するように算出される。一方、ダウン変速の場合、現ギヤ段での変速機入力回転数から徐々に次ギヤ段での変速機入力回転数まで上昇するように算出される。
【0039】
ステップS23では、ステップS22での目標回転数算出に続き、目標回転数に追従するようにモータトルクを算出し、ステップS24へ進む。
【0040】
ステップS24では、ステップS23でのモータトルクの算出に続き、回転数制御終了条件が成立しているか否かを判断する。YES(回転数制御終了条件成立)の場合はステップS25へ進み、NO(回転数制御終了条件不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、回転数制御終了条件成立とは、変速後の次ギヤ段でのギヤ比により決まる変速機入力回転数と変速機出力回転数の差が、ロックアップしていると判定できる回転差になったときをいう。言い換えると、変速機入力回転数が、変速後の次ギヤ段による変速機入力回転数に収束し、イナーシャフェーズ領域から抜け出したイナーシャフェーズ終了を判定していることになる。
【0041】
ステップS25では、ステップS24での回転数制御終了条件成立であるとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=1(回転数制御)から回転数制御フラグ=0(トルク制御)に書き換え、リターンへ進む。
【0042】
ステップS26では、ステップS20での回転数制御フラグ=0であるとの判断に続き、トルク制御を行う場合の目標値である目標エンジントルクと目標モータトルクを算出し、ステップS27へ進む。
【0043】
ステップS27では、ステップS26での目標エンジントルク・目標モータトルクの算出に続き、回転数制御フラグの前回値が回転数制御フラグ=1で、かつ、今回値が回転数制御フラグ=0であるか否か、つまり、回転数制御からトルク制御への切り替え開始条件が成立しているか否かを判断する。YES(切り替え開始条件成立)の場合はステップS28へ進み、NO(切り替え開始条件不成立)の場合はステップS29へ進む。
【0044】
ステップS28では、ステップS27での切り替え開始条件成立であるとの判断に続き、バックアップ用変化量制限値を選択するまでの時間を計測するタイマーをリセットし、ステップS30へ進む。
【0045】
ステップS29では、ステップS27での切り替え開始条件不成立であるとの判断に続き、図11に示すサブルーチンのフローチャートに基づく変化量制限値の選択による遅れ処理中であるか否かを判断する。YES(遅れ処理中)の場合はステップS30へ進み、NO(遅れ処理終了)の場合はリターンへ進む。
この遅れ処理とは、回転数制御からトルク制御へ切り替える際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルクとの間には差分が残っているため、このトルク差分を緩やかな変化勾配にて繋ぐ処理である。
【0046】
ステップS30では、ステップS28でのタイマーリセット、あるいは、ステップS29での遅れ処理中であるとの判断に続き、タイマーカウントを開始し、ステップS31へ進む。
【0047】
ステップS31では、ステップS30でのタイマーカウント開始に続き、図11のサブルーチンで決まったタイムアウト時間を選択し、ステップS32へ進む。
【0048】
ステップS32では、ステップS31でのタイムアウト時間の選択に続き、タイマーカウントによるタイマー値(回転数制御からトルク制御に切り替えてからの経過時間をあらわす)が、選択されたタイムアウト時間を超えているか否かを判断する。YES(タイマー>タイムアウト時間)の場合はステップS33へ進み、NO(タイマー≦タイムアウト時間)の場合はステップS34へ進む。
【0049】
ステップS33では、ステップS32でのタイマー>タイムアウト時間であるとの判断に続き、サブルーチンで選択される変化量制限値に代え、バックアップ用変化量制限値を選択し、ステップS35へ進む。
ここで、バックアップ用変化量制限値は、少なくともコースト用変化量制限値よりも大きな値で、加速用変化量制限値とコースト用変化量制限値の中間的な値に設定される。つまり、コースト用変化量制限値<バックアップ用変化量制限値<加速用変化量制限値という大小関係を持たせてそれぞれの値が設定される。
【0050】
ステップS34では、ステップS32でのタイマー≦タイムアウト時間であるとの判断に続き、サブルーチンで決まった変化量制限値(加速用変化量制限値またはコースト用変化量制限値)を選択し、ステップS35へ進む。
【0051】
ステップS35では、ステップS33またはステップS34での変化量制限値の選択に続き、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルクの差分に対し選択した変化量制限値による遅れ処理を行い、リターンへ進む。
【0052】
図11は、実施例1のモータコントローラ22にてモータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際にサブルーチンとして実行されるモータトルク変化の遅れ処理の構成と流れを示す(遅れ処理手段)。以下、図11の各ステップについて説明する。
【0053】
ステップS291では、アクセル足離しによるコースト減速中であるか否かを判断する。YES(コースト減速中)の場合はステップS292へ進み、NO(加速側)の場合はステップS295へ進む。
【0054】
ステップS292では、ステップS291でのコースト減速中であるとの判断に続き、車速が下限値以上であるか否かを判断する。YES(車速≧下限値)の場合はステップS293へ進み、NO(車速<下限値)の場合はステップS295へ進む。
ここで、「下限値」は、クリープトルクが正トルクとなる車速で設定する。
【0055】
ステップS293では、ステップS292での車速≧下限値であるとの判断に続き、加速用変化量制限値よりも小さい値であり、トルク変化勾配が緩やかになるように設定したコースト用変化量制限値を選択し、ステップS294へ進む。
【0056】
ステップS294では、ステップS293でのコースト用変化量制限値の選択に続き、加速用タイマー時間(第1設定時間)より長いコースト用タイマー時間(第2設定時間)を選択し、リターンへ進む。
【0057】
ステップS295では、ステップS291での加速側であるとの判断、あるいは、ステップS292での車速<下限値であるとの判断に続き、コースト用変化量制限値よりも大きく加速要求に適合する値であり、トルク変化勾配が急になるように設定した加速用変化量制限値を選択し、ステップS296へ進む。
【0058】
ステップS296では、ステップS295での加速用変化量制限値の選択に続き、コースト用タイマー時間(第2設定時間)よりも短い加速用タイマー時間(第1設定時間)を選択し、リターンへ進む。
【0059】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「変速制御時におけるモータ制御切り替え作用」、「モータ制御切り替え時のトルク変化遅れ処理作用」、「遅れ処理中にバックアップ用変化量制限値への切り替え作用」、「コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値への切り替え作用」に分けて説明する。
【0060】
[比較例の課題]
モータ制御を切り替える際にトルク変化量を制限する変化量制限値を、アクセル踏み込み時のダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、高応答速度による復帰レスポンスを確保する一つの大きな値により与えるものを比較例1とする。
この比較例1の場合、加速側に適合する変化量制限値ではあるが、コースト側には変化量制限値が大き過ぎてしまい、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が急になる。このため、コースト減速中のローギヤ段へのダウン変速後の回転数制御からトルク制御に切り替わる際、プロペラシャフト等のパワートレイン系の捩れショックが発生しやすい。
【0061】
モータ制御を切り替える際にトルク変化量を制限する変化量制限値を、コースト減速中のダウン変速後に生じるモータトルク差分に対し、捩れショックの発生を抑える一つの小さな値により与えるものを比較例2とする。
この比較例2の場合、コースト側に適合する変化量制限値ではあるが、加速側には変化量制限値が小さ過ぎてしまい、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が緩やかになる。このため、アクセル踏み込み時のダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、高応答速度による復帰レスポンスを確保することができず、ドライバーの加速要求に応えることができない。
【0062】
そこで、モータ制御を切り替える際にトルク変化量を制限する変化量制限値を、比較例1の値と比較例2の値の中間値により与えるものを比較例3とする。
この比較例3の場合、回転数制御からトルク制御に切り替える際、変化量制限値が一つの中間値により与えられ、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が比較例1よりも緩やかで比較例2よりも急になる。このため、加速側においては、大きなモータトルク差分に対して、比較例2よりも応答速度を速くすることができるものの、大きなモータトルク差分の発生に対しドライバーが要求する復帰レスポンスを確保するまでには至らない。一方、コースト側においては、比較例1よりもトルク変化勾配を緩やかになるものの、ショック感度が高いコースト状態で捩れショックを防止するまでには至らない。
【0063】
このように、比較例1,2,3の場合、一つの変化量制限値の設定によりモータトルク差分を繋ぐようにしているため、比較例1,2の場合は、一方の性能要求は満足するものの、他方の性能要求を満足できない。そして、比較例3の場合、加速側での大きなモータトルク差分の発生やコースト側での高いショック感度を考慮していない妥協的な値の設定になる。このため、2つの性能要求を同時に満足するには至らなく、逆に、2つの課題を同時に露呈させてしまう結果になる。
【0064】
[変速制御時におけるモータ制御切り替え作用]
上記のように、本技術は、モータ制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、モータトルク差分を、如何に繋ぐかに係るものである。以下、前提となる変速制御時におけるモータ制御切り替え作用を説明する。
【0065】
まず、変速開始もしくは変速中であるがイナーシャフェーズが開始されてなくスリップ判定不成立である間は、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、変速動作としては、ステップS2において、変速時開放クラッチに対し開放指令が出力されるだけである。
【0066】
そして、イナーシャフェーズが開始されることでスリップ判定が成立すると、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、イナーシャフェーズの開始が判定されると、ステップS4において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられ、トルク制御から回転数制御へと切り替えられる。さらに、ステップS2とステップS5において、変速時開放クラッチと変速時締結クラッチに対し指令を出力することにより変速の進行が図られる。
【0067】
そして、変速終了条件が成立すると、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→リターンへと進み、ステップS7にて変速を終了する。変速を終了すると、次回からは、図9のフローチャートにおいて、ステップS1→リターンへと進む流れが、次の変速が開始されるまで繰り返される。
【0068】
図9の変速制御処理のステップS4において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられると、図10のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→リターンへと進む流れが繰り返される。すなわち、ステップS24にて回転数制御終了条件が成立するまで、目標値を目標MG回転数とする回転数制御が継続されることになる。
【0069】
そして、変速制御でのイナーシャフェーズが終了し、ステップS24にて回転数制御終了条件が成立すると、図10のフローチャートにおいて、ステップS24からステップS25→リターンへと進む。つまり、イナーシャフェーズの終了が判定されると、ステップS25において、回転数制御フラグが1から0に書き換えられ、回転数制御からトルク制御へと切り替えられる。
【0070】
そして、次の制御周期では、図10のフローチャートにおいて、ステップS20からステップS26以降へ進む。つまり、回転数制御からトルク制御へと切り替えの際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルクの差分に対し選択した変化量制限値による遅れ処理を挟んでトルク制御が開始される。
【0071】
上記のように、モータ制御は、変速制御でイナーシャフェーズが開始するまではトルク制御が維持され、イナーシャフェーズが開始するとトルク制御から回転数制御に切り替えられ、イナーシャフェーズが終了するまで回転数制御が維持される。そして、イナーシャフェーズが終了すると、回転数制御からトルク制御に切り替えられ、この切り替えの際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルク差分に対し、選択した変化量制限値による遅れ処理が行われる。
【0072】
[モータ制御切り替え時のトルク変化遅れ処理作用]
上記比較例1,2,3の課題を解決するには、加速側で復帰レスポンスを確保しながら、コースト減速中における捩れショックの防止を達成する工夫が必要である。以下、これを反映するモータ制御切り替え時のトルク変化遅れ処理作用を説明する。
【0073】
モータジェネレータ2の制御が、回転数制御からトルク制御へと切り替えられると、最初の制御周期は、図10のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS28へ進み、ステップS28において、タイマーリセットされる。そして、次の制御周期からは、図10のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS29へ進み、ステップS29において、図11に示すサブルーチンのフローチャートにより遅れ処理が行われる。以下、回転数制御からトルク制御へ切り替えられた際、「加速側であるとき」と「コースト減速中であるとき」に分けてトルク変化遅れ処理作用を説明する。
【0074】
・加速側であるとき
回転数制御からトルク制御へ切り替えられた際、アクセル踏み込みによる加速側であるときは、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS295→ステップS296→リターンへと進む流れが繰り返される。このとき、ステップS295では、加速用変化量制限値が選択され、ステップS296では、加速用タイマー時間が選択される。
そして、図10のステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS34→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、遅れ処理の開始に合わせて開始されたタイマー時間が、選択された加速用タイマー時間を超えるまでは、サブルーチンにより選択された加速用変化量制限値により、モータトルク差分に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、大きなモータトルク差分になることがある加速側では、アクセル踏み込み操作にあらわれるドライバーの加速要求に応え、モータトルク差分が急勾配のトルク変化により繋がれることで、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが向上する。
【0075】
以下、加速側でモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図12のタイムチャートを用い、加速側でのトルク変化遅れ処理作用を説明する。
図12において、時刻t1はアクセル踏み込み開始時を示す。時刻t2はアクセル踏み込み終了時と3速から2速へのダウン変速要求時を示す。時刻t3はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t4は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t5は加速用タイマー時間Taの終了時を示す。時刻t6は加速側遅れ処理時間Tbの終了時を示す。時刻t7は比較例2での遅れ処理時間Tcの終了時を示す。
【0076】
加速側での3→2ダウン変速時には、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから正の目標トルクまでの大きなモータトルク差分になる。このとき、比較例2のように、小さい値による変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t4から目標モータトルクに到達する時刻t7までは、図12の細実線のモータトルク特性に示すように、緩勾配のモータトルク変化により繋がれる。つまり、回転数制御からトルク制御への切り替えに要する遅れ処理時間としてTcを要する。加えて、図12の点線による加速度特性に示すように、遅れ処理時間Tcにおける車両の加速度上昇が緩やかとなり、ドライバーの加速要求に応えることができない。
【0077】
これに対し、実施例1のように、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t4から加速用タイマー時間Taの終了時刻t5までは、図12の太実線のモータトルク特性に示すように、急勾配のモータトルク変化により繋がれる。そして、加速用タイマー時間Taの終了時刻t5において、モータトルクが目標モータトルクに近い値まで上昇し、時刻t6にてトルク制御での目標モータトルクに到達する。つまり、回転数制御からトルク制御への切り替えに要する遅れ処理時間がTbとなり、比較例2の遅れ処理時間Tcに比べて大幅に短縮されるというように、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが向上する。加えて、図12の実線による加速度特性に示すように、遅れ処理時間がTbにおける車両の加速度上昇が急となり、アクセル踏み込み操作にあらわれるドライバーの加速要求に応えることができる。
【0078】
・コースト減速中であるとき
一方、回転数制御からトルク制御へ切り替えられた際、アクセル足離しによるコースト減速中であるときは、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS292→ステップS293→ステップS294→リターンへと進む流れが繰り返される。このとき、ステップS293では、コースト用変化量制限値が選択され、ステップS294では、コースト用タイマー時間が選択される。
そして、図10のステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS34→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、遅れ処理の開始に合わせて開始されたタイマー時間が、選択されたコースト用タイマー時間を超えるまでは、サブルーチンにより選択された加速用変化量制限値よりも小さいコースト用変化量制限値により、モータトルク差分に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
したがって、コースト減速中のときには、捩れ振動によるショック感度が高いアクセル足離し状況であることに応え、モータトルク差分が緩勾配のトルク変化によりゆっくり繋がれることで、モータ制御の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
【0079】
以下、コースト減速中のときにモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図13のタイムチャートを用い、コースト減速中でのトルク変化遅れ処理作用を説明する。
図13において、時刻t1はアクセル足離し開始時を示す。時刻t2はアクセル足離し終了時を示す。時刻t3は3速から2速へのダウン変速要求時を示す。時刻t4はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t5は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t6は比較例3での遅れ処理の終了時を示す。時刻t7はコースト用タイマー時間Tdの終了時を示す。時刻t8はコースト減速中遅れ処理時間Teの終了時を示す。時刻t9はバックアップ処理を行わない時のコースト減速中遅れ処理時間Tfの終了時を示す。
【0080】
コースト減速中における3→2ダウン変速時には、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから負の目標モータトルク(2速)までの負のトルク領域での小さなモータトルク差分になる。このとき、比較例3のように、中間値による変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t6までは、図13の細実線のモータトルク特性に示すように、中間勾配のモータトルク変化により繋がれる。つまり、捩れ振動によるショックの感度が高いコースト減速中であるにもかかわらず、回転数制御からトルク制御に切り替わる際のトルク差分が予想以上の急勾配によるトルク変化で繋がれる。このため、図12の点線による加速度特性に示すように、時刻t6の直前領域にて加速度が急変する突き上げが生じ、ドライバーに捩れショック感を与えてしまう。
【0081】
これに対し、実施例1のように、加速用変化量制限値より小さいコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行うと、切り替え時刻t5からコースト用タイマー時間Tdの終了時刻t7までは、図13の太線のモータトルク特性に示すように、かなり緩やかなモータトルク変化により繋がれる。つまり、捩れ振動によるショックの感度が高いコースト減速中であることに対応し、回転数制御からトルク制御に切り替わる際のトルク差分が緩勾配のトルク変化によりゆっくり繋がれる。このため、図13の実線による加速度特性に示すように、時刻t7の直前領域にて、ドライバーに捩れショック感を与えないレベルで加速度が緩やかに変化するだけで、モータ制御の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
【0082】
上記のように、実施例1では、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御とトルク制御のモータトルク差分に対し、加速側専用の変化量制限値と、コースト減速中専用の変化量制限値と、を用意しておく。そして、加速側であるかコースト減速中であるかの判断に基づいて、2つの変化量制限値を使い分ける構成を採用した。
この構成により、コースト減速中は、捩れ振動によるショックの感度が高く、回転数制御からトルク制御に切り替わる際のトルク差分をかなりゆっくりと繋ぐ必要があるが、この要求に応える。一方、加速側は、大きい変化量制限値で遅れ処理を行なうので、レスポンス等の課題も解決される。
したがって、モータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生が防止される。
【0083】
[遅れ処理中にバックアップ用変化量制限値への切り替え作用]
上記のように、遅れ処理を行うに際し、大きくかけ離れた値による加速用変化量制限値とコースト用変化量制限値を用意した。このため、処理終了までそれぞれの変化量制限値だけを選択した場合に生じる新たな課題への対策が必要である。以下、これを反映する遅れ処理中にバックアップ用変化量制限値への切り替え作用を、「加速側であるとき」と「コースト減速中であるとき」に分けて説明する。
【0084】
・加速側であるとき
加速側での遅れ処理中にタイマー時間が加速用タイマー時間Taを超えると、図10のフローチャートにおいて、ステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、加速側での遅れ処理開始からの経過時間が加速用タイマー時間Taを超えると、加速用変化量制限値の選択からバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられ、残ったモータトルク差に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
【0085】
すなわち、加速要求に適合する加速用変化量制限値を維持したままで目標モータトルクに到達するまでモータトルク変化の遅れ処理を行うと、図12の矢印Aの点線によるモータトルク特性に示すように、オーバーシュートによりモータトルクが目標モータトルクを超えることがある。このモータトルクのオーバーシュートを原因とし、図12の矢印Bの点線による加速度特性に示すように、車両の加速度が突出し、乗員に車両の飛び出し感を与える可能性がある。
【0086】
これに対し、実施例1では、加速用タイマー時間Taを、モータトルク差分の大きいとき、加速用変化量制限値による遅れ処理により目標モータトルクに到達する前までの時間に設定する。そして、切り替え開始時刻t4から、加速用タイマー時間Taを経過することで時刻t5に到達すると、選択されている加速用変化量制限値よりも小さい値によるバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられる。よって、図12の実線によるモータトルク特性に示すように、オーバーシュートによりモータトルクが目標モータトルクを超えることがなく、図12の実線による加速度特性に示すように、車両の加速度の突出が抑えられる。
【0087】
・コースト減速中であるとき
コースト減速中での遅れ処理中にタイマー時間がコースト用タイマー時間を超えると、図10のフローチャートにおいて、ステップS29からステップS30→ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS35→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、変化量制限値が、コースト用変化量制限値の選択からバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられ、残ったモータトルク差に対しモータトルク変化の遅れ処理が行われる。
【0088】
すなわち、コースト用変化量制限値を維持したままで目標モータトルクに到達するまでモータトルク変化の遅れ処理を行うと、図13の矢印Cの点線によるモータトルク特性に示すように、時刻t9にて目標モータトルクに到達する。よって、コースト減速中遅れ処理時間としてTfを要し、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスの悪化を招く。
【0089】
これに対し、実施例1では、コースト用タイマー時間Tdを、コースト用変化量制限値による遅れ処理により目標モータトルクに到達する前までの時間であって、加速用タイマー時間Taより長い時間に設定する。そして、切り替え開始時刻t5から、コースト用タイマー時間Tdを経過することで時刻t7に到達すると、選択されているコースト用変化量制限値よりも大きい値によるバックアップ用変化量制限値の選択へと切り替えられる。そして、時刻t8にて目標モータトルクに到達する。よって、コースト減速中遅れ処理時間が、コースト減速中遅れ処理時間Tdとなり、コースト減速中遅れ処理時間Tfに比べて短縮される。
【0090】
上記のように、実施例1では、コースト用変化量制限値が選択されているとき、所定時間(コースト用タイマー時間Td)を経過すると、コースト用変化量制限値よりも大きい値に設定したバックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう構成を採用した。
この構成により、ショックに対して敏感なコースト減速中は、長い時間傾きをゆっくりにし、所定時間を過ぎたら傾きを急にしてトルク制御での目標モータトルクに向かう。
したがって、コースト減速中の遅れ処理において、捩れショックの防止を確保しつつ、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが改善される。
【0091】
実施例1では、バックアップ用変化量制限値を、加速用変化量制限値とコースト用変化量制限値の中間的な値に設定する。そして、加速用変化量制限値が選択されているとき、加速用タイマー時間Taを経過するとバックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう。一方、コースト用変化量制限値が選択されているとき、加速用タイマー時間Taより長いコースト用タイマー時間Tdを経過するとバックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう構成を採用した。
この構成により、遅れ処理の途中において、加速側とコースト減速中とで異ならせた経過時間により、バックアップ用変化量制限値へ切り替え選択される。
したがって、1つのバックアップ用変化量制限値を用いながらも、加速側での飛び出し感の防止と、コースト減速中における切り替えレスポンスの改善と、が両立される。
【0092】
[コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値への切り替え作用]
上記コースト減速中の遅れ処理は所定時間を要するため、処理途中において、アクセル踏み込みが行われたり、車速の急低下があったりした場合には、これらの状況変化に対応する工夫が必要である。以下、これを反映するコースト用変化量制限値から加速用変化量制限値への切り替え作用を説明する。
【0093】
まず、コースト減速中で、車速が下限値以上であるときには、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS292→ステップS293→ステップS294→リターンへと進む流れが繰り返され、ステップS293にてコースト用変化量制限値が選択される。
【0094】
このように、コースト用変化量制限値が選択されているとき、ドライバーによりアクセル踏み込み操作が行われると、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS295→ステップS296→リターンへと進む流れが繰り返され、ステップS295にて加速用変化量制限値が選択される。
したがって、コースト減速中の遅れ処理の途中にてアクセル踏み込みが行われると、コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値へと変速量制限値が切り替えられる。
【0095】
一方、コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が低下して下限値未満になると、図11のフローチャートにおいて、ステップS291→ステップS292→ステップS295→ステップS296→リターンへと進む流れが繰り返され、ステップS295にて加速用変化量制限値が選択される。
すなわち、車両の急減速により変速処理が遅れ、コーストダウン変速がクリープ領域に突入した場合、コースト用変化量制限値によりトルク勾配が緩い状態を続けると、クリープトルクが出ないため、車両停止時のショックが悪化する。
これに対し、車速が下限値未満になり、クリープ領域まで低下したら、加速用変化量制限値に切り替えることで、クリープトルクを出すことが可能になる。
【0096】
上記のように、実施例1では、コースト用変化量制限値が選択されているとき、アクセル踏み込み操作が行われると、加速用変化量制限値の選択に切り替える構成を採用した。
この構成により、コースト用変化量制限値が選択されている遅れ処理途中でドライバーによる再踏み込み操作が行われると、加速用変化量制限値に切り替えられる。
したがって、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中でアクセル再踏み込み操作が行われたとき、ドライバーの加速要求に応えて回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスが確保される。
【0097】
上記のように、実施例1では、コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が下限車速未満になると、加速用変化量制限値の選択に切り替える構成を採用した。
この構成により、コーストダウン変速の変速処理が遅れ、車両の急減速により車速がクリープ領域まで低下したとき、コースト用変化量制限値から加速用変化量制限値に切り替えることで、クリープトルクを出すことが可能になる。
したがって、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中で車両の急減速により車速がクリープ領域まで低下したとき、車両停止時のショックが低減される。
【0098】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0099】
(1) 走行用駆動源に設けられる電動モータ(モータジェネレータ2)と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)の制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替えるモータ制御切り替え手段(図9)と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行ない、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、前記加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう遅れ処理手段(図10,図11)と、
を備える。
このため、電動モータ(モータジェネレータ2)を回転数制御からトルク制御に切り替える際、加速側で切り替えレスポンスの向上を達成しながら、コースト減速中の切り替えに伴う捩れショックの発生を防止することができるができる。
【0100】
(2) 前記遅れ処理手段(図10,図11)は、少なくとも前記コースト用変化量制限値よりも大きい値に設定したバックアップ用変化量制限値と、を有し、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、所定時間(コースト用タイマー時間Td)を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう(図10のステップS33)。
このため、(1)の効果に加え、コースト減速中の遅れ処理において、捩れショックの防止を確保しつつ、回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスを改善することができる。
【0101】
(3) 前記遅れ処理手段(図10,図11)は、前記バックアップ用変化量制限値を、前記加速用変化量制限値と前記コースト用変化量制限値の中間的な値に設定し、前記加速用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間(加速用タイマー時間Ta)を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行ない、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間(加速用タイマー時間Ta)より長い第2設定時間(コースト用タイマー時間Td)を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なう(図10のステップS33)。
このため、上記(2)の効果に加え、1つのバックアップ用変化量制限値を用いながらも、加速側での飛び出し感の防止と、コースト減速中における切り替えレスポンスの改善と、の両立を図ることができる。
【0102】
(4) 前記遅れ処理手段(図11)は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、アクセル踏み込み操作が行われると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替える(ステップS291)。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中でアクセル再踏み込み操作が行われたとき、ドライバーの加速要求に応えて回転数制御からトルク制御への切り替えレスポンスを確保することができる。
【0103】
(5) 前記遅れ処理手段(図11)は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が所定車速(下限値)未満になると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替える(ステップS292)。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、コースト用変化量制限値による遅れ処理途中で車両の急減速により車速がクリープ領域まで低下したとき、車両停止時のショックを低減することができる。
【0104】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0105】
実施例1では、モータジェネレータ2の制御を、回転数制御からトルク制御に切り替える例として、3→2ダウン変速介入により切り替える例を示した。しかし、他のダウン変速介入により切り替える例や、アップ変速介入により切り替える例や、変速介入が無く第2クラッチCL2のスリップ制御の終了により回転数制御からトルク制御に切り替える例であっても良い。要するに、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際にモータトルク差分が発生する場合には、本発明を適用できる。
【0106】
実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0107】
実施例1では、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段として、第1クラッチ4を用いる例を示した。しかし、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段としては、例えば、プラネタリギア等のように、クラッチを用いることなくクラッチ機能を発揮するような差動装置や動力分割装置を用いる例としても良い。
【0108】
実施例1では、本発明の制御装置をハイブリッド車両に対し適用した例を示した。しかし、走行用駆動源にモータジェネレータを備えた電気自動車や燃料電池車、等の他の電動車両に対しても適用することができる。また、実施例1で示した1モータ・2クラッチのハイブリッド車両以外の駆動系形式によるハイブリッド車両に対しても勿論適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 エンジン
2 モータジェネレータ(電動モータ)
3 自動変速機
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
6 ディファレンシャルギア
7 タイヤ(駆動輪)
8 インバータ
9 バッテリ
10 エンジン回転センサ
11 MG回転センサ
12 AT入力回転センサ
13 AT出力回転センサ
14,15 ソレノイドバルブ
16 SOCセンサ
17 アクセル開度センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータコントローラ
23 ブレーキ油圧センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動源に設けられる電動モータと、
前記電動モータの制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替えるモータ制御切り替え手段と、
前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行ない、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、前記加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう遅れ処理手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、少なくとも前記コースト用変化量制限値よりも大きい値に設定したバックアップ用変化量制限値と、を有し、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、所定時間を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なうことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、前記バックアップ用変化量制限値を、前記加速用変化量制限値と前記コースト用変化量制限値の中間的な値に設定し、前記加速用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行ない、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間より長い第2設定時間を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なうことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、アクセル踏み込み操作が行われると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が所定車速未満になると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項1】
走行用駆動源に設けられる電動モータと、
前記電動モータの制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替えるモータ制御切り替え手段と、
前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分に対し、アクセル踏み込みによる加速側では、加速要求に適合する加速用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行ない、アクセル足離しによるコースト減速中のときには、前記加速用変化量制限値よりも小さい値に設定したコースト用変化量制限値によりモータトルク変化の遅れ処理を行なう遅れ処理手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、少なくとも前記コースト用変化量制限値よりも大きい値に設定したバックアップ用変化量制限値と、を有し、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、所定時間を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なうことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、前記バックアップ用変化量制限値を、前記加速用変化量制限値と前記コースト用変化量制限値の中間的な値に設定し、前記加速用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行ない、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、第1設定時間より長い第2設定時間を経過すると前記バックアップ用変化量制限値に切り替えてモータトルク変化の遅れ処理を行なうことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、アクセル踏み込み操作が行われると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
前記遅れ処理手段は、前記コースト用変化量制限値が選択されているとき、車速が所定車速未満になると、前記加速用変化量制限値の選択に切り替えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−157214(P2012−157214A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16214(P2011−16214)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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