説明

電動過給機のバランス修正装置およびバランス修正方法

【課題】電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正する。
【解決手段】PCは、ナットの締結を緩めた状態で、ロータをロータ位置(i)に変更するステップ(S102)と、ナットを締結した状態で予め定められた目標回転数まで回転させるステップ(S104)と、振れ量r(i)を測定するステップ(S106)と、iの値が1であるか(S108にてYES)、r(i−1)がr(i)よりも大きいと(S110)、iの値をLoとするステップ(S112)と、iの値が4以上であれば(S116)、ロータをロータ位置(Lo)に変更するステップ(S118)と、コンプレッサホイール位相変更処理を実施するステップ(S120)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動過給機のバランス修正装置およびバランス修正方法に関し、特に、電動過給機を分解することなく、アンバランス状態を修正するバランス修正装置およびバランス修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの出力を向上させるために、エンジンに供給される空気をコンプレッサホイールの回転により圧縮して、過給する過給機が知られている。また、回転電機によりコンプレッサホイールに回転力を付与する電動過給機が公知である。このような電動過給機においては、回転シャフトには回転子が設けられる。そのため、回転子が設けられない回転シャフトと比較して、質量が大きくなる。また、回転シャフトは過給時において非常に高回転になるまで回転する。そのため、回転シャフトがアンバランス状態であると、回転子が設けられない通常の過給機と比較して、アンバランスによる振動の振幅が非常に大きくなる可能性がある。そこで、回転シャフトのアンバランスを修正する必要性が生じる。
【0003】
たとえば、特開2002−39904号公報(特許文献1)は、検査データの再現性と修正精度を向上し、高速バランスの修正回数を減少でき、生産台数の向上を図ることができる過給機の高速バランス修正装置とその方法を開示する。この高速バランス修正装置は、過給機の加速度をピックアップしかつ磁石を有する加速度ピックアップと、コンプレッサホイールの高速回転時の高速アンバランス量を検出する回転検出器と、これらの検出器から検出された入力信号に基づき演算する演算器と、タービン車室を取り付けるタービン車室取付板を有した振動台と、を備え、加速度ピックアップを振動台のタービン車室取付板に取り付けたことを特徴とする。
【0004】
上述した公報に開示された高速バランス修正装置によると、検査データの再現性と修正精度を向上し、高速バランスの修正回数を減少でき、生産台数の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2002−39904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した公報に開示されたバランス修正装置においては、コンプレッサホイールを固定するナットを切削することにより、アンバランス状態が修正される。しかしながら、電動過給機のように回転シャフトにロータが固定される場合においては、ナットの切削によるバランス修正だけでは、アンバランス状態を十分に修正しきれない可能性がある。
【0006】
特に、電動過給機においては、回転シャフト、ロータあるいはコンプレッサホイール等の構成部品の平行度の積み重ねがバランス状態に影響を与える。そのため、回転シャフトに固定された構成部品を分解して、バランス修正後に再度組み立て直す必要がある。これにより、バランス修正の工程に時間がかかる場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正装置およびバランス修正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る電動過給機のバランス修正装置は、電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正装置である。回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられる。電動過給機は、回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸周りの位置が固定される回転子と電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含む。このバランス修正装置は、固定子に電力を供給して、回転子を回転させるための供給手段と、回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、回転シャフトのアンバランス量を検知するための検知手段と、検知されたアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子との位相を変化させて、アンバランス状態を修正するための修正手段とを含む。
【0009】
第1の発明によると、修正手段は、検知された回転シャフトのアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子との位相を変化させて、アンバランス状態を修正する。たとえば、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転子だけを回転させることができる。そのため、回転シャフトと回転子との位相を変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子との位相を変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。したがって、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明に係る電動過給機のバランス修正装置においては、第1の発明の構成に加えて、修正手段は、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給して回転子を回転させることにより、回転シャフトと回転子との位相を変化させて、アンバランス状態を修正するための手段を含む。
【0011】
第2の発明によると、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転子だけを回転させることができる。そのため、回転シャフトと回転子との位相を変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子との位相を変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。
【0012】
第3の発明に係る電動過給機のバランス修正装置においては、第2の発明の構成に加えて、供給手段は、回転子と固定子との位相角度が複数の予め定められた位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ締結部材の締結を緩めた状態で、固定子に電力を供給するための手段を含む。検知手段は、締結部材が締結された状態で、回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、複数の位相角度に対応するアンバランス量をそれぞれ検知するための手段を含む。修正手段は、回転子と固定子との位相角度が、複数の予め定められた位相角度のうち、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ締結部材を締結を緩めた状態で、固定子に電力を供給して、アンバランス状態を修正するための手段を含む。
【0013】
第3の発明によると、複数の予め定められた位相角度のうち、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態で回転子と固定子との位相角度が調整される。これにより、回転シャフトと回転子との位相を変化させることができる。特に、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるようにすることにより、平行度の積み重ねの態様をアンバランス状態が改善するように変化させることができる。
【0014】
第4の発明に係る電動過給機のバランス修正装置は、電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正装置である。回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられる。電動過給機は、回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸に直交する方向の位置が固定される回転子と電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含む。このバランス修正装置は、固定子に電力を供給して、回転子を回転させるための供給手段と、回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、回転シャフトのアンバランス量を検知するための検知手段と、検知されたアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させてアンバランス状態を修正するための修正手段とを含む。
【0015】
第4の発明によると、修正手段は、検知された回転シャフトのアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させて、アンバランス状態を修正する。たとえば、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転シャフトの位置を制限したまま回転子だけを回転軸に直交する方向に移動させることができる。そのため、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。したがって、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正装置を提供することができる。
【0016】
第5の発明に係る電動過給機のバランス修正装置においては、第4の発明の構成に加えて、回転シャフトは、回転子を貫通して設けられる。修正手段は、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給して、回転子を回転軸に直交する方向に移動させることにより、回転シャフトの外径と回転子の内径とのクリアランスを変化させて、アンバランス状態を修正するための手段を含む。
【0017】
第5の発明によると、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転シャフトの位置を制限したまま回転子だけを回転軸に直交する方向に移動させることができる。そのため、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。
【0018】
第6の発明に係る電動過給機のバランス修正装置においては、第5の発明の構成に加えて、回転子は2つの磁極を有する。バランス修正装置は、回転子の回転角度を検知するための角度検知手段をさらに含む。供給手段は、検知された回転子の回転角度が、回転子の磁極の境界部分と固定子の磁極とが対向する位置関係となる角度であると、締結部材が締結された状態で、境界部分が固定子の磁極に対向しない角度に回転するように、固定子に電力を供給するための手段を含む。
【0019】
第6の発明によると、回転子の回転角度が、回転子の磁極の境界部分と固定子の磁極とが対向する位置関係になる角度であると、対向する固定子の磁極に発生する磁力により回転子を回転軸に直交する方向に移動させることができない場合がある。そこで、境界部分が固定子の磁極に対向しない角度になるように回転子を回転させることにより、回転子を確実に回転軸に直交する方向に移動させることができる。
【0020】
第7の発明に係る電動過給機のバランス修正装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、検知手段は、回転シャフトの両端部に対向して設けられ、回転シャフトの回転軸に直交する方向の変位量を検知するための変位検知手段を含む。
【0021】
第7の発明によると、回転シャフトの回転軸に直交する方向の変位量を回転シャフトの両端部において検知することにより、電動過給機の固有振動数に影響されることなく、回転シャフトのアンバランス量を精度よく検知することができる。
【0022】
第8の発明に係る電動過給機のバランス修正装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、検知手段は、電動過給機の筐体に設けられ、電動過給機に生じた振動を検知するための振動検知手段を含む。
【0023】
第8の発明によると、電動過給機に生じた振動を検知することにより、回転シャフトに検知装置を直接設けることなく、回転シャフトのアンバランス量を精度よく検知することができる。
【0024】
第9の発明に係る電動過給機のバランス修正方法は、電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正方法である。回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられる。電動過給機は、回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸周りの位置が固定される回転子と電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含む。このバランス修正方法は、固定子に電力を供給して、回転子を回転させる供給ステップと、回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、回転シャフトのアンバランス量を検知する検知ステップと、検知されたアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子との位相を変化させて、アンバランス状態を修正する修正ステップとを含む。
【0025】
第9の発明によると、修正ステップは、検知された回転シャフトのアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子との位相を変化させて、アンバランス状態を修正する。たとえば、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転子だけを回転させることができる。そのため、回転シャフトと回転子との位相を変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子との位相を変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。したがって、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正方法を提供することができる。
【0026】
第10の発明に係る電動過給機のバランス修正方法においては、第9の発明の構成に加えて、修正ステップは、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給して回転子を回転させることにより、回転シャフトと回転子との位相を変化させて、アンバランス状態を修正するステップを含む。
【0027】
第10の発明によると、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転子だけを回転させることができる。そのため、回転シャフトと回転子との位相を変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子との位相を変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。
【0028】
第11の発明に係る電動過給機のバランス修正方法においては、第10の発明の構成に加えて、供給ステップは、回転子と固定子との位相角度が複数の予め定められた位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ締結部材の締結を緩めた状態で、固定子に電力を供給するステップを含む。検知ステップは、締結部材が締結された状態で、回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、複数の位相角度に対応するアンバランス量をそれぞれ検知するステップを含む。修正ステップは、回転子と固定子との位相角度が、複数の予め定められた位相角度のうち、検知されたアンバランス量が最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ締結部材の締結を緩めた状態で、固定子に電力を供給して、アンバランス状態を修正するステップを含む。
【0029】
第11の発明によると、複数の予め定められた位相角度のうち、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態で回転子と固定子との位相角度が調整される。これにより、回転シャフトと回転子との位相を変化させることができる。特に、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるようにすることにより、平行度の積み重ねの態様をアンバランス状態が改善するように変化させることができる。
【0030】
第12の発明に係る電動過給機のバランス修正方法は、電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正方法である。回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられる。電動過給機は、回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸に直交する方向の位置が固定される回転子と電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含む。このバランス修正方法は、固定子に電力を供給して、回転子を回転させる供給ステップと、回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、回転シャフトのアンバランス量を検知する検知ステップと、検知されたアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させてアンバランス状態を修正する修正ステップとを含む。
【0031】
第12の発明によると、修正ステップは、検知された回転シャフトのアンバランス量に基づいて、締結部材の締結を緩めた状態で、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させて、アンバランス状態を修正する。たとえば、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転シャフトの位置を制限したまま回転子だけを回転軸に直交する方向に移動させることができる。そのため、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。したがって、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正方法を提供することができる。
【0032】
第13の発明に係る電動過給機のバランス修正方法においては、第12の発明の構成に加えて、回転シャフトは、回転子を貫通して設けられる。修正ステップは、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給して、回転子を回転軸に直交する方向に移動させることにより、回転シャフトの外径と回転子の内径との間のクリアランスを変化させてアンバランス状態を修正するステップを含む。
【0033】
第13の発明によると、回転シャフトの回転を制限した状態で、固定子に電力を供給すると、回転シャフトの位置を制限したまま回転子だけを回転軸に直交する方向に移動させることができる。そのため、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定される回転子等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトと回転子とのクリアランスを変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、締結部材の締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。
【0034】
第14の発明に係る電動過給機のバランス修正方法は、第13の発明の構成に加えて、回転子は2つの磁極を有する。バランス修正方法は、回転子の回転角度を検知する角度検知ステップをさらに含む。供給ステップは、検知された回転子の回転角度が、回転子の磁極の境界部分と固定子の磁極とが対向する位置関係となる角度であると、締結部材が締結された状態で、境界部分が固定子の磁極に対向しない角度に回転するように、固定子に電力を供給するステップを含む。
【0035】
第14の発明によると、回転子の回転角度が、回転子の磁極の境界部分と固定子の磁極とが対向する位置関係になる角度であると、対向する固定子の磁極に発生する磁力により回転子を回転軸に直交する方向に移動させることができない場合がある。そこで、境界部分が固定子の磁極に対向しない角度になるように回転子を回転させることにより、回転子を確実に回転軸に直交する方向に移動させることができる。
【0036】
第15の発明に係る電動過給機のバランス修正方法においては、第9〜14のいずれかの発明の構成に加えて、検知ステップは、回転シャフトの両端部に対向して設けられた変位検知センサにより、回転シャフトの回転軸に直交する方向の変位量を検知するステップを含む。
【0037】
第15の発明によると、回転シャフトの回転軸に直交する方向の変位量を回転シャフトの両端部において検知することにより、電動過給機の固有振動数に影響されることなく、回転シャフトのアンバランス量を精度よく検知することができる。
【0038】
第16の発明に係る電動過給機のバランス修正方法においては、第9〜14のいずれかの発明の構成に加えて、検知ステップは、電動過給機の筐体に設けられた加速度ピックアップセンサにより、電動過給機に生じた振動を検知するステップを含む。
【0039】
第16の発明によると、電動過給機に生じた振動を検知することにより、回転シャフトに検知装置を直接設けることなく、回転シャフトのアンバランス量を精度よく検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0041】
<第1の実施の形態>
図1に示すように、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、電動過給機216と、カバー108,110と、回転数センサ116と、加速度ピックアップセンサ104,106と、直流電源100と、インバータ102と、変位検知センサ112,114とから構成される。
【0042】
電動過給機216は、バランス修正時においては、コンプレッサハウジングもタービンハウジングも取り外された状態であるか、あるいは、未だいずれも組み付けられていない状態である。
【0043】
バランス修正時における電動過給機216は、ハウジング230と、回転シャフト210と、ラジアルベアリング222,224と、ロータ214と、ステータ234と、スラストベアリング228と、スペーサ238と、カラー232と、コンプレッサホイール206と、タービンホイール208と、ナット236とから構成される。
【0044】
ハウジング230は、中空円筒形状を有し、ハウジング230の内周部には、ステータ234がたとえば、ボルトの締結により固定される。ステータ234には、回転軸に平行な方向に沿ってスロットとティースとが形成される。各ティースには、予め定められた回数だけ輪状に巻回されたコイルが設けられる。ロータ214は、外周面がステータ234のティースと対向する位置になるように回転シャフト210に固定される。
【0045】
回転シャフト210は、ハウジング230の中心軸に沿って、ハウジング230を貫通するように設けられる。回転シャフト210は、一方端のタービンホイール208と一体的に形成される形状を有する。なお、回転シャフト210とタービンホイール208とは別体で形成されて、ボルトあるいはナット等により締結されるようにしてもよい。
【0046】
回転シャフト210には、ロータ214、スペーサ238、カラー232、スラストベアリング228およびコンプレッサホイール206が設けられる。上述した構成部品は、回転シャフト210に組み付けられた後に、ナット236が締結されることにより回転軸周りおよび回転軸に直交する方向の位置が固定される。ロータ214とコンプレッサホイール206とは、ナット236の締結力により、回転シャフト210の回転軸周りの相対位置が固定される。また、回転シャフト210のタービン側の端部には、円筒形状の突起部240が形成される。また、回転シャフト210のタービンホイール208には、タービンホイール208の回転を制限可能な回転制限装置272が設けられる。回転制限装置272は、後述するPC(Personal Computer)118の制御信号に応じて、タービンホイール208の回転を制限したり、タービンホイール208の回転制限を解除したりする。
【0047】
また、ロータ214には、永久磁石(図示せず)が設けられる。たとえば、本実施の形態において電動過給機216として2相の交流モータが用いられる場合において、ロータ214は、N極およびS極の2極を有する永久磁石から構成される。
【0048】
スペーサ238とカラー232とは、それぞれ回転軸方向に予め定められた長さを有する中空円筒形状に形成される。スペーサ238およびカラー232の内周部分は、回転シャフト210の軸部分が挿入可能になるように形成される。スペーサ238とカラー232とは、コンプレッサホイール206およびロータ214の軸方向の位置を制限する部材である。スペーサ238とカラー232との間には、スラストベアリング228が設けられる。
【0049】
ラジアルベアリング222,224は、回転中心が回転軸と一致するようにハウジング230に固定される。特に固定方法は限定されるものではないが、たとえば、ラジアルベアリング222,224がそれぞれハウジング230の予め定められた位置に圧入されるなどして固定される。ラジアルベアリング222は、回転シャフト210のタービンホイール208側の軸部分を回転自在に支持する。ラジアルベアリング224はスペーサ238を介して回転シャフト210のコンプレッサホイール206側の軸部分を回転自在に支持する。
【0050】
ハウジング230の外周面には、加速度ピックアップセンサ104,106が設けられる。加速度ピックアップセンサ104,106は、電動過給機216との接触部位の加速度を検知することにより、電動過給機216に生じている振動を検知するセンサである。加速度ピックアップセンサ104,106において検知された加速度を示す信号は、PC118に送信される。PC118は、CPU(図示せず)およびメモリ(図示せず)を含み、各種センサから取得された情報に基づいてプログラムを実行する。本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の動作は、PC118により実行されるプログラムにより実現される。
【0051】
さらに、回転シャフト210のコンプレッサホイール206側には、回転シャフト210の回転数を検知する回転数センサ116が設けられる。回転数センサ116は、回転シャフト210の軸部分、ナット236およびコンプレッサホイール206のうちのいずれかに対向して設けられ、回転数を検知する。検知された回転数を示す信号は、PC118に送信される。
【0052】
さらに、変位検知センサ112,114がカバー108,110を回転軸に直交する方向から貫通するように設けられる。変位検知センサ112は、上述した回転シャフト210の円筒形状の突起部240の外周面に対向するように設けられる。変位検知センサ112は、突起部240との距離、すなわち、回転軸に直交する方向における突起部240の変位量を検知して、検知された変位量を表す信号PC118に送信する。
【0053】
また、変位検知センサ114は、コンプレッサ側端部の軸部分の外周面に対向するように設けられる。変位検知センサ114は、回転シャフト210の軸部分との距離、すなわち、回転軸に直交する方向における軸部分の変位量を検知して、検知された変位量を表す信号をPC118に送信する。変位検知センサ112,114は、たとえば、ギャップセンサである。
【0054】
ステータ234に巻回されたコイルには、直流電源100からインバータ102を介して電力が供給される。インバータ102は、直流電源100から供給される直流電力を交流電力に変換する。ステータ234に巻回されたコイルに供給される電力量(以下、通電量ともいう)は、PC118がインバータ102を介して制御する。
【0055】
さらに、本実施の形態において、電動過給機216のコンプレッサ側には、コンプレッサホイール206の周囲を覆うカバー108が設けられる。また、電動過給機216のタービン側には、タービンホイール208の周囲を覆うカバー110が設けられる。
【0056】
カバー108,110は、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208が回転する際に、発生する空気の圧力変化に対しても形状が変化しない剛性を有する材質であれば、特に材質は限定されるものではないが、たとえば、ジュラルミン等の金属により形成されてもよいし、樹脂により形成されてもよいものとする。
【0057】
カバー108は、ハウジング230側を除くコンプレッサホイール206の全周を覆うように形成される。また、カバー110は、ハウジング230側を除くタービンホイール208の全周を覆うように形成される。カバー108,110には、それぞれ回転軸周りの一部に開口部268,270が形成される。回転軸周りに形成される開口部268,270の形状は特に限定されるものではなく、たとえば、矩形形状であってもよいし、楕円あるいは円形状であってもよいものとする。さらに、カバー108,110には、それぞれ軸方向に貫通する貫通穴が形成される。貫通穴には、図示しないNC(Numerical Control)工作機械のエンドミルが挿入され、ナット236あるいはタービンホイール208の一部分を切削することにより、本発明によるバランス修正後の最終的なバランス調整が行なわれる。
【0058】
次に、エンジン(図示せず)に搭載された電動過給機216の構成および動作について説明する。エンジンに搭載された電動過給機216は、図2に示すように、ハウジング230の回転軸方向の両端側にコンプレッサハウジング202とタービンハウジング204とが設けられる。
【0059】
コンプレッサハウジング202は、回転軸方向に開口部が形成され、エアクリーナからの空気が流入される。また、コンプレッサハウジング202の回転軸周りには、一方端がインタークーラ(図示せず)に接続される吸気通路の他方端が接続される。すなわち、回転シャフト210が回転することにより、エアクリーナから流入した空気が圧縮されてインタークーラに送出される。
【0060】
タービンハウジング204の回転軸周りには、一方端がエキゾーストマニホールド(図示せず)に接続される排気通路の他方端が接続される。タービンハウジング204は、回転軸方向に開口部が形成され、一方端が触媒に接続される排気管の他方端が接続される。
【0061】
以上のような構成を有する電動過給機216の作動時においては、エンジンの内部で、燃料と混合された空気が燃焼された後、排気ガスは、排気通路からタービンハウジング204内に導かれる。排気ガスはそこでタービンホイール208を回転させ、その回転力が回転シャフト210に伝達される。その後、排気ガスは、排気管を流通して、触媒に導かれる。触媒に導かれた排気ガスは、浄化された状態で車外へ排出される。
【0062】
一方、エンジンに供給するため車外より吸入された空気は、エアクリーナによってろ過された後、吸気通路を流通して、コンプレッサハウジング202内に導かれる。空気は回転シャフト210と一体となって回転するコンプレッサホイール206によって圧縮(過給)される。圧縮された空気は、インタークーラに導かれ、冷却された状態でエンジンの吸気通路を介して燃焼室に吸入される。
【0063】
また、エンジンの低回転域においては、コンプレッサハウジング202内で圧縮された空気が所望の過給圧に到達しない場合(たとえば、エンジンの回転数が予め定められた回転数以下である場合)には、ステータ234に巻回されたコイルに電力を供給することにより、回転シャフト210が回転して、コンプレッサハウジング202内の過給圧が強制的に上昇するように制御される。
【0064】
図3に、回転電機を有しない過給機300を示す。回転シャフト310は、過給機300のハウジング330に固定されたラジアルベアリング322,324およびスラストベアリング328により回転自在に支持される。回転シャフト310の一方端には、タービンホイール308が一体的に形成される。回転シャフト310の他方端には、カラー332、スラストベアリング328およびコンプレッサタービン306が挿入された状態でナット336により締結されて構成される。また、過給機300のコンプレッサ側には、コンプレッサハウジング302が設けられ、過給機300のタービン側には、タービンハウジング304が設けられる。
【0065】
ナット336による締結力に対しては、スラストベアリング328のタービン側への移動を制限する段差部分350が受け面となる。ナット336および段差部分350によりスラストベアリング328、カラー332およびコンプレッサホイール306を挟持することにより、コンプレッサホイール306が回転シャフト310に対して位置決めされる。
【0066】
回転電機を有しない過給機300においては、回転シャフト310に固定される構成部品がコンプレッサ側に集中しているため、回転シャフト310のシャフト曲がりは、図3の太線に示すように、コンプレッサ側で大きく、タービン側の曲がりは少ない。
【0067】
このような回転シャフト310のシャフト曲がりは、図4(A)に示すように、コンプレッサホイール306、カラー332の軸方向の端面同士の平行度の積み重ねにより回転シャフトがアンバランス状態になることにより生じる。
【0068】
そこで、ナット336を緩めた状態でコンプレッサホイール306を回転させることにより、コンプレッサホイール306と回転シャフト310との位相を変化させることができる。すなわち、図4(B)に示すように、図4(A)に示す平行度の積み重ねの態様を変化させることにより、回転シャフト310のアンバランス状態を改善してシャフト曲がりを抑制することができる。
【0069】
一方、図2に戻って、電動過給機216においては、回転シャフト210のラジアルベアリング222,224の間にロータ214が設けられる。ナット236の締結力に対しては、ロータ214のタービン側への移動を制限する段差部分280が受け面となる。すなわち、ナット236および段差部分280によりスラストベアリング228、カラー232、スペーサ238およびロータ214を挟持することにより、コンプレッサホイール206およびロータ214が回転シャフト210に対して位置決めされる。
【0070】
回転電機を有する電動過給機216においては、回転シャフト210に固定される構成部品がタービン側にまで設けられる。そのため、回転シャフト210のシャフト曲がりは、図2の太線に示すように、コンプレッサ側だけでなくタービン側でも大きい。
【0071】
特に、タービンホイール208は、コンプレッサホイール206よりも質量が大きい傾向にあり、同じ偏心量でも回転シャフト210全体のアンバランス量に大きく影響する。また、回転シャフト210にロータ214が偏心して設けられることにより、アンバランス量が大きくなる場合がある。
【0072】
回転シャフト210がアンバランス状態であることに対して、平行度の積み重ねの態様を変化させるため、コンプレッサホイール206と回転シャフト210との位相を変化させたとしても、コンプレッサ側のシャフト曲がりについて抑制することができるが、タービン側のシャフト曲がりについて抑制することはできない。
【0073】
また、タービン側のシャフト曲がりを抑制するため、スペーサ238あるいはロータ214と回転シャフト210との位相を変化させることも考えられるが、スペーサ238およびロータ214は、スラストベアリング228よりもタービン側に組み込まれるため、スペーサ238あるいはロータ214と回転シャフト210との位相を変化させるには、電動過給機216を分解する必要がある。
【0074】
そこで、本発明は、バランス修正装置がアンバランス量に基づいて、ナット236の締結を緩めた状態で、回転シャフト210とロータ214との位相を変化させて、回転シャフト210のアンバランス状態を修正する点に特徴を有する。
【0075】
具体的には、回転シャフト210の回転が制限された状態で、ナット236の締結が緩められた後、ステータ234に電力が供給されてロータ214が回転することにより、回転シャフト210とロータ214との位相を変化させて、アンバランス状態が修正される。なお、回転シャフト210のバランス修正は、電動過給機216がエンジンに搭載される前に本発明に係るバランス修正装置により実施される。
【0076】
本実施の形態においては、ナット236の締結が緩められた状態で、ロータ214の回転位置をステータ234に対して予め定められたロータ位置(1)〜(4)にそれぞれ相対位置が変更される。また、位置が変更される毎にナット236が締結されて、変更された位置における回転シャフト210のアンバランス量が検知される。
【0077】
ロータ位置の変更は、回転シャフト210の回転が制限された状態で、ステータ234に電力が供給されて、ロータ214だけが回転することにより行なわれる。なお、アンバランス量の検知は、ナット236が締結された状態で、回転シャフト210を予め定められた回転数まで上昇させて行なわれる。アンバランス量の検知は、本実施の形態においては、変位検知センサ112,114により回転シャフト210の端部の軸に直交する方向の変位量を検知することにより行なわれるとして説明するが、加速度ピックアップセンサ104,106によりハウジング230の振動特性(たとえば、振動の強度、周波数)を検知することにより行なわれてもよく、特に限定されるものではない。
【0078】
本実施の形態において、電動過給機216に設けられる回転電機は、図5に示すように、ロータ214と、ティース242,244,246,248およびコイル250,252,254,256を含むステータ234とから構成される2相の交流モータである。ロータ214は、N極とS極の2極の磁極を有する。また、ステータ234のステータコアには、ティース242,244,246,248が形成される。ティース242,244,246,248のそれぞれには、コイル250,252,254,256が巻回される。本実施の形態において、コイル250とコイル254とによりA相のコイルが形成される。また、コイル252とコイル256とによりB相のコイルが形成される。
【0079】
A相のコイル250,254に電力が供給されるときに、図6(A)に示すように、ロータ214よりも紙面上方向に位置する、ティース242に巻回されたコイル250の、ロータ214に対向する側がS極になる場合を想定する。このとき、ロータ214よりも紙面下方向に位置する、ティース246に巻回されたコイル254の、ロータ214に対向する側は、N極になる。この場合、形成された磁束の流れにより、ロータ214は、N極がティース242に対向し、S極がティース246に対向する位置になるように回転する。図6(A)に示す、ステータ234とロータ214との相対位置がロータ位置(1)である。
【0080】
B相のコイル252,256に電力が供給されるときに、図6(B)に示すように、ロータ214よりも紙面右方向に位置する、ティース244に巻回されたコイル252の、ロータ214に対向する側がS極になる場合を想定する。このとき、ロータ214よりも紙面左方向に位置する、ティース248に巻回されたコイル256の、ロータ214に対向する側は、N極になる。この場合、形成された磁束の流れにより、ロータ214は、N極がティース244に対向し、S極がティース248に対向する位置になるように回転する。図6(B)に示す、ステータ234とロータ214との相対位置がロータ位置(2)である。
【0081】
A相のコイル250,254に電力が供給されるときに、図6(C)に示すように、ティース246に巻回されたコイル254の、ロータ214に対向する側がS極になる場合を想定する。このとき、ティース242に巻回されたコイル250の、ロータ214に対向する側がN極になる。この場合、形成された磁束の流れにより、ロータ214は、N極がティース246に対向し、S極がティース242に対向する位置になるように回転する。図6(C)に示す、ステータ234とロータ214との相対位置がロータ位置(3)である。
【0082】
B相のコイル252,256に電力が供給されるときに、図6(D)に示すように、ティース248に巻回されたコイル256の、ロータ214に対向する側がS極になる場合を想定する。このとき、ティース244に巻回されたコイル252の、ロータ214に対向する側は、N極になる。この場合、形成された磁束の流れにより、ロータ214は、N極がティース248に対向し、S極がティース244に対向する位置になるように回転する。図6(D)に示す、ステータ234とロータ214との相対位置がロータ位置(4)である。
【0083】
以下、図7を参照しつつ、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置におけるバランス修正の手順について説明する。
【0084】
なお、電動過給機216のアンバランス量の検知およびバランス修正は、電動過給機216が固定台等に固定されて、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲にそれぞれカバー108,110が取り付けられた状態で実施されるものとする。カバー108,110は、アンバランス量の検知時に取り付けられていればよい。すなわち、カバー108,110の取り付けは、バランス修正前に作業者により行なわれてもよいし、PC118により制御されるカバー取り付け装置(図示せず)により行なわれてもよい。
【0085】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)S100にて、PC118は、自然数iの値を初期値「1」に設定する。S102にて、PC118は、回転シャフト210の回転位置をロータ位置(i)に変更する。具体的には、回転シャフト210の回転が制限された状態で、ナット236の締結が緩められた後に、ステータ234に電力が供給される。
【0086】
PC118は、回転シャフト210の回転の制限をするように回転制限装置272を制御する。さらに、ナット236の締結は、回転シャフト210の回転が制限された状態でナット236が回転させられることにより緩められる。ナット236の締結は、PC118の制御信号に応じて自動締結装置(図示せず)により緩められる。なお、ナット236の締結は、作業者により緩められるようにしてもよい。
【0087】
このとき、ロータ214は、図6(A)〜(D)に示したロータ位置(1)〜(4)のうちのいずれかの位置に回転させられた後、ナット236は、自動締結装置により再度締結される。たとえば、ロータ位置(1)になるようにロータ214を回転させる場合においては、ティース242に巻回されたコイル250の、ロータ214に対向する側がS極になるようにし、ティース246に巻回されたコイル254の、ロータ214に対向する側がN極になるようにA相のコイル250,254に電力が供給される。
【0088】
S104にて、PC118は、回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数まで上昇するように、ステータ234に供給される電力を制御する。PC118は、回転数センサ116により検知される回転シャフト210の回転数が目標回転数で維持されるようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。予め定められた目標回転数は、電動過給機216の実使用回転数領域の回転数であって、ステータ234への電力供給により到達可能な回転数であれば、特に限定されるものではない。
【0089】
S106にて、PC118は、タービン側の振れ量r(i)を測定する。具体的には、回転シャフト210のタービンホイール208の端部に設けられた円筒形状240に対向するように設けられた変位検知センサ114により、振れ量r(i)が検知される。本実施の形態において、PC118は、予め定められた時間が経過するまで振れ量r(i)を検知した後、ロータ214の回転を停止するようにステータ234に供給される電力を制御する。なお、振れ量r(i)は、予め定められた時間が経過するまで測定された振れ量のうちの最大値あるいは平均値である。
【0090】
S108にて、PC118は、iの値が「1」であるか否かを判断する。iの値が「1」であると判断されると(S108にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS110に移される。
【0091】
S110にて、PC118は、振れ量r(i−1)が振れ量r(i)よりも大きいか否かを判断する。振れ量r(i−1)が振れ量r(i)よりも大きいと(S110にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS114に移される。
【0092】
S112にて、PC118は、Lo=iとする。S114にて、PC118は、iの値に1を加算する。S116にて、PC118は、iの値が「4」以上であるか否かを判断する。iの値が「4」以上であると(S116にてYES)、処理はS118に移される。もしそうでないと(S116にてNO)、処理はS102に移される。
【0093】
S118にて、PC118は、ロータ位置(Lo)に変更する。Loの値に対応したロータ位置への変更の手順については、S102にて説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0094】
S120にて、PC118は、コンプレッサホイール206の位相変更処理を実施する。コンプレッサホイール206の位相変更処理において、変位検知センサ112によりコンプレッサ側の振れ量が検知される。検知された振れ量が予め定められた量以上であると、回転シャフト210の回転が制限された状態で、ナット236の締結を緩められる。この状態で、コンプレッサホイール206を回転させるなどして、回転シャフト210とコンプレッサホイール206との位相が変更される。
【0095】
コンプレッサホイール206の位相変更処理後においては、ナット236が再度締結される。なお、位相変更処理後、再度コンプレッサ側の振れ量を測定するようにしてもよい。測定された振れ量が予め定められた量以上であれば、再度ナット236を緩めて、回転シャフト210とコンプレッサホイール206との位相を変更した後、ナット236を再度締結するようにしてもよい。
【0096】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置の動作について説明する。
【0097】
コンプレッサハウジング202およびタービンハウジング204が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110がカバー取り付け装置により取り付けられる。このような状態で回転シャフト210のバランス修正が実施される。iの値は初期値「1」に設定され(S100)、ロータ214は、ロータ位置(1)に変更される(S102)。
【0098】
直流電源100からインバータ102を介して交流電力がステータ234に供給されると、回転シャフト210の回転数は上昇する。回転数センサ116により検知された回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数まで上昇すると(S104)、変位検知センサ114によりタービン側の振れ量r(1)の測定が開始される(S106)。予め定められた時間が経過するまで振れ量r(1)が測定された後、回転シャフト210の回転が停止される。
【0099】
iの値は「1」であるため(S108にてYES)、Loの値が「1」に更新される(S112)。その後、iの値には「1」が加算されて、「2」に更新される(S114)。iの値は「4」以上ではないため(S116にてNO)、ロータ214は、ロータ位置(2)に変更される(S102)。
【0100】
直流電源100からインバータ102を介して交流電力がステータ234に供給されると、回転シャフト210の回転数は上昇する。回転数センサ116により検知された回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数以上になると(S104)、変位検知センサ114によりタービン側の振れ量r(2)の測定が開始される(S106)。予め定められた時間が経過するまで振れ量r(2)が測定された後、回転シャフト210の回転が停止される。
【0101】
iの値は「2」であるため(S108にてNO)、振れ量r(1)が振れ量r(2)よりも大きいと(S110にてYES)、Loの値は「2」に更新される。一方、振れ量r(1)が振れ量r(2)以下であると(S110にてNO)、iの値には「1」が加算されて、「3」に更新される(S114)。iの値が「4」以上ではないため(S116にてNO)、同様にロータ位置(3)および(4)に対応する振れ量r(3)およびr(4)が測定される。そして、振れ量r(1)〜r(4)のうちの最も小さい振れ量に対応するiの値をLoの値として更新される(S112)。
【0102】
iの値が「4」以上になると(S116にてYES)、ロータ位置(Lo)に変更される(S118)。そして、コンプレッサホイール206の位相変更処理が実行される(S120)。
【0103】
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、回転シャフトの回転を制限した状態で、ナットの締結を緩めた後に、ステータに電力を供給すると、ロータだけを回転させることができる。そのため、回転シャフトとロータとの位相を変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定されるロータ等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトとロータとの位相を変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、ナットの締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。したがって、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正装置およびバランス修正方法を提供することができる。
【0104】
また、ロータ位置(1)〜(4)に対応する複数の予め定められた位相角度のうち、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、回転シャフトの回転を制限した状態でロータとステータとの位相角度が調整される。これにより、回転シャフトとロータとの位相を変化させることができる。特に、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるようにすることにより、平行度の積み重ねの態様をアンバランス状態が改善するように変化させることができる。
【0105】
<第1の実施の形態の変形例>
以下、第1の実施の形態の変形例に係る電動過給機のバランス修正装置について説明する。本変形例に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と比較して、変位検知センサ112,114が設けられる位置および回転シャフト210に代えて回転シャフト262が設けられる点が異なる。それ以外の構成については、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0106】
本変形例における電動過給機216は、図8に示すように、回転シャフト262を含む。回転シャフト262には、加工時に基準となる加工穴274,276が回転軸上を中心として形成される。本変形例において加工穴274,276は、図8に示すように、回転シャフト262の回転軸を通る断面において、V字形状の断面を示す。そのため、加工穴274,276には円錐形状の空間が形成される。
【0107】
回転シャフト262の形状は、加工穴274,276を基準軸として、切削等により形成される。本変形例において、変位検知センサ112,114が、加工穴274,276に形成される加工面284,286に対向するように設けられる点に特徴を有する。
【0108】
具体的には、図8に示す回転シャフト262の回転軸を通る断面においてV字形状の加工面284,286に対向するように、変位検知センサ112,114が設けられる。変位検知センサ112,114は、対向する加工面284,286に直交する方向についての、回転シャフト262の回転時の変位量を検知する。検知された変位量に対応する信号は、PC118に送信される。
【0109】
変位検知センサ112,114が対向する加工面284,286に直交する方向についての、回転シャフト262の回転時の変位量は、PC118により、回転軸に直交する方向についての、回転シャフト262の回転時の変位量に換算される。たとえば、図9に示す回転シャフト262の回転軸を通る断面において、変位検知センサ112に対向する加工面284が回転軸に対して30度の角度を有する場合を想定する。このとき、変位検知センサ112の方向と回転軸に直交する方向とのなす角度も30度となる。そのため、加工面284に直交する方向についての、回転シャフト262の回転時の変位量を、回転軸に直交する方向についての、回転シャフト262の回転時の変位量に換算することができる。
【0110】
加工穴274,276は、回転シャフト262を加工するための基準として必須の構成となる。したがって、変位検知センサ112,114により回転軸に直交する方向に検知可能な精度を有する形状を回転シャフトに新たに設けることなく、精度高く、回転軸に直交する方向の振れ量を計測することができる。そのため、コストの上昇を抑制することができる。なお、本変形例に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置と比較して、振れ量の検知方法だけが異なる。その他の動作および効果については、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置の動作および効果と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0111】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置について説明する。本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と比較して、回転角度検出センサ258,260がさらに設けられる点が異なる。それ以外の構成については、上述した第1の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0112】
図10に示すように、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置は、回転角度検出センサ258,260をさらに含む。回転角度検出センサ258,260は、ロータ214に対向して設けられる。回転角度検出センサ258,260は、回転軸に直交する同一平面上に設けられる。回転角度検出センサ258,260は、回転軸を軸中心を中心として、90度の位相角度を有するように設けられる。回転角度検出センサ258,260は、回転角度を示す信号をそれぞれPC118に送信する。
【0113】
なお、回転角度検出センサ258,260は、バランス修正装置の構成として新たに設けるようにしてもよいし、電動過給機216に設けられるレゾルバを利用する構成としてもよく特に限定されるものではない。
【0114】
図11(A)および(B)に示すように、回転角度検出センサ258,260から出力される磁束密度を示す信号出力は、90度の位相だけずれた変化を示す。
【0115】
たとえば、図10に示す初期ロータ位置において、回転角度検出センサ258は、ロータ214のN極とS極との境目部分に対向する位置関係となる場合を想定する。この位置からロータ214が反時計回りに回転を開始する場合においては、図11(A)に示すように、回転角度検出センサ258の信号出力は、磁束密度の変化とともに変化する。すなわち、信号出力は、ロータ214のN極が回転角度検出センサ260に近づくにつれて増加していく。また、信号出力は、ロータ214のN極と回転角度センサ258とが対向する位置になる角度において極大値となる。さらに、信号出力は、ロータ214のS極が回転角度検出センサ258に近づくにつれて減少していく。
【0116】
図10に示す初期ロータ位置において、ロータ214のN極が、回転角度検出センサ260に対向する位置である場合を想定する。この位置からロータ214が反時計回りに回転を開始する場合においては、図11(B)に示すように、回転検出センサ260の信号出力は、磁束密度の変化とともに変化する。すなわち、信号出力は、ロータ214のN極が回転角度検出センサ260から遠ざかるにつれて減少していく。信号出力は、ロータ214のS極と回転角度センサ260とが対向する位置になる角度において極小値となる。信号出力は、ロータ214のS極が回転角度検出センサ260から遠ざかるにつれて増加していく。
【0117】
ロータ214の位置変更は、ナット236の締結を緩めた状態であって、かつ回転シャフト210の回転を制限した状態で、図12(A)に示すように、ステータ234に電力を供給して磁束の流れを生じさせることにより、ロータ214に矢印に示すような反時計回りの回転力を発現させて実行される。このようにすると、たとえば、図12(B)の紙面上下方向の一点鎖線に示すように、ティース242と軸中心とを結ぶ直線に対してなす角度30度の位置にロータ214のN極の頂部を移動させることが可能となる。
【0118】
すなわち、図13(A)および(B)に示すように、ティース242と軸中心とを結ぶ直線に対してなす角度30度の位置に対応する磁束密度MaおよびMbを予め適合するなどして定めておく。ステータ234に電力を供給した後、回転角度検出センサ258,260からの信号出力に対応する磁束密度がMa,Mbとなる時点でステータ234への電力供給を停止する。これにより、ティース242と軸中心とを結ぶ直線に対してなす角度30度の位置にロータ214を回転させることができる。なお、ロータ214の位置変更は、30度に限定されるものではない。また、以下の説明において、ロータ214の回転角度は、説明の便宜上、ティース242と軸中心とを結ぶ直線(図12(B)の紙面上下方向の一点鎖線)を基準線とするが、特に、ティース242と軸中心とを結ぶ直線を基準線とすることに限定されるものではない。
【0119】
本実施の形態に係るバランス修正装置は、ナット236の締結を緩めた状態であって、かつ回転シャフト210の回転を制限した状態で、ロータ214の位置を予め定められたロータ位置に回転させる。バランス修正装置は、ナット236が締結された状態で、予め定められたロータ位置に対応する振れ量を検知する。バランス修正装置は、複数のロータ214の位置に対応する振れ量を検知する。バランス修正装置は、検知された複数の振れ量に基づいて、振れ量の位相変化の近似式を算出する。バランス修正装置は、算出された近似式の振れ量の最小値となる位相角度を算出する。バランス修正装置は、ロータ214の回転角度が振れ量の最小値となる位相角度となるようにナット236を緩めた状態であって、かつ回転シャフト210の回転を制限した状態で回転させる。本実施の形態においては、バランス修正装置が上述のように動作する点を特徴とする。
【0120】
本実施の形態においては、図14(A)に示すように、ロータ214のN極が回転角度検出センサ260に対向する位置をロータ位置A(1)とする。なお、ロータ位置A(1)におけるロータ214の回転角度は、上述の基準線に対してa(1)である。
【0121】
また、図14(B)に示すように、ロータ214のN極が回転角度検出センサ258に対向する位置をロータ位置A(2)とする。図14(B)に示すロータ214の回転位置は、図14(A)に示すロータ214の回転位置から反時計回りに90度だけ回転させた位置である。
【0122】
さらに、図14(C)に示すように、ロータ214のS極が回転角度検出センサ260に対向する位置をロータ位置A(3)とする。図14(C)に示すロータ214の回転位置は、図14(B)に示すロータ214の回転位置からさらに反時計回りに90度だけ回転させた位置である。
【0123】
なお、本実施の形態においては、ロータ位置A(1)〜A(3)の3点における振れ量を検知するとして説明するが、特に3点に限定されるものではなく、3点以上であってもよい。また、本実施の形態において、ロータ位置A(1)〜A(3)は、それぞれ90度間隔であるが、特に90度間隔に限定されるものではない。
【0124】
以下、図15を参照しつつ、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置におけるバランス修正の手順について説明する。
【0125】
なお、図15に示したフローチャートの中で、前述の図7に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0126】
S202にて、PC118は、回転シャフト210の回転位置をロータ位置A(i)に変更する。具体的には、回転シャフト210の回転が制限された状態で、ナット236の締結が緩められた後に、ステータ234に電力が供給される。このとき、PC118は、回転角度検出センサ258,260から出力される信号に基づく磁束密度がロータ位置A(i)に対応する値になる位置までロータ214を回転させる。その後、ナット236が再び締結される。
【0127】
S204にて、PC118は、回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数まで上昇するように、ステータ234に供給される電力を制御する。PC118は、回転数センサ116により検知される回転シャフト210の回転数が目標回転数で維持されるようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。予め定められた目標回転数は、電動過給機216の実使用回転数領域の回転数であって、ステータ234への電力供給により到達可能な回転数であれば、特に限定されるものではない。
【0128】
S206にて、PC118は、タービン側の振れ量r(i)を測定する。具体的には、回転シャフト210のタービンホイール208の端部に設けられた円筒形状240に対向するように設けられた変位検知センサ114により、振れ量r(i)が検知される。本実施の形態において、PC118は、予め定められた時間が経過するまで振れ量r(i)を検知した後、ロータ214の回転を停止するようにステータ234に供給される電力を制御する。なお、振れ量r(i)は、予め定められた時間が経過するまで測定された振れ量のうちの最大値あるいは平均値である。
【0129】
S208にて、PC118は、ロータ214の回転角度a(i+1)を回転角度a(1)+i×90度に設定する。S210にて、PC118は、iの値に「1」を加算する。S212にて、PC118は、iの値が「3」以上であるか否かを判断する。iの値が「3」以上であると(S212にてYES)、処理はS214に移される。もしそうでないと(S212にてNO)、処理はS202に移される。
【0130】
S214にて、PC118は、算出された振れ量r(1)〜r(3)より振れ量の位相変化を示す近似式f(x)を算出する。近似式は周期的な関数であれば特に限定されるものではないが、たとえば、三角関数である。図16に示すように、回転角度a(1)〜a(3)に対応する振れ量r(1)〜r(3)に基づいて、近似式f(x)が算出される。
【0131】
S216にて、PC118は、算出された近似式f(x)において振れ量最小値に対応する回転角度Loを算出する。たとえば、図16に示すように、算出された近似式f(x)において振れ量の最小値r(4)に対応する角度位相Loが算出される。
【0132】
S218にて、PC118は、回転シャフト210の回転角度を角度Loに変更する。具体的には、回転シャフト210の回転が制限された状態で、ナット236の締結が緩められた後に、ステータ234に電力が供給される。この時点で、ロータ214と回転シャフト210との相対位置関係は、ロータ位置A(3)時におけるロータ214と回転シャフト210との相対位置関係と同じである。すなわち、ロータ214は、角度a(3)の位置である。この位置から、角度Loに対応する位置に回転させられた後、ナット236が自動締結装置により再度締結される。
【0133】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置の動作について説明する。
【0134】
コンプレッサハウジング202およびタービンハウジング204が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110がカバー取り付け装置により取り付けられる。このような状態で回転シャフト210のバランス修正が実施される。iの値は初期値「1」に設定され(S100)、ロータ214はロータ位置A(1)に変更される(S202)。
【0135】
直流電源100からインバータ102を介して交流電力がステータ234に供給されると、回転シャフト210の回転数は上昇する。回転数センサ116により検知された回転シャフト210の回転数が予め定められた目標回転数まで上昇すると(S204)、変位検知センサ114によりタービン側の振れ量r(1)の測定が開始される(S206)。予め定められた時間が経過するまで振れ量r(1)が測定された後、回転シャフト210の回転が停止される。
【0136】
その後、回転角度a(2)=a(1)+90度に設定される(S208)。そして、iの値には「1」が加算されて「2」に更新される(S210)。また、iの値は「3」以上ではないため(S212にてNO)、ロータ214は、ロータ位置A(2)に対応する角度a(2)に変更される(S202)。同様に、r(2)およびr(3)が算出されると、iの値が「3」であるため(S212にてYES)、算出された振れ量r(1)〜r(3)に基づいて近似式f(x)が算出される(S214)。算出された近似式f(x)の最小値に対応する角度Loが算出される(S216)。
【0137】
ロータ214の回転角度は、角度Loに変更された後(S218)、コンプレッサホイール206側の位相変更処理が実行される(S220)。
【0138】
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、上述の第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置により発現する効果に加えて、回転角度検出センサを用いて、ロータを所望の位置に回転させることができるため、ロータの回転シャフトに対する相対位置を振れ量の最小値に対応する位置に変更することができる。そのため、バランス修正を精度よく実施することができる。
【0139】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置について説明する。本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置は、上述した第2の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と比較して、電動過給機216が回転シャフト210およびロータ214に代えて回転シャフト410およびロータ414を含む点が異なる。それ以外の構成については、上述した第2の実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0140】
図17(A)および(B)に示すように、本実施の形態に係る電動過給機216においては、回転シャフト410とロータ414とは、回転軸に直交する方向の距離(以下、クリアランスという)が上述の第2の実施の形態における電動過給機216の回転シャフト210およびロータ214と比較して大きくなる構造を有する。これにより、図18に示す回転シャフト210およびロータ214のようにクリアランスが小さい場合と比較して、ロータの内径研磨工程を省略することができるため、切削工程のみによる製造が可能となる。そのためコストの上昇が抑制される。
【0141】
以上のような構成を有する本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置は、検知されたアンバランス量に基づいて、ナット236の締結を緩めた状態で、回転シャフト410とロータ414とのクリアランスを変化させてアンバランス状態を修正する点に特徴を有する。
【0142】
具体的には、回転シャフト410の回転を制限した状態で、ステータ234に電力を供給して、ロータ414を回転軸に直交する方向に移動させることにより、回転シャフト410の外径とロータ414の内径とのクリアランスを変化させて、アンバランス状態を修正する。
【0143】
たとえば、図19(A)に示すように、振れ量の検知により回転シャフト410のアンバランスの位置がロータ414のS極の頂部に有する場合を想定する。このアンバランス位置と軸中心とを結ぶ直線は、ティース242とティース246との中心線に対して30度の角度を有する。なお、ナット236の締結は緩めた状態であって、回転シャフト410の位置は制限された状態である。
【0144】
このとき、図19(B)に示すように、ロータ414の前述のアンバランス位置と軸中心とを結ぶ直線に沿った方向に磁力が発生するように、ステータ234に電力が供給される。
【0145】
具体的には、A相のコイル250,254により発現する磁力によりロータ414に作用する図19(B)の紙面上方向の力と、B相のコイル252,256により発現する磁力によりロータ414に作用する図19(B)の紙面左方向の力との合力とにより、ロータ414のアンバランス位置と軸中心とを結ぶ直線に沿った方向の磁力が発生する。
【0146】
そのため、図19(C)に示すように、ロータ414は、発生した磁力によりアンバランス位置と軸中心とを結ぶ直線に沿って移動する。そのため、ロータ414は、軸中心側に移動することとなる。これにより、アンバランス位置を軸中心側に移動させることにより、振れ量を減少させて、回転シャフト410のアンバランス状態が修正される。
【0147】
次に、図20(A)に示すように、振れ量の検知により回転シャフト410のアンバランスの位置がロータ414のN極とS極の境界部分に位置する場合を想定する。そして、この境界部分がステータ234の極に対向する位置関係にある場合、B相のコイル252,256により発現する磁力によりロータ414をアンバランス位置と軸中心とを結ぶ直線に沿って(具体的には、図20(B)の紙面左方向に沿って)直接的に移動させることが困難になる場合がある。
【0148】
そのため、この場合、ナット236を締結した状態で、ステータ234に電力が供給されて、ロータ414のN極とS極との境界部分が各ティースに対向しないように、予め定められた角度だけ回転させる。たとえば、図20(B)に示すように、ロータ414のN極の頂部は、ティース242と軸中心とを結ぶ直線に対して45度だけ回転させた位置に向くように回転させられる。
【0149】
そして、ナット236の締結を緩めた後、アンバランス位置と軸中心とを結ぶ直線に沿った方向に磁力が発生するように、ステータ234に電力が供給される。発生した磁力によりアンバランス位置が軸中心側に移動するようにロータ414が移動させられる。これにより、振れ量が減少して回転シャフト410のアンバランス状態が修正される。
【0150】
以下、図21を参照しつつ、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置におけるバランス修正の手順について説明する。
【0151】
なお、電動過給機216のアンバランス量の検知およびバランス修正は、電動過給機216が固定台等に固定されて、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲にそれぞれカバー108,110が取り付けられた状態で実施されるものとする。カバー108,110は、アンバランス量の検知時に取り付けられていればよい。すなわち、カバー108,110の取り付けは、バランス修正前に作業者により行なわれてもよいし、PC118により制御されるカバー取り付け装置により行なわれてもよい。
【0152】
S300にて、PC118は、回転シャフト410の回転数が予め定められた目標回転数まで上昇するように、ステータ234に供給される電力を制御する。PC118は、回転数センサ116により検知される回転シャフト410の回転数が目標回転数で維持されるようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。予め定められた目標回転数は、電動過給機216の実使用回転数領域の回転数であって、ステータ234への電力供給により到達可能な回転数であれば、特に限定されるものではない。
【0153】
S302にて、PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106によりハウジング230に生じる振動を測定する。具体的には、PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106よりそれぞれ検知される加速度の時系列変化を取得する。PC118は、取得された加速度の時系列変化に基づいて強度あるいは周波数等の振動特性を算出して、回転シャフト410の回転時のバランス状態を検知する。PC118は、測定が開始されてから予め定められた時間が経過するまで振動の測定を継続する。なお、加速度ピックアップセンサ104,106による振動測定に代えて、変位検知センサ112,114により振れ量を測定するようにしてもよい。
【0154】
S304にて、PC118は、回転シャフト410の回転が停止するようにインバータ102を介してステータ234に供給される電力を制御する。
【0155】
S306にて、PC118は、測定された振動が許容範囲内の振動であるか否かを判断する。たとえば、PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106により測定された振動の強度がそれぞれ予め定められた強度以下であると、許容範囲内の振動であると判断するようにしてもよいし、測定された振動の周波数が予め定められた周波数帯であると、許容範囲内の振動である(あるいは、許容範囲内の振動ではない)と判断するようにしてもよい。なお、変位検知センサ112,114により回転シャフト410の振れ量が検知される場合においては、PC118が、振れ量が予め定められた量以内であるか否かを判断するようにすればよい。振動が許容範囲内の振動であると(S306にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S306にてNO)、処理はS308に移される。
【0156】
S308にて、PC118は、アンバランス量および位相を算出する。PC118は、加速度ピックアップセンサ104,106により測定された振動特性に基づいて回転シャフト410の回転時のバランス状態を解析して、アンバランス量および位相(アンバランスの位置)を算出する。
たとえば、PC118は、加速ピックアップセンサ104,106により測定された振動の強度(振幅)の最大値に基づいて回転シャフト410のアンバランス量を算出する。また、PC118は、振動の強度が最大となるときの回転角度に基づいて位相を算出する。なお、ロータ414の回転角度は、たとえば、レゾルバ等の回転角度検出センサ258,260を用いて検知すればよい。また、PC118は、たとえば、振動特性とアンバランス量および位相との関係(たとえば、マップ、表、数式など)を予め適合しておき、測定された振動特性に基づいてアンバランス量および位相を算出するようにしてもよい。
【0157】
S310にて、PC118は、ステータ234とロータ414との相対角度を検出する。S312にて、PC118は、検出されたステータ234とロータ414との相対角度に基づいて、ロータ414のN極あるいはS極がステータ234の極(すなわち、ステータ234に設けられるティースのいずれか)と一致しているか否かを判断する。すなわち、PC118は、ロータ414の磁極の境界部分とステータ234の極とが対向する位置関係にあるか否かを判断する。ロータ414の極とステータ極とが一致していると(S312にてYES)、処理はS314に移される。もしそうでないと(S312にてNO)、処理はS316に移される。
【0158】
S314にて、PC118は、ロータ414の回転角度を変更するようにステータ234に電力を供給する。ロータ414の回転角度は、予め定められた角度だけ変更すればよい。予め定められた角度は、特に限定されるものではなく、ロータ414の極とステータ234の極とが一致しない回転角度(すなわち、ロータ414の磁極の境界部分とステータ234の極とが一致しない回転角度)であれば、特に限定されるものではない。
【0159】
S316にて、PC118は、回転シャフト410の回転を制限する。S318にて、PC118は、ステータ234に対する通電量を算出する。PC118は、検知されたアンバランス量および位相に基づいて通電量を算出する。PC118は、たとえば、検知されたアンバランス量および位相からマップ等を用いて通電量を算出する。
【0160】
S320にて、PC118は、ナット236の締結を緩めた状態にする。S322にて、PC118は、ステータ234に対して算出された通電量の電力を供給する。
【0161】
S324にて、PC118は、ナット236を締結された状態にする。S326にて、PC118は、回転シャフト410の回転の制限を解除する。
【0162】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る電動過給機216のバランス修正装置の動作について説明する。
【0163】
コンプレッサハウジング202およびタービンハウジング204が取り付けられていない(あるいは、取り外された)状態で電動過給機216が固定台等に固定される。さらに、コンプレッサホイール206およびタービンホイール208の周囲を覆うカバー108,110がカバー取り付け装置により取り付けられる。このような状態で回転シャフト410のバランス修正が実施される。
【0164】
すなわち、電動過給機216には直流電源100からインバータ102を介して交流電力が供給される。ステータ234に交流電力が供給されることに応じて、回転シャフト410の回転数が上昇する。
【0165】
そして、回転数センサ116により検知された回転シャフト410の回転数が予め定められた目標回転数以上なると(S300)、加速度ピックアップセンサ104,106により振動測定が開始される(S302)。そして、予め定められた時間が経過するまで振動測定が実施された後に、回転シャフト410の回転が停止される(S304)。
【0166】
測定された振動が許容範囲内の振動であれば(S306にてYES)、電動過給機216のバランス修正処理が終了する。一方、測定された振動が許容範囲内の振動でなければ(S306にてNO)、測定された振動特性に基づいてアンバランス量および位相が算出される(S308)。そして、ステータ234とロータ414との相対角度が検出される(S310)。
【0167】
検出されたステータ234とロータ414との相対角度がロータ極とステータ極とが一致する角度でないと(S312にてNO)、回転シャフト410の回転が制限される(S316)。一方、検出されたステータ234とロータ414との相対角度がロータ極とステータ極とが一致する角度であると(S312にてYES)、ステータ234に電力が供給されてロータ414の回転角度が変更された後(S314)、回転シャフト410の回転が制限される(S316)。
【0168】
ステータ234に供給される通電量が算出され(S318)、回転シャフト410の回転が制限された状態でナット236の締結が緩められる(S320)。算出された通電量の電力がステータ234に通電されると(S322)、回転シャフト410とロータ414とにおいて回転軸に直交する方向のクリアランスが変化する。すなわち、アンバランス位置が軸中心側(すなわち、振れ量が減少する側)にロータ414が移動するため、アンバランス状態が修正される。その後、ナット236が締結され(S324)、回転シャフト410の回転の制限が解除される(S326)
以上のようにして、本実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置によると、回転シャフトの回転を制限した状態で、ステータに電力を供給すると、回転シャフトの位置を制限したままロータだけを回転軸に直交する方向に移動させることができる。そのため、回転シャフトとロータとのクリアランスを変化させることができる。回転シャフトのアンバランス状態は、回転シャフトに固定されるロータ等の構成部品の平行度の積み重ねに起因して生じる。したがって、回転シャフトとロータとのクリアランスを変化させることにより、平行度の積み重ねの態様が変化して、回転シャフトのアンバランス状態を改善するように修正することができる。さらに、回転シャフトのバランス修正は、電動過給機を分解することなく、ナットの締結を緩めることにより実施することができる。そのため、電動過給機を分解してバランス修正した後に組み立て直す場合と比較して、短時間で回転シャフトのアンバランス状態を修正することができる。したがって、電動過給機を分解することなく、短時間でアンバランス状態を修正するバランス修正装置を提供することができる。
【0169】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置の構成を示す図である。
【図2】エンジンに搭載された電動過給機の構成を示す図である。
【図3】回転電機を有しない過給機の構成を示す図である。
【図4】コンプレッサホイール、カラーおよびスラストベアリングの平行度の積み重ねの態様を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における電動過給機のロータとステータとを示す図である。
【図6】第1の実施の形態における各ロータ位置におけるロータとステータとの位置関係を示す図である。
【図7】第1の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置のバランス修正の手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施の形態の変形例に係る電動過給機のバランス修正装置の構成を示す図である。
【図9】変位検知センサによる検知対象物の構造を示す図である。
【図10】第2の実施の形態における電動過給機のロータとステータとを示す図である。
【図11】回転角度検出センサにより検知される磁束密度の変化を示す図(その1)である。
【図12】第2の実施の形態におけるバランス修正の態様を示す図である。
【図13】回転角度検出センサにより検知される磁束密度の変化を示す図(その2)である。
【図14】第2の実施の形態における各ロータ位置におけるロータとステータとの位置関係を示す図である。
【図15】第2の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置のバランス修正の手順を示すフローチャートである。
【図16】検知された振れ量と近似式とを示す図である。
【図17】第3の実施の形態における回転シャフトおよびロータの構造を示す図である。
【図18】クリアランスが小さい場合における回転シャフトおよびロータの構造を示す図である。
【図19】第3の実施の形態におけるバランス修正の態様を示す図(その1)である。
【図20】第3の実施の形態におけるバランス修正の態様を示す図(その2)である。
【図21】第3の実施の形態に係る電動過給機のバランス修正装置のバランス修正の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0171】
100 直流電源、102 インバータ、104,106 加速度ピックアップセンサ、108,110 カバー、112,114 変位検知センサ、116 回転数センサ、118 PC、202,302 コンプレッサハウジング、204,304 タービンハウジング、206,306 コンプレッサホイール、208,308 タービンホイール、210,262,310,410 回転シャフト、214,414 ロータ、216 電動過給機、222,224,322,324 ラジアルベアリング、228,328 スラストベアリング、230,330 ハウジング、232,332 カラー、234 ステータ、236,336 ナット、238 スペーサ、240 突起部、242,244,246,248 ティース、250,252,254,256 コイル、258,260 回転角度検出センサ、268,270 開口部、272 回転制限装置、274,276 加工穴、280,350 段差部分、284,286 加工面、300 過給機、302。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正装置であって、前記回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられ、前記電動過給機は、前記回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸周りの位置が固定される回転子と前記電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含み、
前記固定子に電力を供給して、前記回転子を回転させるための供給手段と、
前記回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、前記回転シャフトのアンバランス量を検知するための検知手段と、
前記検知されたアンバランス量に基づいて、前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記回転シャフトと前記回転子との位相を変化させて、前記アンバランス状態を修正するための修正手段とを含む、電動過給機のバランス修正装置。
【請求項2】
前記修正手段は、前記回転シャフトの回転を制限した状態で、前記固定子に電力を供給して前記回転子を回転させることにより、前記回転シャフトと前記回転子との位相を変化させて、前記アンバランス状態を修正するための手段を含む、請求項1に記載の電動過給機のバランス修正装置。
【請求項3】
前記供給手段は、前記回転子と前記固定子との位相角度が複数の予め定められた位相角度となるように、前記回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ、前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記固定子に電力を供給するための手段を含み、
前記検知手段は、前記締結部材が締結された状態で、前記回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、前記複数の位相角度に対応するアンバランス量をそれぞれ検知するための手段を含み、
前記修正手段は、前記回転子と前記固定子との位相角度が、前記複数の予め定められた位相角度のうち、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、前記回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記固定子に電力を供給して、前記アンバランス状態を修正するための手段を含む、請求項2に記載の電動過給機のバランス修正装置。
【請求項4】
電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正装置であって、前記回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられ、前記電動過給機は、前記回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸に直交する方向の位置が固定される回転子と前記電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含み、
前記固定子に電力を供給して、前記回転子を回転させるための供給手段と、
前記回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、前記回転シャフトのアンバランス量を検知するための検知手段と、
前記検知されたアンバランス量に基づいて、前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記回転シャフトと前記回転子とのクリアランスを変化させて前記アンバランス状態を修正するための修正手段とを含む、電動過給機のバランス修正装置。
【請求項5】
前記回転シャフトは、前記回転子を貫通して設けられ、
前記修正手段は、前記回転シャフトの回転を制限した状態で、前記固定子に電力を供給して、前記回転子を回転軸に直交する方向に移動させることにより、前記回転シャフトの外径と前記回転子の内径とのクリアランスを変化させて、前記アンバランス状態を修正するための手段を含む、請求項4に記載の電動過給機のバランス修正装置。
【請求項6】
前記回転子は2つの磁極を有し、
前記バランス修正装置は、前記回転子の回転角度を検知するための角度検知手段をさらに含み、
前記供給手段は、前記検知された回転子の回転角度が、前記回転子の磁極の境界部分と前記固定子の磁極とが対向する位置関係となる角度であると、前記締結部材が締結された状態で、前記境界部分が前記固定子の磁極に対向しない角度に回転するように、前記固定子に電力を供給するための手段を含む、請求項5に記載の電動過給機のバランス修正装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記回転シャフトの両端部に対向して設けられ、前記回転シャフトの回転軸に直交する方向の変位量を検知するための変位検知手段を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の電動過給機のバランス修正装置。
【請求項8】
前記検知手段は、前記電動過給機の筐体に設けられ、前記電動過給機に生じた振動を検知するための振動検知手段を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の電動過給機のバランス修正装置。
【請求項9】
電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正方法であって、前記回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられ、前記電動過給機は、前記回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸周りの位置が固定される回転子と前記電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含み、
前記固定子に電力を供給して、前記回転子を回転させる供給ステップと、
前記回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、前記回転シャフトのアンバランス量を検知する検知ステップと、
前記検知されたアンバランス量に基づいて、前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記回転シャフトと前記回転子との位相を変化させて、前記アンバランス状態を修正する修正ステップとを含む、電動過給機のバランス修正方法。
【請求項10】
前記修正ステップは、前記回転シャフトの回転を制限した状態で、前記固定子に電力を供給して前記回転子を回転させることにより、前記回転シャフトと前記回転子との位相を変化させて、前記アンバランス状態を修正するステップを含む、請求項9に記載の電動過給機のバランス修正方法。
【請求項11】
前記供給ステップは、前記回転子と前記固定子との位相角度が複数の予め定められた位相角度となるように、前記回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記固定子に電力を供給するステップを含み、
前記検知ステップは、前記締結部材が締結された状態で、前記回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、前記複数の位相角度に対応するアンバランス量をそれぞれ検知するステップを含み、
前記修正ステップは、前記回転子と前記固定子との位相角度が、前記複数の予め定められた位相角度のうち、最も小さいアンバランス量に対応する位相角度となるように、前記回転シャフトの回転を制限した状態であって、かつ前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記固定子に電力を供給して、前記アンバランス状態を修正するステップを含む、請求項10に記載の電動過給機のバランス修正方法。
【請求項12】
電動過給機の回転シャフトのアンバランス状態を修正するバランス修正方法であって、前記回転シャフトの両端部には、コンプレッサホイールとタービンホイールとが設けられ、前記電動過給機は、前記回転シャフトに対して締結部材の締結力により回転軸に直交する方向の位置が固定される回転子と前記電動過給機の筐体に固定される固定子とから構成される回転電機を含み、
前記固定子に電力を供給して、前記回転子を回転させる供給ステップと、
前記回転シャフトの回転数が予め定められた回転数であるときの、前記回転シャフトのアンバランス量を検知する検知ステップと、
前記検知されたアンバランス量に基づいて、前記締結部材の締結を緩めた状態で、前記回転シャフトと前記回転子とのクリアランスを変化させて前記アンバランス状態を修正する修正ステップとを含む、電動過給機のバランス修正方法。
【請求項13】
前記回転シャフトは、前記回転子を貫通して設けられ、
前記修正ステップは、前記回転シャフトの回転を制限した状態で、前記固定子に電力を供給して、前記回転子を回転軸に直交する方向に移動させることにより、前記回転シャフトの外径と前記回転子の内径との間のクリアランスを変化させて前記アンバランス状態を修正するステップを含む、請求項12に記載の電動過給機のバランス修正方法。
【請求項14】
前記回転子は2つの磁極を有し、
前記バランス修正方法は、前記回転子の回転角度を検知する角度検知ステップをさらに含み、
前記供給ステップは、前記検知された回転子の回転角度が、前記回転子の磁極の境界部分と前記固定子の磁極とが対向する位置関係となる角度であると、前記締結部材が締結された状態で、前記境界部分が前記固定子の磁極に対向しない角度に回転するように、前記固定子に電力を供給するステップを含む、請求項13に記載の電動過給機のバランス修正方法。
【請求項15】
前記検知ステップは、前記回転シャフトの両端部に対向して設けられた変位検知センサにより、前記回転シャフトの回転軸に直交する方向の変位量を検知するステップを含む、請求項9〜14のいずれかに記載の電動過給機のバランス修正方法。
【請求項16】
前記検知ステップは、前記電動過給機の筐体に設けられた加速度ピックアップセンサにより、前記電動過給機に生じた振動を検知するステップを含む、請求項9〜14のいずれかに記載の電動過給機のバランス修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−8219(P2008−8219A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180118(P2006−180118)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】