説明

電子レンジ用耐熱皿

【課題】 短時間で食材に適切な焦げ目を付けた状態で加熱調理することができる陶磁器製の電子レンジ用耐熱皿を提供すること。
【解決手段】 炭化珪素を主材とし、焼結材、低膨張焼結材及び成形保持材に水を添加して混練した皿形成材を皿状に成形して皿素材を形成し、炭化珪素を主材とし、蛙目粘土、ペタライトに水を添加して混練したコーティング材を上記皿素材の表面に塗布し、その後、上記コーティングした上記皿素材を焼成して素焼きの皿を形成し、上記素焼きの皿の表面に釉薬をコーティングして再度焼成することにより電子レンジ用耐熱皿を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ専用の陶磁器製耐熱皿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子レンジ用皿は、高周波電磁波(マイクロ波)によって皿上の食材中の水分のみ加熱された。
【0003】
又、ガラス又は陶磁器の皿によっては加熱により亀裂を生じることがあるため、電子レンジ用としては耐熱陶磁器が用いられている。
【0004】
何れにしても、一般には耐熱皿上の食材が加熱されれば足りる。電子レンジによる食材の加熱は食材内部の水分がマイクロ波による高周波振動により加熱されるものであるため、冷えた天ぷら等を加熱すると表面のころもまで柔軟となり、食感を低下させた。
【0005】
そこで、炭化珪素を主成分とする陶磁器製耐熱皿であって、電子レンジ内でマイクロ波によって皿上の食材を加熱する際、短時間に食感を劣化又は低下させることなく加熱することのできる耐熱皿が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3650373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の耐熱皿は、食材のマイクロ波による加熱と同時に、高周波電磁波(マイクロ波)の照射によって皿の炭化珪素が振動し、これにより皿の急熱高温化が瞬間的に行われ、これにより食材の加熱時間を短縮して、食材の食味を低下せずに食材を加熱調理することを可能としたものである。
【0008】
しかしながら、冷えた天ぷら等の食材をかりっとした良好な食感で加熱(暖めなおし)すること、及び、焼魚の表面に適切な焦げ目を付けて表面を香ばしく加熱するためには、耐熱皿の表面温度をさらに高温化することが望まれている。
【0009】
本発明は、電子レンジ内でマイクロ波によって皿上の食材を加熱する際、皿自体が高温化する従来の耐熱皿よりも、さらに皿の表面温度を高くすることができ、しかも遠赤外線を放射することにより、加熱する食材の食感、食味を劣化又は低下させることなく、短時間で食材を良好に加熱調理することができる陶磁器製の電子レンジ用耐熱皿を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、電子レンジ内でマイクロ波によって皿上の食材を加熱する際、従来の耐熱皿よりも皿の表面温度を高くすることができると共に、成形性が良く、耐熱衝撃性の高い耐熱皿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、炭化珪素を主材とし、焼結材、低膨張焼結材及び成形保持材に水を添加して混練した皿形成材を皿状に成形して皿素材を形成し、炭化珪素を主材とし、低膨張焼結材、成形保持材に水を添加して混練したコーティング材を上記皿素材の表面に塗布することにより、当該コーティング材によって上記皿素材の表面にコーティング層を形成し、上記コーティング層を形成した上記皿素材を焼成して素焼きの皿を形成し、上記素焼きの皿の表面に釉薬をコーティングして再度焼成することにより形成したものであることを特徴とする電子レンジ用耐熱皿により構成される。
【0012】
上記コーティング材の構成材としての低膨張焼結材はペタライト、成形保持材は蛙目粘土とすることができる。上記皿形成材としての焼結材は黒泥又は粘土、低膨張焼結材はペタライト、上記成形保持材は蛙目粘土とすることができる。このように構成すると、電子レンジ内で加熱する際、電子レンジ用耐熱皿の構成素材である炭化珪素にマイクロ波が照射されて皿自体が急速に高温化すると共に、コーティング材によるコーティングによって電子レンジ用耐熱皿の表面付近に炭化珪素が多く存在するので、当該耐熱皿に電子レンジのマイクロ波が照射されると、上記表面付近に多く存在する炭化珪素が急速に発熱して皿表面が急速に加熱されるため、コーティングの存在しない従来の耐熱皿に比べて、耐熱皿の表面温度をより高温化することができる。また、炭化珪素から放射される遠赤外線によって食材表面を効率的に加熱することができるため、焼魚等の表面に焦げ目を付けながら、表面全体を香ばしく加熱する等の加熱調理を電子レンジにて短時間にて行うことができる。また、皿素材の表面にコーティング材を塗布する構成としたので、皿形成材としての炭化珪素を所定量に抑制し、皿形成材として低膨張焼結材(ペタライト)及び成形保持材(蛙目粘土)を含有することにより、皿素材の成形性、耐熱衝撃性を高めつつ、コーティング材における炭化珪素の重量割合を高めることができるので、皿の成形性、耐熱衝撃性を維持しつつ、表面温度の高い電子レンジ用耐熱皿を得ることができる。
【0013】
第2に、上記コーティング材を構成する上記炭化珪素は、コーティング材の総重量(100重量%)に対して60重量%〜90重量%とし、上記コーティング材の構成材の内、残りの10重量%〜40重量%を上記低膨張焼結材及び上記成形保持材の両成分により構成したものであることを特徴とする上記第1記載の電子レンジ用耐熱皿により構成される。
【0014】
このように炭化珪素を含有するコーティング材を皿素材に塗布する構成とすることにより、コーティング材における炭化珪素の構成比率を総重量の60重量%〜90重量%と高くすることができ、マイクロ波の照射によって発熱する耐熱皿として成形性、耐熱衝撃性を維持しながら、電子レンジにて加熱した場合、耐熱皿の表面温度を、コーティング層の存在しない従来の耐熱皿よりも高温化することが可能となる。
【0015】
第3に、上記コーティング材を構成する上記炭化珪素、上記低膨張焼結材、上記成形保持材の割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素60重量%〜90重量%、上記低膨張焼結材5重量%〜20重量%、上記成形保持材5重量%〜20重量%の範囲にあることを特徴とする上記第1記載の電子レンジ用耐熱皿により構成される。
【0016】
このように炭化珪素を含有するコーティング材を皿素材に塗布する構成とすることにより、コーティング材における炭化珪素の構成比率を60重量%〜90重量%まで高めることができ、その結果、マイクロ波の照射によって発熱する耐熱皿として成形性、耐熱衝撃性を維持しながら、電子レンジにて加熱した場合、耐熱皿の表面温度を、コーティング層の存在しない従来の耐熱皿よりも高温化することが可能となる。
【0017】
第4に、上記コーティング材を構成する上記炭化珪素、上記低膨張焼結材、上記成形保持材の割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素約73重量%、上記低膨張焼結材約17重量%、上記成形保持材約10重量%である上記第1記載の電子レンジ用耐熱皿により構成される。
【0018】
このように構成すると、電子レンジで加熱(例えば6分)した場合の耐熱皿の表面温度を例えば289℃まで上昇させることができる。
【0019】
第5に、上記皿素材を構成する上記炭化珪素、上記焼結材、上記低膨張焼結材、及び上記成形保持材の構成割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素約30重量%、焼結材約40重量%、上記低膨張焼結材約15重量%、成形保持材約15重量%よりなる上記第1〜4の何れかに記載の電子レンジ用耐熱皿により構成される。
【0020】
このように構成すると、皿形成材として炭化珪素を含有しているので、電子レンジでマイクロ波が照射された場合、マイクロ波によって炭化珪素が急速に発熱して遠赤外線を放射すると共に耐熱皿が高温化するので、当該耐熱皿の食材を短時間に加熱調理することができる。さらに上記コーティングによって耐熱皿表面に炭化珪素が多く含有されているため、耐熱皿の表面温度を従来の耐熱皿より高温化することができ、食材表面に焦げ目を付ける調理を短時間で実現することができる。また、皿形成材として低膨張焼結材及び成形保持材を含有しているので、皿素材として耐熱衝撃性が高いと共に、成形性も良好である。
【0021】
第6に、上記皿形成材として、上記焼結材は黒泥又は粘土であり、上記低膨張焼結材はペタライトであり、上記成形保持材は蛙目粘土であり、上記コーティング材の構成材として、上記低膨張焼結材はペタライトであり、上記成形保持材は蛙目粘土である上記第1〜5の何れかに記載の電子レンジ用耐熱皿により構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上述のように、炭化珪素を主材として皿素材を形成すると共に、コーティングによって電子レンジ用耐熱皿の表面付近に炭化珪素が多く存在する耐熱皿を構成したものであるから、当該耐熱皿に電子レンジのマイクロ波が照射されると、皿形成材としての炭化珪素が急速に発熱すると共に、コーティング材として上記表面付近に多く存在する炭化珪素が急速に発熱して皿表面が高温化するため、コーティングの存在しない従来の耐熱皿に比べて、耐熱皿の表面温度をより高温化することができる。
【0023】
従って、当該耐熱皿上に食材を載置して電子レンジ内で加熱すると、食材の表面に焦げ目を付けることができると共に、耐熱皿表面付近に多く存在する炭化珪素から放射される遠赤外線によって食材表面を効率的に加熱することができるため、例えば焼魚等の表面に焦げ目を付けながら、焼魚表面全体を香ばしく加熱する等の加熱調理を電子レンジにて極めて短時間にて行うことができる。
【0024】
また、炭化珪素を含有する皿素材の表面に、炭化珪素を主材とするコーティング材を塗布する構成としたので、皿形成材としての炭化珪素を所定量に抑制し、皿形成材として低膨張焼結材及び成形保持材を含有することにより、皿素材の成形性、耐熱衝撃性を高めつつ、コーティング材における炭化珪素の重量割合を高めることができるので、皿の成形性、耐熱衝撃性を維持しつつ、表面温度のより高い電子レンジ用耐熱皿を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電子レンジ用耐熱皿の皿素材を形成する工程を示すフローチャートである。
【図2】同上耐熱皿のコーティング材を形成する工程を示すフローチャートである。
【図3】同上耐熱皿のコーティングから完成までの工程を示すフローチャートである。
【図4】同上耐熱皿の皿形成材等を形成するためのトロンミルの側面図である。
【図5】(a)は同上耐熱皿を形成するための成形型の側面断面図、(b)は同上成形型の側面断面図、(c)は成形された耐熱皿(皿素材)の側面断面図、(d)は同上耐熱皿の斜視図である。
【図6】(a)は皿素材にコーティング材をスプレーする状態を示す説明図、(b)はコーティング層が形成された皿素材の表面の拡大断面図である。
【図7】(a)は素焼の皿に釉薬をスプレーする状態を示す説明図、(b)は釉薬の層が形成された素焼きの皿の表面の拡大断面図である。
【図8】電子レンジ内において電子レンジ用耐熱皿により食材の加熱状況を示す電子レンジの説明図である。
【図9】同上耐熱皿と従来の耐熱皿の温度上昇の変化を示す特性図である。
【図10】同上耐熱皿のコーティング層を示す同上耐熱皿の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.製造工程
(1)耐熱皿の素材(皿素材3)の形成
炭化珪素(SiC・・・カーボランダム)は、一般に研磨剤、砥石、高級耐火物、抵抗発熱体等として用いられる。
【0027】
上記炭化珪素(SiC、以下「炭化珪素」という))の微粉を主材とし、これに焼結材として黒泥又は粘土、低膨張焼結材としてペタライト(Petalite、葉長石)、及び、成形保持材又は高温焼結材として蛙目粘土(ガイロメ粘土)を添加混合し、水(外割で21%)を加えて皿形成材を形成し(図1S1)、当該皿形成材をトロンミル1(図4参照)に投入し、該トロンミル1を20時間乃至24時間回転させ、同トロンミル1内で上記皿形成材を粉砕、混合すると共に水と混練する(図1S2)。尚、外割で21%の水とは、例えば、炭化珪素、焼結材(黒泥)、低膨張焼結材(ペタライト)、成型保持材(蛙目粘土)の合計重量100gに対して、添加する水が21gであることをいう。
【0028】
その後、上記混練した皿形成材を上記トロンミル1から取り出し、圧力機の成形型2(図5(a)(b)参照)に流し込んで、当該成形型2によって皿状に圧縮成形し(図1S3)、円形の皿素材3を形成する(図1S4、図5(c)(d)参照)。尚、皿素材3の形状は円形に限らず、方形等、任意の皿形状でよい。
【0029】
上記皿素材を構成する上記炭化珪素、上記焼結材(黒泥又は粘土)、上記低膨張焼結材(ペタライト)、及び上記蛙目粘土の構成割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素約30重量%、焼結材約40重量%、上記低膨張焼結材約15重量%、蛙目粘土約15重量%とする。例えば、上記炭化珪素、黒泥、ペタライト及び蛙目粘土の混合割合は、それぞれ約30:40:15:15重量部(重量%)とする。
【0030】
上記皿形成材の内、黒泥(又は粘土)は焼結材であり、製品の色彩(黒灰色)を付与する役目を有し、ペタライト(低膨張焼結材)は焼結による熱膨張を抑制し、急加熱、急冷却等の急激な温度変化に対する耐久性(耐熱衝撃性に優れた性能)を付与する役目を有し、蛙目粘土(成形保持材)は焼成品の成形状態を保持し、良好な成形性、焼結体としての良好な保形性を付与する役目を果たすものである。また、炭化珪素は発熱体としての機能を有するものであり、皿の主要構成材料であるが、マイクロ波を照射されると振動することにより急速に高温化すると共に、遠赤外線を放射するものである。
【0031】
上記炭化珪素は、炭素と珪素を人工合成したものであり、市販品を購入することで入手することができる。上記黒泥又は粘土は、市販品を購入することで入手することができる。上記ペタライトは、市販品を購入することで入手することができる。上記蛙目粘土は、天然の粘土を加工したものであり、市販品を購入することで入手することができる。
【0032】
(2)コーティング材5の調合
次に、炭化珪素の微粉を主材とし、蛙目粘土、ペタライトを添加混合し、これに水を加えてコーティング素材を形成する(図2S5)。このコーティング素材をトロンミル1(図4参照)に投入し、該トロンミル1を20時間乃至24時間回転させ、当該トロンミル1内で上記コーティング素材を混合、粉砕して水と混練することにより、コーティング材5を製造する(図2S6,S7)。
【0033】
上記コーティング材の構成材の内、炭化珪素は、マイクロ波の照射によって皿表面を高温化し及び遠赤外線を放射する機能を有しており、ペタライトは上記と同様に焼結による熱膨張を抑制し耐熱衝撃性を良好とするため、蛙目粘土も上記と同様に焼成品の成形状態を保持するためである。
【0034】
上記コーティング材5を構成する炭化珪素、ペタライト、蛙目粘土の割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素60重量%〜90重量%、上記ペタライト5重量%〜20重量%、上記蛙目粘土5重量%〜20重量%の範囲とする。
【0035】
一例として、例えば炭化珪素約73重量%、ペタライト約17重量%、蛙目粘土約10重量%とする。尚、水は一例として外割で35%加える。よって、炭化珪素、ペタライト、蛙目粘土によるコーティング材5の総重量が例えば100gであれば、添加する水は35gとする。
【0036】
何れにしても、コーティング材5の構成素材の内、炭化珪素の割合は、60重量%以上90重量%以下の何れかの割合とし、その他の40重量%〜10重量%をペタライト、蛙目粘土により構成することが好ましい。
【0037】
このように、炭化珪素を多く含有するコーティング材5によって皿素材3の表面をコーティングすることにより、焼成後の皿表面付近の炭化珪素の含有率を多くして、耐熱皿の表面温度の高温化を図るものである。
【0038】
即ち、炭化珪素を含有する皿素材3の表面に、炭化珪素を主材とするコーティング材5を塗布する構成としたので、皿形成材としての炭化珪素は、耐熱皿としての成形性、耐熱衝撃性等を考慮して所定量(例えば30重量%)に抑制しつつ、低膨張焼結材(ペタライト)及び成形保持材(蛙目粘土)を含有することにより、皿素材3の成形性(任意の形状に成形することができる造形性)、及び耐熱衝撃性を高めつつ、コーティング材5における炭化珪素の重量割合を60重量%〜90重量%まで高めることにより、耐熱皿としての成形性、耐熱衝撃性を維持しつつ、表面温度のより高い電子レンジ用耐熱皿を得ることができる。
【0039】
(3)コーティング層5’の形成
上記トロンミル1にて混練された上記コーティング材5を上記トロンミルから取り出し、当該コーティング材5をスプレーガン4に投入し(図6参照)、当該スプレーガン4を用いて上記(1)で成形した上記皿素材3の表面全体に上記コーティング材5を吹き付け(図6(a)参照)、上記皿素材3の表目全体に上記コーティング材5による厚さ約1mmのコーティング層5’を形成する(図6(b)、図3S8参照)。コーティング材5によるコーティング層5’の形成は、図10に示すように、皿素材3の表裏面全体にコーティング層5’を形成することが好ましい。
【0040】
このように炭化珪素の含有量の多いコーティング材5によりコーティング層5’を形成することにより、皿素材3の表面付近の全体に炭化珪素が多く含有する層が形成されるため、焼成後においても皿の表面付近において炭化珪素の含有量の多い耐熱皿を形成することができる。また、コーティング材5は炭化珪素の他、低膨張焼結材(ペタライト)と成形保持材(蛙目粘土)を含有しているので、成形性、耐熱衝撃性に優れたコーティング層5’を形成することができる。
【0041】
また、コーティング層5’に含まれる炭化珪素の粒子は皿形成材の他の構成素材(ペタライト、蛙目粘土等)より小さいので、皿表面付近に集中する炭化珪素へのマイクロ波の照射により皿表面の蓄熱効果が高まり、皿の表面温度を高くする機能を有する。
【0042】
(4)第1回目焼成
次に、上記(3)でコーティングした皿素材3を電気炉に投入し、1230℃〜1260℃の温度で焼成し(図3S9)、素焼き状態の素焼の皿3’を形成する(図3S10)。
【0043】
(5)第2回焼成
上記第1回焼成が終了した素焼の皿3’の表面全体に、釉薬6をスプレーガン4’にて吹き付けて塗布し(図3S11、図7(a)参照)、上記焼成したコーティング層5’の上に釉薬6の釉薬の層6’を形成する(図7(b)参照)。
【0044】
その後、上記素焼の皿3’を再び電気炉に投入し、750℃〜800℃の低温で焼成し(図3S12)、これにより耐熱皿3”が完成する(図3S13)。
【0045】
釉薬としては、例えば、有限会社佐賀窯材製のNo.3320の酸化クロム系の無鉛ブルー釉(成分は「表1」参照)」を使用する。この釉薬は、調理時の食材の皿表面への焦げ付き等を防止して、皿の洗浄を容易にする役割を有する。
【0046】
このように構成された耐熱皿3”において、主たる素材である炭化珪素は、電子レンジ7のマイクロ波の照射により強く振動して急速に発熱し、瞬間的に遠赤外線を放射するため、電子レンジ7内の耐熱皿3”上の食材8は、上記マイクロ波により直接加温されると同時に、該マイクロ波による炭化珪素の急速加熱に基づく上記耐熱皿3”の表面温度の急速な上昇、及び耐熱皿3”を構成する炭化珪素から発生する電磁波である遠赤外線の影響を受け、上記電磁波(マイクロ波)による直接加熱と上記耐熱皿3”による短時間高温加熱とを表裏から受けることになる。
【0047】
また、上記耐熱皿3”の表面全体に、上記コーティング材5にて炭化珪素の含有率の高いコーティングを行っているので、上記耐熱皿3”の内部に比べて表面付近に炭化珪素がより多く含有された構造となっている。従って、当該耐熱皿3”に電子レンジ7のマイクロ波が照射された場合に、該耐熱皿3”の表面付近の炭化珪素が強く振動して発熱し、これにより皿の表面付近が加熱されて急速に温度上昇するため、上記コーティング材5によるコーティング層5’の存在しない従来の耐熱皿に比べて、当該耐熱皿3”の表面温度がより上昇し、例えば魚等の表面に短時間で適切な焦げ目(焼色)を付けることが可能となる。
【0048】
上記炭化珪素が上記マイクロ波を照射されることにより放射する遠赤外線は、食材の内部を加熱するマイクロ波に比べて、食材の表面付近で熱に変換され、食品表面の温度を上昇させる性質を有している。よって、上記耐熱皿3”上に載置された食材8は、電子レンジのマイクロ波によってその食材内部が加熱されると共に、上記耐熱皿3”上の食材8の表面全体(皿に接する部分に限らず食材8の表裏全体)に遠赤外線が照射されるため、当該遠赤外線によって食材8表面付近に存在する水分を適切に蒸発させることができ、主に食材8の表面全体を香ばしくかりっと(クリスピーな食感に)加熱することができる。
【0049】
さらに、上記耐熱皿3”の表面の急速な温度上昇によって該耐熱皿3”表面に接する食材8は、耐熱皿3”との伝導加熱によってその食材8表面の温度が上昇して焦げ目を付けることができ、例えば魚の表面に当該伝導加熱によって焦げ目を付けると共に、魚表面の水分を遠赤外線で効率的に飛ばし、内部はマイクロ波で適切に加熱することにより、焦げ目のついた全体に表面がかりっとした香ばしい焼き魚等の調理を、極めて短時間のうちに実現することができる。
【実施例】
【0050】
A.実験例1 本発明の電子レンジ用耐熱皿3”の表面温度(電子レンジによる加熱)
上記1(1)から(5)の製造工程にて製造した本発明の電子レンジ用耐熱皿3”(コーティング材5によってコーティングを施した電子レンジ用耐熱皿3”、素材及びその構成比率は下記「表1」に示す。以下、「本発明の耐熱皿3”」という)(直径190mmの円形皿)を、電子レンジ7内に収納し、食材を載置せずに、500Wで6分間加熱した場合の上記耐熱皿3”の表面温度の1分毎の計時変化を赤外線レーザ温度測定計にて計測した。尚、釉薬は酸化クロムを主材とする無鉛の釉薬(下記「表1」に示すもの)を使用した。
【0051】
比較例として、上記製造工程の内、1(3)のコーティングを施さない従来の電子レンジ用耐熱皿(下記「表1」に比較例として示す従来の電子レンジ用耐熱皿、以下「従来の耐熱皿」という)について、同一の電子レンジ7内に収納し、同一条件(食材載置せず、500W、6分)で加熱した場合の上記従来の耐熱皿の表面温度を赤外線レーザ温度計にて同様に計測した。両者の結果を図9及び「表2」に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

(1)測定結果
「表2」、図9の結果をみると、経過時間が2分以降は、従来の耐熱皿に比べて、本発明の耐熱皿3”の表面温度の方が高くなり、4分経過後には従来の耐熱皿の表面温度が228℃であるのに対し、本発明の耐熱皿3”の表面温度が248℃となり、表面温度は従来の耐熱皿より約20℃高くなった。
【0054】
その後は約20℃程度の温度差を維持し、6分経過後には、本発明の耐熱皿3”の表面温度は289℃となり、従来の耐熱皿の表面温度(272℃)より17℃高くなることが認められた。
【0055】
このように本発明の耐熱皿3”は、従来の耐熱皿と比較して、同一出力の電子レンジ7で、同一加熱時間であっても、4分〜6分間加熱することにより、約17℃〜20℃程度表面温度を高くすることができることがわかった。
【0056】
これは、耐熱皿の表面温度の上昇は、基本的には、電子レンジ用耐熱皿3”の主たる素材である炭化珪素が、電子レンジ7のマイクロ波により振動させられ、これにより本発明の耐熱皿3”の急速な高温化が瞬間的に行われて、当該耐熱皿3”の表面温度が上昇することに起因すると考えられる。
【0057】
ところで、本発明の耐熱皿3”は、当該耐熱皿3”の表面に、コーティング材5の総重量に対して73重量%という高い含有率の炭化珪素を含むコーティング材5によるコーティングが施されているので、当該コーティング材5に含まれる炭化珪素が当該耐熱皿3”の表面付近により多く存在していると考えられる。
【0058】
従って、本発明の耐熱皿3”の表面付近に集中して多く存在する炭化珪素が、電子レンジ7のマイクロ波により振動させられることによる急速な高温化が、当該耐熱皿3”の表面の上記コーティング層5’全体において行われるため、上記コーティング層5’の存在しない従来の耐熱皿に比べて、本発明の耐熱皿3”の表面の温度が、短い加熱時間でより高くなるものと考えられる。
【0059】
また、炭化珪素の粒子は皿形成材の他の構成素材(ペタライト、蛙目粘土等)の粒子よりも小さいため、小さい粒子の炭化珪素が皿表面付近に集中して存在するため、これらの炭化珪素により皿表面付近の蓄熱効果が高まり、そのためコーティング材の存在しない皿に比べて皿の表面温度が高くなるものと考えられる。
【0060】
B.実験例2
(1)表面温度及び遠赤外線積分放射率(ヒータによる加熱)
(a)本発明の電子レンジ用耐熱皿3”
上記1の製造方法(1)〜(5)と同様の製造工程によりに方形の試験片(大きさ:縦 30mm×横30mm、厚さ3mm)を製造した。
【0061】
この試験片の素材は、上記本発明の耐熱皿3”と同様であり、上記「表1」の皿の構成素材からなり、その表面には上記コーティング材5によるコーティングが施され、第1回焼成の後、釉薬が塗布され、第2回目の焼成を行うことにより形成されたものである。
【0062】
本実験例2は、ヒータ上に上記試験片を載置し、ヒータ温度100℃にて加熱して当該試験片の表面温度と遠赤外線放射率を測定した。
【0063】
遠赤外線放射率の測定には、日本電子株式会社製の遠赤外線分光放射計(JIR−E500)を用いた。遠赤外線積分放射率は、波長範囲3.33μm〜25.42μmにて算出した。測定結果の表面温度と遠赤外線積分放射率を「表3」に示す。
【0064】
【表3】

(b)比較例
比較例として、上記1の製造方法(1)〜(5)の工程の内、(3)のコーティング材5によるコーティングを施さない状態の試験片(大きさ:縦30mm×横30mm、厚さ3mm)を製造した。
【0065】
この比較例の試験片の素材は、上記実験例1の従来の耐熱皿と同様の構成であり、基本的には上記「表1」の皿の素材からなり、コーティング材5によるコーティングを施すことなく第1回焼成の後、釉薬が塗布され、第2回目の焼成を行うことにより形成したものである。
【0066】
この比較例の試験片について、同様にヒータ温度100℃にて加熱して、同一条件にて表面温度と遠赤外線放射率を測定した。測定には、上記(a)の実験と同じ日本電子株式会社製の遠赤外線分光放射計(JIR−E500)を用い、遠赤外線積分放射率は、上記(a)の実験と同様に、波長範囲3.33μm〜25.42μmにて算出した。表面温度と積分放射率を「表4」に示す。
【0067】
【表4】

(c)結果
表面温度については、比較例の試験片が89.5℃であるのに対して、本発明の試験片が90.0℃であり、同じヒータ温度(100℃)において、本発明の試験片の方が表面温度がより高くなっていることが確認できた。
【0068】
これは本発明の試験片は実験例1の本発明の耐熱皿3”と同様に、コーティング層5’が形成されているため、その表面付近により多くの炭化珪素が集中して存在していると考えられる。従って、本発明の試験片の素材中に含まれる炭化珪素がヒータによって急速に加熱されると共に、当該本発明の試験片表面のコーティング層5’に含まれる表面付近の炭化珪素が同様にヒータによって急速に加熱され、その結果、本発明の試験片の表面温度がコーティング層の存在しない比較例の試験片の表面温度よりも上昇したものと考えられる。
【0069】
また、試験片の表面付近に粒子の小さい炭化珪素がより多く存在するため、試験片の表面付近の蓄熱効果が高まり、これによりコーティング層の存在しない比較例の試験片よりも表面温度が上昇したものと考えられる。
【0070】
かかる実験例2からしても、本発明の耐熱皿3”の方が、従来の耐熱皿よりも皿の表面温度をより高温化できることがわかった。
【0071】
尚、遠赤外線積分放射率については、比較用の試験片(89.9%)より若干低い値(84.8%)となったが、炭化珪素を含有しない陶磁器の遠赤外線積分放射率が約60%〜70%であることからすると、上記波長範囲において遠赤外線積分放射率が84%以上という高い積分放射率を有することがわかった。よって、遠赤外線の放射率においても、本発明の耐熱皿3”は従来の耐熱皿と略遜色のない効果を発揮し得ることがわかった。
【0072】
即ち、本発明の耐熱皿3”も、上記波長範囲(3.33μm〜25.42μm)において遠赤外線が多量に放射されるため、当該耐熱皿3”上に食材8を載置して電子レンジ7で加熱したときは、食材8は電子レンジ7のマイクロ波により内部から加熱されると共に、上記耐熱皿3”の炭化珪素から放射される遠赤外線によってその表面付近が加熱され、同時に、高温に加熱された耐熱皿3”の表面によって伝導加熱されるため、極めて短時間で調理が可能であり、特に、焼き魚、焼肉等の調理において、電子レンジ7により表面に焦げ目(焼色)を付けた状態での調理を極めて短時間に行うことができる。
【0073】
C.実験例3
(1)調理例
本発明の耐熱皿3”を家庭用電子レンジ7内に挿入し、上記耐熱皿1には冷えた天ぷら、魚、ステーキ等の下記「表5」の各種食材8を載置し(図8参照)、スイッチをONしてマイクロ波を食材8及び耐熱皿3”に照射し、食材8中の水分をマイクロ波で振動させ、振動エネルギーを熱エネルギーに変換して食材8を加熱した。そして、食材8の食味が良好になるまでの調理時間、食味、食材表面の焦げ目を測定した(下記「表5」参照)。
【0074】
比較例として、従来の耐熱皿について、同様の食材を同様の条件で加温し、食味良好になるまでの調理時間、食味、食材焦げ目を同様に測定した(下記「表6」参照)。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

(2)結果
「表5」、「表6」によると、本発明の耐熱皿3”は、何れの食材8においても従来の耐熱皿より、短い調理時間(食材によって異なるが約30秒〜2分の短縮)で加温調理が可能となった。
【0077】
また、本発明の耐熱皿3”は、従来の耐熱皿と同様に、冷凍食品を解凍する必要はなく、かつラップによって被覆する必要はなく、又食材を載せるに際して、耐熱皿3”に食用油を塗布する必要もないことがわかった。
【0078】
また、調理時間は同一であっても、本発明の耐熱皿3”の表面温度は従来の耐熱皿の表面温度よりも高くなるため、調理後の食材8は、従来の耐熱皿に載置して加熱した場合に比べて、より高い温度で短時間で加熱されるので、食味が極めて良好であるばかりでなく、惣菜天ぷらフライ(暖めなおし)等の調理では短時間で食材表面の水分が飛んで表面が「かりっ」とした(「クリスピー」な)極めて良好な食味に調理された。
【0079】
また、魚あじの干物、魚サバの西京漬(みそ漬)等は、電子レンジ7による加熱調理終了時には、食材8表面の水分が飛んでかりっと香ばしくなり、また食材8表面に適切な焦げ目(焼色)が付いて、いわゆる焦げ目付の焼き魚等を電子レンジ7により極めて短時間で調理することができた。
【0080】
これは、電子レンジ7内において、マイクロ波の照射により、本発明の耐熱皿3”内の炭化珪素が瞬間的に強く振動(波長4μmが84%以上発生)して高周波加熱され、当該耐熱皿3”から遠赤外線を放射するので、それによって食材8はマイクロ波によって食材内部が加熱されると共に、上記耐熱皿3”から放射される遠赤外線によって食材表面付近が短時間に効率的に加熱され、しかも、上記耐熱皿3”の表面付近に炭化珪素を多く含有するコーティング材によるコーティングが施されているので、短時間の内に従来の耐熱皿より本発明の耐熱皿3”の表面温度が17℃〜20℃程度高温化し、これによって食材8の表面が本発明の耐熱皿3”表面からの伝導加熱によって短時間の内に加熱されるので、極めて短時間の調理時間(加熱時間)において、食材に焦げ目(焼色)をつけた状態での加熱調理を行うことができる。
【0081】
即ち、食材8の内部は電子レンジ7のマイクロ波によって従来通り加熱して食材の内部を適切に加熱すると共に、食材8の表面は炭化珪素より放射される遠赤外線によって効率よく温度上昇させて食材表面付近の水分を飛ばし、さらに耐熱皿3”自体の表面温度を従来の耐熱皿より急速に高温化することによって、食材8表面に主に耐熱皿3”表面からの伝導加熱によって適切な焦げ目を付けることができるものである。
【0082】
これにより、例えば、焼き魚であれば、電子レンジで、焼き魚表面の水分を飛ばして全体を香ばしく表面はかりっと(クリスピーに)加熱できると共に、内部はしっとりとした状態で、かつ魚表面に適切な焦げ目をつけた状態に短時間(例えば数分で)調理することができる。
【0083】
また、ステーキについては、電子レンジで、ステーキ表面に適切な焦げ目をつけた状態に短時間(例えば数分で)調理することができる。
【0084】
また、惣菜天ぷら(暖めなおし)は、電子レンジで、天ぷら表面の水分を飛ばして全体をかりっと加熱すると共に、内部はしっとりとした加熱状態に短時間(例えば数分で)調理が可能である。
【0085】
D. 実験例4
コーティング材5の素材の構成比率を変化させた場合の耐熱皿3”の表面温度についての実験である。
【0086】
表面温度は出力500Wで電子レンジにて6分加熱時の耐熱皿3”の表面温度を、赤外線レーザ温度計により測定する。その結果を「表7」に示す。
【0087】
【表7】

【0088】
「表7」によると、コーティング材として、従来の耐熱皿以上の表面温度を得るには、炭化珪素は60重量%以上とすることが好ましく、また、コーティング材としての低膨張性、成形保持の観点からすると、ペタライト及び蛙目粘土の両材料を含有させることが好ましく、炭化珪素の上限は90重量%とし残りの素材をペタライト及び蛙目粘土の両材料により構成することが好ましい。
【0089】
一方、コーティング材の炭化珪素を50重量%以下とすると(「表7」の比較例6,7)、耐熱皿の表面温度は従来の耐熱皿と同等となる。
【0090】
従って、上記コーティング材を構成する上記炭化珪素は、コーティング材の総重量(100重量%)に対して60重量%〜90重量%とし、上記コーティング材の構成材の内、残りの10重量%〜40重量%を上記低膨張焼結材(ペタライト)及び上記成形保持材(蛙目粘土)の両成分により構成すること、又は、上記コーティング材5を構成する炭化珪素、低膨張焼結材(ペタライト)、成形保持材(蛙目粘土)の割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素60重量%〜90重量%、上記ペタライト5重量%〜20重量%、上記蛙目粘土5重量%〜20重量%の範囲とすることにより、従来の耐熱皿より高い表面温度を得られることがわかる。
【0091】
以上のように、本発明によると、炭化珪素を主材として皿素材を形成すると共に、コーティングによって電子レンジ用耐熱皿3”の表面付近に炭化珪素が多く存在する耐熱皿を構成したものであるから、当該耐熱皿3”に電子レンジのマイクロ波が照射されると、皿形成材としての炭化珪素が振動して発熱し皿自体が急速に加熱されると共に、上記表面付近に多く存在する炭化珪素が強く振動して発熱し皿表面付近が急速に加熱されて高温化するため、コーティングの存在しない従来の耐熱皿に比べて、耐熱皿3”の表面温度をより高温化することができる。
【0092】
従って、当該本発明の耐熱皿3”上に食材を載置して電子レンジ7で加熱すると、耐熱皿3”の表面からの伝導加熱によって食材の表面に容易に焦げ目を付けることができると共に、耐熱皿3”表面付近に多く存在する炭化珪素から放射される遠赤外線によって食材8表面を効率的に加熱することができるため、例えば焼魚等の表面に焦げ目を付けながら、焼魚表面全体を香ばしく加熱する等の加熱調理を電子レンジ7にて極めて短時間にて行うことができるものである。
【0093】
また、耐熱皿の表面付近に集中する炭化珪素の粒子は、皿形成材を構成する他の素材(ペタライト、蛙目粘土等)の粒子より小さいので、マイクロ波の照射に起因する炭化珪素の発熱作用によって、上記皿の表面付近の蓄熱効果が高まり、その結果、コーティング層の存在しない従来の耐熱皿に比べて耐熱皿の表面温度を高くすることができる。
【0094】
また、炭化珪素を含有する皿素材の表面に、炭化珪素を主材とするコーティング材5を塗布する構成としたので、皿素材としての炭化珪素を所定量に抑制し、皿素材として低膨張焼結材及び成形保持材を含有することにより、皿素材の成形性、耐熱衝撃性を高めつつ、コーティング材5における炭化珪素の重量割合を高めることができるので、皿の成形性、耐熱衝撃性を維持しつつ、表面温度のより高い電子レンジ用耐熱皿3”を得ることができる。
【0095】
尚、コーティング材の構成材については、低膨張焼結材としてペタライトに代えて炭化珪素を使用することもできる。この場合は、発熱材として炭化珪素60重量%〜90重量%、低膨張焼結材としての炭化珪素5重量%〜20重量%、成形保持材として蛙目粘土5重量%〜20重量%(例えば、発熱材としての炭化珪素73重量%、低膨張焼結材としての炭化珪素17重量%、成形保持材として蛙目粘土10重量%)とすることもできる。
【0096】
また、皿形成材については、焼結材としての黒泥又は粘土以外の材料としてはペタライト又は炭化珪素を使用することもでき、低膨張焼結材としてのペタライト以外の材料としては炭化珪素を使用することもでき、成形保持材としての蛙目粘土以外の材料としては黒泥を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の電子レンジ用耐熱皿は、電子レンジによって短時間に、食材に焦げ目を付けることが可能であると共に、遠赤外線により食材表面を効率的に加熱しつつ、マイクロ波によって食材内部を加熱し得るので、例えば、焼き魚、ステーキ等の加熱調理を従来の耐熱皿よりも短時間で適切に行うことができると共に、惣菜天ぷら等をかりっと調理することができ、各種調理に幅広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0098】
3 皿素材
3’ 素焼きの皿
3” 耐熱皿
5 コーティング材
5’ コーティング層
7 電子レンジ
8 食材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素を主材とし、焼結材、低膨張焼結材及び成形保持材に水を添加して混練した皿形成材を皿状に成形して皿素材を形成し、
炭化珪素を主材とし、低膨張焼結材、成形保持材に水を添加して混練したコーティング材を上記皿素材の表面に塗布することにより、当該コーティング材によって上記皿素材の表面にコーティング層を形成し、
上記コーティング層を形成した上記皿素材を焼成して素焼きの皿を形成し、
上記素焼きの皿の表面に釉薬をコーティングして再度焼成することにより形成したものであることを特徴とする電子レンジ用耐熱皿。
【請求項2】
上記コーティング材を構成する上記炭化珪素は、コーティング材の総重量(100重量%)に対して60重量%〜90重量%とし、
上記コーティング材の構成材の内、残りの10重量%〜40重量%を上記低膨張焼結材及び上記成形保持材の両成分により構成したものであることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ用耐熱皿。
【請求項3】
上記コーティング材を構成する上記炭化珪素、上記低膨張焼結材、上記成形保持材の割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素60重量%〜90重量%、上記低膨張焼結材5重量%〜20重量%、上記成形保持材5重量%〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ用耐熱皿。
【請求項4】
上記コーティング材を構成する上記炭化珪素、上記低膨張焼結材、上記成形保持材の割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素約73重量%、上記低膨張焼結材約17重量%、上記成形保持材約10重量%である請求項1記載の電子レンジ用耐熱皿。
【請求項5】
上記皿素材を構成する上記炭化珪素、上記焼結材、上記低膨張焼結材、及び上記成形保持材の構成割合は、それらの総重量(100重量%)に対して、上記炭化珪素約30重量%、焼結材約40重量%、上記低膨張焼結材約15重量%、成形保持材約15重量%よりなる請求項1〜4の何れかに記載の電子レンジ用耐熱皿。
【請求項6】
上記皿形成材として、上記焼結材は黒泥又は粘土であり、上記低膨張焼結材はペタライトであり、上記成形保持材は蛙目粘土であり、
上記コーティング材の構成材として、上記低膨張焼結材はペタライトであり、上記成形保持材は蛙目粘土である請求項1〜5の何れかに記載の電子レンジ用耐熱皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94273(P2013−94273A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237710(P2011−237710)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(502165207)
【出願人】(502154991)有限会社小森谷嘉右衛門窯 (1)
【Fターム(参考)】