説明

電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料及び多結晶体材料とその製造方法

【課題】応用上必要な大きさと、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、誘電・強誘電特性、及び、光学特性を有し、広範な温度領域で使用できる単結晶体材を出発組成のまま、生産性よく製造し、提供する。
【解決手段】下記組成式(1)を満たし、結晶構造が正方晶で、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
(Ba1-xCax)TiO3(ただし、0.025<x(mole)≦0.335)・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、誘電・強誘電特性、及び、光学特性を有するチタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料及び多結晶体材料と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト型構造(ABO3型構造)のチタン酸バリウム(BaTiO3)は、誘電率εrが非常に高い(1000以上)ので、従来から、コンデンサー材料として広く利用されている。また、チタン酸バリウムは、透明性を備え、かつ、優れた電気光学特性を併せ持つので、電子・光学用材料として重要である。
【0003】
チタン酸バリウムは、上記諸特性の他、120℃以下で、高い自発分極特性(室温で26μC/cm2)を有する(非特許文献1、参照)ので、非揮発性メモリ基盤材料としても、広範に利用され始めている。また、チタン酸バリウムは、巨大な歪量(自発歪=1.1%、報告値で最大1%位)を有する(非特許文献2、参照)ので、チタン酸鉛系材料に替わる環境に優しい圧電材料として期待されている。
【0004】
さらに、チタン酸バリウムは、光学特性が極めて優れている(例えば、r42=r51=1640pm/V、非特許文献3、参照)ので、非線形光学材料としても利用できる。しかし、チタン酸バリウムは、5℃付近で、正方晶から斜方晶への構造相転移があり、特性が大きく変化するので、優れた上記特性を有するのにも拘わらず、工業的な規模での実用化又は応用が大きく制限されている。
【0005】
チタン酸バリウムを光学用として用いる場合、単結晶体材料が必要であるが、チタン酸バリウムには、融点以下の1460℃で、六方晶から立方晶への構造変化があるので、チョクラルスキー法のような、融体を直接冷却する方法で、大きなチタン酸バリウムの単結晶体を製造することは困難である。
【0006】
通常、チタン酸バリウムの単結晶体を製造する場合、TSSG(Top Seeded Solution Growth)法を用い、1460℃以下で、TiO2過剰な原料融液から、種結晶に、ペロブスカイト型構造の単結晶を晶出させる。しかし、この方法には、以下の二つの欠点がある。
【0007】
一つは、TiO2が過剰であるため、単結晶中に、TiO2が取り込まれて残留する可能性があるということと、もう一つは、結晶成長速度が非常に遅く(約0.2mm/hである。)、結晶成長が効率的でないことである(非特許文献3、参照)。
【0008】
その後、TSSG法の改良法が提案され(特許文献1、2、参照)、さらに、TSSG法に替わるTSFZ(Traveling Solvent Floating Zone)法が提案された(特許文献2、参照)。しかし、光学用として充分な大きさと特性を備える単結晶体は必ずしも得られていない。
【0009】
近年、バリウムの一部をカルシウムで置換したチタン酸バリウム−カルシウム“(1−x)BaTiO3−xCaTiO3(x:mole%)”(以下、「(Ba1-xCax)TiO3」と表記することがある。)が、強誘電性を有することから、チタン酸バリウムに替わるセラミックスコンデンサー材料として注目されている(特許文献4、参照)。
【0010】
チタン酸バリウム−カルシウムの固溶系の相図が提案されている(非特許文献4、参照)が、この相図に従い、普通の固相反応方法により、チタン酸バリウム−カルシウムを作製しようとしても、x≒25%までの単相固溶体しか得られない。
【0011】
x=24%までの固溶系セラミックスの誘電特性の温度依存性(−190〜200℃)が報告されている(非特許文献5、参照)が、この報告によれば、Ca量の増加に伴い、チタン酸バリウムの5℃及び−90℃の二つ相転移温度は低温側に移動する。
【0012】
他に、上記固溶系セラミックスの圧電特性を検討した結果が、幾つか報告されている(非特許文献6〜9、参照)が、圧電特性、電場誘起歪特性、誘電・強誘電特性、光学特性に関する研究は、これまで充分になされていない。
【0013】
前記相図(非特許文献4、参照)によれば、出発組成のままの単結晶体を得ることは、原理的に困難であるが、実際に結晶育成を試みた結果が、いくつか報告されている(非特許文献10〜12、参照)。
【0014】
非特許文献10には、チョクラルスキー法により、出発組成(x=23%)のままの単結晶体を育成し、組成を確認した結果が報告され、そして、−120℃までの領域において、誘電特性及び光誘起屈折率効果を確認した結果が報告されている(非特許文献13、参照)。
【0015】
非特許文献11及び12には、KFをフラックスとして用い、融点よりかなり低い温度で結晶作製を行った結果が報告されているが、出発組成のままの単結晶体は得られていない。
【0016】
このように、チタン酸バリウム−カルシウムは、近年、セラミックスコンデンサー材料及び光学用材料として注目されているが、応用上必要な大きさと特性を備える単結晶体材料又は固溶体材料は得られていない。
【0017】
【特許文献1】特開平5−301800号公報
【特許文献2】特開平9−059096号公報
【特許文献3】特開2000−335999号公報
【特許文献4】特開2006−089368号公報
【非特許文献1】H. H. Weider, Phys. Rev. 99, 1161(1955).
【非特許文献2】Seung-Eek Park et al, J. Appl. Phys. 86, 2746(1999).
【非特許文献3】P.G. Schunemann et al, J. Opt. Soc.Am. B5, 1702(1988).
【非特許文献4】R. C. DeVRIES, R. Roy, J. Am. Ceram. Soc.38 ,142(1955).
【非特許文献5】Mitsui, T., Westphal, W.B.: Phys. Rev. 124 (1961) 1354.
【非特許文献6】T. Ikeda, J. Phys. Soc. Jpn. 13, 355(1958).
【非特許文献7】Berlincourt, D., Krueger, H.H.A.: Phys. Rev. 105 (1957) 56.
【非特許文献8】Xusheng Wang et al., Appl. Phys. Lett. 86, 022905 (2005)
【非特許文献9】Xusheng Wang et al., Jpn. J. Appl. Phys. 45. No.2A, 813 (2006)
【非特許文献10】Ch. Kuper, R. Pankrath, H. Hesse, Appl. Phys. A 65, 301 (1997).
【非特許文献11】B. E. Watts, H. Dabkowska and B. M. Wanklyn, J. Cryst. Growth 94 (1989) 125.
【非特許文献12】S. Balakumar, R. Ilangovan, S. Subramanian and P. Ramasamy, J. Mater. Sci. Lett. 12 (1993) 20.
【非特許文献13】S. Bernhardt et al. J. Appl. Phys., 92, 6139(2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、チタン酸バリウム−カルシウムに関し、応用上必要な大きさと特性を備える単結晶体材料又は多結晶体材料が得られていない現状に鑑み、従来技術の課題を解決し、応用上必要な大きさと、優れた圧電特性、電場誘起歪特性(以下、「電歪特性」ということがある。)、誘電・強誘電特性、及び、光学特性を有し、広範な温度領域で使用できる単結晶体材料を出発組成のまま、生産性よく製造し、提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、優れた圧電特性、電歪特性、誘電・強誘電特性、及び、光学特性を有し、広範な温度領域で使用できる多結晶体材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、ペロブスカイト型構造(ABO3型構造)のBaTiO3におけるAサイト原子(Ba)を、イオン半径の小さいCa原子で置換した「(1−x)BaTiO3−xCaTiO3(x:mole)」((Ba1-xCax)TiO3)の固溶系に注目した。
【0021】
そして、普通の固相反応方法により、x≒25%までの範囲で、単相固溶体が得られていること、及び、x=24%までの誘電特性の温度依存性(−190〜200℃)が報告されている(非特許文献5、参照)ことを総合的に考察し、広範なxの範囲で、多結晶体又は単結晶体を作製すれば、本発明の目的を達成できる可能性が高いと推定した。
【0022】
そこで、本発明者は、(Ba1-xCax)TiO3について、各組成の結晶成長条件を詳細に検討し、併せて、組成と構造、物性の関係について考察し、圧電、電歪、誘電・強誘電、及び、光学材料としての可能性について検討した。
【0023】
その結果、0.025(2.5mole%)<x≦0.335(33.5mole%)の組成範囲で、多結晶体より優れた特性を有し、結晶構造が正方晶の単結晶体を、生産性よく容易に成長させることができることを見いだした。
【0024】
この単結晶体は、BaTiO3結晶と同等又はそれ以上の優れた誘電特性を有し、しかも、室温付近で、強誘電性を呈する正方晶構造が安定であるので、広範な温度領域で、BaTiO3結晶に生じるひび割れ等を生ずることなく利用可能であることが判明した。この点で、本発明は、BaTiO3結晶の抱える本質的な課題を解決することができるものである。
【0025】
また、本発明者が作製したチタン酸バリウム−カルシウムの単結晶体は、自発分極発生方向[001]に電場を印加すると、鉛系圧電材料を凌駕する巨大な電場誘起結晶歪(電歪特性)を発生することを見いだした。
【0026】
さらに、本発明者は、0.335(33.5%)<x≦0.6(60%)の組成範囲で、高密度で、優れた圧電誘電特性を有する多結晶体材料を作製するができることも見いだした。
【0027】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0028】
(1) 下記組成式(1)を満たし、結晶構造が正方晶で、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
(Ba1-xCax)TiO3 ・・・(1)
ただし、0.025<x(mole)≦0.335
【0029】
(2) 下記組成式(2)を満たし、結晶構造が正方晶で、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
(Ba1-x-yCaxy)(Ti1-zz)O3 ・・・(2)
ただし、0.025<x(mole)≦0.335
0<y(mole)≦0.15
0<z(mole)≦0.15
A:La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Bi、及び、Yのい ずれか1種又は2種以上
B:Fe,Mn,Co,Cr,Ni,Cu,Zn,Al,Nb、及び、 Taのいずれか1種又は2種以上
【0030】
(3) 前記x(mole)が、0.04≦x(mole)≦0.3であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
【0031】
(4) 前記電場誘起歪特性において、最大歪量が0.8〜1.1%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
【0032】
(5) 前記誘電特性において、120℃(相転移温度)以下の温度領域にて、誘電率がほぼ一定であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
【0033】
(6) 下記組成式(3)を満たし、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
(Ba1-xCax)TiO3 ・・・(3)
ただし、0.335<x(mole)≦0.6
【0034】
(7) 下記組成式(4)を満たし、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
(Ba1-x-yCaxy)(Ti1-zz)O3 ・・・(4)
ただし、0.335<x(mole)≦0.6
0<y(mole)≦0.15
0<z(mole)≦0.15
A:La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Bi、及び、Yのい ずれか1種又は2種以上
B:Fe,Mn,Co,Cr,Ni,Cu,Zn,Al,Nb、及び、 Taのいずれか1種又は2種以上
【0035】
(8) 前記x(mole)が、0.335<x(mole)≦0.5であることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
【0036】
(9) 前記電場誘起歪特性において、最大歪量が0.8〜1.1%であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
【0037】
(10) 前記誘電特性において、120℃(相転移温度)以下の温度領域にて、誘電率がほぼ一定であることを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
【0038】
(11) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料を、フローティングゾーン法を用いて製造する方法において、
(a)Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物、及び、必要に応じ、他の置換元素の酸化物又は炭酸化物を、所要の組成比となるように秤量して混合し、ロッドに成型した後、焼結し、
(b)上記焼結ロッドを、低酸素分圧雰囲気中で加熱して溶融帯を形成し、
(c)上記溶融帯を移動させ、速い結晶成長速度で、単結晶体を成長させる、
ことを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【0039】
(12) 前記(c)の工程の後、単結晶体を、酸素雰囲気中で熱処理することを特徴とする前記(11)に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【0040】
(13) 前記Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物が、BaCO3、CaCO3、及び、TiO2であることを特徴とする前記(11)又は(12)に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【0041】
(14)前記低酸素分圧雰囲気が、Ar又はAr+O2雰囲気であることを特徴とする前記(11)〜(13)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【0042】
(15) 前記結晶成長速度が5〜10mm/hであることを特徴とする前記(11)〜(14)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【0043】
(16)前記単結晶体の成長において、移動する溶融帯中のCaTiO3が結晶成長に寄与し、前記所要の組成比とほぼ同じ組成比の単結晶体が成長することを特徴とする前記(11)〜(15)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【0044】
(17) 前記(6)〜(10)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料を、フローティングゾーン法を用いて製造する方法において、
(a)Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物、及び、必要に応じ、他の置換元素の酸化物又は炭酸化物を、所要の組成比となるように秤量して混合し、ロッドに成型した後、焼結し、
(b)上記焼結ロッドを、低酸素分圧雰囲気中で加熱して溶融帯を形成し、
(c)上記溶融帯を移動させ、速い結晶成長速度で、多結晶体を成長させる、
ことを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【0045】
(18) 前記(c)の工程の後、多結晶体を、酸素雰囲気中で熱処理することを特徴とする前記(17)に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【0046】
(19) 前記Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物が、BaCO3、CaCO3、及び、TiO2であることを特徴とする前記(17)又は(18)に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【0047】
(20)前記低酸素分圧雰囲気が、Ar又はAr+O2雰囲気であることを特徴とする前記(17)〜(19)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【0048】
(21) 前記結晶成長速度が5〜10mm/hであることを特徴とする前記(17)〜(19)のいずれかに記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、チタン酸バリウムと同等又はそれ以上の優れた圧電特性、電場誘起歪特性、誘電・強誘電特性、光学特性、及び、非線形光学特性を有し、かつ、チタン酸バリウムより広い温度範囲で、ひび割れ等を生ずることなく安定して使用できる電子・光学用材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0051】
出発原料として、純度99.9%のBaCO3、CaCO3、及び、TiO2を用い、組成式(Ba1-xCax)TiO3において、x・100(mole%)=0.5,1,2,3,4,5,6,7,10,12,15,16.5,18,21.5,22,23,25,30,32,33,35,40,50,60,及び、70の結晶体を、フローティングゾーン(floating zone)法で作製した。
【0052】
なお、結晶体の作製方法は、フローティングゾーン法に限定されないが、フラックス(flux)法では、出発組成比のままの結晶体を作製することはできない。
【0053】
作製方法の一例を簡単に説明する。
【0054】
純度99.9%のBaCO3、CaCO3、及び、TiO2を、上記組成比となるように秤量し、これを乳鉢に入れ、混合する。混合後、乾燥し、直径6〜8mmのロッドに成型し、図1に示す加熱プロセスに従って、直径4〜6mm、長さ約8cmの焼結ロッドを作製する。
【0055】
上記焼結ロッドを、Ar、又は、Ar+O2(Ar流量の1/20)雰囲気中、赤外線加熱結晶製造装置で加熱し、溶融帯を形成し、移動させ、結晶を成長させた。
【0056】
種結晶ロッドとして、通常、焼結体の一部、又は、作製した結晶の一部を利用するが、作製した結晶の一部を利用すると、結晶化が容易であるので、作製した結晶の一部を利用するのが好ましい。
【0057】
焼結ロッドと種結晶ロッドを、それぞれ反対方向に、回転数12.5〜25rpmで回転させ、チタン酸バリウムの結晶成長速度0.2mm/hより遥かに速い5〜10mm/hの結晶成長速度で、チタン酸バリウム−カルシウムの結晶を成長させる。得られた結晶を、酸素雰囲気中、1000℃で6時間以上、熱処理する。
【0058】
熱処理後の結晶について、結晶X線回折、粉末X線回折、組成分析、密度測定、及び、特性測定を行った。その結果を、図2〜図14に示す。
【0059】
図2に、温度(縦軸)と組成x(横軸)を変化させた場合における(Ba1-xCax)TiO3の結晶構造の変化を示す。BaTiO3(x=0%)の結晶構造は、温度が下がるにつれて、立方晶、正方晶、斜方晶、菱面体晶と変化する。Ca量xが増加すると、強誘電性を呈する正方晶の存在する範囲が広がる。x=23〜33.5mole%の組成で、立方晶、正方晶を示すだけである。また、xが33.5mole%を超えると、温度の低下に伴い、立方晶、正方晶+斜方晶と変化することが解る。
【0060】
図2から、x=2.5mole%以下の組成で、六方晶構造の単結晶体が安定的に得られることが解る。また、x=2.5〜33.5mole%の組成で、正方晶構造の単結晶体が安定的に得られることが解る。この点が、本発明者が見いだし、本発明の基礎となる知見である。なお、2.5<x≦33.5mole%の単結晶体は、透明で良質な結晶体である。
【0061】
したがって、本発明の(Ba1-xCax)TiO3の単結晶体材料においては、0.025<x(mole)≦0.335とする。単結晶体材料におけるx(mole)は、結晶の透明性や、結晶構造と特性の安定性の点で、0.04≦x(mole)≦0.3が好ましい。
【0062】
また、本発明の(Ba1-xCax)TiO3の多結晶体材料においては、0.335<x(mole)≦0.6とする。多結晶体材料におけるx(mole)は、特性の安定性の点で、0.335<x(mole)≦0.5が好ましい。
【0063】
ここで、図3に、得られた単結晶体の一例(直径:約4mm、長さ:約5cm)を示す。また、図4に、2.5<x≦33.5%の単結晶体につき、結晶X線回折で確認した結晶性の一例を示す。図4から、2.5<x≦33.5%の単結晶体は、正方晶の対称性を持つことが解る。
【0064】
x=33.5〜70.0%の組成において、単結晶体を作製することはできなかったが、上記組成の多結晶体は、単結晶体並みの密度を有し、ある程度配向した多結晶体であることが確認された。図5に、得られた多結晶体の一例(直径:約4mm、長さ:約5cm)を示す。
【0065】
図6に、x≦70%の組成の結晶体を粉末にし、粉末X線回折で構造解析した結果を示す。図6から、x=35%を超える組成では、二相が共存し、35%以下の組成では、単相であることが解る。
【0066】
次に、2.5<x≦33.5%の組成の単結晶体の格子定数を精密に測定した。結果を、図7に示す。なお、測定する際、標準試料Siを粉末試料に混合し、Siの回折ピークを利用し、測定値を補正した。格子定数の誤差は、小数点4桁以下である。
【0067】
格子定数から計算した理論密度と実測密度の比較を、図8に示す。両密度は、高い精度で完全に一致している。このことは、本発明の単結晶体が良質な結晶であることを示している。
【0068】
格子定数から求めた可能な格子変位量を、図9に示す。この結果によれば、2.5<x≦33.5%の組成の単結晶体においては、電場の印加で、チタン酸バリウムと同様に、0.8〜1.0%の巨大な歪量が生じることが解る。
【0069】
図10(a)及び(b)に、x=3%と7%の単結晶体において、(001)面を切り出し、両面に電極を取り付け、電場を印加し、レーザ干渉計で測定した変位量を示す。予測した通り、x=7%の単結晶体において、10kVの電場で、0.74%の歪量が観測された。この歪量は、圧電常数に換算すると7400pm/Vになる。この値は、通常使用されているPb(Ti、Zr)O3(PZT)の圧電常数100〜600pm/Vより遥かに大きい値である。
【0070】
x=3%又は7%の単結晶体に、立方晶から正方晶への相転移温度より高い温度129℃で、1kV/cmの電場を印加して、15分程度保持し、その後、室温まで冷却した。冷却途中、90℃から室温まで、電場を、徐々に、10kV/cmまで印加し、室温まで、該電場を保持した。さらに、室温で、10kV/cmの電場を、約1時間、印加し結晶の分極方向を揃えた。
【0071】
このプロセスで分極方向を揃えた単結晶体につき、d33メータで、d33圧電常数を測定した。その結果、最大310pC/Nの値を観測した。
【0072】
図6に示すX線回折パターンによれば、x=35%以上の組成で、二相が共存するが、正方晶の回折強度が相当強く、格子定数が、正方晶の格子定数とほぼ同じであることから、x=35%以上の多結晶体は、良好な圧電特性を呈する可能性が十分にあると予測される。
【0073】
そこで、x=35%、40%、50%の多結晶体について、歪量及びd33圧電常数を測定した。その結果、x=35%の多結晶体においては、50kV/cmの電場で、0.5%の極めて大きな歪量が実現した。図11(a)〜(c)に、歪と電場の関係を示し、表1に、d33メータで測定したd33圧電常数を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
以上の結果から、Ba1-xCaxTiO3の結晶体は優れた圧電特性を示し、環境負荷の大きな元素を使用しない非鉛系圧電材料として利用できることが解る。
【0076】
図9によれば、2.5<x≦33.5%の単結晶体の格子変位量は、約1%である。強誘電体の自発分極は、格子の変位量に比例するので、上記組成の単結晶体が、チタン酸バリウムと同等な自発分極を有することが予測される。そこで、このことを、x=5%,6%,10%,15%,18%,22%,23%,25%,30%,33%,35%,40%,50%,60%,及び、70%の単結晶体及び多結晶体を用いて確認した。
【0077】
試料の単結晶体及び多結晶体は、次のように作製した。
【0078】
上記組成比の単結晶又は多結晶を粉砕し、乳鉢に入れ、エタノール及び5%のPVA(原料0.5g一滴)を加え、1時間以上、均一に混合した。混合物を120℃で乾燥し、その後、70MPaの一軸プレスで成型し、さらに、200MPaの静水圧で成型した。
【0079】
得られた成型体を、500℃で熱処理し、PVAを完全に分解し、さらに、1500℃で2時間以上、焼結した。得られた結晶体を研磨し、両面にAu電極を焼き付け、測定試料とした。上記試料に、2Hz、40kV/cmの交流電場を印加し、D−Eループを測定した。その結果を、図12(a)及び(b)に示す。
【0080】
D−Eループから求めた飽和分極Ps及び残留分極Prと組成の関係を、図13に示す。図13から、2.5<x≦33.5%の単結晶体においては、飽和分極Psと残留分極Prが、ほぼ同じ値であることが解る。
【0081】
単結晶体及び多結晶体の誘電特性を、127℃から極低温の−271℃までの広範な温度範囲において調査した。その結果を図14に示す。図14から、23%<x≦40%の単結晶体又は多結晶体は、120℃(相転移温度)以下の温度領域において、誘電率がほぼ一定値であることが解る。
【0082】
本発明の単結晶体は、図3に示すように、透明であり、良好な光学材料になり得ることが期待される。また、非線形光学定数も、チタン酸バリウムと同等であることが期待されるので、良好な非線形光学材料になり得ることが期待される。
【0083】
以上、(Ba1-xCax)TiO3の結晶体について説明したが、下記組成式を満たす単結晶体及び多結晶体(固溶体)についても、同様の特性が得られることを確認した。
(Ba1-x-yCaxy)(Ti1-zz)O3
A:La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Bi、及び、Yのいずれか1種 又は2種以上
B:Fe,Mn,Co,Cr,Ni,Cu,Zn,Al,Nb、及び、Taのいず れか1種又は2種以上
【0084】
xは、単結晶体の場合、0.025<x(mole)≦0.335で、多結晶体(固溶体)の場合、0.335<x(mole)≦0.6である。
【0085】
置換元素A及びBは、上記元素群の中から、本発明の単結晶体及び多結晶体の諸特性を損なわない範囲で、1種又は2種以上を選択する。
【0086】
y、zは、単結晶体、多結晶体のいずれの場合においても、0.15moleを超えると、結晶構造が不安定になるので、0<y(mole)≦0.15、0<z(mole)≦0.15とする。
【0087】
次に、本発明の単結晶体及び多結晶体の製造方法について説明する。本発明の製造方法の一例を前述したが、該製造方法は、基本的には、次の工程からなる。
【0088】
(a)Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物、及び、必要に応じ、他の置換元素の酸化物又は炭酸化物を、所要の組成比となるように秤量して混合し、ロッドに成型した後、焼結する。
(b)上記焼結ロッドを、低酸素分圧雰囲気中で加熱して溶融帯を形成する。
(c)上記溶融帯を移動させ、速い結晶成長速度で、単結晶体又は多結晶体を成長させる。
【0089】
本発明の製造方法においては、前記(c)の工程の後、単結晶体又は多結晶体を、酸素雰囲気中で熱処理してもよい。この熱処理により、単結晶体又は多結晶体の諸特性を向上させることができる。
【0090】
Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物としては、高純度のBaCO3、CaCO3、及び、TiO2を用いるのが好ましい。必要に応じ添加する置換元素は、酸化物又は炭酸化物の形態で添加するのが好ましい。
【0091】
Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物、及び、必要に応じ、他の置換元素の酸化物又は炭酸化物を秤量する際には、0.1mg以上の精度で秤量するのが好ましい。秤量後、原料全体の重量が約8gとなるように乳鉢に入れ、エタノール及び5%のPVA(原料0.5g一滴)を加え、1時間以上かけ、均一に混合するのが好ましい。
【0092】
混合物を、例えば、120℃で乾燥し、その後、300MPa程度の静水圧で、直径6〜8mmのロッドに成型し、図1に示す加熱プロセスに従って焼成する。この焼成で、直径4〜6mm、長さ約8cmの焼結ロッドを作製する(図3及び5、参照)。なお、焼結時、ロッドの汚染を防ぐため、該ロッドをPtホイルで包むのが好ましい。
【0093】
上記焼結ロッドを、低酸素分圧雰囲気中、例えば、Ar又はAr+O2(Ar流量の1/20)雰囲気中で、加熱源が1.5kWのハロゲンランプの赤外線加熱結晶製造装置で加熱して溶融帯を形成し、結晶を成長させる。種結晶ロッドとして、通常、焼結体の一部、又は、作製した結晶の一部を利用するが、作製した結晶の一部を利用すると、結晶化が容易である。
【0094】
焼結ロッドと種結晶ロッドを、それぞれ反対方向に、12.5〜25rpmの回転数で回転させる。結晶成長速度は、チタン酸バリウムの結晶成長速度0.2mm/hを超える速度とするが、遥かに速い5〜10mm/hが、良質の結晶を得る点、及び、結晶作製の効率の点で好ましい。このような速い結晶成長速度で、良質の単結晶を作製できることは驚異的である。この理由については、後述する。
【0095】
得られた結晶体に、酸素雰囲気中で熱処理を施すのが好ましい。この熱処理により、結晶体の諸特性を向上させることができる。熱処理は、1000℃で6時間以上行うことが好ましい。
【0096】
本発明者は、成長速度5〜10mm/hで、良質の単結晶体が得られる理由について、次のように考えている。
【0097】
図15に、(Ba1-xCax)TiO3の状態図の一部を示す。この状態図の特徴は、固液共存領域が狭いことである。この固液共存領域が狭いことが、単結晶体の成長と大きく関係している。
【0098】
図16に、図15に示す状態図において、Case1(組成x1)の場合の結晶成長機構を模式的に示す。組成x1の原料ロッドを温度T1で溶融し、溶融帯を移動させると、液相中にCaTiO3が濃縮されて、溶融帯が安定せず、原料ロッドが分離することになる。
【0099】
これを防ぐために、通常は、図16に示すように、組成bのロッドを、組成x1の原料ロッドの間に挟み、組成x1の溶融帯を移動させ、組成x1の結晶を析出させる(Traveling Solvent Floating Zone法)が、図15に示すように、固液共存領域が狭い場合、図16に示すように、組成x1の原料ロッドをT1で溶融した後、T2に下げると、初晶組成aのCaTiO3不足分(組成x1に比べての不足分)が、液相中の過剰のCaTiO3で補われることになる。
【0100】
したがって、溶融帯を移動しつつ、この状態を保てば、原料ロッドの組成x1とほぼ同じ組成x1の単結晶体を永続的に成長させることができる。この方法は、Pseudo Traveling Solvent Floating Zone法として、本発明者が初めて提案した結晶成長方法である。
【0101】
図15に示す状態図において、Case2(組成x2)の場合の結晶成長機構も、図17に示すように、Case1(組成x1)の場合と同様である。
【0102】
以上、説明したように、(Ba1-xCax)TiO3の単結晶体をフローティングゾーン法で成長させる場合、図15に示すように、固液共存領域が狭いことから、所要組成xiの原料ロッドを、T1iで溶融した後、温度をT2iに下げることが重要なことである。
【0103】
本発明の製造方法においては、チタン酸バリウムの成長速度0.2mm/hに比べ、遥かに速い結晶成長速度5〜10mm/hを採用したことにより、上記の「溶融温度T1i→T2i」の温度低下が実現していると推測される。
【実施例】
【0104】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0105】
(実施例)
純度99.9%のBaCO3、CaCO3、及び、TiO2を、所要の組成比(x・100(mole%)=0.5,1,2,3,4,5,6,7,10,12,15,16.5,18,21.5,22,23,25,30,32,33,35,40,50,60,及び、70)となるように、0.1mg以上の精度で秤量し、これを乳鉢に入れ、エタノール及び5%のPVA(原料0.5g一滴)を加え、1時間以上、均一に混合した。なお、原料全体の重量は、約8gとした。
【0106】
混合物を120℃で乾燥した後、300MPaの静水圧で、直径6〜8mmのロッドに成型し、図1に示す加熱プロセスに従って焼成し、直径4〜6mm、長さ約8cmの焼結ロッドを作製した。なお、焼結時、ロッドの汚染を防ぐため、成型ロッドをPtホイルで包んだ。
【0107】
上記焼結ロッドを、Ar又はAr+O2(Ar流量の1/20)雰囲気中で、加熱源が1.5kWのハロゲンランプの赤外線加熱結晶製造装置で加熱し、溶融帯を形成し、結晶を成長させた。種結晶ロッドとして、作製した結晶の一部を利用した。
【0108】
焼結ロッドと種結晶ロッドを、それぞれ反対方向に、12.5〜25rpmの回転数で回転させた。結晶成長速度は、5〜10mm/hとした。得られた結晶体については、酸素雰囲気中、1000℃で6時間以上、熱処理した。
【0109】
得られた単結晶体試料及び多結晶体試料について、圧電特性、電場誘起歪特性、誘電・強誘電特性、光学特性、及び、非線形光学特性を測定した。結果は、図2〜図14に示すとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
前述したように、本発明によれば、チタン酸バリウムと同等又はそれ以上の優れた圧電特性、電場誘起歪特性、誘電・強誘電特性、光学特性、及び、非線形光学特性を有し、かつ、チタン酸バリウムより広い温度範囲で、ひび割れ等を生ずることなく安定して使用できる電子・光学用材料を提供することができる。したがって、本発明は、電子・光学用の基礎材料として利用可能性が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】加熱プロセスの一例を示す図である。
【図2】温度、組成、及び結晶構造の関係を示す図である。
【図3】単結晶体の一例(直径:約4mm、長さ:約5cm)を示す図である。
【図4】単結晶体の結晶性の一例を示す図である。
【図5】多結晶体の一例(直径:約4mm、長さ:約5cm)を示す図である。
【図6】x≦70mole%の結晶体の粉末X線回折(結晶構造)を示す図である。
【図7】2.5<x≦33.5mole%の単結晶体の格子定数を示す図である。
【図8】格子定数から計算した理論密度と実測密度の比較を示す図である。
【図9】格子定数から求めた可能な格子変位量を示す図である。
【図10】x=3mole%と7mole%の単結晶体の(001)面における変位量を示す図である。(a)は、x=3mole%の単結晶体の変位量を示し、(b)は、x=7mole%の単結晶体の変位量を示す。
【図11】多結晶体における歪と電場の関係を示す図である。(a)は、x=35mole%の多結晶体における関係を示し、(b)は、x=40mole%の多結晶体における関係を示し、(c)は、x=50mole%の多結晶体における関係を示す。
【図12】2Hz、40kV/cmの交流電場を印加した時のD−Eループを示す図である。(a)は、x=0〜33mole%の結晶体のD−Eループをを示し、(b)は、x=35〜70mole%の結晶体のD−Eループを示す。
【図13】飽和分極Ps及び残留分極Prと組成の関係を示す図である。
【図14】誘電特性の温度依存性を示す図である。(a)は、x=3〜30mole%の単結晶体の温度依存性を示し、(b)は、x=40〜70mole%の多結晶体の温度依存性を示す。
【図15】(Ba1-xCax)TiO3の状態図の一部を示す図である。
【図16】結晶成長機構を模式的に示す図である。(a)は、組成x1のロッドをT1で溶融した後の温度推移を模式的に示し、(b)は、図15に示すCase1(組成x1)の場合の結晶成長機構を模式的に示す。
【図17】図15に示すCase2(組成x2)の場合の結晶成長における温度推移を模式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)を満たし、結晶構造が正方晶で、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
(Ba1-xCax)TiO3 ・・・(1)
ただし、0.025<x(mole)≦0.335
【請求項2】
下記組成式(2)を満たし、結晶構造が正方晶で、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
(Ba1-x-yCaxy)(Ti1-zz)O3 ・・・(2)
ただし、0.025<x(mole)≦0.335
0<y(mole)≦0.15
0<z(mole)≦0.15
A:La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Bi、及び、Yのい ずれか1種又は2種以上
B:Fe,Mn,Co,Cr,Ni,Cu,Zn,Al,Nb、及び、 Taのいずれか1種又は2種以上
【請求項3】
前記x(mole)が、0.04≦x(mole)≦0.3であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
【請求項4】
前記電場誘起歪特性において、最大歪量が0.8〜1.1%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
【請求項5】
前記誘電特性において、120℃(相転移温度)以下の温度領域にて、誘電率がほぼ一定であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料。
【請求項6】
下記組成式(3)を満たし、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
(Ba1-xCax)TiO3 ・・・(3)
ただし、0.335<x(mole)≦0.6
【請求項7】
下記組成式(4)を満たし、優れた圧電特性、電場誘起歪特性、及び、誘電特性を有することを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
(Ba1-x-yCaxy)(Ti1-zz)O3 ・・・(4)
ただし、0.335<x(mole)≦0.6
0<y(mole)≦0.15
0<z(mole)≦0.15
A:La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Bi、及び、Yのい ずれか1種又は2種以上
B:Fe,Mn,Co,Cr,Ni,Cu,Zn,Al,Nb、及び、 Taのいずれか1種又は2種以上
【請求項8】
前記x(mole)が、0.335<x(mole)≦0.5であることを特徴とする請求項6又は7に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
【請求項9】
前記電場誘起歪特性において、最大歪量が0.8〜1.1%であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
【請求項10】
前記誘電特性において、120℃(相転移温度)以下の温度領域にて、誘電率がほぼ一定であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料を、フローティングゾーン法を用いて製造する方法において、
(a)Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物、及び、必要に応じ、他の置換元素の酸化物又は炭酸化物を、所要の組成比となるように秤量して混合し、ロッドに成型した後、焼結し、
(b)上記焼結ロッドを、低酸素分圧雰囲気中で加熱して溶融帯を形成し、
(c)上記溶融帯を移動させ、速い結晶成長速度で、単結晶体を成長させる、
ことを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【請求項12】
前記(c)の工程の後、単結晶体を、酸素雰囲気中で熱処理することを特徴とする請求項11に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【請求項13】
前記Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物が、BaCO3、CaCO3、及び、TiO2であることを特徴とする請求項11又は12に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【請求項14】
前記低酸素分圧雰囲気が、Ar又はAr+O2雰囲気であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【請求項15】
前記結晶成長速度が5〜10mm/hであることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【請求項16】
前記単結晶体の成長において、移動する溶融帯中のCaTiO3が結晶成長に寄与し、前記所要の組成比とほぼ同じ組成比の単結晶体が成長することを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム単結晶体材料の製造方法。
【請求項17】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料を、フローティングゾーン法を用いて製造する方法において、
(a)Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物、及び、必要に応じ、他の置換元素の酸化物又は炭酸化物を、所要の組成比となるように秤量して混合し、ロッドに成型した後、焼結し、
(b)上記焼結ロッドを、低酸素分圧雰囲気中で加熱して溶融帯を形成し、
(c)上記溶融帯を移動させ、速い結晶成長速度で、多結晶体を成長させる、
ことを特徴とする電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【請求項18】
前記(c)の工程の後、多結晶体を、酸素雰囲気中で熱処理することを特徴とする請求項17に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【請求項19】
前記Ba、Ca、及び、Tiの酸化物又は炭酸化物が、BaCO3、CaCO3、及び、TiO2であることを特徴とする請求項17又は18に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【請求項20】
前記低酸素分圧雰囲気が、Ar又はAr+O2雰囲気であることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。
【請求項21】
前記結晶成長速度が5〜10mm/hであることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載の電子・光学用チタン酸バリウム−カルシウム多結晶体材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−162828(P2008−162828A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352695(P2006−352695)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「腰原非平衡ダイナミクスプロジェクト」にかかわる委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】