説明

電子内視鏡用光源部

【課題】 電子内視鏡に用いられるカラー単板式CCDの分光感度特性に関わりなく、適正なカラー画像を撮像できるように電子内視鏡用の光源の分光特性を制御する。
【解決手段】 RGBのフルカラーLED21により照明された白色物体の映像を電子内視鏡の先端部に設けられ補色フィルタを用いたカラー単板式CCD51により検出する。検出された各色信号をプロセス回路12を介して光源部20の比較回路25に入力する。各色信号の信号振幅レベルを比較回路25において比較し、その結果に基づいてフルカラーLED21の発光要素RGBの発光出力を制御するLEDドライバ22、23、24を制御してCCD51において検出される各色信号の信号振幅レベル相互間における比が1となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー画像を撮像可能な電子内視鏡において用いられる光源部に関する。
【0002】
【従来の技術】カラー画像を撮像する電子内視鏡では、カラー単板式CCDのように原色フィルタや補色フィルタを用いて色別に色信号を検出する固体撮像素子などが用いられている。このうちオンチップの補色フィルタが設けられた固体撮像素子では、分光に用いられる補色フィルタの特性等により、検出される補色成分毎に分光感度特性が異なる。したがって、白色光がこの固体撮像素子で受光された場合であっても、検出される補色成分毎の色信号のレベルは異なり、撮像画像には色の偏りが生じる。また、電子内視鏡は体内など遮蔽された空間において用いられるため照明用の光源を備える必要があるが、照明光の分光分布は光源の種類やバラツキにより異なり、従って同じ白色照明光でもそれぞれに色温度が異なるため、電子内視鏡で撮像される画像の色合いは照明光の分光分布にも影響される。これらのことから従来電子内視鏡では、照明光を照射した状態で白色板等を撮像し、各色成分から得られた原色信号のゲインを調整することにより電子内視鏡のホワイトバランスを予め調整している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ホワイトバランスは補色信号から生成されたRGBの原色信号のゲインにより調整されているため、ホワイトバランスが取られた電子内視鏡であっても、白色物体を撮像するときに検出される各色信号の信号レベルは補色信号毎に依然として異なる。したがって、その先端部が被写体に近づくと、撮像素子と照明光源は近接して設けられているため撮像素子における単位時間当たりの露光量が増大し、分光感度が高い色成分に対するフォトダイオードにおいてオーバーフローを生じることがある。このとき、オーバーフローを起こした色信号のレベルは飽和レベルとなり、露光時間内に撮像素子が受光した光量に対応しないので、検出されたカラー画像の色合は実際のものと異なることとなる。例えば、被写体に電子内視鏡先端部を近づけて撮影を行うと、画像中のハイライト部(例えば照明光が鏡面反射した部分)の周りで分光感度が高い色成分の色信号にオーバーフローが生じ、その部分が実際の色とは異なる色で表示される色付き現象が生じることがある。診察又は施術中にこのような色付き現象が生じると術者が病変部若しくは出血と誤診する可能性があり問題であった。
【0004】本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電子内視鏡に用いられているカラー単板式CCDの分光感度特性に関わりなく、適正なカラー画像を撮像できるように光源の分光特性を制御可能な電子内視鏡の光源部を得ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の内視鏡用光源部は、所定の三原色に対応する光を照射可能なLED光源と、LED光源から照射される光の発光出力を三原色毎に制御可能な光源駆動手段と、補色フィルタを用いたカラー単板式固体撮像素子において検出される複数の色信号の間における信号レベルを比較可能な信号レベル比較手段と、信号レベル比較手段における比較結果に基づいて、光源駆動手段を駆動制御する光源出力調整手段とを備え、光源出力調整手段が、撮像素子において検出される複数の色信号相互間における相対的な信号レベル比を所定の値に設定するように光源駆動手段を駆動制御可能であることを特徴としている。
【0006】信号レベル比の所定の値は1であることが好ましい。これにより、基準となる白色物体を撮像することにより、容易に光源の三原色の発光出力を調整することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である光源部を含む電子内視鏡の回路構成を概略示すブロック図である。
【0008】本実施形態における電子内視鏡用光源部20は、プロセッサ(映像信号処理装置)10内に組み込まれている。プロセッサ10は、CCD51及びライトガイド52を備えた電子スコープにコネクタ(図示せず)を介して着脱自在に接続される。CCD51は例えばオンチップカラーフィルタに補色(イエローYe、マゼンダMg、シアンCy、グリーンG)を用いた従来公知のカラー単板式CCDであり、プロセッサ10に設けられたCCDドライブ回路11により駆動制御される。CCD51において撮影された画像は補色信号としてプロセス回路12へ送られクランプ処理やガンマ補正等のプロセス処理が施される。プロセス処理された補色信号は映像信号処理回路13へ送られる。映像信号処理回路13では補色信号を輝度信号Yと色差信号Cとに分離する信号分離処理やマトリクス処理、フィルタ処理等の処理が施され、その後ビデオ信号にエンコードされてTVモニタやVCR等の周辺機器へ出力される。また、CCDドライブ回路11、プロセス回路12、映像信号処理回路13は、同期信号発生回路14から出力される同期信号に基づいて制御される。
【0009】光源部20には、赤(R)、緑(G)、青(B)等の3原色によりフルカラーの照明が可能な一体レンズ型や積層型等のフルカラーLED21が用いられる。LED21にはRGBの発光をそれぞれ制御するための3つのLEDドライバ21、22、23が接続されている。LEDドライバ22、23、24は比較回路25に接続されており、比較回路25はプロセス回路12に接続されている。比較回路25には、プロセス回路12から補色信号が入力される。比較回路25では、入力された補色信号に基づいてLEDドライバ22、23、24を制御し、LED21のRGBの発光要素それぞれに供給される電流量を制御する。これによりLED21の各RGB成分の発光量が制御される。LED21の光はライトガイド52を介して電子スコープの先端部(ライトガイド先端部52a)から照明光として照射される。
【0010】システムコントロール回路15は、映像信号処理回路13や比較回路25に接続されており、各回路はシステムコントロール回路によって制御される。また、システムコントロール回路15には、パネルスイッチ16やキーボード17等の入力装置が接続されており、システムコントロール回路15は、これらの入力装置からの信号に基づいて光源部20や映像信号処理回路13等の制御を行う。
【0011】図2は、本実施形態で用いられるCCD51の構造を模式的に表わした図である。CCD51の撮像面は、二次元格子状に配列されたフォトダイオード60から構成されており、それぞれフォトダイオード60は、Mg、G、Ye、Cyの何れかの補色フィルタに覆われている。したがって、フォトダイオードでは、これらの補色フィルタを介した光のみが受光検知される。Mg、G、Ye、Cyのフィルタは、例えば図のような配列でフォトダイオード60を覆っており、各フォトダイオード60で検出された電荷は水平転送部61を介してCCD51の外部に補色信号として出力される。また図3には、これらの補色フィルタMg、G、Ye、Cyの分光感度特性の一例が示されている。なお、図3において横軸は光の波長であり、縦軸は各フィルタの分光感度である。
【0012】次に図4〜図9を参照して本実施形態の光源装置における光源出力調整処理動作の原理について説明する。図4は、フルカラーLEDの分光特性(スペクトル分布)を表わしており、横軸は波長、縦軸はフルカラーLEDのスペクトルである。図5は、本実施形態の光源調整処理動作の原理を説明するために図3に示されたMg、G、Ye、Cyの分光感度特性のうちMgとGに関する特性曲線のみ抜粋して示したものである。
【0013】例えば、光源であるLED21の分光特性(スペクトル分布)が初め図4のような曲線で模式的に表わされるとき、この光源を白色物体に照射し、その映像を図5の分光感度特性を持つCCD51で検出すると、Mg及びGに対応するCCD51の撮像特性は図6のようになる。すなわち、図6に示されたMg及びGの撮像特性は、それぞれ図4に示された分光特性と図5に示された分光感度特性との積となり感度特性には偏りが生じる。したがって、CCD51から出力される補色信号の信号レベルにも色毎に偏りが生じ、例えば図7のようにMgに関する補色信号の信号レベルの方がGに関する補色信号のレベルよりも大きくなる。上述のように、検出される補色信号は、フィルタによる分光感度特性と光源の分光分布に影響されため、撮影された物体が白色であっても検出される補色信号のレベルには偏りが生じ、モニタ等に表示される画像の色は白色とはならず偏りが生じる。このような色の偏りは、補色信号から生成された三原色の色信号のゲイン等を調整するホワイトバランスによって従来解決されている。しかし、CCD51において検出される補色信号のレベルは図7に示したように色毎に異なるため、電子内視鏡の先端部を白色物体に近づけると、撮像特性において感度が高いMgを検出するフォトダイオードにおいて先にオーバーフローが生じる。このようなときには、予めホワイトバランスが調整されていても、上述したような色付き現象が生じる。
【0014】本実施形態の電子内視鏡用光源装置では、検出された補色信号をプロセス回路12を介した後、光源部20(図1参照)へフィードバックすることによりLED21のRGB各々に対する出力を調整し、検出される補色信号の振幅レベルを等しくするように光源を制御している。すなわち、光源部20の比較回路25において検出されたMg、G、Ye、Cyの補色信号の間における振幅レベルを比較し、その結果に基づいてLED21のRGBの各発光要素に供給される電流量をLEDドライバ22、23、24により調整し、例えば、図8に示される曲線のように光源(LED21)の分光分布を調整する。すなわち、CCD51のMg及びGにおいて検出される補色信号の信号レベル間の比が図9に示されるように約1の比率に等しくなるように光源におけるRGBの発光出力が調整される。なお、図5〜図9を参照した説明では、MgとGの補色信号のみについて述べたが、Ye、Cyの補色信号に関しても同様であり、Mg、G、Ye、Cy相互間の信号レベルの比はともに約1の比率となるようにRGBの発光要素の発光出力が調整される。
【0015】以上により、電子内視鏡の先端部が物体に近接しても、特定の色に対応するフォトダイオードのみ先にオーバーフローすることは無いので、白く光るハイライト部付近において上述の色付き現象は生じず常に適正なカラー画像を得ることができる。また、本実施形態の光源出力調整処理により光源のRGBの出力が調整された電子内視鏡では、検出される各色(補色)信号は既に白色物体に対し信号レベルが等しく調整されているので、この色信号に基づく色差信号R−Y及びB−Yの値は、0となり白色(無彩色)を表わしている。したがって、従来のように色信号のゲインを調整するなどしてホワイトバランスの調整を改めて行う必要がない。
【0016】次に図10を参照して本実施形態における光源出力調整処理動作の手順について説明する。図10は本実施形態における光源出力調整処理動作の手順を示すフローチャートである。
【0017】まず、ステップ101において、基準となる白色物体の撮像を開始する。すなわち、基準となる白色板等にRGBの出力が所定の出力(初期出力)に調整されたLED21の光を照射し、この光を照明光とした白色板の撮像がCCD51により開始される。ステップ102では、オペレータが例えばパネルスイッチ16の中の光源出力調整処理動作を開始するためのスイッチをONに設定し光源出力調整処理動作を開始する。ステップ103では、ステップ101において検出されたMg、G、Ye、Cyに対応する補色信号が比較回路25(図1参照)に入力され、補色信号Mg、G、Ye、Cyの信号振幅のレベルを比較するための処理が行われる。ステップ104では、Mg、G、Ye、Cyの信号振幅レベルが互いに等しか否かが判定される。Mg、G、Ye、Cyに関する各補色信号の信号振幅レベルが等しければこの処理は終了する。一方、各補色信号の信号振幅レベルが等しくなければ、ステップ105において、CCD51で検出される補色信号の信号振幅レベルが等しくなるようにLED21のRGB出力が制御される。すなわち、LEDドライバ22、23、24によりLED21のRGBに対する電流供給量が変更される。ステップ103〜ステップ105は、ステップ104においてMg、G、Ye、Cyの補色信号の振幅レベルが各々等しくなるまで繰り返し続けられる。なお、光源出力調整処理は、例えば、プロセッサ10に接続される電子内視鏡が交換されたときに初期設定として行われる。この処理が終了したときには、システムコントロール回路15により、比較回路25における補色信号の比較処理が停止される。
【0018】以上のように、本実施形態によれば、光源としてフルカラーLEDを用い、RGBの出力を調整して光源の分光分布を調整することにより、電子内視鏡の分光感度特性に係りなく、色付き現象を防止することができる。また、光源の分光分布を調整することにより各補色信号の信号振幅レベルが等しく調整されているので、検出された色信号に対して改めてホワイトバランスをとる必要が無くなる。
【0019】また、本実施形態では、電子内視鏡を交換する度に光源出力調整処理を行ったが、例えばプロセッサ内のメモリに光源出力調整処理の結果を記憶させ、一度調整処理を行った電子内視鏡に対しては、メモリに記憶されたデータを用いて光源の出力を調整してもよい。
【0020】本実施形態では、一体レンズ型や積層型のRGBを用いたフルカラーLEDを例にあげたが、他の表色系を用いたLED光源であってもよい。また、例えばRGB毎に独立する光源を複数集めて一つの光源として用いてもよい。また、本実施形態では、LED光源はプロセッサ内に設けられているが、LED光源だけを電子スコープ先端に設けてもよい。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、電子内視鏡に用いられているカラー単板式CCDの分光感度特性に関わりなく、適正なカラー画像を撮像できるように光源の分光特性を制御可能な電子内視鏡の光源部を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である電子内視鏡用光源部を備えた電子内視鏡装置(電子内視鏡及びプロセッサ)の回路構成を示すブロック図である。
【図2】CCDの構造を模式的に表わす図である。
【図3】補色フィルタ(シアンCy、イエローYe、マゼンダMg、グリーンG)によるCCDの分光感度特性の一例を示す図である。
【図4】フルカラーLEDの分光分布(スペクトル分布)の一例である。
【図5】CCDの分光感度特性のうち、マゼンダMg及びグリーンGの特性曲線のみを示した図である。
【図6】図4の分光分布を持つ光源で照射された白色物体を、図5の分光感度特性を持つCCDで検出するときのCCDにおける撮像特性を示す図である。
【図7】図6に示された撮像特性を持つCCDにおいて検出される色信号の信号レベルを模式的に表わす図である。
【図8】図7に示される色信号の信号振幅レベルに基づいてフルカラーLEDの発光要素RGBの発光出力が調整された光源の分光分布を示す図である。
【図9】図8に示される分光分布を持つ光源で白色物体を照明し、図5に示された分光感度特性を持つCCDによりその白色物体を撮像したときに検出される色信号の信号レベルを模式的に表わした図である。
【図10】本実施形態で実行される光源出力調整処理動作の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
20 光源部
21 フルカラーLED
22、23、24 LEDドライバ
25 比較回路
51 CCD
52 ライトガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の三原色に対応する光を照射可能なLED光源と、前記LED光源から照射される光の発光出力を前記三原色毎に制御可能な光源駆動手段と、補色フィルタを用いたカラー単板式固体撮像素子において検出される複数の色信号の間における信号レベルを比較可能な信号レベル比較手段と、前記信号レベル比較手段における比較結果に基づいて、前記光源駆動手段を駆動制御する光源出力調整手段とを備え、前記光源出力調整手段が、前記撮像素子において検出される前記複数の色信号相互間における相対的な信号レベル比を所定の値に設定するように前記光源駆動手段を駆動制御可能であることを特徴とする電子内視鏡用光源部。
【請求項2】 前記信号レベル比の所定の値が1であることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡用光源部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−122794(P2002−122794A)
【公開日】平成14年4月26日(2002.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−313269(P2000−313269)
【出願日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】