説明

電子内視鏡装置および方法並びにプログラム

【課題】読影者に対して、ズーム処理を行った部位が、病変等であるか否かを判別しやすくした通常画像または診断用画像を提供することができる。
【解決手段】生体粘膜を表す通常画像と、前記生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成するものであって、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付けることが可能なスイッチ21と、スイッチ21により受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、所定の倍率値にてズームを行うズーミング部(ズーム機構部5、信号処理回路(B)26または信号処理回路(C)33のいずれか)と、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施す画像処理回路27と、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示するモニタ34を備えた内視鏡装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子内視鏡装置および方法並びにプログラムに関し、詳しくは、生体粘膜の狭帯域分光画像を作成してこの生体粘膜を診断する電子内視鏡装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、固体撮像素子を用いた電子内視鏡装置として、主に可視光の波長領域を撮像して可視光領域画像を表す通常画像と、狭い波長帯域のみに光を透過させる複数種類の狭帯域バンドパスフィルタを通して消化器官(例えば胃等)の生体粘膜を撮像し上記生体粘膜の複数種類の狭帯域分光画像を得、これらの狭帯域分光画像を合成してなる診断用画像を生成する方式(Narrow Band Imaging-NBl)が知られている。
【0003】
このような装置では、互いに異なる波長域の光を透過させる3種類の狭帯域バンドパスフィルタを組み合わせた回転フィルタを備え面順次方式で撮像を行なって複数種類の狭帯域分光画像を取得するものや、上記と同様の3種類の各狭帯域バンドパスフィルタを通して分光された各照明光を順次生体粘膜に照射しつつ上記生体粘膜を撮像してこの生体粘膜を示す複数種類の狭帯域分光画像(診断用画像ともいう)を取得するもの等が検討されている。
【0004】
このようにして取得された複数種類の狭帯域分光画像を合成して得られた上記生体粘膜の診断用画像は、従来では得られなかった生体粘膜の微細構造を表現することができる。
【0005】
このような方式(Narrow Band Imaging-NBl)において、読影者が診断しやすくするために、いかなる生体の組織等であっても、適切に診断用画像信号を表示できるよう、組織毎に適切なパラメータを格納し、組織毎に対応したパラメータを用いて、診断用画像信号に対して、画像処理を行うものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、固体撮像素子上に複数種類の広帯域バンドパスフィルタからなるRGBモザイクフィルタを配置して面同時方式で通常のカラー画像(通常画像ともいう)の撮像を行なう電子内視鏡装置に関しても、この生体粘膜の撮像で得られた通常画像に基づく演算処理により上記狭帯域バンドパスフィルタを用いて得られた狭帯域分光画像と同等の画像を取得して上記のような診断用画像を作成する方式が提案されている。
【0007】
この方式は、可視波長域における生体粘膜の分光反射強度分布に関する多数の測定データを用いて上記生体粘膜の分光反射強度分布を推定するための主成分分析を行い、その結果、第1主成分から第3主成分の3つの主成分により上記生体粘膜の可視波長全域に亘る分光反射強度分布を略復元できることを見出して提案されたものである。この復元手法によれば、上記生体粘膜の分光反射強度分布に関する多数の測定データを用いて予め求めた分光反射推定マトリクスデータと、上記3つの主成分に対応する通常のRGBモザイクフィルタを通した撮像で得られた通常画像との分光画像推定演算によって求められた複数の波長域での狭帯域分光画像を合成して、上記狭帯域バンドパスフィルタを通して得られた狭帯域分光画像の合成によって得られる診断用画像と同等の画像を疑似的に得ることができる(特許文献2参照)。
【0008】
また、通常画像を表示する電子内視鏡装置において、ズーム倍率に応じて、通常画像の明度を自動変更するものが提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−341078号公報
【特許文献2】特開2003−93336号公報
【特許文献3】特開2001−37711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の電子内視鏡装置には、下記の如き種々の問題がある。特許文献1記載の装置のように、読影者が診断しやすくするために、いかなる生体の組織等であっても、適切な診断用画像信号を表示できるよう、組織毎に適切なパラメータを格納し、組織毎に対応したパラメータを用いて、診断用画像信号に対して、画像処理を行うものでは、特定の組織毎に複数のパラメータを事前に設定する必要があり、設定が煩雑になるという問題がある。
【0010】
また、一般的には、読影者が、ズーム処理を行うような画像上の対象組織は、注目組織(例えば、病変の可能性が高い部位)であることが多い。
【0011】
しかしながら、特許文献2記載の装置のように、ズーム処理を行う画像に対して、画像処理条件を自動変更する機能が無いものでは、読影者にとって、注目する組織を判別しにくいという問題がある。
【0012】
また、特許文献3記載の装置のように、ズーム倍率に応じて、通常画像における明るさのみを自動変更するものでは、読影者にとって、注目する組織を正確に判別しにくいという問題がある。
【0013】
したがって、通常画像と、診断用画像とを作成する電子内視鏡装置において、所定の倍率値に応じて、複数の画像処理条件を変更し、変更された複数の画像処理条件に基づき通常画像または診断用画像に画像処理を施すよう制御することが望まれている。
【0014】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通常画像と所望の診断用画像とを作成し、読影者に対して、ズーム処理の対象となる部位が、病変等であるか否かを判別しやすくした通常画像または診断用画像を表示する電子内視鏡装置および方法並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電子内視鏡装置は、生体粘膜を表す通常画像と、生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成するものであって、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付けることが可能なズーム指示受付部と、ズーム指示受付部により受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行うズーミング部と、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施す画像処理部と、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示する表示部とを備えたものである。
【0016】
「通常画像」とは、可視光の波長領域を撮像して可視光領域画像を表すカラー画像をいう。
【0017】
また、「診断用画像」とは、診断用に用いられる狭帯域分光画像から成る画像をいう。例えば、複数種類の波長セットのうちから選択された波長セットに基づいた分光画像推定演算により得られた画像であってもよいし、複数種類の狭帯域分光画像を得、これらの狭帯域分光画像を合成してなるNarrow Band Imaging-NBl方式を用いて生成された画像であってもよい。
【0018】
「ズームミング部」とは、ズーム駆動回路の制御によってズーム機構部のレンズの焦点距離を変えることにより、光学ズーム処理により拡大処理または縮小処理を行うものをいう。また、上述する光学ズームのみならず、信号処理回路により、電子ズーム処理により拡大処理または縮小処理を行うものであっても良い。
【0019】
また、「複数の画像処理条件」は、明度強調処理、構造強調処理、色階調処理の少なくともいずれか2つ以上の補正量に関するものである。更に、通常画像または診断用画像のいずれか一方の画像の表示設定を有するものであってもよい。
【0020】
本発明の電子内視鏡装置は、所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件を予め記憶しているデータベース部を更に備え、画像処理部が、データベース部に記憶された所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件に基づき画像処理を施すものであってもよい。
【0021】
本発明の電子内視鏡表示方法は、生体粘膜を表す通常画像と、生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成し、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付け、受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、所定の倍率値にてズーム処理を行い、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施し、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示する。
【0022】
本発明の電子内視鏡表示プログラムは、生体粘膜を表す通常画像と、生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成するものであって、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付ける機能と、受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、所定の倍率値にてズーム処理を行う機能と、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施す機能と、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示する機能とをコンピュータに実現させるためのものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電子内視鏡装置および方法並びにプログラムによれば、ズーム処理を行う指示に応答して、所定の倍率値にてズーム処理を行い、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施し、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示することにより、読影者に対して、ズーム処理を行った組織が、病変等であるか否かを判別しやすい通常画像または診断用画像を提供することができる。
【0024】
また、本発明の電子内視鏡装置および方法並びにプログラムによれば、所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件を予め記憶しているデータベース部を更に備え、画像処理部が、データベース部に記憶された所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件に基づき画像処理を施すことにより、読影者が煩雑な操作をすることなく、ズーム処理を行った組織が、病変等であるか否かを判別しやすい通常画像または診断用画像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電子内視鏡装置の基本構成を示すものである。
【0026】
本発明の電子内視鏡装置は、生体粘膜を表す通常画像と、生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成するものであって、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付けることが可能なスイッチ21(ズーム指示受付部)と、スイッチ21(ズーム指示受付部)により受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行うズーム機構部5(ズーミング部)と、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施す画像処理回路27(画像処理部)と、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示するモニタ34(表示部)等を備えたものである。
【0027】
また、本発明の電子内視鏡装置は、所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件を予め記憶しているデータベース46(データベース部)を更に備え、画像処理回路27が、データベース46に記憶された所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件に基づき画像処理を施すものである。
【0028】
図示の通りこの電子内視鏡装置は、被験者の体腔内に挿入されるスコープ10と、スコープ10に接続されるプロセッサ装置12とから構成されている。プロセッサ装置12内には白色光を発する光源装置14が配置されている。スコープ10の先端には照明窓22が設けられ、この照明窓22には、一端が上記光源装置14に接続されたライトガイド23の他端が対面している。
【0029】
光源装置14は、白色光を発するランプ14aと、このランプ14aを点灯させる点灯駆動回路14bと、ランプ14aの前側に配置された絞り14cと、この絞り14cを開閉する絞り駆動部14dとから構成されている。なお、ランプ14aとライトガイド23との間には、該ランプ14aから発せられた白色光をライトガイド23に入射させるための光学系が設けられるが、それらについては図示を省いてある。また、この種の光源装置は、プロセッサ装置12とは別体の部分に配置されてもよい。
【0030】
上記スコープ10の先端部には、ズーム制御を可能とする結合撮像系であるズーム機構部5と、固体撮像素子であるCCD15が設けられている。このCCD15としては、例えば撮像面にRGBの色フィルタを有する原色型の色フィルタが取り付けられている。
【0031】
ズーム機構部5は、ズームレンズと、を有し、光学的制御手段としてのズームレンズは、ズーム駆動回路6によりその光軸の前後方向に移動可能になされ、このズームレンズが移動することにより、所定の倍率値により画像の倍率を変化させることができる。
【0032】
また、上記所定の倍率値については、ズーム駆動回路6から、マイコン20からマイコン35を経由して画像処理回路27に送信される。
【0033】
なお、ズーム駆動回路6は、アクチュエータからなり、例えば圧電アクチュエータ、超音波アクチュエータ、モータ等を利用することができる。
【0034】
CCD15には、同期信号に基づいて駆動パルスを形成するCCD駆動回路16が接続されると共に、このCCD15が出力した画像(映像)信号をサンプリングして増幅するCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)回路17が接続されている。またCDS/AGC回路17には、そのアナログ出力をデジタル化するA/D変換器18が接続されている。さらにスコープ10内には、そこに設けられた各種回路を制御するとともに、プロセッサ装置12との間の通信制御を行うマイコン20が配置されている。
【0035】
また、スコープ10の根元近傍には、マイコン20に接続され、表示モードの切換を行う押圧型のスイッチ21が設けられている。
【0036】
一方、プロセッサ装置12には、デジタル化された画像信号に対して各種の画像処理を施すことを可能とするDSP(デジタル信号プロセッサ)24が設けられている。
【0037】
このDSP24は、上記CCD15から出力されるR、G、Bの3色画像信号から輝度(Y)信号と色差[C(R−Y,B−Y)]信号で構成されるY/C信号を生成し、それを出力するものであり、DSP24には、I/P変換およびノイズ除去などを行う信号処理回路(A)25が接続されている。
【0038】
信号処理回路(A)25には、表示用の通常画像信号を形成する信号処理回路(B)26と、後述する分光画像信号を生成するための第1色変換回路28とが接続されている。
【0039】
なお、上記DSP24はスコープ10側に配置してもよい。
【0040】
信号処理回路(B)26は、表示用の通常画像信号を生成し、この通常画像信号を画像処理回路27へ出力する。また、通常画像信号に対して、拡大処理または縮小処理を行う電子ズーム処理の実行を可能とする。
【0041】
また、信号処理回路(C)33は、表示用の診断用画像信号を生成し、この診断用画像信号を画像処理回路27へ出力する。また、診断用画像信号に対して、拡大処理または縮小処理を行う電子ズーム処理の実行を行うことを可能とする。
【0042】
画像処理回路27には、例えば、液晶表示装置やCRT等からなるモニタ34および、画像記録装置45が接続されている。
【0043】
画像処理回路27では、通常画像表示モードが選択されている場合には、信号処理回路(B)26から出力される通常画像信号をモニタ34および画像記録装置45へ出力し、診断用画像表示モードが選択されている場合には、信号処理回路(B)26から出力される通常画像信号と、上記通常画像信号に、信号処理回路(C)33から出力される診断用画像とを生成し、モニタ34および画像記録装置45へ出力する。
【0044】
また、画像処理回路27は、通常画像または診断用画像に対して、明度強調処理、構造強調処理、色階調処理、鏡像処理,マスク発生、キャラクタ発生、色調整などの各種画像処理を行うことができる
以下、通常画像と診断用画像の生成について、主に説明する。
【0045】
第1色変換回路28は、上記信号処理回路(A)25から出力されたY/C信号をR、G、Bの3色画像信号に変換する。上記第1色変換回路28の後段側には、予め記憶されている推定分光画像信号生成用のマトリクス(分光)データの中から読み出された、選択された波長域λ1,λ2,λ3に対応するパラメータを用いて、この3色画像信号R、G、Bに対してマトリクス演算を行って、選択された波長λ1,λ2,λ3に対する推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sを出力する第1色空間変換処理回路29と、この推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sを、使用者が入力した各画像信号毎のゲイン値を用いて増幅して、擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tを出力する第2色空間変換処理回路30と、この擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tの全ての信号の平均輝度が、DSP24から出力されたY/C信号、すなわち通常画像信号の全ての信号の平均輝度と略等しくなるように、擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tの輝度を調整して、輝度調整が行われた擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’を出力する輝度調整回路31と、この擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’を、RGB信号に対応させた処理をするためにそれぞれR,G,Bチャンネルへ入力し、この入力信号をY/C信号に変換する第2色変換回路32、信号処理回路(C)33、および画像処理回路27が逐次この順に接続されている。
【0046】
また、プロセッサ装置12内には、スコープ10との間の通信を行うと共に、該装置12内の各回路を制御し、また推定分光画像信号を形成するためのマトリクス(分光)データを上記色空間変換処理回路29に入力する等の機能を有するマイコン35が設けられている。上記メモリ36には、診断用画像を形成するための波長セット、ゲインセットおよびRGB信号に基づいて推定分光画像信号を形成するためのマトリクスデータが記憶されている。
【0047】
λ1,λ2,λ3の波長セットとしては、例えば図2に示すような、400,500,600(nm、以下同様)の波長域標準セットa、血管を描出するための470,500,670の血管B1セットb、同じく血管を描出するための475,510,685の血管B2セットc、特定組織を描出するための440,480,520の組織E1セットd、同じく特定組織を描出するための480,510,580の組織E2セットb、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンとの差を描出するための400,430,475のヘモグロビンセットf、血液とカロテンとの差を描出するための415,450,500の血液‐カロテンセットg、血液と細胞質の差を描出するための420,550,600の血液‐細胞質セットhの8つの波長セットが記憶されている。また、e1、e2、e3のゲインセットとして、1,1,1のゲイン標準セットが記憶されている。
【0048】
マトリクスデータはテーブルとして記憶されている。本実施形態において、このメモリ36に格納されているマトリクスデータの一例は次の表1のようになる。
【表1】

【0049】
この表1のマトリクスデータは、例えば400nmから700nmの波長域を5nm間隔で分けた61の波長域パラメータ(係数セット)p1〜p61および、通常画像形成のためのパラメータP1〜P3からなる。パラメータp1〜p61は各々、マトリクス演算のための係数kpr,kpg,kpb(p=1〜61)から構成されている。
【0050】
そして第1色空間変換処理回路29において、上記係数kpr,kpg,kpbと第1色変換回路28から出力されたRGB信号とにより次式で示すマトリクス演算が行われて、推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sが形成される。
【数1】

【0051】
すなわち、分光画像を構成する波長域λ1,λ2,λ3としてそれぞれ例えば500nm,620nm,650nmが選択される場合は、係数(kpr,kpg,kpb)として、表1の61のパラメータのうち、中心波長500nmに対応するパラメータp21の係数(-0.00119,0.002346,0.0016)、中心波長620nmに対応するパラメータp45の係数(0.004022,0.000068,‐0.00097)、および中心波長650nmに対応するパラメータp51の係数(0.005152,-0.00192,0.000088)を用いて上記マトリクス演算がなされる。
【0052】
マイコン35には上記メモリ36に加えて、モニタ34、キーボード型の入力部41、画像記録コントローラ42、およびスコープ10のマイコン20が接続されている。
【0053】
図3は、診断用画像表示モードが選択された際のモニタ34に表示される画面47の一例を示す図である。モニタ34の画面47には、通常画像48および診断用画像49と、診断用画像を形成する波長域を表示、選択または設定するための波長域表示小画面51と、各波長域のゲインを表示、選択または設定するためのゲイン表示小画面52とが表示される。
【0054】
波長域表示小画面51には、例えば、a〜hの波長セットを選択するためのセット選択スイッチ53と、波長域λ1,λ2,λ3を表示し、また手動入力により設定するための波長表示スイッチ54a〜54cが表示される。また、ゲイン表示小画面52には、標準のゲインセット(1,1,1)を選択するためのセット選択スイッチ55と、ゲインe1、e2、e3を表示し、また手動入力により設定するためのゲイン表示スイッチ56a〜56cが表示される。これらの小画面に表示されているスイッチは、キーボード型の入力部41により操作される。
【0055】
なお、スイッチ21には、スコープ10の上下の湾曲状態をロックする上下ロックレバー、スコープ10の先端を上下に湾曲させる上下アングルつまみ、スコープ10の先端を左右に湾曲させる左右アングルつまみ、スコープ10を左右の湾曲状態をロックする左右ロックつまみ、本実施形態の電子内視鏡に接続された画像記録装置45に画像を送信するRCスイッチ、通常画像または診断用画像の取り込みを行うFRスイッチ、画像のズーム処理を行うことを可能とし、通常画像表示モード、診断用画像表示モードの選択を可能とするMMスイッチ、吸引を行う吸引ボタン、送気・送水を行う送気送水ボタン等を有する。
【0056】
以下、上記構成を有する本実施形態の電子内視鏡装置の作用について説明する。
【0057】
まず、通常画像表示モードの際の動作について説明する。通常画像表示モードでは、通常カラー画像が形成される。これらの画像を形成する際には、図1に示す光源装置14が駆動され、そこから発せられた白色光が絞り14cを経てライトガイド23に入射し、スコープ10内に配されたライトガイド23の先端から出射した白色光が被観察体に照射される。そして、CCD駆動回路16によって駆動されたCCD15がこの被観察体を撮像し、撮像信号を出力する。この撮像信号はCDS/AGC回路17で相関二重サンプリングと自動利得制御による増幅を受けた後、A/D変換器18でA/D変換されて、RGB画像信号としてプロセッサ装置12のDSP24に入力される。DSP24では、スコープ10からの出力された3色画像信号であるRGB画像信号に対し色変換処理が行われ、前述の通りのY/C信号、すなわち通常画像信号が形成される。このDSP24が出力するY/C信号(通常画像信号)は信号処理回路(A)25においてI/P変換およびノイズ除去などが行われ、信号処理回路(B)26に入力され、表示用の通常画像信号が生成され(場合によっては、電子ズームによる拡大処理または縮小処理等を行う)、画像処理回路27へ出力される。画像処理回路27では、信号処理回路(B)26から出力された通常画像信号に対して、明度強調処理、構造強調処理、色階調処理、鏡像処理,マスク発生、キャラクタ発生、色調整などの各種信号処理が施し、モニタ34および画像記録装置45へ出力する。
【0058】
次に、診断用画像表示モードの際の動作について説明する。本装置が通常画像表示モードで動作している時に、使用者がスコープ10に設けられているスイッチ21(後述するMMスイッチ)を押圧すると、動作モードが通常画像表示モードから通常画像と診断用画像の両画像を表示する診断用画像表示モードへ切替る。
【0059】
なお、本装置が診断用画像表示モードで動作している時に、使用者がスコープ10に設けられているスイッチ21(後述するMMスイッチ)を押圧すると、動作モードが診断用画像表示モードから通常画像を表示する通常画像表示モードへ切替る。
【0060】
診断用画像表示モードは、診断用画像のみを表示するものであってもよい。
【0061】
診断用画像表示モードでは、上述した通常カラー画像形成動作と平行して、分光カラー画像形成動作が行われる。以下、分光カラー画像形成について説明する。上述したように、DSP24が出力するY/C信号(通常画像信号)は、信号処理回路(A)25を介して、信号処理回路(B)26に入力され、通常カラー画像が形成されている。同時にDSP24が出力するY/C信号は、信号処理回路(A)25を介して、第1色変換回路28に入力され、そこでRGB信号に変換される。このRGB信号は第1色空間変換処理回路29へ供給され、第1色空間変換処理回路29ではRGB信号とマトリクスデータとにより、推定分光画像形成のためのマトリクス演算がなされる。
【0062】
以下、この演算について説明する。第1色空間変換処理回路29は前述のメモリ36に記憶されているマトリクスデータを用いて、RGB信号に対して、診断用画像形成のための前記数1式のマトリクス演算を行う。入力部41の操作によってλ1,λ2,λ3の3つの波長域が設定され、マイコン35はメモリ36に記憶されているマトリクスデータの中からそれらの3つの選択波長域に対応するパラメータをメモリ36から読み出し、それらを第1色空間変換処理回路29に入力する。
【0063】
例えば、3つの波長域λ1,λ2,λ3として波長500nm,620nm,650nmが選択された場合は、それぞれの波長に対応する表1のパラメータp21,p45,p51の係数が用いられて、RGB信号から次の数2式のマトリクス演算にて推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sが形成される。
【数2】

【0064】
その後、上記推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sは、第2色空間変換処理回路30へ供給される。この第2色空間変換処理回路30では推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sと、推定分光画像信号(λ1s、λ2s、λ3s)の各信号のゲイン値を示すマトリクスとにより、擬似色分光画像形成のためのマトリクス演算がなされる。
【0065】
以下、この演算について説明する。入力部43の操作によって各推定分光画像信号(λ1s、λ2s、λ3s)に対するゲイン値が設定されている。マイコン35はそれらの3つのゲイン値に対応する1×3のマトリクスを生成し、第2色空間変換処理回路30に出力する。
【0066】
例えば、3つの波長域λ1,λ2,λ3に対するゲイン値としてe1、e2およびe3が選択された場合は、推定分光画像信号(λ1s、λ2s、λ3s)号から次式のマトリクス演算にて擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tが形成される。
【数3】

【0067】
その後、上記擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tは、輝度調整回路31へ供給される。輝度調整回路31では、この擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tの全ての信号の平均輝度が、DSP24から出力されたY/C信号、すなわち通常画像信号の全ての信号の平均輝度と略等しくなるように、擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tの輝度を調整する輝度調整がおこなわれる。
【0068】
以下、この輝度調整について説明する。マイコン35は、まずDSP24から出力された1フィールドに関するY/C信号、すなわち1フィールド分の通常画像信号のY(輝度)信号の平均値(通常Yav)を算出する。また、1フィールド分の擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tが生成された時点で、1フィールド分の擬似色分光画像信号の全てに対して、Y/C信号へ変換した場合のY(輝度)信号値を次式により算出する。
【数4】

【0069】
マイコン35は1フィールド分の擬似色分光画像信号の全てのY(輝度)信号値の平均値(分光Yav)を算出し、通常Yavとの比率を求める。通常Yav=α・分光Yavであった場合には、次式の演算により、輝度調整が行われた擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’を算出する。
【数5】

【0070】
その後、擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’が各々Rs,Gs,Bsの3色画像信号として第2色変換回路32に入力され、この第2色変換回路32では、Rs,Gs,Bsの3色画像信号がY/C信号(Y,Rs−Y,Bs−Y)に変換され、このY/C信号、すなわち分光画像信号が信号処理回路(C)33により信号処理が施され、画像処理回路27へ入力される。画像処理回路27では、信号処理回路(B)26から出力された通常画像信号と、信号処理回路(C)33から出力された分光画像信号を生成し、モニタ34および画像記録装置45へ出力する。
【0071】
上記分光画像信号に基づいてモニタ34に表示される診断用画像は、図4および図5で示すような波長域の色成分で構成されるものとなる。すなわち図4は、原色型CCD15の色フィルタの分光感度特性R,G,Bに、診断用画像を形成する3つの波長域λ1,λ2,λ3を重ねた概念図であり、また図5は、生体の反射スペクトルに3つの波長域λ1,λ2,λ3を重ねた概念図である。先に例示したパラメータp21,p45,p51による分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sは、図5に示されるように各々500nm、620nm、650nmを中心波長とする±10nm程度の範囲の波長域の色信号であり、これら3つの波長域の色の組合せから構成される診断用画像(動画あるいは静止画)が表示されることになる。
【0072】
次に、上記波長域λ1,λ2,λ3およびゲインe1、e2、e3の表示、選択および設定について説明する。電子内視鏡装置の工場出荷後、最初に電源を入れて装置を立ち上げると、上記波長域標準セットa(400,500,600)およびゲイン標準セット(1,1,1)がマイコン35によって選択される。そして、診断用画像表示モードが選択された場合には、この選択された波長域(400,500,600)が波長表示スイッチ54a〜54cにより表示され、またゲイン標準セット(1,1,1)がゲイン表示スイッチ56a〜56cに表示される。第1色空間変換処理回路29は、波長域(400,500,600)について、前述のマトリクス演算を行い、増幅回路推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sを形成する。また、第2色空間変換処理回路30は、ゲイン(1,1,1)を用いて前述の演算を行い、擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tを形成する。
【0073】
また、臨床医師等の読影者は、キーボード型の入力部41を用いて、セット選択スイッチ53をクリックすることにより、その他の波長セットb〜hを順番のかつ任意に選択することができる。また、キーボード型の入力部41の操作により、波長表示スイッチ54a〜54cの位置を左右へ移動させることにより、波長域を任意の値に設定することができる。また、同様にゲイン表示スイッチ56a〜56cの位置を左右へ移動させることにより、ゲインを任意の値に設定することができる。選択された波長セットの波長域λ1,λ2,λ3に対応する各パラメータがマイコン35によってメモリ36から読み出され、それらのパラメータが第1色空間変換処理回路29に入力される。第1色空間変換処理回路29は、入力されたパラメータを用いて前述のマトリクス演算を行い、推定分光画像信号λ1s,λ2s,λ3sを形成する。また、選択されたゲインセットは、第2色空間変換処理回路30に入力される。第2色空間変換処理回路30は、入力されたパラメータを用いて前述の演算を行い、擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tを形成する。輝度調整部31は、この擬似色分光画像信号λ1t,λ2t,λ3tに対して、前述の演算を行い、輝度調整が行われた擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’を算出する。
【0074】
なお、波長セットとして、前述したような波長セットの他に、装置操作者の要望等に応じて別のセットを用意し、それらをメモリ36に記憶しておいて適宜選択使用できるようにしてもよい。
【0075】
なお、本実施形態においては、画像処理回路27の出力がモニタ34の他に画像記録装置45(例えば、プリンタ等)にも入力されるようになっており、マイコン35によって制御される画像記録コントローラ42が画像記録装置45に画像記録の指示を与えた場合は、その指示で指定されたシーンの通常画像あるいは診断用画像のハードコピーがこの画像記録装置45から出力される。
【0076】
以下、図6に示すフローチャートを参照して、通常画像表示モードを設定した場合の本発明の通常画像に対して、画像処理を施す方法について説明する。
【0077】
まず、ズーム駆動回路6は、ズーム処理を行う指示を受け付けることが可能なスイッチ21(MMスイッチ)により受け付けた倍率値(例えば、拡大であれば、どの程度、拡大するかを示す倍率値、縮小であれば、どの程度、縮小するかを示す倍率値)を受信する(ST1)。
【0078】
次に、ズーム駆動回路6は、ズーム機構部5をズーム制御することにより、上記受信した倍率値によりズーム処理を施すよう制御する。それによりズーム機構部5は、ズーム処理を行う(ST2)。その後、信号処理回路(B)26は、ズーム処理を施した通常画像と、画像処理回路27に送信する。
【0079】
なお、上記倍率値については、ズーム駆動回路6から、マイコン20からマイコン35を経由して画像処理回路27に送信されている。
【0080】
画像処理回路27は、その倍率値が所定の値(閾値)より低い場合には(ST3;YES)、通常画像に対して、データベース46に記録された画像処理条件Aに基づき画像処理を施す(ST4)。
【0081】
画像処理回路27は、その倍率値が所定の値(閾値)より高い場合には(ST3;NO)、通常画像に対して、データベース46に記録された画像処理条件Bに基づき画像処理を施す(ST5)。
【0082】
なお、画像処理回路27が施した画像処理条件に基づく画像処理は、信号処理回路(B)26でおこなってもよい。
【0083】
ここで、画像処理条件Aおよび画像処理条件Bについて説明する。
【0084】
画像処理回路27は、拡大する倍率値が低い場合、もしくは拡大する倍率が等倍の場合、画像処理条件Aとして、図7に示すように、明るさ(明度変更)補正量を強く設定し、コントラスト(色階調強調)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、シャープネス(構造強調)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定する。
【0085】
また、画像処理回路27は、所定の値より縮小する倍率値が高い場合、画像処理条件Aとして、明るさ(明度変更)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、コントラスト(色階調強調)補正量を強く設定し、シャープネス(構造強調)補正量を強く設定してもよい。
【0086】
一方、画像処理回路27は、所定の値より拡大する倍率値が高い場合、画像処理条件Bとして、図7に示すように、明るさ(明度変更)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、コントラスト(色階調強調)補正量を強く設定し、シャープネス(構造強調)補正量を強く設定する。
【0087】
また、画像処理回路27は、縮小する倍率値が低い場合、もしくは縮小する倍率が等倍の場合、画像処理条件Bとして、明るさ(明度変更)補正量を強く設定し、コントラスト(色階調強調)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、シャープネス(構造強調)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定してもよい。
【0088】
モニタ34(表示部)は、画像処理条件Aまたは画像処理条件Bのいずれかに基づき画像処理を施された通常画像を表示する(ST6)。
【0089】
画像処理条件Aと、画像処理条件Bは、現状の表示モードから通常画像表示モードまたは診断用画像モードのいずれかに変更する表示設定を有するものであってもよい。所定の値より拡大する倍率値が高い場合、通常画像表示モードから診断用表示モードに自動変更することを可能とする。また、その逆に表示モードを自動変更してもよい。
【0090】
また、所定の値より縮小する倍率値が高い場合、通常画像表示モードから診断用表示モードに自動変更することを可能とする。また、その逆に表示モードを自動変更してもよい。
【0091】
以下、図8に示すフローチャートを参照して、診断用画像表示モードを設定した場合における本発明の診断用画像に対して、画像処理を施す方法について説明する。
【0092】
まず、ズーム駆動回路6は、ズーム処理を行う指示を受け付けることが可能なスイッチ21(MMスイッチ)により受け付けた倍率値(例えば、拡大であれば、どの程度、拡大するかを示す倍率値、縮小であれば、どの程度、縮小するかを示す倍率値)を受信する(ST11)。
【0093】
次に、ズーム駆動回路6は、ズーム機構部5をズーム制御することにより、上記受信した倍率値によりズーム処理を施すよう制御する。それによりズーム機構部5は、ズーム処理を行う(ST12)。その後、信号処理回路(C)33は、ズーム処理を施した診断用画像を、画像処理回路27に送信する。なお、上記倍率値については、ズーム駆動回路6から、マイコン20からマイコン35を経由して画像処理回路27に送信されている。
【0094】

画像処理回路27は、その倍率値が所定の値(閾値)より低い場合には(ST13;YES)、診断用画像に対して、データベース46に記録された画像処理条件Aに基づき画像処理を施す(ST14)。
【0095】
画像処理回路27は、その倍率値が所定の値(閾値)より高い場合には(ST13;NO)、診断用画像に対して、データベース46に記録された画像処理条件Bに基づき画像処理を施す(ST15)。
【0096】
なお、画像処理回路27が行う画像処理条件に基づく画像処理は、信号処理回路(C)33でおこなってもよい。
【0097】
倍率値が閾値より低い場合には、生体粘膜の正常部位と生体粘膜の異常部位(例えば、癌、胃潰瘍等)の判別が目的となるため、遠景まで明るい、微細な色調の変化を強調する、といった画像処理条件を設定することが好ましい。一方、倍率値が閾値より高い場合には、異常の疑いがある部位の詳細な状態を観察することが必要となり微細な血管を強調する、粘膜の赤色を低減させる、画像処理条件が好まれるであろうから、以下のように画像処理条件を設定することが好ましい。
【0098】
例えば、画像処理回路27は、所定の値より拡大する倍率値が低い(倍率が等倍を含む)場合、画像処理条件Aとして、図9に示すように、RGB値を、Rは520nm、Gは500nm、Bは405nmになるように表示設定する。更に、画像処理条件Aは、上記表示設定に加え、図10に示すように、明るさ(明度強調処理)補正量を強く設定し、コントラスト(色階調処理)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、シャープネス(構造強調処理)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定する。
【0099】
また、画像処理回路27は、所定の値より縮小する倍率値が低い(倍率が等倍を含む)場合、画像処理条件Aとして、RGB値を、Rは525nm、Gは495nm、Bは495nmになるように表示設定する。更に、画像処理条件Bは、上記表示設定に加え、図10に示すように、明るさ(明度強調処理)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、コントラスト(色階調処理)補正量を強く設定し、シャープネス(構造強調処理)補正量を強く設定してもよい。
【0100】
一方、画像処理回路27は、所定の値より拡大する倍率値が高い場合、画像処理条件Bとして、図9に示すように、RGB値を、Rは525nm、Gは495nm、Bは495nmになるように表示設定する。更に、画像処理条件Bは、上記表示設定に加え、明るさ(明度強調処理)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、コントラスト(色階調処理)補正量を強く設定し、シャープネス(構造強調処理)補正量を強く設定する。
【0101】
また、画像処理回路27は、所定の値より縮小する倍率値が高い場合、画像処理条件Bとして、RGB値を、Rは520nm、Gは500nm、Bは405nmになるように表示設定する。更に、画像処理条件Aは、上記表示設定に加え、明るさ(明度強調処理)補正量を強く設定し、コントラスト(色階調処理)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定し、シャープネス(構造強調処理)補正量をノーマル(デフォルト値)に設定してもよい。
【0102】
モニタ34(表示部)は、画像処理条件Aまたは画像処理条件Bのいずれかに基づき画像処理を施された診断用画像を表示する(ST16)。
【0103】
画像処理条件Aと、画像処理条件Bは、現状の表示モードから通常画像表示モードまたは診断用画像モードのいずれかに変更する表示設定を有するものであってもよい。所定の値より拡大する倍率値が高い場合、通常画像表示モードから診断用表示モードに自動変更することを可能とする。また、その逆に表示モードを自動変更してもよい。
【0104】
また、所定の値より縮小する倍率値が高い場合、通常画像表示モードから診断用表示モードに自動変更することを可能とする。また、その逆に表示モードを自動変更してもよい。
【0105】
なお、入力部41は、キーボード等を用いた読影者の入力により上記閾値を変更するものであってもよい。例えば、閾値を20倍に変更すると、等倍から20倍の倍率値の際に、上記画像処理条件Aを通常画像または診断用画像に施すことになる。一方、20倍の倍率値以上の際、上記画像処理条件Bを通常画像または診断用画像に施すことになる。
【0106】
なお、データベース46は、画像処理条件A、Bの他に異なる画像処理条件を複数記録しておいてもよい。
【0107】
また、スイッチ21や、フットスイッチや、モニタ34にタッチパネル機能を備えたフロントパネルスイッチを押圧することにより、上記画像処理条件A、Bの他に異なる画像処理条件を順次切替ることができる。それにより、モニタ34(表示部)は、画像処理条件Aまたは画像処理条件Bのいずれかに基づき画像処理を施された通常画像または診断用画像を表示した後に(例えば、ST6、ST16)、切替えた画像処理条件により画像処理が施された通常画像または診断用画像を表示することができる。
【0108】
また、部位認識技術を応用し、部位毎に上記画像処理条件を切替え、切替えた画像処理条件により画像処理が施された通常画像または診断用画像を表示してもよい。
【0109】
この部位認識技術として、例えば、AdaBoost、サポートベクターマシン(SVM)、適合ベクターマシン(Relevance Vector Machine; RVM)、人工ニューラルネットワーク(ANN)等を用いた機械学習によって得られる判別器を用いた方法や、テンプレートマッチング、固有画像との比較処理等が挙げられる。
【0110】
データベース46は、所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件を予め記憶しているものであってもよい。画像処理回路27が、上述のように閾値により画像処理条件を決定するのではなく、倍率値を受信し、その倍率値に対応する、データベース46に記憶された複数の画像処理条件を決定することを可能とする。
【0111】
以上の説明で明らかなように、本実施形態においては、ズーム処理を行う指示に応答して、通常画像または診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行い、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施し、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示することにより、読影者に対して、ズーム処理を行った画像上の対象組織が、病変等であるか否かを判別しやすい通常画像または診断用画像を提供することができる。
【0112】
また、本実施形態においては、所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件を予め記憶しているデータベース46を更に備え、画像処理回路27が、データベース46に記憶された所定の倍率値毎に対応する複数の画像処理条件に基づき画像処理を施すことにより、読影者が煩雑な操作をすることなく、読影者に対して、ズーム処理を行った組織が、病変等であるか否かを正確に判別しやすい通常画像または診断用画像を提供することができる。
【0113】
更に、本実施形態においては、読影者が診断用画像の色のバランスを自由に設定することができ、かつ診断用画像の明るさを自動的に通常画像の明るさと揃えることができるため、通常画像と診断用画像とをモニタ34へ同時に表示した場合であっても、読影者の違和感が少なくなる。
【0114】
なお、上記実施形態においては、1フィールドに関する通常カラー画像あるいは診断用画像のY信号の平均値を用いて輝度調整を行っているが、このような平均値に限らず、Y信号の最大値や、さらには1フィールド内の特定の部分領域に関するY信号の平均値や最大値等に基づいて輝度調整を行うようにしてもよい。
【0115】
また、本実施形態においては、400nmから700nmの波長域を61の波長域に分割して選択できるようにしてあるが、波長域λ1,λ2,λ3として、赤外域を含めた波長域、あるいは赤外域のみの波長セットを選択することにより、可視光域のカットフィルタを用いることなく、従来において赤外線を照射して得られる画像に近似した診断用画像を得ることができる。また従来の内視鏡では、励起光照射により癌組織等から発せられる蛍光を撮影することが行われるが、上記λ1,λ2,λ3の波長セットとして、蛍光波長に合わせたものを選択することにより、蛍光を発する部分の診断用画像を形成することができ、この場合は、励起光のカットフィルタが不要となる利点がある。
【0116】
さらに、従来の内視鏡では、被観察体にインディゴやピオクタニン等の色素散布を行い、色素散布によって着色した組織を撮像することが行われているが、上記λ1,λ2,λ3の波長セットとして、色素散布によって着色する組織が描出できる波長域を選択することにより、色素散布をすることなく、色素散布時の画像と同等の診断用画像を得ることもできる。
【0117】
なお、本実施形態においては、擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’を各々Rs,Gs,Bsの3色画像信号として第2色変換回路32に入力する際には、擬似色分光画像信号λ1t’,λ2t’,λ3t’を、その順番のままRs,Gs,Bs3色画像信号へ割り当てるが、使用者が特殊な色表示を望む場合等には、順番を変更して割り当ててもよい。このような場合には、例えば血管の部分が黄色や青色に表示されるような診断用画像が表示される。
【0118】
なお、本実施形態においては、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された二つの波長(例えば、390〜450nm/530〜550nm)の光を照射することにより、粘膜表層の毛細血管、粘膜微細模様を強調する手法(例えば、Narrow Band Imaging-NBl)に得られる診断用画像を適用するものであってもよい。
【0119】
なお、本実施形態においては、ズーム処理は光学ズームによって行うものを説明したが、スイッチ21(ズーム指示受付部)により受け付けた電子ズームを行う指示に応答して、所定の倍率値にて、通常画像または診断用画像に対して、信号処理回路(B)26(ズーミング部)または信号処理回路(C)33(ズーミング部)による電子ズームを行うことにより、画像処理回路27が、所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、通常画像または診断用画像に対して、変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施し、モニタ34が、画像処理を施された通常画像または画像処理を施された診断用画像を表示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子内視鏡装置の構成を示すブロック図
【図2】分光画像の波長域の例を示す図
【図3】モニタに表示される画像の模式図
【図4】分光画像の波長域の一例を、原色型CCDの分光感度特性と共に示すグラフ
【図5】分光画像の波長域の一例を、生体の反射スペクトルと共に示すグラフ
【図6】本発明の通常画像を用いた処理の流れを示すフローチャート
【図7】通常画像における画像処理条件
【図8】本発明の診断用画像を用いた処理の流れを示すフローチャート
【図9】診断用画像における画像処理条件1
【図10】診断用画像における画像処理条件2
【符号の説明】
【0121】
5 レンズ機構部
6 ズーム駆動回路
10 スコープ部
12 プロセッサ部
14 光源装置
14a ランプ
14b 点灯駆動回路
14c 絞り
14d 絞り駆動部
15 CCD
17 CDS/AGC回路
20,35 マイコン
21 スイッチ
22 照明窓
23 ライトガイド
24 DSP
25 信号処理回路(A)
26 信号処理回路(B)
27 画像処理回路
28 第1色変換回路
29 第1色空間変換処理回路
30 第2色空間変換処理回路
31 輝度調整回路
32 第2色変換回路
33 信号処理回路(C)
34 モニタ
41 入力部
46 データベース
47 画面
51 波長域表示小画面
52 ゲイン表示小画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体粘膜を表す通常画像と、前記生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成する電子内視鏡装置であって、
前記通常画像または前記診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付けることが可能なズーム指示受付部と、
前記ズーム指示受付部により受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、前記所定の倍率値にてズーム処理を行うズーミング部と、
前記所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、前記通常画像または前記診断用画像に対して、前記変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施す画像処理部と、
前記画像処理を施された通常画像または前記画像処理を施された診断用画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
前記所定の倍率値毎に対応する前記複数の画像処理条件を予め記憶しているデータベース部を更に備え、
前記画像処理部が、前記データベース部に記憶された前記所定の倍率値毎に対応する前記複数の画像処理条件に基づき画像処理を施すものであることを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記複数の画像処理条件は、明度強調処理、構造強調処理、色階調処理の少なくともいずれか2つ以上の補正量に関するものであることを特徴とする請求項1または2記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記複数の画像処理条件は、更に前記通常画像または前記診断用画像のいずれか一方の画像の表示設定を有することを特徴とする請求項3記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
生体粘膜を表す通常画像と、前記生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成する電子内視鏡表示方法であって、
前記通常画像または前記診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付け、
前記受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、前記所定の倍率値にてズーム処理を行い、
前記所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、前記通常画像または前記診断用画像に対して、前記変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施し、
前記画像処理を施された通常画像または前記画像処理を施された診断用画像を表示することを特徴とする電子内視鏡表示方法。
【請求項6】
生体粘膜を表す通常画像と、前記生体粘膜を表す狭帯域分光画像である診断用画像とを生成する電子内視鏡表示プログラムであって、
前記通常画像または前記診断用画像に対して、所定の倍率値にてズーム処理を行う指示を受け付ける機能と、
前記受け付けたズーム処理を行う指示に応答して、前記所定の倍率値にてズーム処理を行う機能と、
前記所定の倍率値に応じて複数の画像処理条件を変更し、前記通常画像または前記診断用画像に対して、前記変更された複数の画像処理条件に基づき画像処理を施す機能と、
前記画像処理を施された通常画像または前記画像処理を施された診断用画像を表示する機能とをコンピュータに実現させるための電子内視鏡表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−75368(P2010−75368A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245994(P2008−245994)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】