説明

電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂

【目的】負荷電性トナーと接触する電子写真機能部品の表面に使用することで、電子写真機能部品の正帯電性をより高くし、良好な画像を与えることができる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供する。
【解決手段】アミノ基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、該正荷電制御樹脂が、所定の化学式で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー及びアミノ基含有モノマーを重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であり、表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電子写真法において静荷電潜像を可視像とする際に用いる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式電子写真法においては、ブレード、ローラーなどの電子写真機能部品の加圧などにより、トナーと電子写真機能部品表面の摩擦力によってトナーを荷電させてトナーを担持させている。したがって、電子写真機能部品の表面層としては、トナーを正荷電させたい場合には負荷電性の材料を、また、トナーを負荷電させたい場合には正荷電性の材料を選定する必要がある。前者としてはフッ素系樹脂など、後者としてはナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂などが提案されている。
【0003】
一方で、電子写真機能部品には、ニップ幅の向上、トナーストレスなどを削減するために、ゴム状材料を主基材層とした柔軟なものを用いることが好ましい。しかしながら、柔軟な主基材層を用いた場合、トナーと電子写真機能部品表面の摩擦力だけでは荷電量が少なく、上記のような従来から提案されているフッ素系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂を用いただけでは良好な画像を得ることが困難である場合もある。
【0004】
前記課題を解決するために、積極的に電子写真機能部品表面層の荷電性の改質を行うことを考え、トナーと接触する電子写真機能部品に荷電制御剤を添加する手段がとられている。最近、荷電制御剤として、有機溶剤に可溶で現像ローラーや現像スリーブに塗工可能な荷電制御樹脂を用いる方法が提案されており、現像スリーブに用いる方法(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3)が報告されている。これらはいずれも主として、アミノ基含有モノマーとメタクリル酸メチルとの共重合体を正荷電制御樹脂として使用している。
【0005】
上記の文献に記載された正荷電制御樹脂を電子写真機能部品に適用しても、表面層の荷電性はある程度改善できると期待されている。しかしながら、実際にアミノ基を含む正荷電制御樹脂が機能するためには、正荷電性を呈するアミノ基が正荷電制御樹脂含有樹脂の最表面に存在する必要がある。従って、正荷電制御樹脂含有樹脂の最表面におけるアミノ基の存在量を検出する手段を確立する必要があった。
【0006】
さらには、アミノ基を含む正荷電制御樹脂を添加した際、多量に添加すると樹脂本来が持つ諸特性が変化し、電子写真機能部品として使用する際に弊害を生じる場合がある。樹脂本来の物理特性を変化させないよう、少量の添加でアミノ基が最表面に存在できるように正荷電制御樹脂を設計する必要があった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−242033号公報
【特許文献2】特開2002−244426号公報
【特許文献3】特開2003−005507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、負荷電性トナーと接触する電子写真機能部品の表面に使用するにあたり、実際に電子写真機能部品を作製して評価することなく、良好な画像を与えることができる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供することにある。さらには、正荷電性を呈するアミノ基が電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂の最表面に存在していることを検証することにある。具体的には、正荷電性を呈するアミノ基の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂の最表面における存在量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(以下TOF−SIMSと称す)で測定することで、良好な画像を与えるに足る一定基準以上の正帯電性を呈する電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供することにある。さらには、樹脂に添加した際、樹脂本来の物理特性を変化させないよう、少量の添加でアミノ基が最表面に存在できるような電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アミノ基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、
前記正荷電制御樹脂が、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び式(2)または(3)で示されるアミノ基含有モノマーを重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であり、表面をTOF−SIMSで測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%以上であることを特徴とする電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂に関する。
【0010】
【化1】

(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基、R2、R2a、R2bは各々水素原子またはメチル基を表す。R3a、R3bは炭素数1〜7の二価の有機基、R4a、R4b、R5a及びR5bは、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【0011】
さらに本発明は、アミノ基を含む正荷電制御樹脂、ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られるウレタン樹脂からなる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、
前記正荷電制御樹脂が、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び式(2)または(3)で示されるアミノ基含有モノマーを共重合成分として重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であり、表面をTOF−SIMSで測定した際に、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.05以上であることを特徴とする電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂に関する。
【0012】
【化2】

(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基、R2、R2a、R2bは各々水素原子またはメチル基を表す。R3a、R3bは炭素数1〜7の二価の有機基、R4a、R4b、R5a及びR5bは、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【0013】
さらに本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、前記ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られるウレタン樹脂の質量に対する前記正荷電制御樹脂の質量の比率をA、TOF−SIMSで測定した樹脂表面のウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率をBとしたときに、B/Aが5以上であることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、前記正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(CH32で、TOF−SIMSで測定した樹脂表面のアミノ基に由来する最大イオンが[C24N]、[C38N]、[C410N]のいずれかであることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、前記正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(C252で、TOF−SIMSで測定した樹脂表面のアミノ基に由来する最大イオンが[C24N]、[C25N]、[C36N]、[C410N]、[C512N]、[C614N]のいずれかであることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、前記TOF−SIMSで測定した樹脂表面のウレタン樹脂に由来する最大イオンが[C35]、[C37]、[C23O]、[C25O]、[C37O]、[C47]、[C37O]、[C49O]のいずれかであることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、前記正荷電制御樹脂が、式(4)で示される水酸基含有モノマーを共重合成分として重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であることを特徴とする。
【0018】
【化3】

(式中、R2dは水素原子またはメチル基を、R3dは炭素数1〜7の二価の有機基を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明により、正荷電性を呈するアミノ基の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂の最表面における存在量を、TOF−SIMSで測定することで、良好な画像を与えるに足る一定基準以上の正帯電性を呈する電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供することができた。さらには実際に電子写真機能部品を作製して評価することなく、良好な画像を与えることができる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供する事が出来た。さらには、樹脂に添加した際、樹脂本来の物理特性を変化させないよう、少量の添加でアミノ基が最表面に存在できるような電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者の検討によれば、アミノ基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、該正荷電制御樹脂が、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び式(2)または(3)で示されるアミノ基含有モノマーを重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であることを特徴とする電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を電子写真機能部品の表面に用いることで、表面の正帯電性をより高くし、良好な画像を与えることができる電子写真機能部品を提供することが可能である。さらには前記正荷電制御樹脂を用いることで、少量の添加でアミノ基が最表面に存在するため、樹脂本来の物理特性を変化させずに電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂として使用することができる。
【0021】
【化4】

(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基、R2、R2a、R2bは各々水素原子またはメチル基を表す。R3a、R3bは炭素数1〜7の二価の有機基、R4a、R4b、R5a及びR5bは、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【0022】
式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が例示される。なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートあるいはアクリレートを意味する(以下、同様)。これらのモノマーは単独あるいは2種以上併用して使用できる。
【0023】
式(2)で示されるアミノ基含有モノマーの例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリレート等が例示される。これらのモノマーは単独あるいは2種以上併用して使用できる。
【0024】
式(3)で示されるアミノ基含有モノマーの例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド等が例示される。「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドあるいはアクリルアミドを意味する(以下、同様)。これらのモノマーは単独あるいは2種以上併用して使用できる。
【0025】
なお、式(2)または(3)で示されるアミノ基を有するモノマーとしては、式(2)で示されるアミノ基を有するモノマーのみを用いることもでき、式(3)で示されるアミノ基を有するモノマーのみを用いることもできる。また、式(2)で示されるアミノ基を有するモノマーと式(3)で示されるアミノ基を有するモノマーとを併用することもできる。
【0026】
本発明における正荷電制御樹脂としては、また、前記共重合体からなる正荷電制御樹脂の共重合成分として式(4)で示される水酸基含有モノマーを追加することが出来る。
【0027】
【化5】

(式中、R2dは水素原子またはメチル基を、R3dは炭素数1〜7の二価の有機基を表す。)
【0028】
本発明では、式(4)で示される水酸基含有モノマーとしては、具体的には例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が例示される。2種以上のモノマーを共重合することもできる。
【0029】
本発明における正荷電制御樹脂は、上述のような成分と、それと共重合可能なモノマーとを共重合させることで得られる。共重合可能なモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン等が挙げられ、帯電量を低下させない範囲で用いればよい。共重合可能なモノマーは1種類であっても2種類以上用いても良い。
【0030】
本発明における正荷電制御樹脂を得るための重合方法としては、特に限定されるものではないが、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましく、溶媒としては、特に限定されるものではないが、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、イソプロピルアルコール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等が用いられる。また、溶媒とモノマーの比は、特に限定されるものではないが、溶媒100質量部に対してモノマー30〜400質量部で行うのが好ましい。
【0031】
本発明における正荷電制御樹脂を重合するために使用する重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられ、これらが単独あるいは併用して使用できる。
【0032】
重合開始剤はモノマー100質量部に対し、0.05〜30質量部(好ましくは0.1〜15質量部)の濃度で用いられる。また、反応温度としては、特に限定するものではなく、使用する溶媒、開始剤、モノマーに応じて設定することができるが、40℃〜150℃で行うのが好ましい。
【0033】
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、正荷電制御樹脂と共に使用する樹脂としては公知のものがすべて使用可能であるが、例えば、スチレン樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、アクリル樹脂((メタ)アクリル酸エステルを含む単重合体又は共重合体)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フエノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等があるが、ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られる樹脂(以下ウレタン樹脂と称す)が実施上特に好ましい樹脂としては用いられる。
【0034】
本発明に使用することのできるポリオール成分としては、ポリウレタンの材料としての一般的なポリオール成分を使用することが出来る。例えば、ポリエーテルポリオール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、テトラヒドロフラン(THF)−アルキレンオキサイド共重合体ポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、フォスフェート系ポリオール、ハロゲン含有ポリオール、アジペート系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられ、これらが単独あるいは併用して使用できる。
【0035】
本発明に用いることのできるイソシアネート成分としては、ポリウレタンの材料としての一般的なイソシアネート成分を用いることが出来る。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製−MDI(ポリメリックMDI)、および変性MDIだけでなく、特殊なイソシアネートを用いても差し支えない。特殊なイソシアネートしては、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添−XDI、水添−MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオフェスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらも好適に用いることができる。また、イソシアネートをブロック剤でマスクした構造のブロック型イソシアネートを用いることもできる。ブロック型イソシアネートは、常温では反応せず、ブロック剤が解離する温度まで加熱すると、イソシアネート基が再生する。
【0036】
本発明に用いることのできるイソシアネート成分としては、さらにイソシアネート末端プレポリマーを用いることが出来る。イソシアネート末端プレポリマーの製造方法としては、通常の製造条件で前記イソシアネート成分と前記ポリオール成分を反応させることで得られる。
【0037】
前記正荷電制御樹脂、ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化して本発明の電子写真機能部品用荷電制御剤含有樹脂を得る際、必要に応じて触媒や溶媒を用いることが出来る。触媒は一般的にウレタン化に用いる触媒、例えばアミン化合物等を用いることが出来る。溶媒も特に限定されるものではなく、用途に応じて使用することが出来る。
【0038】
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂には、前記正荷電制御樹脂、ポリオール成分、イソシアネート成分以外に、他の成分を添加することが出来る。添加成分は前記組成物、またはその溶液に溶解、または分散させることで添加できる。添加成分としては特に制限されるものではなく、例えばカーボンブラックや金属酸化物等の導電剤や各種安定剤等を使用することができる。
【0039】
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂表面をTOF−SIMSで測定した際に検出されるアミノ基に由来する最大イオンは、使用した正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基の構造に起因する。即ち、正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(CH32であれば[C24N]、[C38N]、[C410N]のいずれかが、N(C252であれば[C25N]、[C24N]、[C36N]、[C410N]、[C512N]、[C614N]のいずれかが最大イオンとして検出される。
【0040】
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂が正荷電制御樹脂を含有するウレタン樹脂である場合、樹脂表面をTOF−SIMSで測定した際に検出されるウレタン樹脂に由来するイオンは、ウレタン樹脂の構造に起因するが、[C23]、[C35]、[C37]、[C23O]、[C25O]、[C37O]、[C47]、[C37O]、[C49O]のいずれか、最大イオンとして検出されることが多い。
【0041】
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、TOF−SIMSで測定した樹脂表面の分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%以上であることを特徴とする。前記最大イオン強度がトータルイオン強度の0.5%未満であると、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂最表面のアミノ基の存在量が不足し、実際に電子写真機能部品に用いた場合に正帯電性が不足し、良好な画像を与えることが出来ないことがある。
【0042】
本発明の正荷電制御樹脂含有樹脂が、正荷電制御樹脂、ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られるウレタン樹脂である場合は、TOF−SIMSで測定した樹脂表面のウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.05以上であることを特徴とする。比率が0.05未満であると、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂最表面のアミノ基の存在量が不足し、実際に電子写真機能部品に用いた場合に正帯電性が不足し、良好な画像を与えることが出来ないことがある。
【0043】
さらに本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂が、正荷電制御樹脂、ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られるウレタン樹脂である場合は、ウレタン樹脂の質量に対する正荷電制御樹脂の質量の比率をA、TOF−SIMSで測定した樹脂表面のウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率をBとしたときに、B/Aが5以上であることを特徴とする。B/Aが5未満であると、アミノ基が最表面に存在できるように正荷電制御樹脂を多量に添加することになり、その結果として樹脂本来が持つ諸特性が変化し、電子写真機能部品として使用する際に弊害を生じる場合がある。
【0044】
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂は、トナーと接触するブレード、ローラー等、電子写真機能部品の表面層の荷電を改質することを目的としている。本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂をブレード、ローラー等の電子写真機能部品の表面に形成する方法としては特に制限されるものではなく、成型や塗工などの方法を用いることが出来る。
【実施例】
【0045】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。本発明における正荷電制御樹脂の共重合成分として、実施例記載の(メタ)アクリル酸エステルモノマーA1〜A5の構造式を(5)〜(9)に、アミノ基含有モノマーB1〜B3の構造式を(10)〜(12)、水酸基含有モノマーC1〜C2の構造式を(13)〜(14)に示す。
【0046】
【化6】

【0047】
<正荷電制御樹脂の製造>
〔製造例1〕
正荷電制御樹脂CCR1の製造
撹拌機、冷却器、温度計および窒素導入管を付した4つ口セパラブルフラスコに、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして2−エチルヘキシルメタクリレート(A2)15g、アミノ基含有モノマーとしてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(B1)35g、溶媒としてトルエン37.5gおよびエタノール12.5g、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を2.0g仕込み、撹拌し、窒素下還流状態で8時間溶液重合した。その後、減圧乾燥することで正荷電制御樹脂CCR1を得た。
【0048】
得られたCCR1のアミノ価、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)をそれぞれ全自動滴定装置(京都電子工業(株)製AT−510(商品名))、GPC測定(装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC(商品名)、カラム:昭和電工(株)製KF−805L(商品名)×2本)、DSC測定(セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200(商品名))により測定した。結果を表1に示す。
【0049】
〔製造例2〜6〕
正荷電制御樹脂CCR2〜6の製造
(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アミノ基含有モノマー、水酸基含有モノマーを表1に従って使用した以外は実施例1と同様にして、CCR2〜6を得た。得られたCCR2〜6のアミノ価、Mw、Tgをそれぞれ実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
[実施例1]
電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂1の製造
ポリオール成分(商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン工業社製)を固形分濃度10%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、正荷電制御樹脂として製造例1で製造したCCR1を、ウレタン樹脂の質量(ポリオール成分の固形分とイソシアネート成分の固形分の合計)に対するCCR1の質量の比率(比率A)が0.05となるよう添加した。さらに導電剤としてカーボンブラックをウレタン樹脂成分100質量部に対し(商品名:MA−100、三菱化学(株)製)を30質量部、表面粗し材として平均粒子径10μmのウレタン粒子(商品名:アートパールCF600T、根上工業(株)製)をウレタン樹脂成分100質量部に対し2質量部添加した。各成分が十分に分散したものに、イソシアネート成分(変性TDI、商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)をポリオール成分100質量部に対し10質量部添加し、撹拌し、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂1製造用の塗液を作製した。その塗液をAl板に均一に塗り、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで2時間硬化し電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂1(樹脂1と表す)を得た。
【0052】
[実施例2〜8、比較例1]
電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂2〜8及び9の製造
表2に従って正荷電制御樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂2〜8及び9製造用の塗液を作製し、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂2〜8及び9(各々を樹脂2〜8、9と表す)を得た。
【0053】
[比較例2]
CCR1を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂10製造用塗液を作製し、電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂10(樹脂10と表す)を得た。
【0054】
<電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂の評価>
[TOF−SIMSによる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂の表面分析]
上記実施例1〜8及び比較例1、2で得られた樹脂1〜8及び9、10をAl板と共に一辺約5mmの大きさに切り出し樹脂1〜8及び9、10のTOF−SIMS測定用試料板を作製した。得られた試料板の表面分析をTOF−SIMSで行った。測定条件を以下に示す。
・測定機種:アルバックファイ社製TRIFT II
・一次イオン種 69Ga+
・一次イオン電流(DC) 600[pA]
・一次イオンエネルギー 15[kV]
・試料電位 +3.2[kV]
・二次イオン検出モード Positive
・測定真空度 1×10-7[Pa]
・測定領域 100μm×100μm
・測定積算時間 300秒
・検出質量範囲 1.5〜1850amu
【0055】
得られたマススペクトルを図1〜10に示す。
【0056】
(1)樹脂1〜10の分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率
実施例1の樹脂1のマススペクトルを解析したところ、アミノ基含有モノマーB1に含まれるジメチルアミノ基に由来する最大イオンとして[C38N]がm/z=58に観測された(図1−2のm/z=58〜59付近の拡大図を参照願う)。
【0057】
実施例2〜6、8、比較例1の樹脂2〜6及び樹脂8、9は、いずれもアミノ基としてジメチルアミノ基を含有し、アミノ基に由来する最大イオンとして[C38N]がm/z=58に観測された(図2−2〜6−2、図8−2、9−2のm/z=58〜59付近の拡大図をそれぞれ参照願う。)。
【0058】
上記樹脂1〜6及び8、9それぞれの分子量1850までのトータルイオン強度及び[C38N]のイオン強度と分子量1850までのトータルイオン強度に対する百分率を表2に示す。
【0059】
実施例7の樹脂7のマススペクトルを解析したところ、アミノ基含有モノマーB3のジエチルアミノ基に由来する最大イオンとして[C512N]がm/z=86に観測された(図7−2のm/z=86付近の拡大図を参照願う。)。
【0060】
実施例7の樹脂7の分子量1850までのトータルイオン強度及び[C512N]のイオン強度と分子量1850までのトータルイオン強度に対する百分率を表2に示す。
【0061】
(2)樹脂表面の、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率(比率B)
正荷電制御樹脂を含有しない比較例2の樹脂10のマススペクトルを解析したところ、ウレタン樹脂に由来する最大イオンとして[C37O]がm/z=59に観測された(図10−2のm/z=58〜59付近の拡大図を参照願う。)。また、上記実施例、比較例1においても、同様に、ウレタン樹脂に由来する最大イオンとして[C37O]がm/z=59に観測された(図2−2〜6−2、図8−2、9−2のm/z=58〜59付近の拡大図をそれぞれ参照願う。実施例7の樹脂7については、図7−3に示したm/z=58〜59付近の拡大図を参照願う。)。
【0062】
前記アミノ基に由来する最大イオン強度、即ち[C38N]又は[C512N]のイオン強度と、ウレタン樹脂に由来する最大イオンとして[C37O]に対する比率(比率B)を表2に示す。
【0063】
[帯電量の測定]
前記樹脂1〜10製造用の塗料を傾斜帯電量測定用のSUS板にそれぞれ均一に塗り、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで2時間硬化することで樹脂1〜10の帯電量測定用試料板を作製した。
【0064】
得られた帯電量測定用試料板の帯電量の測定は、N/N(22℃、55%RH)環境下、カスケード式表面帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製)〔図11〕の装置を使用して行った。図11において、1は基準粉体投入口、2は傾斜板(サンプル台)、3は基準粉体、4は受け皿、5は絶縁版、6はエレクトロメーター、7はメーター接続端子である。
【0065】
まず受け皿4の質量を秤量し、W1〔g〕とした。傾斜勾配60度の傾斜板2に帯電量測定用試料板を固定し、基準粉体投入口1から基準粉体3としてパウダーテック社製MF−60(商品名)を20秒間落下させた。基準粉体落下後、測定用試料板の総帯電量をエレクトロメーター6で測定し、Q〔nC〕とした。また、基準粉体落下後の受け皿4全体の質量を秤量し、W2〔g〕とした。帯電量Q/Wは次式によって計算した。
帯電量Q/W〔nC/g〕=Q/(W2−W1
【0066】
1サンプルにつき3点とり、平均値を帯電量とした。結果を表2に示す。
【0067】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
前記樹脂1〜10製造用の塗液をフッ素樹脂シャーレ上にキャストし、2時間乾燥後、140℃のオーブンで2時間硬化した。得られた試料膜を用い動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製DMS6100(商品名))で測定し、tanδのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例1〜7の樹脂1〜7においては、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%以上であり、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.05以上であり、なおかつB/Aが5以上である。正荷電制御樹脂を含有しない比較例2の樹脂10と比較して、帯電量が増加する一方でTgは殆ど変化しない。少量の正荷電制御樹脂の添加でアミノ基が最表面に存在するため、樹脂本来の物理特性を変化させずに帯電量を増加させることが出来た。
【0070】
実施例8の樹脂8においては、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%以上であり、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.05以上であるが、B/Aが5未満である。正荷電制御樹脂を含有しない比較例2と比較して、帯電量が増加するもののTgが上昇している。帯電量を増加させるために正荷電制御樹脂を多量に添加したため、樹脂本来の物理特性が変化してしまった。
【0071】
比較例1の樹脂9では、実施例8の樹脂8と同じ正荷電制御樹脂を少量添加しているが、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%未満であり、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.05未満である。アミノ基が最表面に存在せず、帯電量が増加しなかった。
【0072】
[現像ローラーによる評価]
本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を実際に、電子写真機能部品に使用せしめた場合における評価の例として、本発明に係る電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を用いた現像ローラーを画像形成装置実機に適用して評価した例を示す。ここでは現像ローラーについての評価についての説明であるが、帯電ローラーあるいは転写ローラー等他のローラータイプの部品や、現像ブレード、クリーニングブレードに対しても適用可能である。
【0073】
図12は本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂を適用した現像ローラーの一つの実施形態の概略を示すものである。図12において(b)は現像ローラー114の軸線に沿った概略断面図であり、(a)は現像ローラー114を軸方向からみた図である。この図に示す形態の現像ローラー114は、芯金114a上に弾性層114bを形成し、その外周に表面層114cを設けたもので、表面層114cが本発明の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂から形成されている。
【0074】
(1)評価例1〜8、比較評価例1〜2 現像ローラー1〜10の製造
下記の要領で、表面層を電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂で形成した現像ローラー1〜9及び正荷電制御樹脂を含有しない樹脂で形成した現像ローラー10を作製した。
【0075】
外径8mmの芯金(SUM製)を内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、弾性層として液状導電性シリコーンゴム(東レダウシリコーン社製、AskerC硬度35度、体積固有抵抗10×109Ωcm)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間2次加硫を行い、厚み4mmの弾性層を芯金の周囲に形成した。ついで前記樹脂1〜10製造用の塗液をそれぞれ、先に形成した弾性層の上にディッピングにより膜厚20μmとなるように塗布し、80℃のオーブンで15分乾燥後、140℃のオーブンで2時間硬化し、樹脂1〜10からなる表面層を有する現像ローラー1〜10を得た。
【0076】
(2)現像ローラー(1〜10)の評価
上記で得られた現像ローラー(1〜10)をそれぞれ、負帯電性の非磁性トナーからなる一成分現像剤を使用する評価用レーザービームプリンター(電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザプリンタであり、上記現像ローラー(1〜10)を装着することができるように改造されている)に取付け、32.5℃×80%RHの環境下で所定の画像(文字パターン画像)を16000枚、連続的に印刷した後、ドラム上に付着しているトナーのカブリ量指数を評価した。
【0077】
カブリ量指数は、感光体上に付着したトナーをテープではがし取り、反射濃度計(マクベス社製スペクトロアイ(商品名))にて基準に対する反射率の低下量(%)を測定し、かぶり量とした。比較評価例2の現像ローラー10のかぶり量をかぶり指数100として、評価例1〜7、比較評価例1、2のかぶり量から各々のかぶり指数を求めた。
【0078】
結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1−1】樹脂1のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図1−2】図1−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図2−1】樹脂2のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図2−2】図2−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図3−1】樹脂3のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図3−2】図3−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図4−1】樹脂4のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図4−2】図4−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図5−1】樹脂5のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図5−2】図5−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図6−1】樹脂6のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図6−2】図6−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図7−1】樹脂7のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図7−2】図7−1のm/z=86付近の拡大図である。
【図7−3】図7−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図8−1】樹脂8のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図8−2】図8−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図9−1】樹脂9のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図9−2】図9−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図10−1】樹脂10のTOF−SIMSマススペクトルである。
【図10−2】図10−1のm/z=58〜59付近の拡大図である。
【図11】傾斜帯電量測定に利用した装置の概略図である。
【図12】本発明の現像ローラーの基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 基準粉体投入口
2 傾斜板(サンプル台)
3 基準粉
4 受け皿
5 絶縁版
6 エレクトロメーター
7 メーター接続端子
114 現像ローラー
114a 芯金
114b 弾性層
114c 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を含む正荷電制御樹脂を含有する電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、
前記正荷電制御樹脂が、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び式(2)または(3)で示されるアミノ基含有モノマーを重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であり、表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、分子量1850までのトータルイオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の百分率が0.5%以上であることを特徴とする電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【化1】

(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基、R2、R2a、R2bは各々水素原子またはメチル基を表す。R3a、R3bは炭素数1〜7の二価の有機基、R4a、R4b、R5a及びR5bは、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【請求項2】
前記正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(CH32で、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した樹脂表面のアミノ基に由来する最大イオンが[C24N]、[C38N]、[C410N]のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【請求項3】
前記正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(C252で、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した樹脂表面のアミノ基に由来する最大イオンが[C24N]、[C25N]、[C36N]、[C410N]、[C512N]、[C614N]のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【請求項4】
前記正荷電制御樹脂が、式(4)で示される水酸基含有モノマーを共重合成分として重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【化2】

(式中、R2cは水素原子またはメチル基を、R3cは炭素数1〜7の二価の有機基を表す。)
【請求項5】
アミノ基を含む正荷電制御樹脂、ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られるウレタン樹脂からなる電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂において、
前記正荷電制御樹脂が、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び式(2)または(3)で示されるアミノ基含有モノマーを共重合成分として重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であり、表面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した際に、ウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率が0.05以上であることを特徴とする電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【化3】

(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基、R2、R2a、R2bは各々水素原子またはメチル基を表す。R3a、R3bは炭素数1〜7の二価の有機基、R4a、R4b、R5a及びR5bは、各々水素原子、炭素数1〜20の有機基、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した炭素数4〜20の環状構造、または、R4a及びR5a(又はR4b及びR5b)が化学的に結合した、酸素原子、窒素原子、イオウ原子の少なくとも一種を含む炭素数4〜19の環状構造を表す。)
【請求項6】
前記ポリオール成分、イソシアネート成分からなる組成物をウレタン化することで得られるウレタン樹脂の質量に対する前記正荷電制御樹脂の質量の比率をA、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した樹脂表面のウレタン樹脂に由来する最大イオン強度に対するアミノ基に由来する最大イオン強度の比率をBとしたときに、B/Aが5以上であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【請求項7】
前記正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(CH32で、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した樹脂表面のアミノ基に由来する最大イオンが[C24N]、[C38N]、[C410N]のいずれかであることを特徴とする請求項5又は6に記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【請求項8】
前記正荷電制御樹脂に含まれるアミノ基がN(C252で、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した樹脂表面のアミノ基に由来する最大イオンが[C24N]、[C25N]、[C36N]、[C410N]、[C512N]、[C614N]のいずれかであることを特徴とする請求項5又は6に記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【請求項9】
前記飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で測定した樹脂表面のウレタン樹脂に由来する最大イオンが[C35]、[C37]、[C23O]、[C25O]、[C37O]、[C47]、[C37O]、[C49O]のいずれかであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【請求項10】
前記正荷電制御樹脂が、式(4)で示される水酸基含有モノマーを共重合成分として重合した共重合体からなる正荷電制御樹脂であることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の電子写真機能部品用正荷電制御樹脂含有樹脂。
【化4】

(式中、R2cは水素原子またはメチル基を、R3cは炭素数1〜7の二価の有機基を表す。)

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−39629(P2007−39629A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358618(P2005−358618)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】