説明

電子写真現像用透明トナー、画像形成方法およびプロセスカートリッジ

【課題】優れた低温定着性と耐ホットオフセット性および保存安定性を両立し、精細かつ高光沢の画像形成が可能な電子写真現像用透明トナー、画像形成方法およびプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】トナー組成分として、結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂および滑剤を含有すると共に、前記トナーの粘弾性評価により得られ下記式(1)で算出される正接損失のピーク値が80〜160℃の範囲にあり、該正接損失のピーク値が3以上であり、且つ、式(1)に示す貯蔵弾性率(G’)の値が120〜160℃において1Pa以上、1×10Pa以下である透明トナーとし、これを用いて電子写真法により記録媒体上に画像を形成する。 損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンターあるいはファクシミリ等の電子写真プロセスに用いる電子写真現像用透明トナー、画像形成方法およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター、乾式静電複写機等の画像形成装置に用いられる電子写真法は、光導電性層などの像担持体表面を一様に帯電させ、次いでその像担持体表面を露光し、露光された部分の電荷を消散させることにより電気的な潜像を形成し、更に該潜像にトナーと呼ばれる電荷を持った微粉末等を付着することによって可視化させ、得られた可視像を転写紙等の記録媒体に転写した後、加熱、加圧などにより永久定着させるとともに、転写できずに像担持体表面に残った微粉末等を清掃する工程からなる。
【0003】
近年の画像形成装置では、トナー定着時の省エネルギー化の要求や高速で処理できる画像形成装置の要求が高まっており、トナー自体に低温で溶融する特性が求められている。 トナー特性において低温定着可能とした場合、トナーの溶融が促進されることから、高光沢が求められる透明トナーにあっては省エネルギーの観点だけでなく、最終画質に対する利点もあり特に好ましい。しかし、単にトナーの融点を下げて低温定着を可能にした場合、トナーの保存安定性や、二成分現像装置内でキャリアと攪拌された際のキャリア表面に対する付着(以後、”スペント”とも表記する)によるキャリアの帯電付与能力の劣化が懸念される。
【0004】
また、近年の画像形成装置では、高画質化の要求も大きく、写真画像等の画像の要求に対しては記録用紙等の被記録媒体表面に光沢性を付与することによって、鮮明な高光沢画像を提供できることが知られている。これらは、例えば、有彩色トナーのない非画像部に透明トナーを配置することにより、被記録媒体上の有彩色トナーのある部分との光沢差を無くしたり、被記録媒体上の全面に透明トナーを配置する方法などが用いられている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、光沢、非光沢画像の選択ができる定着処理系をオンラインでコンパクトに配置した画像形成装置が提案されており、例えば、有彩色トナーと透明トナー像が形成された被記録媒体を前記定着装置により加熱溶融し、冷却剥離することで被記録媒体全面を高光沢の画像とすることが記載されている(特許文献4参照)。上記特許文献1〜特許文献4の方法によれば被記録媒体全面で光沢差をなくし均一な光沢を提供することが可能である。
【0005】
一方、印刷分野においては、記録媒体の光沢を制御する方法として、UVニス印刷、ニス引き、PP貼り加工などが一般に行われ、ある特定の部分を高光沢とする、いわゆるスポットニスが行われる。この場合、通常のカラー印刷の後に部分的に高光沢とするための版を作成し、UVニス等を用いてスポット印刷することが行われている。この方法によると、スポットニスを施した部分は写真のように高光沢を得ることができ、スポットニスを施さない部分は低い光沢で、画像上の光沢差が大きく通常の印刷と比べ差別化が図れる。
しかしながら、オフセット印刷でこれを行うためには専用の版を用意する必要があり、また可変データには対応できないため、一定以上の印刷ロット枚数が必要になる。それに対して、レーザープリンター、乾式静電複写機等の画像形成装置に用いられる電子写真法により上記と同様のスポット印刷機能が実現できれば、印刷用の版が不要となり可変データにも対応することができる。
【0006】
電子写真方式で同一被記録媒体上で異なる光沢を形成する方法としては、トナーに用いる樹脂の数平均分子量により光沢性を制御する方法(特許文献5参照)や、有色トナーを定着した後、透明トナー像を形成し、定着温度を下げて光沢を下げる方法(特許文献6参照)、あるいは、1回目には光沢範囲を印字、定着し、2回目に非光沢範囲を印字、定着する方法(特許文献7参照)などが開示されている。しかしながら、これらの方法によれば同一被記録媒体上で異なる光沢を得ることは可能であるが、前記スポットニスで行われているような写真光沢に近いスポット高光沢は未だ実現できていない。
この問題を解決するため、例えば、特許文献8に記載されているように、結着樹脂中にガラス転移温度でシャープメルト性を有する特定の非オレフィン系結晶性重合体を添加することが提案されている。また、例えば、特許文献9に記載されているように、結晶性ポリエステルを用いることが提案されている。
【0007】
また、特許文献10ではトナーの平均粒径、粒度分布、キャリアの流動度、現像剤の流動度を規定して、二成分現像剤の画質を向上させる方法が示されている。しかし、この方法に用いられるトナーは非磁性着色剤含有樹脂粒子を含有させることが必須となっていることから、有色トナーに限定される方法であり、本件のような透明トナーを用いた画像形成には適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術を鑑みてなされたものであり、非常に優れた低温定着性と、高い耐ホットオフセット性と、良好な保管安定性(保存安定性)を両立し、且つ、精細かつ高光沢の画像を形成することのできる電子写真現像用透明トナー、画像形成方法およびプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔13〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0010】
〔1〕:上記課題は、記録媒体上に、透明トナー画像を形成するために用いられる電子写真現像用透明トナーであって、
前記トナーの組成分として、結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂および滑剤を含有すると共に、前記トナーの粘弾性評価により得られ下記式(1)で算出される正接損失のピーク値が80〜160[℃]の範囲にあり、該正接損失のピーク値が3以上であり、且つ、式(1)に示す貯蔵弾性率(G’)の値が120〜160[℃]において1[Pa]以上、1×10[Pa]以下であることを特徴とする電子写真現像用透明トナーにより解決される。
損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)
【0011】
〔2〕:上記〔1〕に記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記透明トナーの重量平均粒径(Mw)が3〜8μmであり、粒径分布において、4μm以下の粒子の割合が10〜70個数%、8μm以上の粒子の割合が1〜20体積%、10.08μm以上の粒子の割合が6体積%以下であることを特徴とする。
【0012】
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記貯蔵弾性率(G’)の値が、70〜90[℃]において1×10[Pa]以上であることを特徴とする。
【0013】
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記滑剤が、高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤、脂肪族炭化水素系滑剤、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0014】
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記滑剤が、高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤を含むことを特徴とする。
【0015】
〔6〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記滑剤が、脂肪酸アマイド系滑剤を含むことを特徴とする。
【0016】
〔7〕:上記〔6〕に記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記脂肪酸アマイド系滑剤が、少なくともトナー内部に含有されることを特徴とする。
【0017】
〔8〕:上記〔6〕または〔7〕に記載の電子写真現像用透明トナーにおいて、前記脂肪酸アマイド系滑剤がN,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドであることを特徴とする。
【0018】
〔9〕:上記課題は、少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーを用いて現像する工程と、該像担持体上に形成された透明トナー像を記録媒体上に転写する工程と、該記録媒体上に転写された透明トナー像を定着部材により定着させる定着工程とを含むことを特徴とする画像形成方法により解決される。
【0019】
〔10〕:上記〔9〕に記載の電子写真画像形成方法において、前記記録媒体上に1種類以上の有彩色トナーを用いてカラー画像を形成する工程と、前記電子写真現像用透明トナーを用いて透明トナー画像を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0020】
〔11〕:上記〔9〕または〔10〕に記載の電子写真画像形成方法において、前記定着後の透明トナー像の層厚が、1〜15μmであることを特徴とする。
【0021】
〔12〕:上記〔9〕乃至〔11〕のいずれかに記載の電子写真画像形成方法において、前記透明トナー像の少なくとも1層が、前記画像が定着された記録媒体の最表面に形成されていることを特徴とする。
【0022】
〔13〕:上記課題は、像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像をトナーもしくはトナーとキャリアからなる現像剤を用いて可視像とする現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられ、前記トナーが〔1〕乃至〔8〕のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーであることを特徴とするプロセスカ−トリッジにより解決される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた低温定着性と高い耐ホットオフセット性および保管安定性(保存安定性)を両立し、且つ、精細で、光沢度の高い(高光沢)画像を形成することのできる電子写真現像用透明トナー、および前記透明トナーを用いた画像形成方法並びにプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】粘弾性(G’、G”)評価により得られる正接損失にピークを有する好ましい例(80〜160℃にピーク値を持つ)を説明するための図である。
【図2】紙の上に直にトナーを定着させた様子を示す模式図である。
【図3】有彩色トナー層の上に定着させた透明トナーの表面が滑らかにならず高光沢が得られていない様子を示す模式図である。
【図4】有彩色トナー層の上に正接損失(tanδ)のピーク値が3以上の透明トナーを定着させた場合に表面が平滑となり高光沢が得られている様子を示す模式図である。
【図5】本発明で用いられる電子写真現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明で用いられる現像装置の一例を示す概略図である。
【図7】図6の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図9】本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
透明トナーは、低温定着性を高めると、省エネルギー化の効果はもちろんではあるが、定着工程において十分な溶融が得られるために、より光沢性を高くすることができる。光沢性の付与は、透明トナーを用いる最も大きな目的であり、透明トナーの最も重要な役割である。しかし、低温定着性を高めると、副作用として、トナーの保管安定性(保存安定性)が損なわれる傾向があり、透明トナーの低温定着化と保存安定性の両立は、透明トナーを用いた現像システムにおいて課題となっていた。
特に透明トナーは、フルカラー電子写真現像に常用されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーと異なり、前記色料(三原色)以外の色のトナーを搭載した現像ユニット等(追加ユニット)と必要に応じて交換しながら使用される場合が多い。そのような利用状況下にある場合は、他色のトナーが五色目として用いられている間、ユーザーの管理が届き難い状況で保管されることが想定される。そのため、透明トナーの保管安定性は他の色料(三原色等)のトナー以上に高い機能が求められる。
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、記録媒体上に、透明トナー画像を形成するために用いられる電子写真現像用透明トナーの組成分として、結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂および滑剤を含有すると共に、前記トナーの粘弾性評価により得られ下記式(1)で算出される正接損失のピーク値が80〜160[℃]の範囲にあり、該正接損失のピーク値が3以上であり、且つ、式(1)に示す貯蔵弾性率(G’)の値が120〜160[℃]において1[Pa]以上、1×10[Pa]以下であることことによって、非常に優れた低温定着性および耐ホットオフセット性、保管安定性(保存性)を両立し、且つ、低温定着においても高い光沢性を達成する電子写真現像用透明トナー(略称、「透明トナー」あるいは「トナー」)を提供することができるという新たな知見を得た。
損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)
【0027】
即ち、本発明の透明トナーは、粘弾性評価により得られ上記式(1)で算出される正接損失(tanδ)[ピーク温度:80〜160℃、ピーク値:3以上]、貯蔵弾性率(G’)[120〜160℃において1以上、1×10Pa以下]に規定値を有するが、その理由を以下に説明する。
【0028】
透明トナーにおいて、低温で定着し、且つ、高い光沢性を確保するためには、比較的低い温度で急激に貯蔵弾性(G’)が低くなる特性を持たせる必要がある。定着時のトナーの貯蔵弾性率(G’)を低くすることができれば、表面平滑度の低い記録紙や有彩色トナーの微小凹凸に、溶融したトナーが入り込みやすく、また、粘弾性の中で相対的に可塑成分が高くなり、加圧定着後にトナー粒の形状が復元しにくくなる。そのため、延展性に優れ、トナー層表面の平滑度が高くなり、高い光沢度を得ることが可能となる。
その一方で、耐ホットオフセットの観点から、貯蔵弾性率(G’)は所定粘度になってからは低下の傾きは緩やかになり、その粘度を維持しようとする特性を持つことが重要であり、さらに損失弾性率(G”)は、貯蔵弾性率(G’)のような急激な低下を起こさない必要がある。
【0029】
前述のように貯蔵弾性率(G’)が所定温度から急激に低下しつつ、所定温度域で低下の傾きは緩やかにならないと、図1に示すような正接損失のピークは発現しない。このような特性を持つトナーのみが正接損失のピークを持つが、その最大ピークの温度は80〜160℃に発現することが好ましい。
正接損失の最大ピーク温度が80℃よりも低いと保管環境で貯蔵弾性率(G’)が低下してトナーとしての保管安定性(保存安定性)が悪くなってしまい、保管環境でトナーが凝集してしまう。また、高温での粘弾性が低くなりすぎ、耐ホットオフセット性が損なわれてしまう。正接損失の最大ピーク温度が160℃を超えると低温で定着する機能が損なわれて目的とする課題が達成できない。
【0030】
また、正接損失の最大値が小さいと、損失弾性率(G”)と比較して貯蔵弾性率(G’)が低下せず、好ましい低温定着性と耐ホットオフセット性、高光沢を同時に達成させることができなくなる。特に、透明トナーにて記録媒体上に光沢を付与する場合には、以下の理由により、正接損失が3以上であることが重要となる。
トナー層表面の光沢性を高めるためには、トナー層の最表面をできるだけ滑らかにする必要がある。そのためには、前述のように、貯蔵弾性率(G’)を低下させ、最表面を形成するトナー層の延展性を高めることが重要であるが、加えて、最表面を形成するトナー層と、そのトナー層を保持する面との相性も重要な要素となる。
【0031】
有彩色トナーによる画像形成の場合、トナー層は紙上に形成される。その場合、トナーの貯蔵弾性率(G’)の割合が比較的高くても、トナー定着に一般的に採用されている加圧定着の際に、紙の可塑性がクッションとなってトナーの弾性を吸収したり、平滑面を形成する上で余剰分となった溶融トナーが紙を構成しているセルロースの繊維中に染み入ったりするので、最表面を滑らかな状態にすることができる。
図2の模式図に、紙の上に直にトナーを定着させた様子を示す。図2において、符号1は紙、2はセルロース繊維、3はトナー層を示す。
【0032】
しかし、有彩色トナー画像に対する光沢付与を目的として透明トナーを使用する場合、透明トナー層は有彩色トナーによって形成された樹脂面上に形成することになる。すると、紙上に直に画像を形成した場合と異なり、有彩色トナー層が紙との間の壁となり、透明トナーの弾性が吸収されにくくなったり、平滑面を形成する上で余分となった溶融トナーがセルロースの繊維中へ逃げにくくなったりする。
図3の模式図に、有彩色トナー層の上に定着させた透明トナーの表面が滑らかにならず高光沢が得られていない様子を示す。図3において、符号1は紙、2はセルロース繊維、4は有彩色トナー層、5は透明トナー層を示す。
つまり、透明トナーは有彩色トナーのみを用いた画像形成よりも高光沢化に対してよりシビアな条件下で用いられる場合があり、その場合、貯蔵弾性率(G’)の割合が高いと、加圧定着を行なっても、透明トナー自身の弾性による“戻り”のために透明トナー層表面に微小な凹凸やうねりが発生し、滑らかさが損なわれ、高光沢が得られにくくなる。
【0033】
この現象に対し、本発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果、有彩色トナー層の上に透明トナー層を形成した場合でも、定着温度範囲において透明トナーの損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比である正接損失(tanδ)のピークが3以上であれば、耐ホットオフセット性を維持しつつ、透明トナーの弾性よりも延展性が勝るため透明トナー層の表面を滑らかにすることが可能となり、高光沢を付与できるということを見出した。
図4の模式図に、有彩色トナー層の上に正接損失(tanδ)のピーク値が3以上の透明トナーを定着させた場合に表面が平滑となり高光沢が得られている様子を示す。図4において、符号1は紙、2はセルロース繊維、4は有彩色トナー層、5は透明トナー層を示す。
【0034】
正接損失(tanδ)のピーク温度や最大ピーク値は、トナーの組成分として用いる結着樹脂(以降、「定着用樹脂」と呼称することがある。)や、塀用する結晶性ポリエステル樹脂の粘弾性によって決まってくるが、トナー製造工程中の樹脂への負荷、例えば、溶融混練条件などにより、正接損失(tanδ)のピーク温度や最大ピーク値を変更することが可能である。また、併用する結晶性のポリエステル樹脂の軟化点、トナー組成分としての配合量によりトナーの粘弾性が変化するため、正接損失(tanδ)のピーク温度や最大ピーク値を変更することが可能となる。
【0035】
透明トナーは、上記のように有彩色トナー層の上で使用されるばかりではなく、例えば、紙上に単体で用いて“透かし”のように用いたり、紙上に光沢差をつけることで無色の画像を形成したりする場合もある。しかし、最小限の数の透明トナーで様々な用途に対応できるようにしておくと、一台の電子写真装置に過剰に多くの種類のトナーを搭載しなくて済むため、装置のコンパクト化や低コスト化に有利である。また、ユーザーの要望に応じて一台の電子写真装置を多様に利用できるため、利便性の面からも好ましい。そのため、有彩色トナー層上での光沢付与以外の用途でも使用される透明トナーであっても、使用目的の一つに光沢付与があるのであれば、正接損失の最大ピーク値は3以上であることが好ましい。
【0036】
本発明における貯蔵弾性率(G’)は、120〜160℃において1Pa以上、1×10Pa以下である。より好ましくは、110〜160℃の範囲において、貯蔵弾性率(G’)が1Pa以上、1×10Pa以下であることが好ましい。正接損失が大きくても、120〜160℃の範囲においての貯蔵弾性率(G’)が1×10Paより高いと好ましい低温定着性が得られない。また、1Paより小さいと、耐ホットオフセット性に悪影響を及ぼす。110〜160℃の範囲においての貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以下であると、更により好ましい低温定着性を得ることができる。
ここで、70〜90℃の範囲における貯蔵弾性率(G’)は1×10Pa以上であることが好ましく、更に好ましくは、70〜90℃の範囲における貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上であることが好ましい。
【0037】
定着に関与する温度域以下の環境においては、貯蔵弾性率(G’)が低いと、トナーおよび該トナーを用いた現像剤の保存安定性(保管安定性)に悪影響を及ぼす。特に、90℃以下の温度域における貯蔵弾性率(G’)は保管安定性に著しい影響を及ぼし、90℃以下の貯蔵弾性率(G’)が1×10Paより小さいと保管時の凝集や固化を発生させやすくなる。貯蔵弾性率(G’)を1×10Pa以上にすべき温度域の下限温度は、そのトナーの保管環境として想定される温度の下限以下となるが、通常、熱可塑性樹脂をトナーの原材料として用いた場合、70〜90℃の範囲以下に温度を下げていくと貯蔵弾性率(G’)は上昇していく傾向があることから、70〜90℃の範囲での貯蔵弾性率(G’)にて貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上であれば、生活環境下での保管における保管安定性は維持することができる。
【0038】
90〜120℃の温度域における貯蔵弾性率(G’)については特に規定はしないが、前述のように70〜90℃の範囲で貯蔵弾性率(G’)が1×10Pa以上、120〜160℃の範囲で1Pa以上、1×10Pa以下のトナーであれば、90〜120℃の温度域では貯蔵弾性率(G’)は1×10〜1×10Paの範囲を通過する温度域であり、その際の貯蔵弾性率(G’)は、温度に対して突発的なピークが存在せずになだらかに変化していくことが好ましい。
【0039】
前述のトナーの正接損失(tanδ)は粘弾性測定によって測定される。
本発明の粘弾性測定においては、トナーを0.8g、φ20mmのダイスを用いて30MPaの圧力で成型し、TA社製のADVANCED RHEOMETRIC EXPANSION SYSTEMによりφ20mmのパラレルコーンを使用して、周波数1.0Hz、昇温速度2.0℃/分、歪み0.1%(自動歪み制御:許容最小応力1.0g/cm、許容最大応力500g/cm、最大付加歪み200%、歪み調整200%) で、損失弾性率(G”)、貯蔵弾性率(G’)、正接損失(tanδ)の測定を行った。このとき貯蔵弾性率(G’)が10以下になった場合の正接損失(tanδ)の値は除外した。
【0040】
本発明における透明トナーの重量平均粒径(Mw)は3〜8μmであり、粒径分布において、4μm以下の粒子の割合が10〜70個数%、8μm以上の粒子の割合が1〜20体積%、10.08μm以上の粒子の割合が6体積%以下であることが好ましい。
重量平均粒径が8μmより大きいと、現像装置からのトナー飛散が多くなり、装置内を汚染したり、画像媒体上に地汚れ等の異常画像を発生させたりする原因となる。重量平均粒径が3μmよりも小さいと、粒子一粒に対して供給される熱量が相対的に多くなるため、定着ローラー表面へのトナーの固着が顕著となり、最終画像の画質劣化の原因となる。また、本発明のトナーの製法には特に制限はなく、所謂、粉砕法で製造された粉砕トナーでも、重合法で製造された重合トナーでも適用されるが、粉砕法で製造する場合、重量平均粒径が3μmよりも小さいと、粉砕・分級工程が非常に難しくなり、工業的にトナーを生産する上での時間的効率の低下や、歩留り低下の原因となる。
【0041】
透明トナーは、その機能として光沢が最も求められる。高光沢を得るためには熱溶融性が良好であることが必要であるが、その副作用として耐熱保存性の悪化が懸念される。耐熱保存性が悪化する傾向にあるということは、つまりはトナーに凝集体が発生しやすくなる傾向にあることを意味している。
【0042】
重量平均粒径(Mw)を3〜8μmとし、4μm以下の粒子の割合を70個数%以下にすることで、透明トナーにおいて特有の前記懸念事項である凝集体の発生を抑制しつつ、高精細な透明トナー画像を形成することができる。4μm以下の粒子の割合が10個数%未満であると、精細な透明トナー画像の形成がしにくくなる。
【0043】
一方、8μm以上の粒子を1〜20体積%含有すると、透明トナーを記録媒体上に定着させたときにトナー一粒がカバーする面積が大きくなるため、平滑性が高くなり、最終的に得られる画像の光沢が高くなる。特に、正接損失のピーク値が3以上であると、その機能は効率よく発揮される。8μm以上の粒子が1体積%未満であると、この効果は発揮されにくい。8μm以上の粒子の割合が20体積%を超えると、透明トナーの画像が粗くなり平滑性が損なわれるため、光沢度が低下する。
【0044】
また、10.08μm以上の粒子の割合が6体積%より多いと、上記トナーの一粒がカバーする面積が大きくなることに起因する平滑性向上効果よりも、画像が粗くなることによって平滑性が損ねられる効果の方が顕著になるため、結果として光沢性が低下する。また、高精細な透明トナー画像も得られにくくなる。
【0045】
トナー粒子の粒度分布(個数分布、体積分布)の測定にはコールターカウンター法を用いることができ、使用される装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII、III、IV(いずれもコールター社製)等が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
【0046】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子またはトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径(Mw)や体積平均粒径(Mv)を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
【0047】
本発明の電子写真現像用透明トナーの組成分(原材料、あるいは構成材料)として、少なくとも用いられる結着樹脂(定着用樹脂)、結晶性ポリエステル樹脂および滑剤等について以下に説明する。
【0048】
〔結着樹脂〕
本発明のトナー原材料として用いられる結着樹脂(定着用樹脂)は、従来より公知の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン、ポリ−α−スチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジェン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂などが挙げられる。また、これら樹脂の製造方法も特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合いずれも使用できる。
本発明においては結着樹脂(定着用樹脂)としてポリエステル樹脂を含有することが好ましく、特にポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ポリエステル樹脂は一般的に他の樹脂に比べ、耐熱保存性を維持したまま低温定着が可能であるため本発明には適した結着樹脂である。
【0049】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られる。使用されるアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1、4−ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン、およびビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
また、カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1、2、4−ベンゼントリカルボン酸、1、2、5−ベンゼントリカルボン酸、1、2、4−シクロヘキサントリカルボン酸、1、2、4−ナフタレントリカルボン酸、1、2、5−ヘキサントリカルボン酸、1、3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1、2、7、8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。ここで、ポリエステル樹脂のTgは50〜75℃が好ましい。
【0050】
〔結晶性のポリエステル樹脂〕
また、本発明の透明トナーは、熱可塑性樹脂として結晶性のポリエステル樹脂を含有する。結晶性のポリエステル樹脂を併用すると低温での定着が可能になると共に、低温でも画像の光沢性を上げることが可能になる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは結着樹脂(例えば、ポリエステル樹脂)100重量部に対して1〜25重量部、より好ましくは1〜15重量部である。結晶性ポリエステル樹脂の比率が高くしすぎると、感光体等像担持体表面にフィルミングを起こしやすくなると共に、保管安定性を悪化させてしまう懸念がある。さらに結晶性ポリエステル樹脂の比率が高すぎると樹脂の透明性が損なわれ、透明トナーとして要求される透明性を確保できなくなってしまう。
【0051】
本発明で用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、(1)直鎖状不飽和脂肪族二価カルボン酸またはその反応性誘導体(酸無水物、炭素数1〜4の低級アルキルエステル酸ハライド等)からなる多価カルボン酸単位と、(2)直鎖状脂肪族ジオールからなる多価アルコール単位とを、常法により重縮合反応させることによって製造することができる。この場合、多価カルボン酸単位には、必要に応じ、少量の他の多価カルボン酸単位が含有されていてもよい。なお、結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸単位として直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸単位を用いることにより、芳香族ジカルボン酸単位を用いた場合に比べて結晶構造を形成し易いという作用効果を示す。
【0052】
前記多価カルボン酸単位には、(1)分岐鎖を有する不飽和脂肪族二価カルボン酸単位、(2)飽和脂肪族二価カルボン酸や、飽和脂肪族三価カルボン酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸単位の他、(3)芳香族二価カルボン酸や芳香族三価カルボン酸等の芳香族多価カルボン酸単位等が包含される。これらの多価カルボン酸単位の含有量は、全カルボン酸に対して、通常、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
【0053】
必要に応じて添加することができる多価カルボン酸単位の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二価カルボン酸単位;無水トリメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単位等を挙げることができる。
【0054】
前記多価アルコール単位には、必要に応じ、少量の脂肪族系の分岐鎖二価アルコール単位や環状二価アルコール単位の他、三価以上の多価アルコール単位が、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加されてもよい。必要に応じて添加される多価アルコール単位を例示すると、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン単位、ポリエチレングリコール単位、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物単位、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物単位、グリセリン単位等が挙げられる。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂において、その分子量分布は、低温定着性の点から、シャープであるのが好ましく、また、その分子量は、比較的低分子量であるのが好ましい。ここで、結晶性ポリエステル樹脂の軟化温度(高架式フローテスターCFT−100D型(島津製作所製)により測定)は、限定されるものではないが、60〜120℃程度が好ましい。
【0056】
〔滑剤〕
本発明の透明トナーには滑剤を含有する必要がある。すなわち、透明トナーは画像の最上部に位置するため、高い耐ホットオフセット性が求められ、滑剤を含有することで定着部材との離型性を大きくすることができる。このような滑剤として、高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤、脂肪族炭化水素系滑剤、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
具体的な滑剤の例としては、流動パラフィン、マイクロリスタンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、およびこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などの脂肪族炭化水素系滑剤、牛脂、魚油などの動物油、やし油、大豆油、菜種油、米ぬかワックス、カルナウバワックスなどの植物油、モンタンワックスなど高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド、脂肪酸ビスアマイド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛などの金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、ポリフッ化ビニリデンなどが使用できるがこれらに限定されるものではない。
前記滑剤として、滑剤は単独あるいは複数組合せて用いることができ、限定されるものではないが、例えば、高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤が好ましく用いられる。
【0057】
滑剤をトナー内部に含有する場合は、結着樹脂(定着用樹脂)100重量部に対して0.1〜15重量部、好ましくは1〜7重量部の範囲で含有する。トナー内部に滑剤を含有することにより、定着時の耐ホットオフセット性能と定着強度を得ることができ、高い擦り試験強度を得ることができる。これにより高速の画像形成装置で用いた場合、低温定着性を確保することができる。滑剤の添加量が0.1重量部よりも少ないとオフセットが発生し易くなり、10重量部よりも多くなるとキャリアスペントは発生しやすくなり、さらに画質が劣化し易くなる。トナー表面層に滑剤を含有する場合は、定着用樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部の範囲で含有することが好ましい。
前述のように、トナー表面層に滑剤を含有する場合、滑剤が直接的に像担持体と接触するため、像担持体表面に薄い膜を形成し、トナーを容易に剥がすことや再付着の防止に効果がある。
【0058】
トナー内部に脂肪酸アマイド系の滑剤を含有すると、滑剤としての効果に加え、結晶性ポリエステルの結晶化が促進され、保管安定性を改良することができるため好ましい。脂肪酸アマイド系の滑剤は単独で用いてもよいが、離型性の機能と結晶性ポリエステルの結晶化促進の機能を分離してコントロールするために、脂肪酸アマイド系以外の滑剤と併用してもよい。例えば、離型性に対して効果的であるカルナバワックスやパラフィン系ワックスと脂肪酸アマイド系ワックスを併用して用いてもよい。脂肪酸アマイド系ワックスの例としては、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、エチレン−ビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。特に効果的で好ましい例として、N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドが挙げられる。
つまり、脂肪酸アマイド系滑剤を含むことにより、保存安定性を更に改善することができる。脂肪酸アマイド系滑剤がN,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドであると、脂肪酸アマイド系滑剤による保存安定性の効果を最大限に発揮させることができる。
【0059】
〔他の組成分〕
また、本発明のトナーの組成分として必要により後述する帯電制御剤等を含有することができる。また、後述する外部添加剤等を含有することもできる。
【0060】
本発明の画像形成方法は、少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を前記電子写真用透明トナーを用いて現像する工程と、該像担持体上に形成された透明トナー像を記録媒体上に転写する工程と、該記録媒体上に転写された透明トナー像を定着部材により定着させる定着工程とを含むことを特徴とするものである。これにより、非常に優れた低温定着性および耐ホットオフセット特性、保管安定性を両立し、且つ、低温定着においても高い光沢性を達成する電子写真用透明トナーを用いた電子写真画像を形成することができる。
ここで、前記記録媒体上に1種類以上の有彩色トナーを用いてカラー画像を形成する工程と、前記電子写真用透明トナーを用いて透明トナー画像を形成する工程とを備えた画像形成方法とすれば、有彩色トナーを用いた画像に光沢を付与することができる。
また、前記定着後の透明トナー像の少なくとも1層が、前記画像が定着された記録媒体の最表面に形成されるようにすれば、透明トナーの光沢性をより効率的引き出すことができる。そして、透明トナー像の層厚を1〜15μmとすれば十分な光沢を得ながら、良好な定着強度と透過性を得ることができる。
【0061】
透明トナーによるトナー層を最表面に形成する方法としては特に制限はないが、有彩色トナーと共に透明トナーを用いた場合の現像装置もしくは現像ユニットの構成として、例えば、有彩色トナーを備えたものと、透明トナーを備えたものをそれぞれ搭載し、これを用いて、有彩色トナーによる像担持体、あるいは中間担持体、あるいは記録媒体上への現像を行なった後に透明トナーを用いた現像を行なうようにすることで実現することができる。この場合、現像工程のフローでいえば、有彩色トナーによる現像工程の下流に透明トナーによる現像工程がくることになる。
仮に、有彩色トナーとしてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを用いる場合、これら4色分の現像装置もしくは現像ユニットに加えて透明トナーを用いた現像装置もしくは現像ユニットを配備(合計5つの現像装置もしくは現像ユニットを装備)した図5に示すような電子写真現像装置(後に詳述する)を用いることで、本発明が実現される。
【0062】
本発明の透明トナーを用いて画像を形成する場合、使用する画像形成装置においては1回の定着でも十分可能であるが、更に高い光沢を得たい場合は、高光沢とする部分を第一の画像形成時に有彩色トナーと透明トナーとで潜像形成、露光、現像して記録媒体に転写し、定着機で定着した後、更に、第二の画像形成で有彩色トナーを潜像形成、露光、現像して記録媒体に転写し、定着機で定着することができる。これにより通常光沢部分は1回の定着で、高光沢の部分は2回定着機を通過することになる。
【0063】
定着機を2回通過することによって、透明トナーを形成した部分は透明トナーを形成していない部分よりもトナー量が多いが、定着機を2回通過することによって充分に熱量を供給することができ、更に表面の平滑性が上がり高い光沢を出すことができる。通常光沢部分も低い定着温度で使用するわけではなく、1回の定着で充分な定着強度を維持できるだけの熱量を与えて使用する。本発明に用いられる画像形成装置では、高光沢を実現する透明トナーは有彩色トナーの上部に形成され、定着機に接触するため、有彩色トナーよりも高い離型性、耐ホットオフセット性、且つ高い光沢性が求められる。
【0064】
有彩色トナーの光沢性は使用目的によって選択することができる。全体に高い光沢性が要求される場合は、トナーの重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が小さいものを使用すればよく、低い光沢性が要求される場合は、トナーの重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が大きいものを選択すればよい。本発明においては、限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2〜6程度の範囲のものが好ましく用いられる。
【0065】
しかしながら、有彩色トナーの光沢が高い場合は透明トナーの光沢も高くなりやすいが、記録媒体上での光沢差は低くなる。一方、有彩色トナーの光沢が低いトナーを用いる場合は、記録媒体上での光沢差は大きくなりやすいが、透明トナーを載せても高い光沢が出にくくなる。これは光沢の低い有彩色トナーの場合、有彩色トナー樹脂自体が弾性によりもとに戻ろうとする力が働くため、有彩色トナーと透明トナーの界面で光の散乱が起きやすくなるためである。
【0066】
このように有彩色トナーの光沢が低い場合は、透明トナー層を厚くすることによって高光沢を実現することができる。本発明の場合、有彩色トナー上に形成された定着後の透明トナー像の層厚が、1〜15μmであることが好ましい。層厚が1μm未満であると高光沢化が難しく、15μmを超えると定着強度が弱くなるとともに、透過性が悪くなり有彩色トナーの色再現性が悪くなる。トナー層の厚みは、被記録媒体をミクロトームで切断しすることで測定が可能である。
【0067】
本発明で用いられる透明トナー、および有彩色トナーは、帯電制御剤を含有することができる。帯電制御剤としては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類がある。これらの単独あるいは2種類以上を組み合せて用いることができる。
これらの帯電制御剤をトナーに内部添加する場合、結着樹脂(定着用樹脂)に対して0.1〜10重量部添加することが好ましく、帯電制御剤により着色されている場合もあるため、透明トナーの場合はできるだけ白色または透明色のものを選定する。
【0068】
さらには透明トナー、有彩色トナーには外部添加剤を含有することができる。外部添加剤には、例えば、シリカ、テフロン(登録商標)樹脂粉末、ポリ沸化ビニリデン粉末、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤、あるいは、例えば、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末の如き流動性付与剤、凝集防止剤、樹脂粉末、あるいは、例えば、酸化亜鉛粉末、酸化アンチモン粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤、また、逆極性の白色微粒子および黒色微粒子を現像性向上剤として用いることもできる。これらは単独あるいは複数組合せて使用することができ、空転等の現像ストレスに対して耐性を持たせるように選択される。
【0069】
本発明で用いられる透明トナー、および有彩色トナーを二成分現像剤方式で用いる場合、磁性キャリアに用いる磁性体微粒子として、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を使用することができる。その形状は粒状、球状、針状のいずれであってもよい。特に高磁化を要する場合は鉄等の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮するとマグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトを用いることが好ましい。具体的には、MFL−35S、MFL−35HS(パウダーテック社製)、DFC−400M、DFC−410M、SM−350NV(同和鉄粉工業社製)等が好適な例として挙げられる。
【0070】
強磁性微粒子の種類および含有量を選択することにより、所望の磁化を有する樹脂キャリアを使用することもできる。この時のキャリアの磁気特性は1,000エルステッド(79×10A/m)における磁化の強さは30〜150emu/g[(30〜150)×(4π)・10−10Hm/kg]が好ましい。このような樹脂キャリアは磁性体微粒子と絶縁性バインダー樹脂との溶融混練物をスプレードライヤーで噴霧して製造したり、磁性体微粒子の存在下に水性媒体中でモノマーないしプレポリマーを反応、硬化させ縮合型バインダー中に磁性体微粒子が分散された樹脂キャリアを製造できる。
【0071】
磁性キャリアの表面には正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を固着させたり、樹脂をコーティングしたりして帯電性を制御できる。表面のコート材としてはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、さらに正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を含んでコーティングすることができるが、シリコーン樹脂およびアクリル樹脂が好ましい。
【0072】
本発明において、現像装置内に収容される現像剤中のキャリアの重量比率は、85wt%以上、98wt%未満であることが好ましい。85wt%未満であると現像装置からのトナーの飛散が発生しやすくなり、不良画像の原因となる。98wt%以上であると、トナーの帯電量が過度に上昇したり、トナーの供給量が不足したりするため、画像濃度が低下し、不良画像の原因となる。
【0073】
本発明における透明トナー、有彩色トナーを作製するには、トナー原材料[〔透明トナーでは、例えば、結着樹脂(定着用樹脂)、結晶性ポリエステル樹脂および滑剤、更に必要に応じて帯電制御剤、添加剤など〕、〔有彩色トナーでは、例えば、結着樹脂(定着用樹脂)、および滑剤、必要に応じて着色剤、更に必要に応じて帯電制御剤、滑剤、添加剤など〕]を均一に分散したトナー組成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサーの如き混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダ、エクストルーダーの如き熱溶融混練機を用いて溶融混練して原材料を十分に混合せしめた後、冷却固化後微粉砕および分級を行ってトナーを得る。分級により得た粒子(母体粒子)に添加剤(外添剤)を混合することができる。
上記粉砕方法としては高速気流中にトナーを包含させ、衝突板にトナーを衝突させそのエネルギーで粉砕するジェットミル方式やトナー粒子同士を気流中で衝突させる粒子間衝突方式、更には高速に回転したローターと狭いギャップ間にトナーを供給し粉砕する機械式粉砕法等が使用できる。
【0074】
また、トナー原材料を有機溶媒相に溶解または分散させた油相を、水系媒体相中に分散させ、樹脂の反応を行った後、脱溶剤し、濾過と洗浄、乾燥することにより、トナーの母体粒子を製造する溶解懸濁法を用いてもトナーの製造は可能である。また、ポリエステル伸長法によってトナーの母体を製造してもよい。得られた粒子(母体粒子)に添加剤(外添剤)を混合することができる。
前記外添剤としては、例えば、無機微粒子として、例えば、脂肪酸金属塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、酸化亜鉛粉末、酸化アルミ粉末、酸化チタン粉末または微粉末シリカ等を用いることができる。また、樹脂微粒子を用いることもできる。
【0075】
本発明で用いられる電子写真現像装置の一例を示す概略構成を図5に示す。
図5において、符号101Aは駆動ローラ、101Bは従動ローラ、102は感光体ベルト、103は帯電器、104はレーザー書き込み系ユニット、105A〜105Dはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット、105Eは透明のトナーを収容する現像ユニット、106は給紙カセット、107は中間転写ベルト、107Aは中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ、107Bは中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ、108はクリーニング装置、109は定着ローラ、109Aは加圧ローラ、110は排紙トレイ、113は紙転写ローラ示している。
【0076】
図5に示すカラー画像形成装置では、前記転写ドラムに対して可撓性の中間転写ベルト107が使用されており、該中間転写体たる中間転写ベルト107は駆動軸ローラ107Aと一対の従動軸ローラ107Bに張架されて時計方向に循環搬送されていて、一対の従動軸ローラ107B間のベルト面を駆動ローラ101Aの外周の感光体ベルト102に対して水平方向から当接させた状態としている。
【0077】
通常のカラー画像出力時は、感光体ベルト102上に形成される各色のトナー像は、形成の都度前記中間転写ベルト107に転写されて、カラーのトナー像を合成し、これを給紙カセット106から搬送される転写紙に対し紙転写ローラ113によって一括転写し、転写後の転写紙は定着装置の定着ローラ109と加圧ローラ109Aの間へと搬送され、定着ローラ109と加圧ローラ109Aによる定着後、排紙トレイ110に排紙される。
【0078】
105A〜105Eの現像ユニットがトナーを現像すると、現像ユニットに収容されている現像剤のトナー濃度が低下する。現像剤のトナー濃度の低下はトナー濃度センサ(図示せず)により検知される。トナー濃度の低下が検知されると、各現像ユニットにそれぞれ接続されているトナー補給装置(図示せず)が稼動し、トナーを補給してトナー濃度を上昇させる。このとき、補給されるトナーは、現像ユニットに現像剤排出機構が備わっていれば、キャリアとトナーが混合されている所謂トリクル現像方式用現像剤であってもよい。
【0079】
図5では中間転写ベルト上にトナー像を重ねて画像を形成しているが、中間転写ベルトを用いることなく転写ドラムから直接に記録媒体へ転写を行なうシステムにおいても、同様に本発明の電子写真画像形成装置とすることができる。
【0080】
図6は、本発明で用いられる現像装置の一例を示す概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図6において、潜像担持体である感光体ドラム(20)に対向して配設された現像装置(40)は、現像剤担持体としての現像スリーブ(41)、現像剤収容部材(42)、規制部材としてのドクターブレード(43)、支持ケース(44)等から主に構成されている。感光体ドラム(20)側に開口を有する支持ケース(44)には、内部にトナー(21)を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー(45)が接合されている。
【0081】
トナーホッパー(45)に隣接した、トナー(21)と、キャリア(23)からなる現像剤を収容する現像剤収容部(46)には、トナー(21)とキャリア(23)を撹拌し、トナー(21)に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤撹拌機構(47)が設けられている。トナーホッパー(45)の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ(48)およびトナー補給機構(49)が配設されている。トナーアジテータ(48)およびトナー補給機構(49)は、トナーホッパー(45)内のトナー(21)を現像剤収容部(46)に向けて撹拌しながら送り出す。
【0082】
感光体ドラム(20)とトナーホッパー(45)との間の空間には、現像スリーブ(41)が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ(41)は、キャリア(23)による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置(40)に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有する。
【0083】
現像剤収容部材(42)の、支持ケース(44)に取り付けられた側と対向する側には、ドクターブレード(43)が一体的に取り付けられている。ドクターブレード(43)は、この例では、その先端と現像スリーブ(41)の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
【0084】
このような装置を非限定的に用い、本発明の画像形成方法は、次のように遂行される。即ち、上記構成により、トナーホッパー(45)の内部からトナーアジテータ(48)、トナー補給機構(49)によって送り出されたトナー(21)は、現像剤収容部(46)へ運ばれ、現像剤撹拌機構(47)で撹拌されることによって、所望の摩擦/剥離電荷が付与され、キャリア(23)と共に現像剤として、現像スリーブ(41)に担持されて感光体ドラム(20)の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー(21)のみが感光体(20)上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体ドラム(20)上にトナー像が形成される。
【0085】
図7は、図6の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図7において、ドラム状の感光体[感光体ドラム](20)の周囲に、像担持体帯電部材[帯電部材](32)、像露光系(33)、現像装置(40)、転写機構[転写装置](50)、クリーニング機構[クリーニング装置](60)、除電ランプ(70)が配置されていて、この例の場合、帯電部材(32)の表面は、感光体ドラム(20)の表面とは約0.2mmの間隙を置いて非接触状態にあり、帯電部材(32)により感光体ドラム(20)に帯電を施す際、帯電部材(32)に図示してない電圧印加手段によって直流成分に交流成分を重畳した電界により、感光体ドラム(20)を帯電させることにより、帯電ムラを低減することが可能であり、効果的である。現像方法を含む画像形成方法は、以下の動作で行われる。
【0086】
画像形成の一連のプロセスは、ネガ−ポジプロセスで説明を行うことができる。有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される感光体ドラム(20)は、除電ランプ(70)で除電され、帯電チャージャ、帯電ローラー等の帯電部材(32)で均一にマイナスに帯電され、レーザー光学系等の像露光系(33)から照射されるレーザー光で潜像形成(この例では、露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。
【0087】
レーザー光は、半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により、感光体ドラム(20)の表面を、感光体ドラム(20)の回転軸方向に走査する。このようにして形成された潜像が、現像装置(40)にある現像剤担持体である現像スリーブ(41)上に供給されたトナーおよびキャリアの混合物からなる現像剤により現像され、トナー像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ(41)に、感光体ドラム(20)の露光部と非露光部の間に、ある適当な大きさの直流電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0088】
一方、転写媒体(例えば、紙)(80)が、給紙機構(図示せず)から給送され、上下一対のレジストローラ(図示せず)で画像先端と同期をとって、感光体ドラム(20)と転写装置(50)との間に給送され、トナー像が転写される。このとき、転写装置(50)には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、転写媒体(80)は、感光体ドラム(20)より分離され、転写像が得られる。
【0089】
また、感光体ドラム(20)上に残存するトナーは、クリーニング部材としてのクリーニングブレード(61)により、クリーニング装置(60)内のトナー回収室(62)に回収される。回収されたトナーは、トナーリサイクル手段(図示せず)により現像剤収容部(図6の符号46)および/またはトナーホッパー(45)に搬送され、再使用されてもよい。符号47は現像剤撹拌機構を示す。
【0090】
画像形成装置は、上述の現像装置を複数配置し、転写媒体上へトナー像を順次転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であってもよく、一端中間転写媒体上へ複数のトナー像を転写し、これを一括して転写媒体に転写後同様の定着を行う装置であってもよい。
【0091】
図8の概略構成図に、本発明の画像形成方法で用いられる画像形成装置の他の例を示す。図8において、感光体(20)は、導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられており、駆動ローラー(24a)、(24b)により駆動され、帯電部材(32)による帯電、像露光系(33)による像露光、現像装置(40)による現像、転写装置[転写機構](50)を用いる転写、クリーニング前露光光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段(64)およびクリーニングブレード(61)によるクリーニング、除電ランプ(70)による除電が繰り返し行われる。図8においては、感光体(20)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光が行われる。
【0092】
本発明のプロセスカ−トリッジは、像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像を本発明の電子写真現像用透明トナーもしくは該トナーとキャリアからなる現像剤を用いて可視像とする現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能に構成される。ここで、前記プロセスカートリッジは、必要に応じて帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段から選択される他の手段を有することができる。
図9の概略構成図に、本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す。
図9に示すプロセスカートリッジは、前記本発明の透明トナーもしくは該トナーとキャリアからなる現像剤を使用し、感光体(20)と、近接型のブラシ状接触帯電手段[帯電手段](32)、本発明の透明トナーもしくは該トナーとキャリアからなる現像剤を収納せる現像手段[現像装置](40)、クリーニング手段としてのクリーニングブレードを少なくとも有するクリーニング手段(61)を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
本発明のプロセスカートリッジの現像手段に前記透明トナーを用いることにより、非常に優れた低温定着性および耐ホットオフセット特性、保管安定性を両立し、且つ、低温定着においても高い光沢性を有する電子写真画像を形成することができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0094】
[トナーの作製]
(透明トナー1の製造例)
下記処方1のトナー原材料を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物は室温まで冷却後、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で重量平均粒径が5.6±0.2μmとなるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)1.0重量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、透明トナー1を製造した。
〈トナー原材料処方1〉
ポリエステル樹脂(A): 100重量部
〔Tg;64.0℃、Mw;15300、Mn;3800、酸価7.0mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;143.7℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A)〔軟化温度70℃〕: 5重量部
カルナウバワックス(A)〔セラリカNODA製〕: 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A)〔花王製〕: 2重量部
【0095】
(透明トナー2の製造例)
下記処方2のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー2を製造した。
〈トナー原材料処方2〉
ポリエステル樹脂(A): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 15重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0096】
(透明トナー3の製造例)
下記処方3のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー3を製造した。
〈トナー原材料処方3〉
ポリエステル樹脂(B): 100重量部
〔Tg;67.5℃、Mw;18700、Mn;4900、酸価6.6mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;156.5℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 5重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0097】
(透明トナー4の製造例)
下記処方4のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー4を製造した。
〈トナー原材料処方4〉
ポリエステル樹脂(B): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0098】
(透明トナー5の製造例)
下記処方5のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー5を製造した。
〈トナー原材料処方5〉
ポリエステル樹脂(C): 100重量部
〔Tg;62.0℃、Mw;15200、Mn;3700、酸価7.2mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;150.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0099】
(透明トナー6の製造例)
下記処方6のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー6を製造した。
〈トナー原材料処方6〉
ポリエステル樹脂(D): 100重量部
〔Tg;61.0℃、Mw;15100、Mn;3700、酸価7.2mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;147.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0100】
(透明トナー7の製造例)
下記処方7のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー7を製造した。
〈トナー原材料処方7〉
ポリエステル樹脂(E): 100重量部
〔Tg;68.0℃、Mw;18800、Mn;5000、酸価6.6mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;157.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 2重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0101】
(透明トナー8の製造例)
下記処方8のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー8を製造した。
〈トナー原材料処方8〉
ポリエステル樹脂(E): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 5重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0102】
(透明トナー9の製造例)
下記処方9のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー9を製造した。
〈トナー原材料処方9〉
ポリエステル樹脂(F): 100重量部
〔Tg;65.0℃、Mw;18500、Mn;4700、酸価6.5mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;128.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 20重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0103】
(透明トナー10の製造例)
下記処方10のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー10を製造した。
〈トナー原材料処方10〉
ポリエステル樹脂(F): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 15重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A) 2重量部
【0104】
(透明トナー11の製造例)
下記処方11のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー11を製造した。
〈トナー原材料処方11〉
ポリエステル樹脂(G): 100重量部
〔Tg;63.0℃、Mw;18400、Mn;4600、酸価6.5mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;134.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 15重量部
カルナウバワックス(A): 7重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0105】
(透明トナー12の製造例)
下記処方12のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー12を製造した。
〈トナー原材料処方12〉
ポリエステル樹脂(G): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
カルナウバワックス(A): 7重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0106】
(透明トナー13の製造例)
下記処方13のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー13を製造した。
〈トナー原材料処方13〉
ポリエステル樹脂(H): 100重量部
〔Tg;66.0℃、Mw;15400、Mn;3900、酸価7.0mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;142.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
N,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイド(A): 2重量部
【0107】
(透明トナー14の製造例)
下記処方14のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー14を製造した。
〈トナー原材料処方14〉
ポリエステル樹脂(H): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
ステアリン酸アマイド(A)〔花王製〕: 2重量部
【0108】
(透明トナー15の製造例)
下記処方15のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー15を製造した。
〈トナー原材料処方15〉
ポリエステル樹脂(H): 100重量部
結晶性ポリエステル樹脂(A): 10重量部
【0109】
(透明トナー16の製造例)
下記処方16のトナー原材料を使うこと以外は透明トナー1と同様にして、透明トナー16を製造した。
〈トナー原材料処方16〉
ポリエステル樹脂(H): 100重量部
カルナウバワックス(A): 5重量部
【0110】
(透明トナー17の製造例)
水100部、ビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水分散液(三洋化成工業株式会社製、固形分20%)10部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノール MON−7、三洋化成工業株式会社製)20部、高分子保護コロイドであるカルボキシメチルセルロース(セロゲンBSH、三洋化成工業株式会社製)の1%水溶液を40部、および酢酸エチル15部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを水相とする。
【0111】
撹拌棒および温度計をセットした容器に、ポリエステル樹脂(I)230部、結晶性ポリエステル樹脂(A)40部、カルナウバワックス(A)40部、および酢酸エチル200部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問かけて30℃にまで冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス株式会社製)を用いて、送液速度:1.2Kg/hr、ディスク周速度:10m/秒、0.5mmジルコニアビーズ充填量:80体積%、パス数:5回の条件で、ワックスの分散を行い、ワックス分散液を得た。なお、上記ポリエステル樹脂(I)のTgは64.0℃、Mwは15300、Mnは3800、酸価は7.0mgKOH/g、正接損失ピーク温度は143.7℃である。
【0112】
前記水相1250部、前記ワックス分散液1130部、イソブチルアルコール1部、イソホロンジアミン7部、乳化安定剤UCAT660M(三洋化成工業株式会社製)5部を容器に入れ、28℃環境下において、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて9,000rpmで30分間混合し、水系媒体分散液を得た。その後、前記水系媒体分散液を58℃まで昇温し、TKホモミキサーを用いて回転数1,500rpmで1時間更に分散混合し乳化スラリーを得た。
【0113】
撹拌機および温度計をセットした容器に、前記乳化スラリーを投入し、35℃で10時間脱溶剤した後、45℃で12時間熟成を行い、有機溶媒が留去された分散液を得た。前記分散液100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで15分間撹拌した後、減圧濾過した。その後、濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで15分間撹拌した後、減圧濾過した。その後、濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーTKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで15分間撹拌した後、減圧濾過した。その後、濾過ケーキにイオン交換水500部を加え、TKホモミキサーを用いて回転数6,000rpmで30分間撹拌した後、減圧濾過し、濾過ケーキを得た。
【0114】
上記の濾過ケーキを循風乾燥機にて40℃で24時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)1.0重量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、透明トナー17を製造した。
【0115】
(透明トナー18〜27の製造例)
気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)のルーバー開度を適宜調整しながら分級したり、分級時に取り分けられた微粉を意図的にブレンドしたりすることによって粒径分布を調整したこと以外は透明トナー13と同様にして、透明トナー17〜27を製造した。
【0116】
上記透明トナー製造例によって得られた透明トナー1〜透明トナー27の重量平均粒径(μm)、粒径4μm以下の粒子の割合(個数%)、粒径8μm以上の粒子の割合(体積%)、粒径10.08μm以上の粒子の割合(体積%)、正接損失ピーク温度(℃)、正接損失、120〜160[℃]の範囲における貯蔵弾性率(G’)の最大値および最小値(Pa)、70〜90[℃]の範囲における該貯蔵弾性率(G’)の差愛称値(Pa)、および結晶性のポリエステル樹脂の有無、滑剤(WAXの有無、アマイド系滑剤の有無)を下記表1にまとめて示す。
【0117】
【表1】

【0118】
(カラートナーの製造例)
[マスターバッチの製造例]
カーボンブラック(キャボット社製、リーガル400R)50部、ポリエステル樹脂(三洋化成工業製、RS801)50部を、更には水30部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて160℃で50分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して、ブラックマスターバッチ(1)を得た。
また、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Yellow 155をそれぞれカーボンブラックの代わりに使用すること以外は同様にして、マゼンタマスターバッチ(1)、シアンマスターバッチ(1)、イエローマスターバッチ(1)を作成した。
【0119】
〔ブラックトナーの製造例〕
下記ブラックトナーの処方の原材料を使う以外は透明トナー1と同様にして、ブラックトナー(1)を製造した。
〈ブラックトナーの処方〉
ポリエステル樹脂(J): 100重量部
〔Tg;64.2℃、Mw;15300、Mn;3800、酸価7.0mgKOH/g、
正接損失ピーク温度;144.0℃〕
結晶性ポリエステル樹脂(A): 15重量部
カルナウバワックス(A): 4重量部
ステアリン酸アマイド(A): 2重量部
ブラックマスターバッチ(1): 16重量部
【0120】
〔マゼンタトナー、シアントナー、イエロートナーの製造例〕
上記トナー原材料処方ブラックにおけるブラックマスターバッチ(1)の代わりに、前記マゼンタマスターバッチ(1)、シアンマスターバッチ(1)、イエローマスターバッチ(1)をそれぞれ使用すること以外は同様にして、それぞれマゼンタトナー(1)、シアントナー(1)、イエロートナー(1)を製造した。
【0121】
(実施例1)
透明トナー製造例1で作製した透明トナー1およびカラートナー製造例で作成した各カラートナー各5質量%と、コーティングフェライトキャリア95質量%を、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し帯電させ、透明トナー現像剤(1)、ブラック現像剤(1)、マゼンタ現像剤(1)、シアン現像剤(1)、イエロー現像剤(1)を作製した。
【0122】
透明トナー現像剤(1)を図5に示す電子写真現像装置の現像ユニット105E内に収容し、現像ユニット105A〜Dにはそれぞれイエロー現像剤(1)、マゼンタ現像剤(1)、シアン現像剤(1)、ブラック現像剤(1)を収容した。
各現像剤を収容した画像形成装置を用いて透明トナーおよび有彩色トナーの出力を行なった。付着量0.4mg/cmのカラートナーのベタ画像上に、付着量0.4mg/cmの透明トナーのベタ画像が重なるように、露光、現像、転写し、定着の線速を160mm/秒、定着温度190℃、NIP幅11mmで定着した後、画像の光沢度を測定した。定着後の透明トナーによるトナー層の厚さは7μmであった。また、透明トナー層の厚さが変わらないようにそのままの現像条件を用い、別途、付着量0.4mg/cmのカラートナーのベタ画像上に透明トナーによる画像面積5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)を出力し、透明トナー画像の精細性評価に使用した。なお、評価には王子製紙製PODグロスコート紙128g/mを使用した。
各評価項目〔定着性(低温定着性、耐ホットオフセット性)、保存性、光沢度、透明トナーの画像精細性〕の評価条件とその評価基準は下記による。
【0123】
<定着性>
定着温度を変化させてコールドオフセット温度(定着下限温度)とホットオフセット温度(耐ホットオフセット温度)を求めた。各特性評価の基準は以下の通りである。
[低温定着性]
◎ :130℃未満
○ :130〜140℃
□ :140〜150℃
△ :150〜160℃
× :160℃以上
[耐ホットオフセット性]
◎ :201℃以上
○ :191〜200℃
□ :181〜190℃
△ :171〜180℃
× :170℃以下
【0124】
<保存性>
それぞれのトナー10gを30mlのスクリューバイアル瓶に入れタッピングマシンで100回タッピングした後、45℃24時間恒温槽で保管し、室温に戻した後、針入度試験機で針入度を測定し、耐熱保存評価とした。
針入度が10mm以下のものは×、10〜15mmは△、15〜20mmは○、20mm以上は◎とした。
【0125】
<光沢度>
上記ベタ画像として出力した透明トナー画像を用いて、光沢は日本電色工業社製グロスメーターVGS−1Dを用い60度光沢で10箇所の画像を評価し、平均光沢が80以上を◎、60〜80を○、40〜60を△、40以下を×とした。
【0126】
<透明トナーの画像精細性>
上記画像面積5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)の文字再現性から画像の精細性の評価を行った。評価のランク分けは次のように行った。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:許容、 ×:実用上使用できないレベル
【0127】
(比較例1)
透明トナーとして、トナー製造例2で作成した透明トナー2を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0128】
(実施例2)
透明トナーとして、トナー製造例3で作成した透明トナー3を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0129】
(比較例2)
透明トナーとして、トナー製造例4で作成した透明トナー4を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0130】
(比較例3)
透明トナーとして、トナー製造例5で作成した透明トナー5を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0131】
(実施例3)
透明トナーとして、トナー製造例6で作成した透明トナー6を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0132】
(比較例4)
透明トナーとして、トナー製造例7で作成した透明トナー7を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0133】
(実施例4)
透明トナーとして、トナー製造例8で作成した透明トナー8を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0134】
(比較例5)
透明トナーとして、トナー製造例9で作成した透明トナー9を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0135】
(実施例5)
透明トナーとして、トナー製造例10で作成した透明トナー10を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0136】
(実施例6)
透明トナーとして、トナー製造例11で作成した透明トナー11を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0137】
(実施例7)
透明トナーとして、トナー製造例12で作成した透明トナー12を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0138】
(実施例8)
透明トナーとして、トナー製造例13で作成した透明トナー13を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0139】
(実施例9)
透明トナーとして、トナー製造例14で作成した透明トナー14を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0140】
(比較例6)
透明トナーとして、トナー製造例15で作成した透明トナー15を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0141】
(比較例7)
透明トナーとして、トナー製造例16で作成した透明トナー16を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0142】
(実施例10)
透明トナーとして、トナー製造例17で作成した透明トナー17を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0143】
(実施例11)
透明トナーとして、トナー製造例18で作成した透明トナー18を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0144】
(実施例12)
透明トナーとして、トナー製造例19で作成した透明トナー19を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0145】
(実施例13)
透明トナーとして、トナー製造例20で作成した透明トナー20を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0146】
(実施例14)
透明トナーとして、トナー製造例21で作成した透明トナー21を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0147】
(実施例15)
透明トナーとして、トナー製造例22で作成した透明トナー22を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0148】
(実施例16)
透明トナーとして、トナー製造例23で作成した透明トナー23を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0149】
(実施例17)
透明トナーとして、トナー製造例24で作成した透明トナー24を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0150】
(実施例18)
透明トナーとして、トナー製造例25で作成した透明トナー25を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0151】
(実施例19)
透明トナーとして、トナー製造例26で作成した透明トナー26を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0152】
(実施例20)
透明トナーとして、トナー製造例27で作成した透明トナー27を用いたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。
【0153】
(実施例21)
透明トナー13によるベタ画像の付着量を0.05mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。定着後の透明トナーによるトナー層の厚さは0.5μmであった。
【0154】
(実施例22)
透明トナー13によるベタ画像の付着量を0.1mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。定着後の透明トナーによるトナー層の厚さは2μmであった。
【0155】
(実施例23)
透明トナー13によるベタ画像の付着量を1.2mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。定着後の透明トナーによるトナー層の厚さは14μmであった。
【0156】
(実施例24)
透明トナー13によるベタ画像の付着量を1.5mg/cmとしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。定着後の透明トナーによるトナー層の厚さは16μmであった。
【0157】
(実施例25)
透明トナー13による出力画像のトナー層を、透明トナーのベタ画像上にカラートナーのベタ画像を形成するようにしたこと以外は実施例1と同様にして評価を行なった。透明トナーの画像精細性は、カラートナーのベタ画像を形成せずに透明トナー画像のみを出力して確認した。
【0158】
上記実施例1〜25、比較例1〜7の評価結果を下記表2に示す。なお、用いた透明トナー、最表面のトナー、透明トナー層の厚さを併せて表2に記載する。
【0159】
【表2】

【0160】
表2から明かなように、実施例1〜25においてはいずれも、低温定着性、高い耐ホットオフセット性、保存性(保管安定性、あるいは保存安定性)を両立し、且つ、精細かつ高光沢の画像が形成できることが分かる。一方、比較例1〜7においては、定着性(低温定着性、耐ホットオフセット性)、保存性、光沢度、透明トナーの画像精細性の少なくともいずれかの項目において「×」の評価判定が含まれており、本発明の目的とする課題がバランス良く達成できず実使用に耐えないレベルである。
すなわち、本発明の低温定着性、高い耐ホットオフセット性、保存安定性を両立し、且つ、精細かつ高光沢の画像が形成できる電子写真現像用透明トナーを複写機、レーザープリンターあるいはファクシミリ等の電子写真プロセスに用いることにより、省エネルギー化、画像形成処理速度の高速化、高画質化等の要求に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0161】
(図2、図3、図4の符号)
1 紙
2 セルロースの繊維
3 トナー層
4 有彩色トナー層
5 透明トナー層
(図5の符号)
101A 駆動ローラ
101B 従動ローラ
102 感光体ベルト
103 帯電器
104 レーザー書き込み系ユニット
105A〜105D それぞれイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット
105E 透明のトナーを収容する現像ユニット
106 給紙カセット
107 中間転写ベルト
107A 中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ
107B 中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ
108 クリーニング装置
109 定着ローラ
109A 加圧ローラ
110 排紙トレイ
113 紙転写ローラ
(図6の符号)
20 感光体ドラム
21 トナー
23 キャリア
40 現像装置
41 現像スリーブ
42 現像剤収容部材
43 ドクターブレード(現像剤供給規制部材)
44 支持ケース
45 トナーホッパー
46 現像剤収容部
47 現像剤撹拌機構
48 トナーアジテータ
49 トナー補給機構
(図7の符号)
20 感光体ドラム
32 像担持体帯電部材[帯電部材]
33 像露光系
40 現像装置
41 現像スリーブ
45 トナーホッパー
47 現像剤撹拌機構
50 転写機構[転写装置]
60 クリーニング機構[クリーニング装置]
61 クリーニングブレード
62 トナー回収室
70 除電ランプ
80 転写媒体
(図8の符号)
20 感光体
24a 駆動ローラー
24b 駆動ローラー
26 クリーニング前露光光源
32 帯電部材
33 像露光系
40 現像装置
50 転写装置[転写機構]
61 クリーニングブレード
64 ブラシ状クリーニング手段
70 除電ランプ
(図9の符号)
20 感光体
32 ブラシ状接触帯電手段[帯電手段]
40 現像手段[現像装置]
61 クリーニングブレード[クリーニングブレード手段]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【特許文献1】特開平4−278967号公報
【特許文献2】特開平4−362960号公報(特許第3146367号公報)
【特許文献3】特開平9−200551号公報
【特許文献4】特開平5−158364号公報
【特許文献5】特開平8−220821号公報(特許第2750105号公報)
【特許文献6】特開2009−109926号公報
【特許文献7】特開平4−338984号公報(特許第3030576号公報)
【特許文献8】特開昭62−63940号公報
【特許文献9】特開2003−167384号公報(特許第3949553号公報)
【特許文献10】特許第3168366号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に、透明トナー画像を形成するために用いられる電子写真現像用透明トナーであって、
前記トナーの組成分として、結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂および滑剤を含有すると共に、前記トナーの粘弾性評価により得られ下記式(1)で算出される正接損失のピーク値が80〜160[℃]の範囲にあり、該正接損失のピーク値が3以上であり、且つ、式(1)に示す貯蔵弾性率(G’)の値が120〜160[℃]において1[Pa]以上、1×10[Pa]以下であることを特徴とする電子写真現像用透明トナー。
損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=正接損失(tanδ) …(1)
【請求項2】
前記透明トナーの重量平均粒径(Mw)が3〜8μmであり、粒径分布において、4μm以下の粒子の割合が10〜70個数%、8μm以上の粒子の割合が1〜20体積%、10.08μm以上の粒子の割合が6体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項3】
前記貯蔵弾性率(G’)の値が、70〜90[℃]において1×10[Pa]以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項4】
前記滑剤が、高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤、脂肪族炭化水素系滑剤、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項5】
前記滑剤が、高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸系滑剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項6】
前記滑剤が、脂肪酸アマイド系滑剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項7】
前記脂肪酸アマイド系滑剤が、少なくともトナー内部に含有されることを特徴とする請求項6に記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項8】
前記脂肪酸アマイド系滑剤がN,N’−エチレン−ビスステアリン酸アマイドであることを特徴とする請求項6または7に記載の電子写真現像用透明トナー。
【請求項9】
少なくとも像担持体表面を帯電させる工程と、該帯電された像担持体上に形成した静電潜像を請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーを用いて現像する工程と、該像担持体上に形成された透明トナー像を記録媒体上に転写する工程と、該記録媒体上に転写された透明トナー像を定着部材により定着させる定着工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
前記記録媒体上に1種類以上の有彩色トナーを用いてカラー画像を形成する工程と、前記電子写真現像用透明トナーを用いて透明トナー画像を形成する工程とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項11】
前記定着後の透明トナー像の層厚が、1〜15μmであることを特徴とする請求項9または10に記載の電子写真画像形成方法。
【請求項12】
前記透明トナー像の少なくとも1層が、前記画像が定着された記録媒体の最表面に形成されていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の電子写真画像形成方法。
【請求項13】
像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像をトナーもしくはトナーとキャリアからなる現像剤を用いて可視像とする現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられ、前記トナーが請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真現像用透明トナーであることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−194453(P2012−194453A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59507(P2011−59507)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】