説明

電子写真装置の部品用スプレー塗布装置および電子写真感光体の製造方法

【課題】 スプレーガンのノズル先端に付着・乾燥した塗液カスがスプレー塗工時に脱落し、被塗工物に付着して発生する塗工欠陥がなく、被塗工物上に均一な塗膜を安定して形成することができる電子写真装置の部品用スプレー塗布装置および電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】 塗布ブース内で被塗布物上に塗膜を形成する電子写真装置の部品用スプレー塗布装置において、スプレーガンが塗布液と霧化エアーとがそれぞれ給送されるように構成された塗料ノズルとエアキャップと、塗料ノズル内にニードルとを備え、塗料ノズルには塗布液を給送する流路と吐出口を有すると共にエアキャップと塗料ノズルとの間には霧化エアを給送するエア給送路と排出口を有し、さらに、塗料ノズル、エアキャップ、ニードルの相互の位置関係、寸法等(図中のH、θ、t、9(c)、h、10(m)、T、D/T、表面粗さ)を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置の部品用スプレー塗布装置、詳しくは電子写真感光体、転写ローラ、転写ベルト、定着ローラ、あるいは、定着ベルト等の電子写真装置用の部品の製造に使用されるスプレー塗布装置およびそれを用いた電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体には、アモルファスシリコン等を使用した無機感光体と、有機光導電体を使用した有機感光体(以下、「OPC」と略す)がある。OPCは塗工により製造することが可能であり、塗膜の構成と各塗膜の成分、厚さによって特性を制御できるので、広く使用されている。このOPCは導電性基体上に感光層を塗工により形成するが、塗工法としては、いわゆるディッピング(浸漬)方式とスプレー塗工方式が使用されており、一部のOPCでは、導電性基体上に浸漬塗工で下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、この上に保護層をスプレー塗工で形成することも行われている。
【0003】
スプレー塗工は、このようにOPCの製造に用いられているが、電子写真装置の他の部品、例えば、転写ローラ、転写ベルト、定着ローラ、定着ベルト等の製造にも使用され、浸漬塗工に比べて少ない塗工液量で塗膜を形成できるので、近年、広く使用されるようになってきた。
【0004】
スプレー塗工を行うスプレーガンは、市販の標準ノズルを使用して、液吐出量と霧化エア量の組み合わせでミスト径を要求品質に合わせて生産されるが、電子写真感光体のように製品サイズが小さいものは、どうしても間欠スプレーにせざるを得ないので、ノズル先端が乾燥しやすく、ノズル先端に付着・乾燥した塗液カスが脱落して塗膜面に付着し、良品率や生産性の低下を招きコストアップになるという問題が生じている。
【0005】
図13に一般的なスプレーガンの先端形状を示す。このようなスプレーガンによると霧化エアの乱流や巻き込みによって塗布液がノズル吐出口等に付着し、塗液結晶が成長して、時々この結晶が脱落し異物欠陥となる。また、ノズル詰まりやスプレーパターンの変形による膜厚不良が発生する。特に分散系の顔料液の場合にこうした現象が強く見られる。また、塗布液ミスト径が目標とする粒子径通りにいかず、塗膜表面粗さが規格外となったり、異物欠陥として画像異常になるなどの問題がある。この場合も液性によるが、溶解液で粘度が50CPS以上の液にこのような現象が強く現れる傾向がある。
【0006】
従来、ノズル詰まりの対策としてはノズル先端を溶剤雰囲気中に入れたり、超音波洗浄機構を設ける等の提案がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この案では機構が複雑になり、ノズル洗浄中は生産停止にしなければならないなどの問題がある。また、スプレーノズルが金属製のため吐出液中に金属イオンが含まれて塗膜中に残り、画像欠陥となる問題がある。
【0007】
一方、スプレーガンのノズル先端汚れを無くす方法として、塗膜形成後、スプレーガンの先端にキャップをあてがい、洗浄液をノズルからエア噴出孔を通じて導入し、ノズル先端の内外面を洗浄する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)が、洗浄のための治具が必要となるほか、さらに洗浄時間を要するため、生産性が落ち製造コスト高となる問題がある。
【0008】
また、スプレーガン先端部分に付着する水系エマルジョンの固化と変質を防止するため、霧化エアノズルの口径を塗料ノズルの内径の4〜10倍にする方法(例えば、特許文献3参照)、また、塗料噴射口の先端に塗料が付着するのを阻止して、粒子状に固化した塗料が飛翔しないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかし、上記方法では、いずれもスプレーガンもしくは塗料噴射口先端部分に塗料が付着する阻止方法としては効果が十分でなく、塗料付着を完全に無くすことはできない。このため、付着してしまった塗料の影響を受けて、形成される塗膜の均一性が劣るという問題が生じる。
【0010】
また、霧化用空気に溶剤を混入させることによってノズル先端を常に溶剤で洗い、塗料がノズル先端に付着、固化しないようにして均一な塗膜を得る方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、この方法では、塗布液の霧化が不十分になり、塗膜の均一性が劣るという問題がある。
【特許文献1】特開平4−362951号公報
【特許文献2】特開2003−211064号公報
【特許文献3】特開平8−221707号公報
【特許文献4】特開平11−114458号公報
【特許文献5】特開2003−122035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、複写機やプリンター等に用いられる電子写真感光体は、高画質化により、非常に高い均一性が求められている。一方、スプレー塗布装置は電子写真感光体のみでなく、電子写真装置に用いられる転写ローラ、転写ベルト、定着ローラ、あるいは、定着ベルト等の電子写真装置用の部品の製造の際にもスプレー塗工による塗膜形成が行われており、その用途が広い。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、スプレー塗工により電子写真感光体を始めとする電子写真装置用の部品を製造するに当たり、スプレーガンのノズル先端に付着・乾燥した塗液カスがスプレー塗工時に脱落し、被塗工物に付着して発生する塗工欠陥がなく、被塗工物上に均一な塗膜を安定して形成することができる電子写真装置の部品用スプレー塗布装置とそれを用いた電子写真感光体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、塗布ブース内で、被塗布物を回転させながら被塗布物の軸線方向に移動可能にガイドレールに取り付けられたスプレーガンから塗布液を噴霧して被塗布物上に塗膜を形成する電子写真装置の部品用スプレー塗布装置であって、スプレーガンが塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された塗料ノズルとエアキャップと、塗料ノズル内にニードルとを備え、塗料ノズルには塗布液を給送する流路と吐出口を有すると共に該エアキャップと該塗料ノズルとの間には霧化エアを給送するエア給送路と排出口を有し、さらに、エアキャップの先端と塗料ノズルの先端とが、±0.3mmの差でいずれかが前面となる構成であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置において、スプレーガンのノズル先端部の外側テーパー角度(θ)を15〜45度の範囲とすること、スプレーガンのノズル吐出口の肉厚(t)を0.1mm以上0.5mm以下とすること、スプレーガンの塗料ノズルとニードルとが外気と接する隙間(c)を0.1mm以下とすること、スプレーガンのニードル先端を塗料ノズル先端より0.1mm以上2mm以下突出させること、スプレーガンの塗料ノズル先端の角部を面取りすること、スプレーガンの塗料ノズル吐出口、エアキャップ、ニードル先端の各材質をそれぞれ3フッ化塩化エチレン、ポリプロピレン、超硬合金、または、それぞれSUS、SUS、PEEKとすること、スプレーガンのエアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間(T)を、0.15mm以上1.0mm以下とすること、スプレーガンの塗料ノズルの外径Dと、エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tとの比(D/T)を0.1〜1.0とすることおよびスプレーガンの塗料ノズル先端の壁面およびエアキャップの内壁の表面粗さを1.6〜6.3Sとすることの少なくとも一つをさらに具備することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置を用いて、塗料ノズルの流路と吐出口から塗布液を給送、吐出すると共に、エアキャップと塗料ノズルとの間の空隙と排出口から霧化エアを給送、排出し、基体上に塗布液を噴霧し塗布することを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3記載の電子写真感光体の製造方法において、スプレーガンの霧化エアの圧力が20〜100KPa、かつ、液吐出量が1〜50cc/分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置によれば、スプレーガンの各部の位置関係、寸法等を最適に調整したことから、塗料ノズルの吐出口から吐出される塗布液とエアキャップの霧化エア排出口から排出される霧化エアとが均一に混合され、ミスト粒径が均等化される。また、塗料ノズルの吐出口近傍の気流に乱流や淀みが無くなり塗料ノズル吐出口に隣接する面に塗布液が付着することが抑制され、そのため被塗工物に液カスが脱落・付着して発生する塗工欠陥がなく、被塗工物上に均一な塗膜を安定して形成することができる。
【0018】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、上記電子写真装置の部品用スプレー塗布装置により、基体上に該塗布液を噴霧し塗布して電子写真感光体を製造することから、塗料ノズルの吐出口近くの外気と接触する面や該吐出口に隣接する面への液カスの付着がなく、そのため液カスの脱落・付着により発生する塗工欠陥がなく、しかも、塗料ノズルの吐出口から吐出される塗布液とエアキャップの霧化エア吐出口から排出される霧化エアとが均一に混合され、ミスト粒径が均等化されるため、基体上に均一な塗膜を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の一実施の形態について図を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置の例を示す模式図である。
【0021】
図1に示すように、被塗布物(図中、ワーク)51は、塗布ブース52内に回転自由に配置されており、一方、スプレーガン53は、ワーク51の軸線方向に沿って移動可能にガイドレール54に取り付けられている。塗布ブース52には、スプレーガン53から噴霧された余分のスプレーミストを排除するため、クリーンエア供給口55と排気口56が設けられている。そして、塗布液タンク58から塗布液がポンプ59によって供給されると共に、霧化エアタンク61から霧化エアがポンプ62によって供給され、塗布液が微粒子化されスプレーガン53からワーク51上に噴霧される。
【0022】
図2は、本発明の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置におけるスプレーガンを示す概略断面図である。
【0023】
図2に示すように、スプレーガン1は、塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された塗料ノズル2とエアキャップ3があり、さらに該塗料ノズル2内にニードル4が備えられている。そして該ノズル2には塗布液を供給する流路20と吐出口5が設けられており、また、該エアキャップとノズルとの間には霧化エアを供給するエア供給路30と排出口6が設けられている。
【0024】
本発明におけるスプレーガン1は、上述の構成に、さらに塗料ノズル2の吐出口近くの外気と接触する面や該吐出口に隣接する面への液カスの付着が抑制されるように、塗料ノズル2、エアキャップ3、ニードル4の相互の位置関係や寸法が好的に調整されている。さらにまた、上記スプレーガンの霧化エアの圧力や液吐出量が最適に調整され、ミスト粒径の好ましい噴霧が行われるようになっている。
【0025】
以下にそれら好適な位置関係などについて順次説明する。
【0026】
まず、図3に示すように、エアキャップ3の先端と塗料ノズルの先端とが、±0.3mmの差(H)でいずれかが前面となる構成であることが好ましく、このようにすることによって、スプレー塗工時、エアキャップ3の隙間からの圧縮空気(霧化エア)流が排出されるとき、排出口6での乱流や巻き込みの発生を無くし、それにより塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8への塗布液の付着が無くなり、塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8からの液カスの脱落による塗膜欠陥の発生が防止できる。
【0027】
エアキャップ3の先端と塗料ノズル2の先端との位置の差(H)が−0.3mm以上0.3mm以下の条件を外れると液カスが付き易くなる。すなわちエアキャップ3の先端が塗料ノズルの先端より0.3mmより大きく突出する場合は、スプレー塗工時、吐出口5に隣接する面7、8に塗布液が付着してしまい吐出口5に隣接する面7、8からの液カスの脱落による塗膜欠陥が発生し良品率が低下しやすくなる。一方、エアキャップ3が塗料ノズル2より0.3mmより大きく引っ込んでいる場合は、スプレー塗工時のミスト粒径にバラツキが生じ塗膜の表面性が悪くなり、膜厚にバラツキが生じ、画像不良が発生しやすくなる。
【0028】
エアキャップ3の先端と塗料ノズルの先端との位置の差(H)は、さらに好ましくは、±0.03mmにすることである。塗布液の濃度は、固形分で、0.5%〜35%、好ましくは1.5%〜15%である。
【0029】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、さらに図4に示すように、スプレーガン1の塗料ノズル先端部の外側テーパー角度(θ)を15〜45度の範囲とすることが好ましい。
【0030】
このようにすることにより、塗料ノズル吐出口5から吐出される塗布液とエアキャップの霧化エア排出口6から排出される霧化エア(圧縮空気)とが均一に混合された状態になりミスト粒径の均等化が可能になる。また、塗料ノズル吐出口5の近傍の気流に乱流や淀みが無くなり、塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8に塗布液が付着することが抑制される。塗料ノズル先端部の外側テーパー角度θが15〜45度を外れるとミスト粒径の均等化ができにくくなる。
【0031】
上記塗料ノズル先端部の外側テーパー角度(θ)のさらに好ましい範囲は25〜35度である。
【0032】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、さらに図5に示すように、上記スプレーガンの塗料ノズル吐出口5先端の肉厚(t)が0.1mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。
【0033】
このようにすることにより、エアキャップ3の隙間からの圧縮空気流が吐出するとき塗料ノズル吐出口5の先端で巻き込みの発生が抑制され、巻き込みの発生による吐出口5への塗布液の付着がより少なくなる。それゆえ、塗液結晶が成長することもなく、経時的な塗液結晶の脱落が解消されて塗膜品質、良品率を向上することができる。塗料ノズル吐出口5の先端の肉厚tが0.1mm以上0.5mm以下を外れると液カスの付着がしやすくなる。
【0034】
上記塗料ノズル吐出口5先端の肉厚(t)のさらに好ましい範囲は、0.1mm以上0.2mm以下である。
【0035】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、図6に示すように、上記スプレーガンの塗料ノズル2とニードル4とが外気と接する隙間9を0.1mm以下とすることが好ましい。
【0036】
このようすることにより、スプレー塗工を行うことで経時的に増加する塗料ノズル2とニードル4とが外気に接する隙間9への液カスの堆積を抑制ですることができ、スプレー塗工中の液カスの脱落を防止でき、塗膜品質、良品率を向上することができる。
【0037】
塗料ノズル2とニードル4とが外気と接する隙間9が0.1mmより大きいと、たとえスプレー塗工の開始前毎にノズル先端を溶剤で拭き洗浄しても、塗料ノズル2とニードル4とが外気と接する隙間9に堆積する液カスを除去しきれず、スプレー塗工によって液カスが脱落し塗膜欠陥となる。
【0038】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、図7に示すように、上記スプレーガンの塗料ノズル先端とニードル先端の位置が、0.1mm以上2mm以下の差でニードル先端が突出することが好ましい。
【0039】
このような差(h)でニードル先端を突出させることにより、エアキャップの排出口6から排出される霧化エア(圧縮空気)に直進性が得られ、それによりスプレーパターンの安定化が図れ、均一な厚みの塗膜が得られると共に、塗布液の付着効率が向上する。
【0040】
スプレーガンの塗料ノズル先端とニードル先端の差(h)が、0.1mmより小さく、また、2mmより大きくては膜厚の均一な塗膜は得られない。
【0041】
上記塗料ノズル先端とニードル先端の位置の差がさらに好ましい範囲は、1mm以上1.6mm以下である。
【0042】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、図8に示すように、上記スプレーガンの塗料ノズル先端の角部(かどぶ)10が0.05mm以上0.1mm以下面取りされていることが好ましい。
【0043】
このように面取りすることにより、塗料ノズル吐出口5から吐出される塗布液とエアキャップ3と塗料ノズル2との隙間から排出される圧縮空気とからなるスプレーミストに乱流や滞留が無くなり、塗料ノズル先端に経時的に増加する塗布液の付着が抑制され、塗料ノズル吐出口5の詰まりによる吐出量のバラツキが抑えられ均等な膜厚が得られる。
【0044】
塗料ノズル先端角部の面取りが0.05mmより小さく、また0.1mmより大きくては面取りの効果が出ない。
【0045】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、上記スプレーガンの塗料ノズル、エアキャップ、ニードルの各材質が、それぞれ3フッ化塩化エチレン、ポリプロピレン、超硬合金、または、それぞれSUS、SUS、PEEKとすることが好ましい。
【0046】
なお、SUSはステンレス鋼であり、本発明ではオーステナイト系ステンレス鋼(JIS記号SUS304、SUS316)を用いた。PEEKはポリエーテルエーテルケトンである。また、超硬合金は炭化タングステン(WC)を主成分とし、必要により微量の炭化タンタル(TaC)等を含む硬質炭化物をコバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の金属で結合した合金である。
【0047】
スプレーガンの保守点検作業において、上記部材の脱着によって発生する微粉が塗膜中や塗膜表面に付着したり、吐出液中に金属イオンとなって含まれ塗膜中に残存して、黒ポチなどの画像欠陥となる問題を発生させるが、スプレーガンの塗料ノズル2、エアキャップ3、ニードル4の材質を耐磨耗性、耐溶剤性、機械加工性良好な合成樹脂及び金属とを組み合わせることにより、上記した問題の解決に優れた力を発揮する。
【0048】
好適な材質として、エアキャップ3には耐磨耗性、耐溶剤性、機械加工性良好なPEEK材の他、ポリアセタール樹脂の使用も可能である。塗料ノズル2には三フッ化塩化エチレン樹脂等のフッ素樹脂が好ましい。ニードル4には顔料系の分散液を使用する場合超硬合金のような高硬度のものが好ましいが、液漏れを気にする場合や、完全な消耗品と考えるならば、SUS材やSUS材の先端にフッ素樹脂やポリエチレン樹脂等の耐溶剤性の樹脂を取り付けたものでもよい。スプレーガン本体には3フッ化塩化エチレン樹脂等の耐溶剤性のある樹脂の他、アルミニウム合金やステンレス鋼を使用してもよい。
【0049】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、図9に示すように、上記スプレーガンのエアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tを、0.15mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。
【0050】
このようにすることにより、スプレー塗工時エアキャップの隙間から圧縮空気流が排出されるとき、排出口6において、最適の排出速度が確保されることによって乱流や巻き込みの発生がなくなり、それによる塗布液の塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8への付着がなくなり、液カスの脱落による塗膜欠陥の発生が防止できる。また、スプレー塗工時に塗料ノズル吐出口付近の外気と接する面に液カスを付着させないことが可能となる。
【0051】
該隙間Tが1.0mmより大きいと、圧縮空気流の乱流や巻き込みにより塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8に塗布液が付着してしまい、塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8からの液カスの脱落による塗膜欠陥が発生し、良品率が低下してしまう。一方、隙間Tが0.1mmより小さい場合は、圧縮空気の流量不足によりスプレー塗工時のミスト粒径にバラツキが発生し塗膜表面性が悪くなり、塗膜の膜厚にバラツキが生じ、画像不良が発生する。
【0052】
上記エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tのさらに好ましい範囲は、0.2mm以上0.5mm以下、特に好ましい範囲は、0.25mm以上0.4mm以下である。
【0053】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、図10に示すように、該スプレーガンの塗料ノズルの外径Dと、エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tとの比(D/T)を、0.1〜1.0とすることが好ましい。
【0054】
このようにすることにより、塗料ノズル吐出口5から吐出される塗液とエアキャップの空気排出口から出る圧縮空気とが均一に混合され、ミスト粒径の均等化ができる。また、塗料ノズル吐出口5の近傍の気流に乱流や淀みが無くなり、塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8に塗液が付着することを抑制できる。
【0055】
上記塗料ノズルの外径Dと隙間Tとの比(D/T)のさらに好ましい範囲は0.15〜0.5である。
【0056】
また、上記のエアキャップ3と塗料ノズル2との位置関係に加え、図11に示すように、スプレーガンの塗料ノズル2の外側表面(テーパー面)粗さ及びエアキャップ内壁表面粗さを、1.6s〜6.3s以下とすることが好ましい。
【0057】
このように表面粗さを滑らかにすることにより、霧化エア排出時の表面抵抗がなく霧化エアがスムースに排出されるので、ミスト粒径の均等化が図れると共に塗料ノズル液吐出口近傍の気流に乱流や淀みが無くなり、塗料ノズル吐出口5に隣接する面7、8に塗液が付着することを抑制することができる。
【0058】
次に、本発明の電子写真感光体の製造装置により製造される電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0059】
図1に示すように、塗布ブース52内において、被塗布物(図中、ワーク)51を回転自由に配置し、ワーク51の軸線方向に移動可能にガイドレール54に取り付けられたスプレーガン53により、塗布液タンク58から塗布液が供給されると共に、霧化エアタンク61から霧化エアが供給されて、塗布液が微粒子化され、ワーク51上に噴霧して製造される。
【0060】
ここで、電子写真感光体の製造方法において用いるスプレーガンのノズル、エアキャップ、ニードルの相互の位置関係や寸法を前述のような好適な範囲に設定する。
【0061】
すなわち、スプレーガンのエアキャップの先端と塗料ノズルの先端の位置の差(H)、塗料ノズル先端部の外側テーパー角度(θ)、塗料ノズル吐出口5先端の肉厚(t)、塗料ノズル2とニードル4とが外気と接する隙間9、塗料ノズル先端とニードル先端の位置の差(h)、塗料ノズル先端の角部(かどぶ)10の面取り、塗料ノズル、エアキャップ、ニードルの各材質、エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間T、塗料ノズルの外径Dと、エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tとの比(D/T)、塗料ノズル2の外径表面粗さ及びエアキャップ内壁表面粗さを好適な範囲に設定する。
【0062】
また、エアキャップ空気吐出口1から出る圧縮空気(霧化エア)の圧力を20KPa〜100KPaの範囲で、液吐出量を1〜50cc/分の範囲とすることが好ましい。
【0063】
このようにすることにより、霧化エアと塗液流のバランスが最適になり、ミスト粒径の均等化が図れる。
【0064】
上記圧縮空気(霧化エア)の圧力と液吐出量のさらに好ましい範囲は、25〜50KPaで、2.5〜12cc/分である。
【0065】
電子写真感光体の構成としては、基板(基体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層などを順次設けたものが例として挙げられる。
【0066】
本発明のスプレー塗布装置による塗工対象としては、上述のように電子写真感光体のみでなく、電子写真感光体以外の例えば、転写ローラ、あるいは、転写ベルトの製造の際のスプレー塗工による塗膜形成や、定着ローラ、あるいは、定着ベルトの製造におけるスプレー塗工による塗膜形成においても、塗膜欠陥の抑制が可能であり、均一で優れた品質の塗膜を形成することができる。
【0067】
特に、近年の1200dpiあるいはそれ以上の高解像度な電子写真装置や、フルカラー出力可能な電子写真装置に使用される上記部品のスプレー塗工に適している。例えば、定着ベルトの場合を例に挙げると、ポリイミドフィルム製ベルトにプラーマーをスプレー塗工し、更にその上にシリコン系樹脂をスプレー塗工等で塗工して作製するが、そのような塗工に本発明はそのまま適用することができる。
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)以下に示す組成で、下引き層用、電荷発生層用、電荷輸送層用の各塗布液を調製し、下記塗工条件で、それぞれスプレー塗布によって積層形成して電子写真感光体を作製した。なお、各層の形成は10本づつ連続スプレー塗布して行い、順次各層を積層して電子写真感光体10本を作製した。
【0070】
(下引き層の形成)<下引き層用塗布液の調整>
アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL(大日本インキ化学工業社製))15重量部、メラミ樹脂(スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製))10重量部をメチルエチルケトン150重量部に溶解し、これに酸化チタン粉末(タイペールCR−EL(石原産業社製))90重量部を加えボールミルで12時間分散した。
得られた溶液を容器に取り出し、固形分が25重量%となるようにシクロヘキサノンで稀釈し、下引層用塗工液とした。
【0071】
<下引き層用塗布液の塗布条件>
上記調製した下引き層用塗布液を、図1に示したスプレー塗布装置を用いて、φ170mm、長さ410mm、厚み30μm、最大表面粗さ0.05μmのニッケルシームレスベルトにスプレー塗布して下引き層を形成した。
【0072】
スプレーガンは図12に示す構成のものを用いた。
【0073】
また、図12における各符号の名称、該符号部分の角度または寸法及びその他の条件を下記に示す。
【0074】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=エアキャップ3の先端が+0.03mm前面。なお、Hの測定はエアキャップと塗料ノズルを組み付けた後、ダイヤルゲージを用いて行った。
【0075】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=30度
【0076】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=0.2mm
【0077】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.01mm、
【0078】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が1.4mm突出
【0079】
10(m):塗料ノズル2の先端の角部=0.1mmの面取りを施す
【0080】
材質:塗料ノズル=3フッ化塩化エチレン、エアキャップ3=ポリプロピレン、ニードル先端=超硬合金
【0081】
T:エアキャップ3内壁と塗料ノズル外壁との隙間=0.35mm
【0082】
T/D:塗料ノズル2の先端外径Dとエアキャップ3と内壁と塗料ノズル2の外壁との隙間Tとの比=0.3
【0083】
スプレーガンの霧化エア(圧縮空気)圧力=25KPa、液吐出量=6.0cc/分
塗料ノズル2の外径ならびにエアキャップ3の内壁の表面粗さ=1.6s
【0084】
上記θ、t、9、h、10、T、T/Dの各測定は、形状測定機能のあるデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製VHX200)を用いた。また、表面粗さは、表面粗さ計((株)小坂研究所製SE3500)を用いて測定した。構造上、表面粗さ計で測定できない箇所は製作段階で加工条件を最適化し表面粗さが粗くならないように対応した。
【0085】
上記の条件でスプレー塗工後、130℃20分間乾燥し、膜厚が8.2μm、有効画像領域の最大膜厚差が0.4μmの下引き層を形成した。
【0086】
(電荷発生層の形成)<電荷発生層用塗布液の調製>
次に、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックHL−S:積水化学工業社製)5重量部をメチルエチルケトン150重量部に溶解し、これに下記構造式(1)で示すトリスアゾ顔料10重量部を加え、ボールミルで48時間分散後、さらにシクロヘキサノン210重量部を加えて3時間分散を行った。得られた溶液を容器に取り出し、固形分が1.5重量%となるようにシクロヘキサノンで稀釈した。
【0087】
【化1】

【0088】
<電荷発生層用塗布液の塗布条件>
上記調製した電荷発生層用塗布液を、下引き層の場合と同様に図12のスプレーガンを用い、スプレーガンの符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更して、下引き層を形成した被塗布物(ワーク)上にスプレー塗布した。塗布後、130℃ 20分間乾燥し、波長690nmの透過率4%で有効画像領域の最大透過率差が0.2%の電荷発生層を形成した。
【0089】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=エアキャップ3の先端が−0.25mm
【0090】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=30度
【0091】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=0.2mm
【0092】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.01mm、
【0093】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が1.4mm突出
【0094】
10(m):塗料ノズル2の先端の角部=0.1mmの面取りを施す
【0095】
材質:塗料ノズル2=3フッ化塩化エチレン、エアキャップ3=ポリプロピレン、ニードル先端=超硬合金
【0096】
T:エアキャップ3内壁と塗料ノズル外壁との隙間=0.40mm
【0097】
T/D:塗料ノズル2の先端外径Dとエアキャップ3と内壁と塗料ノズル2の外壁との隙間Tとの比=0.25
【0098】
スプレーガンの霧化エア(圧縮空気)圧力=50KPa、液吐出量=3.0cc/分
【0099】
塗料ノズル2の外径ならびにエアキャップ3の内壁の表面粗さ=1.6s
【0100】
(電荷輸送層の形成)<電荷輸送層用塗布液の調製>
次に、テトラヒドロフラン83重量部に、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂10、シリコーンオイル(KF−50:信越化学工業社製)0.002重量部を溶解し、これに下記構造式(2)の電荷輸送物質8重量部を加えて溶解させ、固形分が8重量%となるようシクロヘキサノンで稀釈し電荷輸送層塗布液を調製した。
【0101】
【化2】

【0102】
<電荷輸送層用塗布液の塗布条件>
上記調製した電荷輸送層用塗布液を、下引き層の場合と同様、図12のスプレーガンを用い、符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更して、電荷発生層上にスプレー塗布後、130℃、20分間乾燥し、膜厚25μm、有効画像領域の最大膜厚差1.2μmの電荷輸送層を形成した。
【0103】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=エアキャップ3が+0.3mm
【0104】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=30度
【0105】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=0.2mm
【0106】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.01mm、
【0107】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が1.4mm突出
【0108】
10(m):塗料ノズル2の先端の角部=0.1mmの面取りを施す
【0109】
材質:塗料ノズル2=SUS304、エアキャップ3=ポリプロピレン、ニードル先端=SUS304
【0110】
T:エアキャップ3内壁と塗料ノズル外壁との隙間=0.40mm
【0111】
T/D:塗料ノズル2の先端外径Dとエアキャップ3と内壁と塗料ノズル2の外壁との隙間Tとの比=0.25
【0112】
スプレーガンの霧化エア(圧縮空気)圧力=45KPa、液吐出量=11.0cc/分、塗料ノズル2の外径ならびにエアキャップ3の内壁の表面粗さ=1.6s
【0113】
その後、エンドレスベルト状感光体の長さが367mmになるよう両端をカットした。以上のようにして、実施例1の電子写真感光体を10本作製した。
【0114】
なお、実施例1で得られた電子写真感光体の下引き層及び電荷輸送層の膜厚差は、実施例1と同様に支持体上に単独の膜を設け、渦電流式膜厚測定器(フィッシャー社製)により任意の測定点80点における膜厚を測定し、その最大値と最小値の差とした。電荷発生層の透過率差は、透明PETフィルム上に同様に単独の膜を設け、分光光度により690nmにおける透過率を任意の測定点60点について測定し、その最大値と最小値の差とした。以下の実施例、比較例でも同様にして膜厚を測定した。
【0115】
(実施例2)
実施例1と同様であるが、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層のスプレー塗工における図12に示すスプレーガンの符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更した。
【0116】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=エアキャップ3が−0.01mm
【0117】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=25度
【0118】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=0.1mm
【0119】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.01mm、
【0120】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が1.5mm突出
【0121】
10(m):塗料ノズル2の先端の角部=0.05mmの面取りを施す
【0122】
材質:塗料ノズル2=SUS316、エアキャップ3=PEEK、ニードル先端=SUS304
【0123】
T:エアキャップ3内壁と塗料ノズル外壁との隙間=0.40mm
【0124】
T/D:塗料ノズル2の先端外径Dとエアキャップ3と内壁と塗料ノズル2の外壁との隙間Tとの比=0.25
【0125】
スプレーガンの霧化エア(圧縮空気)圧力=下引き層20KPa、電荷発生層80KPa、電荷輸送層50KPa、液吐出量=下引き層7.0cc/分、電荷発生層2.5cc/分、電荷輸送層14cc/分、塗料ノズル2の外径ならびにエアキャップ3の内壁の表面粗さ=6.3s
【0126】
下引き層の膜厚は8.3μm、有効画像領域の最大膜厚差が0.4μmであった。
【0127】
また、電荷輸送層の付着量は、波長690nmの透過率で示した場合、透過率は4%で有効画像領域の最大透過率差が0.5%であった。
【0128】
また、電荷輸送層の膜厚は、膜厚25μm、有効画像領域の最大膜厚差1.1μmであった。
【0129】
以上のようにして、実施例2の電子写真感光体を10本作製した。
【0130】
(実施例3)
実施例1と同様であるが、下引き層のスプレー塗工における図12に示すスプレーガンの符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更した。
【0131】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=エアキャップ3が−0.3mm
【0132】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=30度
【0133】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=0.2mm
【0134】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.01mm、
【0135】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が1.4mm突出
【0136】
10(m):塗料ノズル2の先端の角部=0.1mmの面取りを施す
【0137】
材質:塗料ノズル2=3フッ化塩化エチレン、エアキャップ3=ポリプロピレン、ニードル先端=超硬合金
【0138】
T:エアキャップ3内壁と塗料ノズル外壁との隙間=0.35mm
【0139】
T/D:塗料ノズル2の先端外径Dとエアキャップ3と内壁と塗料ノズル2の外壁との隙間Tとの比=0.3
【0140】
スプレーガンの霧化エア(圧縮空気)圧力=25KPa、液吐出量=5.5cc/分、塗料ノズル2の外径ならびにエアキャップ3の内壁の表面粗さ=1.6s
【0141】
下引き層の膜厚は6.3μm、有効画像領域の最大膜厚差が0.3μmであった。
【0142】
また、電荷輸送層の付着量は、波長690nmの透過率で示した場合、透過率は4%で有効画像領域の最大透過率差が0.5%であった。
【0143】
また、電荷輸送層の膜厚は、膜厚25μm、有効画像領域の最大膜厚差1.0μmであった。
以上のようにして、実施例3の電子写真感光体を10本作製した。
【0144】
(比較例1)
実施例1と同様であるが、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層のスプレー塗工における図12に示すスプレーガンの符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更した。
【0145】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=エアキャップ3が+0.5mm
【0146】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=90度
【0147】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=1.0mm
【0148】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.5mm、
【0149】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が0.5mm突出
【0150】
材質:塗料ノズル2=SUS316、エアキャップ3=真鍮にクロムめっき、ニードル先端=SUS304
【0151】
T:エアキャップ3内壁と塗料ノズル外壁との隙間=0.35mm
【0152】
T/D:塗料ノズル2の先端外径Dとエアキャップ3と内壁と塗料ノズル2の外壁との隙間Tとの比=0.3
【0153】
下引き層の膜厚は8.3μm、有効画像領域の最大膜厚差が0.7μmであった。
【0154】
また、電荷輸送層の付着量は、波長690nmの透過率で示した場合、透過率は4%で有効画像領域の最大透過率差が0.9%であった。
【0155】
また、電荷輸送層の膜厚は、膜厚25μm、有効画像領域の最大膜厚差1.4μmであった。
以上のようにして、実施例3の電子写真感光体を10本作製した。
【0156】
(比較例2)
実施例1と同様であるが、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層のスプレー塗工におけるスプレーガンの符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更した。
【0157】
H:エアキャップ3の先端と塗料ノズル吐出口5の先端の位置の差=0.5mm塗料ノズルが引っ込む
【0158】
θ:塗料ノズル2の先端テーパー角=90度
【0159】
t:塗料ノズル吐出口5先端の肉厚=0.8mm
【0160】
9(c):塗料ノズル2とニードル4との隙間=0.5mm、
【0161】
h:塗料ノズル2の先端とニードル先端の位置の差=ニードル先端が0.5mm引っ込む
【0162】
材質:塗料ノズル2=SUS316、エアキャップ3=真鍮にクロムめっき、ニードル先端=SUS304
【0163】
下引き層の膜厚は8.3μm、有効画像領域の最大膜厚差が0.7μmであった。
【0164】
また、電荷輸送層の付着量は、波長690nmの透過率で示した場合、透過率は4%で有効画像領域の最大透過率差が0.9%であった。
【0165】
また、電荷輸送層の膜厚は、膜厚25μm、有効画像領域の最大膜厚差1.4μmであった。
【0166】
以上のようにして、実施例3の電子写真感光体を10本作製した。
【0167】
(比較例および実施例の評価)以上のようにして得られた実施例1〜3、比較1〜2の電子写真感光体を株式会社リコー製フルカラーレーザープリンターIPSIO Color 5000の改造機(λ=655nm、1200dpi、ビームスポット2.7×10-3mm2に改造)を用いて、画像形成を行ない、画像の品質を目視で判定した。なお、ハーフトーン画像は2×2のドット画像である。画像評価結果を表1に示す。
【0168】
【表1】

【0169】
表1から判るように、本発明の実施例はすべての感光体に異常の発生はなく、本発明の効果を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明における電子写真装置の部品用スプレー塗布装置の概略構成図である。
【図2】スプレー塗布装置におけるスプレーガンの構造例を示す概略断面図である。
【図3】本発明におけるエアキャップの先端と塗料ノズルの先端との位置の差(H)の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図4】本発明における塗料ノズル先端部の外側テーパー角度(θ)の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図5】本発明における塗料ノズル吐出口の肉厚(t)の好ましい範囲を説明するための塗料ノズル吐出口の拡大図である。
【図6】本発明における塗料ノズルニードルとが外気と接する隙間(c)の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図7】本発明における塗料ノズル先端とニードル先端との位置の差(h)の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図8】本発明における塗料ノズル先端の角部(かどぶ)の取り幅(m)の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図9】本発明におけるエアキャップの内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tの好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図10】本発明における塗料ノズルの外径Dと、エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tとの比(D/T)の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図11】本発明における塗料ノズル外径の表面粗さおよびエアキャップ内壁の表面粗さを説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。
【図12】実施例および比較例で用いたスプレーガンの各部の寸法、角度を説明するための要部断面図である。
【図13】従来の一般的なスプレーガンの断面図である。
【符号の説明】
【0171】
1 スプレーガン
2 塗料ノズル
3 エアキャップ
4 ニードル
5 塗料ノズル吐出口
6 排出口
7 塗料ノズル吐出口に隣接する面
8 塗料ノズル吐出口に隣接する面
9 塗料ノズルとニードルとが外気と接する隙間
10 塗料ノズル先端角部の面取り箇所
20 流路
30 エア給送路
40 スプレーガン本体
H エアキャップ先端と塗料ノズル先端の位置の差
h 塗料ノズル先端とニードル先端の位置の差
θ 塗料ノズル先端の外側テーパー角度
T 塗料ノズルとエアキャップとの隙間
D 塗料ノズル外径
c 9で示す隙間
m 面取り幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布ブース内で、被塗布物を回転させながら前記被塗布物の軸線方向に移動可能にガイドレールに取り付けられたスプレーガンから塗布液を噴霧して前記被塗布物上に塗膜を形成する電子写真装置の部品用スプレー塗布装置であって、
前記スプレーガンが塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された塗料ノズルとエアキャップと、前記塗料ノズル内にニードルとを備え、
前記塗料ノズルには塗布液を給送する流路と吐出口を有すると共に該エアキャップと該塗料ノズルとの間には霧化エアを給送するエア給送路と排出口を有し、
さらに、前記エアキャップの先端と前記塗料ノズルの先端とが、±0.3mmの差でいずれかが前面となる構成であることを特徴とする電子写真装置の部品用スプレー塗布装置。
【請求項2】
前記スプレーガンのノズル先端部の外側テーパー角度(θ)を15〜45度の範囲とすること、前記スプレーガンのノズル吐出口の肉厚(t)を0.1mm以上0.5mm以下とすること、前記スプレーガンの塗料ノズルとニードルとが外気と接する隙間(c)を0.1mm以下とすること、前記スプレーガンのニードル先端を塗料ノズル先端より0.1mm以上2mm以下突出させること、前記スプレーガンの塗料ノズル先端の角部を面取りすること、前記スプレーガンの塗料ノズル吐出口、エアキャップ、ニードル先端の各材質をそれぞれ3フッ化塩化エチレン、ポリプロピレン、超硬合金、または、それぞれSUS、SUS、PEEKとすること、前記スプレーガンのエアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間(T)を、0.15mm以上1.0mm以下とすること、前記スプレーガンの塗料ノズルの外径Dと、エアキャップ内壁と塗料ノズル外壁との隙間Tとの比(D/T)を0.1〜1.0とすることおよび前記スプレーガンの塗料ノズル先端の壁面およびエアキャップの内壁の表面粗さを1.6〜6.3Sとすることの少なくとも一つをさらに具備することを特徴とする請求項1記載の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子写真装置の部品用スプレー塗布装置を用いて、前記塗料ノズルの流路と吐出口から塗布液を給送、吐出すると共に、前記エアキャップと前記塗料ノズルとの間の空隙と排出口から霧化エアを給送、排出し、基体上に前記塗布液を噴霧し塗布することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
前記スプレーガンの霧化エアの圧力が20〜100KPa、かつ、液吐出量が1〜50cc/分であることを特徴とする請求項3記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−259053(P2006−259053A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74516(P2005−74516)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】