説明

電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物

【課題】分散性が良好で、薄膜であっても均一な膜形成が可能であり、かつ、微細なパターンを有する絶縁層として十分な機能を発現する感光性組成物を提供すること
【解決手段】感光性有機成分、分散剤、無機粉末を含有してなる電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物であって、組成物100g中の粒径20μm以上の凝集体数が50個未満であることを特徴とする感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子の絶縁層を形成する際に用いる感光性組成物、感光性組成物の製造方法およびこれを用いた電子放出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管に換わる画像表示装置として、自発光型の放電型ディスプレイである電子放出素子を用いた画像表示装置が提案されている。この画像表示装置は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに比べ、明暗のコントラストが大きい、低消費電力、動画性能に優れる、および、高精細化の要求にも応えうることから、バランスのとれた優れたディスプレイとしてそのニーズが高まりつつある。また、画像表示装置ではなく光源として用いる蛍光発光装置としての用途も提案され、開発が行われている。このような電子放出型平面画像表示装置および蛍光発光装置のなかでも、カーボンナノチューブ(CNT)を電子放出素子に用いたCNT−フィールドエミッションディスプレイ(FED)が、電子放出特性や大面積化が容易であるという理由から、活発な開発が行われている。
【0003】
このような電子放出型平面画像表示装置および蛍光発光装置は、それぞれの機能を有する前面ガラス基板と背面ガラス基板とを備える。背面ガラス基板には、複数の電子放出素子とそれらの素子を接続するためのマトリックス状の配線が設けられている。これらの配線はX方向およびY方向に設置され、電子放出素子の電極の部分で交差するが、この交差部において両者を絶縁するために、パターン状の絶縁層が必要である。
【0004】
この絶縁層の作製に関しては、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法などで酸化珪素膜を形成する方法や、感光性組成物をスクリーン印刷で全面塗布後、紫外線露光でパターン形成する方法などが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、ディスプレイ用絶縁層などの部材を形成する感光性組成物としては、感光性モノマー、バインダーポリマーおよび光重合開始剤を含む感光性有機成分と、無機成分とからなる感光性組成物(例えば、特許文献2参照)や、アルカリ可溶性ポリオルガノシロキサン樹脂組成物と酸発生剤からなる感光性成分と、無機成分とからなる感光性組成物(例えば、特許文献3参照)など各種提案されている。これらの中でも、感光性モノマーおよび光重合開始剤を含む感光性有機成分と無機成分とからなる感光性組成物は、材料選択のバリエーションが多く、その性能をコントロールし易いことから好ましく用いられている。
【0006】
このような感光性組成物から画像表示装置および蛍光発光装置の絶縁層などの部材を得るためには、感光性組成物を基板上に薄膜塗布し、フォトリソグラフィー処方によりパターンを形成し、その後、焼成を行う。薄膜塗布を行うには分散性の優れた感光性組成物が必要である。分散性の優れた組成物としては、凝集体の数が一定値以下であるガラスペーストが知られている(例えば、特許文献4参照)。また、分散性のよい導電性ペーストを得る方法も知られている(例えば、特許文献5参照)。しかし、いずれの組成物も、画像表示装置および蛍光発光装置の絶縁層として用いられるものではなかった。
【特許文献1】特開2002−245928号公報(第29−30段落)
【特許文献2】特開平11−185601号公報(請求項4)
【特許文献3】特開2005−300633(請求項1、11)
【特許文献4】特開2005−97084(請求項1)
【特許文献5】特開2006−351348(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子放出素子の駆動電圧をさらに下げて、より低消費電力にするためには、前記の塗布工程における、塗布膜厚を薄くし電子放出を容易にすることが求められる。そのためにはより一層の薄膜塗布が可能な分散性良好な組成物が求められるが、従来公知の組成物では十分ではなく、欠陥・凹凸が生じたり、パターン加工性が不十分であった。また感光性であるがゆえに感光性有機成分の量が多く、分散不良、凝集が生じやすい問題があった。
【0008】
本発明は、電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物に関し、分散性が良好で、薄膜であっても均一な膜形成が可能であり、かつ、微細なパターンを有する絶縁層として十分な機能を発現する感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、感光性有機成分、分散剤、無機粉末を含有してなる電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物であって、組成物100g中の粒径20μm以上の凝集体数が50個未満であることを特徴とする感光性組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性組成物は、欠陥がなくかつ、良好な微細パターン・絶縁性を有する薄膜絶縁層を形成することができる。また、本発明の感光性組成物を用いて得られた電子放出素子は、低い駆動電圧と均一な電子放出可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の感光性組成物は、感光性有機成分、分散剤、無機粉末を含有してなる電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物であって、組成物100g中の粒径20μm以上の凝集体数が50個未満である。凝集体の粒径が20μm以上であると感光性組成物の塗布膜厚よりも大きくなり、欠陥、凹凸の原因となる。20μm未満であれば感光性組成物の塗布膜厚よりも小さくなり、欠陥・凹凸の原因となる可能性が低くなるため問題とならない。また、本発明においては、粒径が20μm以上の凝集体数が組成物100g中50個未満であることが重要である。好ましくは40個未満、さらに好ましくは35個未満である。50個未満であれば、粒径20μm以上の凝集体が含まれていても欠陥・凹凸の原因となる可能性が低くなるため問題とならない。ここでいう凝集体とは、感光性組成物中に分散状態で存在する無機粉末やフィラー等のそれぞれの1次粒子が、水、有機溶媒等を介するかあるいは粒子自身のファンデルワールス力、イオン間力、価電子の共有による引力に起因する凝集エネルギーの低下によって強固に結合した、複数の1次粒子よりなる固結構造体のことである。その結合力の大小によって容易に解砕できる場合もあれば、解砕するために相当のエネルギーを要する場合もある。このような凝集体は、肉眼では1つの構造体として認識されても、それぞれの粒子は顕微鏡等によって明瞭に互いの界面が区別された状態で観察可能であり、互いの粒子間に作用する1以上の結合力によって1つの粒子として振る舞うものである。これらは、凝集物、凝固体、凝結体等と呼称される場合もある。なお、凝集体は球形でない場合も多く、ここでいう凝集体の粒径は光学顕微鏡などにより観察された凝集体の長径と定義する。
【0012】
本発明において、凝集体数は以下の方法により算出したものをいう。まず本発明の感光性組成物を200mm×200mm×1.8mmのソーダライムガラス基板上にITOカソード電極(厚さ150nm)が形成された基板にスピナーにて1500rpm、30秒間塗布し、乾燥して、塗膜を形成した。同様の操作を繰り返し、塗布した基板を10枚用意した後、この塗膜の表面のうち任意の20cmについて顕微鏡を用いて凝集体を観察する。観察範囲に見られた凝集体のうち、凝集物の長径が20μm以上のものについて、個数を数える。同様の操作を基板1枚に対してランダムに10回繰り返し、平均凝集体数を算出する。その後、同様の操作を基板10枚に対して行い、その感光性組成物の平均凝集体数を算出後、組成物の比重または基板1枚あたりの組成物の平均重量から組成物100g当たりに換算する。
【0013】
本発明の感光性組成物は次のようにして調製できる。まず、無機粉末に分散剤を加えて、1次混合物を得る(混合工程)。次に、前記1次混合物を100MPa以上の高せん断応力をかけて固練りする(1次分散工程)。その後、感光性有機成分を加えて2次混合物を得る(2次混合工程)、2次混合物をロールミル等にて分散する(2次分散工程)。最後に、有機溶剤を加えて粘度を調整する(粘度調整工程)。無機粉末に分散剤のみを加えているため1次混合物の状態では含有される有機物が少なく、これに、100MPa以上の高せん断応力をかけているため、凝集体に応力がかかり、容易に1次粒子にまで解砕・分散させることができる。解砕後は分散剤が効果的に1次粒子に付着することで、再凝集を抑制することができる。せん断応力は100MPa以上が好ましく、より好ましくは200MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上が好ましい。また、100MPa以上の高せん断応力をかけて固練りする1次分散工程を行った後に、感光性有機成分を加えて溶解・希釈して混合分散する2次分散工程と、ロールミル等にて分散する3次分散工程を行うため、有機バインダの無機粉末への吸着を促進させることが容易にできる。このため、よりいっそう分散性の優れた感光性組成物が得られる。このようにして得られた感光性組成物においては、粒径が20μm以上の凝集体数を組成物100g中50個未満とすることができる。
【0014】
1次分散工程で用いられる装置としては100MPa以上の高せん断応力をかけられる装置であれば特に限定されないが、自動乳鉢、ニーダー、プラネタリミキサーが好ましい。1次分散工程における粘度は10000Pa・s(パスカル・秒)以上が好ましい。この粘度範囲であれば無機粉末を十分に解砕および分散することができる。1次分散工程と2次分散工程とにおいては、同一の分散機を用いることが好ましいが、分散させるべき混合物の粘度、分散機の生産性および特性を考慮して、異なる分散機が用いられてもよい。
【0015】
また、3次分散工程で用いられる装置として種々のボールミル等を適宜選択して使用することが可能である。ここでのボールミルとは、セラミックス製のボール等を容器内で転動することによって凝集粒子を解離する働きをする、いわゆる狭義のボールミルばかりでなく、振動ボールミルや媒体遊星ミル等をも含むものである。またそれ以外にロールミル等も使用でき、3本ロールミルや、その応用装置の利用が可能である。
【0016】
感光性組成物の粘度調整は無機成分、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は0.5〜200Pa・sが好ましい。例えばガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、0.5〜5Pa・sが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、50〜200Pa・sが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、2〜20Pa・sが好ましい。
【0017】
溶液の粘度を調整するために用いられる有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、テルピネオール、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0018】
なお、本発明の感光性組成物は、溶媒が揮発した状態で用いるため、以下、単に「感光性組成物」と示した場合は、特に断りない限り溶媒は含めないものとし、感光性組成物中における含有量の算出をする際は、溶剤を除いた固形物全体に対する含有量を示すものとする。
【0019】
また、本発明の感光性組成物は分散剤を含有する。分散剤の例としては、リン酸、カルボン酸、脂肪酸、およびそれらのエステル類などの酸基を有する分散剤などが挙げられ、特に、リン酸エステル骨格を有する化合物が好ましく用いられる。そのほか、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤、多価カルボン酸などの湿潤剤、両親和性物質、高立体障害の置換基を有する樹脂などの添加が挙げられる。また、分散時または分散後の系の極性は、溶剤の添加で制御することができる。分散剤の含有量は無機粉末に対して0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。この範囲内であれば、無機粉末の表面に付着し、分散効果を有効に発揮することが出来る。
【0020】
本発明で用いる無機粉末はガラス粉末、セラミックス粉末、ガラス・セラミックス粉末、銀、銅、パラジウム、タングステンなどの金属粉末などが挙げられるが、絶縁層形成用途としてはガラス粉末、セラミックス粉末、ガラス・セラミックス粉末が好ましく、低温焼成可能である点からガラス粉末がより好ましい。また、無機粉末の平均屈折率が1.8以上の粒子を含むことが好ましい。より好ましくは1.9以上2.2以下であることが好ましい。さらに好ましくは2.0以上2.2以下であることが好ましい。この範囲内であればパターンの微細加工が可能である。
【0021】
本発明で用いる無機粉末の平均粒子径としては0.01μm〜5μmであることが好ましい。無機粉末の平均粒子径はレーザー回折法やBET法にて比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して換算することなどにより求められる。粒子がナノサイズとなる場合、正確に測定することは困難となるので、本発明では、BET法換算値を用いる。
【0022】
無機粉末の感光性組成物中における含有量としては、10〜95重量%が好ましく、50〜90重量%がより好ましく、70〜88重量%がさらに好ましい。10重量%以上とすることで、焼成時のパターン形状を好ましくすることができ、一方、90重量%以下とすることで良好な感光特性が得られる。また、体積含有量としては20〜70体積%が好ましく、30〜65体積%がより好ましく、40〜60体積%がさらに好ましい。20体積%以上とすることで焼成時のパターン形状を好ましくすることができ、70体積%以下とすることで良好な感光特性を得られる。
【0023】
無機粉末の屈折率についてはベッケ法、Vブロック法、エリプソメーターなどを用いて測定する。屈折率は露光波長で測定することが効果を確認する上で正確である。特に、350〜650nmの波長範囲の光で測定することが好ましい。さらには、i線(365nm)もしくはg線(436nm)での屈折率測定が好ましい。本発明では、エリプソメーターで測定した値とする。
【0024】
本発明で用いるガラス粉末の成分としては、Biが70〜91重量%の範囲で含むことが望ましく、より好ましくは73〜85重量%である。Biが70重量%未満では、熱軟化点が高くなり好ましくない。Biが91重量%を超えるとガラスの耐熱温度が低くなり、ガラス基板上への焼き付けの点で好ましくない。
【0025】
SiOは3〜15重量%が好ましい。3重量%未満の場合は、ガラス化が困難となる。また、15重量%を超えると熱軟化点が高くなり、ガラス基板への焼付けが難しくなる。
【0026】
は5〜20重量%が好ましい。さらに好ましくは7〜15重量%である。Bを含有させることによって電気絶縁性、強度、熱膨張係数、緻密性などの電気、機械および熱的特性を調整することができる。20重量%を超えるとガラスの酸や水に対する安定性が低下する。
【0027】
ZrOは0〜5重量%の範囲で含むことが好ましく、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。ZrOはガラス材料の耐酸性を向上させるが、5重量%を越えると、ガラスが不均一になる。
【0028】
ZnOは1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは2〜5重量%である。1重量%未満では緻密性向上の効果が少なく、20重量%を超えると、焼き付け温度が低くなり制御しにくくなり、また絶縁抵抗も低くなるので好ましくない。
【0029】
ガラス粉末の原料としては、例えばSiOとしては、カリ長石、ソーダ長石、カオリン、けい砂などを、Alとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カリ長石、ソーダ長石、カオリンなどを、Bとしては、ほう酸やほう砂などを、ZnOとしては、亜鉛華などを用いることができる。これらの原料、Bi、ZrOなどを所定の配合組成となるように混合し、900〜1200℃で溶融後、急冷し、ガラスフリットにしてから粉砕して微細な粉末にする。ガラスの粉砕方法としては、ボールミル、ビーズミル、アトラクターやサンドミルなどがあり、そのうち、ボールミルやビーズミルが好ましく用いられる。
【0030】
また、電子放出素子の絶縁層形成に用いる場合における感光性組成物の無機粉末として、上記ガラス粉末などのほかにフィラーを入れてもよい。具体的なフィラーとしては、SiO、Al、ZrO、ムライト、スピネル、マグネシア、ZnO、酸化チタンなどのセラミック粉末が挙げられ、これらは単独種で用いても複数種組み合わせて用いても良い。フィラーの添加量は、感光性組成物の全体積に対して、10体積%未満が好ましい。それ以上にすると焼結時にひび割れが発生する場合がある。フィラーは焼結時において溶融しないものであることが好ましい。
【0031】
電子放出素子の絶縁層形成に用いられる無機粉末に含まれるガラス粉末の平均粒子径は、0.1〜5μmであることが好ましく、さらには0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。平均粒子径0.1μm以上のガラス粉末を使用することにより凝集の生じにくい感光性組成物が得られ、平均粒子径5μm以下のガラス粉末を用いることにより、薄膜での微細なフォトリソグラフィーによる加工が可能となる。電子放出素子の絶縁層形成に用いられる無機粉末に含まれるフィラーの平均粒子径としては、0.01μm〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.01〜0.05μmであることが好ましい。0.01μm以上のフィラー添加により、焼成後の部材の強度を向上することができ、0.5μm以下のフィラーを使用することにより、良好な感光特性を得ることができる。
【0032】
また、絶縁層を基板上に直接形成しない場合、例えば基板とは別に形成した後に積層するような場合には、セラミック粉末を含むことが好ましい。さらには、融点を低下させ、低温での焼成を可能にするために、無機粉末はたとえば次のような態様が好ましく用いられる。ガラス成分30〜70重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、スピネル、フォルステライト、アノーサート、セルジアン、コーディエライト、および窒化アルミからなる群より選ばれた少なくとも1種類のセラミックス成分30〜70重量%との混合物である。無機粉末に含まれるガラス成分の熱軟化温度は500℃から700℃であることが好ましい。絶縁層を基板上に直接形成しない場合における無機粉末に含まれるセラミックス成分の平均粒子径は0.01〜5μm、さらには0.03〜0.2μmが好ましい。この範囲内であれば、微細なフォトリソグラフィーによる加工が可能となる。
【0033】
また、電子放出素子の絶縁層形成用途以外、例えば半導体回路の絶縁層用途、セラミック多層基板の絶縁層にも好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において感光性有機成分は、光によって硬化するネガタイプでも、光によって可溶化するポジタイプでも良い。
【0034】
本発明において、感光性有機成分は、a)エチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤、b)グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択された1種以上のカチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤、ならびにc)キノンジアジド化合物、ジアゾニウム化合物およびアジド化合物からなる群から選択された1種以上の化合物、のうちいずれか1種以上が好ましく用いられる。
【0035】
エチレン性不飽和基含有化合物の含有量は、a)成分全体に対して、50〜99.95重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。50重量%以上とすることで精細なパターン加工が可能となり、99.95重量%以下とすることで焼成後のパターン形状を良好に保つことができる。
【0036】
また、a)成分のうちの光重合開始剤は、波長400〜450nmの可視光にも感度を有するものを用いるのが好ましい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、a)成分全体に対し0.05〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜35重量%である。この範囲内であれば感度もよく、露光部の残存率を大きくすることができる。
【0037】
グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物およびオキセタン化合物からなる群から選択された1種以上のカチオン重合性化合物のb)成分全体に占める割合としては、50〜99.99重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。この範囲内とすることでパターン形状を良好に保つことができる。
【0038】
光カチオン重合開始剤の配合量は、b)成分全体の0.01〜50重量%の範囲が好ましい。また、光カチオン重合促進剤として、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2,4−ジエチルチオキサントン等を加えることも好ましく行われる。
【0039】
キノンジアジド化合物のc)成分全体に占める割合としては、1重量%以上90重量%以下が好ましく、さらには3重量%以上80重量%以下が好ましい。キノンジアジド化合物が1重量%より少ない場合は露光時のキノンジアジド化合物による溶媒溶解性の変化が少なくなるためパターン形成性が悪くなり、一方、90重量%より多い場合は感光性組成物の分散性などに問題を生じる場合がある。
【0040】
ジアゾニウム化合物のc)成分全体に占める割合としては、5〜80重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。ジアゾニウム化合物が少なすぎる場合は、硬化が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合は組成物の保存安定性に問題が生じる場合がある。
【0041】
アジド化合物のc)成分全体に占める割合としては、5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。アジド化合物が少なすぎる場合は、感光性成分の硬化が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合は組成物の安定性に悪影響をもたらす場合がある。
【0042】
以上のような感光性有機成分としては、材料選択のバリエーションの多さ、それに基づく性能のコントロールし易さなどから、a)成分のエチレン性不飽和基含有化合物および光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0043】
a)〜c)成分から選ばれる化合物の含有量は感光性有機成分に対して5〜98重量%が好ましい。より好ましくは10〜70重量%である。5〜98重量%の範囲とすることで、パターン加工性を良好に維持することができる。
【0044】
感光性有機成分の屈折率は一般に1.4〜1.7の範囲である。感光性有機成分の平均屈折率は以下のような方法で求める。まず個々の成分についてVブロック法にて所望の波長における屈折率を測定する。次に感光性有機成分の重量%に応じて、それぞれの屈折率を足し合わせることによって求める。例えば、ある感光性有機成分がA(50重量%)とB(50重量%)で構成されており、ある波長における成分Aの屈折率が1.46、成分Bの屈折率が1.58の場合、感光性有機成分の平均屈折率は(1.46×0.5)+(1.58×0.5)=0.73+0.79=1.52となる。あるいは感光性有機成分をガラス上に塗布および乾燥したのち、エリプソメーターを用いて直接測定する。屈折率の測定は、感光性組成物を露光する際に用いる波長で測定することが効果を確認する上で正確である。露光には、通常、350〜650nmの波長範囲の光を用いるので、この範囲で測定することが好ましい。さらには、i線(365nm)もしくはg線(436nm)での屈折率測定が好ましい。
【0045】
一般に、感光性有機成分およびガラス粉末を含有する感光性組成物において、感光性有機成分の平均屈折率とガラス粉末の平均屈折率は、なるべく近い方が好ましい。屈折率が近いと、感光性有機成分とガラス粉末との界面での光散乱が起きにくく、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成をする際に、精細なパターン加工が可能となる。
【0046】
しかしながら、本発明に好ましく用いられるビスマス系ガラスは、焼成温度が低い、耐酸・アルカリ性が高い等の利点がある反面、屈折率が大きく、平均屈折率を1.8未満とすることは困難である。したがって、感光性有機成分とガラス粉末との屈折率差は0.1〜1.3と非常に大きい。屈折率差が大きいと、感光性有機成分とガラス粉末との界面での光散乱のために、感光性組成物の内部に光が十分到達せず、露光面から遠い部分が硬化しにくくなる。
【0047】
そのため、本発明においては、感光性有機成分中に、光を吸収して、該吸収した光より長波長の光線を発する化合物(以下、化合物(A)という)を含有することが好ましい。このような化合物を含有していると、感光性有機成分とガラス粉末との屈折率差が大きい場合でも、露光面から遠い部分も硬化させることが可能となる。化合物(A)は、露光に用いられる波長の光を吸収し、吸収した光より長波長の光線を発し、発した光線が感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させる。化合物(A)は、紫外線を吸収することで散乱を抑制し、しかも紫外線よりも透過性が高い長波長の蛍光を発するため、露光面から遠い部分も硬化させることができる。
【0048】
化合物(A)の吸収波長域は、320〜410nmの波長域が好ましく、より好ましくは350nm〜380nm、さらに好ましくは360nm〜375nmである。特に最大吸収波長が350nm〜380nmの範囲内にあることがより好ましい。また、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中で測定したときの、化合物(A)の蛍光の発光波長域は、400〜500nmの波長域が好ましく、より好ましくは400nm〜450nmであり、さらに好ましくは430nm〜445nmである。特に最大発光波長が400nm〜450nmの範囲内にあることがより好ましい。吸収波長域及び発光波長域がこの範囲内であれば、露光時の紫外線を有効に吸収して、散乱を抑え、かつ照射する紫外線よりも透過性の高い波長域の蛍光を発することで深部、つまり露光面から遠い部分まで感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させることができる。
【0049】
また、上記化合物(A)の含有量の範囲において、化合物(A)のモル吸光係数は20000以上であることが好ましい。またモル吸光係数は60000以下であることが好ましい。この範囲において有効に紫外線を吸収し、露光時の紫外線の散乱を抑えることができ、かつより深部まで感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させることができる。
【0050】
紫外線の吸収波長および蛍光の発光波長ならびにモル吸光係数は、分光蛍光光度計(F−2500、日立製作所(株)製)、ならびに紫外可視分光光度計(MultiSpec 1500、島津製作所(株)製)にて測定できる。
【0051】
本発明で用いる化合物(A)としては、クマリン系蛍光増白剤、オキサゾール系蛍光増白剤、スチルベン系蛍光増白剤、イミダゾール系蛍光増白剤、トリアゾール系蛍光増白剤などの蛍光増白剤、イミダゾロン系、オキサシアニン系、メチン系、ピリジン系、アントラピリダジン系、カルボスチリル系などの蛍光増白剤が好ましく用いられる。感光性有機成分に含まれるa)〜c)より選ばれた化合物やバインダーポリマー等との相溶性が良いため、クマリン系蛍光増白剤またはオキサゾール系蛍光増白剤が、より好ましく用いられる。特にクマリン系蛍光増白剤は極性溶媒に対する溶解性が大きいため好ましい。化合物(A)の極性溶媒に対する溶解度は2g/100g溶媒以上であることが好ましく、より好ましくは50g/100g溶媒以上である。溶解性などの点から特にクマリン系蛍光増白剤が好ましい。またこれらは単独でも組み合わせて使用してもよい。 クマリン系蛍光増白剤は、クマリン構造を分子中に有する。また、クマリン系蛍光増白剤の具体例としては、7−ジエチルジアミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−メチルクマリン、7−アミノ−4−メチルクマリンなどが挙げられる。オキサゾール系蛍光増白剤は、オキサゾール環を分子中に有する。スチルベン系蛍光増白剤は、スチルベン構造を分子中に有する。スチルベン系蛍光増白剤の具体例は、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸のs−トリアジン環置換体、スチルベンのトリアゾール、イミダゾール、オキサゾール置換体などが挙げられる。イミダゾール系蛍光増白剤は、イミダゾール構造を分子中に有する。トリアゾール系蛍光増白剤は、窒素3原子および炭素2原子から構成されている複素5員環を分子中に有する。複素5員環の具体例としては、下記の環が挙げられる。
【0052】
【化1】

【0053】
本発明における化合物(A)の含有量は、感光性有機成分に対して、0.1〜30重量%が好ましい。特にフィールドエミッション部材および蛍光発光装置用途では2〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。この範囲内であれば精細なパターン加工が可能となる。
【0054】
また、本発明において、感光性有機成分は、カゴ状シルセスキオキサンをさらに含有してもよい。カゴ状シルセスキオキサンは、感光性組成物中にそのまま添加してもよいし、予め他の化合物と反応させた上で添加してもよい。予め他の化合物と反応させる場合は、感光性有機成分を構成する化合物と反応させることが、相溶性を上げるという点で好ましい。
【0055】
また、本発明において、感光性有機成分は、さらにバインダーポリマーを有することが好ましく、また紫外線吸収剤、増感剤、重合禁止剤、可塑剤、分散剤、酸化防止剤などの添加剤を含有することができる。
【0056】
バインダーポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどの各種ポリマーを用いることができるが、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。さらに、無機粉末の分散性や現像性の観点から、加えて、感光によるパターン形成性の観点から、バインダーポリマーはカルボキシル基や水酸基、エチレン性不飽和二重結合などの反応性官能基を有していることが好ましい。
【0057】
感光性有機成分に、a)成分を用いた場合の好ましいバインダーポリマーは、上述のようなエチレン性不飽和二重結合含有化合物の共重合により、あるいは共重合で得られたバインダーポリマーの反応性官能基の一部に、反応性官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物を付加するなどして得ることができる。
【0058】
感光性有機成分中のバインダーポリマーの含有量は感光性有機成分に対して1〜70重量%が好ましい。より好ましくは5〜50重量%である。1〜70重量%の範囲とすることで、パターン加工性と、焼成時の収縮などの特性を両立させることができる。
【0059】
また、本発明の感光性組成物には紫外線吸収剤を含有することも有効である。紫外線吸収剤を含有することによって、露光工程における光の散乱がより抑えられ、高アスペクト比、高精細かつ高解像度のパターンを形成することができる。紫外線吸収剤としては有機系染料からなるもの、中でも350〜450nmの波長範囲で高UV吸収係数を有する有機系染料が好ましく用いられる。有機系染料は紫外線吸収剤として添加した場合にも、焼成後のガラス膜中に残存しないで紫外線吸収剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。このような化合物としてアゾ系、およびベンゾフェノン系染料が吸収波長を所望の波長域に制御しやすく好ましい。感光性有機成分中の紫外線吸収剤の含有量は感光性有機成分に対して0.05〜5重量%が好ましい。より好ましくは0.1〜1重量%である。0.05重量%未満では紫外線吸収剤の添加効果が減少し、5重量%を越えると焼成後の絶縁膜特性が低下するので好ましくない。
【0060】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトンなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を含有する場合、その含有量は感光性有機成分に対して0.05〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0061】
さらに、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、感光性組成物全体に対し、0.001〜1重量%が好ましい。
【0062】
また、可塑剤あるいは酸化防止剤を含有してもよい。可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。酸化防止剤の具体的な例として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、などが挙げられる。可塑剤を含有する場合、その含有量は感光性組成物全体に対し0.5〜10重量%が好ましい。酸化防止剤を添加する場合、その含有量は感光性組成物全体に対し0.001〜1重量%が好ましい。
【0063】
本発明の感光性組成物は、電子放出素子の各種絶縁層部材などに好ましく用いられるが、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層に代表されるフィールドエミッション部材として特に好ましく用いられる。フィールドエミッションとは電界電子放出のことであり、電界電子放出とは真空中で半導体や金属などの導電体を陰極とし、その表面近傍に陽極を設置すると、陰極表面から陽極へ向かって、電子が真空中へ放出される物理現象のことをいう。本発明において、フィールドエミッション部材とはこのような電界電子放出を利用した部材のことを指す。具体的にはフィールドエミッションディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト、フィールドエミッションランプ、走査型電子顕微鏡の電子線源、微少真空管などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
電子放出素子の絶縁層の膜厚は0.1〜20μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。0.1μm以上とすることで、絶縁層としての機能を果たすことができ、20μm以下とすることで、電子放出特性を良好に保つことができる。本発明の感光性組成物を用いて、フィールドエミッション部材を製造する場合、基板として、ガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板として、ソーダライムガラスや耐熱ガラス(旭硝子(株)製PD200、日本電気硝子(株)製PP8、サンゴバン(株)製CS25、セントラル硝子(株)製CP600Vなど)を好ましく用いることができる。低コストの観点からソーダライムガラスを用いることがより好ましい。また、セラミック基板、金属基板や半導体基板(AlN、CuW、CuMo、SiC基板など)、各種プラスチックフィルムも用いることも可能である。これら基板の上に、必要に応じて、絶縁体、半導体、導体を一層以上、あるいはそれらを組み合わせたものを形成しても構わない。
【0065】
次に、フィールドエミッション部材の製造方法について、一例として、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層の製造方法を挙げて説明する。
【0066】
基板として、ITOカソード電極が形成されたガラス基板上に、本発明の感光性組成物を全面もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、スリットダイコーター等の一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、感光性組成物の粘度を選ぶことによって調整できるが、乾燥や焼成による収縮を考慮して、乾燥後の厚みが5〜100μm、好ましくは5〜60μm、さらに好ましくは5〜40μmになるように塗布することが好ましい。
【0067】
感光性組成物を複数回塗布する場合、1回目と2回目以降の塗布される感光性組成物は、同じ感光性組成物であってもよいし、異なった感光性組成物であってもよい。また、感光性組成物を複数回塗布する場合、1回目の感光性組成物塗布後、2回目以降の感光性組成物塗布前に、乾燥を施すのが好ましい。そうすると、2回目の感光性組成物塗布時の塗膜の厚みの減少を防ぐことができる。乾燥の温度および時間は構成する感光性組成物の組成によって異なるが、50℃〜100℃で5分から30分程度施すのが好ましい。また、乾燥は、対流式乾燥炉やIR乾燥炉で行うことが望ましい。
【0068】
また、露光に供する前の、感光性組成物中の有機溶媒残存量は3重量%以下、好ましくは、1重量%以下である。3重量%を超えると、タック性が悪くなり、フォトマスクへの組成物の付着が問題となる。
【0069】
上記のようにして基板上に感光性組成物の膜を形成した後に、露光および現像することで、パターンを形成することが可能である。パターンの形状は、フィールドエミッション部材により必要とされる形状は様々であるが、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層の場合は、直径3〜100μmの円形もしくは一辺3〜100μmの四角形のホールを含むパターンを形成することが好ましい。円形もしくは四角形の一辺は、より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは3〜20μmである。この範囲内であれば感光性組成物の効果を十分に発揮することができる。
【0070】
露光は、フォトマスクを用いてマスク露光する方法とレーザー光等で直接描画露光する方法を用いることができるが、フォトマスクを用いた露光のほうが、露光時間を短くできる。この場合の露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。
【0071】
使用される活性光源は、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、近赤外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられるが、これらの中で、紫外線が好ましく、その光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらの中でも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、0.5〜1000W/mの出力の超高圧水銀灯を用いて0.5〜30分間露光を行う。特に、露光量が0.05〜1J/cm程度の露光を行うことが好ましい。露光に用いる光の波長は、300〜650nmが好ましく、より好ましくは350〜650nm、さらに好ましくは350〜500nm、最も好ましくは350nm〜450nmである。
【0072】
その後、現像液を使用して現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、シャワー法、ブラシ法で行う。これらの中でもシャワー法が、均一な現像を実現できる点で好適である。現像液は、感光性組成物中の有機成分が溶解または分散可能な有機溶媒や水溶液を使用する。また、有機溶媒含有の水溶液を使用してもよい。感光性組成物中にカルボキシル基やフェノール性水酸基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液でも現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液のアルカリ成分の濃度は0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また露光部を腐食させるおそれがあり好ましくない。現像時の現像液の温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0073】
また、現像液には、感光性組成物の塗布膜への塗れ性改善、現像の均一性、残渣の低減などのために、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン、アニオン、カチオンおよび両性の各種界面活性剤を用いることができる。また、現像時に、現像液中で超音波処理を行うことが好ましい。さらに周波数変調型超音波処理が、特に20〜50KHzの間の波長範囲で変調される周波数変調型超音波処理が好ましい。このような超音波処理により、微細で均一なパターンの形成と共に、残渣の低減に大きな効果が得られる。
【0074】
上記のような方法により、本発明の感光性組成物から、基板上に厚さ5〜100μm、直径3〜100μmの円形もしくは一辺3〜100μmの四角形のホールを含むパターンを形成することができる。
【0075】
この後、パターン形成された基板を、焼成炉にて焼成し、有機成分を焼き尽くすと同時に、ガラス粉末を焼結させて、絶縁層を形成させる。焼成雰囲気、温度および時間は、感光性組成物や基板の種類によって適宜選択することでき、空気中、窒素、水素等の雰囲気中で焼成する。焼成は400〜600℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行うことが好ましい。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。また、以上の各工程中に、乾燥および予備反応の目的で、50〜300℃の加熱をおこなっても良い。
【0076】
以上の工程により、基板上に形成された厚さ5〜100μm、直径3〜100μmの円形もしくは一辺3〜100μmの四角形のホールを含むパターンを有するフィールドエミッションディスプレイ用絶縁層が得られる。フィールドエミッションディスプレイの低電圧駆動化のためには、ゲート電極部と電子放出源の距離を近接化する必要がある。そのために絶縁層の厚さは、20μm以下が好ましい。また、高解像度化と輝度の均一化のために、絶縁層に形成されるホールは、40μm以下であることが好ましい。
【0077】
ゲート電極の形成は例えば次のような方法で行う。所望のパターンのホールが形成された絶縁層上に、スパッタ法あるいは蒸着法によって、電極膜を形成したのち、ホール部分の電極膜をエッチングする方法、あるいは先にホール部分を覆う処理をした後、電極膜をスパッタ法あるいは蒸着法によって形成し、覆いを除去する方法などにより形成される。電子放出源の形成方法は電子放出源によって異なり、電子放出源がスピントタイプの金属チップ(またはマイクロチップ)の場合には蒸着法、カーボンナノチューブ(CNT)を用いる場合には、感光性ペーストを用いた方法、プラズマCVD法による直接成長方法などにより形成される。 このようにして得られたホールパターン付き絶縁層上にゲート電極を作成し、また、ホールパターンの内部に電子放出源を作成することにより、フィールドエミッションディスプレイの背面版が得られる。そして、該背面板と、アノード電極を有する前面板をスペーサーガラスをはさんで貼り合わせ、容器に接続した排気管により真空排気封着した後、配線の実装を行うと、高輝度でコントラストの高いトライオード型フィールドエミッションディスプレイを得ることができる。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、電子放出源から電子が放出され蛍光体発光を得ることができる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
<測定方法>
バインダーポリマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを移動相としたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。カラムはShodex KF−803を用い、重量平均分子量はポリスチレン換算により計算した。
【0079】
バインダーポリマーの酸価の測定は、バインダーポリマー1gをエタノール100mLに溶解した後、0.1N水酸化カリウム水溶液を用いた滴定を行い、求めた。
【0080】
バインダーポリマーの粘度の測定は、回転粘度計(RVDVII+、ブルックフィールド社製)にて、温度25±0.1℃、回転数10rpm、測定開始から5分後の粘度を測定した。
【0081】
バインダーポリマーの熱分解温度は、TG測定装置(TGA−50、島津製作所(株)製)にて約20mgの試料をセットし、流量20ml/分の空気雰囲気で、昇温速度10℃/分で700℃まで昇温する。温度(縦軸)と重量変化(横軸)の関係がプロットされたチャートを印刷し、分解前の部分と分解中の部分の接線を引き、その交点の温度を熱分解温度とした。
【0082】
バインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、島津製作所(株)製DSC−50型測定装置を用い、サンプル重量10mg、窒素気流下で昇温速度20℃/分で昇温し、ベースラインの偏起が開始する温度をTgとした。
【0083】
ガラス粉末の熱軟化温度はガラス粉末を白金セルに入れ、示差熱分析装置(TG8120、理学電機(株)製)を用いて、常温から700℃まで20℃/分の昇温速度で示差熱分析を行い、最初に現れる吸熱部の極小点を経て吸熱が終了する温度を軟化点(Ts)とした。
【0084】
ガラス粉末の平均粒子径はレーザー回折散乱測定装置(マイクロトラック粒度分布計HRA、日機装(株)製)による測定およびBET法、すなわち窒素ガスなどの不活性ガスを吸着させて、比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求めることで算出した。比重は、ガラスを約5×5×5mmの大きさに加工し、アルキメデス法を用いて測定した。
【0085】
1次分散時の粘度の測定は回転粘度計(RVDVII+、ブルックフィールド社製)にて、温度25±0.1℃、回転数0.3rpm、測定開始から5分後の粘度を測定した。
【0086】
凝集体の個数は感光性組成物を、200mm×200mm×1.8mmのソーダライムガラス基板上にITOカソード電極(厚さ150nm)が形成された基板にスピナーにて1500rpm、30秒間塗布し、乾燥して、塗膜を形成した。同様の操作を繰り返し、塗布した基板を10枚用意した後、この塗膜の表面を目視と顕微鏡を用いて観察し、凝集物の長径が20μm以上のものについて、観察範囲の面積20cm2に見られた凝集体数の個数を数え、同様の操作を基板1枚に対してランダムに10回繰り返し、平均凝集体数を算出する。その後、同様の操作を基板10枚に対して行い、その感光性組成物の平均凝集体数を算出後、ペースト100g当たりに換算した。
【0087】
<バインダーポリマーI>
40重量部のメタクリル酸メチル、20重量部のアクリル酸エチル、40重量部のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させた重量平均分子量16000、酸価105mgKOH/g、二重結合密度2.5mmol/g、粘度11.2Pa・sのポリマーである。熱分解温度は430℃、Tgは74℃であった。
【0088】
<ガラス粉末I>
ガラス粉末は、酸化物換算でBi(77.2重量%)、SiO(6.9重量%)、B(10.2重量%)、ZrO(0重量%)、ZnO(2.5重量%)、Al(2.7重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末の熱軟化温度は493℃、平均粒子径0.5μm、比重6.1g/cm、屈折率(n)は2.21であった。
【0089】
<ガラス粉末II>
ガラス粉末は、酸化物換算でBi(67重量%)、SiO(7.6重量%)、B(13.7重量%)、ZrO(0重量%)、ZnO(8.0重量%)、Al(3.2重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末の熱軟化温度は534℃、平均粒子径1.4μm、比重5.4g/cm、屈折率(n)は1.98であった。
【0090】
<ガラス粉末III>
ガラス粉末は、酸化物換算でPbO(70重量%)、SiO(13重量%)、Al(3重量%)、B(10重量%)、ZnO(4重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末の熱軟化温度は590℃、平均粒子径は1.2μm、屈折率(n)は2.1であった。
【0091】
<ガラス粉末IV>
ガラス粉末は、酸化物換算でBi(77.2重量%)、SiO(6.9重量%)、B(10.2重量%)、ZrO(0重量%)、ZnO(2.5重量%)、Al(2.7重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末の熱軟化温度は493℃、平均粒子径0.1μm、比重6.1g/cm、屈折率(n)は2.21であった。
【0092】
<ガラス粉末V>
ガラス粉末は、酸化物換算でBi(77.2重量%)、SiO(6.9重量%)、B(10.2重量%)、ZrO(0重量%)、ZnO(2.5重量%)、Al(2.7重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末の熱軟化温度は493℃、平均粒子径6μm、比重6.1g/cm、屈折率(n)は2.21であった。
【0093】
<ガラス粉末VI>
ガラス粉末は、酸化物換算でLiO(8重量%)、SiO(27重量%)、B(30重量%)、ZnO(15重量%)、Al(5重量%)、CaO(15重量%)の組成のガラス粉末を用いた。このガラス粉末の熱軟化点は500℃、平均粒子径1.5μm、比重2.6g/cm、屈折率(n)は1.58であった。
【0094】
<ガラス粉末VII>
ガラス粉末は酸化物換算でSiO(60重量%)、PbO(17.5重量%)、CaO(7.5重量%)、MgO(3重量%)、NaO(3.2重量%)、KO(2重量%)、B(5.8重量%)の組成のものを用いた。このガラス粉末のガラス軟化点は686℃、平均粒子径は2μmであった。
【0095】
<フィラーI>
シリカ:平均粒子径12nmのシリカ粒子(日本アエロジル(株)製、商品名アエロジル200)、平均粒子径は窒素ガスを用いたBET法により比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求めた。
【0096】
<セラミック粉末I>
アルミナ:平均粒子径37nmのアルミナ粒子(シーアイ化成(株)製、商品名ナノテックAl)、平均粒子径は窒素ガスを用いたBET法により比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して比表面積から粒子径を求め、数平均として平均粒子径を求めた。
【0097】
<化合物(A)I>
クマリン系誘導体(日本化薬(株)製、商品名Kayalight B)。3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中での紫外線の吸収最大波長は370nm、蛍光の最大発光波長は441nmであった。
【0098】
<化合物(A)II>
オキサゾール系誘導体(日本化薬(株)製 商品名Kayalight O)3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中での紫外線の吸収最大波長は374nm、蛍光の最大発光波長は436nmであった。
【0099】
<分散剤I>
リン酸エステル系分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名W9010)
<分散剤II>
高分子櫛型分散剤(日本油脂(株)製、商品名マリアリムAKM−0531)
<分散剤III>
アクリル系分散剤(共栄社化学(株)製、商品名フローレンG−700)
実施例1
感光性有機成分として、エチレン性不飽和基含有化合物であるアクリルモノマー(日本化薬(株)製カヤラッド(登録商標)TPA−330)を7.2g、上記バインダーポリマーIを7.2g、溶媒(3−メチル−3−メトキシブタノール)を20g、光重合開始剤(日本化薬(株)製、2,4−ジメチルチオキサントンとチバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア(登録商標)369を1:2の重量比で用いる)を1.4g、化合物(A)Iを2.2g、紫外線吸光剤(KayasetSF−G:日本化薬(株)製)を0.1g、重合禁止剤(p−メトキシフェノール)を0.3gを混合・溶解し、メンブレンフィルター(孔径:0.2μm)を用いて濾過した。無機粉末として、上記ガラス粉末Iを80g、分散剤として分散剤Iを1.6g混合し、自動乳鉢を用いて1次分散工程を1時間行った。この時のせん断速度は20000s−1であった。また、この時の粘度は粘度計の測定限界である10000Pa・s以上であった。せん断応力はせん断速度×粘度で与えられ、この時のせん断応力は200MPa以上であった。これに感光性有機成分を添加・5分間攪拌混合して2次混合物を得た後、2次分散工程を3本ロールに5回通すことで行い、これに溶媒(3−メチル−3−メトキシブタノール)を15g添加・攪拌混合することで粘度調整を行い感光性組成物を作製した。この感光性組成物をさらにPTFEフィルター(孔径:4μm)を用いて濾過した。感光性組成物の比重は2.5g/cmであった。得られた感光性組成物の粘度は2Pa・sであった。
【0100】
感光性組成物の凝集体数の測定行ったところ、感光性組成物100gあたり10個であった。
【0101】
その後、得られた感光性組成物の層を15μmのビアパターン/90μmピッチ、20μmのビアパターン/110μmピッチのパターンを持つネガ型クロムマスクを用いて、上面から0.5kw出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は400mJ/cmであった。
【0102】
次に25℃に保持した炭酸ナトリウム0.1重量%の水溶液をシャワーで30秒間現像した。その後シャワースプレーを用いて水洗浄し、光硬化していない部分を除去してガラス基板上に約15μmおよび約20μmの孔径をもつビアパターンを形成した。
【0103】
パターン形成後の基板を光学顕微鏡で観察し、マスクのビアパターン100個のうち、それぞれの孔径に対応するビアパターンが形成された割合をビア加工率(%)として評価した。その結果、15μm、20μm共に100個のビアパターンが形成されており、100%のビア加工率であった。また、パターン形成基板の表面観察を行ったところ、パターンのクラックは見られなかった。パターン形成後の基板を10℃/分の昇温レートでガラス粉末の軟化点付近まで昇温し、10分保持して焼成を行った。焼成後の膜厚は10μmであった。
【0104】
次に、焼成後のパターン形成基板に、スピンコーター法でポジ型のフォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 商品名AZ4620)を塗布した後、100℃で2分ベークした。フォトレジストの膜厚は10μmであった。得られたレジスト膜付きパターン基板に、35μmのビアパターン/90μmピッチ、50μmのビアパターン/110μmピッチを持つネガ型クロムマスクを用いて、上面から0.5kw出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は100mJ/cmであった。次に25℃に保持したレジスト現像液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 商品名AZ400Kを5倍に希釈)に90秒間浸漬、揺動して現像した。その後、30秒間純水洗浄し、120℃2分のポストベークを行うことでレジストパターンを得た。その後、スパッタ法を用いて膜厚150nmのクロム膜を形成した。
【0105】
続いて、25℃に保持したレジスト剥離液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 商品名AZリムーバー700)に30秒間浸漬、揺動してレジスト膜とその上に形成されたクロム膜を剥離した。その後、30秒間純水で洗浄を行い、ゲート電極の形成されたパターン形成基板を得た。
【0106】
得られたゲート電極の形成されたパターン形成基板について電気抵抗の測定をテスターを用いて行い、電気絶縁性を評価した。抵抗値が1MΩ以上のものを良好(◎)とし、1kΩ以上1MΩ未満のものは良(○)とし、1kΩ未満のものについては不良(×)とした。電気絶縁性の評価結果は良好(◎)であった。
【0107】
実施例2〜19
実施例1と同様に、表1〜2に示す組成比の感光性組成物を作製した後、凝集体の個数を測定した。また、カソード電極の形成されたガラス基板上にパターン形成を行い、ビア加工率およびゲート電極形成後の電気絶縁性を評価した。結果を表1〜2に示した。なお、表1〜2中、「感光性有機成分」には溶剤は含んでいない。また、「量(重量%)」とあるのは、溶剤を除いた固形物全体に対する含有量を示す。
【0108】
比較例1
実施例1と同様に感光性有機成分を調整し、これに無機粉末および分散剤と混合後、3本ロールに5回通すことで1次分散を行った後、溶媒(3−メチル−3−メトキシブタノール)を15g添加・攪拌混合することで粘度調整を行い、感光性組成物を作製した。この1次分散時のせん断速度は20000s−1であった。また、この時の粘度は100Pa・s以上であった。この時のせん断応力は2MPaであった。この感光性組成物をさらにPTFEフィルター(孔径:4μm)を用いて濾過したところ、一部は濾過できたが、フィルターが目詰まりして、完全にろ過できなかった。感光性組成物の凝集体数を評価したところ感光性組成物100gあたり300個であった。
【0109】
実施例1と同様な手順で作製したゲート電極の形成されたパターン形成基板の電気絶縁性を評価したところ、欠陥のためカソード電極をゲート電極が通じている状態であり、不良(×)であった。
【0110】
比較例2〜5
比較例1と同様に表3に示す組成比の感光性組成物を作製した後、凝集体の個数を測定した。また、カソード電極の形成されたガラス基板上にパターン形成を行い、ビア加工率およびゲート電極形成後の電気絶縁性を評価した。結果を表3に示した。なお、表3中、「感光性有機成分」には溶剤は含んでいない。また、「量(重量%)」とあるのは、溶剤を除いた固形物全体に対する含有量を示す。
【0111】
実施例20
実施例1と同様に、表4に示す組成比の感光性組成物を作製した後、支持体としてPETフィルム上にドクターブレード法を用いて塗布し、85℃で15分間乾燥を行った。得られたシートを200mm×200mmの大きさに切断した。得られたシートの膜厚は40μmであった。同様の手法で凝集体の個数を測定したのち、パターン形成を行い、ビア加工率を評価した。その結果、15μm、20μm共に100%のビア加工率であった。次にシートを支持体からはがして、パターン形成されたシートを10℃/分の昇温レートで850℃まで昇温し、10分保持して焼成を行った。焼成後の膜厚は20μmであった。得られた基板にゲート電極を形成し、電気絶縁性を評価した。結果は良好であった。
【0112】
比較例5
実施例20と同様に表4に示す組成比の感光性組成物を作製した後、同様の手法で凝集体の個数を測定、ゲート電極形成したのち、電気絶縁性を評価した。結果を表4に示した。なお、表4中、「感光性有機成分」には溶剤は含んでいない。また、「量(重量%)」とあるのは、溶剤を除いた固形物全体に対する含有量を示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性有機成分、分散剤、無機粉末を含有してなる電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物であって、組成物100g中の粒径20μm以上の凝集体数が50個未満であることを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】
感光性有機成分として光を吸収して該吸収した光より長波長の光線を発する化合物を含有し、該化合物の含有量が感光性有機成分に対して0.1〜30重量%である請求項1記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記光を吸収して該吸収した光より長波長の光線を発する化合物が、波長350nm〜380nmの範囲に最大吸収があり、かつ、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中で測定したときの蛍光の最大発光波長が400nm〜450nmの範囲にある請求項2記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記光を吸収して該吸収した光より長波長の光線を発する化合物がクマリン系蛍光増白剤である請求項2または3記載の感光性組成物。
【請求項5】
分散剤がリン酸エステル系であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の感光性組成物。
【請求項6】
無機粉末がガラス粉末であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の感光性組成物。
【請求項7】
ガラス粉末が酸化物換算表記で、Bi23 70〜91重量%、SiO2 3〜15重量%、B23 5〜20重量%、ZrO 0〜5重量%、ZnO 1〜10重量%を含むことを特徴とする請求項6記載の感光性組成物。
【請求項8】
ガラス粉末のBET法換算平均粒子径が0.01〜5μmの範囲である請求項6または7記載の感光性組成物。
【請求項9】
感光性有機成分、分散剤、無機粉末を含有してなる電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物の製造方法であって、該方法が無機粉末に分散剤を加えて1次混合物を得る混合工程と、1次混合物を分散させる1次分散工程と、該分散物に感光性有機成分を加えて2次混合物を得る2次混合工程と、2次混合物を分散させる2次分散工程と、該分散物の粘度を調整する粘度調整工程を有し、該1次分散工程におけるせん断応力が100MPa以上であることを特徴とする電子放出素子の絶縁層形成用感光性組成物の製造方法。
【請求項10】
1次分散工程における1次混合物の粘度が10000Pa・s以上であることを特徴とする請求項9記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8いずれか記載の感光性組成物を用いた電界電子放出素子。

【公開番号】特開2009−175399(P2009−175399A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13456(P2008−13456)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】