説明

電子機器の動作方法

【課題】 他の機器と通信する機能と画像を表示する機能とを兼ね備えた電子機器の利便性を向上させる。
【解決手段】 RFIDのリーダライタとして使用される電子機器D1は、物品71に付加された記録媒体73から情報を受信する通信部54と、物品71に付加された図像74を撮像する撮像部3とを有する。電子機器D1においては、撮像部3が撮像した図像74を復号した情報と通信部54が受信した情報とに基づく処理が実行される。例えば、通信部54が受信した複数の情報の何れかが、図像74を復号した情報に応じて選択される。この選択された情報は表示パネル21に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の機器と通信する機能を備えた電子機器を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
他の機器と無線により通信する機能を備えた種々の電子機器が従来から広く普及している。例えば、利用者や物品を識別するためのRFID(Radio Frequency Identification)を利用した技術のもとでは、種々のデータが記憶されたICタグやICカードなどの機器と、この機器に対して非接触にてデータの書込みや読出しを行なうリーダライタとが使用される。これらの機器は、他の機器との間で電磁波を授受するためのアンテナと、この電磁波を変復調する通信回路とを具備する。
【0003】
この種の機器には表示装置が搭載される場合がある(例えば特許文献1参照)。より具体的には、ICタグやICカードなどから読み出した情報を表示する表示装置がリーダライタに搭載されるほか、リーダライタによって読み書きされる機器にも、人間に対して情報を提供するために表示装置が搭載され得る。
【特許文献1】特開2004−13789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の電子機器は必ずしも充分な利便性を備えたものとは言えないのが現状であった。例えば、これらの機器のアンテナが無指向性である場合には、通信の相手先となる機器を特定することが困難となるという問題がある。より具体的には、上述したRFIDは、商店などに陳列された多数の商品に付加されたICタグをリーダライタによって読み取って各商品の管理に役立てるという用途が期待されているところ、リーダライタに無指向性のアンテナを搭載した場合には、このリーダライタに対して多数のICタグから電磁波が到達するため、特定の商品に付加されたICタグのみから選択的に情報を読み出すことが困難となる。指向性を有するアンテナを利用すればこれらの問題は解消される。しかしながら、指向性のアンテナによって確実に通信するための方策が従来の技術においては何ら考慮されていないため、この場合には利用者の負担が増大するという問題を招きかねない。すなわち、例えばリーダライタの利用者は、これを所望のICタグとの間で電磁波が良好に授受されると予想される姿勢に維持して(例えばリーダライタをICタグに向けて差し出して)通信を実行し、その後に画像を視認できる位置まで移動させることによってICタグから読み出した情報を確認するといった煩雑な動作を実行しなければならない。
【0005】
また、RFIDの用途として例示した各商品の管理には各商品の識別情報のほかにも種々の情報が必要となる。したがって、実際にRFIDを商品の管理に利用するためには、これらの情報が記憶されたICタグやICカードを商品ごとに用意する必要がある。しかしながら、このようにICタグやICカードを商品ごとに用意した場合にはコストが過大となるから、現実的にはこのような方策を採用することは困難である。
【0006】
なお、ここでは特にリーダライタに注目して従来の技術の問題に言及したが、これらの問題はICタグやICカードといった機器についても同様に生じる問題である。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、他の機器と通信する機能と画像を表示する機能とを兼ね備えた電子機器の利便性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、情報を記憶する他の電子機器と通信する通信部と、被写体を撮像する撮像部と、情報を処理する制御部とを具備する電子機器を動作させる方法であって、光学的に読み取り可能な図像を撮像部が撮像する撮像段階と、他の電子機器から通信部が情報を受信する受信段階と、撮像段階にて撮像された図像を復号した情報と受信段階にて受信された情報とに基づく処理を制御部が実行する処理段階とを有する。この発明は、例えばRFIDのリーダライタやこのリーダライタによって読み出される情報を記憶した記録媒体(ICタグやICカードなど)を動作させるための方法として採用される。
【0008】
この方法のもとでは、他の電子機器から受信した情報だけでなく、撮像段階にて撮像された図像を復号した情報に応じた処理が制御部によって実行される。したがって、他の電子機器から受信した情報のみに基づいて処理を行なう従来の構成と比較して多様な処理によって利便性を向上させることができる。しかも、光学的に読み取り可能な図像は、情報を記憶する電子機器(例えばICタグやICカード)よりも低廉なコストにて作成されるのが一般的である。したがって、本発明によれば、他の電子機器から受信した情報のみに基づいて処理を行なう従来の構成と比較してコストを抑制することができるという利点がある。なお、本発明における撮像段階と受信段階との順序は任意である。すなわち、撮像段階の後に受信段階が実行されても受信段階の後に撮像段階が実行されてもよく、さらには撮像段階と受信段階とが並行して実行されてもよい。
【0009】
本発明に係る電子機器において通信部と撮像部との位置関係は任意であるが、より望ましい態様において、撮像部による撮像の範囲と通信部による通信の範囲とは互いに重複する。すなわち、通信部は、指向性を示すアンテナを介して他の電子機器と通信する一方、撮像段階において、撮像部が、アンテナが指向する方向に存在する図像を撮像し、受信段階において、通信部が、電子機器が撮像段階と略同じ姿勢とされた状態にて他の電子機器と通信する。この態様においては、アンテナが指向する方向に存在する図像が撮像部によって撮像されるから、撮像部によって図像が撮像されるように電子機器の位置や姿勢を調整すれば、通信の相手先となる他の電子機器と良好な通信品位にて通信できる位置または姿勢にアンテナが自動的に調整されることになる。したがって、電子機器の利便性が向上して利用者の負担は軽減される。
【0010】
本発明の具体的な態様として、通信部は、受信段階において複数の情報を受信する一方、処理段階において、制御部は、受信段階にて受信された複数の情報の何れかを、撮像段階にて撮像された図像を復号した情報に基づいて選択する(図14参照)。この態様によれば、撮像部によって撮像された図像に応じて複数の情報の何れかが選択されるから、例えば物品の管理のために本発明を適用する場合には、比較的にコストが低廉である図像を物品ごとに作成しておけば、複数の情報を記憶した電子機器を多数の物品の管理のために共用したとしても、電子機器から読み出された情報と図像を復号した情報とに基づいて、各物品に固有の情報を取得することができる。もっとも、制御部による処理の内容は任意である。例えば、処理段階において、制御部が、受信段階にて受信した情報を、撮像段階にて撮像された図像の復号により特定される関数により演算することによって新たな情報を生成するようにしてもよい(図15参照)。あるいは、これとは逆に、受信段階において、通信部が、所定の関数を示す情報を受信し、処理段階において、制御部が、撮像段階にて撮像された図像を復号した情報を、受信段階にて受信された情報が示す関数により演算することによって新たな情報を生成する構成としてもよい。
【0011】
また、処理段階にて実行された処理によって生成された情報を通信部が送信する送信段階を有する態様によれば、制御部が生成した情報(例えばサービスを享受するための対価となるポイント)を外部に送信することによって更に多様な用途が実現される。
【0012】
本発明の他の形態は、画像を表示する表示パネルと、表示パネルの背面側に指向性を示すアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部とを具備する電子機器を動作させる方法であって、通信部が他の電子機器と通信する段階と、通信部による通信に応じた画像を表示パネルが表示する段階とを有する(図10および図11参照)。この形態によれば、他の電子機器との通信を媒介するアンテナが表示パネルの背面側に指向性を示す。したがって、表示パネルによって表示された画像を確認するために利用者が表示パネルの表示面を自身の方向に向けていたとしても、その利用者からみて奥側に存在する他の電子機器と良好な表示品位を維持したまま通信することができる。この効果は、アンテナが、表示パネルの法線に沿って当該表示パネルから背面側に離間する方向に指向性を示す構成を採用した場合にいっそう顕著となる。なお、表示パネルに表示される画像としては、例えば通信部によって他の電子機器から受信した情報や、通信部による他の電子機器との通信状態(例えば更新の成功または失敗を示すメッセージなど)などがある。
【0013】
本発明の更に他の形態は、画像を表示する表示パネルと、指向性を示すアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部と、アンテナが指向する方向に存在する被写体を撮像する撮像部とを具備する電子機器を動作させる方法であって、他の電子機器または他の電子機器が付加された物品を撮像部が撮像する段階と、撮像部によって撮像された画像を表示パネルが表示する段階と、電子機器が撮像時と略同じ姿勢とされた状態にて通信部が表示パネルに表示されている物品に付加された他の電子機器と通信する段階とを有する(図12参照)。この形態によれば、通信部が通信している電子機器(あるいは電子機器が付加された物品)を撮像した画像が表示パネルによって表示されるから、利用者は、通信の相手先となる電子機器の様子を確認しながらこの電子機器との通信を実行することができる。換言すると、通信の相手先たる所望の電子機器が表示パネルに表示されるように電子機器の姿勢を調整すれば、その相手先の電子機器と良好な通信品位にて通信できる位置または姿勢にアンテナが自動的に調整されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に示す各図においては、各部の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
<1.第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る電子機器について説明する。この電子機器は、RFIDのリーダライタとしての機能を備えた携帯電話機である。
【0016】
<1a.電子機器の構成>
図1は本実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図であり、図2は電子機器を図1とは反対側からみたときの斜視図である。これらの図に示すように、電子機器D1は、第1の筐体11と第2の筐体12とを有する。第1の筐体11と第2の筐体12とは各々の縁端部にてヒンジ13を介して互いに連結されている。利用者は、図1および図2に示すように第1の筐体11が第2の筐体12に対して略180度に開かれた状態(以下「開状態」という)から、ヒンジ13を軸として第1の筐体11を第2の筐体12側に(あるいは第2の筐体12を第1の筐体11側に)回転させることにより、図3および図4に示すように第1の筐体11と第2の筐体12とが互いに対向する状態(以下「閉状態」という)に電子機器D1を折り畳むことができる。
【0017】
第2の筐体12のうち閉状態において第1の筐体11と対向する面には、利用者によって操作される複数の操作子541が配置されている。さらに、第1の筐体11の側面にも同様の操作子542が配置されている。したがって、電子機器D1が閉状態とされて操作子541が第1の筐体11に隠れた場合であっても、利用者は操作子542を操作することによって電子機器D1に指示を入力することができる。
【0018】
第1の筐体11には第1表示パネル21および第2表示パネル22が収容されている。第1表示パネル21および第2表示パネル22は画像を表示するための機器である。なお、以下では、第1表示パネル21と第2表示パネル22とを特に区別する必要がない場合には単に「表示パネル2」と表記する。
【0019】
第1の筐体11のうち閉状態において第2の筐体12と対向する面には開口部11aが形成されている。第1表示パネル21は表示面が開口部11aの内側に位置するように配置される。一方、第1の筐体11のうち閉状態において第2の筐体12の反対側に位置する面には、図2および図3に示すように開口部11bが形成されている。第2表示パネル22は表示面が開口部11bの内側に位置するように配置される。すなわち、第1表示パネル21と第2表示パネル22とは各々の表示面が反対方向を向くように配置される。利用者は、開口部11aを介して第1表示パネル21による表示画像を視認し、開口部11bを介して第2表示パネル22による表示画像を視認することができる。
【0020】
さらに、第1の筐体11には第1撮像部31と第2撮像部32とが収容されている。第1撮像部31および第2撮像部32は被写体を撮像するための機器(いわゆるデジタルカメラ)であり、例えば受光量に応じた電気信号を出力するCCD(Charge Coupled Device)を含む。このうち第1撮像部31は第2表示パネル22の上方に配置されて第1の筐体11の開口部11cから露出する。同様に、第2撮像部32は第1表示パネル21の上方に配置されて開口部11dから露出する。なお、以下では、第1撮像部31と第2撮像部32とを特に区別する必要がない場合には単に「撮像部3」と表記する。
【0021】
図5は各表示パネル2の周辺の構成を示す斜視図である。なお、同図においては第1表示パネル21および第2表示パネル22の近傍の要素のみが図示されており、例えば図1に示される撮像部3等の図示は適宜に省略されている。図5に示すように、第1表示パネル21および第2表示パネル22の各々は、相互に対向するように貼り合わされた背面側基板201と表示側基板202との間隙に液晶が封止された液晶パネルである。第1表示パネル21と第2表示パネル22とにはFPC(フレキシブルプリント基板)15が架け渡されている。このFPC15は、第1表示パネル21および第2表示パネル22の各々と他の回路とを電気的に接続するための配線基板であり、一端が第1表示パネル21の周縁部に固定されるとともに途中の部分が適宜に折り曲げられて他端が第2表示パネル22の周縁部に固定されている。
【0022】
次に、図6は電子機器D1の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、第1表示パネル21および第2表示パネル22は駆動回路16A、16Bにそれぞれ接続されている。駆動回路16Aおよび16Bは、図5に示したFPC15の表面にCOF(Chip On Film)技術によって実装されたICチップであり、各表示パネル2に種々の画像を表示させるための回路(例えば走査線駆動回路やデータ線駆動回路)を含んでいる。なお、各駆動回路16Aおよび16BがCOG(Chip On Glass)技術によって各表示パネル2の背面側基板201に実装された構成としてもよい。
【0023】
図6に示すように、各駆動回路16Aおよび16Bと上述した各撮像部3とは制御部51に接続されている。この制御部51は、電子機器D1の各部を制御するための手段であり、図5に示すようにFPC15の表面にICチップとして実装されている。制御部51は、プログラムを格納する記憶回路やこのプログラムを実行することにより電子機器D1の各部を制御する制御回路とを有する(何れも図示略)。図1に示した操作子541や操作子542を含む操作部54は制御部51に接続されている。
【0024】
図6に示すように、制御部51には通信部52が接続されている。この通信部52には、第1アンテナ41と第2アンテナ42と第3アンテナ43とが接続されている。以下では、第1アンテナ41と第2アンテナ42と第3アンテナ43とを特に区別する必要がない場合には単に「アンテナ4」と表記する。各アンテナ4は、ICタグやICカードといった他の電子機器(以下ではリーダライタと区別するために「記録媒体」と表記する)から送信された電磁波の受信と記録媒体に対する電磁波の送信とを行なう。通信部52は、各アンテナ4を介して記録媒体と通信するための回路であり、図5に示したFPC15の表面にICチップとして実装されている。より具体的には、通信部52は、各アンテナ4によって受信された電磁波を復調してデジタルデータを生成する一方、制御部51から入力されるデジタルデータを変調した電磁波を各アンテナ4から送信する。
【0025】
第1アンテナ41および第2アンテナ42の各々は各表示パネル2に設置されている。すなわち、図5に示すように、第1アンテナ41は第2表示パネル22の背面側基板201の表面に形成され、第2アンテナ42は第1表示パネル21の背面側基板201の表面に形成されている。第1アンテナ41および第2アンテナ42の各々は背面側基板201の各縁辺に沿って環状をなす方形ループアンテナである。一方、第3アンテナ43は、第2の筐体12に収容された方形ループアンテナである。より具体的には、第3アンテナ43は、図2および図4に示すように、第2の筐体12のうち操作子541が配置された面とは反対側の面に設置されている。詳細は後述するが、各アンテナ4は特定の方向に指向性を示す。
【0026】
制御部51は、各アンテナ4を介した通信部52による通信に応じた画像が各表示パネル2に表示されるように各駆動回路16Aおよび16Bを制御することができる。この「通信に応じた画像」とは、例えば記録媒体との通信状態(例えば交信の成功または失敗)を示す情報や、記録媒体から受信した情報または記録媒体に対して送信される情報である。通信部52が通信に利用するアンテナ4とこの通信に応じた画像が表示される表示パネル2とは予め対応付けられている。すなわち、制御部51は、第1アンテナ41を介した通信に応じた画像を第1表示パネル21に表示させる一方、第2アンテナ42または第3アンテナ43を介した通信に応じた画像を第2表示パネル22に表示させる。
【0027】
さらに、制御部51は、各撮像部3によって撮像された画像がこの撮像部3に対応した表示パネル2に表示されるように各駆動回路16Aおよび16Bを制御することができる。すなわち、制御部51は、第1撮像部31によって撮像された画像を第1表示パネル21に表示させる一方、第2撮像部32によって撮像された画像を第2表示パネル22に表示させる。以上のように、各表示パネル2と各アンテナ4と各撮像部3とは相互に対応するもの同士が組み合わされて使用される。以下では、表示パネル2とアンテナ4と撮像部3との組み合わせを便宜的に「ユニット」と表記する。すなわち、本実施形態においては、第1表示パネル21と第1アンテナ41と第1撮像部31とがひとつのユニットを構成し、第2表示パネル22と第2アンテナ42および第3アンテナ43と第2撮像部32とがひとつのユニットを構成する。
【0028】
なお、図1ないし図6においては電子機器D1のうちRFIDのリーダライタとしての機能を担う要素のみが図示されているが、実際の電子機器D1は、利用者が音声を入力するためのマイクロホンや利用者に対して音声を出力するスピーカ、さらには移動通信網の基地局と無線チャネルを介して通信するためのアンテナ(例えばロッドアンテナ)および通信回路など、携帯電話機としての本来の機能を果たす要素も備えている。
【0029】
次に、図7ないし図9は、各表示パネル2と各撮像部3と各アンテナ4との関係を示す図である。図7は電子機器D1を上方向からみた図であり、図8は電子機器D1を横方向からみた図である。図7および図8においては、第1アンテナ41の指向特性が破線にて示されている。この破線によって囲まれた範囲(以下「通信可能範囲」という)Acは、第1アンテナ41から輻射された電磁波が所定の電界強度(例えば記録媒体との間で適正なデータ通信が担保される程度の電界強度)を維持し得る範囲である。換言すると、通信可能範囲Acとは、第1アンテナ41が所定の電界強度の電磁波を受信することができる範囲である。図7および図8に示すように、第1アンテナ41の通信可能範囲Acは、これと同じユニットに属する第1表示パネル21からみて、この第1表示パネル21の表示画像を視認する利用者Uとは反対側(以下「背面側」という)に向かって分布する。すなわち、第1アンテナ41は、第1表示パネル21の背面側に指向性を示す。さらに詳述すると、第1アンテナ41は、第1表示パネル21の背面側基板201の法線に沿って背面側に離間する方向(図7および図8における右方)に指向する。
【0030】
なお、ここでは第1アンテナ41を例示したが、第2アンテナ42についても同様に通信可能範囲Acが画定される。ただし、第2アンテナ42については、図7および図8に示した通信可能範囲Acの分布する方向が左右にわたって逆転する。すなわち、第2アンテナ42は、第2表示パネル22の背面側基板201の法線に沿って第2表示パネル22の背面側に離間する方向(図7および図8における左方)に指向する。一方、図9は、電子機器D1が閉状態にあるときの第3アンテナ43と第2表示パネル22との関係を示す図である。同図に示すように、電子機器D1が閉状態にあるとき、第3アンテナ43の通信可能範囲Acは第2表示パネル22の背面側に向かって分布する。より具体的には、第3アンテナ43は、第2表示パネル22の法線に沿って背面側に離間する方向に指向する。
【0031】
図7および図8においては、第1撮像部31によって撮像される範囲が鎖線にて示されている。この鎖線によって囲まれた範囲(以下「撮像可能範囲As」という)は、第1撮像部31によって撮像され得る範囲である。図7および図8に示すように、第1撮像部31の撮像可能範囲Asは第1表示パネル21の背面側に向けて分布し、かつ、第1アンテナ41の通信可能範囲Acに重複する。すなわち、第1撮像部31は、第1アンテナ41が指向する方向に存在する被写体を撮像できるようにその位置や姿勢が選定されている。一方、図9に示すような折り畳んだ状態では、第2撮像部32は第2の筐体12に隠れてしまい、第2撮像部32の撮像可能範囲Asはこの状態では存在しない。
【0032】
<1b.電子機器D1の使用形態>
次に、電子機器D1が実際に使用されるときの形態に着目しながら、本実施形態に係る電子機器D1の動作を説明する。本実施形態における電子機器D1の動作モードは第1モードないし第3モードに区分される。利用者は、操作部54を適宜に操作することによって何れかの動作モードを選択することができる。以下では、各動作モードが選択された場合に分けて電子機器D1の動作を説明する。
【0033】
<第1モード>
第1モードは、電子機器D1による通信の状態を利用者が確認しながら他の電子機器と通信するためのモードである。このモードを選択すると、利用者Uは、図10に示すように、物品71に付加された記録媒体73(ここではICタグ)に対して何れかのアンテナ4が向くように電子機器D1の姿勢を維持したうえで操作部54を操作する。この操作を検知すると、制御部51は、記録媒体73との通信を通信部52に指令する。この指令を受信した通信部52は、第1アンテナ41、第2アンテナ42および第3アンテナ43のうち記録媒体73から受信した電磁波の電界強度が最大であるアンテナ4を選択する一方、これ以外のアンテナ4(すなわち記録媒体73から受信した電磁波の電界強度が低いアンテナ4)との電気的な導通を遮断する(後述する各モードにおいても同様)。図10は、第1表示パネル21が手前側に向けられるとともに第1アンテナ41が物品71に向けられた姿勢にて電子機器D1が利用者Uに所持されている場合を想定している。この場合には、物品71に向けて指向する第1アンテナ41の電界強度が最大となるから、通信部52は第1アンテナ41を選択するとともに第2アンテナ42および第3アンテナ43を電気的に切り離す。一方、図11に示すように、電子機器D1が閉状態とされたうえで第3アンテナ43が物品に向けられた姿勢にて電子機器D1が利用者Uに所持されている場合には、第3アンテナ43が通信部52によって選択されるとともに第1アンテナ41および第2アンテナ42との導通が遮断される。このようにひとつのアンテナ4のみが通信に利用されるから、電子機器D1が複数のアンテナ4を備えているにも拘わらず、各アンテナ4から送信される電磁波が互いに干渉するといった事態は回避される。
【0034】
続いて、通信部52は、先に選択したアンテナ4を介して記録媒体73と通信することにより、この記録媒体73に記録された情報(例えば物流の管理のために各物品71に割り当てられた識別情報)を受信する。さらに、制御部51は、通信部52が選択したアンテナ4に対応した表示パネル2に、通信に応じた画像を表示させる。例えば、図10のように第1アンテナ41が選択されている場合には、この第1アンテナ41と同じユニットに属する第1表示パネル21に画像が表示される。また、図11のように第3アンテナ43が選択されている場合には第2表示パネル22に画像が表示される。このとき、制御部51は、画像の表示に利用される表示パネル2以外の表示パネル2への給電を停止する(後述する各モードにおいても同様)。例えば、図10の場合には第2表示パネル22に対する給電が停止され、図11の場合には第1表示パネル21に対する給電が停止される。この構成によれば、アンテナ4によって送受信される電磁波に対して、画像を表示していない表示パネル2の動作に起因したノイズが混入する事態は回避される。
【0035】
表示パネル2に表示される画像の具体例は図10の部分(a)ないし部分(c)に示される通りである。すなわち、電子機器D1による記録媒体73との通信の状態に応じて、記録媒体73との交信が適正に実行されている旨のメッセージ(図10の部分(a))や、記録媒体73との交信に失敗した旨のメッセージ(図10の部分(b))が表示される。一方、電子機器D1が記録媒体73との通信を完了した場合には、図10の部分(c)に示すように、この通信によって記録媒体73から取得した情報(ここでは記録媒体73の識別情報を示す「ID01」の文字)が表示される。利用者Uは、これらの画像を視認することによって、記録媒体73との通信の状況を随時に確認することができる。
【0036】
このように、本実施形態においては、各アンテナ4が表示パネル2の背面側に指向する構成となっているから、利用者Uが各表示パネル2を視認できるように電子機器D1が所持されている場合であっても、その背面に指向するアンテナ4によって高品位な通信が実行される。したがって、第1に電子機器D1を記録媒体73と通信するための姿勢に維持し、第2にこの通信の結果を視認できるように電子機器D1を持ち替えるといった煩雑な作業は不要であるから、利用者Uの負担を軽減することができる。
【0037】
さらに、電界強度が最大となるアンテナ4が通信に際して選択的に利用されるから常に高品位の通信が確保される。しかも、本実施形態においては表示パネル2とアンテナ4とを含む複数のユニットが設けられているから、電子機器D1の姿勢に拘わらず(例えば開状態にあるか閉状態にあるかを問わず)高品位での通信が実現される。
【0038】
<第2モード>
第2モードは、撮像部3によって撮像された画像を確認しながら他の電子機器D1と通信するためのモードである。この第2モードは、図12に示すように、互いに近接して配置された複数の物品71のなかから所望の物品71を選択し、この選択した物品71に付加されたICタグから識別情報を読み出すときに選択される。
【0039】
第2モードを選択した利用者Uは、操作部54を適宜に操作することによって何れかの撮像部3を選択する。制御部51は、ここで選択された撮像部3が撮像した画像を、この撮像部3と同じユニットに属する表示パネル2に表示させる。例えば、第1撮像部31が選択された場合には、図12に示すように、この第1撮像部31によって撮像された画像が第1表示パネル21に表示される。利用者Uは、こうして表示された画像を確認しながら、先に選択した撮像部3の撮像可能範囲As内に所望の物品71が位置するように電子機器D1の位置および姿勢を調整する。図12においては、横方向に配列された3つの物品71のうち中央の物品71が第1撮像部31の撮像可能範囲As内に位置するように電子機器D1の姿勢が調整された様子が例示されている。
【0040】
一方、通信部52は、利用者Uによって選択された撮像部3(現に撮像を実行している撮像部3)と同じユニットに属するアンテナ4を選択する。例えば、図12のように第1撮像部31が選択されている場合には、この第1撮像部31と同じユニットに属する第1アンテナ41を選択したうえで、第1のモードと同様にこれ以外のアンテナ4(ここでは第2アンテナ42および第3アンテナ43)との電気的な導通を遮断する。そして、通信部52は、ここで選択したアンテナ4を介して記録媒体73と通信することによって識別情報など各種の情報を取得する。
【0041】
上述したように各アンテナ4と各撮像部3との位置関係は撮像可能範囲Asと通信可能範囲Acとが相互に重なり合うように選定されている。したがって、図12に示されるように所望の物品71が第1表示パネル21に表示されるように電子機器D1の姿勢を調整すれば、第1アンテナ41はこの物品71の記録媒体73と高品位な通信を実行し得る方向に自動的に調整される。すなわち、利用者Uは、表示パネル2を視認しながら所望の物品71が撮像されるように電子機器D1の位置を調整すれば足り、記録媒体73と高品位の通信が実現される位置ないし姿勢に電子機器D1が調整されているかどうかについては考慮する必要がない。したがって、利用者Uの負担が軽減される。
【0042】
<第3モード>
第3モードは、記録媒体73に加えて、光学的に読み取り可能な図像が物品に付加されている場合に好適な動作モードである。このような図像としては、所望の情報に応じて太さが選定された複数の線を配列してなるバーコードのほか、所望の情報に応じて黒色または白色の領域(ドット)を平面的に配列してなるQR(Quick Response)コード(「QRコード」は登録商標である)がある。本実施形態においては、図13に示すように、記録媒体73とQRコード74とが物品71に付加された場合を想定する。一方、この場合の記録媒体73には、図14に示すように、各種の物品に割り当てられた識別情報と各物品に関する情報(例えば生産地や価格など)とを各々が含む複数のレコードが記憶されている。この記録媒体73は、互いに種類が相違する複数の物品について共用されるものであり、記録媒体73が利用される可能性がある総ての物品に対応した複数のレコードを記憶している。したがって、記録媒体73から情報を読み出しただけでは、実際に記録媒体73が付加されている物品71に関するひとつのレコードを特定することができない。そこで、第3モードにおいては、各物品71に付加されたQRコード74に基づいて、複数のレコードの何れかが選択されるようになっている。したがって、記録媒体73に格納された情報が複数の物品71について共通であるのに対し、QRコード74が示す情報は各物品71に固有である。
【0043】
第3モードを選択すると、利用者Uは、第2モードと同様の手順により、何れかの撮像部3の撮像可能範囲As内にQRコード74が位置するように電子機器D1の姿勢を調整する。この調整に際して撮像部3が撮像した画像は、この撮像部3と同じユニットに属する表示パネル2に随時に表示される。図13においては、物品71に付加されたQRコード74が第1撮像部31によって撮像されて第1表示パネル21に表示された場合が想定されている。こうして位置を調整すると、利用者Uは操作部54を操作する。この操作を検知すると、制御部51は、その時点において撮像されている画像(QRコード74)を内部のメモリ(図示略)に取り込む。続いて、図14に示すように、制御部51は、この取り込んだQRコード74をデコードする。ここではQRコード74が「ID002」という識別情報にデコードされた場合を想定する。
【0044】
一方、通信部52は、第2モードと同様の手順により、利用者Uによって選択された撮像部3と同じユニットに属するアンテナ4を選択する。例えば、図13のように第1撮像部31が選択されている場合には、第1アンテナ41を選択するとともにこれ以外のアンテナ4との電気的な導通を遮断する。そして、通信部52は、ここで選択したアンテナ4を介して記録媒体73と通信することにより、この記録媒体73に格納された総てのレコードを取得する。記録媒体73とQRコード74とが近接して配置されていることを前提とすれば、第2モードと同様に、QRコード74が撮像されるように電子機器D1の位置および姿勢を調整することによって、アンテナ4の位置も記録媒体73と良好に通信し得る位置に調整される。
【0045】
続いて、制御部51は、通信部52によって取得された複数のレコードのうちQRコード74からデコードされた識別情報を含むレコードを選択する。例えば、図14に示すように、記録媒体73から読み出された複数のレコードのなかから識別情報「ID002」を含むレコードが検索される。こうして検索されたレコードに含まれる識別情報および製品情報は、先の通信に利用されたアンテナ4と同じユニットに属する表示パネル2(図13の例では第1表示パネル21)に表示される。
【0046】
このように、第3モードにおいても第2モードと同様に、QRコード74が撮像されるように電子機器D1の姿勢を調整すればアンテナ4の位置が自動的に調整されるから、利用者Uの負担が軽減される。加えて、第3モードにおいては、記録媒体73に記録された複数のレコードの何れかがQRコード74に基づいて選択されるから、記録媒体73の長所とQRコード74の長所とを利用して効率的な物品の管理が実現される。この点について詳述すると以下の通りである。
【0047】
記録媒体73は記録することができる情報量がQRコード74よりも大きいという利点がある反面、その製造や情報の記録のためにQRコード74よりも多大なコストを要するという欠点がある。一方、QRコード74は用紙に画像を印刷したものであるため、製造に要するコストが記録媒体73と比較して低廉であるという利点がある反面、これによって表現できる情報量は記録媒体73よりも少ないという欠点がある。したがって、多様な物品の各々について別個の記録媒体73を製造したり別個の情報を記憶させたりした場合には膨大なコストを要する一方、各物品について別個のQRコード74を作成した場合には各物品の管理のために充分な情報量を記憶させることができないという問題が生じ得る。本実施形態においては、種々の物品に関する情報が格納された記録媒体73をこれらの物品について共用する一方、このうちの何れかが各物品に固有のQRコード74に基づいて選択される構成となっている。したがって、データ容量が大きいという記録媒体73の利点と製造コストが低廉であるというQRコード74の利点とを活用して低コストで効率的な物品の管理が実現される。
【0048】
なお、ここでは複数のレコードの何れかをQRコード74に応じて選択する構成を例示したが、記録媒体73に記録された情報とQRコード74とに基づいた処理の方法はこれに限られない。例えば、図15に示すように、各物品ごとに設定された関数F(x1,x2,……)を表現するQRコード74を作成しておき、これらの関数に含まれる変数x1、x2、……として複数の物品について共通に適用される数値(例えば生産地に応じた数値や価格など)a、b、c……を記録媒体73に記録した構成としてもよい。この構成のもとでは、QRコード74のデコードによって特定される関数に対して記録媒体73から取得された各数値を代入することによって物品ごとの数値が算定され、この数値が各物品の管理のために利用される。あるいは、これとは逆に、各物品ごとに設定された変数を表現するQRコード74と、複数の物品について共通に適用される関数を記憶した記録媒体73とを用いてもよい。
【0049】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電子機器について説明する。この電子機器は、RFIDのICタグまたはICカードとしての機能を備えた携帯電話機である。なお、本実施形態に係る電子機器はリーダライタによって情報が読み出されるという点で上記第1実施形態の電子機器D1(リーダライタ)と相違するが、他の電子機器と通信するという基本的な構成は第1実施形態と共通する。そこで、以下では、本実施形態に係る電子機器のうち上記第1実施形態と同様の部分については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0050】
<2a.電子機器の構成>
図16は、本実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図(図1に対応する図面)である。同図に示すように、この電子機器D2は、第2の筐体12の側面に接続スロット18が形成されている点で上記第1実施形態の電子機器D1とは相違している。この接続スロット18は、可搬型の記録媒体80が挿入および取出される挿入孔であり、その内部には記録媒体80の端子と電気的に接続される端子(図示略)が配置されている。記録媒体80は半導体メモリなどの記憶回路を備えている。この記憶回路には、電子機器D2の利用者に割り当てられた識別情報やその他の各種の情報(典型的には利用者に固有の情報)が記憶される。各表示パネル2や各アンテナ4の構成は上記第1実施形態と同様である。なお、本実施形態における通信部52は、電磁誘導または電磁結合の原理によってアンテナ4から発生した電力によって動作してもよいし、電子機器D2の電源から電力の供給を受けて動作してもよい。
【0051】
<2b.電子機器D2の使用形態>
本実施形態に係る電子機器D2は上記第1実施形態と同様に動作する。図17は、電子機器D2がリーダライタと通信している様子を示す斜視図である。同図に示されるリーダライタ831は、駅や遊技場といった各種の施設の入口に設置されたゲート83に固定されており、上記第1実施形態に示したように電子機器D2から識別情報を読み出す機能と、この識別情報に基づいて利用者Uによる施設への入場の可否を判定する機能とを備えている。
【0052】
第1モードが選択されている場合には以下の動作が実行される。図17に示すように、ゲート83を通過しようとする利用者Uが、リーダライタ831に対して何れかのアンテナ4が向くように電子機器D2の姿勢を維持したうえで操作部54を操作すると、電子機器D2の通信部52は、電界強度が最大であるアンテナ4を選択し、このアンテナ4を介してリーダライタ831と通信する。より具体的には、記録媒体80に記録されている識別情報が制御部51によって読み出されたうえで通信部52からリーダライタ831に送信される。図17のように第1表示パネル21が利用者U側に向けられている場合には、通信部52は第1アンテナ41を介してリーダライタ831と通信する。一方、リーダライタ831は、電子機器D2から受信した識別情報に基づいて利用者Uによる入場の可否を判定し、この判定の結果を示す情報を電子機器D2に対して送信する。そして、電子機器D2の制御部51は、先に選択したアンテナ4と同じユニットに属する表示パネル2に、この判定の結果を表示させる。図17の場合には、第1アンテナ41に対応した第1表示パネル21に入場の可否を示す画像が表示されることになる。
【0053】
また、第2モードが選択されている場合、利用者Uは、例えば第1撮像部31が撮像した画像を第1表示パネル21にて確認しながら、リーダライタ831が第1撮像部31の撮像可能範囲As内に位置するように電子機器D2の位置および姿勢を調整する。通信部52は、第1撮像部31に対応する第1アンテナ41を介して第1モードと同様の手順にてリーダライタ831と通信する。そして、制御部51は、リーダライタ831から受信した情報(入場の可否に関する判定の結果)を第1表示パネル21に表示させる。
【0054】
一方、第3モードが選択されている場合、電子機器D2の制御部51は、雑誌や新聞などの刊行物に印刷されたQRコード74を何れかの撮像部3から取り込んだうえでデコードし、このデコードされた情報と記録媒体80から読み出した情報とに応じた処理を実行する。例えば、制御部51は、デコードされた情報と記録媒体80から読み出した情報とに基づいてポイントを算定する。このポイントは、利用者Uが各種のサービスを享受するための対価となる数値である。この算定されたポイントは、利用者Uによる操作部54への操作に応じて通信部54から他の機器に送信される。例えば、通信部54は、各種の施設に設置されたリーダライタに対してアンテナ4からポイントを送信する。これにより、利用者Uは、電子機器D2に蓄積されたポイントに応じたサービスを享受することができる。
【0055】
<3.変形例>
上記各実施形態に対しては種々の変形が施される。具体的な変形の態様は以下の通りである。上記各実施形態や以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0056】
(1)本発明に係る方法によって動作させられる電子機器は上記各実施形態に示した構成に限定されない。特に、表示パネル2の方向とアンテナ4が指向する方向と撮像部3が撮像する方向との関係は、各請求項において明示的に特定されているものを除いて任意に変更される。
【0057】
(2)上記各実施形態においては、各表示パネル2にアンテナ4が配置された構成を例示したが、アンテナ4が配置される位置やその形状は任意に変更される。例えば、各アンテナ4を表示パネル2とは別個の位置に配置してもよいし、方形ループアンテナ以外の形状の指向性アンテナを採用してもよい。すなわち、表示パネル2の背面側に指向性を示すアンテナまたはこのような指向性を示す位置や姿勢に配置されたアンテナであればよい。また、上記各実施形態においては、制御部51と通信部52とが別個のICチップに搭載された構成を例示したが、制御部51と通信部52とが単一のICチップに搭載された構成も採用され得る。
【0058】
(3)上記各実施形態においては、第1撮像部31と第2撮像部32という2つの撮像部3が設けられた電子機器D(D1およびD2)を例示したが、ひとつの撮像部3のみが設けられた構成としてもよい。この構成においても、第1アンテナ41が指向する方向と第2アンテナ42が指向する方向との何れかを向くように撮像部3の姿勢を利用者が変更できる機構を採用すれば、上記各実施形態のように2つの撮像部3を搭載した場合と同様の作用および効果が奏される。
【0059】
(4)上記各実施形態においては、通信部52による通信に利用されるアンテナ4が電界強度や利用者により指定された撮像部3に応じて選択される構成を例示したが、アンテナ4を選択するための方法はこれに限られない。例えば、画像を表示する表示パネル2に応じてアンテナ4が選択される構成としてもよい。例えば、上記各実施形態に例示した折り畳み型の電子機器D(D1またはD2)における制御部51は、電子機器Dが利用者によって開状態とされているときには第1表示パネル21を選択して画像を表示させる一方、電子機器Dが閉状態とされているときには第2表示パネル22を選択して画像を表示させる。この構成のもとでは、実際に画像の表示に利用される表示パネル2と同じユニットに属するアンテナ4が通信部52によって選択される構成としてもよい。例えば、電子機器Dが開状態とされて第1表示パネル21が画像を表示しているときには第1アンテナ41を介した通信が実行され、電子機器Dが閉状態とされて第2表示パネル22が画像を表示しているときには第2アンテナ42を介した通信が実行されるといった具合である。あるいは、表示パネル2の選択状態と各アンテナ4の電界強度とに応じてアンテナ4が選択される構成としてもよい。例えば、電子機器Dが開状態にある場合には第1アンテナ41および第2アンテナ42の何れかが各々の電界強度に応じて選択される一方、電子機器Dが閉状態にある場合には第3アンテナ43が選択されるといった構成も採用される。なお、本変形例において、制御部51は、利用者が電子機器Dを開閉する操作に応じて(より具体的には電子機器Dの開閉を検知するセンサからの信号に応じて)何れかの表示パネル2を選択してもよいし、利用者による操作部54への操作に応じて何れかの表示パネル2を選択してもよい。
【0060】
(5)上記各実施形態においては、動作モードとして第1モードないし第3モードを例示したが、これらの各動作モードを適宜に組み合わせてもよい。例えば、通信部54による通信の開始前には、各実施形態に第2モードとして示したように撮像部3が撮像した画像を表示パネル2に表示させる一方、通信部54による通信が開始されると、各実施形態に第1モードとして示したように通信に応じた画像を表示パネル2に表示させるといった態様も採用される。
【0061】
(6)上記各実施形態においては、アンテナ4と撮像部3と表示パネル2とを含む2つのユニットが配設された電子機器Dを例示したが、このユニットの個数は任意である。例えば、ひとつのユニットのみを含む構成や3つ以上のユニットを含む構成としてもよい。また、上記各実施形態においては、表示パネル2として液晶表示パネルを例示したが、各表示パネル2の構成の如何は不問である。例えば、有機EL表示パネルや電気泳動表示パネルなど各種の表示機器が本発明における表示パネルとして採用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子機器が開状態とされたときの斜視図である。
【図2】同電子機器を図1とは反対側からみたときの斜視図である。
【図3】同電子機器が閉状態とされたときの斜視図である。
【図4】同電子機器を図3とは反対側からみたときの斜視図である。
【図5】同電子機器における各表示パネルと各アンテナとの位置関係を示す斜視図である。
【図6】同電子機器の機能的な構成を示すブロック図である。
【図7】同電子機器を利用者の上方からみたときの撮像可能範囲および通信可能範囲と表示パネルとの位置関係を示す図である。
【図8】同電子機器を利用者の側方からみたときの撮像可能範囲および通信可能範囲と表示パネルとの位置関係を示す図である。
【図9】同電子機器が閉状態にあるときの通信可能範囲と表示パネルとの位置関係を示す図である。
【図10】同電子機器が第1モードにて使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図11】同電子機器が第1モードにて使用されるときの他の様子を示す斜視図である。
【図12】同電子機器が第2モードにて使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図13】同電子機器が第3モードにて使用されるときの様子を示す斜視図である。
【図14】第3モードにおける制御部の処理の内容を示す図である。
【図15】第3モードにおける制御部の他の処理の内容を示す図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る電子機器が開状態とされたときの斜視図である。
【図17】同電子機器が使用されるときの様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
D1,D2……電子機器、11……第1の筐体、12……第2の筐体、13……ヒンジ、15……FPC、16A,16B……駆動回路、18……接続スロット、2……表示パネル、21……第1表示パネル、211,221……表示面、22……第2表示パネル、201……背面側基板、202……表示側基板、3……撮像部、31……第1撮像部、32……第2撮像部、4……アンテナ、41……第1アンテナ、42……第2アンテナ、43……第3アンテナ、51……制御部、52……通信部、54……操作部、71……物品、73……記録媒体、74……QRコード74、80……記録媒体、Ac……通信可能範囲、As……撮像可能範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する他の電子機器と通信する通信部と、被写体を撮像する撮像部と、情報を処理する制御部とを具備する電子機器を動作させる方法であって、
光学的に読み取り可能な図像を前記撮像部が撮像する撮像段階と、
前記他の電子機器から前記通信部が情報を受信する受信段階と、
前記撮像段階にて撮像された図像を復号した情報と前記受信段階にて受信された情報とに基づく処理を前記制御部が実行する処理段階と
を有する電子機器の動作方法。
【請求項2】
前記通信部は、指向性を示すアンテナを介して前記他の電子機器と通信し、
前記撮像段階において、前記撮像部は、前記アンテナが指向する方向に存在する前記図像を撮像し、
前記受信段階において、前記通信部は、電子機器が前記撮像段階と略同じ姿勢とされた状態にて前記他の電子機器と通信する
請求項1に記載の電子機器の動作方法。
【請求項3】
前記受信段階において、前記通信部は、複数の情報を受信し、
前記処理段階において、前記制御部は、前記受信段階にて受信された複数の情報の何れかを、前記撮像段階にて撮像された図像を復号した情報に基づいて選択する
請求項1または請求項2に記載の電子機器の動作方法。
【請求項4】
前記処理段階において、前記制御部は、前記受信段階にて受信した情報を、前記撮像段階にて撮像された図像の復号により特定される関数により演算することによって新たな情報を生成する
請求項1または請求項2に記載の電子機器の動作方法。
【請求項5】
前記受信段階において、前記通信部は、所定の関数を示す情報を受信し、
前記処理段階において、前記制御部は、前記撮像段階にて撮像された図像を復号した情報を、前記受信段階にて受信された情報が示す関数により演算することによって新たな情報を生成する
請求項1または請求項2に記載の電子機器の動作方法。
【請求項6】
前記処理段階にて実行された処理によって生成された情報を前記通信部が送信する送信段階を有する請求項1から請求項5の何れかに記載の電子機器の動作方法。
【請求項7】
画像を表示する表示パネルと、前記表示パネルの背面側に指向性を示すアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部とを具備する電子機器を動作させる方法であって、
前記通信部が前記他の電子機器と通信する段階と、
前記通信部による通信に応じた画像を前記表示パネルが表示する段階と
を有する電子機器の動作方法。
【請求項8】
画像を表示する表示パネルと、指向性を示すアンテナを介して他の電子機器と通信する通信部と、前記アンテナが指向する方向に存在する被写体を撮像する撮像部とを具備する電子機器を動作させる方法であって、
前記他の電子機器または前記他の電子機器が付加された物品を前記撮像部が撮像する段階と、
前記撮像部によって撮像された画像を前記表示パネルが表示する段階と、
電子機器が前記撮像時と略同じ姿勢とされた状態にて前記通信部が前記表示パネルに表示されている前記物品に付加された前記他の電子機器と通信する段階と
を有する電子機器の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−31437(P2006−31437A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209948(P2004−209948)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】