説明

電子機器

【課題】携帯型の電子機器において、外形の大型化と内部構造の複雑化とを招くことなくスイッチの誤操作を防止する。
【解決手段】デジタルカメラの電源ボタン16は、ユーザに押圧操作される操作部材30と、この操作部材30の押圧操作を検出するタクトスイッチ31と、操作部材30を支持する板バネ32とからなる。操作部材30は、ケース34に形成された開口34aから一部を露呈させた第1位置と、ピン30aをタクトスイッチ31に接触させた第2位置との間で移動する。板バネ32は、バイメタルによって成形されている。この板バネ32には、ヒータ36が貼り付けられている。板バネ32は、ヒータ36によって加熱されると、カメラ本体の内側に向かって湾曲変形し、外部に露呈せず、かつタクトスイッチ31にも接触しない第3位置に、操作部材30を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンスイッチを備えた電子機器、又はスライドスイッチを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの携帯型の電子機器では、鞄などに収納して持ち運んでいる際に、鞄内の他の物品などと接触して、各種のスイッチが操作されてしまうことがある。こうした誤操作は、無駄な電力消費や故障の要因などに繋がってしまうため、適切に防止したいという要望が強く、従来より種々の方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1、及び特許文献2には、スイッチを覆うカバーを設けることによって、誤操作を防止する方法が記載されている。また、特許文献3には、ボタンの押圧を規制するロック部材を設けることによって、誤操作を防止する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平6−203689号公報
【特許文献2】特開平9−288928号公報
【特許文献3】特開平9−306282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法では、カバーを取り付ける分だけ外形が大きくなり、携帯性を損ねてしまうという問題がある。また、特許文献3の方法では、ロック部材を設ける分だけ内部構造が複雑化し、コストアップの要因となってしまうことが懸念される。さらに、上記の各方法では、カバーの着脱やロック部材の操作などをユーザが行わなければならないため、手間であるとともに、カバーを付け忘れたりロックし忘れたりしてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、外形の大型化と内部構造の複雑化とを招くことなく、かつユーザの手間を要さずに確実にスイッチの誤操作を防止することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電子機器は、外装ケースに形成された開口を介して少なくとも一部を前記外装ケースの外に露呈させる第1位置と、押圧操作によって前記外装ケース内に押し込められた第2位置との間で移動する操作部材と、前記第2位置に移動した前記操作部材を検出する検出手段と、前記操作部材を前記第1位置に保持し、前記操作部材が押圧操作された際に弾性変形によって前記第2位置への移動を許容する略板状の支持部材とからなる押しボタンスイッチと、前記支持部材を加熱する加熱手段と、周囲の明るさを測定する光センサと、前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、前記支持部材が、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に湾曲変形し、前記外装ケースの外に露呈せず、かつ前記検出手段にも検出されない第3位置に前記操作部材を保持することを特徴とする。
【0007】
なお、本発明の電子機器は、外装ケースに形成された開口を介して少なくとも一部を前記外装ケースの外に露呈させる第1位置と、押圧操作によって前記外装ケース内に押し込められた第2位置との間で移動する操作部材と、前記第2位置に移動した前記操作部材を検出する検出手段と、前記操作部材を前記第1位置に保持し、前記操作部材が押圧操作された際に弾性変形によって前記第2位置への移動を許容する略板状の支持部材とからなる押しボタンスイッチと、前記支持部材を加熱する加熱手段と、周囲の明るさを測定する光センサと、前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段ととを設け、前記支持部材が、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に、前記操作部材を押し込むのに必要となる力を増加させるように湾曲変形する構成としてもよい。
【0008】
また、この際、前記開口は、前記操作部材を一部だけ露呈させるように形成され、前記支持部材は、湾曲変形した際に、前記操作部材を前記外装ケースの内面に押し付けることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の電子機器は、外装ケースに形成された開口を介して少なくとも一部を前記外装ケースの外に露呈させる第1位置と、押圧操作によって前記外装ケース内に押し込められた第2位置との間で移動する操作部材と、前記第2位置に移動した前記操作部材を検出する検出手段と、前記検出手段を支持する略板状の支持部材とからなる押しボタンスイッチと、前記支持部材を加熱する加熱手段と、周囲の明るさを測定する光センサと、前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、前記支持部材が、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に、前記操作部材と前記検出手段との間隔を広げるように湾曲変形する構成としてもよい。
【0010】
なお、この際、前記支持部材は、湾曲変形することによって、前記操作部材の検出を行う検出位置と、前記操作部材を検出できなくなる退避位置との間で前記検出手段を移動させることが好ましい。
【0011】
また、前記押しボタンスイッチは、電源のON/OFFを切り替える電源ボタンであることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の電子機器は、第1位置と第2位置との間でスライド自在な操作部材と、前記操作部材の位置を検出する検出手段と、凸状に形成された係合部を先端に有し、前記第1位置と前記第2位置とのそれぞれの位置に対応して形成された係合溝に前記係合部を係合させることによって、前記各位置に移動した前記操作部材を保持する略板状の保持部材とからなるスライドスイッチと、前記保持部材を加熱する加熱手段と、周囲の明るさを測定する光センサと、前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、前記保持部材が、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に、前記係合部を前記係合溝に押し付けるように湾曲変形する構成であってもよい。
【0013】
なお、前記スライドスイッチは、電源のON/OFFを切り替える電源スイッチであることが好ましい。
【0014】
また、前記加熱制御のキャンセルを前記制御手段に設定するキャンセル設定手段を設けるようにしてもよい。この際、前記キャンセル設定手段を、グリップ部に加えられた圧力を測定する圧力センサとし、前記制御手段は、前記圧力センサの出力値が設定値以上か否かを判定し、出力値が設定値以上である場合にキャンセルが設定されたと判断することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子機器では、操作部材を支持する支持部材をバイメタルで成形し、この支持部材を加熱して湾曲変形させることにより、外装ケースの外に露呈せず、かつ検出手段にも接触しない位置に操作部材を保持するようにした。これにより、鞄内などで他の物品と操作部材とが接触しなくなるので、押しボタンスイッチの誤操作を防止することができる。また、バイメタル製の支持部材と、これを加熱する加熱手段とを設けるだけでよいので、外形の大型化や内部構造の複雑化を招く心配もない。さらに、光センサの出力値に基いて支持部材の湾曲変形を自動で行うようにしたので、ユーザに手間を掛けることなく確実に誤操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すように、デジタルカメラ(電子機器)2は、略直方体状に形成されたカメラ本体4を有している。カメラ本体4の前面には、撮影レンズ10を保持するレンズ鏡胴11と、被写体像を光学的に確認するための光学ファインダ12と、撮影実行の際に被写体を照射するストロボ発光部13と、周囲の明るさを測定する光センサ14とが設けられている。光センサ14は、周囲の明るさが明るい程、高い電圧を出力するように構成されている。この光センサ14には、例えば、フォトダイオードやフォトトランジスタなどといった周知の受光素子が用いられる。また、カメラ本体4の上面には、撮影実行を指示するレリーズボタン15と、電源のON/OFFを切り替える電源ボタン(押しボタンスイッチ)16とが設けられている。
【0017】
撮影者の右手に把持されるカメラ本体4の前面左側には、グリップ部17が形成されている。グリップ部17は、撮影者のグリップ性を向上させるため、周囲よりも僅かに凹まされている。なお、グリップ部17の形状は、これに限ることなく、例えば、凸状に形成されたものなど、撮影者のグリップ性が向上するものであれば、如何なる形状であってもよい。
【0018】
グリップ部17の内側には、グリップ部17に加えられた圧力を測定する圧力センサ(キャンセル設定手段)18が設けられている。圧力センサ18は、例えば、グリップ部17の歪み量などを介して、撮影者が把持した際に加わる圧力を内側から測定する。なお、この圧力センサ18には、例えば、半導体圧力センサや歪みゲージなどといった周知のセンサを用いればよい。また、圧力センサ18の構成は上述に限ることなく、例えば、圧力センサ18のセンシング部分を外部に露呈させ、撮影者がグリップ部17を把持した際に、センシング部分を撮影者の指と直接接触させて圧力を測定するようにしてもよい。但し、圧力センサ18を内部に配置することで、センシング部分の破損や他の物品と接触した際の誤検出などを防止することができる。
【0019】
図2に示すように、カメラ本体4の背面には、液晶パネル20と操作部21とが設けられている。液晶パネル20には、撮影した画像や撮影時のいわゆるスルー画像、及び各種のメニュー画面などが表示される。操作部21には、撮影レンズ10を広角側もしくは望遠側に変倍するためのズーム操作ボタン22、静止画撮影を行う静止画撮影モードと液晶パネル20に画像を再生表示する再生モードとを切り替えるためのモード切替スイッチ23、液晶パネル20にメニュー画面を表示する際や選択内容を決定する際などに操作されるメニューボタン24、メニュー画面の表示項目などを切り替えるための表示切替ボタン25、及びメニュー画面内のカーソルを移動させる際などに操作される十字キー26などが配設されている。
【0020】
図3に示すように、電源ボタン16は、ユーザに押圧操作される操作部材30と、この操作部材30の押圧操作を検出するタクトスイッチ(検出手段)31と、操作部材30を支持する板バネ(支持部材)32とで構成される。操作部材30は、板バネ32を介してカメラ本体4のケース34に取り付けられている。また、操作部材30には、タクトスイッチ31に向かって突出するように形成された略円柱状のピン30aが設けられている。
【0021】
この操作部材30は、ケース34に形成された開口34aから一部を露呈させた第1位置(図3(a)参照)と、ピン30aをタクトスイッチ31に接触させた第2位置(図3(b)参照)との間で移動する。操作部材30は、板バネ32によって第1位置に保持され、ユーザの押圧操作によってカメラ本体4内に押し込められて第2位置に移動する。板バネ32は、弾性変形することによって操作部材30の第2位置への移動を許容し、押圧操作が解除された際に、その弾性によって第2位置に移動した操作部材30を第1位置に戻す。なお、本実施形態では、操作部材30が第1位置にある際に、一部だけを露呈させるようにしているが、第1位置にある際に、操作部材30の全部が露呈されるようにしても勿論よい。
【0022】
タクトスイッチ31は、第2位置に移動した操作部材30のピン30aと接触した際に、内部の接点を導通させることにより、操作部材30が押圧操作されたことを検出する。このタクトスイッチ31は、ブラケット35に取り付けられている。ブラケット35は、例えば、ケース34などに取り付けられる。これにより、タクトスイッチ31が、カメラ本体4の内部に固定される。デジタルカメラ2は、タクトスイッチ31が操作部材30の押圧操作を検出したことに応じて、電源のON/OFFを切り替える。
【0023】
板バネ32は、熱膨張係数の異なる二種類あるいはそれ以上の金属又は合金を接着して板状に仕上げたバイメタルによって成形されている。この板バネ32には、可撓性を有するシート状のヒータ(加熱手段)36が貼り付けられている。バイメタル製の板バネ32は、ヒータ36によって加熱されると、カメラ本体4の内側に向かって湾曲変形し、図3(c)に示すように、外部に露呈せず、かつタクトスイッチ31にも接触しない第3位置に、操作部材30を保持する。なお、ヒータ36は、シート状のものに限ることなく、例えば、板状や棒状のものなどであってもよい。さらには、ヒータに限ることなく、例えば、電気抵抗体など、板バネ32を加熱できるものであれば如何なるものであってもよい。
【0024】
デジタルカメラ2の内部構成の概略を図4に示す。撮影レンズ10は、光軸Lに沿って配列されたズームレンズ40、絞り41、及びフォーカスレンズ42によって構成されている。ズームレンズ40には、レンズモータ43が接続されている。レンズモータ43は、ズーム操作ボタン22の操作に連動して、ズームレンズ40を広角側もしくは望遠側に移動させる。絞り41には、アイリスモータ44が接続されている。アイリスモータ44は、レリーズボタン14の半押しにともなう撮影準備処理の際に、絞り41の開口面積を変化させてズームレンズ40から入射する光の量を調節する。また、フォーカスレンズ42には、レンズモータ45が接続されている。レンズモータ45は、ズームレンズ40の変倍などにともなって、フォーカスレンズ42を光軸方向に移動させることにより、撮影レンズ10の焦点を至近側、もしくは無限遠側に調整する。
【0025】
各モータ43、44、45は、モータドライバ46に接続されている。モータドライバ46は、デジタルカメラ2を統括的に制御するCPU(制御手段)47に接続されており、このCPU47からの制御信号に基づいて各モータ43、44、45に駆動パルスを送信する。各モータ43、44、45は、この駆動パルスに応じて回転軸を回転駆動する。なお、各モータ43、44、45には、例えば、ステッピングモータなどが用いられる。
【0026】
撮影レンズ10の背後には、撮影レンズ10によって結像された被写体像を撮像するCCD48が配置されている。CCD48には、CPU47によって制御されるタイミングジェネレータ(TG)49が接続され、このTG49から入力されるタイミング信号(クロックパルス)により、電子シャッタのシャッタ速度が決定される。
【0027】
CCD48から出力された画像データは、相関二重サンプリング回路(CDS)50に入力され、CCD48の各セルの蓄積電荷量に正確に対応したR、G、Bの画像データとして出力される。CDS50から出力された画像データは、増幅器(AMP)51で増幅され、A/D変換器(A/D)52でデジタルの画像データに変換される。
【0028】
画像入力コントローラ53は、バス54を介してCPU47に接続され、CPU47の制御命令に応じて、CCD48、CDS50、AMP51、及びA/D52の各部を制御する。A/D52から出力された画像データは、SDRAM55に一時的に記録される。
【0029】
画像信号処理回路56は、SDRAM55から画像データを読み出して、階調変換、ホワイトバランス補正、γ補正処理などの各種画像処理を施し、この画像データを再度SDRAM55に記録する。YC変換処理回路57は、画像信号処理回路56で各種処理を施された画像データをSDRAM55から読み出し、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとに変換する。
【0030】
VRAM58は、液晶パネル20にスルー画像を出力するためのメモリであり、画像信号処理回路56、YC変換処理回路57を経た画像データが格納される。このVRAM58には、画像データの書き込みと読み出しとを並行して行えるように、2フレーム分のメモリが確保されている。VRAM58に格納された画像データは、LCDドライバ59でアナログのコンポジット信号に変換され、液晶パネル20にスルー画像として表示される。
【0031】
圧縮伸長処理回路60は、YC変換処理回路57でYC変換された画像データを、例えば、TIFFやJPEGなどといった所定の圧縮形式で圧縮する。メディアコントローラ61は、メディアスロットに着脱自在に装着されたメモリカード62にアクセスして、圧縮された画像データの読み書きなどを行う。
【0032】
CPU47には、光センサ14、レリーズボタン15、圧力センサ18、操作部21、タクトスイッチ31、EEPROM64、及びヒータコントローラ65が接続されている。なお、光センサ14と圧力センサ18とをCPU47に接続する際、各センサ14、18の出力信号が微弱である場合などには、出力信号を増幅するアンプなどを介してCPU47と接続するようにしてもよい。また、バス54には、CPU47から送信されるストロボ発光信号に応じてストロボ発光部13を発光させるストロボ制御部67が接続されている。
【0033】
EEPROM64には、各種制御用のプログラムや設定情報などが記録されている。CPU47は、これらの情報をEEPROM64から作業用メモリであるSDRAM55に読み出して、各種の処理を実行する。ヒータコントローラ65は、ヒータ36と接続されている。ヒータコントローラ65は、CPU47からの指示に応じてヒータ36に電力を供給し、ヒータ36を発熱させる。この際、板バネ32に温度センサを取り付けておくなどして、ヒータ36の発熱量を制御するようにしてもよい。
【0034】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、上記構成によるデジタルカメラ2の作用について説明する。デジタルカメラ2は、電源ボタン16を操作して電源をONからOFFに切り替えると、レンズ鏡筒11がカメラ本体4内に収納されるとともに、液晶パネル20の表示が消され、非使用状態に設定される。CPU47は、デジタルカメラ2が非使用状態に設定されると、光センサ14の出力値をモニタし、その出力値が設定値以上であるか否かを判定する。光センサ14は、明るい程高い電圧を出力するので、出力値の高低を判定することにより、デジタルカメラ2の周囲が明るいか否かを判定することができる。
【0035】
光センサ14の出力値が設定値以下である(周囲が設定値よりも暗い)と判定したCPU47は、圧力センサ18の出力値をモニタし、その出力値が設定値以上であるか否かを判定する。圧力センサ18の出力値も設定値以下であると判定したCPU47は、デジタルカメラ2が鞄内などの暗所に収納されており、電源ボタン16が誤操作される恐れがあると判断する。電源ボタン16の誤操作の恐れがあると判断したCPU47は、ヒータコントローラ65にヒータ36の発熱を指示する。
【0036】
ヒータ36の発熱を指示されたヒータコントローラ65は、ヒータ36に電力を供給してヒータ36を発熱させ、電源ボタン16の板バネ32を加熱する。バイメタルによって成形された板バネ32は、ヒータ36による加熱に応じて湾曲変形する。湾曲変形した板バネ32は、外部に露呈せず、かつタクトスイッチ31にも接触しない第3位置(図3(c)参照)に、操作部材30を保持する。
【0037】
これにより、鞄内などで他の物品と操作部材30とが接触しなくなるので、電源ボタン16の誤操作が防止される。また、バイメタル製の板バネ32にヒータ36を貼り付けるだけでよいので、外形の大型化や内部構造の複雑化を招く心配もない。さらに、各センサ14、18の測定結果を基にCPU47が判断して誤操作の防止を行うので、ユーザに手間を掛けることなく確実に誤操作を防止することができる。なお、各センサ14、18の出力値を判定する際の設定値は、操作部21などを介して任意に設定できることが好ましい。
【0038】
一方、光センサ14の出力値が設定値以上である場合には、デジタルカメラ2が明るい場所にある(例えば、ユーザが手持ちで携帯している状態や、室内に静置された状態など)ので、電源ボタン16が誤操作される恐れはない。このため、光センサ14の出力値が設定値以上であると判定したCPU47は、ヒータ36による板バネ32の加熱を行わずに、電源ボタン16を正常に操作できるようにする。
【0039】
また、光センサ14の出力値が設定値以下、かつ圧力センサ18の出力値が設定値以上である場合には、デジタルカメラ2のグリップ部17がユーザに把持されており、夜間撮影などを行う状態であることが想定される。このため、圧力センサ18の出力値が設定値以上であると判定したCPU47は、電源ボタン16が誤操作される恐れはないと判断し、上記と同様にヒータ36による板バネ32の加熱を行わないようにする。
【0040】
これにより、夜間など周囲が暗い状況で撮影を行いたい場合などにも、正常に電源ボタン16を操作できるようになる。この際、グリップ17を把持するだけで板バネ32の加熱制御のキャンセルをCPU47に設定できるようにしたので、ユーザに余計な手間を掛けさせることなく夜間撮影などを行わせることができる。なお、本実施形態では、圧力センサ18をキャンセル設定手段として示したが、キャンセル設定手段は、これに限ることなく、例えば、専用のボタンや操作部21などを操作することによって、キャンセルが設定されるものとしてもよい。
【0041】
CPU47は、デジタルカメラ2の電源がOFFになっている間中、各センサ14、18の出力値に基いたヒータ36の加熱制御を繰り返す。なお、図5に示すフローチャートでは省略しているが、一度板バネ32の加熱を行った後に加熱を行わない状況が判定された際には、ヒータ36の発熱を停止させ、板バネ32の湾曲変形を元に戻す。
【0042】
図6に本発明の第2の実施形態を示す。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上同一のものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。図6に示す電源ボタン80は、上記第1の実施形態の電源ボタン16と同様に、操作部材30と、タクトスイッチ31と、板バネ82とによって構成されている。板バネ82には、板バネ82を加熱するためのヒータ36が貼り付けられている。この板バネ82も、バイメタルによって成形されている。
【0043】
バイメタル製の板バネ82は、ヒータ36によって加熱されると、図6(c)に示すように、ケース34側に向かって湾曲変形し、操作部材30をケース34の内面に押し付ける。これにより、操作部材30を押し込むのに必要となる力が増加し、操作部材30とタクトスイッチ31とが接触し難くなるので、各センサ14、18の測定結果に基いてヒータ36を制御することにより、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
図7に本発明の第3の実施形態を示す。図7に示す電源スイッチ90は、操作部材30と、タクトスイッチ31と、板バネ91とで構成されている。タクトスイッチ31は、保持板92に取り付けられている。保持板92は、スライドシャフト93を介してブラケット94に上下動自在に取り付けられている。ブラケット94は、例えば、ケース34などに取り付けられることにより、カメラ本体4内に固定される。また、ブラケット94には、保持板92を支持する一対の支持部材95が取り付けられている。各支持部材95は、クランク状に折り曲げられた板材である。各支持部材95は、一端を保持板92の背面に接触させ、保持板92、及びタクトスイッチ31を支持する。
【0045】
また、保持板92とブラケット94との間には、スライドシャフト93に巻き付くようにコイルバネ96が設けられている。コイルバネ96は、両端のそれぞれが保持板92とブラケット94とに接続されており、ブラケット94に引き付けるように保持板92を付勢する。これにより、スライドシャフト93によって前後左右の動きが規制され、コイルバネ96の付勢によって各支持部材95に押し付けられた状態で、タクトスイッチ31と保持板92とが保持される。
【0046】
各支持部材95は、バイメタルによって成形されている。これらの各支持部材95には、各支持部材95を加熱するためのヒータ97が貼り付けられている。各ヒータ97は、ヒータコントローラ65に接続されており、ヒータコントローラ65から電力が供給されることに応じて発熱する。
【0047】
バイメタル製の各支持部材95は、各ヒータ97によって加熱されると、図7(b)に示すように、ブラケット94側に向けて湾曲変形する。各支持部材95が湾曲変形すると、ブラケット94から各支持部材95の頂点までの高さが低くなる。このため、コイルバネ96が縮まって操作部材30とタクトスイッチ31との間隔が広がり、操作部材30を押圧操作しても操作部材30とタクトスイッチ31とが接触しなくなる。
【0048】
すなわち、電源ボタン90は、各支持部材95を湾曲変形させることによって、操作部材30の押圧操作を検出する検出位置(図7(a)に示す位置)と、操作部材30と接触しないように退避させた退避位置(図7(b)に示す位置)との間でタクトスイッチ31を移動させる。このように、タクトスイッチ31側を移動させるようにしても電源ボタン90の誤操作を防止することができる。従って、各センサ14、18の測定結果に基いてヒータ36を制御することで、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
図8、及び図9に本発明の第4の実施形態を示す。図8に示すように、デジタルカメラ100には、スライド式の電源スイッチ(スライドスイッチ)102が設けられている。図9に示すように、電源スイッチ102は、デジタルカメラ100の電源をONに設定するON位置と電源をOFFに設定するOFF位置との間でスライド移動する操作部材104と、この操作部材104の位置を検出するレバースイッチ(検出手段)106とを有している。また、レバースイッチ106は、ブラケット108を介してカメラ本体4内に固定されている。
【0050】
操作部材104には、スライド方向の両端から突出するように形成された一対の保持部材110が設けられている。各保持部材110の先端には、略円柱面状に折り曲げられた係合部110aが形成されている。カメラ本体4のケース34には、各係合部110aと対面する位置に、略円柱面状に窪んだ2つの係合溝112aを有する係合部材112が設けられている。各係合部材112の各係合溝112aは、それぞれ操作部材104のON位置とOFF位置とに対応して形成されている。操作部材104は、各係合部110aを各係合溝112aに係合させることによって、ON位置とOFF位置とに保持される。なお、各係合部110aと各係合溝112aの形状は、円柱面状に限ることなく、三角形状や台形状など、互いに係合するものであれば、他の如何なる形状であってもよい。また、各係合部110aは、折り曲げによって形成されるものに限らず、例えば、接着によって各保持部材110に取り付けられるものなどであってもよい。
【0051】
操作部材104は、各位置に移動する際、各保持部材110を弾性変形させて、各係合部材112の中央に形成された山部を乗り越えるようにして移動する。これにより、操作部材104をユーザが操作した際に、所定の操作感をユーザに与えることができる。
【0052】
また、操作部材104には、下方に向けて突出する略板状に形成された2枚の切片114が設けられている。各切片106aには、レバースイッチ106のレバー106aが入り込んでいる。レバー106aは、レバースイッチ106の本体に揺動自在に取り付けられており、操作部材104が各位置に移動することに応じて各切片114に押されて揺動する。レバースイッチ106は、例えば、操作部材104がON位置に移動した際のレバー106aの揺動に応じて内部の接点を導通させることにより、操作部材104が操作されたことを検出する。
【0053】
各保持部材110は、バイメタルによって成形されている。これらの各保持部材110には、各保持部材110を加熱するためのヒータ116が貼り付けられている。各ヒータ116は、ヒータコントローラ65に接続されており、ヒータコントローラ65から電力が供給されることに応じて発熱する。
【0054】
バイメタル製の各保持部材110は、各ヒータ116によって加熱されると、矢線で示すように、係合部材112側に向けて湾曲変形しようとし、各係合部110aを各係合溝112aに押し付ける。これにより、操作部材104を各位置に移動させる際に必要となる力が増加するので、操作部材104の誤操作を防止することができる。このように、スライド式の電源スイッチ102であっても、バイメタル製の保持部材110を湾曲変形させることで、上記各実施形態と同様に、電源スイッチ102の誤操作を確実に防止することができる。
【0055】
なお、上記各実施形態では、検出手段としてタクトスイッチ31、及びレバースイッチ106を示しているが、これに限ることなく、例えば、他の機械式スイッチを用いてもよいし、フォトインタラプタなどの光学センサやホール素子などの磁気センサなどを用いてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、押しボタンスイッチ、及びスライドスイッチとして、それぞれ電源のON/OFFを切り替える電源ボタンと電源スイッチとを示したが、押しボタンスイッチとスライドスイッチとは、電源に限ることなく、デジタルカメラに設けられる任意のスイッチでよい。
【0057】
また、上記各実施形態では、光センサ14の測定結果を基に周囲が暗い状況の際にバイメタルを湾曲変形させるようにしているが、バイメタルを湾曲変形させるタイミングは、これに限ることなく、各スイッチの誤操作を防止したい任意のタイミングでよい。
【0058】
さらに、上記各実施形態では、デジタルカメラに本発明を適用した例を示したが、本発明は、これに限ることなく、例えば、音楽プレーヤや携帯電話、ゲーム機など他の如何なる携帯型の電子機器に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】デジタルカメラの構成を概略的に示す前面方向から見た斜視図である。
【図2】デジタルカメラの構成を概略的に示す背面方向から見た斜視図である。
【図3】電源ボタンの構成を概略的に示す説明図である。
【図4】デジタルカメラの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】非使用状態の動作を概略的に示すフローチャートである。
【図6】電源ボタンの板バネをケース側に湾曲変形させた例を示す説明図である。
【図7】タクトスイッチ側を移動させる例を示す説明図である。
【図8】デジタルカメラにスライド式の電源スイッチを設けた例を示す前面方向から見た斜視図である。
【図9】スライド式の電源スイッチの構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
2、100 デジタルカメラ(電子機器)
4 カメラ本体
14 光センサ
16、80、90 電源ボタン(押しボタンスイッチ)
17 グリップ部
18 圧力センサ(キャンセル設定手段)
34 ケース(外装ケース)
34a 開口
36、97、116 ヒータ(加熱手段)
30、104 操作部材
31 タクトスイッチ(検出手段)
32、82 板バネ(支持部材)
47 CPU(制御手段)
95 支持部材
102 電源スイッチ(スライドスイッチ)
106 レバースイッチ(検出手段)
110 保持部材
110a 係合部
112a 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースに形成された開口を介して少なくとも一部を前記外装ケースの外に露呈させる第1位置と、押圧操作によって前記外装ケース内に押し込められた第2位置との間で移動する操作部材と、前記第2位置に移動した前記操作部材を検出する検出手段と、前記操作部材を前記第1位置に保持し、前記操作部材が押圧操作された際に弾性変形によって前記第2位置への移動を許容する略板状の支持部材とからなる押しボタンスイッチを備えた電子機器において、
前記支持部材を加熱する加熱手段と、
周囲の明るさを測定する光センサと、
前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、
前記支持部材は、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に湾曲変形し、前記外装ケースの外に露呈せず、かつ前記検出手段にも検出されない第3位置に前記操作部材を保持することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
外装ケースに形成された開口を介して少なくとも一部を前記外装ケースの外に露呈させる第1位置と、押圧操作によって前記外装ケース内に押し込められた第2位置との間で移動する操作部材と、前記第2位置に移動した前記操作部材を検出する検出手段と、前記操作部材を前記第1位置に保持し、前記操作部材が押圧操作された際に弾性変形によって前記第2位置への移動を許容する略板状の支持部材とからなる押しボタンスイッチを備えた電子機器において、
前記支持部材を加熱する加熱手段と、
周囲の明るさを測定する光センサと、
前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、
前記支持部材は、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に、前記操作部材を押し込むのに必要となる力を増加させるように湾曲変形することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
前記開口は、前記操作部材を一部だけ露呈させるように形成されており、
前記支持部材は、湾曲変形した際に、前記操作部材を前記外装ケースの内面に押し付けることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
外装ケースに形成された開口を介して少なくとも一部を前記外装ケースの外に露呈させる第1位置と、押圧操作によって前記外装ケース内に押し込められた第2位置との間で移動する操作部材と、前記第2位置に移動した前記操作部材を検出する検出手段と、前記検出手段を支持する略板状の支持部材とからなる押しボタンスイッチを備えた電子機器において、
前記支持部材を加熱する加熱手段と、
周囲の明るさを測定する光センサと、
前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、
前記支持部材は、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に、前記操作部材と前記検出手段との間隔を広げるように湾曲変形することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記支持部材は、湾曲変形することによって、前記操作部材の検出を行う検出位置と、前記操作部材を検出できなくなる退避位置との間で前記検出手段を移動させることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記押しボタンスイッチは、電源のON/OFFを切り替える電源ボタンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
第1位置と第2位置との間でスライド自在な操作部材と、前記操作部材の位置を検出する検出手段と、凸状に形成された係合部を先端に有し、前記第1位置と前記第2位置とのそれぞれの位置に対応して形成された係合溝に前記係合部を係合させることによって、前記各位置に移動した前記操作部材を保持する略板状の保持部材とからなるスライドスイッチを備えた電子機器において、
前記保持部材を加熱する加熱手段と、
周囲の明るさを測定する光センサと、
前記光センサの測定結果を基に周囲の明るさが設定値よりも明るいか否かを判定し、設定値よりも暗いと判定された際に、前記支持部材の加熱を前記加熱手段に指示する加熱制御を行う制御手段とを設け、
前記保持部材は、バイメタルによって成形され、前記加熱手段によって加熱された際に、前記係合部を前記係合溝に押し付けるように湾曲変形することを特徴とする電子機器。
【請求項8】
前記スライドスイッチは、電源のON/OFFを切り替える電源スイッチであることを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記加熱制御のキャンセルを前記制御手段に設定するキャンセル設定手段を設けたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記キャンセル設定手段は、グリップ部に加えられた圧力を測定する圧力センサであり、
前記制御手段は、前記圧力センサの出力値が設定値以上か否かを判定し、出力値が設定値以上である場合にキャンセルが設定されたと判断することを特徴とする請求項9記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−130304(P2008−130304A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312536(P2006−312536)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】