説明

電子機器

【課題】ヒンジ部分を通る配線の信頼性を向上させること。
【解決手段】直流電流を送電するための第1の電極と、電磁誘導を利用してデータ信号を送受信するための第1のコイルと、を有する、第1の回転ヒンジと、前記第1の電極と接触して直流電流を受電するための第2の電極と、前記第1のコイルとの間でデータ信号を送受信するための第2のコイルと、を有する、第2の回転ヒンジと、を含み、前記第1の電極と前記第2の電極とが接触し、かつ、前記第1のコイルの中心軸と前記第2のコイルの中心軸とが略同一となる状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、電子機器が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートPCなどの携帯機器は、ユーザが操作するための操作手段が搭載された本体部分と、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置が搭載された表示部分とで構成されていることが多い。また、本体部分と表示部分とを接続するヒンジ部分には可動部材が用いられている。通常、このヒンジ部分には電力線や信号線が通っている。そのため、ヒンジ部分の変形に応じてヒンジ部分を通る配線に劣化が生じる。そこで、ヒンジ部分が変形した際に、ヒンジ部分を通る配線に劣化が生じないようにする工夫が求められている。
【0003】
ヒンジ部分を通る配線に生じる劣化を抑制するには、まず、ヒンジ部分を通る配線の本数を減らすことが重要になる。これまで、本体部分から表示部分へのデータ伝送には、パラレル伝送方式が多く用いられてきた。パラレル伝送方式を適用する場合、表示装置に表示される画像データを伝送するのに、数十本以上の信号線をヒンジ部分に配線することが求められる。そのため、ヒンジ部分の変形に伴って信号線に捻れが生じ、電力線や信号線が断線する危険があった。そこで、パラレル伝送方式に代わるデータ伝送方式として、1本程度の配線で画像データを伝送することが可能なシリアル伝送方式が考案された。
【0004】
また、下記の特許文献1には、ヒンジ部に配線を通さず、本体部分から表示部分へと無線で画像データや電力を伝送する方法が開示されている。特に、同文献には、ヒンジ部に設けられた電極間の容量結合を利用した非接触通信により本体部分から表示部分へとデータ信号を伝送する方法が開示されている。また、同文献には、電極間の容量結合を利用して伝送されたデータ信号を整流して電力を取り出す方法が開示されている。このように、同文献の方法を適用することにより、ヒンジ部に配線を通さずとも本体部分から表示部分へと画像データや電力を伝送することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−526555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ヒンジ部分を通る配線の本数を極力少なくするか、配線を無くすことにより、電源線や信号線の断線による故障を避けることが可能になる。さらに、ヒンジ部分の変形に関して自由度が高まることにより、携帯機器のデザイン性をより向上させることが可能になる。ところで、最近ではLCDが高解像度化しており、画像データのデータ伝送に高い伝送速度が求められている。そのため、本体部分から表示部分へと画像データを伝送する際には、高い周波数のクロックに同期したデータ信号を伝送する必要が生じる。上記文献にはデータ信号を整流して電力を取り出す方法が開示されているが、この方法で高い周波数のデータ信号から十分な電力を取り出すことは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ヒンジ部分におけるデータ伝送及び電力伝送の安定性を維持しつつ、高速なデータ伝送及び十分な量の電力伝送をより容易に実現することが可能な、新規かつ改良された電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、直流電流を送電するための第1の電極と、電磁誘導を利用してデータ信号を送受信するための第1のコイルと、を有する、第1の回転ヒンジと、前記第1の電極と接触して直流電流を受電するための第2の電極と、前記第1のコイルとの間でデータ信号を送受信するための第2のコイルと、を有する、第2の回転ヒンジと、を含み、前記第1の電極と前記第2の電極とが接触し、かつ、前記第1のコイルの中心軸と前記第2のコイルの中心軸とが略同一となる状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、電子機器が提供される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電磁誘導を利用して電力を送電するための第1のコイルと、容量結合を利用してデータ信号を送受信するための第1の電極と、を有する、第1の回転ヒンジと、前記第1のコイルから送電された電力を受電するための第2のコイルと、前記第1の電極との間でデータ信号を送受信するための第2の電極と、を有する、第2の回転ヒンジと、を含み、前記第1のコイルの中心軸と前記第2のコイルの中心軸とが略同一となり、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とが所定の間隔で略平行に離隔した状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、電子機器が提供される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電磁誘導を利用して電力を送電するための第1のコイルと、電磁誘導を利用してデータ信号を送受信するための第2のコイルと、を有する、第1の回転ヒンジと、前記第1のコイルから送電された電力を受電するための第3のコイルと、前記第2のコイルとの間でデータ信号を送受信するための第4のコイルと、を有する、第2の回転ヒンジと、を含み、前記第1のコイルの中心軸と前記第3のコイルの中心軸とが略同一となり、かつ、前記第2のコイルの中心軸と前記第4のコイルの中心軸とが略同一となる状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、電子機器が提供される。
【0011】
また、前記第1及び第3のコイルに印加される交流電流の第1の周波数は、前記第2及び第4のコイルに印加される交流電流の第2の周波数よりも低くてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、容量結合を利用して電力を送電するための第1の電極と、容量結合を利用してデータ信号を送受信するための第2の電極と、を有する、第1の回転ヒンジと、前記第1の電極から送電された電力を受電するための第3の電極と、前記第2の電極との間でデータ信号を送受信するための第4の電極と、を有する、第2の回転ヒンジと、を含み、前記第1の電極と前記第3の電極とが所定の間隔で略平行に離隔し、前記第2の電極と前記第4の電極とが所定の間隔で略平行に離隔した状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、電子機器が提供される。
【0013】
また、前記第1の回転ヒンジは、円柱状の凸部を有し、前記第2の回転ヒンジは、前記第1の回転ヒンジが有する円柱状の凸部が嵌合される円筒状の凹部を有し、前記第1の回転ヒンジが有する凸部は、前記第2の回転ヒンジが有する凹部と略同一の中心軸を有し、前記第1の回転ヒンジが有する凸部と前記第2の回転ヒンジが有する凹部とが嵌合された状態で、前記第1の回転ヒンジは、前記第1の回転ヒンジが有する凸部の中心軸を回転軸として回動することが可能な構造であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、ヒンジ部分におけるデータ伝送及び電力伝送の安定性を維持しつつ、高速なデータ伝送及び十分な量の電力伝送をより容易に実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的な折り畳み式携帯端末の構造について説明するための説明図である。
【図2】一般的な折り畳み式携帯端末のヒンジ部分を通る配線構成について説明するための説明図である。
【図3】一般的な携帯端末の大まかな機能構成について説明するための説明図である。
【図4】データ伝送に係る携帯端末の機能構成について説明するための説明図である。
【図5】データ伝送に係る携帯端末の機能構成について説明するための説明図である。
【図6】携帯端末のヒンジ部分を通るデータ信号の周波数スペクトラムについて説明するための説明図である。
【図7】データ信号と電源を重畳/分離する回路の構成について説明するための説明図である。
【図8】データ信号と電源を重畳/分離する回路の構成について説明するための説明図である。
【図9A】本発明の第1実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図9B】同実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図10】同実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例2)について説明するための説明図である。
【図11】同実施形態に係る携帯端末の機能構成について説明するための説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図13】同実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図14】同実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例2)について説明するための説明図である。
【図15】同実施形態に係る携帯端末の機能構成について説明するための説明図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図17】同実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図18】同実施形態に係る携帯端末の機能構成について説明するための説明図である。
【図19】本発明の第4実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例1)について説明するための説明図である。
【図20】同実施形態に係る携帯端末のヒンジ部分の構造(構造例2)について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、折り畳み可能な携帯端末100の構造について説明する。次いで、図2を参照しながら、携帯端末100のヒンジ103を通る配線構成の一例(一般的な配線構成)について紹介する。次いで、図3を参照しながら、携帯端末100の大まかな機能構成について説明する。次いで、図4、図5を参照しながら、携帯端末100のデータ伝送に関する機能構成について説明する。また、図6を参照しながら、携帯端末100のヒンジ103を通るデータ信号の周波数スペクトラムについて説明する。次いで、図7、図8を参照しながら、データ信号にDC電源を重畳したり、データ信号とDC電源を重畳した信号から両者を分離したりする回路の構成について説明する。
【0018】
次いで、図9A、図9Bを参照しながら、本発明の第1実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の構造(構造例1)について説明する。次いで、図10を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の他の構造(構造例2)について説明する。次いで、図11を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100のデータ伝送及び電源伝送に係る機能構成について説明する。
【0019】
次いで、図12、図13を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の構造(構造例1)について説明する。次いで、図14を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の他の構造(構造例2)について説明する。次いで、図15を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100のデータ伝送及び電源伝送に係る機能構成について説明する。
【0020】
次いで、図16を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の構造(構造例1)について説明する。次いで、図17を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の構造(構造例1)について説明する。次いで、図18を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100の機能構成について説明する。
【0021】
次いで、図19を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の構造(構造例1)について説明する。次いで、図20を参照しながら、同実施形態に係る携帯端末100が有するヒンジ部分の構造(構造例2)について説明する。最後に、本発明の実施形態に係る技術的思想について纏め、当該技術的思想から得られる作用効果について簡単に説明する。
【0022】
(説明項目)
1:はじめに
1−1:パラレル伝送方式について
1−2:シリアル伝送方式について
2:第1実施形態(データ:電磁結合、電源:電磁結合)
2−1:電磁結合を利用したデータ伝送の仕組みについて
2−2:構造例1
2−3:構造例2
2−4:データ伝送及び電源伝送に関する機能構成
3:第2実施形態(データ:容量結合、電源:電磁結合)
3−1:容量結合を利用したデータ伝送の仕組みについて
3−2:構造例1
3−3:構造例2
3−4:データ伝送及び電源伝送に関する機能構成
4:第3実施形態(データ:容量結合、電源:容量結合)
4−1:構造例1
4−2:データ伝送及び電源伝送に関する機能構成
5:第4実施形態(データ:非接触、電源:接触)
5−1:構造例1
5−2:構造例2
6:まとめ
【0023】
<1:はじめに>
本発明の実施形態について説明するに先立ち、折り畳み式携帯電話などでヒンジ部分に採用されている一般的なデータ伝送の仕組みについて簡単に説明する。
【0024】
[1−1:パラレル伝送方式について]
折り畳み式携帯電話などの携帯端末100は、図1に示すように、操作部101と、表示部102と、ヒンジ103とにより構成される。また、操作部101と表示部102は、ヒンジ103により連結されている。ヒンジ103は、可動部材により成る。そのため、操作部101の操作面と表示部102の表示面とが対向するように携帯端末100を折り畳むことが可能である。
【0025】
例えば、ヒンジ103は、図2に示すような円筒形の回転ヒンジ111、112を組み合わせて成り、回転ヒンジ111、112の中心軸を中心に回動可能な構造を有する。また、図2に示すように、ヒンジ103には多数の配線113が通っている。これらの配線113は、操作部101から表示部102にデータや電力を伝送する手段である。なお、配線113には、例えば、細線同軸の束やフレキシブル基板などが利用される。
【0026】
また、操作部101には、図3に示すように、DC電源121やBBP123(ベースバンドプロセッサ)などが設けられている。DC電源121は、携帯端末100の各構成要素に駆動用の電源を供給する手段である。また、BBP123は、様々なデータを処理する演算処理装置である。一方、表示部102には、DC電源122、LCD124、カメラ125、センサ類126などが設けられている。DC電源122は、表示部102の各構成要素に駆動用の電源を供給する手段である。LCD124は、画像データを表示する表示手段の一例である。また、カメラ125は、撮像手段の一例である。センサ類126は、例えば、モーションセンサ、GPS、温度センサなど、動きや環境に関するセンサデータを取得する手段である。
【0027】
上記のように、操作部101、表示部102には多数の構成要素が設けられている。そのため、操作部101と表示部102との間で様々なデータのやり取りが行われる。また、操作部101のDC電源121から表示部102のDC電源122へと電源が供給される。その結果、図2、図3に示すように、ヒンジ103には多数の配線113が通っている。例えば、BBP123から出力された画像データは、配線113を通じてLCD124に伝送される。また、カメラ125により撮像された撮像データは、配線113を通じてBBP123に伝送される。同様に、センサ類126により取得されたセンサデータは、配線113を通じてBBP123に伝送される。また、様々な制御データが配線113を通じてやり取りされる。
【0028】
配線113を通じて行われるやり取りは、一方向の場合もあるし、双方向の場合もある。また、一般的には操作部101と表示部102との間に20〜40本程度の配線113が存在すると言われている。特に、最近ではLCD124が高解像度化しており、BBP123からLCD124へと伝送される画像データの量が増え、配線113の本数も増加傾向にある。そのため、ヒンジ103の内径が大きくなることで携帯端末100のデザイン性が損なわれてしまう。さらに、ヒンジ103の変形に伴って配線113に曲げや捻れが生じた際に配線113が断線する危険が危惧されている。
【0029】
上記のような理由から、多数の配線113を利用して多数のデータを並列に伝送する方式(以下、パラレル伝送方式)から、より少ない配線113でデータやDC電源を伝送する方式(例えば、後述するシリアル伝送方式など)に技術がシフトしてきている。配線113の本数が減れば、ヒンジ103の内径を小さくすることが可能になり、携帯端末100のデザイン性を向上させることが容易になる。また、ヒンジ103の変形に伴って生じる配線113の曲げや捻れにより配線113が断線する危険性が低くなる。
【0030】
[1−2:シリアル伝送方式について]
シリアル伝送方式を採用した携帯端末100の場合、操作部101には、BBP123から並列に出力されたパラレルデータをシリアルデータに変換するシリアライザが設けられる。このシリアライザは、並列に入力された複数のデータ列をシリアル化して直列のデータ列(シリアルデータ)に変換する手段である。シリアル伝送方式の場合、データ列は、シリアルデータに変換してから伝送される。そのため、1本又は数本程度の配線113によりデータを伝送することが可能になる。一方、表示部102には、操作部101から受信したシリアルデータをパラレルデータに復元するためのデシリアライザが設けられる。このデシリアライザは、直列のデータ列を元の複数のデータ列に並列化(パラレル化)する手段である。
【0031】
シリアル伝送方式を採用した携帯端末100の場合、例えば、BBP123から出力された画像データは、シリアライザによりパラレルデータに変換され、表示部102に伝送される。表示部102では、操作部101から受信したシリアルデータをデシリアライザによりパラレル化して元の画像データを復元する。そして、復元された画像データは、LCD124に入力される。なお、表示部102から操作部101へとデータが伝送される場合もある。そのため、多くの場合、操作部101、表示部102の双方に、シリアライザ及びデシリアライザが設けられている。そして、表示部102から操作部101へと伝送されるデータも、シリアル化されてから伝送される。このようなデータ伝送の仕組みは、例えば、図4や図5に示した携帯端末100の機能構成により実現される。
【0032】
(具体的な機能構成)
ここで、シリアル伝送方式を採用した携帯端末100の機能構成について、図4及び図5を参照しながら、より詳細に説明する。但し、図4及び図5には、説明の都合上、データ及びDC電源の伝送に関する主な機能構成だけが記載されている点に注意されたい。また、ここではDC電源をデータ信号に重畳して伝送する方式について紹介する。なお、図4と図5の違いは主に伝送手段の違いである。図4に示す携帯端末100が1本の同軸ケーブルを利用してデータとDC電源を伝送するのに対し、図5に示す携帯端末100は、1本の差動ケーブルを利用してデータとDC電源を伝送する。
【0033】
図4を参照する。図4に示すように、操作部101には、DC電源131と、符号化部132と、データ送信機133と、重畳分離部134と、データ受信機141と、復号部142とが設けられる。また、ヒンジ103には、同軸ケーブルが配線された回転ヒンジ135が設けられる。一方、表示部102には、重畳分離部136と、データ受信機137と、復号部138と、符号化部139と、データ送信機140とが設けられる。
【0034】
(操作部101から表示部102への伝送)
まず、BBP123から出力された送信データは、符号化部132に入力される。送信データが入力されると、符号化部132は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。なお、所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。但し、上記のAMIは、Alternate Mark Inversionの略である。また、CMIは、Coded Mark Inversionの略である。
【0035】
符号化部132により生成された符号データは、データ送信機133に入力される。符号データが入力されると、データ送信機133は、入力された符号データに基づいてデータ信号(所定のインピーダンス・電圧)を生成する。データ送信機133により生成されたデータ信号は、重畳分離部134に入力される。また、重畳分離部134には、DC電源131からDC電源が入力される。データ信号が入力されると、重畳分離部134は、入力されたデータ信号にDC電源を重畳して重畳信号を生成する。そして、重畳分離部134により生成された重畳信号は、回転ヒンジ135に配線された1本の同軸ケーブルを通じて表示部102に伝送される。
【0036】
同軸ケーブルを通じて伝送された重畳信号は、表示部102の重畳分離部136に入力される。重畳信号が入力されると、重畳分離部136は、入力された重畳信号をDC電源とデータ信号とに分離する。重畳分離部136により分離されたDC電源は、表示部102の各構成要素に対して駆動用の電源として供給される。一方、重畳分離部136により分離されたデータ信号は、データ受信機137に入力される。データ信号が入力されると、データ受信機137は、入力されたデータ信号の振幅レベルを検出して元の符号データを復元する。データ受信機137により復元された符号データは、復号部138に入力される。
【0037】
符号データが入力されると、復号部138は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部138により復元された送信データは、表示部102を構成する所定の構成要素に入力される。例えば、送信データが画像データの場合、復号部138により復元された画像データは、LCD124に入力される。また、送信データがカメラ125やセンサ類126の制御データである場合、復号部138により復元された制御データは、カメラ125やセンサ類126に入力される。
【0038】
(表示部102から操作部101への伝送)
一方、カメラ125やセンサ類126から出力された送信データは、符号化部139に入力される。送信データが入力されると、符号化部139は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。なお、所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。
【0039】
符号化部139により生成された符号データは、データ送信機140に入力される。符号データが入力されると、データ送信機140は、入力された符号データに基づいてデータ信号(所定のインピーダンス・電圧)を生成する。データ送信機140により生成されたデータ信号は、重畳分離部136に入力される。また、重畳分離部136には、DC電源131からDC電源が供給されている。データ信号が入力されると、重畳分離部136は、入力されたデータ信号をDC電源に重畳して重畳信号を生成する。そして、重畳分離部136により生成された重畳信号は、回転ヒンジ135に配線された1本の同軸ケーブルを通じて操作部101に伝送される。
【0040】
同軸ケーブルを通じて伝送された重畳信号は、操作部101の重畳分離部134に入力される。重畳信号が入力されると、重畳分離部134は、入力された重畳信号からデータ信号を分離する。重畳分離部134により分離されたデータ信号は、データ受信機141に入力される。データ信号が入力されると、データ受信機141は、入力されたデータ信号の振幅レベルを検出して元の符号データを復元する。データ受信機141により復元された符号データは、復号部142に入力される。符号データが入力されると、復号部142は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部142により復元された送信データは、BBP123に入力される。
【0041】
(DC電源の重畳と分離について)
上記の通り、符号化部132、139により利用される符号化方式は、直流成分を含まない符号を生成することが可能な符号化方式である。そのため、データ信号の周波数スペクトラムは、図6に示すように、直流成分を含まないものとなる。このように、データ信号が直流成分を含まないことにより、データ信号をDC電源に重畳させたとしても、重畳信号から容易にデータ信号及びDC電源を取り出せるようになる。例えば、重畳分離部134、136の機能は、図7に示すような回路構成により実現することができる。
【0042】
図7に示すように、重畳分離部134、146は、インダクタ151と、2つのキャパシタ152、153とにより構成される。インダクタ151は、入力された信号に含まれる高周波成分を遮断する手段である。そのため、インダクタ151に重畳信号を通すと、重畳信号に含まれるデータ信号の成分が遮断され、重畳信号に含まれるDC電源の成分だけが取り出される。一方、キャパシタ152、153は、入力された信号に含まれる直流成分を遮断する手段である。そのため、キャパシタ152、153に重畳信号を通すと、重畳成分に含まれるDC電源の成分が遮断され、重畳信号に含まれるデータ信号の成分だけが取り出される。
【0043】
従って、重畳分離部134、136によりデータ信号とDC電源を分離する場合、インダクタ151により重畳信号からDC電源が分離され、キャパシタ152、153により重畳信号からデータ信号が取り出される。一方、重畳分離部134、136によりデータ信号とDC電源を重畳する場合、DC電源と、キャパシタ152、153を通過したデータ信号とが信号線上で重畳される。このように、データ信号とDC電源の重畳及び分離は、同じ回路構成により実現することができる。
【0044】
(シリアル伝送方式のまとめ)
上記のように、シリアル伝送方式を採用すると、ヒンジ103を通る配線113の数を大幅に低減させることが可能になる。上記説明のように、データ信号にDC電源を重畳して伝送する方式の場合、1本の同軸ケーブルでデータ信号とDC電源を伝送することが可能になる。また、ここでは同軸ケーブルを利用して重畳信号を伝送する構成について説明したが、図5に示すように差動ケーブルを利用して重畳信号を差動伝送する構成に変形することも可能である。なお、差動ケーブルを利用する場合も、操作部101、表示部102の機能構成は大部分が実質的に同じである。但し、差動ケーブルを利用する場合、重畳分離部134、136の回路構成は、図8のように変形される。つまり、重畳分離部134、136は、図8に示すように、インダクタ161、162と、キャパシタ163、164により構成される。この場合も、1本の差動ケーブル(一対の信号線)でデータ信号とDC電源を伝送することが可能になる。
【0045】
このように、ヒンジ103を通る配線113の本数が1本程度まで低減することにより、ヒンジ103の変形に関する自由度が向上し、携帯端末100のデザイン性を向上させることがより容易になる。また、ヒンジ103の変形に伴ってヒンジ103を通る配線113が断線する危険性が大幅に低減され、配線113の信頼性が大きく向上する。しかしながら、シリアル伝送方式を採用しても、ヒンジ103に配線113が通っていることには変わりなく、経年劣化に伴う断線を完全に避けることは難しい。そこで、本件発明者は、ケーブルの捻れを解消するため、操作部101の側と表示部102の側とで信号線を2つに分け、回転ヒンジ135の内部で接触するような構造について検討した。しかし、信号線の接触部分に磨耗が生じて接触不良が発生してしまう危険性を完全に排除することは現時点で難しいという結論に達した。
【0046】
そこで、本件発明者は、操作部101の側と表示部102の側とに分けられた信号線の接触部分において、少なくともデータ信号が非接触通信により伝送されるようにする仕組みを考案した。このような仕組みを設けることで、信号線の接触部分が磨耗しても、データ信号の伝送には影響が及ばず、信号線の信頼性を維持することが可能になる。以下、この仕組みに関する実施形態について説明する。
【0047】
<2:第1実施形態(データ:電磁結合、電源:電磁結合)>
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、電磁結合を利用してデータ信号及び電源を非接触伝送する仕組みに関する。
【0048】
[2−1:電磁結合を利用したデータ伝送の仕組みについて]
まず、電磁結合を利用したデータ伝送の仕組み(以下、電磁結合方式)について簡単に説明する。
【0049】
対向配置された一対のコイル(コイルA、B)を用意し、一方のコイルAに交流電流を印加して磁場を発生させると、その磁場により他方のコイルBに交流電流が発生する。この現象は電磁誘導と呼ばれる。電磁結合方式は、この電磁誘導を利用して信号を伝送する方式である。例えば、コイルAに印加する電流に変調を加えると、コイルAから発生する磁場も変調の影響を受けるため、コイルBに誘起される電流にも変調の影響が現れる。そのため、送信データに応じた変調をコイルAの電流に与えると、コイルBに誘起される電流に変化が現れ、その変化から送信データを復調することができる。電磁結合方式においては、このような仕組みを利用してデータの伝送が行われる。なお、コイルAに電流を印加するとコイルBに電流が誘起されるため、電磁結合を利用してコイルAからコイルBへと電源を伝送することも可能である。
【0050】
[2−2:構造例1]
さて、回動可能なヒンジ103において電磁結合方式によるデータ伝送及び電源伝送を実現するには、ヒンジ103の構造に工夫を凝らす必要がある。ヒンジ103の構造として、例えば、図9A、図9Bに示すような回転ヒンジ201、202の構造が考えられる。なお、回転ヒンジ201、202は略円筒形であるものとする。また、図9Aは、回転軸を通るように回転ヒンジ201、202を切断した場合の断面図である。一方、図9Bは、回転軸が伸びる方向に回転ヒンジ201、202を見た場合の正面図である。
【0051】
図9Aに示すように、回転ヒンジ201は、内部に保護部材が設けられ、回転ヒンジ202との接続部分において凹状に成形されている。また、回転ヒンジ201には、コイルA211、コイルB212が設けられている。一方、回転ヒンジ202は、内部に保護部材が設けられ、回転ヒンジ201との接続部分において凸状に成形されている。また、回転ヒンジ202には、コイルC221、コイルD222が設けられている。但し、図9Bに示すように、コイルA211とコイルB212とは同心円上に配置されている。同様に、コイルC221とコイルD222とは同心円上に配置されている。
【0052】
例えば、電源は、コイルA211に交流電流を印加することにより、コイルA211とコイルC221によって形成される電磁結合を利用して伝送される。また、データ信号は、コイルB212に交流電流を印加することにより、コイルB212とコイルD222によって形成される電磁結合を利用して伝送される。但し、電源とデータ信号が干渉しないように、電源は低い周波数(例えば、100kHz)を利用して伝送され、データ信号は高い周波数(例えば、100MHz)を利用して伝送される。また、図9A及び図9Bには、コイルA211、コイルB212、コイルC221、コイルD222として1巻き分のコイルしか描画されていないが、各コイルの巻き数は必要に応じて設定される。例えば、電源の伝送に利用するコイルA211、コイルC221は、低い周波数に特性を合わせるために巻き数が大きく設定される。
【0053】
[2−3:構造例2]
さて、上記の構造例1は、コイルA211とコイルC221、及び、コイルB212とコイルD222をそれぞれ対向配置する構成であった。しかし、一方のコイルにより発生した磁束が他方のコイルの枠内を貫通するように構成されていれば、両コイルの間で電磁結合を発生させることが可能である。そのため、電磁結合方式によるデータ伝送及び電源伝送を実現可能なヒンジ103の構造として、図10に示すような回転ヒンジ201、202の構造も考えられる。なお、図10においても、回転ヒンジ201、202は略円筒形であるものとする。また、図10は、回転軸を通るように回転ヒンジ201、202を切断した場合の断面図である。
【0054】
図10に示すように、回転ヒンジ201は、内部に保護部材が設けられ、回転ヒンジ202との接続部分において凹状に成形されている。また、回転ヒンジ201には、コイルA211、コイルB212が設けられている。一方、回転ヒンジ202は、内部に保護部材が設けられ、回転ヒンジ201との接続部分において凸状に成形されている。また、回転ヒンジ202には、コイルC221、コイルD222が設けられている。但し、図10に示すように、コイルA211とコイルB212とは回転ヒンジ201の長さ方向に並行するよう、同径状に配置されている。同様に、コイルC221とコイルD222とは回転ヒンジ202の長さ方向に並行するよう、同径状に配置されている。
【0055】
例えば、電源は、コイルA211に交流電流を印加することにより、コイルA211とコイルC221によって形成される電磁結合を利用して伝送される。また、データ信号は、コイルB212に交流電流を印加することにより、コイルB212とコイルD222によって形成される電磁結合を利用して伝送される。但し、電源とデータ信号が干渉しないように、電源は低い周波数(例えば、100kHz)を利用して伝送され、データ信号は高い周波数(例えば、100MHz)を利用して伝送される。また、図10には、コイルA211、コイルB212、コイルC221、コイルD222として1巻き分のコイルしか描画されていないが、各コイルの巻き数は必要に応じて設定される。
【0056】
[2−4:データ伝送及び電源伝送に関する機能構成]
ここで、図11を参照しながら、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送を実現することが可能な回路構成について説明する。図11は、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送を実現することが可能な回路構成について説明するための説明図である。
【0057】
(電源伝送について)
図11の例において、電源伝送に係る主な構成要素は、操作部101に設けられた発振器231と増幅器232、ヒンジ103(回転ヒンジ201、202)に設けられたコイルC221とコイルA211、表示部102に設けられた整流器233である。
【0058】
まず、発振器231により交流電源が出力され、増幅器232に入力される。そして、増幅器232に入力された交流電源は、増幅器232により所定の電力レベルまで増幅され、コイルC221に印加される。コイルC221に交流電源が印加されると、コイルC221とコイルA211との間で電磁結合が形成され、コイルA211に電流が誘起される。コイルA211に誘起された電流は、交流電源として整流器233に入力される。整流器233に入力された交流電源は、整流器233により交流から直流に変換され、駆動用のDC電源として表示部102の各構成要素に入力される。
【0059】
(データ伝送について)
図11の例において、データ伝送に係る主な構成要素は、操作部101に設けられた符号化部234、データ送信機235、復号部241、データ受信機240、ヒンジ103(回転ヒンジ201、202)に設けられたコイルD222とコイルB212、表示部102に設けられたデータ受信機236、復号部237、符号化部238、データ送信機239である。
【0060】
(操作部101から表示部102へのデータ伝送)
まず、BBP123から出力された送信データは、符号化部234に入力される。送信データが入力されると、符号化部234は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。なお、電磁結合を利用する場合には直流成分を伝送することができない。そのため、データ信号に直流成分が含まれないように、符号化部234において直流成分を含まない符号データに送信データを符号化するのである。
【0061】
符号化部234により生成された符号データは、データ送信機235に入力される。符号データが入力されると、データ送信機235は、入力された符号データに基づいてデータ信号(電流)を生成する。データ送信機235により生成されたデータ信号(電流)は、コイルD222に印加される。コイルD222に電流が印加されると、コイルD222とコイルB212との間で電磁結合が形成され、コイルB212に誘導電流が発生する。つまり、コイルD222からコイルB212へとデータ信号が伝送される。
【0062】
コイルB212に発生した誘導電流(データ信号)は、データ受信機236に入力される。誘導電流(データ信号)が入力されると、データ受信機236は、入力された誘導電流(データ信号)の振幅レベルを判定して元の符号データを復元する。データ受信機236により復元された符号データは、復号部237に入力される。符号データが入力されると、復号部237は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部237により復元された送信データは、表示部102を構成する所定の構成要素(例えば、LCD124など)に入力される。
【0063】
(表示部102から操作部101へのデータ伝送)
一方、カメラ125やセンサ類126などから出力された送信データは、符号化部238に入力される。送信データが入力されると、符号化部238は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。上記の通り、電磁結合を利用する場合には直流成分を伝送することができない。そのため、データ信号に直流成分が含まれないように、符号化部238において直流成分を含まない符号データに送信データを符号化するのである。
【0064】
符号化部238により生成された符号データは、データ送信機239に入力される。符号データが入力されると、データ送信機239は、入力された符号データに基づいてデータ信号(電流)を生成する。データ送信機239により生成されたデータ信号(電流)は、コイルB212に印加される。コイルB212に電流が印加されると、コイルB212とコイルD222との間で電磁結合が形成され、コイルD222に誘導電流が発生する。つまり、コイルB212からコイルD222へとデータ信号が伝送される。
【0065】
コイルD222に発生した誘導電流(データ信号)は、データ受信機240に入力される。誘導電流(データ信号)が入力されると、データ受信機240は、入力された誘導電流(データ信号)の振幅レベルを判定して元の符号データを復元する。データ受信機240により復元された符号データは、復号部241に入力される。符号データが入力されると、復号部241は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部241により復元された送信データは、BBP123に入力される。
【0066】
以上、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送の仕組みについて説明した。上記の通り、本実施形態に係る携帯端末100は、データ信号及び電源を電磁結合方式により伝送する。そのため、ヒンジ103において操作部101側の信号線と表示部102側の信号線とが接触していない。その結果、ヒンジ103の変形に伴って信号線が断線したり、信号線の接続部分が磨耗して接触不良が発生したりすることがない。
【0067】
<3:第2実施形態(データ:容量結合、電源:電磁結合)>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、データ信号の伝送に容量結合を利用し、電源の伝送に電磁結合を利用する仕組みに関する。
【0068】
[3−1:容量結合を利用したデータ伝送の仕組みについて]
まず、容量結合を利用したデータ伝送の仕組み(以下、容量結合方式)について簡単に説明する。
【0069】
対向配置された一対の電極(電極A、B)を用意し、一方の電極Aに電荷を与えると、対向配置された電極Bに電極Aとは異符号の電荷が現れる。この現象は容量結合と呼ばれる。容量結合方式は、この容量結合を利用して信号を伝送する方式である。例えば、電極Aに与える電荷を時間的に変化させると、その変化に伴って電極Bに現れる電荷も時間的に変化する。そのため、伝送すべき信号に応じて電極Aに与える電荷を変化させると電極Bに現れる電荷も信号に応じて変化するため、電極Bに現れる電荷を観測することにより、電極Bの側において信号を検出することができる。容量結合方式においては、このような仕組みを利用してデータの伝送が行われる。
【0070】
[3−2:構造例1]
さて、回動可能なヒンジ103において容量結合方式によるデータ伝送、及び電磁結合方式による電源伝送を実現するには、ヒンジ103の構造に工夫を凝らす必要がある。ヒンジ103の構造として、例えば、図12、図13に示すような回転ヒンジ301、302の構造が考えられる。なお、回転ヒンジ301、302は略円筒形であるものとする。また、図12は、回転軸を通るように回転ヒンジ301、302を切断した場合の断面図である。一方、図13は、図12に示した回転ヒンジ301、302の構造を立体的に表現した立体構成図である。
【0071】
図12及び図13に示すように、回転ヒンジ301は、回転ヒンジ302との接続部分において凹状に成形されている。また、回転ヒンジ301には、コイルX311、円筒状の電極A312及び電極B313が設けられている。一方、回転ヒンジ302は、回転ヒンジ301との接続部分において凸状に成形されている。また、回転ヒンジ302には、コイルY321、円筒状の電極C322及び電極D323が設けられている。なお、回転ヒンジ301の凹部と回転ヒンジ302の凸部とが嵌合された際、コイルX311とコイルY321、電極A312と電極C322、電極B313と電極D323がそれぞれ接触しないように配置されている。
【0072】
電源は、コイルX311に交流電流を印加することでコイルX311とコイルY321との間に形成される電磁結合を利用して伝送される。また、データ信号は、電極A312に電荷を与えることで電極A312と電極C322に形成される容量結合、及び、電極B313に電荷を与えることで電極B313と電極D323の間に形成される容量結合を利用して伝送される。なお、電極A312と電極B313とは接続されており、電極A312に電荷が与えられると同時に、電極B313には電極A312に与えられた電荷と逆符号の電荷が与えられる。同様に、電極C322と電極D323とは接続されており、電極C322に電荷が与えられると同時に、電極D323には電極C322に与えられた電荷と逆符号の電荷が与えられる。
【0073】
また、電極A312に電荷が与えられると、対向配置された電極C322に逆符号の電荷が誘起される。同時に、電極A312に与えられた電荷とは逆符号の電荷が電極B313に与えられ、電極B313に対向配置された電極D323には電極B313に与えられた電荷と逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極A312と電極B313の間に電流が印加されると、電極A312と電極C322、電極B313と電極D323の間にそれぞれ容量結合が形成され、電極C322と電極D323の間に電流が誘起される。そのため、電極A312と電極B313の間に印加される電流の振幅レベルを符号データに基づいて変化させることで、その変化が電極C322と電極D323の間の電流変化として伝わり、データ信号の伝送が実現される。
【0074】
このように、電極A312と電極B313に印加する電流を制御することにより、容量結合を利用して電極C322と電極D323の側にデータ信号を伝送することができる。なお、図12及び図13には、コイルX311、コイルY321として1巻き分のコイルしか描画されていないが、各コイルの巻き数は必要に応じて設定される。例えば、電源の伝送に利用するコイルX311、コイルY321は、低い周波数に特性を合わせるために巻き数が大きく設定される。
【0075】
[3−3:構造例2]
さて、上記の構造例1は、回転ヒンジ301、302を接続した際に、円筒状の電極A312と電極C322、及び、電極B313と電極D323がそれぞれ対向配置されるような構造であった。しかし、電源及びデータ信号を伝送する際に、コイルX311とコイルY321、電極A312と電極C322、電極B313と電極D323がそれぞれ対向配置されていれば電源及びデータ信号の伝送を実現可能である。そのため、ヒンジ103を構成する回転ヒンジ301、302の構造は、図14に示すような構造にしてもよい。
【0076】
図14に例示した構造は、回転ヒンジ301と回転ヒンジ302を対向配置した際に、コイルX311とコイルY321、電極A312と電極C322、電極B313と電極D323がそれぞれ対向するように設計されている。但し、コイルX311とコイルY321は、コイルX311に電流を印加した際に発生する磁束がコイルY321の円周内を通過するように互いの位置関係が設定される。また、電極A312と電極C322は、電極A312に電荷が与えられた際に電極C322に電荷が誘起されるように互いの位置関係が設定される。同様に、電極B313と電極D323は、電極B313に電荷が与えられた際に電極D323に電荷が誘起されるように互いの位置関係が設定される。
【0077】
なお、データ及び電源を伝送する際に電極同士及びコイル同士が直接接触しないよう、回転ヒンジ301、302は離隔した状態で配置される。また、回転ヒンジ301、302が接触しても、コイルX311とコイルY321、電極A312と電極C322、電極B313と電極D323がそれぞれ接触しないよう、各コイル及び各電極の表面を被覆する保護コーティングが設けられていてもよい。なお、保護コーティングには、誘電材料が用いられる。さらに、コイルX311、電極A312、電極B313を回転ヒンジ301の内部に、コイルY321、電極C322、電極D323を回転ヒンジ302の内部に埋め込むように設置してもよい。
【0078】
[3−4:データ伝送及び電源伝送に関する機能構成]
ここで、図15を参照しながら、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送を実現することが可能な回路構成について説明する。図15は、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送を実現することが可能な回路構成について説明するための説明図である。
【0079】
(電源伝送について)
図15の例において、電源伝送に係る主な構成要素は、操作部101に設けられた発振器331と増幅器332、ヒンジ103(回転ヒンジ301、302)に設けられたコイルX321とコイルY311、表示部102に設けられた整流器333である。
【0080】
まず、発振器331により交流電源が出力され、増幅器332に入力される。そして、増幅器332に入力された交流電源は、増幅器332により所定の電力レベルまで増幅され、コイルX311に印加される。コイルX311に交流電源が印加されると、コイルX311とコイルY321との間で電磁結合が形成され、コイルY321に電流が誘起される。コイルY321に誘起された電流は、交流電源として整流器333に入力される。整流器333に入力された交流電源は、整流器333により交流から直流に変換され、駆動用のDC電源として表示部102の各構成要素に入力される。
【0081】
(データ伝送について)
図15の例において、データ伝送に係る主な構成要素は、操作部101に設けられた符号化部334、データ送信機335、復号部341、データ受信機340、ヒンジ103(回転ヒンジ301、302)に設けられた電極A312、電極B313、電極C322、電極D323、表示部102に設けられたデータ受信機336、復号部337、符号化部338、データ送信機339である。
【0082】
(操作部101から表示部102へのデータ伝送)
まず、BBP123から出力された送信データは、符号化部334に入力される。送信データが入力されると、符号化部334は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。容量結合を利用する場合には直流成分を伝送することができない。そのため、データ信号に直流成分が含まれないように、符号化部334において直流成分を含まない符号データに送信データを符号化するのである。
【0083】
符号化部334により生成された符号データは、データ送信機335に入力される。符号データが入力されると、データ送信機335は、符号データに基づく振幅レベルの電流(データ信号)を電極A312と電極B313の間に印加する。電極A312と電極B313の間に電流が印加されると、電極A312及び電極B313に電荷が与えられ、容量結合により電極C322及び電極D323にそれぞれ逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極C322と電極D323の間に電流(データ信号)が誘起される。このようにして電極A312と電極C322、電極B313と電極D323の間にそれぞれ形成される容量結合を利用してデータ信号が伝送される。
【0084】
電極C322と電極D323の間に誘起された電流(データ信号)は、データ受信機336に入力される。この電流(データ信号)が入力されると、データ受信機336は、入力された電流(データ信号)の振幅レベルを判定して元の符号データを復元する。データ受信機336により復元された符号データは、復号部337に入力される。符号データが入力されると、復号部337は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部337により復元された送信データは、表示部102を構成する所定の構成要素(例えば、LCD124など)に入力される。
【0085】
(表示部102から操作部101へのデータ伝送)
一方、カメラ125やセンサ類126などから出力された送信データは、符号化部338に入力される。送信データが入力されると、符号化部338は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。容量結合を利用する場合には直流成分を伝送することができない。そのため、データ信号に直流成分が含まれないように、符号化部338において直流成分を含まない符号データに送信データを符号化するのである。
【0086】
符号化部338により生成された符号データは、データ送信機339に入力される。符号データが入力されると、データ送信機339は、符号データに基づく振幅レベルの電流(データ信号)を電極C322と電極D323の間に印加する。電極C322と電極D323の間に電流が印加されると、電極C322及び電極D323に電荷が与えられ、容量結合により電極A312及び電極B313にそれぞれ逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極A312と電極B313の間に電流(データ信号)が誘起される。このようにして電極A312と電極C322、電極B313と電極D323の間にそれぞれ形成される容量結合を利用してデータ信号が伝送される。
【0087】
電極A312と電極B313の間に誘起された電流(データ信号)は、データ受信機340に入力される。この電流(データ信号)が入力されると、データ受信機340は、入力された電流(データ信号)の振幅レベルを判定して元の符号データを復元する。データ受信機340により復元された符号データは、復号部341に入力される。符号データが入力されると、復号部341は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部341により復元された送信データは、BBP123に入力される。
【0088】
以上、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送の仕組みについて説明した。上記の通り、本実施形態に係る携帯端末100は、電源を電磁結合方式により伝送し、データ信号を容量結合方式により伝送する。そのため、ヒンジ103において操作部101側の信号線と表示部102側の信号線とが接触していない。その結果、ヒンジ103の変形に伴って信号線が断線したり、信号線の接続部分が磨耗して接触不良が発生することがない。
【0089】
<4:第3実施形態(データ:容量結合、電源:容量結合)>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、データ信号及び電源の伝送に容量結合を利用する仕組みに関する。
【0090】
[4−1:構造例1]
回動可能なヒンジ103において容量結合方式によるデータ伝送及び電源伝送を実現するには、ヒンジ103の構造に工夫を凝らす必要がある。ヒンジ103の構造として、例えば、図16及び図17に示すような回転ヒンジ401、402の構造が考えられる。なお、回転ヒンジ401、402は略円筒形であるものとする。また、図16は、回転軸を通るように回転ヒンジ401、402を切断した場合の断面図である。一方、図17は、図16に示した回転ヒンジ401、402の構造を立体的に表現した立体構成図である。
【0091】
図16及び図17に示すように、回転ヒンジ401は、回転ヒンジ402との接続部分が凹状に成形されている。また、回転ヒンジ401には、円筒状の電極A411、電極B412、電極C413、電極D414が設けられている。一方、回転ヒンジ402は、回転ヒンジ401との接続部分が凸状に成形されている。また、回転ヒンジ402には、円筒状の電極E421、電極F422、電極G423、電極H424が設けられている。なお、回転ヒンジ401の凹部と回転ヒンジ402の凸部とが嵌合された際、電極A411と電極E421、電極B412と電極F422、電極C413と電極G423、電極D414と電極H424がそれぞれ接触しないように配置されている。
【0092】
電源は、電極A411に電荷を与えることで電極A411と電極E421に形成される容量結合、及び、電極B412に電荷を与えることで電極B412と電極F422の間に形成される容量結合を利用して伝送される。また、データ信号は、電極C413に電荷を与えることで電極C413と電極G423に形成される容量結合、及び、電極D414に電荷を与えることで電極D414と電極H424の間に形成される容量結合を利用して伝送される。なお、電極A411と電極B412とは接続されており、電極A411に電荷が与えられると同時に、電極B412には電極A411に与えられた電荷と逆符号の電荷が与えられる。
【0093】
また、電極C413と電極D414とは接続されており、電極C413に電荷が与えられると同時に、電極D414には電極C413に与えられた電荷と逆符号の電荷が与えられる。さらに、電極E421と電極F422とは接続されており、電極E421に電荷が与えられると同時に、電極F422には電極E421に与えられた電荷と逆符号の電荷が与えられる。そして、電極G423と電極H424とは接続されており、電極G423に電荷が与えられると同時に、電極H424には電極G423に与えられた電荷と逆符号の電荷が与えられる。
【0094】
また、電極A411に電荷が与えられると、対向配置された電極E421に逆符号の電荷が誘起される。同時に、電極A411に与えられた電荷とは逆符号の電荷が電極B412に与えられ、電極B412に対向配置された電極F422には電極B412に与えられた電荷と逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極A411と電極B412の間に電流が印加されると、電極A411と電極E421、電極B412と電極F422の間にそれぞれ容量結合が形成され、電極E421と電極F422の間に電流が誘起される。そのため、電極A411と電極B412の間に交流電流を印加すると、電極E421と電極F422の間の交流電流が誘起され、電源の伝送が実現される。
【0095】
また、電極C413に電荷が与えられると、対向配置された電極G423に逆符号の電荷が誘起される。同時に、電極C413に与えられた電荷とは逆符号の電荷が電極D414に与えられ、電極D414に対向配置された電極H424には電極D414に与えられた電荷と逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極C413と電極D414の間に電流が印加されると、電極C413と電極G423、電極D414と電極H424の間にそれぞれ容量結合が形成され、電極G423と電極H424の間に電流が誘起される。そのため、電極C413と電極D414の間に印加される電流の振幅レベルを符号データに基づいて変化させることで、その変化が電極G423と電極H424の間の電流変化として伝わり、データ信号の伝送が実現される。
【0096】
このように、電極A411と電極B412に交流電流を印加することにより、容量結合を利用して電極E421と電極F422に電源を伝送することができる。また、電極C413と電極D414に印加する電流を制御することにより、容量結合を利用して電極G423と電極H424の側にデータ信号を伝送することができる。
【0097】
[4−2:データ伝送及び電源伝送に関する機能構成]
ここで、図18を参照しながら、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送を実現することが可能な回路構成について説明する。図18は、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送を実現することが可能な回路構成について説明するための説明図である。
【0098】
(電源伝送について)
図18の例において、電源伝送に係る主な構成要素は、操作部101に設けられた発振器431と増幅器432、ヒンジ103(回転ヒンジ401、402)に設けられた電極A411、電極B412、電極E421、電極F422、表示部102に設けられた整流器433である。
【0099】
まず、発振器431により交流電源が出力され、増幅器432に入力される。そして、増幅器432に入力された交流電源は、増幅器432により所定の電力レベルまで増幅され、電極A411と電極B412の間に印加される。電極A411と電極B412の間に交流電源が印加されると、電極A411と電極E421、電極B412と電極F422の間で容量結合が形成され、電極E421と電極F422の間に電流が誘起される。電極E421と電極F422の間に誘起された電流は、交流電源として整流器433に入力される。整流器433に入力された交流電源は、整流器433により交流から直流に変換され、駆動用のDC電源として表示部102の各構成要素に入力される。
【0100】
(データ伝送について)
図18の例において、データ伝送に係る主な構成要素は、操作部101に設けられた符号化部434、データ送信機435、復号部441、データ受信機440、ヒンジ103(回転ヒンジ401、402)に設けられた電極C413、電極D414、電極G423、電極H424、表示部102に設けられたデータ受信機436、復号部437、符号化部438、データ送信機439である。
【0101】
(操作部101から表示部102へのデータ伝送)
まず、BBP123から出力された送信データは、符号化部434に入力される。送信データが入力されると、符号化部434は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。容量結合を利用する場合には直流成分を伝送することができない。そのため、データ信号に直流成分が含まれないように、符号化部434において直流成分を含まない符号データに送信データを符号化するのである。
【0102】
符号化部434により生成された符号データは、データ送信機435に入力される。符号データが入力されると、データ送信機435は、符号データに基づく振幅レベルの電流(データ信号)を電極C413と電極D414の間に印加する。電極C413と電極D414の間に電流が印加されると、電極C413及び電極D414に電荷が与えられ、容量結合により電極G423及び電極H424にそれぞれ逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極G423と電極H424の間に電流(データ信号)が誘起される。このようにして電極C413と電極G423、電極D414と電極H424の間にそれぞれ形成される容量結合を利用してデータ信号が伝送される。
【0103】
電極G423と電極H424の間に誘起された電流(データ信号)は、データ受信機436に入力される。この電流(データ信号)が入力されると、データ受信機436は、入力された電流(データ信号)の振幅レベルを判定して元の符号データを復元する。データ受信機436により復元された符号データは、復号部437に入力される。符号データが入力されると、復号部437は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部437により復元された送信データは、表示部102を構成する所定の構成要素(例えば、LCD124など)に入力される。
【0104】
(表示部102から操作部101へのデータ伝送)
一方、カメラ125やセンサ類126などから出力された送信データは、符号化部438に入力される。送信データが入力されると、符号化部438は、入力された送信データを所定の符号化方式に基づいて符号化し、符号データを生成する。所定の符号化方式としては、例えば、AMI符号方式、パーシャル・レスポンス符号方式、CMI符号方式など、直流成分を含まない符号を生成可能な符号化方式が利用される。容量結合を利用する場合には直流成分を伝送することができない。そのため、データ信号に直流成分が含まれないように、符号化部438において直流成分を含まない符号データに送信データを符号化するのである。
【0105】
符号化部438により生成された符号データは、データ送信機439に入力される。符号データが入力されると、データ送信機439は、符号データに基づく振幅レベルの電流(データ信号)を電極G423と電極H424の間に印加する。電極G423と電極H424の間に電流が印加されると、電極G423及び電極H424に電荷が与えられ、容量結合により電極C413及び電極D414にそれぞれ逆符号の電荷が誘起される。つまり、電極C413と電極D414の間に電流(データ信号)が誘起される。このようにして電極C413と電極G423、電極D414と電極H424の間にそれぞれ形成される容量結合を利用してデータ信号が伝送される。
【0106】
電極C413と電極D414の間に誘起された電流(データ信号)は、データ受信機440に入力される。この電流(データ信号)が入力されると、データ受信機440は、入力された電流(データ信号)の振幅レベルを判定して元の符号データを復元する。データ受信機440により復元された符号データは、復号部441に入力される。符号データが入力されると、復号部441は、所定の符号化方式に基づき、入力された符号データを復号して元の送信データを復元する。復号部441により復元された送信データは、BBP123に入力される。
【0107】
以上、本実施形態に係るデータ伝送及び電源伝送の仕組みについて説明した。上記の通り、本実施形態に係る携帯端末100は、電源及びデータ信号を容量結合方式により伝送する。そのため、ヒンジ103において操作部101側の信号線と表示部102側の信号線とが接触していない。その結果、ヒンジ103の変形に伴って信号線が断線したり、信号線の接続部分が磨耗して接触不良が発生することがない。
【0108】
<5:第4実施形態(データ:非接触、電源:接触)>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、データ信号を非接触式で伝送し、電源を接触式で伝送する構成に関する。既に述べた通り、信号線の接続部分が磨耗すると、接触不良によりデータ信号や電源が伝送できなくなる恐れがある。但し、電源だけを伝送する手段について考えるのであれば、ある程度の耐久性を持った接触式の伝送手段を実現することも可能であると考えられる。
【0109】
以下、電源を接触式で伝送し、データ信号を非接触式で伝送する仕組みについて説明する。なお、電源線は接触式となるため、非接触式の場合とは異なり、直流電流を流すことが可能になる。そのため、非接触式の場合にはコイルや電極に交流電流を印加して電源を伝送していたが、接触式の場合には直流電流をそのまま流せばよいため、例えば、直流から交流に、交流から直流に整流する手段が不要になる。このように、第4実施形態は、上記の第1〜第3実施形態(電磁結合方式や容量結合方式)とは電源の伝送方式が大きく異なる。
【0110】
[5−1:構造例1]
データ信号を非接触式で伝送し、電源を接触式で伝送する仕組みとして、例えば、図19に示すような回転ヒンジ501、502の構成が考えられる。なお、回転ヒンジ501、502は略円筒形であるものとする。また、図19は、回転軸を通るように回転ヒンジ501、502を切断した場合の断面図である。
【0111】
図19に示すように、回転ヒンジ501は、回転ヒンジ502との接続部分が凹状に成形されている。また、回転ヒンジ501には、コイルX511、及び円柱状の電極A512が設けられている。一方、回転ヒンジ502は、回転ヒンジ501との接続部分が凸状に成形されている。また、回転ヒンジ502には、コイルY521、及び電極B522が設けられている。なお、回転ヒンジ501の凹部と回転ヒンジ502の凸部が嵌合された際、コイルX511とコイルY521が接触しないように配置されている。一方、回転ヒンジ501の凹部と回転ヒンジ502の凸部が嵌合された際、電極A512と電極B522が接触するように構成されている。
【0112】
データ信号は、コイルX511とコイルY521の間に形成される電磁結合を利用して伝送される。一方、電源は、電極A512と電極B522が接触することで形成される電源線を通じて伝送される。図19の例では、回転ヒンジ501、502が接続された際、電極A512の側面に電極B522が接触する仕組みが設けられている。そのため、回転ヒンジ501に対して回転ヒンジ502が回転しても、電極A512と電極B522の接触状態が維持される。なお、回転ヒンジ501、502を接続した際に電極B522が電極A512に押しつけられるように、電極B522を内径方向に押圧するための押圧手段(例えば、バネなど)が設けられていてもよい。この押圧手段が設けられていることにより、電極A512と電極B522の接触部分が磨耗しても、電極A512と電極B522の接触不良を生じにくくすることが可能になる。
【0113】
[5−2:構造例2]
上記の構造例1は、データ信号を伝送するための非接触伝送に電磁結合方式を利用するものであったが、非接触伝送に容量結合方式を利用することも可能である。例えば、図20に示すように、電源を伝送するための電極A611と電極D621は、回転ヒンジ601、602が接続された際に接触するように構成される。一方、データ信号を伝送するための電極B612と電極E622、及び、電極C613と電極F623は、回転ヒンジ601、602が接続された際に対向配置されるように構成される。
【0114】
但し、回転ヒンジ601、602が接続された際、電極B612と電極E622、及び、電極C613と電極F623がそれぞれ接触しないように形成される。例えば、電極B612、電極C613、電極E622、電極F623の表面に保護コーティングが施されたり、これら各電極がそれぞれ回転ヒンジ601、602の内部に設置されたりする。データ信号の伝送は、既に説明した容量結合方式により実施される。例えば、電極A611と電極B612の間に電流が印加されると、電極E622と電極F623の間に電流が誘起されるため、その電流を制御することによりデータ信号が伝送される。
【0115】
このように、電源を接触式で伝送できるような仕組みにすることにより、電源を直流のまま伝送することが可能になる。その結果、直流から交流へ、或いは、交流から直流へと電源を変換する際に生じるロスを回避することが可能になる。さらに、整流器などを設ける必要が無くなる分だけ回路規模を低減させることが可能になる。
【0116】
<6:まとめ>
最後に、本発明の実施形態に係る技術内容について簡単に纏める。ここで述べる技術内容は、例えば、PC、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯情報端末、情報家電、カーナビゲーションシステム等、種々の電子機器におけるデータ伝送手段及び電源伝送手段として利用することができる。
【0117】
例えば、本実施形態のデータ伝送方法及び電源伝送方法を実現可能な電子機器の構成は、次のように表現することができる。当該電子機器は、第1の電極及び第1のコイルを有する第1の回転ヒンジと、第2の電極及び第2のコイルを有する第2の回転ヒンジとを有する。上記の第1の電極は、直流電流を送電するための手段である。また、上記の第1のコイルは、電磁誘導を利用してデータ信号を送受信するための手段である。上記の第2の電極は、前記第1の電極と接触して直流電流を受電するための手段である。また、上記の第2のコイルは、前記第1のコイルとの間でデータ信号を送受信するための手段である。
【0118】
なお、上記の第1及び第2の回転ヒンジは、ヒンジ部を構成する。そして、当該ヒンジ部は、前記第1の電極と前記第2の電極とが接触し、かつ、前記第1のコイルの中心軸と前記第2のコイルの中心軸とが略同一となる状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したものである。このように、コイルを利用した電磁誘導によりデータ信号を非接触伝送することにより、第1及び第2の回転ヒンジが接合状態で同一軸を中心に回動したとしても、その回動による影響を受けずにデータ信号を伝送することが可能になる。また、第1及び第2の回転ヒンジが接触する部分が磨耗しても、接触不良によりデータ伝送に不具合が生じずに済む。また、第1及び第2の電極を接触式にすることにより、直流電流をそのまま伝送することが可能になる。
【0119】
(備考)
上記の回転ヒンジ501は、第1の回転ヒンジの一例である。上記の電極A512は、第1の電極の一例である。上記のコイルX511は、第1のコイルの一例である。上記の回転ヒンジ502は、第2の回転ヒンジの一例である。上記の電極B522は、第2の電極の一例である。上記のコイルY521は、第2のコイルの一例である。上記のヒンジ103は、ヒンジ部の一例である。
【0120】
上記の回転ヒンジ301は、第1の回転ヒンジの一例である。上記のコイルX311は、第1のコイルの一例である。上記の電極A312、電極B313は、第1の電極の一例である。上記の回転ヒンジ302は、第2の回転ヒンジの一例である。上記のコイルY321は、第2のコイルの一例である。上記の電極C322、電極D323は、第2の電極の一例である。上記のヒンジ103は、ヒンジ部の一例である。
【0121】
上記の回転ヒンジ202は、第1の回転ヒンジの一例である。上記のコイルC221は、第1のコイルの一例である。上記のコイルD222は、第2のコイルの一例である。上記の回転ヒンジ201は、第2の回転ヒンジの一例である。上記のコイルA211は、第3のコイルの一例である。上記のコイルB212は、第4のコイルの一例である。上記のヒンジ103は、ヒンジ部の一例である。
【0122】
上記の回転ヒンジ401は、第1の回転ヒンジの一例である。上記の電極A411、電極B412は、第1の電極の一例である。上記の電極C413、電極D414は、第2の電極の一例である。上記の回転ヒンジ402は、第2の回転ヒンジの一例である。上記の電極D421、電極F422は、第3の電極の一例である。上記の電極G423、電極H424は、第4の電極の一例である。上記のヒンジ103は、ヒンジ部の一例である。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0124】
例えば、上記説明において回転ヒンジ201、202、301、302、401、402、501、502、601、602の構成を示したが、いずれの回転ヒンジが操作部101の側に形成されるか、表示部102の側に形成されるかは適宜変更可能である。また、上記説明においては円柱状及び円筒状の回転ヒンジを嵌合する構造や円柱状の回転ヒンジを対向配置する構造について説明したが、回転ヒンジの外形は円筒や円柱に限定されない。但し、回転軸を中心に回動可能な構造を想定しているため、回転ヒンジが有する凸部や凹部の構造については、円筒状や円柱状であることが好ましい。
【0125】
また、データ信号と電源を共に容量結合方式で伝送する場合において、データ信号を伝送するための電極と、電源を伝送するための電極とを任意に選択することができる。同様に、データ信号と電源を共に電磁結合方式で伝送する場合において、データ信号を伝送するためのコイルと、電源を伝送するためのコイルとを任意に選択することができる。また、コイル同士や電極同士が接触しないようにするために構造的な変形を行ったり、保護コーティングを施したりする工夫は適宜行われてもよい。
【符号の説明】
【0126】
100 携帯端末
101 操作部
102 表示部
103 ヒンジ
111、112 回転ヒンジ
113 配線
121、122 DC電源
123 BBP
124 LCD
125 カメラ
126 センサ類
131 DC電源
132、139 符号化部
133、140 データ送信機
134、136 重畳分離部
135 回転ヒンジ
137、141 データ受信機
138、142 復号部
151、161、162 インダクタ
152、153、163、164 キャパシタ
201、202 回転ヒンジ
211 コイルA
212 コイルB
221 コイルC
222 コイルD
231 発振器
232 増幅器
233 整流器
234、238 符号化部
235、239 データ送信機
236、240 データ受信機
237、241 復号部
301、302 回転ヒンジ
311 コイルX
312 電極A
313 電極B
321 コイルY
322 電極C
323 電極D
331 発振器
332 増幅器
333 整流器
334、338 符号化部
335、339 データ送信機
336、340 データ受信機
337、341 復号部
401、402 回転ヒンジ
411 電極A
412 電極B
413 電極C
414 電極D
421 電極E
422 電極F
423 電極G
424 電極H
431 発振器
432 増幅器
433 整流器
434、438 符号化部
435、439 データ送信機
436、440 データ受信機
437、441 復号部
501、502 回転ヒンジ
511 コイルX
512 電極A
521 コイルY
522 電極B
601、602 回転ヒンジ
611 電極A
612 電極B
613 電極C
621 電極D
622 電極E
623 電極F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流を送電するための第1の電極と、
電磁誘導を利用してデータ信号を送受信するための第1のコイルと、
を有する、第1の回転ヒンジと、
前記第1の電極と接触して直流電流を受電するための第2の電極と、
前記第1のコイルとの間でデータ信号を送受信するための第2のコイルと、
を有する、第2の回転ヒンジと、
を含み、
前記第1の電極と前記第2の電極とが接触し、かつ、前記第1のコイルの中心軸と前記第2のコイルの中心軸とが略同一となる状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、
電子機器。
【請求項2】
電磁誘導を利用して電力を送電するための第1のコイルと、
容量結合を利用してデータ信号を送受信するための第1の電極と、
を有する、第1の回転ヒンジと、
前記第1のコイルから送電された電力を受電するための第2のコイルと、
前記第1の電極との間でデータ信号を送受信するための第2の電極と、
を有する、第2の回転ヒンジと、
を含み、
前記第1のコイルの中心軸と前記第2のコイルの中心軸とが略同一となり、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とが所定の間隔で略平行に離隔した状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、
電子機器。
【請求項3】
電磁誘導を利用して電力を送電するための第1のコイルと、
電磁誘導を利用してデータ信号を送受信するための第2のコイルと、
を有する、第1の回転ヒンジと、
前記第1のコイルから送電された電力を受電するための第3のコイルと、
前記第2のコイルとの間でデータ信号を送受信するための第4のコイルと、
を有する、第2の回転ヒンジと、
を含み、
前記第1のコイルの中心軸と前記第3のコイルの中心軸とが略同一となり、かつ、前記第2のコイルの中心軸と前記第4のコイルの中心軸とが略同一となる状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、
電子機器。
【請求項4】
前記第1及び第3のコイルに印加される交流電流の第1の周波数は、前記第2及び第4のコイルに印加される交流電流の第2の周波数よりも低い、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
容量結合を利用して電力を送電するための第1の電極と、
容量結合を利用してデータ信号を送受信するための第2の電極と、
を有する、第1の回転ヒンジと、
前記第1の電極から送電された電力を受電するための第3の電極と、
前記第2の電極との間でデータ信号を送受信するための第4の電極と、
を有する、第2の回転ヒンジと、
を含み、
前記第1の電極と前記第3の電極とが所定の間隔で略平行に離隔し、前記第2の電極と前記第4の電極とが所定の間隔で略平行に離隔した状態を維持したまま、前記第1の回転ヒンジと前記第2の回転ヒンジとを回動可能に接続したヒンジ部を備える、
電子機器。
【請求項6】
前記第1の回転ヒンジは、円柱状の凸部を有し、
前記第2の回転ヒンジは、前記第1の回転ヒンジが有する円柱状の凸部が嵌合される円筒状の凹部を有し、
前記第1の回転ヒンジが有する凸部は、前記第2の回転ヒンジが有する凹部と略同一の中心軸を有し、
前記第1の回転ヒンジが有する凸部と前記第2の回転ヒンジが有する凹部とが嵌合された状態で、前記第1の回転ヒンジは、前記第1の回転ヒンジが有する凸部の中心軸を回転軸として回動することが可能な構造を有する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−19382(P2012−19382A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155624(P2010−155624)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】