説明

電子機器

【課題】帰還コイルが破損した場合でも、安全に回路を停止させることが可能な電源回路を備える電子機器を提供する。
【解決手段】ICは、帰還コイルの電圧値を第1の端子を通じて監視し、前記帰還コイルの電圧値に応じてスイッチング素子を駆動するためのドライブ信号を出力し、第2の端子に発生する電圧値が所定の閾値以下である場合に、当該ICをラッチさせる構成であって、前記帰還コイルが供給する電圧が所定値以下となった場合に、前記第2の端子にかかる電圧を低下させる電圧低下手段を、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ素子を駆動させて所定の電源を生成する電源回路を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器は、内部に電源回路を備えており、この電源回路により生成された電源をトランスの二次コイルに接続された回路に供給して駆動を行う。また、電源回路は、スイッチ素子や、このスイッチ素子をドライブするICを備えており、同ICの制御のもと所定の電源を生成する(例えば、特許文献1−5参照)。
【0003】
上記した電源回路のICとして、帰還コイルからの電圧値を検出し、検出された電圧値に応じてドライブ信号の出力タイミングを図る機能を備えるものがある。例えば、ICは、帰還コイルに発生する信号が0Vになるタイミングを検出し、このタイミングに同期させてドライブ信号をスイッチ素子に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−352975号公報
【特許文献2】特開2004−120926号公報
【特許文献3】特開2003−259636号公報
【特許文献4】特開平09−121537号公報
【特許文献5】特開2006−254590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したICを備える電源回路において、帰還コイルが何らかの原因で破損し場合、ICから出力されるドライブ信号が異常な波形となり電源回路を破損させてしまう場合があった。また、場合によっては、電源回路が発熱を起こす場合も想定される。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、帰還コイルが破損した場合でも、安全に回路を停止させることが可能な電源回路を備える電子機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、トランスと、スイッチング動作により前記トランスに所定電圧を発生させるスイッチ素子と、前記スイッチ素子をスイッチングさせるドライブ信号を出力するICと、前記トランスの二次コイルに発生した電圧を帰還させる帰還コイルと、を有する電源回路を備える電子機器において、前記ICは、前記帰還コイルの電圧値を第1の端子を通じて監視し、前記帰還コイルの電圧値に応じて前記スイッチング素子を駆動するためのドライブ信号を出力し、第2の端子に発生する電圧値が所定の閾値以下である場合に、当該ICをラッチさせる構成であって、当該ICをラッチさせる構成であって、前記帰還コイルが供給する電圧が所定値以下となった場合に、前記第2の端子にかかる電圧を低下させる電圧低下手段を、有する構成としてある。
【0008】
上記のように構成された発明では、電源回路は、帰還コイルが供給する電圧が所定値以下となった場合に、第2の端子にかかる電圧を低下させる電圧低下手段を有している。そのため、帰還コイルの破損により供給電圧が所定値以下となると、第2の端子にかかる電圧が低下し、この電圧値が所定の閾値以下である場合に、当該ICをラッチ(停止)させる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明では、帰還コイルが破損した場合でも、安全に回路を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電子機器の構成を示すブロック構成図である。
【図2】電源回路80の構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.第1の実施形態:
2.その他の実施形態:
【0012】
1.第1の実施形態:
以下、図を参照して、本実施形態に係る電子機器の説明を行う。図1は、電子機器の構成を示すブロック構成図である。なお、本実施形態では、電子機器として表示装置100を例に説明を行う。
【0013】
表示装置100は、液晶型の表示パネル99と、メインコントローラー98と、ドライバー97と、電源回路80と、を備えて構成されている。上記構成の表示装置100では、図示しない外部機器を通じて入力された映像データー又は図示しないチューナーを介して取得された放送信号をもとに、表示パネル99に映像を表示する。
【0014】
表示パネル99は、液晶を充填した画素をその解像度に応じて複数配置して構成された画面を備えている。画面を構成する各画素には同画素に対向するよう配置された電極を備えており、この電極に駆動電圧を供給することで画素が駆動し、光の透過率が変更する。また、表示パネル99は、画素を駆動させる走査線を選択するためのスイッチが多数設けられており、このスイッチにより選択された走査線上の画素に対向する電極に駆動電圧が供給される。
【0015】
メインコントローラー98は、演算を行うためのCPUや、このCPUに所定の演算を実行させるためのプログラムが記録されたROMや、CPUのワークエリアとして作用するRAMを備えて構成されている。また、メインコントローラー98は、図示しないチューナー等を介して映像データーが入力すると、この映像データーに対して所定の信号処理を施した後、ドライバー97に出力する。
【0016】
ドライバー97は、映像データーをデジタル・アナログ変換してこの映像データーが示す階調値に応じた駆動電圧を生成する。また、ドライバー97は、映像データーに含まれる垂直同期信号及び水平同期信号に基づいて、表示パネルの各走査ライン上の電極に生成した駆動電圧を供給する。そのため、駆動電圧が供給された電極は対向する画素に対して駆動電圧を印加し画素を駆動させる。
【0017】
図2は、電源回路80の構成の一部を示す図である。電源回路80は図示しない商用電源(AC100V)からの電源をもとに表示装置100の2次側回路(本実施形態では、表示パネル99、メインコントローラー98、ドライバー97)を駆動するための電源を生成する。本実施形態では、電源回路80は、擬似共振によりFETQ1(スイッチ素子)をスイッチングして、所定電圧を二次側回路に供給する。そのため、電源回路80は、概略的には、IC1と、FETQ1と、トランスT1と、帰還コイルCofと、備えている。
【0018】
より具体的には、IC1のHV端子14は、同IC1を起動するためのDC電圧であるVCC−ONの供給を受け付け、IC1を駆動させる。ここで、VCC−ONは、図示しない電源回路80の1次側で生成される電圧である。また、IC1のDRV端子9は、抵抗R9及びトランジスターQ2により構成されたドライブ回路を通じてFETQ1のゲートに接続されている。また、FETQ1のコレクター・ドレイン間は、トランスT1の一次コイルCo1の一端と接続されている。そして、一次コイルCo1の他端は、図示しない整流回路及び平滑回路を通じて電圧が供給されている。さらに、帰還コイルCofは、トランスT1の二次コイルCo2と鉄芯を中心に対向するよう配置され、ダイオードD2及び抵抗R2、R3を通じてIC1のZCD端子4に接続されている。
【0019】
上記構成の電源回路80では、IC1のHV端子14にメイン電源の投入を示すVCC−ON信号が入力すると、DRV端子9からドライブ回路を通じてFETQ1にパルス状のドライブ信号が出力される。そのため、FETQ1のオンによりトランスT1の一次コイルCo1に整流回路及び平滑回路を通じて電圧が供給され、二次コイルに所定の電圧を発生させる。
【0020】
以下、所定期間経過した後、帰還コイルCofに正弦波の帰還電圧Vfが発生し、IC1は、帰還電圧Vfの波形変化をZCD端子4(第1の端子)を通じて監視する。即ち、IC1には、帰還電圧Vfが0Vになるタイミングを検出する内部ブロックを備えており、帰還電圧Vfが0Vになるタイミングでドライブ信号をDRV端子9から出力する。そのため、電源回路80におけるFETQ1のスイッチングが継続し、二次コイルCo2から所定の電源電圧が二次側回路に供給される。
【0021】
また、IC1は、OTP(Over Temperature Protection)端子2(第2の端子)を通じて同IC1の過熱保護を行う。即ち、IC1のOTP端子2はサーミスタNTC1を通じて接地されている。また、IC1の内部には、OTP端子2を通じて所定値の電流をサーミスタNTC1に流すとともに、このサーミスタNTC1により設定される電圧を閾値Sと比較し、比較結果に応じてIC1をラッチさせる内部ブロックを備えている。本実施形態では、IC1のブロックが備える閾値Sは1.0Vであり、通常時はOTP端子2には3.0Vの電圧が発生する。そのため、サーミスタNTC1の抵抗値が変化し、OTP端子2に発生する電圧が3.0Vから1.0V以下に低下すると、内部ブロックはIC1をラッチさせて電源回路80の駆動を停止させる。
【0022】
さらに、IC1は、二次コイルCo2の過電圧状態を帰還コイルCofに発生する帰還電圧Vfをもとに、OVP(Over Voltage Protection)端子12を通じて監視している。ここで、帰還コイルCofの一端は、ダイオードD2、抵抗R2及び抵抗R3による直列回路が構成されており、帰還電圧VfはダイオードD2により整流されて抵抗R2、R3により分圧された電圧値が、同抵抗R2と抵抗R3の接点(OVP点)に発生している。さらに、過電圧を検出するツェナーダイオードD3のアノードはダイオードD11を通じてOVP端子12に接続されている。そのため、IC1は、ツェナーダイオードD3を通じてOVP点の電圧値をOVP端子12により監視している。
【0023】
ところで、上記構成の電源回路80において、帰還コイルCofが何らかの原因で破損等し短絡状態に陥った場合、帰還電圧Vfが帰還できなくなる場合がある。この場合、IC1から出力されるドライブ信号がハイレベルに維持されたり、ドライブ信号のデューティ比が異常な値を示し、トランスT1に発生させる電圧が異常値となる。そのため、場合によっては電源回路80内で周辺部品が発熱を起こし、発煙、発火の危険性が高まる。そこで、本実施形態にかかる電源回路80では、帰還コイルCofが故障した場合でも、電源回路80の駆動を安全に停止できるよう工夫している。
【0024】
即ち、IC1のOTP端子2は、ダイオードD12(電圧低下手段)を通じて帰還コイルCofと接続されている。具体的には、OTP端子2は、ダイオードD12のアノードと接続され、帰還コイルCofの電圧値を検出するOVP点を繋ぐA点がダイオードD12のカソードに接続されている。また、A点は、コンデンサーC2を通じて接地されている。
【0025】
そのため、帰還コイルCofが正常の場合は、帰還電圧Vfは、0Vから5Vの値で変化するが、ダイオードD12の両端に継続的に大きな電位差を生じさせず、同ダイオードD12に電流が流れない。そのため、OTP端子2に供給される電圧はサーミスタNTC1の抵抗値に応じてのみ変化する。一方、帰還コイルCofが破損等し短絡状態になると、A点電位が0V付近に維持されるため、ダイオードD12の両端に継続的な大きな電位差を生じさせ、同ダイオードD12に電流が流れる。そのため、OTP端子2に発生する電圧が急激に下がり、閾値S(例えば1.0V)以下となった時点で内部ブロックが機能し、IC1をラッチさせる。その結果、IC1のDRV端子9からのドライブ信号の出力が停止するため、FETQ1のスイッチングを停止させて、電源回路80が停止する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態では、帰還コイルCofが破損した場合でも、IC1をラッチさせてドライブ信号の供給を停止させるため、安全に電源回路80を停止させることができる。
【0027】
2.その他の実施形態:
本発明は、様々な実施形態が存在する。
電子機器として、表示装置を用いたことは一例であり、本実施形態に係る電源回路を備えるものであればどのような電子機器であってもよい。
また、電圧低下手段としてダイオードD12を用いることは一例であり、帰還コイルCofの電圧変化に応じて、OTP端子に供給される電圧を低下させる回路であればどのような回路であってもよい。
【0028】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…IC、80…電源回路、97…ドライバー、98…メインコントローラー、99…表示パネル、100…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、
スイッチング動作により前記トランスに所定電圧を発生させるスイッチ素子と、
前記スイッチ素子をスイッチングさせるドライブ信号を出力するICと、
前記トランスの二次コイルに発生した電圧を帰還させる帰還コイルと、を有する電源回路を備える電子機器において、
前記ICは、
前記帰還コイルの電圧値を第1の端子を通じて監視し、前記帰還コイルの電圧値に応じて前記スイッチ素子を駆動するためのドライブ信号を出力し、
第2の端子に発生する電圧値が所定の閾値以下である場合に、当該ICをラッチさせる構成であって、
前記帰還コイルが供給する電圧が所定値以下となった場合に、前記第2の端子にかかる電圧を低下させる電圧低下手段を、有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記電圧低下手段は、前記帰還コイルとカソードで接続されて、前記第2の端子とアノードで接続されたダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記ICは、前記帰還コイルが供給する電圧値の変化に応じて、前記ドライブ信号を出力するタイミングを設定することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−239277(P2012−239277A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105995(P2011−105995)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】