説明

電子機器

【課題】第1筐体と第2筐体が、揺動運動時に筐体同士の干渉を防止でき、180度開いた時に、筐体同士を接近させることが可能な電子機器の提供。
【解決手段】本発明は、第1筐体1と、ヒンジ機構により折り畳み可能な第2筐体2とからなる電子機器において、ヒンジ機構は、第2筐体に配置され、第1カム面6に沿って移動する第1スライド軸4と、折り畳み中心線Cを基準に第1スライド軸より遠い位置で、第1スライド軸と中心線が互いに平行になるように配置された第2スライド軸5と、第1筐体1に配置され、第2カム面9に沿って移動する第3スライド軸7と、折り畳み中心線を基準に第3スライド軸7より遠い位置で、第3スライド軸7と中心線が互いに平行になるように配置された第4スライド軸8と、カム溝である第1カム面6、及びカム溝である第2カム面9が形成されたカムプレート10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行二軸ヒンジ装置を備えた開閉式の電子機器に関する。さらに詳しくは、第1筐体と第2筐体とが揺動運動しているときに筐体同士の干渉を防止できるとともに、第1筐体と第2筐体とが180度開いた状態のときに筐体同士を接近させることが可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯型情報端末は、携帯時には小さくなり、使用時には大きくなることが視認性、操作性上好ましい。そのため、使用時に二つの筐体をスライドさせることで大きくするタイプのもの、二つの筐体をヒンジで結合して開閉動作可能に、使用時に開状態にするタイプのものなどが知られている。
このヒンジで結合して開閉動作させるもの、いわゆる折り畳み式(または、二つ折り式)のものには、一つの軸体が設けられたもの、平行に二つの軸体が隣接して設けられた平行二軸ヒンジ装置を備えたものが知られている。平行二軸ヒンジ機構は、ヒンジ機構が筐体より突出する部位がない点が好まれている。
【0003】
一対の筐体が、平行二軸ヒンジ機構を介して開閉可能に連結された小型電子機器、二軸ヒンジ機構に関する技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、特許文献1から3の技術の筐体には、折り畳む内側の角部が、開閉動作時に角部が干渉することを防止するため、内側角部に逃げ形状(例えば、角部に所定の半径の丸みを形成したR形状)が形成されている。そのため、装置の小型化を維持しつつ、表示画面の大型化を図るという要求に対応できる技術のものでなかった。言い換えると、折り畳み式の電子機器において、筐体同士を180度開いた状態のとき、一対の筐体の表示画面が連続する面一の表示画面を形成して、表示画面の大型化を図ることができない構成のものであった。
一方、装置の小型化と、表示画面の大画面化を図る情報端末装置、モバイル端末機に関する技術も知られている(例えば、特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−78112号公報
【特許文献2】特開2006−64000号公報
【特許文献3】特開2008−14449号公報
【特許文献4】特開2003−298700号公報
【特許文献5】特開2006−174435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4の情報端末装置は、1軸のヒンジ機構のものであり、ヒンジ部の一部が表示部より突出してしまう構成のものである。また、この情報端末装置は、ヒンジ機構とは別に自動スライド機構が必要なものあり、構造が複雑で信頼性を低下させるおそれがあり、装置の小型化があまり図れないおそれがあるという問題点があった。また、この情報端末装置は、開閉動作の操作性もあまりよくない。特許文献5のモバイル端末機は、1軸のヒンジ機構のものであり、両端に設けられたヒンジが表示部側突出する構成であり、視認性、作業性、操作性がよくないという問題点があった。このように、従来の開閉式の電子機器は改良改善の余地がまだ残っているものであった。
【0006】
本発明は、前記した問題点を解決するためになされたもので、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、平行二軸ヒンジ装置を備えた開閉式の電子機器において、開閉動作時には一対の筐体同士の干渉を防止できるとともに、筐体同士を180度開いた状態のときに一対の筐体同士を極力接近させることが可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は以下の手段を採用する。
本発明1の電子機器は、
電子部品を内蔵した第1筐体1と、ヒンジ機構3により、前記第1筐体1の揺動と合わせて、折り畳みの中心線Cを中心として相対的に角度180度以内で折り畳み可能で、電子部品を内蔵した第2筐体2とからなる電子機器において、前記ヒンジ機構3は、前記第2筐体2の両側面に配置され、第1カム面6に沿って移動する第1スライド軸4と、前記第2筐体2の両側面に配置され、前記折り畳みの中心線Cを基準に前記第1スライド軸4より遠い位置で、しかも前記第1スライド軸4と中心線が互いに平行になるように配置された第2スライド軸5と、前記第1筐体1の両側面に配置され、第2カム面9に沿って移動する第3スライド軸7と、前記第1筐体1の両側面に配置され、前記折り畳みの中心線Cを基準に前記第3スライド軸7より遠い位置で、しかも前記第3スライド軸7と中心線が互いに平行になるように配置された第4スライド軸8と、カム溝である前記第1カム面6と、カム溝である前記第2カム面9とが形成されたカムプレート10とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明2の電子機器は、本発明1において、
前記第3スライド軸7は、前記折り畳みの中心線Cを中心として、前記第1スライド軸4と対称位置に配置されたものであり、前記第4スライド軸8は、前記折り畳みの中心線Cを中心として、前記第2スライド軸5と対称位置に配置されたものであり、前記カムプレート10は、前記第1カム面6と前記第2カム面9とが、前記折り畳みの中心線Cを中心として、対称位置に形成されているものであることを特徴とする。
【0009】
本発明3の電子機器は、本発明1又は2において、
前記第1カム面6及び前記第2カム面9の前記カム溝は、前記第1筐体1及び前記第2筐体2が前記揺動の中間角度位置で、前記第2スライド軸5、及び前記第4スライド軸8が、前記折り畳み中心線Cから最も遠くなる距離Lに揺動θしたとき、前記折り畳み中心線C上の揺動中心点Oで、前記前記第1筐体1及び前記第2筐体2の角部が、前記折り畳み中心線Cに重ならない形状であることを特徴とする。
【0010】
本発明4の電子機器は、本発明1ないし3から選択される1項において、
前記第1カム面6は、前記第1スライド軸4を案内する第1カム溝12、及び前記第2スライド軸5を案内する第2カム溝14を有し、前記第2カム面9は、前記第3スライド軸7を案内する第3カム溝13、及び前記第4スライド軸8を案内する第4カム溝15を有するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明5の電子機器は、本発明1ないし4から選択される1項において、
前記第1スライド軸4、及び前記第2スライド軸5の一端は、前記第2筐体2に固定されており、前記第3スライド軸7、及び前記第4スライド軸8の一端は、前記第1筐体1に固定されているものであって、前記ヒンジ機構3は、前記カムプレート10に一体に固定された固定プレート17と、前記第1筐体1に固定された固定ピン23に取り付けられ、前記第1筐体1の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第1ストッププレート25と、前記第2筐体2に固定された固定ピン33に取り付けられ、前記第2筐体2の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第2ストッププレート35と、前記固定プレート17に回転自在な第1軸28に固定され、前記第1ストッププレート25に固定して設けられた第1歯車27と、前記第1歯車27と噛み合い、前記固定プレート17に回転自在な第2軸38に固定され、かつ前記第2ストッププレート35に固定して設けられた第2歯車37とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明6の電子機器は、本発明5において、
前記固定プレート17は、3枚からなり、前記カムプレート10の前面に配置された第1固定プレート17、前記第1歯車27及び前記第2歯車37の前面に配置され、かつ前記第1軸28,128及び前記第2軸38,138に揺動自在に設けられた第2固定プレート19、並びに前記第2固定プレート19の前面に配置され、かつ前記第1軸28,128及び前記第2軸38,138に揺動自在に設けられた第3固定プレート54とからなり、前記第1軸28,128を中心に、前記第2固定プレート19と前記第3固定プレート54との間に介在された第1弾性部材51と、前記第2軸38,138を中心に、前記第2固定プレート19と前記第3固定プレート54との間に介在された第3弾性部材56ととからなることを特徴とする。
【0013】
本発明7の電子機器は、本発明1ないし4から選択される1項において、
前記第1スライド軸204、及び前記第2スライド軸205の一端は、前記第2筐体2に固定されており、前記第3スライド軸207、及び前記第4スライド軸208の一端は、前記第1筐体1に固定されているものであって、前記ヒンジ機構203は、前記カムプレート210に一体に固定された固定プレート217と、前記第1筐体1に固定された固定ピン223に取り付けられ、前記第1筐体1の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第1ストッププレート225と、前記第2筐体2に固定された固定ピン233に取り付けられ、前記第2筐体2の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第2ストッププレート235と、前記固定プレート217と前記第1ストッププレート225の間に介在された第1弾性部材254と、前記固定プレート217と前記第2ストッププレート235の間に介在された第2弾性部材264とからなることを特徴とする。
【0014】
本発明8の電子機器は、本発明1ないし4から選択される1項において、
前記第4スライド軸350の一端は、前記第1筐体1に固定されており、前記第2スライド軸360の一端は、前記第2筐体2に固定されているものであって、前記ヒンジ機構303は、前記カムプレート310と前記第1筐体1の間に配置され、前記第4スライド軸350bに挿入され、前記第1筐体1に回転不能に固定され、かつ前記第3スライド軸307が固定された第1スライドプレート321と、前記カムプレート310と前記第2筐体2の間に配置され、前記第2スライド軸360bに挿入され、前記第2筐体2に回転不能に固定され、かつ前記第1スライド軸304が固定された第2スライドプレート331と、前記カムプレート310の前面位置に配置され、前記折り畳みの中心線C上の中心点で、前記カムプレート310に揺動自在に設けられ、前記中心点に対称位置に配置された第3軸355a、及び第4軸355bとを有する動力盤355と、前記第3軸355aと前記第4スライド軸350の先端をそれぞれ揺動自在に連結する第1リンク板352と、前記第4軸355bと前記第2スライド軸360の先端をそれぞれ揺動自在に連結する第2リンク板362とからなることを特徴とする。
【0015】
本発明9の電子機器は、本発明1ないし4から選択される1項において、
前記第4スライド軸452bは、前記第1筐体1に揺動自在に取り付けられており、前記第2スライド軸462bは、前記第2筐体2に揺動自在に取り付けられているものであって、前記ヒンジ機構403は、前記カムプレート310と前記第1筐体1の間に配置され、前記第4スライド軸452bに揺動可能に挿入され、前記第1筐体1に回転不能にキー固定され、かつ前記第3スライド軸307が固定された第1スライドプレート421と、前記カムプレート310と前記第2筐体2の間に配置され、前記第2スライド軸462bに揺動可能に挿入され、前記第2筐体2に回転不能にキー固定され、かつ前記第1スライド軸304が固定された第2スライドプレート431と、前記カムプレート310の前面位置に配置され、前記折り畳みの中心線C上の中心点で、前記カムプレート310に揺動自在に設けられ、前記中心点に対称位置に配置された第3軸355a、及び第4軸355bとを有する動力盤355と、前記第3軸355aと前記第4スライド軸452の先端351をそれぞれ揺動自在に連結する第1リンク板352と、前記第4軸355bと前記第2スライド軸462bの先端361をそれぞれ揺動自在に連結する第2リンク板362と、前記第1筐体1と前記第1スライドプレート421の間で、前記第4スライド軸452bに挿入された第1スプリング454と、前記第2筐体2と前記第2スライドプレート431の間で、前記第2スライド軸462bに挿入された第2スプリング464と、前記第1スプリング454と前記第1スライドプレート421の間で、前記第4スライド軸452bに挿入され、前記第1スライドプレート421に形成されたカム面に接する第1カム455と、前記第2スプリング464と前記第2スライドプレート431の間で、前記第2スライド軸462bに挿入され、前記第2スライドプレート431に形成されたカム面に接しする第2カム465とからなることを特徴とする。
【0016】
本発明10の電子機器は、本発明1ないし4から選択される1項において、
前記第4スライド軸550に揺動不能に固定され、かつ前記第3スライド軸507が固定された第1スライドプレート521と、前記第2スライド軸560に揺動不能に固定され、かつ前記第1スライド軸504が固定された第2スライドプレート531と、前記第2スライド軸560及び前記第4スライド軸550には、前記第1筐体1と前記第2筐体2間に電気的信号、又は電力を送るためのに電線を通すために中空が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子機器は、平行二軸ヒンジ装置を備えた折り畳み式の電子機器において、第1筐体と第2筐体とが閉じた「閉じ状態」から第1筐体と第2筐体とが180度開いた「開き状態」、または、「開き状態」から「閉じ状態」に開閉動作する過程では、第1筐体及び第2筐体の揺動動作に連動して、第1筐体と第2筐体を互いに離れる方向に移動させ、筐体同士の干渉を防止している。また、「開き状態」において、筐体同士を極力近づけることができ、両方の筐体に表示画面が設けられている電子機器では表示画面が一体に、かつ、面一になって大きな表示画面を形成することが可能となる。さらに、ヒンジ機構が表示画面より上方に突出することがない。また、第1筐体、及び、第2筐体には、開閉動作時に折り畳まれる側の内側角部に干渉防止のために逃げ形状(例えば、R形状)を設ける必要がなく、かつ、表示画面側に突出する部材もないので、折り畳み式の電子機器において大きな表示画面を形成でき、操作性、視認性に優れ、使い勝手がよいものとなる。また、ヒンジ機構は、2本のスライド軸とカム面とから構成される簡素なものであり、開閉動作がスムーズで、信頼性が高く、ヒンジ機構の小型化も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1の電子機器の斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態1及び実施の形態2におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
【図3】図3は、実施の形態1における筐体の開閉動作とカム面の形状を説明するための説明図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は180度開き状態を示す説明図である。
【図4】図4は、第1カム面及び第2カム面の形状を説明するための説明図である。
【図5】図5は、実施の形態2における筐体及びヒンジ機構の開閉動作を説明するための説明図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は180度開き状態を示す説明図である。
【図6】図6は、実施の形態3におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
【図7】図7は、実施の形態3におけるヒンジ機構の斜視図である。
【図8】図8は、実施の形態4におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
【図9】図9は、実施の形態4におけるヒンジ機構の斜視図である。
【図10】図10は、実施の形態5におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
【図11】図11は、実施の形態5における筐体の開閉動作を説明するための説明図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は180度開き状態を示す説明図である。
【図12】図12は、実施の形態5におけるヒンジ機構の斜視図である。
【図13】図13は、実施の形態6におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
【図14】図14は、実施の形態7におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。
【図15】図15は、実施の形態7におけるヒンジ機構のヒンジ本体を斜視した斜視図である。
【図16】図16は、実施の形態7における通線状態を説明するための説明図である。
【図17】図17は、実施の形態7の変形例を示す電子機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態1から7について、図面に基づいて、その実施の形態を詳細に説明する。
なお、この実施の形態1から7の説明では、電子機器の側面と直交する方向において、電子機器の側面側を他方の側と記載し、この側面から離れている側(反側面側)を一方の側と記載して説明を行っている。
【0020】
〔実施の形態1〕
図1〜4に基づいて、折り畳み式の電子機器の実施の形態1について説明を行う。図1は、本発明の実施の形態1の電子機器の斜視図である。図2は、実施の形態1におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。図3は、実施の形態1における筐体の開閉動作とカム面の形状を説明するための説明図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は180度開き状態を示す説明図である。図4は、第1カム面及び第2カム面の形状を説明するための説明図である。
【0021】
折り畳み式の電子機器E1の筐体は、一対の筐体であり、ヒンジ機構3を介して開閉動作する第1筐体1と第2筐体2とから構成されている。第1筐体1、第2筐体2は、各々、電子部品を内蔵している。第1筐体1と第2筐体2とは、折り畳んでの携帯(収納)状態と、開いての使用状態に、ヒンジ機構3を介して開閉動作する。ヒンジ機構3は、電子機器の側面に設けられている。
【0022】
第1筐体1の側面及び後面には、第1スライドプレート21が固定されている。第1スライドプレート21は、側面視L字状の部材が第1筐体1の長手方向に延びるように形成されている。第1スライドプレート21には、図2に示したように、正面視したときの折り畳み中心線C側における下部側を切り欠いた切り欠き部21dが形成されている。第1スライドプレート21の第1筐体1の側面と平行に形成された平面には、第1筐体1の長手方向と平行な方向に第1穴部21a、第3穴部21cが形成されている。また、第1穴部21aの斜め上方に第2穴部21bが形成されている。
【0023】
第2筐体2には、第2スライドプレート31が固定されている。第2スライドプレート31は、側面視L字状の部材が第2筐体2の長手方向に延びるように形成されている。第2スライドプレート31には、正面視したときの折り畳み中心線C側における下部側を切り欠いた切り欠き部31dが形成されている。第2スライドプレート31の第2筐体2の側面と平行な面には、第2筐体2の長手方向と平行な方向に第1穴部31a、第3穴部31cが形成されている。また、第1穴部31aの斜め上方に第2穴部31bが形成されている。
【0024】
カムプレート10が、第1筐体1及び第2筐体2の側面に対して平行な位置に配設されている。言い換えると、カムプレート10は、第1スライドプレート21の第1穴部21a、第2穴部21b、第3穴部21cが形成された平面、及び、第2スライドプレート31の第1穴部31a、第2穴部31b、第3穴部31cが形成された平面に対して、平行な位置に配設されている。カムプレート10には、折り畳み中心線Cに対して対称な位置に、第1カム面6、第2カム面9が形成されている。第1カム面6は、第2スライドプレート31に他方の側の端部が固定された第1スライド軸4を案内して移動させるための円弧状の第1カム溝12と、第2スライドプレート31に他方の側の端部が固定された第2スライド軸5を案内して進退移動させるための第2カム溝14とを有している。第1カム溝12は、折り畳み中心線Cから略中央部が一番離れる(距離がある)ように形成されている円弧形状のカム溝である。第1スライド軸4、第2スライド軸5は、第1カム溝12、第2カム溝14に沿って移動する従動子である。
【0025】
第1スライド軸4は、一方の端部側にフランジ部4aが形成され、フランジ部4aの他方側に形成された小径軸部が第2穴部31bに挿入された後、小径軸部の他方の側の先端部をかしめることで第2スライドプレート31に固定されている。第2スライド軸5は、一方の端部側にフランジ部5aが形成され、フランジ部5aの他方側に形成された軸部が第1穴部31aに挿入された後、軸部の他方の側の先端部をかしめることで第2スライドプレート31に固定されている。
【0026】
第2カム面9は、第1スライドプレート21に小径軸部の他方の側の端部が固定され、一方の側にフランジ部7aが形成された第3スライド軸7を案内して移動させるための円弧状の第3カム溝13と、第1スライドプレート21に軸部の他方の側が固定され、一方の側にフランジ部8aが形成された第4スライド軸8を案内して進退移動させるための第4カム溝15とを有している。第3カム溝13は、略中央部が折り畳み中心線Cから一番離れるように形成されている円弧形状のカム溝である。第3スライド軸7、第4スライド軸8は、第3カム溝13、第4カム溝15に沿って移動する従動子である。
【0027】
言い換えると、第1スライド軸4は、第2筐体2の側面に配置され、第1カム面6に沿って移動する。第2スライド軸5は、第2筐体2の側面に配置され、折り畳み中心線Cを基準に第1スライド軸4より遠い位置で、しかも第1スライド軸4と中心線が互いに平行になるように配置されている。さらに、第3スライド軸7は、折り畳み中心線Cを中心として、第1スライド軸4と対称に、かつ第1筐体1の側面に配置され、第2カム面9に沿って移動する。また、第4スライド軸8は、第1筐体1の側面に配置され、折り畳み中心線Cを基準に第3スライド軸7より遠い位置で、しかも第3スライド軸7と中心線が互いに平行になるように配置されている。
【0028】
図4(a)から図4(c)に従って、カムプレート10に形成された第1カム面6、第2カム面9についてさらに説明を行う。図4(a)は、第1筐体1と第2筐体2とが閉じた状態を示す説明図、図4(c)は、第1筐体1と第2筐体2とが180度開いた状態を示す説明図、図4(b)は、第1筐体1と第2筐体2との揺動動作の中間角度(例えば、第1筐体と第2筐体とが90度開いた)状態を示す説明図である。
【0029】
図4(a)の状態では、折り畳み中心線Cと第1筐体1の間、折り畳み中心線Cと第2筐体2との間に、所定の間隔Sを有している。揺動中心線Oを中心として揺動を開始するとき、この揺動中心線Oの位置は、少なくとも揺動開始時において、折り畳み中心線C上で、かつ第2筐体2の下端の角部となる。何となれば、少なくとも、この位置で揺動を開始しないと、両筐体の角部が直ちに角部が干渉することになる。この揺動開始時の関係は次式のようになる。
=J+S=R*cosθ R>J+S
【0030】
第1筐体1と第2筐体2とが、開状態にするために角度θだけ揺動したとき、第1筐体1の角部と第2筐体2の角部とを符号11の位置で干渉させないためには、図4(b)に示すように、揺動中心点Oから最も遠い半径Rの位置にある第2スライド軸5が、折り畳み中心線Cから揺動距離Rだけ離れている。この角度θだけ揺動したとき、第2スライド軸5の揺動半径R、第2スライド軸5の中心と折り畳み中心線Cとの距離は、第2スライド軸5の揺動開始時の距離L、及びその中間の距離Lの関係は、次の関係にある。なお、第1筐体1の角部と第2筐体2の角部は、設計上の仮想上の角部も場合もあり、実際の角部と限らない。同様に、揺動中心点Oも実際の揺動点に限らず、仮想上の揺動点を含む概念である。
=R L>L
【0031】
図4(c)は、第1筐体1と第2筐体2とが180度開いた状態を示している。このときの第1筐体1と第2筐体2の間隔(d≧0)は、例えば、第1筐体1と第2筐体2の両方に設けられた表示部により連続した表示画面とする場合には、d=0となる。この180度開いたとき、第2スライド軸5の揺動終了時の折り畳み中心線Cからの距離Lとすれば、次の関係が成立する。図4に示するように、
=H+d=R*sinθ+d
S+J≧d+H のとき、 L>L>L
S+J<d+H のとき L>L>L
の関係となる。
【0032】
即ち、第1筐体1の角部と第2筐体2の角部とが、干渉しないようにするには、両筐体が角度θ揺動したとき、第2スライド軸5の中心と、折り畳み中心線Cとの距離Lを最も大きくする必要がある。言い換えると、揺動開始時の揺動中心Oから第2スライド軸5の中心までの半径Rが、折り畳み中心線Cと角度90度になるまで揺動(角度θ)したとき(図4(b)の状態)、第2スライド軸5の中心と、折り畳み中心線Cとの距離Lを最も大きく(L≧R)する必要がある。カムプレート10に形成された第1カム面6と第2カム面9の溝形状は、この条件を満たすような形状に形成する必要がある。
【0033】
次に、第1筐体1と第2筐体2との開閉動作について、説明を行う。第1筐体1と第2筐体2とを、「閉じ状態」から「開き状態」にする例で説明を行う。第1筐体1を「閉じ状態」から中間(第1筐体1と第2筐体2が90度開いた角度)位置に揺動すると、第1筐体側1では、第1スライドプレート21が第1筐体1と一体に、カムプレート10に対して揺動する。第3スライド軸7は第2カム面9の第3カム溝13に、第4スライド軸8は第2カム面9の第4カム溝15に案内されて、揺動動作するとともに第2筐体2に対して第1筐体1が離れる方向に移動する。また、第2筐体2側では、第2スライドプレート31が第2筐体2と一体に、カムプレート10対して揺動する。第1スライド軸4は、第1カム面6の第1カム溝12に、第2スライド軸5は第1カム面6の第2カム溝14に案内されて、揺動動作するとともに第1筐体1に対して第2筐体2が離れる方向に移動する(図3(a−b)、(b)参照)。
【0034】
さらに、中間位置から「開き状態」位置に揺動動作させると、第1筐体1側では、第3スライド軸7が第3カム溝13に、第4スライド軸8が第4カム溝15に案内されて、揺動動作するとともに第2筐体2に対して第1筐体1が近づく方向に移動する。また、第2筐体2側では、第1スライド軸4が第1カム溝12に、第2スライド軸5が第2カム溝14に案内されて、揺動動作するとともに第1筐体1に対して第2筐体2が近づく方向に移動する(図3(b−c)、(c)参照)。このように、第1スライド軸4、第2スライド軸5と第1カム面6、第3スライド軸7、第4スライド軸8と第2カム面9との作用により、第1筐体1及び第2筐体2が、揺動動作時の干渉を避けながら「開き状態」のとき第1筐体1と第2筐体2とを極力接近することができるようになっている。すなわち、使用者は、従来通り、第1筐体と第2筐体とを開く操作、閉じる操作を行うだけで、内側角部の干渉防止を行うことができる。また、「開き状態」から「閉じ状態」にする場合には、この逆の操作を行うことになる。
【0035】
〔実施の形態2〕
図2、3、図5に基づいて、本発明の実施の形態2の説明を行う。この実施の形態2は、実施の形態1で説明を行ったヒンジ機構に歯車による連動機構を付加したものである。図2は、本発明の実施の形態2の電子機器に設けられているヒンジ機構の分解図である。図5は、実施の形態2における筐体及びヒンジ機構の開閉動作を説明するための説明図であり、(a)は閉じ状態、(b)は中間角度状態、(c)は180度開き状態を示す説明図である。なお、この実施の形態2の説明では、実施の形態1と同一の部位には同一の符号を付与して、詳細な説明を省略している。
【0036】
第1筐体1、第2筐体2、第1スライドプレート21、第2スライドプレート31、カムプレート10、第1スライド軸4、第2スライド軸5、第3スライド軸7、第4スライド軸8等の構成は、実施の形態1と同じ構成のものである。第1スライドプレート21の第3穴部21cには、固定ピン23が挿通されている。第2スライドプレート31の第3穴部31cには、固定ピン33が挿通されている。
【0037】
第1ストッププレート25が、第1スライドプレート21と平行に配設されている。第1ストッププレート25には、長穴部25a、嵌合長穴部25bが形成されている。固定ピン23は、他方の側から第1スライドプレート21の第3穴部21cに挿入され、軸部の一方の側が第1ストッププレート25の長穴部25aに挿入されている。長穴部25aは、第1ストッププレート25の長手方向に長くなった長円穴である。固定ピン23と第1ストッププレート25とは、長穴部25aを介して、第1ストッププレート25の長手方向に相対移動可能になっている。固定ピン23の一端側は、ワッシャ26を挿通させた後、かしめることで固定されている。固定ピン23の第1スライドプレート21と第1ストッププレート25とのあいだの外周部には、カラー24が設けられている。
【0038】
第2ストッププレート35が、第2スライドプレート31と平行に配設されている。第2ストッププレート35には、長穴部35a、嵌合長穴部35bが形成されている。固定ピン33は、他方の側から第2スライドプレート31の第3穴部31cに挿入され、軸部の一方の側が第2ストッププレート35の長穴部35aに挿入されている。長穴部35aは、第2ストッププレート35の長手方向に長くなった長円穴である。固定ピン33と第2ストッププレート35とは、長穴部35aを介して、第2ストッププレート35の長手方向に相対移動可能になっている。固定ピン33の一端側は、ワッシャ36を挿通させた後、かしめることで固定されている。固定ピン33の第2スライドプレート31と第2ストッププレート35とのあいだの外周部には、カラー34が設けられている。
【0039】
第1固定プレート17が、カムプレート10と平行に配設されている。同様に、第2固定プレート19が、カムプレート10及び第1固定プレート17と平行に配設されている。カムプレート10の中央部、第1固定プレート17の中央部には、カムプレート10、第1固定プレート17の長手方向と直交する幅方向(妻手方向)に長くなった長穴部(長円穴部)10a、長穴部(長円穴部)17cが形成されている。第1固定プレート17の長穴部17c、カムプレート10の長穴部10aには、固定ピン18が一方の側から挿入されている。固定ピン18は、フランジ部18a、大径部18b、小径部18c、二面幅部18dが形成されている。長穴部17cには大径部18bが、長穴部10aには小径部18cが位置するように挿入されている。固定ピン18は、カムプレート10から所定量突出した他方の側の先端部分をかしめて固定している。また、二面幅部18dが、長穴部17c、長穴部10aに係合しているので、カムプレート10と第1固定プレート17とが相対的に回転することを規制している。
【0040】
第1固定プレート17には、第1穴部17a、第2穴部17bが形成されている。第2固定プレート19には、第1穴部19a、第2穴部19bが形成されている。第1ストッププレート25と第2固定プレート19との間には、第1歯車27が設けられている。第1歯車27には、嵌合長穴部27aが形成されている。第1軸体28(第1軸)は、第1固定プレート17に他方の側から挿入され、第1固定プレート17の第1穴部17a、第1ストッププレート25の嵌合長穴部25b、第1歯車27の嵌合長穴部27a、第2固定プレート19の第1穴部19aの順に挿入されている。第2固定プレート19から突出した第1軸体28はワッシャ29の長穴部29aに挿入され、ワッシャ29から突出した第1軸体28の一方の側の先端部分をかしめて固定している。
【0041】
第2ストッププレート35と第2固定プレート19との間には、第2歯車37が設けられている。第2歯車37には、嵌合長穴部37aが形成されている。第2軸体38(第2軸)は、第1固定プレート17に他方の側から挿入され、第1固定プレート17の第2穴部17b、第2ストッププレート35の嵌合長穴部35b、第2歯車37の嵌合長穴部37a、第2固定プレート19の第2穴部19bの順に挿入されている。第2固定プレート19から突出した第2軸体38はワッシャ39の長穴部39aに挿入され、ワッシャ39から突出した第2軸体38の一方の側の先端部分をかしめて固定している。
【0042】
第1歯車27と第2歯車37とは噛み合っており、第1歯車27(または第2歯車37)が回動すると、第2歯車37(または第1歯車27)が連動して回動するようになっている。第1軸体28は、軸部が、二面幅が形成された長円軸部28aになっている。長円軸部28aは、第1ストッププレート25の嵌合長穴部25b、第1歯車27の嵌合長穴部27aに嵌合されている。第1軸体28は、第1固定プレート17、第2固定プレート19に回転可能に支持されている。第1ストッププレート25と第1歯車27とは、第1軸体28に支持されて、第1ストッププレート25と第1歯車27とが一体に回動運動する。第2軸体38は、軸部の外周面に、二面幅部が形成された長円軸部38aになっている。長円軸部38aは、第2ストッププレート35の嵌合長穴部35b、第2歯車37の嵌合長穴部37aに嵌合されている。第2軸体38は、第1固定プレート17、第2固定プレート19に回転可能に支持されている。第2ストッププレート35と第2歯車37とは、第2軸体38に支持されて、第2ストッププレート35と第2歯車37とが一体に回動運動する。
【0043】
実施の形態2の作用の説明を行う。第1筐体1と第2筐体2とが「閉じ状態」から「開き状態」に開いていく過程について説明を行う。この説明では、第1筐体1を第2筐体2に対して「閉じ状態」から「開き状態」にする例で説明を行う。なお、この実施の形態1の電子機器は、第1筐体1、及び、第2筐体2が連動して揺動するので、第2筐体2を揺動させても、第1筐体1、第2筐体2の両方を揺動させてもよい。
【0044】
第1筐体1と第2筐体2とは「閉じ状態」になっている(図3(a)、図5(a)参照)。第2筐体2に対して第1筐体1を揺動させると、第1スライドプレート21、固定ピン23が揺動する。固定ピン23の揺動に伴って、第1ストッププレート25が揺動する。この第1ストッププレート25の揺動運動は、第1軸体28を介して第1歯車27に伝達される。第1歯車27が回動すると、噛み合ってる第2歯車37が、第1歯車27の回動方向に反対方向に回動する。この第2歯車37の回動運動により、第2ストッププレート35が揺動する。そして、固定ピン33を介して第2スライドプレート31が揺動する。そして、第2筐体2が第2スライドプレート31とともに揺動する。
【0045】
このとき、第1スライドプレート21に固定された第3スライド軸7が第3カム溝13に、第4スライド軸8が第4カム溝15に案内されて、カムプレート10に対して揺動するとともに第1筐体1が第2筐体2に対して離れる方向に移動させる。また、第1スライドプレート21に固定されている固定ピン23は、第1ストッププレート25の長穴部25a内を、第1ストッププレート25の長手方向に移動可能になっており、第1筐体1、第1スライドプレート21が移動することを許容している。
【0046】
同様に、第2スライドプレート31に固定された第1スライド軸4が第1カム溝12に、第2スライド軸5が第2カム溝14に案内されて、カムプレート10に対して揺動するとともに第2筐体2が第1筐体1に対して離れる方向に移動させる。このとき、第2スライドプレート31に固定されている固定ピン33は、第2ストッププレート35の長穴部35a内を、第2ストッププレート35の長手方向に移動可能になっており、第2筐体2、第2スライドプレート31が移動することを許容している(図3(b)、図5(b)参照)。
【0047】
さらに、第1筐体1を揺動させると、第1スライドプレート21、固定ピン23が揺動する。固定ピン23の揺動に伴って、第1ストッププレート25が揺動する。この第1ストッププレート25の揺動運動は、第1軸体28を介して第1歯車27に伝達される。第1歯車27が回動すると、噛み合っている第2歯車37が、第1歯車27の回動方向に反対方向に回動する。この第2歯車37の回動運動により、第2ストッププレート35が揺動する。そして、固定ピン33を介して第2スライドプレート31が揺動する。そして、第2筐体2が第2スライドプレート31とともに揺動する。
【0048】
このとき、第1スライドプレート21に固定された第3スライド軸7が第3カム溝13に、第4スライド軸8が第4カム溝15に案内されて、揺動するとともに第1筐体1が第2筐体2に対して近づく方向に移動させる。そして、第1スライドプレート21に固定されている固定ピン23は、第1ストッププレート25の長穴部25a内を、第1ストッププレート25の長手方向に移動可能になっており、第1筐体1、第1スライドプレート21が移動することを許容している。同様に、第2スライドプレート31に固定された第1スライド軸4が第1カム溝12に、第2スライド軸5が第2カム溝14に案内されて、揺動するとともに第2筐体2が第1筐体1に対して近づく方向に移動させる。このとき、第2スライドプレート31に固定されている固定ピン33は、第2ストッププレート35の長穴部35a内を、第2ストッププレート35の長手方向に移動可能になっており、第2筐体2、第2スライドプレート31が移動することを許容している(図3(c)、図5(c)参照)。第1筐体1を第2筐体2に対して「開き状態」から「閉じ状態」にする場合には、この逆手順の操作を行えばよい。
【0049】
〔実施の形態3〕
図6、7に基づいて、本発明の実施の形態3の説明を行う。図6は、実施の形態3のヒンジ機構を示す分解図、図7は、このヒンジ機構の斜視図である。この実施の形態3は、実施の形態2で説明を行ったヒンジ機構に、第1筐体と第2筐体における「開き状態」、「閉じ状態」を維持するための回転トルクを発生させるための手段を設けたものである。なお、この実施の形態3の説明では、実施の形態1、2と同一の部位には同一の符号を付与して、詳細な説明を省略している。
【0050】
実施の形態3のヒンジ機構103は、第1軸体128側の第2固定プレート19とワッシャ29との間に、ワッシャ52、コイルスプリング51、ワッシャ53、第3固定プレート54を設けている。固定プレート54には、第1軸体128を回転可能に支持するための第1穴部54a、第2軸体138を回転可能に支持するための第2穴部54bが形成されている。同様に、ヒンジ機構103は、第2軸体138側の第2固定プレート19とワッシャ39との間に、ワッシャ57、コイルスプリング56、ワッシャ58、第3固定プレート54を設けている。また、第1軸体128、第2軸体138は、各々、第1軸体28、第2軸体38より、コイルスプリング51、コイルスプリング56を組み付けられるように、所定量長く形成されている。第1軸体128は、軸部に二面幅部128bが形成された長円軸部128aになっている。第2軸体138は、軸部に二面幅部138bが形成された長円軸部138aになっている。
【0051】
すなわち、第1軸体128、第2軸体138の回り方向に回動しようとしたとき、コイルスプリング51、コイルスプリング56の弾性力により摩擦を生じさせ、第1筐体1、第2筐体2が「開き状態」のとき、「閉じ状態」のとき、その状態を維持するための回転トルクを発生させるものである。また、第1筐体1、第2筐体2を揺動運動させるときにも、第1筐体1、第2筐体2がブラブラした姿勢にならないように回転トルクを発生している。なお、この形態の説明では、摩擦による回転トルクを発生させるものをコイルスプリングで説明を行っているが、皿バネ等他の付勢手段であってもよい。第1筐体1と第2筐体2とを開閉動作させる手順は、実施の形態2における「閉じ状態」、「開き状態」、開閉動作時に回転トルクが付与されるようになっていることが異なるだけであり、説明を省略する。
【0052】
〔実施の形態4〕
図8、9に基づいて、本発明の実施の形態4の説明を行う。図8は、実施の形態4におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。図9は、実施の形態4におけるヒンジ機構の斜視図である。この実施の形態4は、実施の形態1で説明を行ったヒンジ機構に回転トルクを発生させるための部材を設けたものである。第1筐体(図示せず)には、第1スライドプレート221が固定されている。第2筐体(図示せず)には、第2スライドプレート231が固定されている。
【0053】
第1スライドプレート221の第1筐体、第2筐体の側面と平行なプレート面には、第3スライド軸207を挿入するための第2穴部221b、第4スライド軸208を挿入するための第1穴部221a、第1穴部221a、第2穴部221bより大径の第3穴部221cが形成されている。第2スライドプレート231の第1筐体、第2筐体の側面と平行なプレート面には、第2スライド軸205を挿入するための第1穴部231a、第1スライド軸204を挿入するための第2穴部231b、第1穴部231a、第2穴部231bより大径の第3穴部231cが形成されている。第1穴部231a、第2穴部231b、第3穴部231cが形成されている面と平行にカムプレート210が配設されている。カムプレート210には、第1カム溝12、第2カム溝14からなる第1カム面6、第3カム溝13、第4カム溝15からなる第2カム面9とが形成されている。
【0054】
第4スライド軸208は、中央にフランジ部が形成され、他方の側に形成された軸部が第1スライドプレート221の第1穴部221aに、一方の側に形成された軸部(第4スライド軸に相当する)がカムプレート210の第4カム溝15内に挿入されている。第3スライド軸207は、中央にフランジ部が形成され、他方の側に形成された軸部が第1スライドプレート221の第2穴部221bに、一方の側に形成された軸部(第3スライド軸に相当する)がカムプレート210の第3カム溝13内に挿入されている。
【0055】
第2スライド軸205は、中央にフランジ部が形成され、他方の側に形成された軸部が第1スライドプレート231の第1穴部231aに、一方の側に形成された軸部(第2スライド軸に相当する)がカムプレート210の第2カム溝14内に挿入されている。第1スライド軸204は、中央にフランジ部が形成され、他方の側に形成された軸部が第1スライドプレート231の第2穴部231bに、一方の側に形成された軸部(第1スライド軸に相当する)がカムプレート210の第1カム溝12内に挿入されている。
【0056】
カムプレート210と平行に固定プレート217が設けられている。カムプレート210には、4隅に、係合穴部210bが形成されている。固定プレート217には、4隅に、係合穴部217cが形成されている。係合穴部210bと係合穴部217cとは同一の寸法間隔になっている。係合穴部210bには、係合軸体224の係合軸部224aが差し込まれる。係合穴部217aには、係合軸体224の係合軸部224cが差し込まれる。従って、4本の係合軸体224の大径部224bを挟んで、カムプレート210と固定プレート217とは、平行に、位置がずれないように一体化されている。
【0057】
固定プレート217に形成された第1穴部217aには、軸体251の他方の側に形成された他方の軸部251aが嵌合される。軸体251の一方の側に形成された一方の軸部251bには、カラー252、ワッシャ253、複数枚の皿バネ254、ワッシャ255、第1ストッププレート225、ワッシャ256が挿入され、軸体251の一方の側に形成されたねじ穴にビス257がねじ込まれることにより、軸体251、カラー252、ワッシャ253、複数枚の皿バネ254、ワッシャ255、第1ストッププレート225、ワッシャ256、ビス257が一体化される。
【0058】
固定プレート217に形成された第2穴部217bには、軸体261の他方の側に形成された他方の軸部261aが嵌合される。軸体261の一方の側に形成された一方の軸部261bには、カラー262、ワッシャ263、複数枚の皿バネ264、ワッシャ265、第2ストッププレート235、ワッシャ266が挿入され、軸体261の一方の側に形成されたねじ穴にビス267がねじ込まれることにより、軸体261、カラー262、ワッシャ263、複数枚の皿バネ264、ワッシャ265、第2ストッププレート235、ワッシャ266、ビス267が一体化される。
【0059】
第1ストッププレート225には、軸体251の一方の軸部251bが挿通する穴部225bと、長穴部225aが形成されている。固定ピン223は、第1スライドプレート221の第3穴部221cに他方の側の軸部223aが挿入され先端部をかしめることで固定されている。固定ピン223の一方の軸部223bは、第1ストッププレート225の長穴部225aに挿通されている。一方の軸部223bの外周にはスリーブ258が嵌め込まれており、スリーブ258の外周面が長穴部225aと係合する。一方の軸部223bには止め輪用溝が形成されており、この止め輪用溝に止め輪(例えば、Eリング)259が嵌め込まれて固定されている。
【0060】
第2ストッププレート235には、軸体261の一方の軸部261bが挿通する穴部235bと、長穴部235aが形成されている。固定ピン233は、第2スライドプレート231の第3穴部231cに他方の軸部233aが挿入され先端部をかしめることで固定されている。固定ピン233の一方の軸部233bは、第2ストッププレート235の長穴部235aに挿入されている。一方の軸部233bの外周にはスリーブ268が嵌め込まれており、スリーブ268の外周面が長穴部235aと係合する。一方の軸部233bには止め輪用溝が形成されており、この止め輪用溝に止め輪(例えば、Eリング)269が嵌め込まれて固定されている。
【0061】
このヒンジ機構203の作用の説明を行う。第1筐体を第2筐体に対して揺動すると、第1筐体側では、第1スライドプレート221が第1筐体と一体に、カムプレート210に対して揺動する。第3スライド軸207が第3カム溝13に、第4スライド軸208が第4カム溝15に案内されて、カムプレート210に対して揺動動作するとともに第2筐体に対して第1筐体が離れる方向に移動する。さらに、揺動動作させると、カムプレート210に対して第1筐体が揺動するとともに、第2筐体に対して第1筐体が近づく方向に移動する。このとき、皿バネ254により、所定の回転トルクが付与されているのでブラブラする感じを抑えることができる。
【0062】
また、第2筐体側では、第2スライドプレート231が第2筐体と一体に、カムプレート210に対して揺動する。第1スライド軸204が第1カム溝12に、第2スライド軸205が第2カム溝14に案内されて、カムプレート210に対して揺動動作するとともに第1筐体に対して第2筐体が離れる方向に移動する。さらに、揺動動作させると、カムプレート210に対して第2筐体が揺動するとともに、第1筐体に対して第2筐体が近づく方向に移動する。このとき、皿バネ264により、所定の回転トルクが付与されているのでブラブラする感じを抑えることができる。
【0063】
また、第1スライドプレート221側の回転トルクと、第2スライドプレート231側の回転トルクに差をつけると、回転トルクの低いほうから順次揺動動作するように動作順序が一定となる。
【0064】
〔実施の形態5〕
図10から図12に従って、本発明の実施の形態5の説明を行う。図10は、実施の形態5におけるヒンジ機構の分解図、図11は、このヒンジ機構の動作を説明するための説明図、図12は、ヒンジ機構の斜視図である。この実施の形態5は、実施の形態1で説明を行ったヒンジ機構をリンク機構で連動させるものである。図10の上部は第1筐体1側を示し、下部は第2筐体2側を示している。
【0065】
第1ヒンジ軸体350は、本体部に形成された二面幅部350cが、第1筐体1の側面に形成された凹溝部(図示せず)に嵌め込まれている。第1ヒンジ軸体350には、第1軸部350a、第1軸部350aより小径の第2軸部350bが形成されている。本体部には、二面幅部350cと平行な方向に、係合溝部350d、350dが形成されている。第1スライドプレート321は、側面視たまご形で、所定の厚みを有する部材であり、第1穴部321a、第2穴部321b、係合凸部321cが形成されている。第1ヒンジ軸体350の第1軸部350aに、第1スライドプレート321の第1穴部321aが嵌入される。また、第1軸部350aに第1穴部321aが嵌め込まれたとき、係合凸部321cが、係合溝部350dに係合するようになっている。係合凸部321cと係合溝部350dとが係合したとき、第1ヒンジ軸体350と第1スライドプレート321とは、相対的に回転できないようになっている。第1ヒンジ軸体350の第2軸部350bはカムプレート310の第4カム溝15に案内される第4スライド軸を構成するものである。
【0066】
第2ヒンジ軸体360は、本体部に形成された二面幅部360cが、第2筐体2に形成された凹溝部(図示せず)に嵌め込まれている。第2ヒンジ軸体360には、第1軸部360a、第1軸部360aより小径の第2軸部360bが形成されている。本体部には、二面幅部360cと平行な方向に、係合溝部360d、360dが形成されている。第2スライドプレート331は、側面視たまご形で、所定の厚みを有する部材であり、第1穴部331a、第2穴部331b、係合凸部331cが形成されている。第2ヒンジ軸体360の第1軸部360aに、第2スライドプレート331の第1穴部331aが嵌入される。また、第1軸部360aに第1穴部331aが嵌め込まれたとき、係合凸部331cが、係合溝部360dに係合するようになっている。
【0067】
係合凸部331cと係合溝部360dとが係合したとき、第2ヒンジ軸体360と第2スライドプレート331とは、相対的に回転できないようになっている。第2軸体360の第2軸部360bはカムプレート310の第2カム溝14に案内される第2スライド軸を構成するものである。第1スライドプレート321、第2スライドプレート331と平行に、カムプレート310が設けられている。カムプレート310には、中央に形成された穴部310a、第1カム溝12、第2カム溝14からなる第1カム面6、第3カム溝13、第4カム溝15からなる第2カム面9が形成されている。
【0068】
カムプレート310の穴部310aには、軸体365の大径部365aが嵌合されている。軸体365のフランジ部365cは、カムプレート310の他方側の面と当接する。軸体365は、カムプレート310から突出するように形成されており、小径部365bには動力盤355が嵌入されている。軸体365は、小径部365bの一方の側の先端部をかしめることで動力盤355に固定されている。すなわち、カムプレート310と動力盤355とは軸体365を介して、回転方向に相対回転可能であるが、軸線方向に移動できないようになっている。動力盤355は、略菱形の部材であり、長手方向の両端側に第1係合軸部(第3軸)355a、第2係合軸部(第4軸)355bが形成されている。
【0069】
第1係合軸部355aには、第1リンク板352の第1穴部352aが嵌め込まれている。第2係合軸部355bには、第2リンク板362の第1穴部362aが嵌め込まれている。第3カム溝13、第1スライドプレート321の第2穴部321bには、第3スライド軸307が挿入されている。すなわち、第3スライド軸307の大径部307aは第3カム溝13に、小径部307bは第2穴部321bに挿入されている。小径部307bの先端は第1スライドプレート321に固定されている。第1ヒンジ軸体350の第2軸部350bにはスリーブ351が嵌め込まれている。スリーブ351の一端側の小径部351aは、第1リンク板352の第2穴部352aが嵌め込まれている。第1リンク板352から突出している第2軸部350bには、ワッシャ353が挿入されている。ワッシャ353から突出している第2軸部350bの先端部をかしめることで、端部350eとかしめ部との間にスリーブ351、第1リンク板352、ワッシャ353が挟まれ、軸線方向に固定されている。
【0070】
第1カム溝12、第2スライドプレート331の第2穴部331bには、第1スライド軸304が挿入されている。すなわち、第1スライド軸304の大径部304aは第1カム溝12に、小径部304bは第2穴部331bに挿入されている。小径部304bの先端は第2スライドプレート331に固定されている。第2ヒンジ軸体360の第2軸部360bにはスリーブ361が嵌め込まれている。スリーブ361の一端側の小径部361aは、第2リンク板362の第2穴部362aが嵌め込まれている。第2リンク板362から突出している第2軸部350bには、ワッシャ363が挿入されている。ワッシャ363から突出している第2軸部360bの先端部をかしめることで、端部360eとかしめ部との間にスリーブ361、第2リンク板362、ワッシャ363が挟まれ、軸線方向に固定されている。
【0071】
この実施の形態5の作用について説明を行う。図11(a)のように第1筐体1及び第2筐体2が「閉じ状態」から、図11(c)のように「開き状態」側に開いていく例で説明を行う。第1筐体1を揺動させると、第1ヒンジ軸体350、第1スライドプレート321が一体で同方向に回動する。第1スライドプレート321が第1ヒンジ軸体350の軸中心の回り方向に回動すると、第3スライド軸307が第1ヒンジ軸体350の軸中心の回り方向に回転する。そして、第3カム溝13、第4カム溝15に案内されて、第1筐体1が第2筐体2に対して離れる方向に移動する。第1スライドプレート321が離れる方向に移動すると、第1リンク部材352も同一方向に移動する。第1リンク部材352は、動力盤355を図11における時計回り方向に回動させる。動力盤355は、第2リンク板362を回動させる。第1スライド軸304、第2ヒンジ軸360の第2軸部360bは第1カム溝12、第2カム溝14に案内されて、第2スライドプレート331及び第2筐体2を開く方向に揺動運動するとともに、第2筐体2を第1筐体1に対して離れる方向に移動させる(図11(b)参照)。
【0072】
さらに、第1筐体1を回動させると、第1スライドプレート321が一体で同方向に回動する。第1スライドプレート321が第1ヒンジ軸体350の軸中心の回り方向に回動すると、第3スライド軸307が第1ヒンジ軸体350の軸中心の回り方向に回転する。そして、第3カム溝13、第4カム溝15に案内されて、第1筐体1が第2筐体2に近づく方向に移動する。第1リンク部材352は、動力盤355を図11における反時計回り方向に回動させる。動力盤355は、第2リンク板362を回動させる。第1スライド軸304と、第2ヒンジ軸360の第2軸部360bとが第1カム溝12、第2カム軸14に案内されて、第2スライドプレート331及び第2筐体2を開く方向に回動するとともに、第2筐体2が第1筐体1に対して近づく方向に移動させる。(図11(c)参照)
【0073】
〔実施の形態6〕
図13に従って、本発明の実施の形態6について説明を行う。図13は、実施の形態6におけるヒンジ機構の斜視図である。この実施の形態6は、実施の形態5のヒンジ機構に、所定の回転トルクを付与して、例えば、「開き状態」、「閉じ状態」のときに、クリック感が感じられるようにしたものである。なお、この実施の形態6の説明では、実施の形態1、5と同一の部位には同一の符号を付与して、詳細な説明を省略している。なお、図13の上部は第1筐体1側を示し、下部は第2筐体2側を示している。
【0074】
ヒンジケース451は、一方の側にコイルスプリング454、端面カム455を組み込むための大径穴部451aが、他方の側に第1スライド軸体452の第1軸部452aが挿入される小径穴部(図示せず)が設けられた部材である。ヒンジケース451には、第1筐体1の側面に形成された凹溝部(図示せず)に嵌め込むための二面幅部451b、係合溝451dが形成されている。第1スライド軸体452は、ヒンジケース451の小径穴部に挿入される第1軸部452a、第1軸部452aより小径に形成された第2軸部452b、フランジ部452c、第1軸部452aの外周面に互いに平行な二面に形成された二面幅部452dからなっている。第2軸部452bは、第4スライド軸を構成するものである。端面カム455は、第1スライドプレート421側の端面に凹凸状のカム面455aを形成し、第1スライドプレート421側の端面カムの端面に形成されたカム面(図示せず)とカム面455aとを当接させ、回動位置に対応して回転トルク力が増減するようにしたものである。
【0075】
第1スライドプレート421には、係合凸部421cが形成されており、ヒンジ機構403を組み付けたとき、係合凸部421cがヒンジケース451の係合溝451dに係合して、ヒンジケース451と第1スライドプレート421が相対的に回転できないように規制されている。また、第1スライド軸体452の二面幅部452dは、端面カム455の係合長穴(図示せず)に嵌め込まれて第1スライド軸体452と端面カム455とが回転方向に相対回転できないようにしている。さらに、第1スライド軸体452の二面幅部452dは、カムプレート310の第4カム溝15に係合して、カムプレート310に対して、第1スライド軸体452が回転方向に運動することが規制されるとともに、第1筐体1と第2筐体2とが離れたり、近づいたりする進退方向の運動が可能に構成されている。
【0076】
同様に、ヒンジケース461は、一方の側にコイルスプリング464、端面カム465を組み込むための大径穴部461aが、他方の側に第2スライド軸体462の第1軸部462aが挿入される小径穴部(図示せず)が設けられた部材である。ヒンジケース461には、第2筐体2の側面に形成された凹溝部(図示せず)に嵌め込むための二面幅部461b、係合溝461dが形成されている。第2スライド軸体462は、ヒンジケース461の小径穴部に挿入される第1軸部462a、第1軸部462aより小径に形成された第2軸部462b、フランジ部462c、第1軸部462aの外周面に互いに平行な二面に形成された二面幅部462dからなっている。第2軸部462bは、第2スライド軸を構成するものである。端面カム465は、第2スライドプレート431側の端面に凹凸状のカム面465aを形成し、第2スライドプレート431側の端面カムの端面に形成されたカム面(図示せず)とカム面465aとを当接させ、回動位置に対応して回転トルク力が増減するようにしたものである。
【0077】
第2スライドプレート431には、係合凸部431cが形成されており、ヒンジ機構403を組み付けたとき、係合凸部431cがヒンジケース461の係合溝461dに係合して、ヒンジケース461と第2スライドプレート431が相対的に回転できないように規制されている。また、第2スライド軸体462の二面幅部462dは、端面カム465の係合長穴(図示せず)に嵌め込まれて第2スライド軸体462と端面カム465とが回転方向に相対的に回転できないようにしている。さらに、第2スライド軸体462の二面幅部462dは、カムプレート310の第2カム溝14に係合して、カムプレート310に対して、第2スライド軸体462が回転方向に運動することが規制されるとともに、第1筐体1と第2筐体2とが離れたり、近づいたりする進退方向の運動が可能に構成されている。
【0078】
また、第1リンク部材352、スリーブ351は、第1スライド軸体452の第2軸部452bに挿入されている。第2リンク部材362、スリーブ361は、第2スライド軸体462の第2軸部462bに挿入されている。前述したように、動力盤355、第1スライド軸304、第3スライド軸307の構成は、実施の形態4と同じものである。
このヒンジ機構403は、第1筐体1を回動させたとき、端面カム455の凸部とスライドプレート421側の端面カムの凸部とが当接したとき、コイルスプリング454を押圧して圧縮変形させ、回転トルク力を増大させ、クリック感を感じさせる。また、第2筐体2を回動させたとき、端面カム465の凸部とスライドプレート431側の端面カムの凸部とが当接したとき、コイルスプリング464を押圧して圧縮変形させ、回転トルク力を増大させ、クリック感を感じさせる。
【0079】
〔実施の形態7〕
図14から17に従って、本発明の実施の形態7について説明を行う。図14は、実施の形態7におけるヒンジ機構の構造を分解して示す分解図である。図15は、実施の形態7におけるヒンジ機構のヒンジ本体を斜視した斜視図である。図16は、実施の形態7における通線状態を説明するための説明図である。図17は、実施の形態7の変形例を示す電子機器の斜視図である。この実施の形態7のヒンジ機構503には、第1筐体1側の電子部品と、第2筐体2側の電子部品の間を接続するための線材がフリーな状態で通線されている通線状態に設けられている。図14の上部は第1筐体1側を示し、下部は第2筐体2側を示している。
【0080】
第1ヒンジ軸体550は、ケース部551に形成された二面幅部551aが、第1筐体1の側面に形成された凹溝部(図示せず)に嵌め込まれている。第1ヒンジ軸体550には、第1軸部552、第1軸部552より順次小径に形成された第2軸部553、第3軸部(スライド軸部)554、第4軸部555が形成されている。第2軸部553には、二面幅部553aが形成されている。ケース部551には、他方の端面側に線材挿通穴551bが形成されている。線材挿通穴551bは、第2軸部552の側部に形成された線材用開口部556に連通している。例えば、線材は、図15に矢印で示したように、線材挿通穴551bから線材用開口部556に挿通される。第1スライドプレート521には、長穴部521aと、穴部521bとが形成されている。長穴部521aには、第2軸部553の二面幅部553aが挿入され、第1スライドプレート521と第1ヒンジ軸体550とが相対的に回転運動しないようになっている。カムプレート510には、第1カム溝12、第2カム溝14とからなる第1カム面6と、第3カム溝13、第4カム溝15とからなる第2カム面9とが形成されている。
【0081】
第1ヒンジ軸体550の第3軸部554は、第4カム溝15に案内される第4スライド軸に相当する部位である。組み付けたとき、カムプレート510から突出する第4軸部555は、ワッシャ556が挿入された後、先端部をかしめることで固定される部位である。第3スライド軸507は、第3カム溝13に大径部が案内される部材であるとともに、小径部が第1スライドプレート521の穴部521bに挿入され、先端部をかしめることで固定して第1スライドプレート521と一体化される部位である。
【0082】
第2ヒンジ軸体560は、ケース部561に形成された二面幅部561aが、第2筐体2の側面に形成された凹溝部(図示せず)に嵌め込まれている。第2ヒンジ軸体560には、第1軸部562、第1軸部562より順次小径に形成された第2軸部563、第3軸部(スライド軸部)564、第4軸部565が形成されている。第2軸部563には、二面幅部563aが形成されている。ケース部561には、他方の端面側に線材挿通穴561bが形成されている。線材挿通穴561bは、第2軸部562の側面部に形成された線材用開口部566に連通している。例えば、線材は、図15に矢印で示したように、線材挿通穴561bから線材用開口部566に挿通される。第2スライドプレート531には、長穴部531aと、穴部531bとが形成されている。長穴部531aには、第2軸部563の二面幅部563aが挿入され、第2スライドプレート531と第2ヒンジ軸体560とが相対的に回転運動しないようになっている。
【0083】
第2ヒンジ軸体560の第3軸部564は、第2カム溝14に案内される第2スライド軸に相当する部位である。組み付けたとき、カムプレート510から突出する第4軸部565は、ワッシャ566が挿入された後、先端部をかしめることで固定される部位である。第1スライド軸504は、第1カム溝12に大径部が案内される部材であるとともに、小径部が第2スライドプレート531の穴部531bに挿入され、先端部をかしめることで固定して第2スライドプレート531と一体化される部位である。
【0084】
また、線材用開口部556と線材用開口部566とは、図16に示すように、線材が通れるように、かつ、対向するような位置に設けられている。線材用開口部556と線材用開口部566をこのように配置することで、第1筐体1と第2筐体2とを開閉させたときでも、線材がねじれないようになっている。また、第2カム面9に案内される第3軸部554、第3スライド軸507、第1カム面6に案内される第3軸部564、第1スライド軸504により、第1筐体1と第2筐体2とが揺動運動するとき、第1筐体1と第2筐体2が離れる方向に移動した後、近づく方向に移動するように構成されている。
【0085】
図17は、この実施の形態7の変形例を示す図である。この変形例は、電子機器E2の筐体において、第1筐体1と第2筐体2との間の一方に実施の形態7で説明を行ったヒンジ機構503を採用し、他方に連動する他のヒンジ機構(例えば、実施の形態4で説明を行ったヒンジ機構303)を採用した例である。このようにすると、ヒンジ機構303で第1筐体1と第2筐体2とが連動するとともに、第1筐体1と第2筐体2との間の線材の処理がたいへん容易になる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、前述した実施の形態では、第1スライド軸と第3スライド軸、第2スライド軸と第4スライド軸が、折り畳み中心軸を中心とする対称に配置されたもので説明を行ったが、第1スライド軸と第3スライド軸、第2スライド軸と第4スライド軸は折り畳み中心軸に対して対称な位置に配置されていなくてもよい。同様に、カムプレートに形成されている第1カム面と第2カム面は、折り畳み中心軸を中心にして対称位置に形成されていなくてもよい。言い換えると、第1筐体と第2筐体とが揺動運動しているときに筐体同士の干渉を防止できるとともに、第1筐体と第2筐体とが180度開いた状態のときに筐体同士を接近させることが可能なスライド軸の配置、カム面形状になっていればよい。
【符号の説明】
【0087】
1 … 第1筐体
2 … 第2筐体
3、103、203、303、403、503 … ヒンジ機構
4、204、304、504 … 第1スライド軸
5、205 … 第2スライド軸
6 … 第1カム面
7、207、307、507 … 第3スライド軸
8、208 … 第4スライド軸
9 … 第2カム面
10、210、310、510 … カムプレート
12 … 第1カム溝
14 … 第2カム溝
13 … 第3カム溝
15 … 第4カム溝
17 … 第1固定プレート
19 … 第2固定プレート
25 … 第1ストッププレート
27 … 第1歯車
28、128 … 第1軸体(第1軸)
35 … 第2ストッププレート
37 … 第2歯車
38、138 … 第2軸体(第2軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を内蔵した第1筐体(1)と、
ヒンジ機構(3)により、前記第1筐体(1)の揺動と合わせて、折り畳みの中心線(C)を中心として相対的に角度180度以内で折り畳み可能で、電子部品を内蔵した第2筐体(2)とからなる電子機器において、
前記ヒンジ機構(3)は、
前記第2筐体(2)の両側面に配置され、第1カム面(6)に沿って移動する第1スライド軸(4)と、
前記第2筐体(2)の両側面に配置され、前記折り畳みの中心線(C)を基準に前記第1スライド軸(4)より遠い位置で、しかも前記第1スライド軸(4)と中心線が互いに平行になるように配置された第2スライド軸(5)と、
前記第1筐体(1)の両側面に配置され、第2カム面(9)に沿って移動する第3スライド軸(7)と、
前記第1筐体(1)の両側面に配置され、前記折り畳みの中心線(C)を基準に前記第3スライド軸(7)より遠い位置で、しかも前記第3スライド軸(7)と中心線が互いに平行になるように配置された第4スライド軸(8)と、
カム溝である前記第1カム面(6)と、カム溝である前記第2カム面(9)とが形成されたカムプレート(10)と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第3スライド軸(7)は、前記折り畳みの中心線(C)を中心として、前記第1スライド軸(4)と対称位置に配置されたものであり、
前記第4スライド軸(8)は、前記折り畳みの中心線(C)を中心として、前記第2スライド軸(5)と対称位置に配置されたものであり、
前記カムプレート(10)は、前記第1カム面(6)と前記第2カム面(9)とが、前記折り畳みの中心線(C)を中心として、対称位置に形成されているものである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1カム面(6)及び前記第2カム面(9)の前記カム溝は、
前記第1筐体(1)及び前記第2筐体(2)が前記揺動の中間角度位置で、前記第2スライド軸(5)、及び前記第4スライド軸(8)が、前記折り畳み中心線(C)から最も遠くなる距離(L)に揺動(θ)したとき、前記折り畳み中心線(C)上の揺動中心点(O)で、前記前記第1筐体(1)及び前記第2筐体(2)の角部が、前記折り畳み中心線(C)に重ならない形状である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1ないし3から選択される1項において、
前記第1カム面(6)は、前記第1スライド軸(4)を案内する第1カム溝(12)、及び前記第2スライド軸(5)を案内する第2カム溝(14)を有し、
前記第2カム面(9)は、前記第3スライド軸(7)を案内する第3カム溝(13)、及び前記第4スライド軸(8)を案内する第4カム溝(15)を有する
ものであることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1ないし4から選択される1項において、
前記第1スライド軸(4)、及び前記第2スライド軸(5)の一端は、前記第2筐体(2)に固定されており、
前記第3スライド軸(7)、及び前記第4スライド軸(8)の一端は、前記第1筐体(1)に固定されているものであって、
前記ヒンジ機構(3)は、
前記カムプレート(10)に一体に固定された固定プレート(17)と、
前記第1筐体(1)に固定された固定ピン(23)に取り付けられ、前記第1筐体(1)の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第1ストッププレート(25)と、
前記第2筐体(2)に固定された固定ピン(33)に取り付けられ、前記第2筐体(2)の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第2ストッププレート(35)と、
前記固定プレート(17)に回転自在な第1軸(28)に固定され、前記第1ストッププレート(25)に固定して設けられた第1歯車(27)と、
前記第1歯車(27)と噛み合い、前記固定プレート(17)に回転自在な第2軸(38)に固定され、かつ前記第2ストッププレート(35)に固定して設けられた第2歯車(37)と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5において、
前記固定プレート(17)は、3枚からなり、
前記カムプレート(10)の前面に配置された第1固定プレート(17)、
前記第1歯車(27)及び前記第2歯車(37)の前面に配置され、かつ前記第1軸(28,128)及び前記第2軸(38,138)に揺動自在に設けられた第2固定プレート(19)、並びに
前記第2固定プレート(19)の前面に配置され、かつ前記第1軸(28,128)及び前記第2軸(38,138)に揺動自在に設けられた第3固定プレート(54)とからなり、
前記第1軸(28,128)を中心に、前記第2固定プレート(19)と前記第3固定プレート(54)との間に介在された第1弾性部材(51)と、
前記第2軸(38,138)を中心に、前記第2固定プレート(19)と前記第3固定プレート(54)との間に介在された第3弾性部材(56)と
からなることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1ないし4から選択される1項において、
前記第1スライド軸(204)、及び前記第2スライド軸(205)の一端は、前記第2筐体(2)に固定されており、
前記第3スライド軸(207)、及び前記第4スライド軸(208)の一端は、前記第1筐体(1)に固定されているものであって、
前記ヒンジ機構(203)は、
前記カムプレート(210)に一体に固定された固定プレート(217)と、
前記第1筐体(1)に固定された固定ピン(223)に取り付けられ、前記第1筐体(1)の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第1ストッププレート(225)と、
前記第2筐体(2)に固定された固定ピン(233)に取り付けられ、前記第2筐体(2)の前記側面と平行な面内で直線移動及び揺動自在に設けられた第2ストッププレート(235)と、
前記固定プレート(217)と前記第1ストッププレート(225)の間に介在された第1弾性部材(254)と、
前記固定プレート(217)と前記第2ストッププレート(235)の間に介在された第2弾性部材(264)と
からなることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1ないし4から選択される1項において、
前記第4スライド軸(350)の一端は、前記第1筐体(1)に固定されており、
前記第2スライド軸(360)の一端は、前記第2筐体(2)に固定されているものであって、
前記ヒンジ機構(303)は、
前記カムプレート(310)と前記第1筐体(1)の間に配置され、前記第4スライド軸(350b)に挿入され、前記第1筐体(1)に回転不能に固定され、かつ前記第3スライド軸(307)が固定された第1スライドプレート(321)と、
前記カムプレート(310)と前記第2筐体(2)の間に配置され、前記第2スライド軸(360b)に挿入され、前記第2筐体(2)に回転不能に固定され、かつ前記第1スライド軸(304)が固定された第2スライドプレート(331)と、
前記カムプレート(310)の前面位置に配置され、前記折り畳みの中心線(C)上の中心点で、前記カムプレート(310)に揺動自在に設けられ、前記中心点に対称位置に配置された第3軸(355a)、及び第4軸(355b)とを有する動力盤(355)と、
前記第3軸(355a)と前記第4スライド軸(350)の先端をそれぞれ揺動自在に連結する第1リンク板(352)と、
前記第4軸(355b)と前記第2スライド軸(360)の先端をそれぞれ揺動自在に連結する第2リンク板(362)と
からなることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1ないし4から選択される1項において、
前記第4スライド軸(452b)は、前記第1筐体(1)に揺動自在に取り付けられており、
前記第2スライド軸(462b)は、前記第2筐体(2)に揺動自在に取り付けられているものであって、
前記ヒンジ機構(403)は、
前記カムプレート(310)と前記第1筐体(1)の間に配置され、前記第4スライド軸(452b)に揺動可能に挿入され、前記第1筐体(1)に回転不能にキー固定され、かつ前記第3スライド軸(307)が固定された第1スライドプレート(421)と、
前記カムプレート(310)と前記第2筐体(2)の間に配置され、前記第2スライド軸(462b)に揺動可能に挿入され、前記第2筐体(2)に回転不能にキー固定され、かつ前記第1スライド軸(304)が固定された第2スライドプレート(431)と、
前記カムプレート(310)の前面位置に配置され、前記折り畳みの中心線(C)上の中心点で、前記カムプレート(310)に揺動自在に設けられ、前記中心点に対称位置に配置された第3軸(355a)、及び第4軸(355b)とを有する動力盤(355)と、
前記第3軸(355a)と前記第4スライド軸(452)の先端(351)をそれぞれ揺動自在に連結する第1リンク板(352)と、
前記第4軸(355b)と前記第2スライド軸(462b)の先端(361)をそれぞれ揺動自在に連結する第2リンク板(362)と、
前記第1筐体(1)と前記第1スライドプレート(421)の間で、前記第4スライド軸(452b)に挿入された第1スプリング(454)と、
前記第2筐体(2)と前記第2スライドプレート(431)の間で、前記第2スライド軸(462b)に挿入された第2スプリング(464)と、
前記第1スプリング(454)と前記第1スライドプレート(421)の間で、前記第4スライド軸(452b)に挿入され、前記第1スライドプレート(421)に形成されたカム面に接する第1カム(455)と、
前記第2スプリング(464)と前記第2スライドプレート(431)の間で、前記第2スライド軸(462b)に挿入され、前記第2スライドプレート(431)に形成されたカム面に接しする第2カム(465)と
からなることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1ないし4から選択される1項において、
前記第4スライド軸(550)に揺動不能に固定され、かつ前記第3スライド軸(507)が固定された第1スライドプレート(521)と、
前記第2スライド軸(560)に揺動不能に固定され、かつ前記第1スライド軸(504)が固定された第2スライドプレート(531)と、
前記第2スライド軸(560)及び前記第4スライド軸(550)には、前記第1筐体(1)と前記第2筐体(2)間に電気的信号、又は電力を送るためのに電線を通すために中空が形成されている
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−251572(P2012−251572A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122234(P2011−122234)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】