説明

電子装置

【課題】回路基板に電子部品をはんだ実装してなる電子装置において、回路基板とこの回路基板にはんだ接合された電子部品との両者の膨張・収縮度合の差をより小さくすることで、はんだへの応力を低減させる。
【解決手段】回路基板10の方が電子部品20よりも線膨張係数が大きいものであり、電子部品20は、第1の電極21、第2の電極22にてそれぞれ、回路基板10にはんだ30を介して固定されており、回路基板10のうち第1の電極21との固定部と、第2の電極22との固定部との間に位置する部位である固定部間部位13は、一面11に貫通穴14が設けられることにより、回路基板10のうち固定部間部位13以外の部位よりも熱膨張および熱収縮の度合が小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板などの回路基板に電子部品をはんだ実装してなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電子装置としては、プリント基板などの回路基板と、回路基板に搭載された電子部品とを備え、電子部品を、一端側に第1の電極、当該一端側に対向する他端側に第2の電極を有するものとし、電子部品を、第1の電極、第2の電極にてそれぞれ、回路基板に対してはんだを介して固定したものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、回路基板及び回路基板に搭載された電子部品は、それらがさらされる温度の変化により膨張・収縮が生じる。この膨張・収縮の度合が回路基板と電子部品とで異なる場合、その差分が部品の固定・導通に用いるはんだに応力(もしくは歪)として加わることとなる。
【0004】
一般には、回路基板は樹脂やガラスエポキシなどよりなり、電子部品がセラミックコンデンサなどよりなる場合に、回路基板の方が電子部品よりも線膨張係数が大きいものとなる。そして、この温度変化が繰り返されることで、はんだへの応力(歪)も繰り返し発生し、結果的にクラックとして、はんだ固定部での導通不良や部品脱落といった不具合を引き起こす。
【0005】
電子部品が大型化すると、はんだにて接合・固定される電子部品の電極間隔も広がるため、はんだへかかる応力(歪)も比例的に増加し、クラックが容易に進行することとなる。また、膨張・収縮が温度と比例関係にあることから、装置が遭遇する温度が高くなる場合にも、はんだへかかる応力(歪)は温度上昇と比例して増加し、クラックが容易に進行することとなる。
【0006】
このような問題に対して、従来では、装置がさらされる温度変化やそれに対する寿命に対応するため、電子部品を機能上、同等となる形で分割させて小型化したり、線膨張係数の小さい材料を適用した電子部品を使用したりするなどの手法により、はんだへの応力(歪)を低減させ、クラックが容易に進行しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−344092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の電子部品を分割して小型化する手法(例えば定格1/2Wの抵抗を、1/4W×2個にする等)では、分割により複数個の電子部品のトータルサイズが大きくなってしまうとともに、回路基板へ実装する際の実装性を確保するための部品間隔が必要となることから、回路基板における部品実装面積を多く必要とする。そのため、回路基板のサイズが大型化し、回路基板のコストアップや製品サイズの大型化を引き起こしてしまう。さらに、部品点数の増加による実装工数の増加や、部品コストの増加も引き起こしてしまう。
【0009】
また、線膨張係数の小さい材料よりなる電子部品の適用についても、汎用ではない特殊材を適用する必要があるため、電子部品及び回路基板のコストアップを引き起こしてしまう。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、回路基板に電子部品をはんだ実装してなる電子装置において、回路基板とこの回路基板にはんだ接合された電子部品との両者の膨張・収縮度合の差をより小さくすることで、はんだへの応力を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意検討を行った。上述したように、この種の電子装置においては、熱膨張・熱収縮の度合、すなわち線膨張係数は、もともと電子部品が小さく、回路基板が大きい。そして、電子部品は、両端側が各電極にて、はんだ接合により、回路基板に固定されているから、膨張・収縮の大きな回路基板により、はんだに応力が発生し、ダメージを与える。
【0012】
この場合、回路基板のうち電子部品と固定されている2箇所の固定部の間に位置する部位、すなわち固定部間部位の膨張・収縮度合と電子部品の膨張・収縮度合との差が、上記応力に大きく影響する。そこで、この回路基板における固定部間部位の膨張・収縮の度合を小さくして電子部品に近づけることに着目した。
【0013】
本発明は、上記点に着目して創出されたものであり、請求項1に記載の発明では、回路基板(10)と、回路基板(10)の一面(11)に搭載された電子部品(20)とを備え、回路基板(10)の方が電子部品(20)よりも線膨張係数が大きいものであり、電子部品(20)は、一端側に第1の電極(21)、当該一端側に対向する他端側に第2の電極(22)を有するものであり、電子部品(20)は、第1の電極(21)、第2の電極(22)にてそれぞれ、回路基板(10)に対してはんだ(30)を介して固定されている電子装置において、回路基板(10)のうち第1の電極(21)との固定部と、第2の電極(22)との固定部との間に位置する部位である固定部間部位(13)には、一面(11)に穴(14、15)もしくは切れ目が設けられていることを特徴としている。
【0014】
それによれば、電子部品(20)と回路基板(10)との2箇所の固定部間に位置する回路基板(10)の部分である固定部間部位(13)に穴(14、15)もしくは切れ目を設けることにより、当該固定部間部位(13)の膨張・収縮度合をそれ以外の回路基板(10)の部位に比べて、小さいものとしているから、上記両者(10、20)の膨張・収縮度合の差をより小さくすることができ、はんだ(30)への応力を低減させることが可能となる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子装置において、穴は、回路基板(10)を一面(11)から厚さ方向に貫通する貫通穴(14)であることを特徴とする。
【0016】
それによれば、一般的なスルーホール形成工程を用いて、回路基板(10)に貫通穴(14)を容易に形成できる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の電子装置において、穴は、回路基板(10)の一面(11)に開口しつつ底を有する有底穴(15)であることを特徴とする。
【0018】
それによれば、穴を貫通穴(14)とする場合に比べて、固定部間部位(13)の膨張・収縮度合を小さくする効果は低くなる可能性はあるものの、配線等を形成するためのスペースを回路基板(10)の内部に確保しやすくなるという利点がある。
【0019】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項2または3に記載の電子装置における穴すなわち貫通穴(14)または有底穴(15)は、内面に導体が存在せずに、前記回路基板(10)のベースとなる絶縁材が露出した面とされたものであることが好ましい。
【0020】
これは、一般に導体は金属だから、穴の部分における回路基板(10)の膨張・収縮の度合を小さくして電子部品(20)の膨張・収縮の度合に近づけるためには、そのような導体が穴の内部に存在しない方がよいためである。
【0021】
さらに、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の電子装置において、回路基板(10)は、内部にガラスクロス(10c)を有するとともにガラスクロス(10c)よりも一面(11)側にエポキシ樹脂の層(10b)を設けてなるものであり、有底穴(15)は、回路基板(10)の一面(11)からエポキシ樹脂の層(10b)のみを貫通してガラスクロス(10c)を底とするものとされていることを特徴とする。
【0022】
本発明は、回路基板(10)としてガラスエポキシ基板を用いた場合に適したものであり、それによれば、有底穴(15)の部分において線膨張係数の大きいエポキシ樹脂の層(10b)を除去し、エポキシ樹脂に比べて線膨張係数の小さいガラスクロス(10c)を残すことで、固定部間部位(13)の線膨張係数をガラスクロス(10c)の値に近づけることができるから、電子装置(20)と回路基板(10)とで膨張・収縮度合の差分をより小さくしやすい。
【0023】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電子装置において、穴(14、15)もしくは切れ目は、固定部間部位(13)にて第1の電極(21)との固定部に隣り合う部位、および、第2の電極(22)との固定部に隣り合う部位に位置していることを特徴とする。
【0024】
それによれば、回路基板(10)において、回路基板(10)がはんだ(30)に与える応力の主たる発生範囲をさらに限定できるから、当該応力をさらに低減することができる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電子装置において、穴(14、15)は、第1の電極(21)から第2の電極(22)へ向かう方向とは直交する方向に延びる長穴形状のものであることを特徴とする。
【0026】
それによれば、穴(14、15)を単純な丸穴とする場合に比べて、電子部品(20)と回路基板(10)との膨張・収縮度合の差を更に小さくでき、回路基板(10)がはんだ(30)に与える応力を低減する効果を高めることができる。
【0027】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電子装置において、さらに、穴(14、15)もしくは切れ目は、回路基板(10)のうち固定部間部位(13)以外の部位にて、第1の電極(21)との固定部の近傍および第2の電極(22)との固定部の近傍に設けられていることを特徴とする。
【0028】
それによれば、回路基板(10)において、回路基板(10)がはんだ(30)に与える応力の主たる発生範囲を、さらに限定できるから、当該応力をさらに低減することができる。
【0029】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】図1中の上視概略平面図である。
【図3】典型的なスルーホールTHの断面図である。
【図4】上記第1実施形態の貫通穴の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図6】上記第2実施形態の他の例としての電子装置の概略断面図である。
【図7】上記第2実施形態のもう一つの他の例としての電子装置の概略断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図10】上記第4実施形態の他の例としての電子装置の概略断面図である。
【図11】上記第4実施形態のもう一つの他の例としての電子装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図であり、図2は、図1中の上方から視たときの本電子装置の概略平面構成を示す図である。
【0033】
本実施形態の電子装置は、大きくは、回路基板10と、回路基板10の一面11に搭載された電子部品20と、これら回路基板10と電子部品20との間に介在しこれら両者10、20を固定するはんだ30とを備えて構成されている。そして、回路基板10の方が電子部品20よりも線膨張係数が大きいものとされている。
【0034】
回路基板10としては、エポキシ樹脂などの樹脂よりなる樹脂基板や、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させてなるガラスエポキシよりなるガラスエポキシ基板などが挙げられる。この回路基板10は、一方の板面を電子部品20が搭載される搭載面としての一面11とし、他方の板面を他面12としている。
【0035】
また、回路基板10は、典型的には単層もしくは多層のプリント基板であり、上記した樹脂やガラスエポキシをベースとして構成され、その表面や層間に銅箔をパターニングしてなる配線を、有するものである。ここで、多層基板などの場合には、その個々の層や基板全体を貫通するスルーホールが設けられているのが通常である。
【0036】
電子部品20は、一端側に第1の電極21、当該一端側に対向する他端側に第2の電極22を有するものである。このような電子部品20としては、セラミックコンデンサやチップ抵抗などが挙げられる。
【0037】
そして、電子部品20は、第1の電極21、第2の電極22にてそれぞれ、回路基板10の一面11に対してはんだ30を介して固定されている。このはんだ30としては、一般的な共晶はんだや鉛フリーはんだなどが挙げられ、このはんだ30を介して、電子部品20と回路基板10とは電気的および機械的に接合されている。
【0038】
ここで、回路基板10において、当該回路基板10のうち第1の電極21とのはんだ30による固定部と、第2の電極22とのはんだ30による固定部との間に位置する部位を、回路基板10の固定部間部位13とする。具体的には、固定部とは、はんだ30と接触する回路基板10の部分である。
【0039】
そして、本実施形態では、図1、図2に示されるように、回路基板10における固定部間部位13以外の部位よりも固定部間部位13の熱膨張・熱収縮の度合が小さくなるように、固定部間部位13の一面11には、穴14が設けられている。この穴14は、回路基板10を一面11から板厚方向に他面12まで貫通する貫通穴14であり、ここでは開口形状が円形の貫通穴14が、固定部間部位13に複数個設けられている。
【0040】
本実施形態では、図1、図2に示されるように、回路基板10の固定部間部位13に貫通穴14を設けることにより、回路基板10がはんだ30に応力(歪)として影響を及ぼすような膨張・収縮の度合を小さくすることができる。
【0041】
これは、貫通穴14を設けない場合に比べて、固定部間部位13にて発生した膨張・収縮が、固定部間部位13の貫通穴14により分断されることで、固定部間部位13の膨張・収縮の度合が大幅に小さくなり、電子部品20の膨張・収縮の度合に近づくことによるものである。
【0042】
本実施形態の場合、図1中の矢印Yに示されるように、回路基板10のうち電子部品20の膨張・収縮の度合との差分が大きく上記応力に影響するような部位は、主に、貫通穴14が存在しない固定部間部位13以外の部位となる。なお、図1およびそれ以外の図において、矢印Yは、膨張・収縮の方向を示すものである。
【0043】
つまり、回路基板10において、回路基板10がはんだ30に与える応力の主たる発生範囲が縮小されるため、結果的に、回路基板10と電子部品20とで、膨張・収縮度合の差分を小さくすることができ、上記応力を低減し、はんだ30のクラックの進行を抑制することができるのである。
【0044】
このように、本実施形態によれば、電子部品20と回路基板10との2箇所の固定部間に位置する固定部間部位13に穴14を設けることにより、当該固定部間部位13の膨張・収縮度合をそれ以外の回路基板10の部位に比べて、小さいものとしているから、上記両者10、20の膨張・収縮度合の差をより小さくすることができ、はんだ30への応力を低減させることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、穴14を、回路基板10を一面11から厚さ方向に貫通する貫通穴14としているから、一般的なスルーホール形成工程を用いて、回路基板10に貫通穴14を容易に形成できる。
【0046】
ここで、図3は回路基板10に形成される典型的なスルーホールTHの断面構成を示す図である。スルーホールTHは、ドリルなどで回路基板10に貫通穴を開けた後、表面の銅箔10aから穴の内面に亘って銅メッキMを施すことにより形成される。その後、表面の銅箔10aはエッチングにより所定の配線パターンにパターニングされる。
【0047】
ここで、本実施形態においても、回路基板10がスルーホールTHを有する場合には、当該スルーホールTHの形成と同時に、貫通穴14を形成すればよい。一方、回路基板10がスルーホールTHを持たない場合には、別途、一般的なスルーホール形成工程を適用した穴開けを行うことにより、貫通穴14を形成すればよい。
【0048】
ここで、本実施形態の貫通穴14は、この図3に示されるスルーホールTHと同様に、穴の内面に銅めっきなどの導体が設けられているものであってもよいが、図4に示されるように、貫通穴14の内面に導体が存在せずに貫通穴14の内面は回路基板10のベースとなる絶縁材(たとえば樹脂やガラスエポキシなど)が露出した面とされたものであってもよい。
【0049】
貫通穴14の内面に導体がある場合、一般に導体は金属だから、貫通穴14の部分における回路基板10の膨張・収縮の度合を小さくして電子部品20の膨張・収縮の度合に近づけるためには、そのような導体が貫通穴14の内部に存在しない方が望ましい。これは、膨張・収縮の算出係数である「線膨張係数」からも明らかである。
【0050】
ここで、電子部品20および回路基板10を構成する主な材料の線膨張係数を示しておく。ここでは、電子部品20はセラミックよりなり、回路基板10は銅箔パターンを有するガラスエポキシ基板としてのプリント基板よりなるものとする。この場合、セラミック:10ppm/℃、プリント基板全体の平均:15ppm/℃、銅:16ppm/℃、ガラス:5ppm/℃、エポキシ樹脂:77ppm/℃。このことから、導体が内部に存在しない貫通穴14が好ましいことは明白である。
【0051】
なお、本実施形態において、スルーホールTHを有する回路基板10に対して、このような導体が内部に存在しない貫通穴14を形成する場合には、上記銅箔10aをパターニングするときのエッチングによって、貫通穴14の内部の銅メッキMを同時に除去してやればよい。
【0052】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、貫通穴14に代えて有底穴15としたことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0053】
上記第1実施形態で設けられている穴は回路基板10を板厚方向に貫通する貫通穴14であったが、回路基板10が多層基板である場合、このような貫通穴14は基板の内層における配線自由度を妨げてしまう可能性がある。
【0054】
そこで、この配線自由度の向上を実現する手段として、本実施形態では、図5に示されるように、穴15を非貫通穴すなわち回路基板10の一面11に開口しつつ底を有する有底穴15として構成している。
【0055】
この場合、表層のみの加工となるため、回路基板10から生じる膨張・収縮は貫通穴14を設けた場合よりも大きくなるが、電子部品20の固定部直近で発生する膨張・収縮を低減させる効果は得られるため、はんだ30への応力低減効果を得ることができる。そして、配線等を形成するためのスペースを回路基板10の内部に確保しやすくなるという利点がある。
【0056】
ここで、図6は、本第2実施形態の他の例としての電子装置の概略断面構成を示す図である。これは、本実施形態の回路基板10に多層のガラスエポキシ基板を適用した場合において、好ましい形態を示す例である。ここでは、有底穴15によるはんだ応力低減効果を高める手段として、有底穴15の加工対象を回路基板10のエポキシ樹脂のみとしている。
【0057】
具体的には、図6に示される回路基板10は、内部にガラスクロス10cを有するとともにガラスクロス10cよりも一面11側にエポキシ樹脂の層10bを設けてなるものである。ここでは、多層のガラスエポキシ基板であり、ガラスクロス10cおよびエポキシ樹脂の層10bの組を1層として、これらが複数、積層され、各層間にはCuなどよりなる内層パターン10dが介在している。
【0058】
そして、有底穴15は、回路基板10の一面11からエポキシ樹脂の層10bのみを貫通してガラスクロス10cに到達し、ガラスクロス10cを底とする穴として構成されている。
【0059】
これによれば、電子部品20よりも線膨張係数の大きいエポキシ樹脂を除去し、エポキシ樹脂よりも線膨張係数が小さく通常は電子部品20よりも線膨張係数が小さいガラスクロス10cを残すことで、回路基板10における固定間部位13の線膨張係数をガラスクロス10cの値に近づけることになる。
【0060】
それゆえ、図6に示される構成は、固定部間部位13の膨張・収縮の度合を小さくして電子部品20の膨張・収縮の度合に近づけ、電子装置20と回路基板10とで膨張・収縮度合の差分をより小さくするには好ましい構成である。
【0061】
ここで、本実施形態のような有底穴15は、レーザによる穴開け加工、ドリルによる穴開け加工などにより形成されるが、図6のように、エポキシ樹脂の層10bのみを貫通し、ガラスクロス10cを残す場合には、選択的な穴開け方法としてCOレーザ加工が望ましい。ガラスクロス10cはエポキシ樹脂よりも大きいレーザ出力を要するため、レーザ出力を小さくすることでエポキシ樹脂のみの加工を行うことができる。
【0062】
本実施形態の有底穴15においても、めっきなどで穴の内面に金属を配置してもよいが、上記図4に示した貫通穴14と同様の理由から、穴の内面に導体が存在せずに穴の内面は回路基板10のベースとなる絶縁材が露出した面とされたものであってもよい。
【0063】
また、図7は、本第2実施形態のもう一つの他の例としての電子装置の概略断面構成を示す図である。この図7に示される例では、固定部間部位13において有底穴15の位置を、上記図5よりも電子装置20の電極固定部に極力近づけている。
【0064】
つまり、本例では、有底穴15を、固定部間部位13にて第1の電極21との固定部に隣り合う部位、および、第2の電極22との固定部に隣り合う部位に位置させている。それによれば、回路基板10において、固定部間部位13にて有底穴15の位置を電極21、22の固定部に極力近づけることにより、回路基板10がはんだ30に与える応力の主たる発生範囲を更に限定できるから、当該応力を更に低減することができる。
【0065】
なお、この図7の例は上記貫通穴14にも適用できる。つまり、貫通穴14を、固定部間部位13にて各電極21、22との固定部に隣り合う部位に位置させてもよい。それによる効果は、有底穴15の場合と同様である。
【0066】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、貫通穴14を開口形状が円形の丸穴から、開口形状が細長形状の長穴に代えたことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0067】
図8に示されるように、本実施形態の貫通穴14は、第1の電極21から第2の電極22へ向かう方向とは直交する方向に延びる長穴形状のものである。つまり、この長穴は、回路基板10における電子部品20との一方の固定部から他方の固定部に向かう方向と直交する方向に延びる細長形状をなしている。
【0068】
貫通穴14を単純な丸穴とする場合(上記図2参照)、穴14と穴14との間の部位から発生する膨張・収縮がはんだ30への応力として残りやすい。それに比べて、本実施形態によれば、固定部間部位13にて発生した膨張・収縮をより確実に分断することができるため、電子部品20と回路基板10との膨張・収縮度合の差を更に小さくでき、回路基板10がはんだ30に与える応力を低減する効果を高めることができる。
【0069】
なお、この図8の例は上記有底穴15にも適用できる。つまり、有底穴15を、第1の電極21から第2の電極22へ向かう方向とは直交する方向に延びる長穴形状のものとしてもよい。それによる効果は、貫通穴14の場合と同様である。
【0070】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、貫通穴14を、回路基板10のうち固定部間部位13だけでなく、さらに固定部間部位13以外の部位にまで設けたことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0071】
すなわち、本実施形態では、図9に示されるように、貫通穴14は、さらに、回路基板10のうち固定部間部位13以外の部位にて、第1の電極21との固定部の近傍および第2の電極22との固定部の近傍に設けられている。
【0072】
それによれば、回路基板10において固定部間部位13の外側の部位においても、当該部位に発生した膨張・収縮が貫通穴14により分断される。そのため、図9中の矢印Yに示されるように、回路基板10においてはんだ30に与える応力の主たる発生範囲が、さらに縮小される、上記応力の低減効果がさらに高められる。
【0073】
図10は、本第4実施形態の他の例としての電子装置の概略断面構成を示す図である。図9の例では、貫通穴14の例を示したが、貫通穴14に代えて有底穴15としても、その効果は同様に発揮されることは明らかである。
【0074】
また、図11は、本第4実施形態のもう一つの他の例としての電子装置の概略平面構成を示す図である。本実施形態においては、貫通穴14でも有底穴15でもよいが、その開口形状としては、図11(a)に示されるように、丸穴形状でもよいし、図11(b)に示されるように、長穴形状でもよい。
【0075】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、回路基板10における固定部間部位13の一面11に、有底穴15いわゆる凹みや、または貫通穴14といった穴14、15を設けたが、この穴14、15に代えて、刃具などにより回路基板10の一面11に切り込みをいれたもの、いわゆる切れ目を設けてもよい。その場合も、固定部間部位13の膨張・収縮の度合が小さくなることが期待できる。
【0076】
また、電子部品20としては、一端側に第1の電極21、他端側に第2の電極22を有するものであればよいが、たとえばセラミックの超音波発振子などの3個以上の電極を有するものであってもよい。その場合でも、3個のうちの任意の2個の一方を第1の電極、他方を第2の電極として構成されたものとすることができる。
【0077】
また、回路基板10の一面11には、複数個の電子部品20が搭載されていてもよく、その場合には、個々の電子部品20について、上記各実施形態の穴14、15を設けた構成を適用すればよいものである。
【符号の説明】
【0078】
10 回路基板
10c ガラスクロス
10b エポキシ樹脂の層
11 回路基板の一面
13 回路基板の固定部間部位
14 貫通穴
15 有底穴
20 電子部品
21 電子部品の第1の電極
22 電子部品の第2の電極
30 はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板(10)と、前記回路基板(10)の一面(11)に搭載された電子部品(20)とを備え、
前記回路基板(10)の方が前記電子部品(20)よりも線膨張係数が大きいものであり、
前記電子部品(20)は、一端側に第1の電極(21)、当該一端側に対向する他端側に第2の電極(22)を有するものであり、
前記電子部品(20)は、前記第1の電極(21)、前記第2の電極(22)にてそれぞれ、前記回路基板(10)に対してはんだ(30)を介して固定されている電子装置において、
前記回路基板(10)のうち前記第1の電極(21)との固定部と、前記第2の電極(22)との固定部との間に位置する部位である固定部間部位(13)には、前記一面(11)に穴(14、15)もしくは切れ目が設けられていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記穴は、前記回路基板(10)を前記一面(11)から厚さ方向に貫通する貫通穴(14)であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記穴は、前記回路基板(10)の一面(11)に開口しつつ底を有する有底穴(15)であることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記穴は、内面に導体が存在せずに、前記回路基板(10)のベースとなる絶縁材が露出した面とされたものであることを特徴とする請求項2または3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記回路基板(10)は、内部にガラスクロス(10c)を有するとともに前記ガラスクロス(10c)よりも前記一面(11)側にエポキシ樹脂の層(10b)を設けてなるものであり、
前記有底穴(15)は、前記回路基板(10)の前記一面(11)から前記エポキシ樹脂の層(10b)のみを貫通して前記ガラスクロス(10c)を底とするものとされていることを特徴とする請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記穴(14、15)もしくは前記切れ目は、前記固定部間部位(13)にて前記第1の電極(21)との固定部に隣り合う部位、および、前記第2の電極(22)との固定部に隣り合う部位に位置していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項7】
前記穴(14、15)は、前記第1の電極(21)から前記第2の電極(22)へ向かう方向とは直交する方向に延びる長穴形状のものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項8】
さらに、前記穴(14、15)もしくは前記切れ目は、前記回路基板(10)のうち前記固定部間部位(13)以外の部位にて、前記第1の電極(21)との固定部の近傍および前記第2の電極(22)との固定部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−156195(P2012−156195A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12052(P2011−12052)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】