説明

電子部品と放熱部材および、それらを使用した半導体装置の製造方法

【課題】放熱部材と熱伝導部材とを密着させ、電子部品の放熱効果を向上させ、周囲の回路基板、電子部品等の短絡障害を防止して、部品点数、部品コスト、製造工数の増加を抑制することのできる新しい電子部品装置を提供する。
【解決手段】電子部品2に平板状金属体42あるいは凹状金属体41の一方を蒸着処理または鍍金処理により形成し、放熱部材3に平板状金属体42あるいは凹状金属体41の他方を蒸着処理または鍍金処理により形成し、その後に、液状金属43を前記凹状金属体41の凹部に充填し、液状金属43と平板状金属体42及び凹状金属体41の一部とを固溶体にしたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品と放熱部材および、それらを使用した半導体装置の製造方法に係り、特に電子部品と放熱部材とを連結する熱伝導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器装置は高機能、高性能を要求されている。そのために機器装置に使用される電子部品は高機能化、高速化になっている。
【0003】
一方、この電子部品は発熱量が増加し、この熱が誤動作を招き、性能を低下させている。従って、この熱を効率良く放熱し冷却する必要がある。
【0004】
一般的な電子部品の冷却技術としては電子部品とヒートシンクとを圧着し、電子部品が発生した熱をヒートシンクに伝導し、ヒートシンクから空気中に放熱するものが有る。しかしこの冷却技術は電子部品とヒートシンクとの熱伝導の密着の度合いが極めて少ない。
【0005】
これを改善した技術として例えば、特開2002−30217号公報が有る。この公報に記載された冷却技術は、熱を伝導するフィラーを混入した熱伝導性樹脂を介して電子部品とヒートシンクとを圧着させることで電子部品とヒートシンクとの熱伝導の密着の度合いを増加させて、放熱効果を向上させるものである。
【0006】
その他の冷却技術としては特開昭63−102345号公報が有る。この公報に記載された冷却技術は熱伝導性合金を介して電子部品と放熱体とを接合し、そして電子部品とヒートシンクとの熱伝導の密着の度合いを増加させることで熱伝導率を向上させるものである。この熱伝導性合金は金属のインジュウムと液状金属のガリウムとの半凝固状態の金属である。
【0007】
更に特願2002−140316号公報が有る。この公報に記載された冷却技術は金属のインジュウムと液状金属との熱伝導性合金を介して電子部品と放熱体とを接合し熱伝導率を向上させるものである。この熱伝導性合金は液体であり、この液体金属が流出するのを防止する突堤を設けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した特開2002−30217号公報に記載された技術は熱伝導性樹脂を介して電子部品と放熱体であるヒートシンクとを圧着するものである。このため熱伝導率が低いという問題を有する。また特開昭63−102345号公報に記載された技術は半凝固状態の金属を介して電子部品とヒートシンクとを密着させ、電子部品とヒートシンクとを接続する。従って半凝固状態の金属が流出、散乱し周囲の回路基板、電子部品の短絡を招くことになる。そして特願2002−140316号公報に記載された技術は液体金属が流出するのを防止する突堤を設けたため、この突堤の存在が部品点数、部品コスト、製造工数を増加する。
【0009】
本発明の目的は、放熱体と熱伝導性部材との熱伝導の密着の度合いを増加させ、電子部品と放熱体との熱伝導率を向上させる。結果として電子部品の放熱効果を向上させる。更に周囲の回路基板、電子部品等の短絡障害を防止して、そして、部品点数、部品コスト、製造工数の増加を抑制することのできる新しい電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は熱伝導部材を介して、電子部品と放熱部材とを連結した電子部品装置であって、具体的には、電子部品と放熱部材とに設けられた熱伝導部材の金属体は蒸着処理または鍍金処理にて形成されている。そして各金属体は液体金属により固溶体として互いを固着している。従って金属体と液状金属体との固溶体である熱伝導部材を介して電子部品と放熱部とが連結される。結果として電子部品と熱伝導部材との熱伝導用の密着面積を増加させ、且つ放熱部材と熱伝導部材との熱伝導用の密着面積を増加させ、更に熱伝導部材の金属体と液状金属体との熱伝導率を向上させる。このために電子部品の放熱効果を向上させることができる。且つ金属体と液状金属体との固溶体は常温で行なわれるために、電子部品に熱ストレスを与えることがない。
【0011】
更に凹状金属体は底部と周縁部位の突起状堤防部とが一体に設けられ、液状金属体は凹部に充填され固溶体にされている。従って液状金属体は凹部に密封され、該部位内から流出することが無い。このため周囲の回路基板、電子部品等の短絡障害を防止できる。更に突起状堤防部と底部との金属体が一体形成されているので、別部品を用意することなく部品点数の削減と、製造工数の増加を抑制できる。
【0012】
金属体は元素記号Inから成り、液状金属体はGa、Ga−In合金、Ga−In−Sn合金、Ga−In−Zn合金、Ga−Sn合金、Ga−Zn合金の少なくとも1つから選ばれる。従って熱伝導部材を形成する金属体と液状金属とが凝固して固溶体になる。これにより熱伝導の密着の度合いを増加させ、熱伝導率を向上させる。結果として電子部品の放熱効果を向上させることができる。
【0013】
更に電子部品または放熱部材に設けられる金属体は蒸着処理または鍍金処理にて形成されている。従って、電子部品と熱伝導部材との熱伝導の密着の度合いを増加させ且つ、放熱部材と熱伝導部材との熱伝導の密着の度合いを増加させる。結果として電子部品の放熱効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
電子部品の放熱効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係る電子部品装置の構造を説明する図である。
【0017】
1は電子部品装置、2は半導体部品などの電子部品、3はアルミなどの熱伝導率の良好な金属よりなる放熱体、4は熱伝導体、41は凹状の金属体、411は凹状金属体の突起状堤防部、412は凹状金属体の底部、42は平板状の金属体、43は液状金属である。
【0018】
この電子部品装置1は、熱伝導体4を介して電子部品2と放熱体3とが連結されている。そして熱伝導体4は凹状金属体41と平板状の金属体42と液状金属43とから構成されている。この凹状金属体41は底部412と周縁部位に突起状堤防部411を一体構成に備えている。この周縁部位の突起状堤防部411と底部412とは鍍金処理にて一体形成されている。
【0019】
具体的には熱伝導体4の凹状金属体41は鍍金にて電子部品2の上部に形成されている。熱伝導体4の平板状の金属体42は鍍金にて放熱体3の下部に形成されている。そして液状金属43は凹状金属体41の突起状堤防部411に囲まれた底部412に充填されて
いる。液状金属43としては熱伝導率の高い例えばGa系合金を使用できる。そして凹状金属体41、平板状の金属体42としては例えば、前述の液状金属43と金属体41、42とが互いに固溶体化が可能であり、固溶体化した時にも熱伝導率の低下しない金属が良く元素記号のIn又はこの合金から選出される。
【0020】
この電子部品装置1は回路基板に実装されて稼働する。この電子部品装置1は稼働時に発熱する。この熱は熱伝導体4を伝熱し放熱体3から放熱される。従って電子部品は冷却され適温に保たれ安定して稼働する。
【0021】
図2の電子部品装置を製造する鍍金装置の概略図を参照して説明する。この鍍金装置は浴槽内に鍍金液を満たしアノード極に鍍金物、例えばInを設けて、カソード極に被鍍金物を設けることができる。そしてアノード極とカソード極との間に所定値の電流を印加できる。
【0022】
図3を参照して電子部品の製造方法を説明する。
(1)まず電子部品2を用意する。そしてこの電子部品2の鍍金処理領域以外をマスクする。例えばレジスト樹脂を塗布する。その後に電子部品2を鍍金装置のハンガーに取り付ける。そして鍍金装置の浴槽内に載置する。
(2)次に酸浸漬処理する。処理条件は具体的に酸液が濃度約10%の硫酸であり、液温が室温、例えば15度Cに保たれている。そして約30秒間、鍍金浴槽内でストローク約75mm程度の振幅で緩やかに揺動させる。そして、鍍金処理領域の油膜、汚れを無くした後に水洗して酸液を洗い流す。
(3)続いてNi鍍金処理する。鍍金条件は、例えばワット浴が約pH4.5、電流密度が4A/平方dm 液温が約50度Cである。そして攪拌とストローク約75mm程度の振幅で緩やかに揺動させるながら下地鍍金する。その後に水洗して鍍金液を洗い流す。
(4)次に酸浸漬処理する。処理条件は具体的に、酸液が濃度約10%のダインシルバー(大和化成株製の製品名−ACC)であり、液温は室温に保たれている。そして約30秒間鍍金浴槽内でストローク約75mm程度の振幅で緩やかに揺動させる。そして、鍍金処理領域の油膜、汚れを無くす。この後に水洗して酸液を洗い流す。
(5)次にストライクIn鍍金処理する。鍍金処理条件は例えば鍍金液がDAININ−PL30(大和化成株製 主剤メタンスルホン酸インジウム)、電流密度が約7.5A/平方dm 液温が約50度Cである。そして攪拌とストローク約75mm程度の振幅で緩やかに揺動させながらストライク鍍金する。
(6)その後にIn鍍金処理する。鍍金処理条件は例えば鍍金液がDAININ−PL30(大和化成株製 主剤メタンスルホン酸インジウム)、電流密度が約0.5A/平方dm 液温が約50度Cで攪拌とストローク約75mm程度の振幅で緩やかに揺動させながら鍍金する。このIn鍍金の厚みは約0.1mmである。従って電子部品2のレジスト樹脂を塗布された領域以外に鍍金が平板状に設けられた。
(7)次に、該鍍金の平板上にレジスト樹脂を塗布する。レジスト樹脂を塗布する領域は電子部品の周縁部位の突起状堤防部を除く領域である。このレジスト樹脂は新日鉄化学株製のPDF100を使用する。ラミネート条件は温度が約80度C、真空度が約0.3MPaである。
(8)その後にIn鍍金処理する。処理条件は例えば鍍金液がDAININ−PL30(大和化成株製 主剤メタンスルホン酸インジウム)であり、電流密度が約0.5A/平方dm 液温が約50度Cである。そしてエアー攪拌とストローク約75mm程度の振幅で緩やかに揺動させるながら鍍金する。このIn鍍金の厚みは約0.02mmである。従って電子部品2に熱伝導体4の凹状の金属体41を形成できた。形状は底部の厚みが約0.1mm、凹状金属体41の突起状堤防部411の内部高さ約0.02mm、幅約5mmである。
【0023】
このように鍍金処理にて電子部品2は凹状金属体41を形成されるために熱伝導の密着の度合いが良い。且つこの凹状金属体41の周縁部位の突起状堤防部411と底部412とは鍍金処理にて一体に形成される。このために別部品を用意することなく部品点数の削減と、製造工数の増加を抑制できる。
(9)その後に上記製造工程で使用されたレジスト樹脂を剥離する。剥離液を使用すると容易に行なうことができる。
(10)次に放熱体3に平板状の金属体42が形成される。
【0024】
図4を参照して放熱体の製造方法を説明する。製造方法は上述した鍍金技術を使用して平板状の金属体42を形成する。上述したように放熱体3は鍍金処理されて放熱体3の底部に平板状の金属体42を形成される。この鍍金処理のために放熱体3と金属体42との熱伝導の密着の度合いが良い。
(11)次に電子部品2に形成された突起状堤防部に囲まれた部位に液状金属43、具体的には液状のガリウム、元素記号のGaを充填する。充填方法はディスペンサー装置にて行なう。
(12)該電子部品2と上述した放熱体3とを合体する。従って、金属体41、42と液状金属43との双方が凝固して固溶体になる。固溶体化は常温で数十時間放置すれば良い。このために電子部品に熱ストレスを与えることがない。液状金属43は固溶体になるまでの間は液状であるが、突起状堤防部411に囲まれているために周囲に漏洩することがない。固溶体になると金属体41、42と液状金属43とが固着されて電子部品装置1となる。
【0025】
その他の実施例
上記の実施例では液状金属にGaを使用した例を説明した。しかし、その他の液状金属として75.5%Ga−24.5%In、62%Ga−25%In−13%Sn、67%Ga−29%In−4%Zn、92%Ga−8%Sn、95%Ga−5%Zn合金を使用しても同様な効果が得られる。
【0026】
上記実施例では電子部品2側に凹状金属体41を、放熱体3側に平板状の金属体42を形成した。しかし電子部品装置は回路基板に色々な状態で搭載される。この搭載の状態により、電子部品2側に平板状の金属体42を、放熱体3側に凹状金属体41を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したとおり、本発明のような電子部品装置は、電子部品と熱伝導性部材との熱伝導の密着の度合いを増加させ、且つ放熱体と熱伝導性部材との熱伝導の密着の度合いを増加させる。結果として電子部品の放熱効果を向上させることができる。更に周囲の回路基板、電子部品等の短絡障害を防止して、更に部品点数および、製造工数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電子部品装置の説明図である。
【図2】本実施例に係る電子部品装置を製造する鍍金装置の概略図である。
【図3】本実施例に係る電子部品の概略図である。
【図4】本実施例に係る放熱体の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導部材を介して、電子部品と放熱部材とを連結した電子部品装置の製造方法において、
前記電子部品に平板状金属体あるいは凹状金属体の一方を蒸着処理または鍍金処理により形成し、
前記放熱部材に平板状金属体あるいは凹状金属体の他方を蒸着処理または鍍金処理により形成し、
その後に、液状金属を前記凹状金属体の凹部に充填し、
液状金属と平板状金属体及び凹状金属体の一部とを固溶体にしたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属体は元素記号Inから成り、
液状金属はGa、Ga−In合金、Ga−In−Sn合金、Ga−In−Zn合金、Ga−Sn合金、Ga−Zn合金の少なくとも1つから成ることを特徴とする電子部品装置の製造方法。
【請求項3】
一方に端子面を、他方に伝熱面を有し、該伝熱面に平板状金属体あるいは凹状金属体の一方を蒸着処理または鍍金処理により形成したことを特徴とする電子部品。
【請求項4】
一方に放熱フィンを、他方に伝熱面を有し、該伝熱面に平板状金属体あるいは凹状金属体の他方を蒸着処理または鍍金処理により形成したことを特徴とする放熱部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−306202(P2008−306202A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189078(P2008−189078)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【分割の表示】特願2004−568498(P2004−568498)の分割
【原出願日】平成15年2月24日(2003.2.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】