説明

電子部品実装構造

【課題】電子部品の各端子を略均一にバンプ接続することができる、電子部品実装構造を提供する。
【解決手段】積層された絶縁層11〜14と、絶縁層11〜14に配置された導体パターンとを備えた多層基板10に、バンプ54,55を介して少なくとも一つの電子部品50をフリップチップボンディングにより実装する。絶縁層11〜14の積層方向に透視すると、多層基板10の絶縁層11〜14のうちバンプ54,55に最も近い第1の絶縁層11に形成された全ての貫通孔11a,11bが、電子部品50を実装するための全てのバンプ54,55から離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品実装構造に関し、詳しくは、電子部品をフリップチップボンディングにより多層基板に実装した電子部品実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路の高密度化、ユニット化等のために、多層基板に電子部品を実装した電子部品実装構造が利用されている。
【0003】
例えば図5に示す積層型セラミック電子部品121は、配線基板138上に形成された導体ランド139に、多層基板123の端子127が半田140により接続されている。多層基板123は、積層された複数のセラミック層122を含み、内部には、セラミック層122の間に配置された内部導体膜(導体パターン)128や、セラミック層122を貫通するビアホール導体129,130が形成されている。多層基板123の上面に形成された端子125には、ケース133や電子部品131,132が接続されている。電子部品131の端子電極134は、導電性接着剤135により接続されている。電子部品132は、金バンプ136により接続され、樹脂137によって封止されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、電子部品には、中空構造を有するものがある。例えば図6に示す加速度センサ1は、台座2に、中空構造を有するセンサチップ4が接着されている。センサチップ4には空間9が形成され、空間9中に、ビーム6によって主要部7が浮いた状態で支持されている。ビーム6には、矢印1aで示した方向の主要部7の変位量を検出するため、ピエゾ抵抗8が形成されている。空間9の周囲に延在するセンサチップ4の外枠5は、接着剤3により台座2に接着されている。センサチップ4の外枠5に反りがあると、電気特性のばらつき等が生じる(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−368426号公報
【非特許文献1】「姿を消す車載半導体」、日経エレクトロニクス3月14日号、日経BP社、2005年3月14日、第895号、p.108−109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中空構造を有するセンサチップを接着する台座は、小型化、低背化を図るため薄くすることが望ましい。台座を薄くした中空構造を有する電子部品を多層基板に実装する場合、各端子の接続が不均一であると、外枠のひずみによる特性のばらつきや、実装の信頼性の低下を招く。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み、電子部品の各端子を略均一にバンプ接続することができる、電子部品実装構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した電子部品実装構造を提供する。
【0008】
電子部品実装構造は、積層された絶縁層と、該絶縁層に配置された導体パターンとを備えた多層基板に、バンプを介して少なくとも一つの電子部品をフリップチップボンディングにより実装した電子部品実装構造である。前記絶縁層の積層方向に透視すると、前記多層基板の前記絶縁層のうち前記バンプに最も近い第1の絶縁層に形成された全ての貫通孔が、前記電子部品を実装するための全ての前記バンプから離れている。
【0009】
上記構成において、絶縁層の貫通孔には、例えば導体パターンに電気的に接続された層間接続導体等が配置される。第1の絶縁層において、貫通孔が形成された部分以外の部分は略平坦であり、貫通孔が形成された部分とそれ以外の部分との間には段差が生じる。これに対応して、電子部品を実装する面には凹凸が生じる。
【0010】
上記構成によれば、多層基板に電子部品を実装するための全てのバンプは、第1の絶縁層の貫通孔が形成された部分の直上部分以外の略平坦な部分に配置され、全てのバンプの高さが揃う。そのため、電子部品をフリップチップボンディングにより実装するとき、電子部品の各端子には略均一に力が作用するので、各端子を略均一にバンプ接続することができる。
【0011】
したがって、実装された電子部品に不均一なストレスを与えることを防ぎ、実装時の不均一なひずみによる電子部品の特性のばらつき等を防ぐことができる。また、バンプごとの接続強度のばらつきが小さくなるので、信頼性の高い電子部品の実装が可能となる。
【0012】
好ましくは、前記絶縁層の積層方向に透視すると、前記多層基板の前記絶縁層のうち前記第1の絶縁層の前記電子部品とは反対側に隣接する第2の絶縁層に形成された全ての貫通孔が、前記電子部品を実装するための全ての前記バンプから離れている。
【0013】
積層基板の電子部品を実装するための全てのバンプは、第2の絶縁層の貫通孔により凹凸が形成される可能性のある部分から離れて、配置される。したがって、電子部品の実装時の不均一なひずみによる、電子部品の特性のばらつき等を、より確実に防ぐことができ、一層、信頼性の高い電子部品の実装が可能となる。
【0014】
好ましくは、前記絶縁層の積層方向に透視すると、前記多層基板の前記絶縁層に形成された全ての貫通孔が、前記電子部品を実装するための全ての前記バンプから離れている。
【0015】
積層基板の電子部品を実装するための全てのバンプは、積層基板の絶縁層の貫通孔により凹凸が形成される可能性のあるすべて部分から離れて、配置される。したがって、電子部品の実装時の不均一なひずみによる、電子部品の特性のばらつき等を、より一層、確実に防ぐことができ、さらに一層、信頼性の高い電子部品の実装が可能となる。
【0016】
好ましくは、前記電子部品は、その内部に空間を有し、主要部が前記空間に浮いた状態で変位可能に支持されている。
【0017】
この場合、電子部品はバンプ接続の不均一に対して敏感であるので、前述した各構成は、特に好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子部品実装構造は、電子部品の各端子を略均一にバンプ接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0020】
図1に模式的に示したように、多層基板10は、複数の絶縁層11〜14と、複数の導電層21〜25とが交互に配置されている。なお、絶縁層と導電層の層数は、任意に選択することができる。
【0021】
各導電層21〜25には、導電材料を用いて所定の導体パターン(不図示)が形成されている。絶縁層11〜14の適宜位置には、貫通孔(ビアホール)11a,11b;12a,12b;13aが形成され、貫通孔11a,11b;12a,12b;13aの内部には、層間接続導体(ビアホール導体)31〜34が配置されている。ビアホール導体31〜34は、1又は2以上の絶縁層11〜14を貫通し、導電層21〜25の導体パターン(不図示)に電気的に接続されている。
【0022】
図2に示すように、多層基板10の表面の凹凸状態を測定すると、符号40を付して模式的に図示したように、絶縁層の1層目11に形成されたビアホール導体31による凸部41、絶縁層の2層目12に形成されたビアホール導体32による凸部42、絶縁層の1、2層目11,12に形成されたビアホール導体34による凸部43が、それぞれ形成されている。凸部41〜43以外の部分44は、平坦である。
【0023】
そこで、図3に示すように、多層基板10の表面に電子部品50をフリップチップボンディングにより実装するための全てのバンプ54,55は、凸部41〜43から離れた平坦な部分44に配置し、全てのバンプ54,55の直下部分に、絶縁層の1層目11(すなわち、第1の絶縁層)に形成された貫通孔11a,11bと、絶縁層の2層目12(すなわち、第2の絶縁層)に形成された貫通孔11a,11bが来ないようにする。換言すれば、絶縁層11〜14の積層方向(すなわち、図1〜図4において上下方向)に透視すると、絶縁層の1、2層目11,12に形成された全ての貫通孔11a,11b;12a,12bが、電子部品50を実装するための全てのバンプ54,55から離れるようにする。
【0024】
一般には、例えば図4に示すように、ビアホール導体34の直上、すなわち凸部43の上にバンプ57を設けることが多い。しかし、端子52の個数が多い電子部品50の場合、すべてのバンプを凸部の上に設けるようとすると、絶縁層の1層目11に多くの貫通孔を互いに接近して形成しなければならず、加工が困難になる。そのため、凸部41〜43がない平坦な部分44にもバンプ56を配置せざるを得ない。
【0025】
このように、平坦な部分44と凸部43とにバンプ56,57を設けた場合、バンプ56,57の高さには差δが生じる。そのため、熱と荷重と超音波振動を加えるフリップチップボンディングによって電子部品50を多層基板10に実装する際、電子部品50の各端子52に作用する力は不均一になる。電子部品50が、中空構造を有する電子部品(すなわち、内部に空間を有し、主要部がその空間に浮いた状態で変位可能に支持されているセンサやスイッチ等の電子部品)である場合、電子部品50の内部に生じた局所的なひずみによって、電子部品50の特性にばらつきが生じる。また、電子部品50と多層基板10との接続強度がバンプ56,57ごとにばらつくため、実装の信頼性の低下を招く。
【0026】
一方、図3に示したように、凸部41〜43から離れた平坦な部分44に、電子部品50を実装するための全てのバンプ54,55を配置すると、バンプ54,55の高さが揃う。そのため、電子部品50をフリップチップボンディングにより多層基板10に実装するとき、電子部品50の各端子52には略均一に力が作用し、電子部品50の各端子52での接続状態が略均一になる。つまり、多層基板10に、電子部品50の各端子52を略均一にバンプ接続することができる。
【0027】
その結果、電子部品50の内部に不均一なストレスを与えることがなくなるので、電子部品50が中空構造の電子部品であっても、特性にばらつきが生じることを防ぐことができる。また、バンプ54,55ごとの接続強度のばらつきが小さくなるので、信頼性の高い実装が可能となる。
【0028】
例えば、厚さ約0.4mmのガラス基板に、厚さ約50〜60μmの中空構造を有するセンサチップが接合され、16個の端子を有する角速度センサ(MEMSジャイロセンサ)を、多層基板に実装する場合、バンプ高さのばらつきは、多層基板の反り程度まで小さくすることができるので、特性のばらつきを防ぐとともに、実装の信頼性を高めることができる。
【0029】
多層基板によっては、絶縁層の2層目に形成された貫通孔(ビアホール)32があっても、多層基板の実装面に凸部42が実質的に形成されない(電子部品50の実装に実質的に影響を与えない)ことがある。この場合には、電子部品50をフリップチップボンディングするためのバンプ54,55の直下には、絶縁層の1層目11に形成されたに貫通孔11a,11bのみが全くないようにするだけでよい。換言すれば、絶縁層11〜14の積層方向に透視すると、絶縁層の1層目に形成される全ての貫通孔が、電子部品50を実装するための全てのバンプ54,55から離れるようにすればよい。
【0030】
逆に、絶縁層の1、2層目より内側に形成された貫通孔(ビアホール)の影響で、多層基板の実装面に凸部が形成されることがある。この場合には、電子部品をフリップチップボンディングするためのバンプの直下には、貫通孔が全くないようにすることが好ましい。換言すれば、絶縁層11〜14の積層方向に透視すると、絶縁層11〜14に形成される全ての貫通孔11a,11b;12a,12b;13aが、電子部品50を実装するための全てのバンプ54,55から離れていることが、好ましい。
【0031】
多層基板の実装面に絶縁層の貫通孔によって凹部が形成される場合も、多層基板の実装面に絶縁層の貫通孔によって凸部が形成される場合と同様に、実装面から適宜層数分の絶縁層の貫通孔が、バンプの直下にないようにすればよい。すなわち、絶縁層の積層方向に透視すると、実装面から適宜層数分の絶縁層に形成される貫通孔が、電子部品を実装するための全てのバンプから離れているようにすればよい。
【0032】
なお、本発明の電子部品実装構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】多層基板の模式断面図である。(実施例)
【図2】多層基板の凹凸の説明図である。(実施例)
【図3】多層基板への電子部品の実装の説明図である。(実施例)
【図4】多層基板への電子部品の実装の説明図である。(比較例)
【図5】多層基板の断面図である。(従来例)
【図6】中空構造を有する電子部品の説明図である。(従来例)
【符号の説明】
【0034】
10 多層基板
11〜14 絶縁層
11a,11b 貫通孔
12a,12b 貫通孔
13a 貫通孔
40 表面
41,42,43 凸部
50 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された絶縁層と、該絶縁層に配置された導体パターンとを備えた多層基板に、バンプを介して少なくとも一つの電子部品をフリップチップボンディングにより実装した電子部品実装構造であって、
前記絶縁層の積層方向に透視すると、前記多層基板の前記絶縁層のうち前記バンプに最も近い第1の絶縁層に形成された全ての貫通孔が、前記電子部品を実装するための全ての前記バンプから離れていることを特徴とする、電子部品実装構造。
【請求項2】
前記絶縁層の積層方向に透視すると、前記多層基板の前記絶縁層のうち前記第1の絶縁層の前記電子部品とは反対側に隣接する第2の絶縁層に形成された全ての貫通孔が、前記電子部品を実装するための全ての前記バンプから離れていることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品実装構造。
【請求項3】
前記絶縁層の積層方向に透視すると、前記多層基板の前記絶縁層に形成された全ての貫通孔が、前記電子部品を実装するための全ての前記バンプから離れていることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品実装構造。
【請求項4】
前記電子部品は、その内部に空間を有し、主要部が前記空間に浮いた状態で変位可能に支持されていることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の電子部品実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−180248(P2007−180248A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376589(P2005−376589)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】