説明

電子部品製造装置、方法及びプログラム

【課題】バンプの凝固を検出する精度を高めることにより、バンプの接合品質を向上できる、電子部品製造装置等を提供する。
【解決手段】本発明の電子部品製造装置10は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段20と、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する電力測定器14と、電力測定器14によって測定された力fに基づき位置保持手段20による位置の保持を解放する制御部30と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚の基板がバンプで電気的かつ機械的に接続された構造を有する電子部品を製造するための電子部品製造装置等に関する。そのような「電子部品」としては、例えばフリップチップが実装されたプリント配線板などが挙げられる。また、ここでいう「基板」には、プリント配線板などの他にも半導体基板(すなわちフリップチップなどの半導体チップ)も含むものとする。「バンプ」には、はんだバンプの他に導電性樹脂から成るバンプも含むものとする。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器には大容量化、高速化、高密度実装化などが要求されており、これらの要求を満たすためにフリップチッブ工法が有効とされている。しかしながら、フリップチップ工法は、半導体チップに形成されたバンプを介して、半導体チップを実装基板の電極に直接接続するため、半導体チップや実装基板の反りにより発生する応力が直接バンプにかかってしまう。よって、バンプの接合品質や信頼性を向上させるためには、バンプにストレスを与えずに半導体チップと実装基板とを接合させる必要がある。
【0003】
バンプの加熱溶融により電子素子と実装基板とを電気的かつ機械的に接合する実装方法では、バンプ溶融中は、電子素子を把持している搭載ヘッドを、一定位置になるように位置制御している。その理由は、バンプの高さをコントロールするため、又はバンプが押しつぶされて電子素子若しくは実装基板の回路が短絡してしまうことを防止するためである。
【0004】
一方、バンプ溶融後の冷却工程では、電子素子を把持している搭載ヘッドと、実装基板をセットしている搭載ステージとの相対距離は、各部の熱収縮のために拡がっていく。そのため、バンプが凝固した後も、搭載ヘッドを一定位置になるように制御していると、バンプには引き伸ばされる方向に応力が発生する。この応力は、バンプ内のクラックの発生や、バンプの剥離の原因となる。そのため、冷却開始後、設定した時間が経過したら、搭載ヘッドを位置制御から圧力制御へ移行したり、電子部品の把持を解除したりすることにより、バンプにかかる引き伸ばし応力の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−107171号公報
【特許文献2】特開昭63−013663号公報
【特許文献3】特開平05−208267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、製造装置の状態や装置周辺の環境又は冷却手段のばらつきのため、冷却開始からバンプが凝固するまでの時間もばらついている。したがって、この技術では、冷却時のバンプに発生する引き伸ばし応力を完全に除去することができないため、バンプの接合品質を劣化させてしまうことになる。つまり、バンプの凝固を冷却開始後の経過時間で検出する技術では、バンプの凝固を検出する精度が低いため、バンプの接合品質を劣化させてしまうという問題があった。
【0007】
これに対し、バンプの凝固を、冷却開始後の経過時間ではなく、ヒータ温度によって検出する技術が知られている(例えば上記特許文献1〜3)。
【0008】
しかしながら、ヒータ温度はバンプ温度そのものではないので、ヒータ温度とバンプ温度とに差が存在する。また、バンプの温度を正確に検出できたとしても、はんだ組成のばらつきによりバンプの凝固温度もばらつくので、バンプの凝固を正確に検出できるとは限らない。したがって、バンプの凝固をヒータ温度によって検出する技術でも、やはりバンプの凝固を検出する精度が低いため、バンプの接合品質を劣化させてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、バンプの凝固を検出する精度を高めることにより、バンプの接合品質を向上できる、電子部品製造装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子部品製造装置は、
液状のバンプを二枚の基板で挟んだ状態で当該二枚の基板の重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段と、
前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定する凝固力測定手段と、
この凝固力測定手段によって測定された前記力に基づき、前記位置保持手段による前記位置の保持を解放する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電子部品製造方法は、
液状のバンプを二枚の基板とで挟んだ状態で当該二枚の基板の重なり合う方向での位置を保持し、
前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定し、
測定された前記力に基づき前記位置の保持を解放する、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電子部品製造プログラムは、
液状のバンプを二枚の基板で挟んだ状態で当該二枚の基板の重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段と、前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定する凝固力測定手段と、コンピュータとを備えた電子部品製造装置に用いられるプログラムであって、
前記凝固力測定手段によって測定された前記力に関するデータを入力する入力機能と、入力した前記データに基づき前記バンプが凝固したか否かを判断する判断機能と、前記バンプが凝固したと判断すると前記位置の保持を解放する制御信号を前記位置保持手段へ出力する出力機能とを、前記コンピュータに実現させるためのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バンプの凝固による力の発生を検出し、この力を検出すると二枚の基板の位置の保持を解放することにより、バンプの応力を的確に解放できるので、バンプの接合品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る第一実施形態の電子部品製造装置を示す構成図であり、バンプが溶融する前の状態である。
【図2】図1の一部を示す断面図であり、バンプが溶融してから凝固するまでの状態である。
【図3】図3[1]は、一般的な技術におけるバンプの冷却経過時間とアクチュエータの電力及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。図3[2]は、第一実施形態におけるバンプの冷却経過時間とアクチュエータの電力及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。
【図4】図4[1]は、第一実施形態における制御部の一例を示すブロック図である。図4[2]は、図4[1]の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る第二実施形態の電子部品製造装置を示す構成図であり、バンプが溶融する前の状態である。
【図6】図5の一部を示す断面図であり、バンプが溶融してから凝固するまでの状態である。
【図7】図7[1]は、一般的な技術におけるバンプの冷却経過時間と荷重測定器による荷重及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。図7[2]は、第二実施形態におけるバンプの冷却経過時間と荷重測定器による荷重及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。
【図8】図8[1]は、第二実施形態における制御部の一例を示すブロック図である。図8[2]は、図8[1]の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る第一実施形態の電子部品製造装置を示す構成図であり、バンプが溶融する前の状態である。図2は、図1の一部を示す断面図であり、バンプが溶融してから凝固するまでの状態である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0016】
本実施形態の電子部品製造装置10は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段20と、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する電力測定器14と、電力測定器14によって測定された力fに基づき位置保持手段20による位置の保持を解放する制御部30と、を備えたことを特徴とする。ここでいう「位置の保持を解放する」には、搭載ヘッド22による半導体チップ12の把持(吸着)を解放する場合や、位置の保持を解放して荷重制御に移行する場合なども含まれるものとする。
【0017】
また、位置保持手段20は、位置を保持する力を電力pによって得るアクチュエータ21を有する。電力測定器14は、アクチュエータ21へ供給される電力pを測定する。制御部30は、電力測定器14によって測定される電力pが設定値pthになったときに、アクチュエータ21による位置の保持を解放する。あるいは、制御部30は、電力pが設定値pthになったときに、搭載ヘッド22による半導体チップ12の把持(吸着)を解放するようにしてもよい。
【0018】
アクチュエータ21は、リニアモータであるが、他の種類のモータなどであってもよい。アクチュエータ21には制御部30から出力される制御信号に応じて電力が供給されており、その電力は実質的に電圧一定であるため電流によって測定できる。電力測定器14は、アクチュエータ21へ供給される電流を測定する電流測定器であるが、実質的に電流一定であれば電圧測定器などであってもよい。バンプ11は、はんだバンプであるが、導電性樹脂などからなるバンプでもよい。
【0019】
位置保持手段20は、アクチュエータ21の他に、搭載ヘッド22、上下動機構23、位置測定器24、ステッピングモータ25、ねじ送り機構26、及び制御部30の機能の一部等から構成されている。搭載ヘッド22は、真空吸着によって半導体チップ12を保持するとともに、ヒータによって半導体チップ12を加熱する。上下動機構23は、アクチュエータ21から発生する力によって、搭載ヘッド22を上方又は下方(Z軸方向)へ動かす。位置測定器24は、例えば直線型ポテンショメータ、インダクトシン又はリニアエンコーダなどであり、搭載ヘッド22などの位置情報を制御部30へ出力する。アクチュエータ21及び上下動機構23が微調整用であるのに対して、ステッピングモータ25及びねじ送り機構26は粗調整用である。制御部30は、位置測定器24から搭載ヘッド22などの位置情報を入力し、半導体チップ12と実装基板13との位置が一定になるようにアクチュエータ21へ制御信号を出力する(位置制御)。なお、本実施形態では、アクチュエータ21としてボイスコイルモータ(VCM)とリニアガイドとから成るリニアモータを用い、位置測定器24としてリニアエンコーダを用いている。粗調整用のステッピングモータ25及びねじ送り機構26は、省略してもよい。
【0020】
電子部品製造装置10には、位置決め手段40が付設されている。位置決め手段40は、実装基板13を載置及び加熱する搭載ステージ41、搭載ステージ41をX軸方向及びY軸方向へ動かすXYステージ42、制御部30の機能の一部等から構成されている。
【0021】
また、電子部品製造装置10には、搭載ヘッド22などに加わる荷重を測定する荷重測定器15が付設されている。制御部30は、荷重測定器15からから搭載ヘッド22などの荷重情報を入力し、この荷重が一定になるようにアクチュエータ21へ制御信号を出力する(荷重制御)。なお、荷重測定器15は省略してもよい。
【0022】
図2に示すように、半導体チップ12には電極12aが設けられ、実装基板13には電極13aが設けられている。バンプ11は、あらかじめ半導体チップ12の電極12aに設けられており(図1)、溶融及び凝固することにより電極12aと電極13aとを電気的かつ機械的に接続する(図2)。
【0023】
なお、特許請求の範囲における「二枚の基板」、「凝固力測定手段」及び「制御手段」は、それぞれ一例としての「半導体チップ12及び実装基板13」、「電力測定器14」及び「制御部30」に相当する。
【0024】
図3[1]は、一般的な技術におけるバンプの冷却経過時間とアクチュエータの電力及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。図3[2]は、第一実施形態におけるバンプの冷却経過時間とアクチュエータの電力及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。次に、図1乃至図3に基づき、電子部品製造装置10の作用及び効果を説明する。
【0025】
アクチュエータ21は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で、半導体チップ12と実装基板13とのZ軸方向における位置を保持する。ここで、液状のバンプ11が凝固すると、バンプ11、半導体チップ12、実装基板13等の収縮によって、半導体チップ12と実装基板13との距離dを縮めようとする力fが発生する。すると、アクチュエータ21は、力fに抗して半導体チップ12と実装基板13とを現在の位置に維持しようとするので、より多くの電力pを必要とする。つまり、液状のバンプ11が凝固する→力fが発生する→アクチュエータ21の電力pが増加する、という関係が成り立つ。ゆえに、図3[2]に示すように、アクチュエータの21の電力pを電力測定器14で測定することによって、バンプ11の凝固による力fを間接的に測定することができる。
【0026】
このまま力fが発生した状態で、半導体チップ12と実装基板13とを現在の位置に維持し続けようとすると、その反作用としてバンプ11に引き伸ばし応力f’が加わることにより、バンプ11の接合品質を劣化させてしまう。そこで、制御部30は、電力測定器14によって測定される電力pが設定値pthになったときに、アクチュエータ21による位置の保持を解放する。その結果、バンプ11の応力f’が解放される。
【0027】
半導体チップ12と実装基板13との距離dを縮めようとする力fは、バンプ11が凝固しない限り発生しないので、冷却開始後の経過時間やヒータ温度に比べて、的確にバンプ11の凝固を反映している。したがって、バンプ11の応力f’を的確に解放できるので、バンプ11の接合品質を向上できる。
【0028】
すなわち、電子部品製造装置10によれば、バンプの11の凝固による力fの発生をアクチュエータ21の電力pを介して検出し、この力fを検出すると半導体チップ12と実装基板13との位置の保持を解放することにより、バンプ11の応力f’を的確に解放できるので、バンプ11の接合品質を向上できる。
【0029】
本実施形態の電子部品製造方法は、電子部品製造装置10の動作として実現されている。すなわち、本実施形態の電子部品製造方法は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との位置を保持し、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定し、測定された力fに基づき位置の保持を解放する、ことを特徴とする。
【0030】
また、位置の保持を解放する力を電力pによって得るアクチュエータ21を用い、アクチュエータ21へ供給される電力pを電力測定器14で測定することを介して、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定し、電力測定器14によって測定される電力pが設定値pthになったときに、アクチュエータ21による位置の保持を解放する。
【0031】
図4[1]は、本実施形態における制御部の一例を示すブロック図である。図4[2]は、図4[1]の制御部の動作を示すフローチャートである。次に、図1乃至図4に基づき、本実施形態の電子部品製造プログラムについて説明する。
【0032】
制御部30がコンピュータであるとき、制御部30の機能は本実施形態の電子部品製造プログラムによって実現できる。すなわち、本実施形態の電子部品製造プログラムは、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段20と、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する電力測定器14と、コンピュータから成る制御部30と、を備えた電子部品製造装置10に用いられる。そして、本実施形態の電子部品製造プログラムは、電力測定器14によって測定された力fに関するデータaを入力する入力機能(ステップ101)と、入力したデータaに基づきバンプ11が凝固したか否かを判断する判断機能(ステップ102)と、バンプ11が凝固したと判断すると位置の保持を解放する制御信号bを位置保持手段20へ出力する出力機能(ステップ103)とを、制御部30に実現させるためのものである。
【0033】
位置保持手段20は、位置を保持する力を電力pによって得るアクチュエータ21を有する。電力測定器14は、アクチュエータ21へ供給される電力pを測定することを介して、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する。このとき、判断機能(ステップ102)は、電力測定器14によって測定される電力pが設定値pthになったときに、バンプ11が凝固したと判断する。
【0034】
図4[1]に示すように、制御部30は、CPU31、ROM32、RAM33、入出力インタフェース34等から成る一般的なマイクロコンピュータである。入出力インタフェース34には、電力測定器14及びアクチュエータ21以外に、その他の機器35も接続されている。制御部30は、その他の機器35を制御する機能も有している。CPU31は、RAM33に格納されている本実施形態の電子部品製造プログラムの命令を一つずつ取り出し、これを解読して実行する。
【0035】
本実施形態の電子部品製造方法及び電子部品製造プログラムによれば、電子部品製造装置10と同様の作用及び効果を奏する。
【0036】
次に、本実施形態の電子部品製造装置10について、図1乃至図4に基づき更に詳しく説明する。
【0037】
まず、XYステージ42は、半導体チップ12のバンプ11と実装基板13の電極13aとの位置が一致するように、実装基板13を実装面に平行な方向に位置決めする。そして、アクチュエータ21は、搭載ヘッド22を搭載ステージ41方向へ移動させ、半導体チップ12のバンプ11と実装基板13の電極13aとを接触させる。その後、搭載ヘッド22及び搭載ステージ41の両者又は一方は、内蔵するヒータに電力を供給することにより、バンプ11の温度をその融点以上に加熱してバンプ11を溶融させる。バンプ11の溶融後は、半導体チップ12を保持している搭載ヘッド22は位置制御される。その理由は、バンプ11の高さをコントロールするため、又は、バンプ11が押しつぶされて半導体チップ12又は実装基板13の回路が短絡してしまうことを防止するためである。
【0038】
その後、搭載ヘッド22及び搭載ステージ41の両者又は一方は、内蔵するヒータへの電力供給を停止することにより、バンプ11を冷却してバンプ11を凝固させる。これにより、組立フローは完了する。しかし、この冷却工程では、バンプ11等の熱収縮によって、搭載ヘッド22と搭載ステージ41との相対距離が拡大していくという現象が起こる。そのため、搭載ヘッド22を位置制御したままでは、バンプ11が凝固すると、バンプ11には引き伸ばされる方向の応力が発生する。
【0039】
そこで、電子部品製造装置10では、冷却中におけるアクチュエータ21の電力pを測定し、電力pが設定値pthに達したらバンプ11が凝固したと判断し、その瞬間に搭載ヘッド22の制御を位置制御から荷重制御に移行したり、半導体チップ12の保持を解除したりすることにより、バンプ11に加わる引き伸ばし応力を防止することが可能となる。
【0040】
すなわち、冷却工程において、バンプ11が溶融している状態では、熱収縮により搭載ヘッド22と搭載ステージ41との相対距離が拡がっても、バンプ11が溶融しているため搭載ヘッド22には外力が発生しない。そのため、アクチュエータ21へ供給される電流はほぼ一定となる。しかし、バンプ11が凝固してしまうと、熱収縮により搭載ヘッド22と搭載ステージ41との相対距離が拡がる。そのため、バンプ11には引き伸ばされる応力が発生し、その反力として、半導体チップ12を保持している搭載ヘッド22には搭載ステージ41へ近付けようとする外力が発生する。そして、その外力に反発して搭載ヘッド22の位置を保持するため、アクチュエータ21に流れる電流は増大する。よって、冷却工程中のアクチュエータ21に流れる電流をモニタし、その電流が増大した時がバンプ11が凝固したポイントであり、その瞬間に搭載ヘッド22を位置制御から圧力制御に移行したり、半導体チップ12の保持を解除したりすることにより、バンプ11に加わる引き伸ばし応力の発生を防止することが可能となる。
【0041】
また、位置制御中のアクチュエータ21の推力を観測し凝固点を検出する方法においては、電力測定器14を設置せずに、制御部30からリアルタイムに電流値を参照するようにしてもよい。この場合、アクチュエータ21の推力とアクチュエータ21に流す電流とは比例関係にあるので、制御部30がアクチュエータ21に流す電流を計算する。
【0042】
更に、本実施形態は、次のように説明することもできる。冷却工程では、各部の熱収縮により、半導体チップ12と実装基板13との間の距離dは徐々に大きくなっていく。ただし、凝固前ではバンプ11が液状となっているため、バンプ11に応力f’は発生しない。バンプ11が凝固点まで冷却され固体化すると、応力f’が発生する。その応力f’をロードセル等の荷重測定手段やオブザーバ等の制御手段等で検出したり、アクチュエータ21に流れる電流値を観測することによりバンプ11の固体化を検出し、その固体化を検出したら、アクチュエータ21を位置制御(例えば、位置測定器24からの位置データが一定となるように、アクチュエータ21に流す電流をコントロールする。)から圧力制御(例えば、一定電流をアクチュエータ21に流す。)に変更したり、半導体チップ12の把持(吸着)を解放したりすることにより、バンプ11にかかる応力f’を解放する。
【0043】
図5は、本発明に係る第二実施形態の電子部品製造装置を示す構成図であり、バンプが溶融する前の状態である。図6は、図5の一部を示す断面図であり、バンプが溶融してから凝固するまでの状態である。以下、これらの図面に基づき説明する。なお、図5乃至図8において第一実施形態と同じ部分は同じ符号を付す。
【0044】
本実施形態の電子部品製造装置50は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との位置を保持する位置保持手段20と、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する荷重測定器15と、荷重測定器15によって測定された力fに基づき位置保持手段20による位置の保持を解放する制御部60と、を備えたことを特徴とする。
【0045】
また、位置保持手段20は、位置を保持する力を電力によって得るアクチュエータ21を有する。荷重測定器15は、半導体チップ12すなわち搭載へッド22に加わる荷重wを測定する。制御部60は、荷重測定器15によって測定される荷重wが設定値wthになったときに、位置保持手段20すなわちアクチュエータ21による位置の保持を解放する。あるいは、制御部60は、荷重wが設定値wthになったときに、搭載ヘッド22による半導体チップ12の把持(吸着)を解放するようにしてもよい。
【0046】
荷重測定器15は、荷重を弾性体の歪みで測るロードセルであるが、ストレンゲージ式力センサなどであってもよい。また、荷重測定器15は搭載へッド22に加わる荷重wを測定するが、荷重wは半導体チップ12に加わる荷重でもある。また、荷重測定器15の代わりに、実装基板13すなわち搭載ステージ41に加わる荷重を測定する荷重測定器(図示せず)を用いてもよい。
【0047】
なお、特許請求の範囲における「二枚の基板」、「凝固力測定手段」及び「制御手段」は、それぞれ一例としての「半導体チップ12及び実装基板13」、「荷重測定器15」及び「制御部60」に相当する。
【0048】
図7[1]は、一般的な技術におけるバンプの冷却経過時間と荷重測定器による荷重及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。図7[2]は、第二実施形態におけるバンプの冷却経過時間と荷重測定器による荷重及びバンプ温度との関係の一例を示すグラフである。次に、図5乃至図7に基づき、電子部品製造装置50の作用及び効果を説明する。
【0049】
アクチュエータ21は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で、半導体チップ12と実装基板13とのZ軸方向における位置を保持する。ここで、液状のバンプ11が凝固すると、バンプ11、半導体チップ12、実装基板13等の収縮によって、半導体チップ12と実装基板13との距離dを縮めようとする力fが発生する。すると、アクチュエータ21は、力fに抗して半導体チップ12と実装基板13との現在の位置を保持しようとする。すると、この力fは、搭載ヘッド22に伝わるので、荷重測定器15で測定することができる。つまり、液状のバンプ11が凝固する→力fが発生する→搭載ヘッド22の荷重wが増加する、という関係が成り立つ。ゆえに、図7[2]に示すように、搭載ヘッド22の荷重wを測定することによって、バンプ11の凝固による力fを測定することができる。
【0050】
このまま力fが発生した状態で、半導体チップ12と実装基板13との現在の位置を保持し続けようとすると、その反作用としてバンプ11に引き伸ばし応力f’が加わることにより、バンプ11の接合品質を劣化させてしまう。そこで、制御部60は、荷重測定器15によって測定される荷重wが設定値wthになったときに、アクチュエータ21による位置の保持を解放する。その結果、バンプ11の応力f’が解放される。
【0051】
半導体チップ12と実装基板13との距離dを縮めようとする力fは、バンプ11が凝固しない限り発生しないので、冷却開始後の経過時間やヒータ温度に比べて、的確にバンプ11の凝固を反映している。したがって、バンプ11の応力f’を的確に解放できるので、バンプ11の接合品質を向上できる。
【0052】
すなわち、電子部品製造装置50によれば、バンプ11の凝固による力fの発生を搭載ヘッド22の荷重wによって検出し、この力fを検出すると半導体チップ12と実装基板13との距離dの保持を停止することにより、バンプ11の応力f’を的確に解放できるので、バンプ11の接合品質を向上できる。
【0053】
本実施形態の電子部品製造方法は、電子部品製造装置50の動作として実現されている。すなわち、本実施形態の電子部品製造方法は、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との位置を保持し、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定し、測定された力fに基づき位置の保持を解放する、ことを特徴とする。
【0054】
また、位置を保持する力を電力pによって得るアクチュエータ21を用い、半導体チップ12すなわち搭載ヘッド22に加わる荷重wを荷重測定器15によって測定することを介して、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定し、荷重測定器15によって測定される荷重wが設定値wthになったときに、アクチュエータ21による位置の保持を解放する。
【0055】
図8[1]は、本実施形態における制御部の一例を示すブロック図である。図8[2]は、図8[1]の制御部の動作を示すフローチャートである。次に、図5乃至図8に基づき、本実施形態の電子部品製造プログラムについて説明する。
【0056】
制御部60がコンピュータであるとき、制御部60の機能は本実施形態の電子部品製造プログラムによって実現できる。すなわち、本実施形態の電子部品製造プログラムは、液状のバンプ11を半導体チップ12と実装基板13とで挟んだ状態で半導体チップ12と実装基板13との位置を保持する位置保持手段20と、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する荷重測定器15と、コンピュータから成る制御部60と、を備えた電子部品製造装置50に用いられる。そして、本実施形態の電子部品製造プログラムは、荷重測定器15によって測定された力fに関するデータaを入力する入力機能(ステップ201)と、入力したデータaに基づきバンプ11が凝固したか否かを判断する判断機能(ステップ202)と、バンプ11が凝固したと判断すると位置の保持を解放する制御信号bを位置保持手段20へ出力する出力機能(ステップ203)とを、制御部60に実現させるためのものである。
【0057】
位置保持手段20は、位置を保持する力を電力pによって得るアクチュエータ21を有する。荷重測定器15は、半導体チップ12すなわち搭載ヘッド22に加わる荷重wを測定することを介して、半導体チップ12と実装基板13とに挟まれたバンプ11の凝固による力fを測定する。このとき、判断機能(ステップ202)は、荷重測定器15によって測定される荷重wが設定値wthになったときに、バンプ11が凝固したと判断する。
【0058】
図8[1]に示すように、制御部60は、CPU31、ROM32、RAM33、入出力インタフェース34等から成る一般的なマイクロコンピュータである。入出力インタフェース34には、荷重測定器15及びアクチュエータ21以外に、その他の機器35も接続されている。制御部60は、その他の機器35を制御する機能も有している。CPU31は、RAM33に格納されている本実施形態の電子部品製造プログラムの命令を一つずつ取り出し、これを解読して実行する。
【0059】
本実施形態の電子部品製造方法及び電子部品製造プログラムによれば、電子部品製造装置50と同様の作用及び効果を奏する。
【0060】
次に、本実施形態の電子部品製造装置50について、図5乃至図8に基づき更に詳しく説明する。
【0061】
まず、XYステージ42は、半導体チップ12のバンプ11と実装基板13の電極13aとの位置が一致するように、実装基板13を実装面に平行な方向に位置決めする。そして、アクチュエータ21は、搭載ヘッド22を搭載ステージ41方向へ移動させ、半導体チップ12のバンプ11と実装基板13の電極13aとを接触させる。その後、搭載ヘッド22及び搭載ステージ41の両者又は一方は、内蔵するヒータに電力を供給することにより、バンプ11の温度をその融点以上に加熱してバンプ11を溶融させる。バンプ11の溶融後は、半導体チップ12を保持している搭載ヘッド22は位置制御される。その理由は、バンプ11の高さをコントロールするため、又は、バンプ11が押しつぶされて半導体チップ12又は実装基板13の回路が短絡してしまうことを防止するためである。
【0062】
その後、搭載ヘッド22及び搭載ステージ41の両者又は一方は、内蔵するヒータへの電力供給を停止することにより、バンプ11を冷却してバンプ11を凝固させる。これにより、組立フローは完了する。しかし、この冷却工程では、バンプ11等の熱収縮によって、搭載ヘッド22と搭載ステージ41との相対距離が拡大していくという現象が起こる。そのため、搭載ヘッド22を位置制御したままでは、バンプ11が凝固すると、バンプ11には引き伸ばされる方向の応力が発生する。
【0063】
そこで、電子部品製造装置10では、冷却中における搭載ヘッド22の荷重wを測定し、荷重wが設定値wthに達したらバンプ11が凝固したと判断し、その瞬間に搭載ヘッド22の制御を位置制御から荷重制御に移行したり、半導体チップ12の保持を解除したりすることにより、バンプ11に加わる引き伸ばし応力を防止することが可能となる。
【0064】
すなわち、冷却工程において、バンプ11が溶融している状態では、熱収縮により搭載ヘッド22と搭載ステージ41との相対距離が拡がっても、バンプ11が溶融しているため搭載ヘッド22には外力が発生しない。そのため、アクチュエータ21へ供給される電流はほぼ一定となる。しかし、バンプ11が凝固してしまうと、熱収縮により搭載ヘッド22と搭載ステージ41との相対距離が拡がる。そのため、バンプ11には引き伸ばされる応力が発生し、その反力として、半導体チップ12を保持している搭載ヘッド22には搭載ステージ41へ近付けようとする外力が発生する。よって、冷却工程中の搭載ヘッド22の荷重wをモニタし、その荷重wが増大した時がバンプ11が凝固したポイントであり、その瞬間に搭載ヘッド22を位置制御から圧力制御に移行したり、半導体チップ12の保持を解除したりすることにより、バンプ11に加わる引き伸ばし応力の発生を防止することが可能となる。
【0065】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、バンプ11として、はんだバンプの代わりに導電性樹脂から成るバンプを用いてもよい。この場合は、熱収縮の代わりに、溶媒の蒸発や化学反応に起因して凝固による収縮が起こる。
【0066】
本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば半導体チップをプリント配線板などに搭載するフリップチップボンダ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 電子部品製造装置
11 バンプ
12 半導体チップ
12a 電極
13 実装基板
13a 電極
14 電力測定器
15 荷重測定器
20 位置保持手段
21 アクチュエータ
22 搭載ヘッド
23 上下動機構
24 位置測定器
25 ステッピングモータ
26 ねじ送り機構
30 制御部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 入出力インタフェース
35 その他の機器
40 位置決め手段
41 搭載ステージ
42 XYステージ
50 電子部品製造装置
60 制御部
f 力
f’ 応力
d 距離
p 電力
pth 設定値
w 荷重
wth 設定値
a データ
b 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状のバンプを二枚の基板で挟んだ状態で当該二枚の基板の重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段と、
前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定する凝固力測定手段と、
この凝固力測定手段によって測定された前記力に基づき、前記位置保持手段による前記位置の保持を解放する制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子部品製造装置。
【請求項2】
前記位置保持手段は、前記位置を保持する力を電力によって得るアクチュエータを有し、
前記凝固力測定手段は、前記アクチュエータへ供給される電力を測定する電力測定器であり、
前記制御手段は、前記電力測定器によって測定される前記電力が設定値になったときに、前記アクチュエータによる前記位置の保持を解放する、
ことを特徴とする請求項1記載の電子部品製造装置。
【請求項3】
前記凝固力測定手段は、前記二枚の基板の少なくとも一方に加わる荷重を測定する荷重測定器であり、
前記制御手段は、前記荷重測定器によって測定される前記荷重が設定値になったときに、前記位置保持手段による前記位置の保持を解放する、
ことを特徴とする請求項1記載の電子部品製造装置。
【請求項4】
液状のバンプを二枚の基板とで挟んだ状態で当該二枚の基板の重なり合う方向での位置を保持し、
前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定し、
測定された前記力に基づき前記位置の保持を解放する、
ことを特徴とする電子部品製造方法。
【請求項5】
前記位置の保持する力を電力によって得るアクチュエータを用い、
前記アクチュエータへ供給される電力を電力測定器で測定することを介して、前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定し
前記電力測定器によって測定される前記電力が設定値になったときに、前記アクチュエータによる前記位置の保持を解放する、
ことを特徴とする請求項4記載の電子部品製造方法。
【請求項6】
前記第二枚の基板の少なくとも一方に加わる荷重を荷重測定器によって測定することを介して、前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定し
前記荷重測定器によって測定される前記荷重が設定値になったときに、前記位置の保持を解放する、
ことを特徴とする請求項5記載の電子部品製造方法。
【請求項7】
液状のバンプを二枚の基板で挟んだ状態で当該二枚の基板の重なり合う方向での位置を保持する位置保持手段と、前記二枚の基板に挟まれた前記バンプの凝固による力を測定する凝固力測定手段と、コンピュータとを備えた電子部品製造装置に用いられるプログラムであって、
前記凝固力測定手段によって測定された前記力に関するデータを入力する入力機能と、入力した前記データに基づき前記バンプが凝固したか否かを判断する判断機能と、前記バンプが凝固したと判断すると前記位置の保持を解放する制御信号を前記位置保持手段へ出力する出力機能とを、
前記コンピュータに実現させるための電子部品製造プログラム。
【請求項8】
前記位置保持手段は、前記位置を保持する力を電力によって得るアクチュエータを有し、かつ前記凝固力測定手段は、前記アクチュエータへ供給される電力を測定する電力測定器であるとき、
前記判断機能は、前記電力測定器によって測定される前記電力が設定値になったときに、前記バンプが凝固したと判断する、
ことを特徴とする請求項7記載の電子部品製造プログラム。
【請求項9】
前記凝固力測定手段は、前記二枚の基板の少なくとも一方に加わる荷重を測定する荷重測定器であるとき、
前記判断機能は、前記荷重測定器によって測定される前記荷重が設定値になったときに、前記バンプが凝固したと判断する、
ことを特徴とする請求項7記載の電子部品製造プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219334(P2010−219334A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64868(P2009−64868)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】