説明

電子部品

【課題】実装時に回路基板に対して傾くことを抑制できる電子部品を提供することである。
【解決手段】積層体12は、複数の絶縁体層が積層されて構成され、かつ、窪みG1,G2が形成された下面S6を有している。下面S6は、絶縁体層の外縁が連なることにより構成されている。コンデンサ電極18a,18bは、積層体12に内蔵されている内部導体であって、下面S6の窪みG1,G2において、絶縁体層間から露出している露出部26a,26bを有している。外部電極14a,14bは、直接めっきにより形成され、窪みG1,G2に設けられることにより、露出部26a,26bを覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、複数の絶縁体層が積層されて構成されている積層体を備えている電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1の図8に記載の積層型電子部品が知られている。特許文献1の図8に記載の積層型電子部品は、絶縁体層が積層されてなる積層体と、積層体の実装面(底面)において絶縁体層の間から露出している内部電極と、積層体の実装面において内部電極を覆っている外部電極とを備えている。外部電極は、実装面のみに設けられており、他の面には設けられていない。そして、実装面は、積層型電子部品の回路基板への実装時に、回路基板に対向する面である。
【0003】
以上のような積層型電子部品では、実装面以外の面に外部電極が設けられていないので、積層型電子部品が実装される際に、実装面以外の面(例えば、実装面に隣接する側面)にはんだが付着してフィレットが形成されることがない。これにより、積層型電子部品の実装時にはんだが水平方向に広がることが抑制されるので、複数の積層型電子部品が高密度に実装されることが可能となる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の図8に記載の積層型電子部品は、回路基板への実装時に回路基板に対して傾くおそれがあるという問題を有する。より詳細には、積層型電子部品では、フィレットが形成されないため、リフロー時に溶融したはんだは、外部電極と回路基板との間に存在するようになる。そのため、積層型電子部品は、溶融したはんだの上に浮いた不安定な状態となる。よって、積層型電子部品は、外部からの振動等によって回路基板に対して容易に傾いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/049456号(特に、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、実装時に回路基板に対して傾くことを抑制できる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されて構成され、かつ、窪みが形成された実装面を有している積層体と、前記窪みに設けられ、かつ、直接めっきにより形成されている外部電極と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実装時に回路基板に対して傾くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子部品の外観斜視図である。
【図2】電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】回路基板に実装された状態の電子部品の断面構造図である。
【図4】回路基板に実装された状態の電子部品の断面構造図である。
【図5】回路基板に実装された状態の電子部品の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。
【0011】
(電子部品の構成)
まず、電子部品の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、電子部品10の外観斜視図である。図2は、電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、回路基板100に実装された状態の電子部品10の断面構造図である。以下では、積層体12の積層方向をy軸方向と定義する。積層体12をy軸方向から平面視したときの積層体12の長辺方向をx軸方向と定義する。積層体12をy軸方向から平面視したときの積層体12の短辺方向をz軸方向と定義する。
【0012】
電子部品10は、チップコンデンサであり、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14(14a,14b)及びコンデンサC(図1には図示せず)を備えている。積層体12は、直方体状をなしている。ただし、積層体12は、面取りが施されることにより角及び稜線において丸みを帯びた形状をなしている。ただし、図2では、面取りが施される前の状態の積層体12が示されているので、絶縁体層16の角は丸みを帯びていない。以下では、積層体12において、y軸方向の正方向側の面を側面S1とし、y軸方向の負方向側の面を側面S2とする。また、x軸方向の負方向側の面を端面S3とし、x軸方向の正方向側の面を端面S4とする。また、z軸方向の正方向側の面を上面S5とし、z軸方向の負方向側の面を下面S6とする。
【0013】
積層体12は、図2に示すように、複数の絶縁体層16が積層されることにより構成されている。絶縁体層16は、長方形状をなしており、誘電体セラミックにより作製されている。誘電体セラミックの例としては、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3又はCaZrO3が挙げられる。また、これらの材料が主成分とされ、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物又はNi化合物が副成分とされていてもよい。絶縁体層16の厚みは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。以下では、絶縁体層16のy軸方向の正方向側の主面を表面と称し、絶縁体層16のy軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
【0014】
積層体12の側面S1は、y軸方向の最も正方向側に設けられている絶縁体層16の表面により構成されている。積層体12の側面S2は、y軸方向の最も負方向側に設けられている絶縁体層16の裏面により構成されている。また、端面S3は、複数の絶縁体層16のx軸方向の負方向側の短辺が連なることによって構成されている。端面S4は、複数の絶縁体層16のx軸方向の正方向側の短辺が連なることによって構成されている。上面S5は、複数の絶縁体層16のz軸方向の正方向側の長辺が連なることによって構成されている。下面S6は、複数の絶縁体層16のz軸方向の負方向側の長辺が連なることによって構成されている。下面S6は、電子部品10が回路基板100に実装される際に、回路基板100の主面と対向する実装面である。
【0015】
コンデンサCは、図2に示すように、積層体12に内蔵されているコンデンサ導体(内部導体)18(18a,18b)により構成されている。コンデンサ導体18は、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Au等の導電性材料により作製されており、0.3μm以上2.0μm以下の厚さを有していることが好ましい。
【0016】
コンデンサ導体18aは、絶縁体層16の表面上に設けられており、容量形成部20a及び引き出し部22aを有している。容量形成部20aは、長方形状をなしており、絶縁体層16の外縁に接していない。引き出し部22aは、容量形成部20aのz軸方向の負方向側の長辺のx軸方向の負方向側の端部近傍から、z軸方向の負方向側に向かって突出している。これにより、引き出し部22aは、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の長辺に引き出されている。引き出し部22aは、z軸方向の負方向側の先端部分において、積層体12の下面S6において、隣り合う2層の絶縁体層16間から露出している露出部26aを有している。
【0017】
コンデンサ導体18bは、絶縁体層16の表面上に設けられており、容量形成部20b及び引き出し部22bを有している。容量形成部20bは、長方形状をなしており、絶縁体層16の外縁に接していない。そして、容量形成部20bは、絶縁体層16を介して容量形成部20aと対向している。これにより、容量形成部20a,20b間には静電容量が発生している。引き出し部22bは、容量形成部20bのz軸方向の負方向側の長辺のx軸方向の正方向側の端部近傍から、z軸方向の負方向側に向かって突出している。これにより、引き出し部22bは、絶縁体層16のz軸方向の負方向側の長辺に引き出されている。引き出し部22bは、引き出し部22aよりもx軸方向の正方向側に位置している。引き出し部22bは、z軸方向の負方向側の先端部分において、積層体12の下面S6において、隣り合う2層の絶縁体層16間から露出している露出部26bを有している。
【0018】
以上のように構成されたコンデンサ導体18a,18bは、y軸方向に交互に並ぶように複数層の絶縁体層16上に設けられている。これにより、コンデンサCは、コンデンサ導体18aとコンデンサ導体18bとが絶縁体層16を介して対向する部分において構成されている。そして、コンデンサ導体18が設けられている複数の絶縁体層16が積層されている領域を、内層領域と称す。また、内層領域のy軸方向の正方向側には、コンデンサ導体18が設けられていない複数の絶縁体層16が積層されている。同様に、内層領域のy軸方向の負方向側には、コンデンサ導体18が設けられていない複数の絶縁体層16が積層されている。以下では、これらのコンデンサ導体18が設けられていない複数の絶縁体層16が積層されている2つの領域を外層領域と称す。
【0019】
外部電極14a,14bはそれぞれ、露出部26a,26bを覆うように、積層体12の下面S6上に直接めっきにより形成されている。外部電極14aは、外部電極14bよりもx軸方向の負方向側に位置している。以上のように外部電極14が設けられることにより、外部電極14aと外部電極14bとの間にコンデンサCが形成されている。外部電極14の材料としては、例えば、Cu、Ni、Sn等が挙げられる。
【0020】
ところで、電子部品10は、実装時に回路基板100に対して傾くことを抑制するための構成を有している。以下に、かかる構成について詳細に説明する。
【0021】
下面S6には、図3に示すように、窪みG1,G2が形成されている。露出部26a,26bはそれぞれ、窪みG1,G2において絶縁体層16間から露出している。更に、外部電極14a,14bはそれぞれ、窪みG1,G2に設けられている。より詳細には、外部電極14a,14bはそれぞれ、z軸方向(下面S6の法線方向)から平面視したときに、窪みG1,G2に収まっている。そして、外部電極14a,14bの厚みTは、窪みG1,G2の深さDよりも小さい。よって、窪みG1,G2は、外部電極14a,14bによって埋まっておらず、外部電極14a,14bの形成後においても下面S6の窪みG1,G2以外の部分よりも窪んでいる。
【0022】
以上のような電子部品10は,図3に示すように、回路基板100上に実装される。回路基板100は、基板本体102及びランド104a,104bを備えている。そして、外部電極14が設けられている下面S6を実装面として、回路基板100に対向させる。更に、ランド104a,104bと外部電極14a,14bとをはんだ106a,106によりはんだ付けする。これにより、電子部品10が回路基板100上に実装される。
【0023】
(電子部品の製造方法)
次に、電子部品10の製造方法について説明する。なお、図面は、図1ないし図3を援用する。
【0024】
まず、主成分であるBaTiO3、CaTiO3、SrTiO3又はCaZrO3と、副成分であるMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物又はNi化合物とを所定の比率で秤量してボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、誘電体セラミック粉末を得る。
【0025】
この誘電体セラミック粉末に対して、有機バインダ及び有機溶剤を加えてボールミルで混合を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートの厚さは、0.5μm〜10μmであることが好ましい。
【0026】
次に、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コンデンサ導体18a,18bを形成する。導電性材料からなるペーストは、例えば、金属粉末に、有機バインダ及び有機溶剤が加えられたものである。
【0027】
次に、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを積層して未焼成のマザー積層体を得る。この後、未焼成のマザー積層体に対して、静水圧プレスにて圧着を施す。
【0028】
次に、未焼成のマザー積層体を所定寸法にカットして、複数の未焼成の積層体12を得る。そして、積層体12の表面に、バレル研磨加工を施して、積層体12の角部及び稜線の面取りを行う。
【0029】
次に、未焼成の積層体12を焼成する。焼成温度は、例えば、900℃以上1300℃以下であることが好ましい。
【0030】
次に、焼成された積層体12の下面S6に対してリューターによる切削加工を施して、窪みG1,G2を形成する。窪みの深さは、例えば、0.05mm以上0.2mm以下が好ましい。
【0031】
次に、めっき工法により、Cuめっき、Niめっき、Snめっきの3層からなる外部電極14を形成する。以上の工程を経て、電子部品10が完成する。
【0032】
(効果)
以上の電子部品10によれば、実装時に回路基板100に対して電子部品10が傾くことを抑制できる。より詳細には、特許文献1の図8に記載の積層型電子部品では、フィレットが形成されないため、リフロー時に溶融したはんだは、外部電極と回路基板との間に存在するようになる。そのため、積層型電子部品は、溶融したはんだの上に浮いた不安定な状態となる。よって、積層型電子部品は、外部からの振動等によって回路基板に対して容易に傾いてしまう。
【0033】
一方、電子部品10では、実装面である下面S6に窪みG1,G2が設けられており、外部電極14a,14bは窪みG1,G2に設けられている。そのため、電子部品10の回路基板100への実装時に、はんだ106a,106bは、窪みG1,G2内に入り込む。これにより、回路基板100の主面から電子部品10の下面S6までの距離は、特許文献1の図8に記載の積層型電子部品の回路基板の主面から積層型電子部品の実装面までの距離よりも小さくなる。その結果、電子部品10は、特許文献1の図8に記載の積層型電子部品に比べて、回路基板100上において安定する。よって、電子部品10によれば、実装時に回路基板100に対して電子部品10が傾くことを抑制できる。
【0034】
また、電子部品10では、外部電極14a,14bは、z軸方向から平面視したときに、窪みG1,G2に収まっている。更に、外部電極14a,14bの厚みTはそれぞれ、窪みG1,G2の深さDよりも小さい。そのため、窪みG1,G2は、外部電極14a,14bによって埋まっておらず、外部電極14a,14bの形成後においても下面S6の窪みG1,G2以外の部分よりも窪むようになる。よって、はんだ106a,106bは、窪みG1,G2内に入り込むようになる。その結果、電子部品10によれば、実装時に回路基板100に対して電子部品10が傾くことをより確実に抑制できる。
【0035】
また、外部電極14a,14bには、例えば、Snめっきが施されている。長期間の使用によって外部電極14a,14bが大気に触れると、Snめっきにはひげ状のウイスカが発生する。ウイスカは、複数の電子部品10が高密度に実装されると、隣り合う電子部品10間でショートを引き起こす原因となる。これに対して、電子部品10では、外部電極14a,14bは、z軸方向から平面視したときに、窪みG1,G2に収まっている。更に、外部電極14a,14bの厚みTはそれぞれ、窪みG1,G2の深さDよりも小さい。よって、外部電極14a,14bは、はんだ106a,106bにより覆い隠され、大気に接触しない。したがって、外部電極14a,14bにウイスカが発生しにくい。その結果、電子部品10が高密度に実装された場合に、電子部品10間でショートが発生することが抑制される。
【0036】
また、電子部品10では、外部電極14a,14bは、直接めっきにより形成されている。直接めっきにより形成された外部電極14a,14bの厚みは、印刷法やディップ法等により形成された外部電極の厚みよりも小さい。よって、直接めっきにより外部電極14a,14bが形成されると、外部電極14a,14bが形成された後の窪みG1,G2の深さが深くなる。その結果、より多くのはんだ106a,106bが窪みG1,G2内に入り込むようになる。以上より、電子部品10によれば、実装時に回路基板100に対して電子部品10が傾くことをより確実に抑制できる。
【0037】
(実験結果)
本願発明者は、電子部品10が奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。具体的には、窪みG1,G2の深さDが異なる3種類の電子部品(サンプル)及び窪みG1,G2が形成されていない1種類の電子部品(サンプル)を作製した。各サンプルの窪みG1,G2の深さDは以下のとおりである。
【0038】
第1のサンプル:0.05mm
第2のサンプル:0.1mm
第3のサンプル:0.2mm
第4のサンプル:0mm
【0039】
また、第1のサンプルないし第4のサンプルの共通の条件は以下のとおりである。
【0040】
電子部品の寸法:0.95mm×0.5mm×0.5mm
外部電極の寸法:0.4mm×0.3mm
絶縁体層の材料:チタン酸バリウム系誘電体セラミック
絶縁体層の厚み:5μm
コンデンサ導体の材料:Niを主成分とする金属
コンデンサ導体の厚み:1.5μm〜2.0μm
外部電極:10μmのCuめっき上に5μmのNiめっき及び5μmのSnめっき
【0041】
次に、第1のサンプルないし第4のサンプルの作製時におけるめっき工法の条件の一例を示す。
【0042】
Cuめっき(1層目)
めっき液:ピロリン酸銅(15g/l)、ピロリン酸カリウム(120g/l)、しゅう酸カリウム(10g/l)
浴温:25℃
pH:8.7
【0043】
Cuめっき(2層目)
めっき液:上村工業製「ピロブライトプロセス(ピロブライトPY−61浴)」
浴温:55℃
pH:8.6
【0044】
Niめっき
Ni濃度:105g/l
pH:4.0
浴温:55℃
【0045】
Snめっき
めっき液:石原薬品社製NB−RZS
pH:4.5
浴温:30℃
【0046】
Cuめっき、Niめっき、Snめっき時のバレルの条件
バレル:水平回転バレル
バレルの容量:290ml
導電性メディア:φ1.0mm、100ml
電子部品の投入数:500個
電解条件:Cuめっき(1層目)0.15A/m2
Cuめっき(2層目)0.30A/m2
Niめっき0.50A/m2
Snめっき0.50A/m2
【0047】
また、第1のサンプルないし第4のサンプルの焼成条件の一例を示す。
【0048】
炉のタイプ:トンネル炉
in−out時間:30分
トップ温度:600℃〜800℃
炉内雰囲気:N2雰囲気/酸素分圧5ppm以下
【0049】
本願発明者は、第1の実験として、第1のサンプルないし第4のサンプルを回路基板100上にはんだにより実装し、回路基板100の主面に対する下面S6のなす角度(以下、傾斜角と称す)を測定した。ランド104a,104bの寸法は、0.5mm×0.35mmである。はんだペーストの塗布には、150μm厚のマスクを用いた。また、はんだペーストには、LFはんだペーストを用いた。傾斜角の測定には、レーザー式3次元測定器を用いた。表1は、第1の実験の実験結果を示した表である。
【0050】
【表1】

【0051】
表1によれば、窪みG1,G2が形成されていない第4のサンプルでは、傾斜角は、13°であった。一方、窪みG1,G2が形成された第1のサンプルないし第3のサンプルでは、傾斜角は、2°〜8°であった。よって、窪みG1,G2が形成されることにより、電子部品10が回路基板100に対して傾くことが抑制されることが分かる。
【0052】
第2の実験として、第1のサンプル、第2のサンプル及び第4のサンプルを用いて、ウイスカの発生数を調べた。ウイスカの発生数の評価は、以下の方法によって行った。
【0053】
まず、第1のサンプル、第2のサンプル及び第4のサンプルを回路基板100に実装した。そして、−55℃〜85℃の温度をそれぞれ10分間保持する温度サイクル試験を500サイクル行った。温度サイクル試験後の第1のサンプル、第2のサンプル及び第4のサンプルの実装部分周辺を金属顕微鏡で観察した後、SEMを用いて観察した。表2は、第2の実験の実験結果を示した表である。
【0054】
【表2】

【0055】
表2によれば、第1のサンプル及び第2のサンプルでは、第4のサンプルに比べて、ウイスカの発生数が少ないことが分かる。よって、電子部品10では、外部電極14a,14bにウイスカが発生しにくいことが分かる。
【0056】
(第1の変形例)
次に、第1の変形例に係る電子部品10aについて図面を参照しながら説明する。図4は、回路基板100に実装された状態の電子部品10aの断面構造図である。
【0057】
電子部品10aは、外部電極14c,14dを更に備えている。また、コンデンサ導体18a,18bは、引き出し部22c,22dを更に有している。また、上面S5には、窪みG3,G4が設けられている。
【0058】
引き出し部22c,22dは、z軸方向の正方向側の先端部分において、積層体12の上面S5において、隣り合う2層の絶縁体層16間から露出している露出部26c,26dを有している。露出部26c,26dは、窪みG3,G4内に位置している。そして、外部電極14c,14dは、露出部26c,26dを覆うように、窪みG3,G4に設けられている。
【0059】
以上のような電子部品10aにおいても、電子部品10と同様に、実装時に回路基板100に対して電子部品10が傾くことを抑制できる。
【0060】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例に係る電子部品10bについて図面を参照しながら説明する。図5は、回路基板100に実装された状態の電子部品10bの断面構造図である。
【0061】
電子部品10bでは、外部電極14a,14bは、z軸方向から平面視したときに、窪みG1,G2外にはみ出している。そして、外部電極14a,14bの表面には、下面S6の窪みG1,G2に倣った窪みが形成されている。
【0062】
以上のような電子部品10bにおいても、電子部品10と同様に、実装時に回路基板100に対して電子部品10が傾くことを抑制できる。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品は、前記実施形態に係る電子部品10,10a,10bに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0064】
なお、電子部品10,10a,10bは、コンデンサCを内蔵しているが、コンデンサ以外の回路素子を内蔵していてもよい。
【0065】
なお、窪みG1〜G4は、リューターによる切削加工により形成されるとしたが、例えば、焼成条件を調整することによって形成されてもよいし、サンドブラスト処理やバレル処理等によって形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明は、電子部品に有用であり、特に、実装時に回路基板に対して電子部品が傾くことを抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0067】
G1〜G4 窪み
S5 上面
S6 下面
10,10a,10b 電子部品
12 積層体
14a〜14d 外部電極
16 絶縁体層
18a,18b コンデンサ導体
20a,20b 容量形成部
22a〜22d 引き出し部
26a〜26d 露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて構成され、かつ、窪みが形成された実装面を有している積層体と、
前記窪みに設けられ、かつ、直接めっきにより形成されている外部電極と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記電子部品は、
前記積層体に内蔵されている内部導体であって、前記実装面の窪みにおいて、前記積層体から露出している露出部を有している内部導体を、
更に備えており、
前記外部電極は、前記露出部を覆っていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記実装面は、前記絶縁体層の外縁が連なることにより構成されており、
前記内部導体は、前記実装面の窪みにおいて、前記絶縁体層間から露出していること、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
複数の前記内部導体は、前記絶縁体層を介して互いに対向していることによって、静電容量を形成していること、
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記外部電極の厚みは、前記窪みの深さよりも小さいこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記外部電極は、前記実装面の法線方向から平面視したときに、前記窪みに収まっていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記外部電極は、前記実装面の法線方向から平面視したときに、前記窪み外にはみ出しており、
前記外部電極の表面には、前記実装面の前記窪みに倣った窪みが形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−204441(P2012−204441A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65425(P2011−65425)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】