説明

電気コネクタ用シェル、電気コネクタ及びこの製造方法

【課題】
容易に作製可能な電気コネクタ用シェルを備えた電気コネクタを効率よく作製する。
【解決手段】
第1〜第4シールド形成部21a〜24a、第1連結部25及び第2連結部26を有する枠体27がプレス抜き加工によって作製される。そして、枠体27が折り曲げられることによって、第1〜第4シールド面21〜24、第1連結部25及び第2連結部26を備えたリセシェル20が作製される。ここで、リセシェル20の第3シールド面23及び第4シールド面24は、第1シールド面21を含む平面及び第2シールド面22を含む平面のそれぞれと交差している。そして、リセシェル20が埋め込まれるようにハウジング10をインサート成型した後、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40が取り付けられ、最後に、リセプクタルコネクタ1が一対の搬送用保持部80から切り離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板等を電気的に接続するために用いられる電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電気機器は、その内部に複数の基板を有しているのが一般的である。そして、これらの複数の基板間において種々の信号の送受信を行うためには、これらの基板は互いに電気的に接続されている必要がある。複数の基板を電気的に接続する際には、例えば互いに嵌合するプラグコネクタとリセプクタルコネクタとで構成される基板対基板型(board-to-board)のコネクタアッセンブリが用いられる場合がある。つまり、この場合には、プラグコネクタが取り付けられた基板とリセプクタルコネクタが取り付けられた基板と接続される場合には、プラグコネクタとリセプクタルコネクタとが互いに嵌合されることによって電気的に接続される。
【0003】
ここで、外部からコネクタ内にノイズが侵入する場合には誤動作の原因になったり、コネクタ内から外部へノイズが放射される場合には周辺機器の誤動作の原因になることがある。従って、携帯電話等の電気機器に用いられるコネクタとしては、金属シールド付きのコネクタが利用されるのが好ましい。
【0004】
そこで、金属シェル付きのコネクタが種々開発されている。そして、これらのコネクタに用いられる金属シェルには、巻き込み構造のものと、絞り込み構造のものが知られている。巻き込み構造の金属シェルでは、1枚の金属板が折り曲げられることにより枠が形成され、両端面にそれぞれ形成されたカシメ部が突き合わせられることによって接続される。また、絞り込み構造の金属シェルでは、1枚の金属板に複数工程の絞り込み加工が施されることによって、ツバ付きの枠が形成される。また、これらの構造の金属シェルの他には、2枚のL字状の金属板が組み合わされることによって金属シェルが形成されることがある(例えば、特許文献1参照)。そして、これらの金属シェルが、これらとは別に作製されたハウジングに組み込まれると共に、コンタクトがハウジングに取り付けられることによって、金属シェル付きのコネクタが完成する。
【特許文献1】特開平10−208816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薄型且つ小型のコネクタを作製する場合には、上述した巻き込み構造及び絞り込み構造の金属シェルの作製は困難である。つまり、巻き込み構造の金属シェルを作製する場合には、金属板の両端面にカシメ部を形成する必要があるが、金属シェルの高さが著しく低いので、カシメ部を形成することが非常に難しい。一方、絞り込み構造の金属シェルを作製する場合でも同様に、金属シェルの高さが著しく低いので、非常に絞り込みにくいと共に、絞り込み加工後の穴開け作業が非常に難しい。
【0006】
また、金属シェルが作製された後で、金属シェルがそれとは別に作製されたハウジングに組み込まれる場合には、ハウジングに対して組み込むための圧入部を金属シェルに形成する必要がある。そのため、金属シェルの小型化が難しい。さらには、特に小型のコネクタを作製する場合には、ハウジングへの金属シェルの組み込み工程は非常に煩雑な作業になる。
【0007】
そこで、本発明の主な目的は、容易に作製可能な電気コネクタ用シェルを提供することである。
【0008】
また、本発明のその他の目的は、容易に作製可能な電気コネクタ用シェルを備え、効率よく作製可能な電気コネクタ及びこれの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の電気コネクタ用シェルは、枠状にプレス抜き加工されてから曲げ加工が施された一体成形型の電気コネクタ用シェルであって、第1シールド面と、前記第1シールド面と対向する第2シールド面と、前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差する第3シールド面と、前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差し且つ前記第3シールド面と対向する第4シールド面と、前記第1シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結する第1連結部と、前記第2シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結する第2連結部とを備えている。
【0010】
この構成によると、プレス抜き加工で枠体を作製した後で、その枠体に対して曲げ加工を施すだけで、電気コネクタ用シェルを作製できるので、薄型且つ小型の電気コネクタに用いられるシェルであっても容易に作製することができる。また、シェルの外側から内側に向かう方向の力が第3シールド面または第4シールド面に加わった場合でも、第3及び第4シールド面は第1及び第2シールド面の幅方向端部に当接することによって支持されるので、第3及び第4シールド面が内側に倒れにくくなり、シェルの強度(第3シールド面及び第4シールド面に交差する方向の強度)が増大する。
【0011】
本発明の電気コネクタ用シェルにおいて、前記第1及び第2シールド面は、前記第1連結部と前記第2連結部との間に設けられていてもよい。
【0012】
この構成によると、互いに対向する一対の搬送用保持部の間に配置されると共に、その両端部からそれぞれ外側に延在する接続部を介して一対の搬送用保持部と接続される枠体が折り曲げられることによって電気コネクタ用シェルが作製される場合に、第1及び第2シールド面が形成されるように枠体が折り曲げられたとしても、一対の搬送用保持部と、それらに接続部を介してそれぞれ接続された第1及び第2連結部との位置関係が変化しない。従って、シェルを作製した後で、シェルの両端部が接続部を介して一対の搬送用保持部にそれぞれ接続された状態で次の工程に移行することができる。つまり、例えば、曲げ工程においてシェルが作製された後で、シェルの両端部が接続部を介して一対の搬送用保持部にそれぞれ接続された状態で、シェルが埋め込まれるようにハウジングをインサート成形するインサート成形工程に移行した場合でも、一対の搬送用保持部を利用して、インサート成形工程における金型に対するシェルの位置が適正になるように精度よく搬送することができる。
【0013】
本発明の電気コネクタ用シェルにおいて、前記第1〜第4シールド面の少なくとも1つが、電気コネクタが実装される基板の取り付け面と交差する方向に突出する突起部を有していてもよい。
【0014】
この構成によると、電気コネクタが基板の取り付け面に実装される場合に、突起部を用いて、電気コネクタを取り付け面にハンダ付け等によって固定することができる。従って、電気コネクタの基板からの剥離強度が向上し、電気コネクタに嵌合された相手方コネクタが外される場合に、電気コネクタが基板から剥離するのが抑制される。また、シェルを突起部を介して接地することによって、シェルの接地箇所を増やすことができるので、シェルを確実に接地することが可能になる。
【0015】
本発明の電気コネクタは、上述のいずれかの電気コネクタ用シェルと、前記電気コネクタ用シェルが埋め込まれるようにインサート成形されたハウジングと、前記ハウジングに保持されており、その一端部が電気コネクタが実装される基板の取り付け面に接続される端子となり且つ他端部が相手方コネクタに接続される端子となる複数の端子金具とを備えている。
【0016】
この構成によると、プレス抜き加工で枠体を作製した後で、その枠体に対して曲げ加工を施すだけで、電気コネクタ用シェルを作製できるので、このシェルを備えた電気コネクタの薄型化且つ小型化が可能になる。また、シェルの外側から内側に向かう方向の力が第3シールド面または第4シールド面に加わった場合でも、第3及び第4シールド面は第1及び第2シールド面の幅方向端部に当接することによって支持されるので、第3及び第4シールド面が内側に倒れにくくなり、シェルの強度(第3シールド面及び第4シールド面に交差する方向の強度)が増大し、電気コネクタの強度が向上する。
【0017】
また、シェルが埋め込まれるようにハウジングがインサート成形されるので、シェルのハウジングへの組み込み工程が不要になる。そのため、電気コネクタの製造工程が簡略化され、効率よく製造することができる。さらに、ハウジング内にシェルが埋め込まれているので、強度を低下させることなく、ハウジングの薄肉化が可能になり、電気コネクタの小型化が可能になる。
【0018】
本発明の電気コネクタにおいて、前記複数の端子金具の少なくとも1つは、前記電気コネクタ用シェルと接触するシェル接触部を有する接地用端子金具であって、前記接地用端子金具の前記一端部は接地されてもよい。
【0019】
この構成によると、電気コネクタ用シェルが接地用端子金具を介して接地されるので、シェルによるシールド効果を得ることができる。
【0020】
本発明の電気コネクタにおいて、前記電気コネクタ用シェルは、相手方コネクタをその内部に収容可能であってもよい。
【0021】
この構成によると、電気コネクタに対して相手方コネクタが嵌合されたときに、相手方コネクタの全てまたは大部分が電気コネクタのシェル内に収容される。従って、相手方コネクタがシェルを備えていない場合でも、相手方コネクタにおいて、電気コネクタのシェルによるシールド効果を得ることができる。
【0022】
本発明の電気コネクタの製造方法は、互いに対向する一対の搬送用保持部の間に配置されると共に、その両端部からそれぞれ外側に延在する接続部を介して前記一対の搬送用保持部と接続される枠体を、プレス抜き加工により作製するプレス抜き加工工程と、第1シールド面と、前記第1シールド面と対向する第2シールド面と、前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差する第3シールド面と、前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差し且つ前記第3シールド面と対向する第4シールド面と、前記第1シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結し且つ前記接続部の一方と連続した第1連結部と、前記第2シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結し且つ前記接続部の他方と連続した第2連結部とを有する一体成形型の電気コネクタ用シェルが形成されるように、前記枠体を折り曲げる曲げ工程と、前記電気コネクタ用シェルが埋め込まれるようにハウジングをインサート成形するインサート成形工程と、その一端部が電気コネクタが実装される基板の取り付け面に接続される端子となり且つ他端部が相手方コネクタに接続される端子となる複数の端子金具を前記ハウジングに組み付ける組み付け工程と、前記第1及び第2連結部と前記接続部との境界でそれぞれ切断する切断工程とを備えている。
【0023】
この構成によると、プレス抜き加工で枠体を作製した後で、その枠体に対して曲げ加工を施すだけで、電気コネクタ用シェルを作製できるので、このシェルを備えた電気コネクタの薄型化且つ小型化が可能になる。また、シェルの外側から内側に向かう方向の力が第3シールド面または第4シールド面に加わった場合でも、第3及び第4シールド面は第1及び第2シールド面の幅方向端部に当接することによって支持されるので、第3及び第4シールド面が内側に倒れにくくなり、シェルの強度(第3シールド面及び第4シールド面に交差する方向の強度)が増大し、電気コネクタの強度が向上する。
【0024】
また、シェルが埋め込まれるようにハウジングがインサート成形されるので、シェルのハウジングへの組み込み工程が不要になる。そのため、電気コネクタの製造工程が簡略化され、効率よく製造可能な電気コネクタを得ることができる。さらに、ハウジング内にシェルが埋め込まれているので、強度を低下させることなく、ハウジングの薄肉化が可能になり、電気コネクタの小型化が可能になる。
【0025】
本発明の電気コネクタの製造方法において、前記曲げ工程では、前記第1及び第2シールド面が前記第1連結部と前記第2連結部との間に設けられるように、前記枠体が折り曲げられてもよい。
【0026】
この構成によると、第1及び第2シールド面が形成されるように枠体が折り曲げられたとしても、一対の搬送用保持部と、それらに接続部を介してそれぞれ接続された第1及び第2連結部との位置関係が変化しない。従って、シェルを作製した後で、シェルの両端部が接続部を介して一対の搬送用保持部にそれぞれ接続された状態で次の工程に移行することができる。つまり、曲げ工程においてシェルが作製された後で、シェルの両端部が接続部を介して一対の搬送用保持部にそれぞれ接続された状態でインサート成形工程に移行した場合でも、一対の搬送用保持部を利用して、インサート成形工程における金型に対するシェルの位置が適正になるように精度よく搬送することができる。
【0027】
本発明の電気コネクタの製造方法において、前記切断工程が、前記組み付け工程の後に行われてもよい。
【0028】
この構成によると、シェルが埋め込まれるようにインサート成形されたハウジングに対して端子金具が組み付けられた後で、シェルが一対の搬送用保持部から切り離される。そのため、シェルの両端部が接続部を介して一対の搬送用保持部にそれぞれ接続された状態で、端子金具をハウジングに組み付け可能である。従って、端子金具の組み付け位置を一対の搬送用保持部の位置を基準として設定できるので、端子金具を適正な組み付け位置に精度よく組み付けることができる。
【0029】
本発明の電気コネクタの製造方法において、前記組み付け工程が、前記切断工程の後に行われてよい。
【0030】
この構成によると、シェルが一対の搬送用保持部から切り離された後で、シェルが埋め込まれるようにインサート成形されたハウジングに対して端子金具が組み付けられる。従って、端子金具の組み付け位置をハウジングの外形を基準として設定することにより、ハウジング単体の送り装置を設けるだけでよいので、端子金具の組み付け装置の小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るリセプクタルコネクタの外観斜視図である。図2は、図1のリセプクタルコネクタの構成を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)及び図2(d)はそれぞれ図2(a)のX-X線、Y-Y線における断面図である。
【0032】
図1に示すリセプクタルコネクタ1は、ハウジング10と、リセプクタルシェル(リセシェル)20と、リセプクタルコンタクト(リセコンタクト)30と、リセプクタルアースコンタクト(リセアースコンタクト)40とを有している。なお、本実施の形態のリセプクタルコネクタ1は、高さが約1mmの薄型且つ小型のコネクタである。本発明では、非常に薄いシェルを構成できるため、このような薄型且つ小型のコネクタに適用すれば、より有用である。
【0033】
ハウジング10は、絶縁性樹脂で形成された略直方体形状の部材であって、その中央部には、図1及び図2(a)に示すように、プラグコネクタ2(図4参照)が嵌合される略矩形の嵌合孔11が形成されている。従って、ハウジング10の一端面(図1では上端面)は環状になる。また、嵌合孔11の底面には、嵌合孔11の内部において上方に向かって突出する略直方体形状の突出部12が形成されている。ここで、突出部12の水平方向の断面積は嵌合孔11の底面の面積よりも小さいので、ハウジング10の外周部と突出部12との間には環状の嵌合溝13が形成される。
【0034】
また、ハウジング10の長辺側の一対の外周部10aの下端部において、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40の取り付け位置(図2(a)及び図2(b)参照)には、図2(c)及び図2(d)に示すように、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40をハウジング10に取り付けるための水平方向に延在する貫通孔15がそれぞれ形成されている。そして、外周部10aの幅方向中央部近傍には、貫通孔15に連通し且つ上下方向に延在する圧入溝16が形成されている。
【0035】
また、ハウジング10の外周部10aの上面には、等間隔に配列された複数の開口17がそれぞれ形成されている。開口17は、コンタクトの取り付け位置に対応するように配置されており、圧入溝16に連通するものである。従って、図1では、開口17の内側には、リセコンタクト30の圧入部31及びリセアースコンタクト40の圧入部41(図2(c)及び図2(d)参照)の上端部が見えている。
【0036】
そして、突出部12の外周面のコンタクトの取り付け位置に対応する位置には、ハウジング10に取り付けられたリセコンタクト30及びリセアースコンタクト40のそれぞれの弾性片部32、42(図2(c)及び図2(d)参照)の先端近傍が配置される上下方向に延在する複数の凹部18が形成されている。
【0037】
リセシェル20は、導電性材料により形成されており、枠状にプレス抜き加工されてから曲げ加工が施された一体成形型の略筒状の部材である(図3(b)参照)。ここで、ハウジング10が成形される際には、リセシェル20が埋め込まれるようにインサート成形される。そのため、ハウジング10とリセシェル20とは一体に成形されることになる。なお、リセシェル20の詳細な構成については後で詳述する。
【0038】
リセコンタクト30は、黄銅などの銅合金による導電性材料により形成された信号用端子金具である。リセコンタクト30は、図2(c)に示すように、ハウジング10内に圧入される圧入部31と、その先端部がプラグコネクタ2に接続される端子となり且つプラグコネクタ2が嵌合される際にプラグコネクタ2を保持する弾性片部32と、その先端部がリセプクタルコネクタ1が実装される基板の取り付け面に接続される端子となるリード部34とを有している。
【0039】
圧入部31は、略棒状の突起部であって、ハウジング10の外周部10aに形成された圧入溝16内に圧入される部分である。従って、圧入部31の水平方向の断面積は圧入溝16の断面積とほぼ同じである。また、圧入部31は、リセコンタクト30がハウジング10に取り付けられた場合に、その先端部がハウジング10の外周部10aの上面から突出しない長さを有している。
【0040】
弾性片部32は、圧入部31の根元から延在する略C型形状の突起部であり、その先端近傍は圧入部31とほぼ平行になっている。そして、弾性片部32の先端近傍は圧入部31に近接する方向へのばね性を有している。従って、弾性片部32の先端部に対して外部から圧入部31から離れる方向の力が加わった場合には、その先端部は圧入部31に近接する方向に付勢されることになる。つまり、リセプクタルコネクタ1にプラグコネクタ2が嵌合される際には、プラグコネクタ2が当接することによって、弾性片部32は圧入部31から離れる方向に広がりつつプラグコネクタ2を保持する(図5参照)。
【0041】
リード部34は、圧入部31の根元から弾性片部32の延在方向と反対方向であり且つ圧入部31とほぼ直角に延在する略棒状の部分である。そのため、リード部34と弾性片部32の圧入部31に近い部分とは、ほぼ一直線上に配置されている。また、リード部34は、リセプクタルコネクタ1が実装される基板の取り付け面にハンダ付け等によって固定される。このように、リセコンタクト30では、圧入部31、弾性片部32及びリード部34はほぼ同一平面上に配置されている。
【0042】
リセアースコンタクト40は、黄銅などの銅合金による導電性材料により形成された接地用端子金具である。リセアースコンタクト40は、図2(d)に示すように、ハウジング10内に圧入される圧入部41と、その先端部がプラグコネクタ2に接続される端子となり且つプラグコネクタ2が嵌合される際にプラグコネクタ2を保持する弾性片部42と、リセシェル20の外周面と接触するシェル接触部43と、その先端部がリセプクタルコネクタ1が実装される基板の取り付け面に接続される端子となるリード部44とを有している。
【0043】
リセアースコンタクト40の圧入部41、弾性片部42及びリード部44の形状は、リセコンタクト30の圧入部31、弾性片部32及びリード部34の形状とそれぞれほぼ同じであるので、それらの詳細な説明は省略する。また、シェル接触部43は、リード部44から圧入部41とほぼ平行に突出する略棒状の突起部である。従って、リセアースコンタクト40がハウジング10に取り付けられた場合には、図2(d)に示すように、リセプクタルコネクタ1(ハウジング10)の外周面から内側に向かって、シェル接触部43、圧入部41、弾性片部42の順に配置される。なお、圧入部41、弾性片部42、シェル接触部43及びリード部44はほぼ同一平面上に配置されていると共に、圧入部41、弾性片部42の先端近傍及びシェル接触部43は同一方向に向かって突出し、ほぼ平行になっている。
【0044】
また、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40は、いずれも略板状部材であって、これらがハウジング10に取り付けられる場合には、各弾性片部32、42の先端部からハウジング10の貫通孔15に差し込まれて、各圧入部31、41が圧入溝16内に圧入される。このとき、各弾性片部32、42は、ハウジング10の外周部10aと突出部12との間の嵌合溝13内に配置されると共に、リード部34、44は、ハウジング10の外部に突出する。また、リセアースコンタクト40のシェル接触部43は、図1及び図2(d)に示すように、リセプクタルコネクタ1の外側において、リセシェル20の外周面と接触しており、リセプクタルコネクタ1の外部から目視可能になっている。
【0045】
このように、リセプクタルコネクタ1では、ハウジング10の長辺側の一対の外周部10aのそれぞれに対して、10本のリセコンタクト30が取り付けられると共に、それらを挟むように2本のリセアースコンタクト40が取り付けられている。従って、リセプクタルコネクタ1は、20本のリセコンタクト30と、4本のリセアースコンタクト40とを備えている。なお、リセプクタルコネクタ1に取り付けられるリセコンタクト30及びリセアースコンタクト40の配置及び数は変更可能である。従って、リセプクタルコネクタ1におけるリセコンタクト30及びリセアースコンタクト40の取り付け位置を変更することによって、リセシェル20を接地するためのリセアースコンタクト40の位置を任意に変更することができる。
【0046】
ここで、リセアースコンタクト40のシェル接触部43は、上方からも、側面からも、リセプクタルコネクタ1の外部から目視可能になっているので、リセプクタルコネクタ1の外観からリセアースコンタクト40の位置を容易に確認することができる。従って、リセプクタルコネクタ1のリセコンタクト30とリセアースコンタクト40との判別を画像認識等によって容易に行うことが可能になる(視認性が向上する)。そのため、リセプクタルコネクタ1の検査工程がある場合には、この検査工程において、以下のような利点がある。
【0047】
リセプクタルコネクタ1にリセコンタクト30とリセアースコンタクト40とが誤って取り付けられていないことを確認するための検査工程では、目視ではなく画像認識等の自動化工程において、上方からも、側面からも、リセアースコンタクト40の位置を容易に特定できるという利点がある。
【0048】
次に、リセシェルの詳細な構成について、図3を参照して説明する。図3は、リセシェルの構成を示す図であり、図3(a)がプレス曲げ工程前の枠体の斜視図、図3(b)がプレス曲げ工程後のリセシェルの斜視図である。なお、実際には、プレス曲げ工程の前後においては、枠体及びリセシェルは一対の搬送用保持部に接続されている。
【0049】
リセシェル20が作製される場合には、最初に、図3(a)に示すような形状の枠体27がプレス抜き加工により作製される。枠体27は、略長方形の板状部材であって、その中央部には開口27aを有している。枠体27は、第1〜第4シールド形成部21a〜24aと、第1連結部25と、第2連結部26とを有している。
【0050】
第1シールド形成部21aと第2シールド形成部22aとは、いずれも同じ大きさの矩形状を有しており、互いに平行に配置されている。また、第3シールド形成部23aと第4シールド形成部24aとは、いずれも同じ大きさの矩形状を有しており、互いに平行に配置されている。ここで、本実施の形態では、第1シールド形成部21a及び第2シールド形成部22aの長さは、第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aの長さより短い。
【0051】
また、第1連結部25は、第1シールド形成部21aの幅方向外側に連続して延在している。そして、第1連結部25の長さ方向両端部は、第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aのそれぞれの一端部と連続している。一方、第2連結部26は、第2シールド形成部22aの幅方向外側に連続して延在している。そして、第2連結部26の両端部は、第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aのそれぞれの他端部と連続している。
【0052】
従って、枠体27の外周部は、第3シールド形成部23aと、第4シールド形成部24aと、第1連結部25と、第2連結部26とで形成される。そして、第1シールド形成部21aは、第1連結部25の幅方向内側端部から枠体27の開口27a内において第2連結部26に向かうように延在しており、第2シールド形成部22aは、第2連結部26の幅方向内側端部から枠体27の開口27a内において第1連結部25に向かうように延在している。つまり、第1連結部25及び第2連結部26は、第1及び第2シールド形成部21a、22aの外側に配置されていると共に、第3シールド形成部23aと第4シールド形成部24aとの間に配置されている。
【0053】
ここで、図3(a)では、第1連結部25と第1シールド形成部21aとの境界28a、第1連結部25と第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aとの境界28b、28c、第2連結部26と第2シールド形成部22aとの境界28d、第2連結部26と第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aとの境界28e、28fが破線で図示されており、プレス曲げ工程における折り曲げ線(境界28a〜28fとそれぞれ同じ符号で示す)となる。
【0054】
第3シールド形成部23aは、折り曲げ線28b、28eに対して第1連結部25及び第2連結部26と反対側に配置されており、第4シールド形成部24aは、折り曲げ線28c、28fに対して第1連結部25及び第2連結部26と反対側に配置されている。
【0055】
また、第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aの両端部近傍には、開口27a内に突出する補強タブ23b、24bがそれぞれ2つずつ形成されている。ここで、補強タブ23b、24bは、第1シールド形成部21a及び第2シールド形成部22aの各端部に向かって形成されており、それらの先端と第1シールド形成部21a及び第2シールド形成部22aの各端部との間には、僅かな隙間が形成されている。
【0056】
そして、プレス曲げ工程において、枠体27が折り曲げ線28a〜28fに沿ってそれぞれ同じ方向に(図3では上方向に)折り曲げられると、図3(b)に示すように、リセシェル20が作製される。リセシェル20は、4つのシールド面によって四方が囲まれた略筒状の部材である。
【0057】
リセシェル20は、第1シールド面21と、第1シールド面21と対向する第2シールド面22と、第1シールド面21を含む平面及び第2シールド面22を含む平面のそれぞれと交差する第3シールド面23と、第1シールド面21を含む平面及び第2シールド面22を含む平面のそれぞれと交差し且つ第3シールド面23と対向する第4シールド面24と、第1シールド面21と第3シールド面23及び第4シールド面24とを連結する第1連結部25と、第2シールド面22と第3シールド面23及び第4シールド面24とを連結する第2連結部26とを有している。なお、プレス曲げ工程前の枠体27における第1〜第4シールド形成部21a〜24aが、プレス曲げ工程において第1連結部25及び第2連結部26に対して折り曲げられることによって、第1〜第4シールド面21〜24になる。
【0058】
第1〜第4シールド面21〜24は、いずれも第1連結部25及び第2連結部26に対してほぼ垂直になっており、それぞれの上端部(枠体27において、第1及び第2シールド形成部21a、22aの幅方向内側端部であった部分、並びに、第3及び第4シールド形成部23a、24aの幅方向外側端部であった部分)は、ほぼ同一平面上に配置される。
【0059】
ここで、上述したように、枠体27において、第1及び第2シールド形成部21a、22aは、第1連結部25と第2連結部26との間に配置されている。従って、第1及び第2シールド形成部21a、22aは、第1連結部25及び第2連結部26の幅方向内側の折り曲げ線28a、28dに沿って上方にそれぞれ折り曲げられることによって、第1及び第2シールド面21、22となる。そのため、第1及び第2シールド面21、22は、第1連結部25と第2連結部26との間に配置される。
【0060】
一方、枠体27において、第3シールド形成部23aは、折り曲げ線28b、28eに対して第1連結部25及び第2連結部26と反対側に配置されており、第4シールド形成部24aは、折り曲げ線28c、28fに対して第1連結部25及び第2連結部26と反対側に配置されている。従って、第3シールド形成部23aは、第1連結部25及び第2連結部26の長さ方向両端部の折り曲げ線28b、28eに沿って上方に折り曲げられることによって、第3シールド面23となる。同様に、第4シールド形成部24aは、第1連結部25及び第2連結部26の長さ方向両端部の折り曲げ線28c、28fに沿って上方に折り曲げられることによって、第4シールド面24となる。
【0061】
そのため、リセシェル20では、第3シールド面23の両端部は、第1シールド面21と第2シールド面22との間の外側に配置される。つまり、第3シールド面23は、第1シールド面21を含む平面及び第2シールド面22を含む平面の両方とほぼ垂直に交差する。これと同様に、第4シールド面24の両端部は、第1シールド面21と第2シールド面22との間の外側に配置される。つまり、第4シールド面24は、第1シールド面21を含む平面及び第2シールド面22を含む平面の両方とほぼ垂直に交差する。
【0062】
また、第1シールド面21の両端部と第3シールド面23及び第4シールド面24との間には、僅かな隙間が形成されており、第2シールド面22の両端部と第3シールド面23及び第4シールド面24との間には、僅かな隙間が形成されている。従って、第3シールド面23及び第4シールド面24に対して外部から内側に向かう力が加えられた場合に、第3シールド面23及び第4シールド面24が内側に倒れようとしても、第1シールド面21及び第2シールド面22の両端部に当接するので、第3シールド面23及び第4シールド面24は、上記隙間分しか内側に倒れることはできない。
【0063】
なお、リセシェル20が作製された状態で、第1シールド面21の両端部と第3シールド面23及び第4シールド面24との間、並びに、第2シールド面22の両端部と第3シールド面23及び第4シールド面24との間に、隙間が形成されていないときは、第3シールド面23及び第4シールド面24に対して外部から内側に向かう力が加えられた場合でも、第3シールド面23及び第4シールド面24が内側にほとんど倒れることはない。従って、リセシェル20が作製された状態で、第1シールド面21の両端部と第3シールド面23及び第4シールド面24とが当接していると共に、第2シールド面22の両端部と第3シールド面23及び第4シールド面24とが当接しているのがより好ましい。
【0064】
また、枠体27の第3シールド形成部23a及び第4シールド形成部24aに形成された補強タブ23b、24bは、リセシェル20が作製された状態では、図3(b)に示すように、リセシェル20の下端部に配置される。つまり、補強タブ23b、24bは、リセシェル20及びそれが埋め込まれるようにインサート成形されたハウジング10を有するリセプクタルコネクタ1が、実装される基板の取り付け面と交差する方向に突出することになる。
【0065】
ここで、補強タブ23b、24bは、リセプクタルコネクタ1が基板の取り付け面に実装される際に、ハンダ付けによって取り付け面に固定される。従って、この場合には、リセプクタルコネクタ1が、リセコンタクト30のリード部34及びリセアースコンタクト40のリード部44だけがハンダ付けによって基板の取り付け面に固定される場合と比較して、リセプクタルコネクタ1の基板の取り付け面からの剥離強度が増大する。
【0066】
また、本実施の形態では、補強タブ23b、24bは、基板の取り付け面に固定するために用いられると共に、基板上の接地部(グランドパターン)に接続されることによって接地される。従って、リセシェル20は、リセアースコンタクト40のシェル接触部43を介して接地されるだけでなく、補強タブ23b、24bを介して接地されることになる。
【0067】
一方、リセプクタルコネクタ1に嵌合されるプラグコネクタ2は、図4に示すように、ハウジング50と、プラグコンタクト60とを有している。なお、図4は、図1のリセプクタルコネクタに嵌合されるプラグコネクタの構成を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は図4(a)のX-X線における断面図である。
【0068】
ハウジング50は、絶縁性樹脂で形成された略直方体形状の部材であって、その中央部にはリセプクタルコネクタ1に嵌合される際に、リセプクタルコネクタ1の突出部12が差し込まれる略矩形の嵌合孔51が形成されている。従って、ハウジング50の一端面(図4(c)では上端面)は環状になる。そして、ハウジング50の外形は、リセプクタルコネクタ1のハウジング10の外周部と突出部12との間に形成された嵌合溝13の外形とほぼ同じである。また、嵌合孔51の大きさは、突出部12の水平方向の断面積とほぼ同じである。従って、プラグコネクタ2のハウジング50の環状の外周部は、リセプクタルコネクタ1の嵌合溝13内に嵌合可能である。
【0069】
ハウジング50の長辺側の一対の外周部50aの端部(図4(a)では紙面手前側の端部)において、プラグコンタクト60の取り付け位置には、図4(c)に示すように、プラグコンタクト60をハウジング50に取り付けるための圧入溝55がそれぞれ形成されている。
【0070】
プラグコンタクト60は、図4(c)に示すように、ハウジング50内に圧入される圧入部61と、リセプクタルコネクタ1に嵌合される際に弾性片部32、42が当接し且つリセプクタルコネクタ1に接続される端子となる当接部62と、その先端部がプラグコネクタ2が実装される基板の取り付け面に接続される端子となるリード部64とを有している。
【0071】
プラグコンタクト60は、略L型形状を有している。つまり、略棒状のリード部64からほぼ垂直に曲げられた部分が当接部62になり、当接部62の先端部から略U型にリード部64に近接する方向に折り曲げられた部分が圧入部61となる。このように、プラグコンタクト60では、圧入部61、当接部62及びリード部64はほぼ同一平面上に配置されている。
【0072】
このように、プラグコネクタ2では、ハウジング50の長辺側の一対の外周部50aのそれぞれに対して、12本のプラグコンタクト60が取り付けられている。従って、プラグコネクタ2は、24本のプラグコンタクト60を備えている。
【0073】
本実施の形態では、リセプクタルコネクタ1では、信号用端子金具であるリセコンタクト30の形状と接地用端子金具であるリセアースコンタクト40の形状とは異なっているが、プラグコネクタ2では、リセコンタクト30に接続される信号用端子金具と、リセアースコンタクト40に接続される接地用端子金具ともに、同じ形状のプラグコンタクト60が用いられる。
【0074】
次に、基板対基板型(board-to-board)のコネクタアッセンブリに含まれるリセプクタルコネクタ1とプラグコネクタ2との嵌合された状態について、図5を参照して説明する。図5は、リセプクタルコネクタとプラグコネクタとの嵌合状態を示す図である。図5(a)はリセコンタクトの取り付け位置における様子を示しており、図5(b)はリセアースコンタクトの取り付け位置における様子を示している。
【0075】
プラグコネクタ2のハウジング50の一端面の環状の外周部が、リセプクタルコネクタ1のハウジング10の嵌合溝13に差し込まれると、リセプクタルコネクタ1のリセコンタクト30及びリセアースコンタクト40の弾性片部32、42が、プラグコネクタ2のプラグコンタクト60の当接部62に当接しつつ嵌合される。そして、プラグコネクタ2がリセプクタルコネクタ1に適正に嵌合されると、プラグコネクタ2の大部分がリセプクタルコネクタ1のリセシェル20内に収容される。
【0076】
従って、図5(a)に示すように、リセプクタルコネクタ1のリセコンタクト30のリード部34と、プラグコネクタ2のプラグコンタクト60のリード部64とが電気的に接続される。一方、図5(b)に示すように、リセプクタルコネクタ1のリセアースコンタクト40のリード部44と、プラグコネクタ2のプラグコンタクト60のリード部64とが電気的に接続される。そして、リセアースコンタクト40のシェル接触部43がリセシェル20と接触しているので、リード部44及びリセアースコンタクト40と接続されたプラグコンタクト60のリード部64が接地された場合には、リセシェル20も接地される。
【0077】
次に、リセプクタルコネクタ1の製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、リセプクタルコネクタが製造される場合の各工程を示す図である。
【0078】
まず、プレス抜き加工工程において、図6(a)に示すように、第1シールド形成部21a〜24a、第1連結部25及び第2連結部26を有する枠体27がプレス抜き加工により作製される。ここで、枠体27は、互いに対向する一対の搬送用保持部80の間に配置されており、枠体27の両端部からそれぞれ外側に延在する接続部80aによって、一対の搬送用保持部80に接続されている。また、一対の搬送用保持部80には、搬送装置の突起部(図示しない)が嵌挿される開口80bが形成されている。
【0079】
なお、図6では、一対の搬送用保持部80は1つの枠体27だけを保持しているが、実際には、一対の搬送用保持部80はそれの延在方向(図6では上下方向)に所定間隔を隔てて配置された複数の枠体27を保持している。
【0080】
そして、プレス曲げ工程において、図6(b)に示すように、第1〜第4シールド形成部21a〜24aが、第1連結部25及び第2連結部26に対して折り曲げられることによって、リセシェル20が作製される。ここで、リセシェル20の両側は、接続部80aを介して一対の搬送用保持部80に接続された状態であるが、プレス曲げ工程においては、第1連結部25及び第2連結部26と一対の搬送用保持部80との位置関係(両者間の距離)は変化しない。従って、一対の搬送用保持部80間の間隔が変化しないので、プレス曲げ工程からインサート成形工程に移行するときに、一対の搬送用保持部80を利用して、一対の搬送用保持部80に保持された状態のリセシェル20をインサート成形用の金型内に搬送した場合でも、リセシェル20を金型内の適正な位置に精度よく配置することができる。
【0081】
その後、インサート成形工程において、図6(c)に示すように、リセシェル20が埋め込まれるようにハウジング10がインサート成形される。そして、ステッチング工程において、図6(d)に示すように、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40がハウジング10に取り付けられる。このようにして一対の搬送用保持部80に接続された状態のリセプクタルコネクタ1が作製されると、切断工程において、図6(e)に示すように、リセシェル20の第1連結部25及び第2連結部26と接続部80aとの境界に沿ってそれぞれ切断され、リセプクタルコネクタ1が一対の搬送用保持部80から切り離される。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態のリセプクタルコネクタ1は、プレス抜き加工で枠体27を作製した後で、その枠体27に対してプレス曲げ加工を施すだけで作製されるリセシェル20を備えている。従って、リセプクタルコネクタ1の薄型化且つ小型化が可能になる。また、リセシェル20の外側から内側に向かう方向の力が第3シールド面または第4シールド面に加わった場合でも、第3及び第4シールド面は第1及び第2シールド面の幅方向端部に当接することによって支持されるので、第3及び第4シールド面が内側に倒れにくくなり、リセシェル20の強度(第3シールド面及び第4シールド面に交差する方向の強度)が増大し、リセプクタルコネクタ1の強度が向上する。
【0083】
また、リセプクタルコネクタ1では、リセシェル20が埋め込まれるようにハウジング10がインサート成形されるので、リセシェル20のハウジング10への組み込み工程が不要になる。そのため、リセプクタルコネクタ1の製造工程が簡略化され、効率よく製造することができる。さらに、ハウジング10内にリセシェル20が埋め込まれているので、強度を低下させることなく、ハウジング10の薄肉化が可能になり、リセプクタルコネクタ1の小型化が可能になる。
【0084】
また、プレス曲げ工程では、第1及び第2シールド面21、22が第1連結部25と第2連結部26との間に設けられるように枠体27が折り曲げられるので、一対の搬送用保持部80と、それらに接続部80aを介してそれぞれ接続された第1連結部25及び第2連結部26との位置関係が変化しない。従って、曲げ工程においてリセシェル20が作製された後で、リセシェル20の両端部が接続部80aを介して一対の搬送用保持部80にそれぞれ接続された状態でインサート成形工程に移行した場合でも、一対の搬送用保持部80を利用して、インサート成形工程における金型に対するリセシェル20の位置が適正になるように精度よく搬送することができる。
【0085】
また、リセアースコンタクト40は、リセシェル20の外周面に接触するシェル接触部43を有していると共に、リード部44は接地される。従って、リセシェル20は、リセアースコンタクト40を介して接地されるので、リセシェル20によるシールド効果を得ることができる。
【0086】
また、リセシェル20の第3及び第4シールド面23、24には突起部23b、24bが形成されているので、リセプクタルコネクタ1が基板の取り付け面に実装される場合に、突起部23b、24bを用いて、リセプクタルコネクタ1を取り付け面にハンダ付け等によって固定することができる。従って、リセプクタルコネクタ1の基板からの剥離強度が向上する。そのため、リセプクタルコネクタ1に嵌合されたプラグコネクタ2が外される場合に、リセプクタルコネクタ1が基板から剥離するのが抑制される。また、リセシェル20を突起部23b、24bを介して接地することによって、リセシェル20の接地箇所を増やすことができるので、リセシェル20を確実に接地することが可能になる。
【0087】
また、リセプクタルコネクタ1に対してプラグコネクタ2が嵌合されたときに、プラグコネクタ2の大部分がリセプクタルコネクタ1のリセシェル20内に収容される。従って、プラグコネクタ2がシェルを備えていない場合でも、プラグコネクタ2において、リセプクタルコネクタ1のリセシェル20によるシールド効果を得ることができる。
【0088】
また、本実施の形態のリセプクタルコネクタ1の製造方法では、プレス抜き工程、プレス曲げ工程、インサート成形工程、ステッチング工程、切断工程の順に行われる。つまり、リセシェル20が埋め込まれるようにインサート成形されたハウジング10に対して、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40が組み付けられた後で、リセシェル20が一対の搬送用保持部80から切り離される。そのため、リセシェル20の両端部が接続部80aを介して一対の搬送用保持部80にそれぞれ接続された状態で、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40をハウジング10に組み付け可能である。従って、コンタクトの組み付け位置を一対の搬送用保持部80の開口80bの位置を基準として設定できるので、リセコンタクト30及びリセアースコンタクト40を適正な組み付け位置に精度よく組み付けることができる。
【0089】
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、リセシェル20において、第1及び第2シールド面21、22は、第1連結部25と第2連結部26との間に配置されているが、これらの配置は変更してもよい。従って、リセシェル20において、第1及び第2シールド形成部21a、22aのいずれか一方が第1連結部25と第2連結部26との間に配置されていなくてもよいし、第1及び第2シールド形成部21a、22aの両方が第1連結部25と第2連結部26との間に配置されていなくてもよい。但し、この場合には、本実施の形態のように、リセシェル20が一対の搬送用保持部80によって保持された状態でプレス曲げ工程が行われると、一対の搬送用保持部80間の間隔が変化する恐れがある。
【0090】
また、上述の実施の形態では、リセシェル20の第3及び第4シールド面23、24には突起部23b、24bが形成されているが、突起部23b、24bは形成されなくてもよい。また、シールド面に突起部が形成される場合でも、第1〜第4シールド面21〜24のいずれか1つが突起部を有していれば、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、上述の実施の形態では、枠体27において、第3シールド形成部23aは、折り曲げ線28b、28eに対して第1連結部25及び第2連結部26と反対側に配置されており、第1連結部25及び第2連結部26に対して上方に折り曲げられることによって、第3シールド面23を形成するようになっているが、枠体27において、第3シールド形成部23aが、折り曲げ線28b、28eに対して第1連結部25及び第2連結部26と同じ側に配置されており、第1連結部25及び第2連結部26に対して上方に折り曲げられることによって、第3シールド面23を形成してもよい。なお、第4シールド形成部24a及び第4シールド面24についても同様である。
【0092】
また、上述の実施の形態では、リセプクタルコネクタ1の製造方法において、プレス抜き工程、プレス曲げ工程、インサート成形工程、組み付け工程(ステッチング工程)、切断工程の順に行われているが、組み付け工程及び切断工程の順は変更可能である。つまり、リセプクタルコネクタ1の製造方法において、プレス抜き工程、プレス曲げ工程、インサート成形工程、切断工程、組み付け工程の順に行われてもよい。
【0093】
また、上述の実施の形態では、リセシェル20及びこれを接地するためのリセアースコンタクト40を備えたリセプクタルコネクタ1について説明しているが、シェル及びこれを接地するためのアースコンタクトを備えたプラグコネクタであっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係るリセプクタルコネクタの外観斜視図である。
【図2】図1のリセプクタルコネクタの構成を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)及び図2(d)はそれぞれ図2(a)のX-X線、Y-Y線における断面図である。
【図3】リセシェルの構成を示す図であり、図3(a)がプレス曲げ工程前の枠体の斜視図、図3(b)がプレス曲げ工程後のリセシェルの斜視図である。
【図4】図1のリセプクタルコネクタに嵌合されるプラグコネクタの構成を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は図4(a)のX-X線における断面図である。
【図5】リセプクタルコネクタとプラグコネクタとの嵌合状態を示す図である。
【図6】リセプクタルコネクタが製造される場合の各工程を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 リセプクタルコネクタ(電気コネクタ)
2 プラグコネクタ(相手方コネクタ)
10 ハウジング
20 リセシェル(電気コネクタ用シェル)
21〜24 第1〜第4シールド面
25 第1連結部
26 第2連結部
27 枠体
30 リセコンタクト(端子金具)
31 圧入部
32 弾性片部
34 リード部
40 リセアースコンタクト(端子金具;接地用端子金具)
41 圧入部
42 弾性片部
43 シェル接触部
44 リード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状にプレス抜き加工されてから曲げ加工が施された一体成形型の電気コネクタ用シェルであって、
第1シールド面と、
前記第1シールド面と対向する第2シールド面と、
前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差する第3シールド面と、
前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差し且つ前記第3シールド面と対向する第4シールド面と、
前記第1シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結する第1連結部と、
前記第2シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結する第2連結部とを備えていることを特徴とする電気コネクタ用シェル。
【請求項2】
前記第1及び第2シールド面は、前記第1連結部と前記第2連結部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ用シェル。
【請求項3】
前記第1〜第4シールド面の少なくとも1つが、電気コネクタが実装される基板の取り付け面と交差する方向に突出する突起部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の電気コネクタ用シェル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ用シェルと、
前記電気コネクタ用シェルが埋め込まれるようにインサート成形されたハウジングと、
前記ハウジングに保持されており、その一端部が電気コネクタが実装される基板の取り付け面に接続される端子となり且つ他端部が相手方コネクタに接続される端子となる複数の端子金具とを備えていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項5】
前記複数の端子金具の少なくとも1つは、前記電気コネクタ用シェルと接触するシェル接触部を有する接地用端子金具であって、
前記接地用端子金具の前記一端部は接地されることを特徴とする請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記電気コネクタ用シェルは、相手方コネクタをその内部に収容可能であることを特徴とする請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
互いに対向する一対の搬送用保持部の間に配置されると共に、その両端部からそれぞれ外側に延在する接続部を介して前記一対の搬送用保持部と接続される枠体を、プレス抜き加工により作製するプレス抜き加工工程と、
第1シールド面と、前記第1シールド面と対向する第2シールド面と、前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差する第3シールド面と、前記第1シールド面を含む平面及び前記第2シールド面を含む平面のそれぞれと交差し且つ前記第3シールド面と対向する第4シールド面と、前記第1シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結し且つ前記接続部の一方と連続した第1連結部と、前記第2シールド面と前記第3及び第4シールド面とを連結し且つ前記接続部の他方と連続した第2連結部とを有する一体成形型の電気コネクタ用シェルが形成されるように、前記枠体を折り曲げる曲げ工程と、
前記電気コネクタ用シェルが埋め込まれるようにハウジングをインサート成形するインサート成形工程と、
その一端部が電気コネクタが実装される基板の取り付け面に接続される端子となり且つ他端部が相手方コネクタに接続される端子となる複数の端子金具を前記ハウジングに組み付ける組み付け工程と、
前記第1及び第2連結部と前記接続部との境界でそれぞれ切断する切断工程とを備えていることを特徴とする電気コネクタの製造方法。
【請求項8】
前記曲げ工程では、前記第1及び第2シールド面が前記第1連結部と前記第2連結部との間に設けられるように、前記枠体が折り曲げられることを特徴とする請求項7に記載の電気コネクタの製造方法。
【請求項9】
前記切断工程が、前記組み付け工程の後に行われることを特徴とする請求項7または8に記載の電気コネクタの製造方法。
【請求項10】
前記組み付け工程が、前記切断工程の後に行われることを特徴とする請求項7または8に記載の電気コネクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−202644(P2006−202644A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14428(P2005−14428)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】