説明

電気光学装置および駆動回路

【課題】データ線の電圧振幅を簡易な構成で抑えるとともに、電源投入直後等におけるシ
ステムダウンを防止する。
【解決手段】画素は、画素容量と、一端が画素電極に接続され他端が容量線132に接続
された補助容量とを含む。容量線132は、1〜320行のそれぞれに対応して設けられ
、容量線駆動回路は、1〜320行の容量線132をそれぞれ両側に設けられる。
ここで、容量線駆動回路は、各容量線132に対応した単位制御回路152を有し、各
単位制御回路152は、インバータ53、54によるラッチ回路50と、容量信号Scom
を供給する信号線153と容量線132との間に介挿され、ラッチ回路の端子PがHレベ
ルであるときにオンとなり、Lレベルであるときにオフするトランスミッション・ゲート
55とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶などの電気光学装置において、データ線の電圧振幅を抑える技術に関す
る。
【背景技術】
【0002】
液晶などの電気光学装置では、走査線とデータ線との交差に対応して画素容量(液晶容
量)が設けられるが、この画素容量を交流駆動する必要がある場合、データ信号の電圧振
幅が正負の両極性にわたるので、データ線にデータ信号を供給するデータ線駆動回路にお
いては、構成素子に電圧振幅に対応した耐圧が要求されるだけでなく、消費電力の面で不
利になる。
そこで、画素容量に並列して補助容量を設けるとともに、各行において補助容量を共通
接続した容量線を、走査線の選択に同期させて二値電圧で駆動することにより、データ信
号の電圧振幅を抑える技術が提案されている(特許文献1参照)。
容量線に二値電圧のいずれかを印加する容量線駆動回路は、走査線の選択に同期するよ
うにラッチ回路が設けられるとともに、そのラッチ結果に応じて、二値電圧のいずれかを
容量線に印加する構成となっている。
【特許文献1】特開2002−196358号公報参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、容量線は、抵抗成分や容量成分によってCR時定数が大きいので、容量線駆
動回路を容量線の一方側に設けた構成では、容量線の他方側において遅延が発生して、目
的とする電圧に迅速に変化しない可能性がある。このため、同じ構成の容量線駆動回路を
容量線の両側に設ける構成も提案されている。
しかしながら、容量線の両側に容量線駆動回路を設けた構成では、電源投入直後等にお
いて、両側のラッチ回路における出力状態が確定しないので、出力状態が互いに異なって
しまう場合がある。出力状態が異なっていると、一方の側で二値電圧のうちの高位電圧が
、他方の側で二値電圧のうちの低位電圧が、それぞれ同じ容量線に印加されて、大電流が
流れる結果、電源投入直後にシステムダウンしてしまう、という不都合が懸念された。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、容量線駆動回
路を容量線の両側に設けた構成において、電源投入直後等におけるシステムダウンを防止
した技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気光学装置の駆動回路は、複数の走査線と
、複数のデータ線と、前記複数の走査線の各々に対応して設けられた容量線と、前記複数
の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応してそれぞれ設けられ、各々は、一端が前
記データ線に接続されるとともに、前記走査線が選択されたときに前記一端と他端との間
で導通状態になる画素スイッチング素子と、一端が前記画素スイッチング素子の他端に接
続され、他端がコモン電極に接続される画素容量と、前記画素容量の一端と前記走査線に
対応して設けられた容量線との間に介挿された補助容量と、を含む画素と、を有する電気
光学装置の駆動回路であって、前記走査線を所定の順番で選択する走査線駆動回路と、選
択された走査線に対応する画素に対し、当該画素の階調に応じた電圧のデータ信号を、デ
ータ線を介して供給するデータ線駆動回路と、一の走査線に対応して設けられた容量線に
対し、当該一の走査線が選択されたときに二値電圧の一方とし、当該一の走査線の選択が
終了したとき以降に前記二値電圧の他方にシフトさせる容量線駆動回路と、を具備し、前
記容量線駆動回路は、前記容量線の一端側および他端側のそれぞれに、前記容量線の各々
に対応して設けられた単位制御回路を備え、一の容量線に対応する単位制御回路は、少な
くとも当該一の容量線に対応する走査線が選択される期間において論理レベルの一方に保
持するラッチ回路と、前記二値電圧が所定周期で切り替わる容量信号を供給する信号線と
前記容量線との間において、前記論理レベルが一方のときに導通状態になり、前記論理レ
ベルが他方のときに非導通状態になるスイッチと、を有することを特徴とする。本発明に
よれば、電源投入直後等において一端側および他端側にそれぞれ設けられた単位制御回路
のラッチ回路の保持状態が異なっていても、一方のスイッチがオン、他方のスイッチがオ
フとなり、容量線を介して二値電圧間が短絡状態になることはないので、システムダウン
を防止することが可能となる。
【0005】
本発明において、前記容量信号は、走査線が1本ずつ選択される周期であって、いずれ
の走査線も選択されないタイミングで電圧が切り替わる構成としても良い。この構成によ
れば、走査線毎に書込極性を反転することが可能となる。
また、本発明において、前記容量信号は、第1容量信号および第2容量信号があり、前
記第1容量信号は、走査線が2本ずつ選択される周期であって、いずれの走査線も選択さ
れないタイミングで電圧が切り替わり、前記第2容量信号は、前記第1容量信号に対して
位相が90度進んだ又は遅れた信号であり、奇数行の単位制御回路における前記スイッチ
は、前記第1容量信号を供給する信号線と前記容量線との間において介挿され、偶数行の
単位制御回路における前記スイッチは、前記第2容量信号を供給する信号線と前記容量線
との間において介挿された構成としても良い。この構成によれば、走査線の2本毎に書込
極性を反転することが可能となる。
本発明において、前記スイッチが非導通状態となる直前における前記容量線の電圧状態
を保持する保持回路を有する構成としても良い。この構成によれば、容量線がハイ・イン
ピーダンス状態にならないので、ノイズ等のより影響が排除されて、表示品位の低下を防
止することが可能となる。
また、本発明は、電気光学装置の駆動回路のみならず、電気光学装置としても概念する
ことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0007】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る
電気光学装置の構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、電気光学装置10は、表示領域100を有し、この表示領域
100の周辺に、走査線駆動回路140、容量線駆動回路150L、150R、データ線
駆動回路190が配置した周辺回路内蔵型のパネル構成となっている。また、表示制御回
路20は、上記周辺回路内蔵型のパネルとは、例えばFPC(flexible printed circuit
)基板によって接続される。
【0008】
表示領域100は、画素110が配列する領域であり、本実施形態では、0行目から3
21行目までの計322行の走査線112が、図において横(行)方向に延在する一方、
240列のデータ線114が縦(列)方向に延在するように、それぞれ設けられている。
そして、図1において、最も上の0行目と最も下の321行目を除いた1〜320行目
の走査線112と、1〜240列目のデータ線114との交差に対応して、画素110が
それぞれ配列している。したがって、本実施形態では、画素110が表示領域100にお
いて縦320行×横240列でマトリクス状に配列することになるが、本発明をこの配列
に限定する趣旨ではない。
【0009】
なお、0行目および321行目の走査線112は、画素110に対応していないので、
ダミー走査線として機能することになる。また、1〜320行目の走査線112に対応し
て、それぞれ容量線132が行方向に延在して設けられている。このため、本実施形態に
おいて、容量線132については、ダミーとなる0行目および321行目を除いた1〜3
20行目の走査線112に対応して設けられることになる。
【0010】
ここで、画素110の詳細な構成について説明する。図2は、画素110の構成を示す
図であり、i行目及びこれに下方向で隣接する(i+1)行目と、j列目及びこれに右方
向で隣接する(j+1)列との交差に対応する2×2の計4画素分の構成が示されている

なお、i、(i+1)は、画素110が配列する行を一般的に示す場合には、1以上3
20以下の整数であるが、走査線112の行を一般的に説明する場合には、ダミーである
0行目および321行目を含める必要があるので0以上321以下の整数になる。また、
j、(j+1)は、画素110が配列する列を一般的に示す場合の記号であって、1以上
240以下の整数である。
【0011】
図2に示されるように、各画素110は、画素スイッチング素子として機能するnチャ
ネル型の薄膜トランジスタ(thin film transistor:以下単に「TFT」と略称する)1
16と、画素容量(液晶容量)120と、補助容量130とを有する。各画素110につ
いては互いに同一構成なので、i行j列に位置するもので代表して説明すると、当該i行
j列の画素110において、TFT116のゲート電極はi行目の走査線112に接続さ
れる一方、そのソース電極はj列目のデータ線114に接続され、そのドレイン電極は画
素容量120の一端たる画素電極118に接続されている。
画素容量120の他端はコモン電極108に接続される。このコモン電極108は、図
1に示されるように全ての画素110にわたって共通であり、電圧LCcomに、時間的に
一定になるように保たれる。
【0012】
i行j列の画素110における補助容量130は、一端が画素電極118(TFT11
6のドレイン電極)に接続されるとともに、他端がi行目の容量線132に接続されてい
る。ここで、画素容量120および補助容量130における容量値を、それぞれCpixお
よびCsとする。
なお、図2において、Yi、Y(i+1)は、それぞれi、(i+1)行目の走査線112に
供給される走査信号を示し、また、Sci、Sc(i+1)は、それぞれi、(i+1)行目の容
量線132の電圧を示している。
【0013】
表示領域100は、画素電極118が形成された素子基板とコモン電極108が形成さ
れた対向基板との一対の基板同士を、電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保
って貼り合わせるとともに、この間隙に液晶105を封止した構成となっている。このた
め、画素容量120は、画素電極118とコモン電極108とで誘電体の一種である液晶
105を挟持したものとなり、画素電極118とコモン電極108との差電圧を保持する
構成となる。この構成において、画素容量120では、その透過光量が当該保持電圧の実
効値に応じて変化する。
なお、本実施形態では説明の便宜上、画素容量120において保持される電圧実効値が
ゼロに近ければ、光の透過率が最大となって白色表示になる一方、電圧実効値が大きくな
るにつれて透過する光量が減少して、ついには透過率が最小の黒色表示になるノーマリー
ホワイトモードであるとする。
【0014】
説明を再び図1に戻すと、表示制御回路20は、各種の制御信号を出力して電気光学装
置10における各部の制御等をするとともに、容量信号Scomを容量線駆動回路150L
、150Rに信号線153を介して供給するほか、コモン電極108に電圧LCcomを印
加する。
【0015】
また、上述したように、表示領域100の周辺には、走査線駆動回路140や、容量線
駆動回路150L、150R、データ線駆動回路190などの周辺回路が設けられている
。このうち、走査線駆動回路140は、表示制御回路20による制御にしたがって走査線
112を図1において上から数えて0、1、2、3、…、320、321行目という順番
で選択し、選択した走査線への走査信号をHレベルに相当する選択電圧VHとし、それ以
外の走査線への走査信号をLレベルに相当する非選択電圧VLとする。
詳細には、走査線駆動回路140は、図4に示されるように、表示制御回路20から供
給されるスタートパルスDyを、デューティ比が50%であるクロック信号Clyにしたが
って順次シフトさせるとともに、パルス幅をクロック信号Clyの半周期よりも狭め、時間
的に前方に寄せて、走査信号Y0、Y1、Y2、Y3、Y4、…、Y320、Y321として出力す
る。
ここで、フレーム期間とは、パネルを駆動することによって、画像の1コマ分を表示さ
せるのに要する期間をいい、垂直走査周波数が60Hzであれば、その逆数である16.
7ミリ秒である。このようなフレーム期間は、本実施形態では図4に示されるように、走
査信号Y1がHレベルになってから走査信号Y320がLレベルになるまでの垂直有効走査期
間Faのほか、それ以外の垂直帰線期間が含まれる。
なお、クロック信号Clyの論理レベルが一定である半周期分の期間を、水平走査期間(
H)とする。この水平走査期間(H)のうち、時間的に前方において走査信号がHレベル
となる期間を水平有効走査期間とすると、残りの期間が水平帰線期間になる。
【0016】
次に、説明の便宜上、表示制御回路20が出力する制御信号のうち、極性指定信号Pol
と容量信号Scomについて説明する。
まず、極性指定信号Polは、その論理レベルがHレベルであれば、水平有効期間におけ
る書込極性を負極性に指定する信号であり、Lレベルであれば、当該水平有効期間におけ
る書込極性を正極性に指定する信号である。
極性指定信号Polは、本実施形態では、その論理レベルが水平走査期間と同じ期間毎に
、クロック信号Clyの論理レベルが切り替わるタイミングよりも先行したタイミングにお
いて、すなわち、詳細には、隣接する2行の走査信号がいずれもLレベルになる水平帰線
期間において切り替わる。このため、本実施形態では、画素への書き込み極性が、フレー
ムの期間にわたって行毎に反転する走査線(ライン)反転となる。
なお、極性指定信号Polは、隣接するフレーム期間同士の同一水平有効期間で比較した
ときに、論理反転されているが、このように論理反転する理由は、直流成分の印加による
液晶の劣化を防止するためである。
また、本実施形態における書込極性については、画素容量120に対して階調に応じた
電圧を保持させる際に、コモン電極108の電圧LCcomよりも画素電極118の電位を
高位側とする場合を正極性といい、低位側とする場合を負極性という。電圧については、
特に説明のない限り、図示省略した電源の接地電位を電圧ゼロの基準としている。
次に、容量信号Scomは、図4に示されるように、極性指定信号Polに同期する信号で
あって、極性指定信号PolがLレベルであれば、二値電圧のうち、低位側の電圧VSLにな
り、極性指定信号PolがHレベルであれば高位側の電圧VSHになる信号である。
【0017】
データ線駆動回路190は、走査線駆動回路140により選択される走査線112に位
置する画素110に対し、当該画素の階調に応じた電圧であって、極性指定信号Polで指
定された極性に応じた電圧のデータ信号を、データ線114を介して供給する。この供給
動作を、データ線駆動回路190は、選択される走査線112に位置する1〜240列の
それぞれについて実行する。
なお、データ線駆動回路190は、おおよそ次のような構成となっている。すなわち、
データ線駆動回路190は、縦320行×横240列のマトリクス配列に対応した記憶領
域(図示省略)を有し、各記憶領域には、それぞれ対応する画素110の階調(明るさ)
を指定する表示データDaが記憶される。各記憶領域に記憶される表示データDaは、表示
内容に変更が生じた場合に、表示制御回路20によってアドレスとともに変更後の表示デ
ータDaが供給されて書き換えられる。そして、データ線駆動回路190は、選択される
走査線112に位置する画素110の表示データDaを記憶領域から読み出すとともに、
当該読み出した表示データを、指定された極性に応じた電圧のデータ信号に変換し、デー
タ線114に供給することとなる。
【0018】
容量線駆動回路150Lは、表示領域100に対し図1において左側に配置し、容量線
駆動回路150Rは、表示領域100において右側に配置する。容量線駆動回路150L
、150Rは、それぞれ1〜320行目に対応して単位制御回路152を有し、各単位制
御回路152がそれぞれ容量線132を両側から駆動する構成となっている。
ここで、本実施形態において、容量線駆動回路150L、150Rは、表示領域100
に対してそれぞれ左右側に配置しているが、電気的な構成は同一である。このため、電気
的な構成については、容量線駆動回路150Lで代表させて説明する。
【0019】
図3は、容量線駆動回路150Lにおいてi行目および(i+1)行目に対応する単位
制御回路152の構成を示す図である。
この図に示されるように、各行の単位制御回路152は、TFT51、52、インバー
タ53、54、トランスミッション・ゲート55およびインバータ56を有する。
このうち、i行目の単位制御回路152について説明すると、インバータ53の出力端
はインバータ54の入力端に接続され、インバータ54の出力端はインバータ53の入力
端に接続されているので、一種の記憶性を有するラッチ回路50が構成されている。
ここで、便宜的にラッチ回路50の出力端となるインバータ53の出力端(インバータ
54の入力端)をPと表記する。
TFT51のソース電極は、論理レベルのLレベルに相当する電圧VLの給電線に接続
され、そのドレイン電極がインバータ53の入力端に接続され、そのゲート電極がi行目
に対して1行上の(i−1)行目の走査線112に接続されて、走査信号Y(i-1)が供給
される。一方、TFT52のソース電極は、電圧VLの給電線に接続され、そのドレイン
電極がインバータ54の入力端に接続され、そのゲート電極がi行目に対して1行下の(
i+1)行目の走査線112に接続されて、走査信号Y(i+1)が供給される。
【0020】
トランスミッション・ゲート55は、容量信号Scomが供給される信号線153と容量
線132との間に介挿されたアナログスイッチであり、端子Pの論理レベルがHレベルで
あるときにオン(導通)状態になり、端子PがLレベルであるときにオフ(非導通)状態
になる。このため、端子PがHレベルであるとき、トランスミッション・ゲート55のオ
ンにより、容量信号Scomが容量線132に供給されることになる。
なお、トランスミッション・ゲート55は、本実施形態では、nチャネル型およびpチ
ャネル型TFTを組み合わせた相補型としているので、端子Pの論理レベルを正転制御信
号とし、端子Pの論理レベルをインバータ56により反転したものを、反転制御信号とし
ている。
【0021】
このような構成において、i行目の単位制御回路152における端子Pは、第1に、1
行上の走査信号Y(i-1)がHレベルになると、TFT51がオンになり、Lレベルがイン
バータ53により反転される結果、Hレベルになり、第2に、走査信号YiがHレベルに
なるとき、走査信号Y(i-1)がLレベルになっているので、TFT51がオフするが、ラ
ッチ回路50によってHレベルに保持され、第3に、走査信号Y(i+ 1)がHレベルになる
と、TFT52がオンするので、Lレベルに書き換えられ、第4に、走査信号Y(i+1)が
Lレベルになる以降の期間では、TFT52がオフするが、ラッチ回路50によってLレ
ベルに保持される。
すなわち、i行目の単位制御回路152における端子Pは、1行上の(i−1)行目お
よび自行のi行目が選択される水平走査有効期間を含む二水平走査期間のみHレベルにな
り、他の期間ではLレベルに保持される。このため、i行目の単位制御回路152におけ
るトランスミッション・ゲート55は、当該二水平走査期間のみにおいてオンになり、他
の期間ではオフになるので、i行目の容量線132の電圧Sciは、当該二水平走査期間に
限れば、容量信号Scomと同一波形になる。
なお、各容量線132は、それぞれ容量成分が寄生するので、トランスミッション・ゲ
ート55がオフになっても、直前の電圧状態が保持される。
【0022】
したがって、1行目の容量線132の電圧Sc1から320行目の容量線132の電圧S
c320までは、図4に示される通りとなる。
なお、図4において、電圧Sc1〜Sc320の波形のうち、太線部分は、トランスミッショ
ン・ゲート55がオンする期間に相当する波形であり、細線部分は、トランスミッション
・ゲート55がオフする期間に相当する波形であって、寄生容量成分によって電圧が保た
れている部分である。
【0023】
次に、本実施形態に係る電気光学装置10の動作について説明する。
まず、走査信号Y1がHレベルになる。走査信号Y1がHレベルになると、1行1列〜1
行240列の画素におけるTFT116がオンするので、これらの画素電極118には、
データ信号X1、X2、X3、…、X240が印加される。このため、1行1列〜1行240列
の画素容量120には、データ信号の電圧とコモン電極108の電圧LCcomとの差電圧
が書き込まれることになる。
一方、走査信号Y1がHレベルになる水平有効走査期間において極性指定信号PolがL
レベルであって正極性書込が指定されていれば、1行目の容量線132の電圧Sc1は、低
位側の電圧VSLになる。このため、1行1列〜1行240列の補助容量130には、それ
ぞれデータ信号の電圧と電圧VSLとの差電圧が書き込まれることになる。
【0024】
この後、走査信号Y1がLレベルになると、1行1列〜1行240列の画素におけるT
FT116がオフする。また、走査信号Y1がLレベルになる水平帰線期間では、極性指
定信号Polが反転するので、1行目の容量線132の電圧Sc1は、高位側の電圧VSHに切
り替わり、走査信号Y1がHレベルであったときと比較して(VSH−VSL)だけ上昇する
。この電圧上昇分をΔVとすると、画素容量120と補助容量130との直列接続におい
て、画素容量120の他端(コモン電極)が電圧LCcomで一定に保たれたまま、補助容
量130の他端が電圧ΔVだけ上昇するので、電荷の移動によって、画素電極118がデ
ータ信号の電圧よりも上昇する。
ここで、走査信号Y1がHレベルのときに、j列目のデータ信号Xjが電圧Vjであった
としたとき、1行j列の画素110において、画素容量120と補助容量130との直列
接続点である画素電極118の電圧は、
Vj+{Cs/(Cs+Cpix)}・ΔV
となり、データ信号の電圧Vjよりも、1行目の容量線132の電圧変化分ΔVに、画
素容量120および補助容量130の容量比{Cs/(Cs+Cpix)}を乗じた値だけ上
昇することになる。
【0025】
換言すれば、1行目の容量線132の電圧Sc1がΔVだけ上昇すると、画素電極118
の電圧は、走査信号Y1がHレベルであったときのデータ信号の電圧Vjよりも、{Cs/
(Cs+Cpix)}・ΔV(=ΔVpixとする)だけ上昇することになる。
ここで、正極性書込が指定される水平有効走査期間におけるデータ信号Xjは、画素電
極118が電圧ΔVpixだけ上昇することを見越した電圧Vjに設定される。すなわち、上
昇した後の画素電極118の電圧がコモン電極108の電圧LCcomよりも高位であって
両者の差電圧がi行j列の階調に応じた値となるように設定される。
なおここでは、1行j列の画素容量120および補助容量130について説明したが、
同様な動作は、走査線112および容量線132を兼用する1行1列〜1行240列につ
いて同時並行的に同様に実行される。
これにより、1行1列〜1行240列の画素容量120には、それぞれ階調に応じた正
極性電圧が保持されて、当該階調に応じた透過率になる。
【0026】
続いて、走査信号Y2がHレベルになる。走査信号Y2がHレベルになると、2行1列〜
2行240列の画素におけるTFT116がオンするので、これらの画素電極118には
、データ信号X1、X2、X3、…、X240が印加され、2行1列〜2行240列の画素容量
120には、データ信号の電圧と電圧LCcomとの差電圧が書き込まれることになる。
一方、走査信号Y1がHレベルになる水平走査期間において正極性書込が指定されてい
たので、走査信号Y2がHレベルになる水平有効走査期間では、極性指定信号PolがHレ
ベルになり、負極性書込が指定される。このため、2行目の容量線132の電圧Sc2は、
高位側の電圧VSHになる。このため、2行1列〜2行240列の補助容量130には、そ
れぞれデータ信号の電圧と電圧VS Hとの差電圧が書き込まれることになる。
【0027】
この後、走査信号Y2がLレベルになると、2行1列〜2行240列の画素におけるT
FT116がオフする。また、走査信号Y2がLレベルになる水平帰線期間では、極性指
定信号Polが反転するので、2行目の容量線132の電圧Sc2は、低位側の電圧VSLに切
り替わり、走査信号Y2がHレベルであったときと比較して(VSH−VSL)、すなわち電
圧ΔVだけ低下する。このため、画素容量120の他端が電圧LCcomで一定に保たれた
まま、補助容量130の他端が電圧ΔVだけ低下するので、電荷の移動によって画素電極
118もデータ信号の電圧よりも低下する。
ここで、j列目についてみると、2行j列の画素110において、画素容量120と補
助容量130との直列接続点である画素電極118の電圧は、
Vj−{Cs/(Cs+Cpix)}・ΔV
となり、データ信号の電圧Vjよりも、2行目の容量線132の電圧変化分ΔVに、画
素容量120および補助容量130の容量比{Cs/(Cs+Cpix)}を乗じた値だけ低
下することになる。
【0028】
ここで、負極性書込が指定される水平有効走査期間におけるデータ信号Xjは、画素電
極118が電圧ΔVpixだけ低下することを見越した電圧Vjに設定される。すなわち、低
下した後の画素電極118の電圧がコモン電極108の電圧LCcomよりも低位であって
両者の差電圧がi行j列の階調に応じた値となるように設定される。
同様な動作は、走査線112および容量線132を兼用する2行1列〜2行240列に
ついて同時並行的に同様に実行されるので、1行1列〜1行240列の画素容量120に
は、それぞれ階調に応じた負極性電圧が保持されて、当該階調に応じた透過率になる。
【0029】
フレーム期間においては、走査信号Y1、Y2、Y3、…、Y320が順番にHレベルになる
ので、3、5、7、…、319行目については1行目と同様な動作が、4、6、8、…、
320行目については2行目と同様な動作が、それぞれ実行される。これにより、奇数行
の画素においては、階調に応じた正極性電圧が保持され、偶数行の画素においては、階調
に応じた負極性電圧が保持されて、それぞれ当該階調に応じた透過率になる。
次のフレーム期間では、各行において書込極性が反転して、奇数行の画素に対し負極性
書込が指定され、偶数奇数行の画素に対し負極性書込が指定される以外は、同様な動作と
なる。
【0030】
図5は、i行目の走査信号Yiと、i行目の容量線の電圧Sciとの波形に対して、i行
j列の画素電極118の電圧Pix(i,j)がどのように変化するのかを示す図である。
この図に示されるように、画素電極118の電圧Pix(i,j)は、走査信号YiがHレベル
になったときに、正極性書込が指定されていれば、データ信号の電圧Vp(+)になり、この
後、容量線132の電圧Sciが電圧VSLから電圧VSHに切り替えられることにより、電圧
ΔVpi xだけ上昇することが示され、また、負極性書込が指定されていれば、データ信号
の電圧Vp(-)になり、この後、容量線132の電圧Sciが電圧VSHから電圧VSLに切り替
えられることにより、電圧ΔVpixだけ低下することが示されている。
なお、i行目では、1行上の走査信号Y(i-1)がHレベルになることによって、容量線
132の電圧Sciが切り替えられるので、画素電極118の電圧も変化するが、この変化
期間はフレーム期間のうち、一水平走査期間に過ぎず、透過率に与える影響をほとんど無
視することができる。
また、本実施形態では、走査線の選択が終了したのち、容量線132の電圧Sciが電圧
VSLから電圧VSHに、もしくは、電圧VSHから電圧VSLに切り替えられるタイミングを次
の走査線が選択されたタイミングとしているが、これに限定されることなく、走査線の選
択が終了したとき以降、すなわち、終了と同時点から一垂直期間後の次のフレーム書き込
みまでの間であれば変更可能である。
【0031】
本実施形態では、画素電極118の電圧範囲が、データ信号の電圧振幅よりも拡大され
るので、逆にいえば、データ信号の電圧振幅については、画素電極118の電圧範囲より
も狭くて済むので、データ線駆動回路190を構成する素子の耐圧が狭くて済むだけでな
く、データ線114における電圧振幅も狭くなるので、データ線114の寄生容量により
無駄に電力が消費されることもなくなる。
【0032】
ところで、本実施形態において、走査信号Y1〜Y320のHレベルが少なくとも一巡すれ
ば、容量線駆動回路150L、150Rにおける1〜320行目の単位制御回路152に
おける端子Pの保持状態がすべて確定する。
しかしながら、電源投入直後のように、走査信号Y1〜Y320のHレベルが一巡しない状
況では、端子Pの保持状態が確定しない。このため、同じ行の単位制御回路152におい
て、端子Pの保持状態が異なっている場合が当然にあり得る。例えば、同じ行の単位制御
回路152における端子Pの保持状態が、左側に位置する容量線駆動回路150LではH
レベルであるのに対し、右側に位置する容量線駆動回路150RではLレベルになってし
まう場合、または、その逆となってしまう場合、があり得る。
【0033】
ここで、従来の技術で述べたように、ラッチ回路の保持状態に応じて、容量線を高位側
の電圧VSHまたは低位側の電圧VSLを選択する構成において、同じ行の保持状態が食い違
っている場合、例えば図6(b)に示されるように、左側でHレベルであり、右側でLレ
ベルであるような場合、容量線132の一方側では電圧VSHが選択され、他方側では電圧
VSLが選択されて、短絡状態になるので、容量線に大電流が流れてしまう。この短絡状態
は、走査信号Y1〜Y320のHレベルが少なくとも一巡すれば、解消するが、電圧VSH、V
SLを供給する電源回路の容量が十分でなければ、一巡する前にシステムダウンしてしまう
ことになる。
これに対して、本実施形態では、走査信号Y1〜Y320のHレベルが一巡しない状況にお
いて、端子Pの保持状態が両側で食い違っていても、例えば図6(a)に示されるように
、左側でHレベルであり、右側でLレベルであっても、Lレベルである方のトランスミッ
ション・ゲート55がオフするだけであるので、容量線132に大電流が流れることが防
止される。
なお、走査信号Y1〜Y320のHレベルが一巡すれば、端子Pの保持状態が両側で一致す
ることになるので、以降の動作については特に問題としない。
【0034】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置について説明する。図7は、この第2実施形態
に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
図1に示した第1実施形態では、書込極性を1行ずつ反転させる方式としたが、第2実
施形態では、書込極性を2行ずつ反転させる方式としたものである。このため、第2実施
形態では、第1実施形態とは、容量信号が第1容量信号Scom1、第2容量信号Scom2に分
かれている点(第1相違点)と、容量線駆動回路150L、150Rにおける単位制御回
路152の接続関係が奇数行および偶数行で異なっている点(第2相違点)とにおいて相
違している。
他の点については、第1実施形態と共通なので、ここでは、第1および第2相違点を中
心に説明することにする。
【0035】
まず、上述したように、第2実施形態では、書込極性を2行ずつ反転させる方式とした
ので、極性指定信号Polは、図9に示されるように、1、2・3、4・5、6・7、…、
318・319、320行目が選択される水平有効走査期間において同一論理レベルにな
り、かつ、二水平走査期間と同じ期間毎に論理レベルが反転する。なお、極性指定信号P
olの論理レベルが、クロック信号Clyの論理レベルが切り替わるタイミングよりも先行し
たタイミングで切り替わる点は、第1実施形態と同様である。
【0036】
次に、第1相違点について説明する。
第1容量信号Scom1は、図9に示されるように、極性指定信号PolがLレベルであれば
電圧VSLになり、極性指定信号PolがHレベルであれば電圧VSHになる。また、第2容量
信号Scom2は、第1容量信号Scom1の位相よりも位相を90度進ませた(270度遅らせ
た)信号である。
【0037】
続いて、第2相違点について説明する。
図8は、容量線駆動回路150L(150R)において奇数i行目と、この奇数i行目
に対して1行下の偶数(i+1)行目とに対応する単位制御回路152の2行分の構成を
示す図である。
この図に示されるように、奇数i行目の単位制御回路152におけるトランスミッショ
ン・ゲート55は、第1容量信号Scom1が供給される信号線155と容量線132との間
に介挿され、偶数(i+1)行目の単位制御回路152におけるトランスミッション・ゲ
ート55は、第2容量信号Scom2が供給される信号線156と容量線132との間に介挿
されている。
【0038】
なお、図8に示すトランスミッション・ゲート55が、端子Pの論理レベルがHレベル
であるときにオンし、端子PがLレベルであるときにオフする点は、単位制御回路152
の他の部分も含めて、第1実施形態と同様である。
このため、奇数i行目の単位制御回路152における端子Pは、1行上の(i−1)行
目および自行のi行目が選択される水平有効走査期間を含む二水平走査期間のみHレベル
になり、他の期間ではLレベルに保持されるので、奇数i行目の容量線132の電圧Sci
は、当該二水平走査期間に限れば、第1容量信号Scom1と同一波形になる。
同様に、偶数(i+1)行目の単位制御回路152における端子Pは、1行上のi行目
および自行の(i+1)行目が選択される水平有効走査期間を含む二水平走査期間のみH
レベルになり、他の期間ではLレベルに保持されるので、偶数(i+1)行目の容量線1
32の電圧Sc(i+1)は、当該二水平走査期間に限れば、第2容量信号Scom2と同一波形に
なる。
したがって、1行目の容量線132の電圧Sc1から320行目の容量線132の電圧S
c320までは、図9に示される通りとなり、走査線が選択される水平有効走査期間において
正極性書込が指定されていれば、当該水平有効期間終了後の水平帰線期間において電圧V
SLから電圧VSHに切り替えられ、負極性書込が指定されていれば、当該水平有効期間終了
後の水平帰線期間において電圧VSHから電圧VSLに切り替えられる動作が、2行ずつ交互
に実行される。
【0039】
なお、各行での書込動作については、次の点を除き、第1実施形態と同様である。
すなわち、i行目でみたときに、容量線132の電圧Sciは、第1実施形態では、1行
上の走査信号Y(i-1)がHレベルになると切り替えられ、当該走査信号Y(i-1)がLレベル
になった後であって自行の走査信号YiがHレベルになる前に再度切り替えられたのに対
し、第2実施形態では、1行上の走査信号Y(i-1)がHレベルになっても切り替えられず
、当該走査信号Y(i-1)がLレベルになった後であって自行の走査信号YiがHレベルとな
る前に初めて替えられる。
このため、第2実施形態では、i行目の容量線132は、1行上の走査信号Y(i-1)が
Hレベルになったときでも電圧が切り替えられないので、画素電極118の電圧が階調に
応じた値に保たれる結果、第1実施形態と比較して透過率に悪影響を与えないのである。
【0040】
なお、第2実施形態では、第2容量信号Scom2を、第1容量信号Scom1の位相よりも位
相を90度進ませた信号としたが、第1容量信号Scom1の位相よりも位相を90度遅らせ
た信号としても良い。第2容量信号Scom2を、第1容量信号Scom1の位相よりも位相を9
0度遅らせた信号とすると、同極性となる行の組み合わせが、1・2、3・4、5・6、
…、319・320行目に変更される。
【0041】
ところで、容量線駆動において重要なのは、i行目において、走査信号YiがHレベル
であったときと、その後、走査信号YiがLレベルになったときとで容量線132を電圧
ΔVだけシフトさせることである。第1および第2実施形態では、走査信号YiがHから
Lレベルに変化してから、次の走査信号Y(i+1)がLからHレベルとなるまでの水平帰線
期間で容量信号Scom(Scom1、Scom2)の電圧を変化させているので、i行目の単位制
御回路152における端子Pは、少なくとも自行のi行目が選択される水平走査期間でH
レベルであれば良いことになる。
このため、第1および第2実施形態において、上から下方向に走査線を順に選択する場
合に限ってみれば、i行目の単位制御回路152におけるTFT51のゲート電極を自行
のi行目の走査線112に接続して、走査信号Yiを供給しても良い。
ただし、後述するように、上から下方向に走査線を選択する場合と、下から上方向に走
査線を選択する場合とのいずれにも対応可能とする場合には、対称性を確保するために、
TFT51、52のゲート電極を、1行上の走査線と1行下の走査線に接続する構成が好
ましい。
【0042】
<第3実施形態>
上述した第1および第2実施形態において、例えばi行目でみたとき、単位制御回路1
52における端子Pは、1行上の(i−1)行目および自行のi行目が選択される水平有
効走査期間を含む二水平走査期間以外の期間では、Lレベルに保持される。このため、当
該二水平走査期間以外の期間では、トランスミッション・ゲート55がオフになるので、
容量線132は、どの信号線153(155、156)にも接続されない状態(ハイ・イ
ンピーダンス状態)であり、寄生容量等によって電圧がかろうじて保持されているに過ぎ
ないことになる。もし、このハイ・インピーダンス状態のときに、ノイズ等が容量線13
2に重畳されると、当該容量線が電圧VSH、VSLから変動する。容量線132の電圧変動
は、その容量線132を共通にする1行分の画素容量120の保持電圧に影響を与えるの
で、表示品位を低下させてしまうことになる。
そこで、このような表示品位の低下を防止することを目的とした第3実施形態について
説明する。
【0043】
図10は、第3実施形態に係る電気光学装置のうち、単位制御回路152の構成を示す
図である。この図に示される単位制御回路152では、容量線132に保持回路70を設
けた構成となっている。
この保持回路70は、トランスミッション・ゲート55がオフする直前の電圧状態を保
持するものである。このような保持回路70の例としては、例えば図11に示されるよう
な回路が挙げられる。この図に示される保持回路70は、入力を容量線132とし、出力
を容量線132に戻すとともに、電源電圧のうち、低位側を電圧VSLとし、高位側を電圧
VSHとするインバータの2段回路である。なお、このインバータのしきい値電圧は、電圧
VSL、VSHの間で設定すれば良い。
このような保持回路70を設けると、容量線132は、トランスミッション・ゲート5
5がオンしたときの容量信号Scomの電圧によって電圧VSL、VSHのいずれかに書き換え
られるとともに、トランスミッション・ゲート55がオフしても、オフ直前の電圧が印加
され続けるので、ハイ・インピーダンス状態とはならない。したがって、上述した表示品
位の低下を抑えることが可能となる。
【0044】
このような保持回路70を設けた構成において、電源投入直後等において、単位制御回
路152における端子Pの論理レベルが左側と右側とで相違している場合、Lレベルであ
る方のトランスミッション・ゲート55がオフするので、容量線132は、Hレベルであ
る方のトランスミッション・ゲート55を介して供給された容量信号Scomの電圧に確定
する。
また、電源投入直後等において、単位制御回路152における端子Pの論理レベルが左
側と右側とでいずれもLレベルであったとき、容量線132の電位は一瞬不確定になるが
、左右の保持回路70では、その容量線の電位がしきい値以下であれば電圧VSLに、しき
い値を越えていれば電圧VSHに、それぞれ直ちに確定する。
なお、この保持回路70は、上記二水平走査期間以外の期間において容量線132の電
圧を単に保持する、という目的にとどまるので、左右両側ではなく、片側に一個だけ設け
た構成でも良い。
【0045】
図10は、図3に示した第1実施形態に保持回路70を適用した場合の構成を示したが
、図8に示した第2実施形態に保持回路70を適用して図12に示されるように構成して
も良い。
【0046】
<応用・変形例>
なお、上述した実施形態では、端子PがHレベルであるときに、トランスミッション・
ゲート55をオンさせたが、インバータ54の出力端(インバータ53の入力端)の論理
レベルをトランスミッション・ゲート55の反転制御信号とし、当該出力端の論理レベル
をインバータにより反転したものを正転制御端信号として供給して、当該出力端がLレベ
ルであるときに、トランスミッション・ゲート55をオンさせても良い。
【0047】
また、上述した実施形態では、走査線112を、(0)、1、2、3、…、318、3
19、320、(321)行目という順番で上から下方向に選択する場合を示したが、逆
に、(312)、320、319、318、…、3、2、1、(0)行目という順番で下
から上方向に選択する構成としても良いし、どちらの方向にも対処可能な構成として良い

下から上方向に選択する構成とするには、具体的には、図3等に示した単位制御回路1
52において、TFT51、52のゲート電極に供給される走査信号を入れ替えて、1行
下の走査信号がLからHレベルになるタイミングから、1行上の走査信号がLからHレベ
ルになるタイミングまで、端子NをHレベルに保持させれば良い。
また、どちらの方向にも対処可能な構成とするには、上から下方向に選択する場合には
、1行上の走査信号がLからHレベルになるタイミングから1行下の走査信号がLからH
レベルになるタイミングまで端子NをHレベルに保持させれば良いし、下から上方向に選
択する場合には、1行下の走査信号がLからHレベルになるタイミングから1行上の走査
信号がLからHレベルになるタイミングまで端子NをHレベルに保持させれば良い。
【0048】
具体的には、例えば図13に示されるように構成すれば良い。
この図において、転送方向指定信号Dir、Dir-Bは、走査線の選択方向を指定する信号
であり、転送方向指定信号Dirは、上から下方向に選択する場合だけHレベルになり、逆
に、転送方向指定信号Dir-Bは、下から上方向に選択する場合だけHレベルになる。
図13に示す構成において、上から下方向への選択が指定された場合、転送方向指定信
号Dir-BがLレベルであるので、TFT61B、62Bがオフして、TFT51B、52
Bが無効化されるとともに、転送方向指定信号DirがHレベルであるので、TFT61、
62がオンする。このため、等価回路でみれば、図3と同一となる。
一方、下から上方向への選択が指定された場合、転送方向指定信号DirがLレベルであ
るので、TFT61、62がオフして、TFT51、52が無効化されるとともに、転送
方向指定信号Dir-BがHレベルであるので、TFT61B、62Bがオンする。このため
、i行目の単位制御回路152でみたときに、1行下の走査信号Y(i+1)がHレベルとな
ったときから、1行上の走査信号Y(i-1)がHレベルになるまで端子NがHレベルに保持
される。
【0049】
なお、図13は、図3に示した第1実施形態に適用した場合の構成を示したが、図8に
示した第2実施形態に適用しても良い。また、第3実施形態における保持回路70を適用
しても良い。
【0050】
また、各実施形態では、画素容量120として画素電極118とコモン電極108とで
液晶105を挟持して、液晶にかかる電界方向を基板面垂直方向とした構成としたが、画
素電極、絶縁層およびコモン電極とを積層して、液晶にかかる電界方向を基板面水平方向
とした構成としても良い。
さらに、画素容量120はノーマリーホワイトモードとしたが、電圧無印加状態におい
て暗い状態となるノーマリーブラックモードとしても良い。また、R(赤)、G(緑)、
B(青)の3画素で1ドットを構成して、カラー表示を行うとしても良いし、さらに、別
の色を追加し、これらの4色以上の画素で1ドットを構成して、色再現性を向上させる構
成としても良い。
【0051】
容量線駆動回路150L、150Rの構成素子を、表示領域100における画素スイッ
チング素子と同じTFTとするのではなく、別体のICチップを左右両側に実装する構成
としても良い。また、本実施形態を透過型ではなく反射型としても良いし、透過型と反射
型とを組み合わせた半透過・半反射型としても良い。
【0052】
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置10を表示装置として有する電子機器につ
いて説明する。図14は、実施形態に係る電気光学装置10を用いた携帯電話1200の
構成を示す図である。
この図に示されるように、携帯電話1200は、複数の操作ボタン1202のほか、受
話口1204、送話口1206とともに、上述した電気光学装置10を備えるものである
。なお、電気光学装置10のうち、表示領域100に相当する部分の構成要素については
外観としては現れない。
【0053】
なお、電気光学装置10が適用される電子機器としては、図14に示される携帯電話の
他にも、デジタルスチルカメラや、ノートパソコン、液晶テレビ、ビューファインダ型(
またはモニタ直視型)のビデオレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳
、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネ
ルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示装置として、
上述した電気光学装置10が適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す図である。
【図2】同電気光学装置における画素の構成を示す図である。
【図3】同電気光学装置における単位制御回路の構成を示す図である。
【図4】同電気光学装置の動作を説明するための図である。
【図5】同電気光学装置の書込動作を説明するための図である。
【図6】同単位制御回路のラッチ結果が両側で相違した場合の動作を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る電気光学装置の構成を示す図である。
【図8】同電気光学装置における容量線駆動回路の単位制御回路の構成を示す図である。
【図9】同電気光学装置の動作を説明するための図である。
【図10】第3実施形態に係る電気光学装置の単位制御回路の構成を示す図である。
【図11】同単位制御回路における保持回路の構成の一例を示す図である。
【図12】同単位制御回路の構成の別例を示す図である。
【図13】双方向転送に対応した単位制御回路の構成例を示す図である。
【図14】実施形態に係る電気光学装置を用いた携帯電話を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10…電気光学装置、20…表示制御回路、50…ラッチ回路、55…トランスミッショ
ン・ゲート、70…保持回路、100…表示領域、108…コモン電極、110…画素、
112…走査線、114…データ線、116…TFT、120…画素容量、130…補助
容量、132…容量線、140…走査線駆動回路、150R、150L…容量線駆動回路
、152…単位制御回路、1200…携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、
複数のデータ線と、
前記複数の走査線の各々に対応して設けられた容量線と、
前記複数の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応してそれぞれ設けられ、
各々は、
一端が前記データ線に接続されるとともに、前記走査線が選択されたときに前記一端と
他端との間で導通状態になる画素スイッチング素子と、
一端が前記画素スイッチング素子の他端に接続され、他端がコモン電極に接続される画
素容量と、
前記画素容量の一端と前記走査線に対応して設けられた容量線との間に介挿された補助
容量と、
を含む画素と、
を有する電気光学装置の駆動回路であって、
前記走査線を所定の順番で選択する走査線駆動回路と、
選択された走査線に対応する画素に対し、当該画素の階調に応じた電圧のデータ信号を
、データ線を介して供給するデータ線駆動回路と、
一の走査線に対応して設けられた容量線に対し、当該一の走査線が選択されたときに二
値電圧の一方とし、当該一の走査線の選択が終了したとき以降に前記二値電圧の他方にシ
フトさせる容量線駆動回路と、
を具備し、
前記容量線駆動回路は、
前記容量線の一端側および他端側のそれぞれに、前記容量線の各々に対応して設けられ
た単位制御回路を備え、
一の容量線に対応する単位制御回路は、少なくとも当該一の容量線に対応する走査線が
選択される期間において論理レベルの一方に保持するラッチ回路と、
前記二値電圧が所定周期で切り替わる容量信号を供給する信号線と前記容量線との間に
おいて、前記論理レベルが一方のときに導通状態になり、前記論理レベルが他方のときに
非導通状態になるスイッチと、
を有することを特徴とする電気光学装置の駆動回路。
【請求項2】
前記容量信号は、走査線が1本ずつ選択される周期であって、いずれの走査線も選択さ
れないタイミングで電圧が切り替わる
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項3】
前記容量信号は、第1容量信号および第2容量信号があり、
前記第1容量信号は、走査線が2本ずつ選択される周期であって、いずれの走査線も選
択されないタイミングで電圧が切り替わり、
前記第2容量信号は、前記第1容量信号に対して位相が90度進んだ又は遅れた信号で
あり、
奇数行の単位制御回路における前記スイッチは、前記第1容量信号を供給する信号線と
前記容量線との間において介挿され、
偶数行の単位制御回路における前記スイッチは、前記第2容量信号を供給する信号線と
前記容量線との間において介挿された
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項4】
前記スイッチが非導通状態となる直前における前記容量線の電圧状態を保持する保持回
路を有する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項5】
複数の走査線と、
複数のデータ線と、
前記複数の走査線の各々に対応して設けられた容量線と、
前記複数の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応してそれぞれ設けられ、
各々は、
一端が前記データ線に接続されるとともに、前記走査線が選択されたときに前記一端と
他端との間で導通状態になる画素スイッチング素子と、
一端が前記画素スイッチング素子の他端に接続され、他端がコモン電極に接続される画
素容量と、
前記画素容量の一端と前記走査線に対応して設けられた容量線との間に介挿された補助
容量と、
を含む画素と、
前記走査線を所定の順番で選択する走査線駆動回路と、
選択された走査線に対応する画素に対し、当該画素の階調に応じた電圧のデータ信号を
、データ線を介して供給するデータ線駆動回路と、
一の走査線に対応して設けられた容量線に対し、当該一の走査線が選択されたときに二
値電圧の一方とし、当該一の走査線の選択が終了したとき以降に前記二値電圧の他方にシ
フトさせる容量線駆動回路と、
を具備し、
前記容量線駆動回路は、
前記容量線の一端側および他端側のそれぞれに、前記容量線の各々に対応して設けられ
た単位制御回路を備え、
一の容量線に対応する単位制御回路は、少なくとも当該一の容量線に対応する走査線が
選択される期間において論理レベルの一方に保持するラッチ回路と、
前記二値電圧が所定周期で切り替わる容量信号を供給する信号線と前記容量線との間に
おいて、前記論理レベルが一方のときに導通状態になり、前記論理レベルが他方のときに
非導通状態になるスイッチと、
を有することを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−97023(P2010−97023A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268300(P2008−268300)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】