電気光学装置の製造方法
【課題】 電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程において、電気光学装置用基板の損傷を防ぎつつ、基板を確実に固定して、作業効率の向上を図った電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法において、電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、電気光学装置用基板を吸引固定する。さらに、通気性シートが、導電性又は半導電性等を備えることにより、作業効率をより向上させることができる。
【解決手段】 電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法において、電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、電気光学装置用基板を吸引固定する。さらに、通気性シートが、導電性又は半導電性等を備えることにより、作業効率をより向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関する。特に、電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程で、電気光学装置用基板を損傷させることなく、確実に固定して作業を行うことができる電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置の一態様である液晶装置に使用される液晶パネルは、素子基板と対向基板とを、シール材により貼り合わせてセル構造を形成するとともに、セル構造の内側に液晶材料を封入して構成されている。
このような液晶パネルを製造する際には、製造効率を高めるために、複数のセル領域を含む第1の母基板及び第2の母基板をシール材で貼り合わせて大判パネルを形成した後、当該大判パネルを分割することにより、同時に多数の液晶パネルを製造している。
より具体的には、まず、複数のセル領域を含む第1及び第2の母基板を貼り合わせて大判パネルを形成する。次いで、第1及び第2の母基板に、大判パネルを分割して短冊状の中間パネルとするための第1分割予定線上に沿って第1スクライブラインを形成した後、当該スクライブラインに沿って分断することにより、短冊状の中間パネルを形成する。次いで、中間パネルを構成する第1及び第2の中間基板に、中間パネルを分割して単品の液晶パネルとするための第2分割予定線上に沿って第2スクライブラインを形成した後、当該スクライブラインに沿って分断することにより、複数の液晶パネルを製造している。
【0003】
ここで、液晶装置を製造する工程中には、上述のスクライブラインを形成する工程や、スクライブラインに添って基板を分断する工程等、パネルや基板を固定台上に載置して作業を行う工程が含まれている。これらの工程において、ステンレスやアルミニウム等の金属材料からなる固定台上に、直接パネルや基板を載置して作業を行った場合には、作業時の衝撃で、基板にクラックが生じてしまったり、基板にすり傷が付いてしまったりする場合がある。
また、作業中に静電気が発生した場合に、基板やパネルが帯電すると、基板上の素子が静電気により破壊されたり、製造される液晶装置の不良の原因となったりする場合がある。
【0004】
そこで、固定台上に緩衝効果を有する導電性シートを配置し、当該シート上にパネルや基板を載置して作業を行うことが可能な製造装置が提案されている。より詳細には、図12(a)〜(b)に示すように、導電性シートを配置した製造装置として、液晶セルLCが載置される載置面662が、第1冶具651の支持基板661上に配置された緩衝材671と、緩衝材671上に配置され液晶セルLCが載置される導電性シート672と、緩衝材671と導電性シート672とを接着する接着剤673と、を備えて構成された枚葉封着装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、このような装置に使用できる導電性シートとして、耐熱性繊維布にフッ素樹脂とカーボン、金属粉末等の導電性粉末を含むディスパージョンを含浸させて導電性又は半導電性とし、これによりクッション本体を被覆した防塵耐熱クッションがある。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−233841号公報 (特許請求の範囲 図3、図7)
【特許文献2】特開2005−53999号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で使用される導電性シートや、特許文献2に開示された防塵耐熱クッションは、パネルや基板への帯電を防止したり、塵埃の付着を防止したりすることができるものの、載置されたパネルや基板を固定しておくことができないものであった。すなわち、それぞれの導電性シートや防塵耐熱クッションは通気性を有しないために、例えば、固定台の下方側から、載置された基板等を吸引固定する装置に使用した場合には、当該吸引する手段によっては基板等を固定することができないという問題があった。したがって、別の止め具や接着テープを使用しなければならず、作業効率が低下する場合が見られた。特に、接着テープを用いた場合には、作業後に接着テープを剥離した際に、粘着剤が基板上に残ってしまい、不良品となってしまったり、除去するために手間がかかったりする場合があった。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは鋭意努力し、固定台上に配置するシートとして通気性のシートを用いることにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程において、電気光学装置用基板を損傷させることなく、確実に固定して作業を行うことができ、作業効率の向上を図った電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法であって、電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、電気光学装置用基板を吸引固定することを特徴とする電気光学装置の製造方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、固定台上に配置され、電気光学装置が載置されるシートが通気性シートであるために、当該シートを介して、電気光学装置用基板を吸引することができ、固定台上に電気光学装置用基板を確実に固定しておくことができる。したがって、位置ずれ等を生じることなく、効率よく作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートが、導電性又は半導電性のシートであることが好ましい。
このように実施することにより、作業時に静電気が発生した場合であっても、電気光学装置用基板に静電気が帯電することを防止することができる。
【0009】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートの引張り強度を0.0150〜0.03M・Paの範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、通気性シートが緩衝性を発揮でき、電気光学装置用基板の損傷をより抑止できる一方で、電気光学装置用基板がシート中に沈み込むことを防いで作業精度を向上させることができる。
なお、通気性シートの引張り強度とは、ASTM D882に準じて測定される引張り強度の値をいう。
【0010】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートが、撥水処理されていることが好ましい。
このように実施することにより、作業中に水を使う工程を含む場合に、水に濡れた手で通気性シートに触れたとしても劣化しにくくなる。
【0011】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートの通気量を1〜10cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、シートに電気光学装置用基板が沈み込んで作業精度が低下することを防ぎつつ、電気光学装置用基板を確実に吸引固定させることができる。
なお、通気性シートの通気量とは、JIS L1096に規定の測定法Aに準じて測定される通気量の値をいう。
【0012】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートとして、ガラスクロスの表面に、導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートを用いることが好ましい。
このように実施することにより、導電性、緩衝性、及び耐水性、それぞれに優れた通気性シートとすることができ、長期に渡って作業効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートと固定台との間に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを配置することが好ましい。
このように実施することにより、通気性シート上に電気光学装置用基板を載置して作業を行う際に、緩衝効果を持たせることができ、例えば、電気光学装置用基板にクラック等が発生することを防ぐことができる。
なお、PETフィルムは、マット化されたものでも構わない。
【0014】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートと固定台との間に、ウレタンシートを配置することが好ましい。
このように実施することにより、通気性を阻害することなく、さらに緩衝効果を持たせることができる。
【0015】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、電気光学装置用基板を分割するための切断ラインを形成する工程を含むとともに、当該工程で、吸引固定を行うことが好ましい。
このように実施することにより、確実に固定された電気光学装置用基板に対して作業を行うことができるために、破断予定線に沿って、スクライブラインを正確に形成することができる。
【0016】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、切断ラインに沿って電気光学装置用基板を分断する工程を含むとともに、当該工程で、吸引固定を行うことが好ましい。
このように実施することにより、確実に固定された電気光学装置用基板に対して作業を行うことができるために、電気光学装置用基板を、スクライブラインに沿って精度良く分断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の電気光学装置の製造方法に関する実施形態について具体的に説明する。
ただし、かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0018】
本実施形態は、図1に示すように、電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法において、電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、電気光学装置用基板を吸引固定することを特徴とする電気光学装置の製造方法である。
また、本実施形態の電気光学装置の製造方法について、電気光学装置用基板としての素子基板及びカラーフィルタ基板を含む液晶装置の製造方法を例にとって説明する。なお、以下の説明において、セル構造とは、素子基板とカラーフィルタ基板がシール材で貼り合わせられ、未だ液晶材料が注入されていない状態を意味し、液晶パネルとは、セル構造内に液晶材料が注入された状態を意味し、液晶装置とは、当該液晶パネルに対して、電子部品や、回路基板、バックライト等が電気的に接続された状態を意味するものとする。
【0019】
1.通気性シート
(1)基本的構成
まず、本発明の電気光学装置の製造方法で使用される通気性シートについて説明する。
この通気性シートは、図1(a)に示すように、電気光学装置用基板の固定台11上に配置される通気性を備えたシート13である。すなわち、電気光学装置用基板を、アルミニウムやステンレス等の金属材料からなる固定台上に直接載置するのではなく、通気性シート上に載置することによって、直接触れることによるすり傷や、電気光学装置用基板を処理した際の衝撃によるクラック等を防止することができる。また、通気性を備えた通気性シートであるために、固定台の下方側から電気光学装置用基板を吸引した場合に、通気性シートを介して、電気光学装置用基板を確実に吸引固定しておくことができる。
なお、後述するが、図1(b)に示すように、固定台11上には通気性シート13以外に、例えば、緩衝性を発揮できるウレタン性のシート14等を併用配置して、作業を実施することも可能である。
【0020】
(2)通気量
また、かかる通気性シートの通気量を1〜10cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、通気性シートの通気量が1cm3/cm2・秒未満の値となると、電気光学装置用基板を吸引する力が弱くなって、確実に固定することができない場合があるためである。一方、通気性シートの通気量が10cm3/cm2・秒を超えると、通気性シートの強度が低下して、電気光学装置用基板がシート中に沈み込みやすくなり、作業効率が低下する場合があるためである。
したがって、通気性シートの通気量を1.2〜8cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜5cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、通気性シートの通気量とは、JIS L1096に規定の測定法Aに準じて測定される通気量の値をいう。
【0021】
(3)通気性密度
また、かかる通気性シートの通気性密度が、シート全体に渡って均一であることが好ましい。この理由は、電気光学装置用基板を吸引した際に、通気性密度にばらつきがあると、電気光学装置用基板の一方側がシート中に沈み込んでしまい、作業精度が低下する場合があるためである。
例えば、図2に示すように、電気光学装置用基板15にスクライブライン16を形成する工程で、電気光学装置用基板15が通気性シート13中に沈み込み、傾いていると、形成されるスクライブライン16の深さにばらつきが生じてしまい、後に分断する際に、精度良く分断できない場合がある。
ここで、通気性シートが、後述する、ガラスクロスにフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートからなる場合には、例えば、ガラスクロスのそれぞれの繊維の太さや織り込む密度を変えることにより、通気性密度を調整することができる。また、通気性シートが、後述する導電ゴムからなる場合には、例えば、形成する貫通孔の直径や数を変えることにより、通気性密度を調整することができる。
【0022】
(4)導電性又は半導電性
また、通気性シートが、導電性又は半導電性を備えることが好ましい。この理由は、電気光学装置用基板の分断工程等、作業内容によっては静電気が発生する場合があり、電気光学装置用基板が帯電して破損することを防止するためである。
また、この場合に、発生した静電気を速やかに除去して、電気光学装置用基板の帯電を防止することができる一方で、外部の静電気等を電気光学装置用基板に伝えやすくさせないために、通気性シートの表面抵抗率を0.1×106〜10×106Ωの範囲内の値とし、体積抵抗率を1×106〜10×106Ω/cmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0023】
(5)引張り強度
また、通気性シートの引張り強度を0.015〜0.03M・Paの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、通気性シートの引張り強度が0.015M・Pa未満の値となると、電気光学装置用基板がシート中に沈み込みやすくなって、作業効率が低下する場合があるためである。例えば、基板にスクライブラインを形成する工程において、通気性密度が異なる場合としてすでに説明したように、精度良く分断できなくなる場合があるためである。一方、通気性シートの引張り強度が0.03M・Paを超えると、通気性シートによって電気光学装置用基板を損傷したり、あるいは、衝撃によってクラックを生じさせたりする場合があるためである。
したがって、通気性シートの引張り強度を0.018〜0.029M・Paの範囲内の値とすることがより好ましく、0.02〜0.028M・Paの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、通気性シートの引張り強度とは、ASTM D882に準じて測定される引張り強度の値をいう。
【0024】
(6)撥水処理
また、通気性シートが、撥水処理されていることが好ましい。この理由は、例えば、電気光学装置用基板を分断した後の端材を除去する際に、静電気の影響を排除する目的で、純水中で作業を行う場合があるが、そのような作業を行った後に、通気性シートに触れた場合であっても、通気性シートが劣化することがなくなるためである。
したがって、長期間の使用に耐えることができ、交換回数を減少させることができる。
【0025】
(7)材料
上述したような性質を備える通気性シートとして、例えば、ガラスクロスの表面に、導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートを使用することが好ましい。例えば、図3(a)に示すように、織り込まれたガラスクロス26に、導電性カーボンを混合した四フッ化エチレン樹脂27をコーティングしたシート28であって、当該四フッ化エチレン樹脂を硬化させる際に、通気性を持たせるための複数の孔を形成したシート28を使用することができる。
かかるシートであれば、電気光学装置用基板を確実に固定できるとともに、耐水性、導電性、緩衝性に優れた効果を発揮することができ、電気光学装置用基板を固定して行う工程における作業効率を著しく向上させることができる。また、フッ素樹脂によりコーティングされた通気性シートであるために、電気光学装置用基板に貼り付くこともなく、作業性をより向上させることができる。さらに、かかる通気性シートであれば耐熱性にも優れているために、低温環境及び高温環境のいずれの環境条件下でも、例えば、−100〜260℃の範囲内の温度条件下でも、長期間に渡って使用することができる。
【0026】
また、このような通気性シートの別の例として、図3(b)に示すように、導電性カーボンが混合され、複数の貫通孔29aを備えた導電ゴムからなるシート29を使用することが好ましい。
かかるシートであれば、耐水性、導電性、緩衝性に優れるとともに、上述のガラスクロスを基体としたシートと比較して、より耐久性に優れ、比較的容易かつ低コストで製造することができる。
【0027】
ここで、上述した図3(a)に示す、ガラスクロスの表面に導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングした通気性シートの耐久性について具体的に説明する。図4は、当該通気性シートを用いて、後述する第2分割工程を8ヶ月間に渡って行った場合における、通気性シートの吸引力を示す面押し強度(kgf)の値の推移を示した図である。図4中、点線Aは面押し強度の最大値を示し、破線Bは面押し強度の最小値を示し、実線Cは面押し強度の平均値を示している。また、面押し強度は、通気性シート上に、厚さが0.5mm、対角線の長さが2インチのガラス片を吸引固定させて、100秒間保持しつつ、その間の強度(吸引力)を測定した。さらに、使用する通気性シートについては、使用開始から3ヶ月経過するごとに新品のシートに交換して測定したデータである。
かかる図4から理解されるように、同一の通気性シートを使用している期間内においては、面押し強度が低下することなく安定して推移している。また、3ヶ月経過後における新品のシートと交換する前後においても、面押し強度の変化は見られず、使用後の通気性シートと新品の通気性シートとの間で、面押し強度にほとんど差がないことが理解される。
このように、上述した構成の通気性シートを使用することにより、長期間使用した場合であっても劣化することなく、載置された電気光学装置用基板を確実に吸引固定することができ、作業効率を著しく向上させることができる。
【0028】
2.液晶装置の製造
次に、上述した通気性シートを用いて電気光学装置用基板を吸引固定して作業を行う工程を含む液晶装置の製造方法について説明する。
【0029】
(1)大判パネルの製造
まず、第1の母基板及び第2の母基板をシール材によって貼り合わせて構成され、複数のセル領域を含む大判パネルを製造する。かかる第1の母基板及び第2の母基板は、例えば、複数のセル領域の素子基板を含む第1の母基板と、複数のセル領域のカラーフィルタ基板を含む第2の母基板とすることができる。
【0030】
第1の母基板を、素子基板を構成する母基板とする場合には、基本的に、透明性を有する基体としてのガラス基板上の各セル領域に対応させて、図5(a)に示すように、スイッチング素子69や、画素電極63、配向膜85等を順次積層して形成することができる。また、液晶装置において、反射表示を可能にするためには、例えば、ガラス基板と、画素電極との間に、アルミニウム膜等からなる光反射膜が設けられる。
ここで、スイッチング素子は、TFT素子や、TFD素子等の非線形素子が代表的なものとして例示される。例えば、TFT素子は、図5(a)に示すように、ポリシリコン等の薄膜半導体70に、ゲート電極71、ソース電極73、ドレイン電極66を構成した三端子型のスイッチング素子69である。かかるTFT素子は、ゲート電極に印加する電圧がオフの状態では、ソース電極とドレイン電極間は遮断されている。一方、ゲート電極に電圧を印加すると、半導体内部を、ソース電極からドレイン電極の方向に、あるいは、その逆方向に、電子が通過し電流が流れるようになるアクティブ素子である。
また、画素電極は、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)からなる、それぞれの画素を構成する電極であって、ドレイン電極と電気的に接続されている。そして、対向するカラーフィルタ基板上の面状電極との間に駆動電圧が加わった場合に、液晶を駆動させることができる。
また、画素電極上の配向膜は、例えば、ポリイミド樹脂等から構成され、液晶材料の配向方向を規定するための膜である。
【0031】
また、第2の母基板を、カラーフィルタ基板を構成する母基板とする場合には、基本的に、透明性を有する基体としてのガラス基板上の各セル領域に対応させて、図5(b)に示すように、着色層37r、37g、37bや、遮光膜39、面状電極33、配向膜45等を積層して形成することができる。
ここで、着色層は、通常、透明樹脂中に顔料や染料等の着色材を分散させて所定の色調を呈するものとされている。着色層の色調の一例としては原色系フィルタとしてR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の組合せからなるものがあるが、これに限定されるものではなく、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)等の補色系や、その他の種々の色調で形成することができる。
【0032】
また、図5(b)に示すように、遮光膜39は、画素毎に形成された着色層37r、37g、37bの間の画素間領域に形成されている。この遮光膜としては、例えば黒色の顔料や染料等の着色材を樹脂その他の基材中に分散させたものや、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色材を共に樹脂その他の基材中に分散させたものなどを用いることができる。
また、図5(b)に示すように、着色層37r、37g、37bや遮光膜39の上層には、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体からなる面状電極33が形成されている。
さらに、面状電極33の上には、ポリイミド樹脂等からなる配向膜45が形成されている。
なお、本実施形態では、着色層を第1の母基板側のガラス基板上に設けてあるが、かかる第2の母基板側のガラス基板上に設けることもできる。
【0033】
次いで、第1の母基板と、第2の母基板とを、それぞれ電極が形成された面を互いに対向するように、シール材を介して貼り合わせる。
ここで、使用するシール材は、簡易な装置で容易に硬化させることができるとともに、より安価であることから、熱硬化性樹脂を含むシール材であることが好ましい。したがって、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分とするシール材を使用することができる。
【0034】
具体的には、まず、図6(a)〜(b)に示すように、例えば、第1の母基板60A上において、シール材23を、スクリーン印刷やディスペンサにより、各セル領域を囲むようにパターニングして形成する。
次いで、所定形状にパターニングされたシール材が形成された第1の母基板を低温処理(プリベーク)して、シール材中の溶剤を蒸発させる。このとき、シール材の硬化温度よりも低い温度条件で、減圧しながらプリベークすることができる。例えば、35〜70℃程度の温度条件、50〜90kPaの圧力条件の下で、実施することが好ましい。このような条件でプリベーク工程を実施することにより、シール材中に残留する溶剤を効率よく蒸発させるとともに、シール材から十分に脱気することができるためである。したがって、液晶装置の製造後において、シール材内の気泡に起因する表示ムラや、断線等を、効果的に防止することができるためである。
次いで、図6(c)に示すように、第2の母基板30Aを重ねて貼り合わせることにより、大判パネル20Aが形成される。
なお、本実施形態においては、第1の母基板上にシール材を形成しているが、第2の母基板上に形成しても構わない。
【0035】
(2)第1分割工程
次いで、図7(a)〜図8(c)に示すように、大判パネル20Aを構成する第1の母基板60A又は第2の母基板30Aを切断して、第1の中間基板60a及び第2の中間基板30aに分割することにより、複数の中間パネル20aを形成する。すなわち、第1の母基板及び第2の母基板を、並列する一定の方向、例えば、図7(b)中におけるX方向にのみ切断することにより、図8(c)に示すように、複数のセル領域を含む短冊状の中間パネル20aを形成する。
【0036】
より具体的には、まず、図7(a)に示すように、大判パネル20Aを、スクライブラインを形成するための装置における通気性シート13が配置された固定台11上に載置した後、当該通気性シート13を介して、大判パネル20Aを吸引することにより、固定台11上に固定する。これによって、他の固定具やテープ等の粘着剤を使用しなくても確実に固定することができるようになり、作業効率を著しく高めることができる。すなわち、固定台の下方側から吸引装置によって吸引することにより、固定台の孔を介して通気性シートが吸引され、さらに通気性シートが通気性を備えることから、シート上に載置された大判パネルを吸引固定することができる。
【0037】
また、通気性シートが上述した所定の引張り強度を備えている場合には、通気性シート単独で使用することにより、第1及び第2の母基板を損傷させない程度の緩衝性を発揮することができる。
一方、そのような引張り強度を備えていない場合には、図1(b)に示すように、当該通気性シート13と固定台11の間に、例えば、マット化されたPETフィルムやウレタンシート14を配置しておくことが好ましい。これにより、所望の緩衝性を発揮して、電気光学装置用基板の損傷を防ぐことができる。この場合、これらのPETフィルムやウレタンシート等が通気性を備えていることにより、電気光学装置用基板の吸引固定を阻害することがなくなる。例えば、PETフィルムを使用する場合には、針や安全ピン等で通気孔を設けておくことが好ましい。
【0038】
次いで、固定台上に固定された大判パネルのうちの上側にある基板、例えば、図7(a)に示すように、第2の母基板30Aを上側にして載置した場合には、当該第2の母基板30Aにおける第1破断予定線に沿って、図7(b)に示すように、第1スクライブライン17aを形成する。このとき、スクライブラインを形成する手段としては、例えば、図7(b)に示す回転刃22や、レーザーカッター、カッター刃等を使用して、基板の表面にスクライブラインを形成することができる。
ここで、スクライブラインを形成するにあたり、各セル領域のシール材における液晶の注入口が存在する辺に沿って、形成することが好ましい。この理由は、このように実施することにより、次工程において、それぞれの基板に対して、効率よく液晶を注入することができるためである。
【0039】
次いで、図7(c)に示すように、大判パネル20Aを、上下を逆にして、すなわち、上述の例では、第1の母基板60Aを上側にして、再度通気性シート13が配置された固定台11上に載置した後、上述したのと同様にして、図7(d)に示すように、第1の母基板60Aに対してスクライブライン17bを形成する。
【0040】
次いで、図8(a)に示すように、第1の母基板60A及び第2の母基板30Aそれぞれにスクライブライン17a、17bが形成された大判パネル20Aを、パネルを分断するための装置における通気性シート13が配置された固定台11上に載置した後、当該通気性シート13を介して、大判パネル20Aを吸引することにより、固定台11上に固定する。その後、図8(b)に示すように、例えば、ウレタン等からなるせん断部材24を用いて、大判パネル20Aの上から、スクライブライン17aが形成された箇所に対して力を加えることによって、図8(c)に示すように、大判パネル20Aを分断して短冊状の中間パネル20aを形成する。このとき、通気性シートが所定の引張り強度の値であれば、パネルに対して均一に加圧することができ、精度良く分断することができる。
【0041】
(3)液晶材料注入工程
次いで、形成された中間パネルにおいて、それぞれのセル領域におけるシール材の内側部分に対して、開口部を介して液晶材料を注入した後、封止材(図示せず)にて封止する。すなわち、図9に示すように、各セル領域における液晶材料の注入口23aが外部に接する状態になるように第1の母基板60A及び第2の母基板30Aを切断した場合においては、それぞれの中間パネル20aにおける各セル領域に対応する液晶材料の注入口23aが一列に並ぶために、効率的に液晶材料21を注入することができる。
【0042】
(4)第2分割工程
次いで、図10(a)〜(d)に示すように、中間パネル20aを構成する第1の中間基板60a及び第2の中間基板30aを切断して、複数の素子基板60及びカラーフィルタ基板30に分断することにより、単品としての液晶パネル20を形成する。すなわち、複数のセル領域を含む短冊状の中間パネル20aから、単品である液晶パネル20を切り出して形成する。
具体的な切断方法に関しては、第1分割工程で説明したのと同様に実施することができるために、ここでの説明は省略するが、本工程においても、通気性シートを介して中間パネルを吸引固定して作業を行うために、スクライブラインの形成位置や分断位置を精度良く行うことができる。
【0043】
また、この第2分割工程においては、同時に、カラーフィルタ基板の外形を素子基板よりも小さく切り出して、基板張出部を形成するため、当該領域においては、素子基板上に形成された配線パターンが露出する。したがって、静電気の発生が、配線パターンに大きく影響を与えることになるため、静電気を速やかに除去する必要がある。そのため、導電性を備えた通気性シートを使用することにより、パネルが帯電することを有効に阻止することができる。ただし、この場合に、通気性シートの下にウレタンシートやPETフィルムを配置している場合には、通気性シートにアースを接続して、静電気を逃がしやすくする必要がある。
また、基板張出部を形成するために切り出された端材を除去する際には、静電気の発生を防止するために、純水中で作業を行うことが好ましい。このとき、作業者の手に水が付着することになるが、そのまま分断装置上の中間パネルを取扱ったとしても、通気性シートが耐水性であれば、水によっても耐久性が低下することがないため、好適な態様である。
【0044】
(5)組立て工程
次いで、かかる液晶パネル20に対して、図11にその概略断面図を示すように、カラーフィルタ基板30の外面の所定位置に、位相差板(1/4波長板)47及び偏光板49を配置するとともに、素子基板60の外面においても、位相差板(1/4波長板)87及び偏光板89を配置する。
さらに、液晶パネル20に対して、半導体素子91等の電子部品やフレキシブル回路基板93等を接続するとともに、バックライトやフロントライト等の照明装置やケース体(図示せず)などを、必要に応じて、適宜取付けることにより、液晶装置10を製造することができる。
このとき、電子部品やフレキシブル回路基板の接続工程においても、本発明にかかる通気性シートが配置された固定台上に液晶パネルを載置し吸引固定して作業を行うことにより、パネルを確実に固定して、効率よく作業を行うことができる。また、さらに導電性を備えた通気性シートである場合には、作業中に生じる静電気が液晶パネルに帯電することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明の電気光学装置の製造方法によれば、電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程において、通気性シート上に電気光学装置用基板を載置して作業を行うことにより、基板の損傷を防ぎつつ、基板を確実に固定することができ、作業効率を著しく向上させることができる。したがって、上述した、パネルの分断工程やフレキシブル基板等の接続工程に限られず、あらゆる工程において適用することができる。
また、電気光学装置としての液晶装置を例に採って説明したがそれに限定されるものではなく、エレクトロルミネッセンス装置や、プラズマディスプレイ装置、電子放出素子を備えた装置(FED:Field Emission DisplayやSCEED:Surface-Conduction Electron-Emitter Display)などの製造方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)及び(b)は、それぞれ通気性シートを用いて電気光学装置用基板を吸引固定した状態を示す図である。
【図2】電気光学装置用基板が傾いた場合の作業不良を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(b)は、それぞれ本発明の電気光学装置の製造方法に使用する通気性シートの例を示す図である。
【図4】本発明に使用される通気性シートの使用時間と面押し強度との関係を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ素子基板及びカラーフィルタ基板の構成を説明するために供する図である。
【図6】(a)〜(c)は、第1の母基板及び第2の母基板を貼り合わせて大判パネルを形成する工程を説明するために供する図である。
【図7】(a)〜(d)は、第1の母基板及び第2の母基板にスクライブラインを形成する工程を説明するために供する図である。
【図8】(a)〜(c)は、大判パネルを分断して中間パネルを形成する工程を説明するために供する図である。
【図9】中間パネルのそれぞれのセル構造に液晶材料を注入する工程を説明するために供する図である。
【図10】(a)〜(d)は、中間パネルを分断して単品の液晶パネルを形成する工程を説明するために供する図である。
【図11】本発明の実施形態で製造される液晶装置の概略断面図である。
【図12】従来の液晶装置の製造方法で使用される導電性シートを備えた固定台を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0047】
10:液晶装置(電気光学装置)、11:固定台、13:通気性シート、15:電気光学装置用基板、16:スクライブライン、17a・17b・18a:スクライブライン、20:液晶パネル、20A:大判パネル、20a:中間パネル、22:回転刃、23:シール材、23a:注入口、24:せん断部材、26:ガラスクロス、27:フッ素樹脂含有コーティング材、28・29:通気性シート、30:カラーフィルタ基板、30A:第1の母基板、30a:第1の中間基板、31:ガラス基板、33:面状電極、37r・37g・37b:着色層、39:遮光層、45:配向膜、60:素子基板、60A:第2の母基板、60a:第2の中間基板、61:ガラス基板、63:画素電極、69:スイッチング素子(TFT素子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関する。特に、電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程で、電気光学装置用基板を損傷させることなく、確実に固定して作業を行うことができる電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置の一態様である液晶装置に使用される液晶パネルは、素子基板と対向基板とを、シール材により貼り合わせてセル構造を形成するとともに、セル構造の内側に液晶材料を封入して構成されている。
このような液晶パネルを製造する際には、製造効率を高めるために、複数のセル領域を含む第1の母基板及び第2の母基板をシール材で貼り合わせて大判パネルを形成した後、当該大判パネルを分割することにより、同時に多数の液晶パネルを製造している。
より具体的には、まず、複数のセル領域を含む第1及び第2の母基板を貼り合わせて大判パネルを形成する。次いで、第1及び第2の母基板に、大判パネルを分割して短冊状の中間パネルとするための第1分割予定線上に沿って第1スクライブラインを形成した後、当該スクライブラインに沿って分断することにより、短冊状の中間パネルを形成する。次いで、中間パネルを構成する第1及び第2の中間基板に、中間パネルを分割して単品の液晶パネルとするための第2分割予定線上に沿って第2スクライブラインを形成した後、当該スクライブラインに沿って分断することにより、複数の液晶パネルを製造している。
【0003】
ここで、液晶装置を製造する工程中には、上述のスクライブラインを形成する工程や、スクライブラインに添って基板を分断する工程等、パネルや基板を固定台上に載置して作業を行う工程が含まれている。これらの工程において、ステンレスやアルミニウム等の金属材料からなる固定台上に、直接パネルや基板を載置して作業を行った場合には、作業時の衝撃で、基板にクラックが生じてしまったり、基板にすり傷が付いてしまったりする場合がある。
また、作業中に静電気が発生した場合に、基板やパネルが帯電すると、基板上の素子が静電気により破壊されたり、製造される液晶装置の不良の原因となったりする場合がある。
【0004】
そこで、固定台上に緩衝効果を有する導電性シートを配置し、当該シート上にパネルや基板を載置して作業を行うことが可能な製造装置が提案されている。より詳細には、図12(a)〜(b)に示すように、導電性シートを配置した製造装置として、液晶セルLCが載置される載置面662が、第1冶具651の支持基板661上に配置された緩衝材671と、緩衝材671上に配置され液晶セルLCが載置される導電性シート672と、緩衝材671と導電性シート672とを接着する接着剤673と、を備えて構成された枚葉封着装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、このような装置に使用できる導電性シートとして、耐熱性繊維布にフッ素樹脂とカーボン、金属粉末等の導電性粉末を含むディスパージョンを含浸させて導電性又は半導電性とし、これによりクッション本体を被覆した防塵耐熱クッションがある。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−233841号公報 (特許請求の範囲 図3、図7)
【特許文献2】特開2005−53999号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で使用される導電性シートや、特許文献2に開示された防塵耐熱クッションは、パネルや基板への帯電を防止したり、塵埃の付着を防止したりすることができるものの、載置されたパネルや基板を固定しておくことができないものであった。すなわち、それぞれの導電性シートや防塵耐熱クッションは通気性を有しないために、例えば、固定台の下方側から、載置された基板等を吸引固定する装置に使用した場合には、当該吸引する手段によっては基板等を固定することができないという問題があった。したがって、別の止め具や接着テープを使用しなければならず、作業効率が低下する場合が見られた。特に、接着テープを用いた場合には、作業後に接着テープを剥離した際に、粘着剤が基板上に残ってしまい、不良品となってしまったり、除去するために手間がかかったりする場合があった。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは鋭意努力し、固定台上に配置するシートとして通気性のシートを用いることにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程において、電気光学装置用基板を損傷させることなく、確実に固定して作業を行うことができ、作業効率の向上を図った電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法であって、電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、電気光学装置用基板を吸引固定することを特徴とする電気光学装置の製造方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、固定台上に配置され、電気光学装置が載置されるシートが通気性シートであるために、当該シートを介して、電気光学装置用基板を吸引することができ、固定台上に電気光学装置用基板を確実に固定しておくことができる。したがって、位置ずれ等を生じることなく、効率よく作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートが、導電性又は半導電性のシートであることが好ましい。
このように実施することにより、作業時に静電気が発生した場合であっても、電気光学装置用基板に静電気が帯電することを防止することができる。
【0009】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートの引張り強度を0.0150〜0.03M・Paの範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、通気性シートが緩衝性を発揮でき、電気光学装置用基板の損傷をより抑止できる一方で、電気光学装置用基板がシート中に沈み込むことを防いで作業精度を向上させることができる。
なお、通気性シートの引張り強度とは、ASTM D882に準じて測定される引張り強度の値をいう。
【0010】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートが、撥水処理されていることが好ましい。
このように実施することにより、作業中に水を使う工程を含む場合に、水に濡れた手で通気性シートに触れたとしても劣化しにくくなる。
【0011】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートの通気量を1〜10cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、シートに電気光学装置用基板が沈み込んで作業精度が低下することを防ぎつつ、電気光学装置用基板を確実に吸引固定させることができる。
なお、通気性シートの通気量とは、JIS L1096に規定の測定法Aに準じて測定される通気量の値をいう。
【0012】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートとして、ガラスクロスの表面に、導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートを用いることが好ましい。
このように実施することにより、導電性、緩衝性、及び耐水性、それぞれに優れた通気性シートとすることができ、長期に渡って作業効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートと固定台との間に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを配置することが好ましい。
このように実施することにより、通気性シート上に電気光学装置用基板を載置して作業を行う際に、緩衝効果を持たせることができ、例えば、電気光学装置用基板にクラック等が発生することを防ぐことができる。
なお、PETフィルムは、マット化されたものでも構わない。
【0014】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、通気性シートと固定台との間に、ウレタンシートを配置することが好ましい。
このように実施することにより、通気性を阻害することなく、さらに緩衝効果を持たせることができる。
【0015】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、電気光学装置用基板を分割するための切断ラインを形成する工程を含むとともに、当該工程で、吸引固定を行うことが好ましい。
このように実施することにより、確実に固定された電気光学装置用基板に対して作業を行うことができるために、破断予定線に沿って、スクライブラインを正確に形成することができる。
【0016】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、切断ラインに沿って電気光学装置用基板を分断する工程を含むとともに、当該工程で、吸引固定を行うことが好ましい。
このように実施することにより、確実に固定された電気光学装置用基板に対して作業を行うことができるために、電気光学装置用基板を、スクライブラインに沿って精度良く分断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の電気光学装置の製造方法に関する実施形態について具体的に説明する。
ただし、かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0018】
本実施形態は、図1に示すように、電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法において、電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、電気光学装置用基板を吸引固定することを特徴とする電気光学装置の製造方法である。
また、本実施形態の電気光学装置の製造方法について、電気光学装置用基板としての素子基板及びカラーフィルタ基板を含む液晶装置の製造方法を例にとって説明する。なお、以下の説明において、セル構造とは、素子基板とカラーフィルタ基板がシール材で貼り合わせられ、未だ液晶材料が注入されていない状態を意味し、液晶パネルとは、セル構造内に液晶材料が注入された状態を意味し、液晶装置とは、当該液晶パネルに対して、電子部品や、回路基板、バックライト等が電気的に接続された状態を意味するものとする。
【0019】
1.通気性シート
(1)基本的構成
まず、本発明の電気光学装置の製造方法で使用される通気性シートについて説明する。
この通気性シートは、図1(a)に示すように、電気光学装置用基板の固定台11上に配置される通気性を備えたシート13である。すなわち、電気光学装置用基板を、アルミニウムやステンレス等の金属材料からなる固定台上に直接載置するのではなく、通気性シート上に載置することによって、直接触れることによるすり傷や、電気光学装置用基板を処理した際の衝撃によるクラック等を防止することができる。また、通気性を備えた通気性シートであるために、固定台の下方側から電気光学装置用基板を吸引した場合に、通気性シートを介して、電気光学装置用基板を確実に吸引固定しておくことができる。
なお、後述するが、図1(b)に示すように、固定台11上には通気性シート13以外に、例えば、緩衝性を発揮できるウレタン性のシート14等を併用配置して、作業を実施することも可能である。
【0020】
(2)通気量
また、かかる通気性シートの通気量を1〜10cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、通気性シートの通気量が1cm3/cm2・秒未満の値となると、電気光学装置用基板を吸引する力が弱くなって、確実に固定することができない場合があるためである。一方、通気性シートの通気量が10cm3/cm2・秒を超えると、通気性シートの強度が低下して、電気光学装置用基板がシート中に沈み込みやすくなり、作業効率が低下する場合があるためである。
したがって、通気性シートの通気量を1.2〜8cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜5cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、通気性シートの通気量とは、JIS L1096に規定の測定法Aに準じて測定される通気量の値をいう。
【0021】
(3)通気性密度
また、かかる通気性シートの通気性密度が、シート全体に渡って均一であることが好ましい。この理由は、電気光学装置用基板を吸引した際に、通気性密度にばらつきがあると、電気光学装置用基板の一方側がシート中に沈み込んでしまい、作業精度が低下する場合があるためである。
例えば、図2に示すように、電気光学装置用基板15にスクライブライン16を形成する工程で、電気光学装置用基板15が通気性シート13中に沈み込み、傾いていると、形成されるスクライブライン16の深さにばらつきが生じてしまい、後に分断する際に、精度良く分断できない場合がある。
ここで、通気性シートが、後述する、ガラスクロスにフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートからなる場合には、例えば、ガラスクロスのそれぞれの繊維の太さや織り込む密度を変えることにより、通気性密度を調整することができる。また、通気性シートが、後述する導電ゴムからなる場合には、例えば、形成する貫通孔の直径や数を変えることにより、通気性密度を調整することができる。
【0022】
(4)導電性又は半導電性
また、通気性シートが、導電性又は半導電性を備えることが好ましい。この理由は、電気光学装置用基板の分断工程等、作業内容によっては静電気が発生する場合があり、電気光学装置用基板が帯電して破損することを防止するためである。
また、この場合に、発生した静電気を速やかに除去して、電気光学装置用基板の帯電を防止することができる一方で、外部の静電気等を電気光学装置用基板に伝えやすくさせないために、通気性シートの表面抵抗率を0.1×106〜10×106Ωの範囲内の値とし、体積抵抗率を1×106〜10×106Ω/cmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0023】
(5)引張り強度
また、通気性シートの引張り強度を0.015〜0.03M・Paの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、通気性シートの引張り強度が0.015M・Pa未満の値となると、電気光学装置用基板がシート中に沈み込みやすくなって、作業効率が低下する場合があるためである。例えば、基板にスクライブラインを形成する工程において、通気性密度が異なる場合としてすでに説明したように、精度良く分断できなくなる場合があるためである。一方、通気性シートの引張り強度が0.03M・Paを超えると、通気性シートによって電気光学装置用基板を損傷したり、あるいは、衝撃によってクラックを生じさせたりする場合があるためである。
したがって、通気性シートの引張り強度を0.018〜0.029M・Paの範囲内の値とすることがより好ましく、0.02〜0.028M・Paの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、通気性シートの引張り強度とは、ASTM D882に準じて測定される引張り強度の値をいう。
【0024】
(6)撥水処理
また、通気性シートが、撥水処理されていることが好ましい。この理由は、例えば、電気光学装置用基板を分断した後の端材を除去する際に、静電気の影響を排除する目的で、純水中で作業を行う場合があるが、そのような作業を行った後に、通気性シートに触れた場合であっても、通気性シートが劣化することがなくなるためである。
したがって、長期間の使用に耐えることができ、交換回数を減少させることができる。
【0025】
(7)材料
上述したような性質を備える通気性シートとして、例えば、ガラスクロスの表面に、導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートを使用することが好ましい。例えば、図3(a)に示すように、織り込まれたガラスクロス26に、導電性カーボンを混合した四フッ化エチレン樹脂27をコーティングしたシート28であって、当該四フッ化エチレン樹脂を硬化させる際に、通気性を持たせるための複数の孔を形成したシート28を使用することができる。
かかるシートであれば、電気光学装置用基板を確実に固定できるとともに、耐水性、導電性、緩衝性に優れた効果を発揮することができ、電気光学装置用基板を固定して行う工程における作業効率を著しく向上させることができる。また、フッ素樹脂によりコーティングされた通気性シートであるために、電気光学装置用基板に貼り付くこともなく、作業性をより向上させることができる。さらに、かかる通気性シートであれば耐熱性にも優れているために、低温環境及び高温環境のいずれの環境条件下でも、例えば、−100〜260℃の範囲内の温度条件下でも、長期間に渡って使用することができる。
【0026】
また、このような通気性シートの別の例として、図3(b)に示すように、導電性カーボンが混合され、複数の貫通孔29aを備えた導電ゴムからなるシート29を使用することが好ましい。
かかるシートであれば、耐水性、導電性、緩衝性に優れるとともに、上述のガラスクロスを基体としたシートと比較して、より耐久性に優れ、比較的容易かつ低コストで製造することができる。
【0027】
ここで、上述した図3(a)に示す、ガラスクロスの表面に導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングした通気性シートの耐久性について具体的に説明する。図4は、当該通気性シートを用いて、後述する第2分割工程を8ヶ月間に渡って行った場合における、通気性シートの吸引力を示す面押し強度(kgf)の値の推移を示した図である。図4中、点線Aは面押し強度の最大値を示し、破線Bは面押し強度の最小値を示し、実線Cは面押し強度の平均値を示している。また、面押し強度は、通気性シート上に、厚さが0.5mm、対角線の長さが2インチのガラス片を吸引固定させて、100秒間保持しつつ、その間の強度(吸引力)を測定した。さらに、使用する通気性シートについては、使用開始から3ヶ月経過するごとに新品のシートに交換して測定したデータである。
かかる図4から理解されるように、同一の通気性シートを使用している期間内においては、面押し強度が低下することなく安定して推移している。また、3ヶ月経過後における新品のシートと交換する前後においても、面押し強度の変化は見られず、使用後の通気性シートと新品の通気性シートとの間で、面押し強度にほとんど差がないことが理解される。
このように、上述した構成の通気性シートを使用することにより、長期間使用した場合であっても劣化することなく、載置された電気光学装置用基板を確実に吸引固定することができ、作業効率を著しく向上させることができる。
【0028】
2.液晶装置の製造
次に、上述した通気性シートを用いて電気光学装置用基板を吸引固定して作業を行う工程を含む液晶装置の製造方法について説明する。
【0029】
(1)大判パネルの製造
まず、第1の母基板及び第2の母基板をシール材によって貼り合わせて構成され、複数のセル領域を含む大判パネルを製造する。かかる第1の母基板及び第2の母基板は、例えば、複数のセル領域の素子基板を含む第1の母基板と、複数のセル領域のカラーフィルタ基板を含む第2の母基板とすることができる。
【0030】
第1の母基板を、素子基板を構成する母基板とする場合には、基本的に、透明性を有する基体としてのガラス基板上の各セル領域に対応させて、図5(a)に示すように、スイッチング素子69や、画素電極63、配向膜85等を順次積層して形成することができる。また、液晶装置において、反射表示を可能にするためには、例えば、ガラス基板と、画素電極との間に、アルミニウム膜等からなる光反射膜が設けられる。
ここで、スイッチング素子は、TFT素子や、TFD素子等の非線形素子が代表的なものとして例示される。例えば、TFT素子は、図5(a)に示すように、ポリシリコン等の薄膜半導体70に、ゲート電極71、ソース電極73、ドレイン電極66を構成した三端子型のスイッチング素子69である。かかるTFT素子は、ゲート電極に印加する電圧がオフの状態では、ソース電極とドレイン電極間は遮断されている。一方、ゲート電極に電圧を印加すると、半導体内部を、ソース電極からドレイン電極の方向に、あるいは、その逆方向に、電子が通過し電流が流れるようになるアクティブ素子である。
また、画素電極は、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)からなる、それぞれの画素を構成する電極であって、ドレイン電極と電気的に接続されている。そして、対向するカラーフィルタ基板上の面状電極との間に駆動電圧が加わった場合に、液晶を駆動させることができる。
また、画素電極上の配向膜は、例えば、ポリイミド樹脂等から構成され、液晶材料の配向方向を規定するための膜である。
【0031】
また、第2の母基板を、カラーフィルタ基板を構成する母基板とする場合には、基本的に、透明性を有する基体としてのガラス基板上の各セル領域に対応させて、図5(b)に示すように、着色層37r、37g、37bや、遮光膜39、面状電極33、配向膜45等を積層して形成することができる。
ここで、着色層は、通常、透明樹脂中に顔料や染料等の着色材を分散させて所定の色調を呈するものとされている。着色層の色調の一例としては原色系フィルタとしてR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の組合せからなるものがあるが、これに限定されるものではなく、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)等の補色系や、その他の種々の色調で形成することができる。
【0032】
また、図5(b)に示すように、遮光膜39は、画素毎に形成された着色層37r、37g、37bの間の画素間領域に形成されている。この遮光膜としては、例えば黒色の顔料や染料等の着色材を樹脂その他の基材中に分散させたものや、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色材を共に樹脂その他の基材中に分散させたものなどを用いることができる。
また、図5(b)に示すように、着色層37r、37g、37bや遮光膜39の上層には、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体からなる面状電極33が形成されている。
さらに、面状電極33の上には、ポリイミド樹脂等からなる配向膜45が形成されている。
なお、本実施形態では、着色層を第1の母基板側のガラス基板上に設けてあるが、かかる第2の母基板側のガラス基板上に設けることもできる。
【0033】
次いで、第1の母基板と、第2の母基板とを、それぞれ電極が形成された面を互いに対向するように、シール材を介して貼り合わせる。
ここで、使用するシール材は、簡易な装置で容易に硬化させることができるとともに、より安価であることから、熱硬化性樹脂を含むシール材であることが好ましい。したがって、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分とするシール材を使用することができる。
【0034】
具体的には、まず、図6(a)〜(b)に示すように、例えば、第1の母基板60A上において、シール材23を、スクリーン印刷やディスペンサにより、各セル領域を囲むようにパターニングして形成する。
次いで、所定形状にパターニングされたシール材が形成された第1の母基板を低温処理(プリベーク)して、シール材中の溶剤を蒸発させる。このとき、シール材の硬化温度よりも低い温度条件で、減圧しながらプリベークすることができる。例えば、35〜70℃程度の温度条件、50〜90kPaの圧力条件の下で、実施することが好ましい。このような条件でプリベーク工程を実施することにより、シール材中に残留する溶剤を効率よく蒸発させるとともに、シール材から十分に脱気することができるためである。したがって、液晶装置の製造後において、シール材内の気泡に起因する表示ムラや、断線等を、効果的に防止することができるためである。
次いで、図6(c)に示すように、第2の母基板30Aを重ねて貼り合わせることにより、大判パネル20Aが形成される。
なお、本実施形態においては、第1の母基板上にシール材を形成しているが、第2の母基板上に形成しても構わない。
【0035】
(2)第1分割工程
次いで、図7(a)〜図8(c)に示すように、大判パネル20Aを構成する第1の母基板60A又は第2の母基板30Aを切断して、第1の中間基板60a及び第2の中間基板30aに分割することにより、複数の中間パネル20aを形成する。すなわち、第1の母基板及び第2の母基板を、並列する一定の方向、例えば、図7(b)中におけるX方向にのみ切断することにより、図8(c)に示すように、複数のセル領域を含む短冊状の中間パネル20aを形成する。
【0036】
より具体的には、まず、図7(a)に示すように、大判パネル20Aを、スクライブラインを形成するための装置における通気性シート13が配置された固定台11上に載置した後、当該通気性シート13を介して、大判パネル20Aを吸引することにより、固定台11上に固定する。これによって、他の固定具やテープ等の粘着剤を使用しなくても確実に固定することができるようになり、作業効率を著しく高めることができる。すなわち、固定台の下方側から吸引装置によって吸引することにより、固定台の孔を介して通気性シートが吸引され、さらに通気性シートが通気性を備えることから、シート上に載置された大判パネルを吸引固定することができる。
【0037】
また、通気性シートが上述した所定の引張り強度を備えている場合には、通気性シート単独で使用することにより、第1及び第2の母基板を損傷させない程度の緩衝性を発揮することができる。
一方、そのような引張り強度を備えていない場合には、図1(b)に示すように、当該通気性シート13と固定台11の間に、例えば、マット化されたPETフィルムやウレタンシート14を配置しておくことが好ましい。これにより、所望の緩衝性を発揮して、電気光学装置用基板の損傷を防ぐことができる。この場合、これらのPETフィルムやウレタンシート等が通気性を備えていることにより、電気光学装置用基板の吸引固定を阻害することがなくなる。例えば、PETフィルムを使用する場合には、針や安全ピン等で通気孔を設けておくことが好ましい。
【0038】
次いで、固定台上に固定された大判パネルのうちの上側にある基板、例えば、図7(a)に示すように、第2の母基板30Aを上側にして載置した場合には、当該第2の母基板30Aにおける第1破断予定線に沿って、図7(b)に示すように、第1スクライブライン17aを形成する。このとき、スクライブラインを形成する手段としては、例えば、図7(b)に示す回転刃22や、レーザーカッター、カッター刃等を使用して、基板の表面にスクライブラインを形成することができる。
ここで、スクライブラインを形成するにあたり、各セル領域のシール材における液晶の注入口が存在する辺に沿って、形成することが好ましい。この理由は、このように実施することにより、次工程において、それぞれの基板に対して、効率よく液晶を注入することができるためである。
【0039】
次いで、図7(c)に示すように、大判パネル20Aを、上下を逆にして、すなわち、上述の例では、第1の母基板60Aを上側にして、再度通気性シート13が配置された固定台11上に載置した後、上述したのと同様にして、図7(d)に示すように、第1の母基板60Aに対してスクライブライン17bを形成する。
【0040】
次いで、図8(a)に示すように、第1の母基板60A及び第2の母基板30Aそれぞれにスクライブライン17a、17bが形成された大判パネル20Aを、パネルを分断するための装置における通気性シート13が配置された固定台11上に載置した後、当該通気性シート13を介して、大判パネル20Aを吸引することにより、固定台11上に固定する。その後、図8(b)に示すように、例えば、ウレタン等からなるせん断部材24を用いて、大判パネル20Aの上から、スクライブライン17aが形成された箇所に対して力を加えることによって、図8(c)に示すように、大判パネル20Aを分断して短冊状の中間パネル20aを形成する。このとき、通気性シートが所定の引張り強度の値であれば、パネルに対して均一に加圧することができ、精度良く分断することができる。
【0041】
(3)液晶材料注入工程
次いで、形成された中間パネルにおいて、それぞれのセル領域におけるシール材の内側部分に対して、開口部を介して液晶材料を注入した後、封止材(図示せず)にて封止する。すなわち、図9に示すように、各セル領域における液晶材料の注入口23aが外部に接する状態になるように第1の母基板60A及び第2の母基板30Aを切断した場合においては、それぞれの中間パネル20aにおける各セル領域に対応する液晶材料の注入口23aが一列に並ぶために、効率的に液晶材料21を注入することができる。
【0042】
(4)第2分割工程
次いで、図10(a)〜(d)に示すように、中間パネル20aを構成する第1の中間基板60a及び第2の中間基板30aを切断して、複数の素子基板60及びカラーフィルタ基板30に分断することにより、単品としての液晶パネル20を形成する。すなわち、複数のセル領域を含む短冊状の中間パネル20aから、単品である液晶パネル20を切り出して形成する。
具体的な切断方法に関しては、第1分割工程で説明したのと同様に実施することができるために、ここでの説明は省略するが、本工程においても、通気性シートを介して中間パネルを吸引固定して作業を行うために、スクライブラインの形成位置や分断位置を精度良く行うことができる。
【0043】
また、この第2分割工程においては、同時に、カラーフィルタ基板の外形を素子基板よりも小さく切り出して、基板張出部を形成するため、当該領域においては、素子基板上に形成された配線パターンが露出する。したがって、静電気の発生が、配線パターンに大きく影響を与えることになるため、静電気を速やかに除去する必要がある。そのため、導電性を備えた通気性シートを使用することにより、パネルが帯電することを有効に阻止することができる。ただし、この場合に、通気性シートの下にウレタンシートやPETフィルムを配置している場合には、通気性シートにアースを接続して、静電気を逃がしやすくする必要がある。
また、基板張出部を形成するために切り出された端材を除去する際には、静電気の発生を防止するために、純水中で作業を行うことが好ましい。このとき、作業者の手に水が付着することになるが、そのまま分断装置上の中間パネルを取扱ったとしても、通気性シートが耐水性であれば、水によっても耐久性が低下することがないため、好適な態様である。
【0044】
(5)組立て工程
次いで、かかる液晶パネル20に対して、図11にその概略断面図を示すように、カラーフィルタ基板30の外面の所定位置に、位相差板(1/4波長板)47及び偏光板49を配置するとともに、素子基板60の外面においても、位相差板(1/4波長板)87及び偏光板89を配置する。
さらに、液晶パネル20に対して、半導体素子91等の電子部品やフレキシブル回路基板93等を接続するとともに、バックライトやフロントライト等の照明装置やケース体(図示せず)などを、必要に応じて、適宜取付けることにより、液晶装置10を製造することができる。
このとき、電子部品やフレキシブル回路基板の接続工程においても、本発明にかかる通気性シートが配置された固定台上に液晶パネルを載置し吸引固定して作業を行うことにより、パネルを確実に固定して、効率よく作業を行うことができる。また、さらに導電性を備えた通気性シートである場合には、作業中に生じる静電気が液晶パネルに帯電することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明の電気光学装置の製造方法によれば、電気光学装置用基板を固定して作業を行う工程において、通気性シート上に電気光学装置用基板を載置して作業を行うことにより、基板の損傷を防ぎつつ、基板を確実に固定することができ、作業効率を著しく向上させることができる。したがって、上述した、パネルの分断工程やフレキシブル基板等の接続工程に限られず、あらゆる工程において適用することができる。
また、電気光学装置としての液晶装置を例に採って説明したがそれに限定されるものではなく、エレクトロルミネッセンス装置や、プラズマディスプレイ装置、電子放出素子を備えた装置(FED:Field Emission DisplayやSCEED:Surface-Conduction Electron-Emitter Display)などの製造方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)及び(b)は、それぞれ通気性シートを用いて電気光学装置用基板を吸引固定した状態を示す図である。
【図2】電気光学装置用基板が傾いた場合の作業不良を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(b)は、それぞれ本発明の電気光学装置の製造方法に使用する通気性シートの例を示す図である。
【図4】本発明に使用される通気性シートの使用時間と面押し強度との関係を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ素子基板及びカラーフィルタ基板の構成を説明するために供する図である。
【図6】(a)〜(c)は、第1の母基板及び第2の母基板を貼り合わせて大判パネルを形成する工程を説明するために供する図である。
【図7】(a)〜(d)は、第1の母基板及び第2の母基板にスクライブラインを形成する工程を説明するために供する図である。
【図8】(a)〜(c)は、大判パネルを分断して中間パネルを形成する工程を説明するために供する図である。
【図9】中間パネルのそれぞれのセル構造に液晶材料を注入する工程を説明するために供する図である。
【図10】(a)〜(d)は、中間パネルを分断して単品の液晶パネルを形成する工程を説明するために供する図である。
【図11】本発明の実施形態で製造される液晶装置の概略断面図である。
【図12】従来の液晶装置の製造方法で使用される導電性シートを備えた固定台を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0047】
10:液晶装置(電気光学装置)、11:固定台、13:通気性シート、15:電気光学装置用基板、16:スクライブライン、17a・17b・18a:スクライブライン、20:液晶パネル、20A:大判パネル、20a:中間パネル、22:回転刃、23:シール材、23a:注入口、24:せん断部材、26:ガラスクロス、27:フッ素樹脂含有コーティング材、28・29:通気性シート、30:カラーフィルタ基板、30A:第1の母基板、30a:第1の中間基板、31:ガラス基板、33:面状電極、37r・37g・37b:着色層、39:遮光層、45:配向膜、60:素子基板、60A:第2の母基板、60a:第2の中間基板、61:ガラス基板、63:画素電極、69:スイッチング素子(TFT素子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法において、
前記電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、前記電気光学装置用基板を吸引固定することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記通気性シートが、導電性又は半導電性のシートであることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記通気性シートの引張り強度を0.015〜0.03M・Paの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記通気性シートが、撥水処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記通気性シートの通気量を1〜10cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記通気性シートとして、ガラスクロスの表面に、導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記通気性シートと前記固定台との間に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記通気性シートと前記固定台との間に、ウレタンシートを配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記電気光学装置用基板を分割するための切断ラインを形成する工程を含むとともに、当該工程で、前記吸引固定を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記切断ラインに沿って前記電気光学装置用基板を分断する工程を含むとともに、当該工程で、前記吸引固定を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項1】
電気光学装置用基板と、当該電気光学装置用基板に保持された電気光学材料と、を含む電気光学装置の製造方法において、
前記電気光学装置用基板を、固定台上に配置された通気性シートの上に載置するとともに、当該通気性シートを介して、前記電気光学装置用基板を吸引固定することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記通気性シートが、導電性又は半導電性のシートであることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記通気性シートの引張り強度を0.015〜0.03M・Paの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記通気性シートが、撥水処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記通気性シートの通気量を1〜10cm3/cm2・秒の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記通気性シートとして、ガラスクロスの表面に、導電性カーボンが混合されたフッ素樹脂含有材料をコーティングしたシートを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記通気性シートと前記固定台との間に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記通気性シートと前記固定台との間に、ウレタンシートを配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記電気光学装置用基板を分割するための切断ラインを形成する工程を含むとともに、当該工程で、前記吸引固定を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記切断ラインに沿って前記電気光学装置用基板を分断する工程を含むとともに、当該工程で、前記吸引固定を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−317484(P2006−317484A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136913(P2005−136913)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]