説明

電気光学装置の駆動装置及び方法、並びに電気光学装置及び電子機器

【課題】サブフィールド駆動を行う電気光学装置の駆動装置において、温度変化等に起因する各画素部における応答特性の変化を低減する。
【解決手段】駆動装置(1)は、サブフィールド駆動し、1フレームが分割されたサブフィールドのうち2つ以上のサブフィールドで、2値電圧を画素部に印加する。画素部の応答特性変化を検知し、サブフィールドのうち時間軸上で相隣接する2つ以上の変化補償用サブフィールドについて、応答特性変化を補償するように印加期間を変化させつつ2値電圧を印加する補償手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフィールド駆動することにより階調制御を行う、例えば液晶装置等の電気光学装置の駆動装置及び方法、並びに該駆動装置を備える電気光学装置及び例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置では、1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドにおいて、各画素部に対し、階調に応じてオン電圧又はオフ電圧を印加する。即ち、サブフィールド駆動する。ここで、液晶装置における液晶の応答特性など、電気光学装置における各画素部の応答特性は、動作時における温度等の使用環境などに応じて変化する。すると、各画素部における透過率などの特性が、オン電圧又はオフ電圧が同じであっても変化してしまう。このため、従来から、特定のサブフィールドを可変的に制御することで、応答特性の変化を補正する技術がある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−317681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術によれば、1フレーム中にアドレス期間が表示期間と独立に設けられている面順次方式でサブフィールド駆動する装置の場合には、応答特性の変化をある程度修正できる。
【0005】
しかしながら、1フレーム全体に渡ってアドレス期間と表示期間とが一体的に設けられている線順次方式でサブフィールド駆動する装置の場合には、次の問題点がある。即ち、特定のサブフィールドを変化させると、他のサブフィールドがその変化の影響を受け、フレーム全体のサブフィールド構成が乱れる。従って、上記背景技術では対応困難或いは不可能であり、結局、温度変化等に起因する液晶の応答特性の変化などによって、階調異常、輝度異常、色彩異常等が引き起こされるという技術的問題点がある。このように、背景技術では走査方法によって応答特性の変化を修正することが困難になる。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、サブフィールド駆動を行う電気光学装置の駆動装置において、温度変化等に起因する各画素部における応答特性の変化を低減することが可能な電気光学装置の駆動装置及び方法、並びに、該駆動装置を備えた電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置の駆動装置は上記課題を解決するために、画像表示領域に配列された複数の画素部を有する電気光学装置をサブフィールド駆動する電気光学装置の駆動装置であって、前記画像表示領域で表示される一枚の画像をなす画像信号に係る1フレームが時間軸上で分割されてなる複数のサブフィールドの各々について、前記複数の画素部毎に表示すべき階調に応じたオン電圧又はオフ電圧を、前記複数の画素部に対して印加する駆動手段と、前記複数の画素部の応答特性変化を検知する検知手段と、前記複数のサブフィールドのうち予め設定された前記時間軸上で相隣接する2つ以上の変化補償用サブフィールドの各々について、前記検出された応答特性変化を補償するように印加期間を変化させつつ前記オン電圧又はオフ電圧を印加する補償手段とを備える。
【0008】
本発明の駆動装置によれば、その動作時には、電気光学装置が、次のようにサブフィールド駆動される。ここに本発明に係る「電気光学装置」は、基板上に、例えば画素スイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)によってその駆動が制御される複数の画素部が配列されており、各画素部は、一対の基板間に液晶等の電気光学物質を挟持する構造を有する。また、各基板上には、相対向するように画素電極及び対向電極が設けられており、両電極間に電圧を印加することによって、基板間に挟持された電気光学物質を配向制御する。このようにして、表示装置は入力された画像信号に基づいて表示画像を表示する。
【0009】
即ち先ず、例えば、走査線駆動回路及びデータ線駆動回路等を備えてなる駆動手段によって、サブフィールドの各々について、複数の画素部毎に表示すべき階調に応じたオン電圧又はオフ電圧が、複数の画素部に対して印加される。ここに「オン電圧又はオフ電圧」は、サブフィールド駆動で用いられるデジタルのデータ信号或いは画像信号であり、これが各画素に印加されると、デジタル駆動、即ちサブフィールド駆動が行われる。
【0010】
このようにオン電圧又はオフ電圧が印加されている最中に、検知手段によって、画像表示領域の複数の画素部の応答特性変化が検知される。ここに「応答特性変化」とは、各画素部にオン電圧及びオフ電圧が印加された際に、光学特性等の特性が、温度変化等の外的要因或いは内的要因によって、変化することを意味する。即ち「応答特性」とは、電気光学物質の微小部分を含んでなる各画素部における光学特性等の特性を意味する。例えば、液晶等の電気光学物質であれば、温度変化に起因して、応答特性変化が大なり小なり現れる。
【0011】
こうして応答特性変化が検知されると、例えばプロセッサ或いはコントローラ、メモリ等を備えてなる補償手段によって、変化補償用サブフィールドの各々について、検知手段によって検知された応答特性変化を補償するように、オン電圧又はオフ電圧が印加され、更に、その印加期間も変化させられる。即ち、応答特性変化を補償するように、変化補償用サブフィールドの時間軸上の時間幅が変化する。
【0012】
ここで、本発明に係る駆動装置として例えば線順次方式を用いた場合、1フレーム全体に渡ってアドレス期間と表示期間とが一体的に設けられている。つまり、線順次方式では、特定のサブフィールドの期間を変更した場合、他のサブフィールドの期間も適度に変更させることによって、1フレーム全体の期間が一定になるように調整する必要がある。そのため、本発明では応答特性変化に伴って、変化補償用サブフィールドの期間が変更されると、1フレーム全体の期間が一定になるように他のサブフィールド期間も必要に応じて変化させる。これにより、線順次方式を用いた場合であっても、変化補償用サブフィールドの期間を変化させることによって、応答特性変化を補償することが可能となる。
【0013】
この際特に、サブフィールド構成が変更することによって、1フレーム期間中におけるオン又はオフ駆動される期間が増減するので、階調表現に少なからず変化が生じる。しかし、実際には、要求される階調数、装置仕様、画像信号仕様等に応じて1フレーム中のサブフィールド数は十分多く設定されているので、上記サブフィールド構成の変更による階調の変化は微小である。従って、変化補償用サブフィールドを二つ或いはそれ以上設定しても、十分な数のサブフィールドがあるため、依然として適切な階調表現が可能となっている。
【0014】
このように、変化補償用サブフィールドを設けることで、特定のサブフィールドにおける印加電圧及び印加期間の少なくとも一方を変化させることによって、画素部の応答特性変化を補償することが可能となり、応答特性変化によって生じる階調異常、輝度異常、色彩異常等の不具合を予防可能となる。よって、最終的には高品位な画像表示が可能となる。
【0015】
以上の結果、サブフィールド駆動する電気光学装置の駆動装置においても、画素部の応答特性変化に基づく透過率シフト等を軽減することができ、安定した高品質な画像表示が可能となる。
【0016】
本発明に係る駆動装置の一の態様では、前記補償手段は、前記2つ以上の変化補償用サブフィールドの二対に対して夫々、前記2つ以上の変化補償用サブフィールドの各々について、前記印加期間を変化させつつ前記オン電圧又はオフ電圧を印加する。
【0017】
この態様によれば、2つ以上の変化補償用サブフィールドは二対存在している。つまり、時間軸上において相隣接する2つ以上の変化補償用サブフィールドが、二対、時間軸上において離れて設けられている。
【0018】
本願発明者の研究によると、1フレーム中における変化補償用サブフィールドが占める期間が大きくなるほど、より大きな応答特性変化を補償できることが判明している。このように変化補償用サブフィールドを二対設けることで、1フレーム中における変化補償用サブフィールドの占める期間を増大させることにより、より大きな応答特性変化が補償可能になる高品位な駆動装置を実現することができる。尚、この態様では4つ以上の変化補償用サブフィールドの期間がへんこうされるが、一般的に、1フレーム中におけるサブフィールド数は十分多く設けられているため、階調表現の変化は微小であり、依然として適切な階調表現が可能である。
【0019】
本発明に係る駆動装置の他の態様では、前記補償手段は、前記2つ以上の変化補償用サブフィールドとして、前記時間軸上で連続する3つ以上の変化補償用サブフィールドのうち第1サブフィールドに対して前記オン電圧及びオフ電圧の一方を印加し、前記3つ以上の変化補償用サブフィールドのうち前記第1サブフィールドに隣接する第2サブフィールドに対して、前記オン電圧及びオフ電圧の他方を印加し、前記3つ以上の変化補償用サブフィールドのうち前記第2サブフィールドに隣接する第3サブフィールドに対して、前記オン電圧及びオフ電圧の他方を印加する。
【0020】
この態様によれば、複数存在するサブフィールドのうち、時間軸上で連続して3つ以上並んでいるサブフィールドを変化補償用サブフィールドとする。このように、変化補償用サブフィールドを設けることにより、前述の態様のように、夫々の変化補償用サブフィールドを対で形成していた場合に比べて、少ない数のサブフィールドを変化補償用サブフィールドとしてもより大きな応答特性変化を補償することが可能になる。つまり、3つの連続するサブフィールドのいずれの時刻にオン電圧とオフ電圧との切り換え時刻を設定することも可能となり、この切り換え位置が採り得る位置が非常に広がるので、その分だけ大きな応答特性変化を補償できるのである。その結果、より高画質な画像表示が可能となる。
【0021】
本発明に係る駆動装置の他の態様では、前記変化補償用サブフィールドは、前記複数のサブフィールドのうち合計時間が最大になるように予め設定されている。
【0022】
この態様によれば、1フレーム中における変化補償用サブフィールドの占める期間が大きくなるほど、より大きな応答特性変化に対して表示部の透過率特性の変化を抑制できるので、同数の変化補償用サブフィールドを設けた場合において、より大きな応答特性変化を効率的に補償することが可能となる。
【0023】
本発明に係る駆動装置の他の態様では、前記変化補償用サブフィールドのうち少なくとも一つは、前記画像表示領域の一面を走査する垂直走査時間よりも短い。
【0024】
この態様によれば、前記画像表示領域の一面を走査する垂直走査時間よりも短い変化補償用サブフィールドを使用するので、変化補償用サブフィールドの長さの最小単位が垂直走査時間である場合に比較して、応答特性変化をきめ細かく補償可能となる。
【0025】
尚、変化補償用サブフィールドのうち少なくとも一つは、画像表示領域の一面を連続的に順次走査する(即ち、垂直走査する)時間よりも長くてもよい。例えば、変化補償用サブフィールドが、複数のサブフィールドのうち合計時間が最大になるように予め設定されている場合には、このように長くなる。合計時間が大きければ、より広範囲の応答特性変化を補償可能となる。
【0026】
この態様では、前記電気光学装置は、前記画像表示領域に各交点で相交差する複数の走査線及び複数のデータ線を備え、前記複数の画素部は、前記各交点に対応して配列されており、前記駆動手段は、前記画像表示領域が前記走査線に沿った分割線で分割されてなる複数の領域別に交互に、走査信号を前記走査線に対して供給し、前記画像信号を前記データ線に対して前記走査信号に同期して供給し、前記走査信号として前記複数の領域別に交互に供給される二つの走査信号が供給される時刻間における相互差が前記垂直走査時間より短いように構成されてもよい。
【0027】
このように構成すれば、走査線が複数の領域別に交互に走査される時刻間における相互差が、画像表示領域の一面を走査する時間(即ち、垂直走査時間)よりも短いので、変化補償用サブフィールドを、垂直走査時間より短くできる。
【0028】
本発明に係る駆動装置の他の態様では、前記検知手段は、前記複数の画素部の温度を検出し、該検出された温度の変化を、前記応答特性変化として検知する。
【0029】
この態様によれば、検知手段によって、複数の画素部の温度が先ず検出され、更に、この検出された温度の変化が、応答特性変化として検知される。ここに本発明における「検知手段」は、画素部の応答特性変化を直接検知するのではなく、画素部の温度を測定することにより間接的に、画素部の応答特性変化を検知してもよい。例えば、画素部からなる画像表示領域に温度センサを接触するように配置することで、画素部の温度変化を測定し、これに基づいて、画素部の応答特性変化を検知するように構成することができる。
【0030】
また、複数の画素部の一部に設けられた温度計により温度を検出してもよい。即ち、複数の画素部の温度を直接検出してもよい。或いは、検知手段は、電気光学装置のケース、フレーム、実装された部位等に設けられた温度計により温度を検出してもよい。即ち、複数の画素部の温度を間接的に検出してもよい。
【0031】
更に、検知手段は、温度以外の温度に依存する若しくは特定関係を有するパラメータ、又は、応答特性変化に依存する若しくは特定関係を有するパラメータを検知することで、画素部における応答特性変化を間接的に検知してもよい。更に、透過率や輝度など、画素部における応答特性変化を直接検知してもよい。
【0032】
本発明の電気光学装置の駆動方法は上記課題を解決するために、画像表示領域に配列された複数の画素部を有する電気光学装置をサブフィールド駆動する電気光学装置の駆動方法であって、前記画像表示領域で表示される一枚の画像をなす画像信号に係る1フレームが時間軸上で分割されてなる複数のサブフィールドの各々について、前記複数の画素部毎に表示すべき階調に応じたオン電圧又はオフ電圧を、前記複数の画素部に対して印加する駆動工程と、前記複数の画素部の応答特性変化を検知する検知工程と、前記複数のサブフィールドのうち予め設定された前記時間軸上で相隣接する2つ以上の変化補償用サブフィールドの各々について、前記検出された応答特性変化を補償するように印加期間を変化させつつ前記オン電圧又はオフ電圧を印加する補償工程とを備える。
【0033】
本発明の駆動方法によれば、上述した本発明の駆動装置の場合と同様に、応答特性変化に対して安定した電気光学装置の駆動が実現できる。
【0034】
尚、本発明の駆動方法においても、上述した本発明の駆動装置と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0035】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置の駆動装置(但し、その各種態様を含む)を具備してなる。
【0036】
本発明の電気光学装置によれば、上述した本発明の駆動装置を具備しているので、各画素部における応答特性変化によらずに、高品位の画像表示が可能となる。
【0037】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
【0038】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る液晶装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することが可能である。
【0039】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0041】
<液晶装置>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本発明に係る駆動装置を具備する電気光学装置の一例として液晶装置の構成を説明する。図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶装置の概略的な平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。
【0042】
図1及び図2において、液晶装置は、TFTアレイ基板10と、TFTアレイ基板10に対向配置された対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10及び対向基板20間には液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10及び対向基板20は、本発明の「画像表示領域」の典型例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52を介して相互に接着されている。
【0043】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。
【0044】
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺のいずれかに沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。
【0045】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これら上下導通端子及び上下導通材106により、TFTアレイ基板10及び対向基板20間で電気的な導通をとることができる。
【0046】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0047】
<液晶装置の電気的構成>
次に、図3乃至図7を参照しながら、本実施形態における液晶装置の駆動装置1について、その電気的な構成及びその駆動方法を説明する。図3は、駆動装置1の電気的構成を示したブロック図である。図4は、表示部100の電気的構成を示した回路図である。
【0048】
図3において、駆動装置1は、本発明の「駆動手段」の一例である駆動回路500、本発明の「検知手段」の一例である温度センサ510、画像表示領域10aを含む表示部100、並びに表示部100に含まれる対向基板20上に形成された対向電極にLCCOM電圧を印加するための電源回路700を備えて構成されている。
【0049】
ここで、駆動回路500は、メモリ520、判定回路530、画像信号供給回路300、タイミング制御回路400、選択回路550、メモリ560、変換回路570、制御信号処理回路630、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104を備えて構成されている。
【0050】
温度センサ510は、駆動装置の動作時に、画像表示領域10aの画素部の温度を検知し、その温度の変化を電気信号として判定回路530に入力する。温度センサ510は、例えば液晶装置の実装ケースや液晶装置の備える防塵ガラス等に取り付けられる。温度センサ510は、液晶層の温度をモニタするためには、表示動作の妨げとならない範囲で、画素部のなるべく近くに取り付けられるのが好ましい。温度センサ510によって定量化される温度は、例えば、ケルビン、セルシウス度(摂氏)、ファーレンハイト度(華氏)、熱力学温度(絶対温度)などでもよい。尚、後述するように、このように画素部の温度を温度センサ510で測定することにより、画素部の応答特性変化を間接的に検知している。
【0051】
メモリ520には、所定の基準となる温度値が記憶されており、この基準となる温度値と温度センサ510によって検知された温度との差分を、判定回路530によって評価する。
【0052】
タイミング制御回路400は、各部で使用される各種タイミング信号を出力するように構成されている。より具体的には、タイミング制御回路400の一部であるタイミング信号出力手段により、最小単位のクロックであり各画素を走査するためのドットクロックが作成され、このドットクロックに基づいて、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYinv、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号XCLinv、YスタートパルスDY及びXスタートパルスDXが生成される。特に、後に詳述するように、YスタートパルスDYを走査線駆動回路104に出力するタイミングを制御することによって、1フレーム中におけるサブフィールドの時間幅を変更することが可能となる。
【0053】
制御信号処理回路630は、タイミング制御回路400から供給されたXスタートパルス信号DX等の各種信号をデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路104に振り分ける。より具体的には、制御信号処理回路630は、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYinv、及びYスタートパルスDYを走査線駆動回路104に供給し、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号XCLinv、及びXスタートパルスDXをデータ線駆動回路101に供給する。
【0054】
画像信号供給回路300は、画像信号VIDを生成し、当該画像信号VIDを選択回路550に供給する。電源回路700は、所定の共通電位LCCOMの共通電源を、図2に示す対向電極21に供給する。本実施形態において、対向電極21は、図2に示す対向基板20の下側に、複数の画素電極9と対向するように形成されている。
【0055】
次に、表示部100の電気的構成を詳細に説明する。
【0056】
図4に示す如く、表示部100は画像表示領域10aを構成する複数の画素部72を備えている。複数の画素部72は、画像表示領域10aにおいてX方向及びY方向に沿ってマトリクス状に形成されている。画素部72は、画素電極9、トランジスタ素子Tr、及び、液晶素子50aを備えている。トランジスタ素子Trは、デジタル信号化された画像信号が供給されるデータ線6と、画素電極9とに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用TFTである。
【0057】
トランジスタ素子Trのゲートに走査線3が電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線3にパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9は、トランジスタ素子Trのドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるトランジスタ素子Trを一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6から供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0058】
液晶素子50aに含まれる液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。本実施形態では、表示部100に供給される画像信号は、High又はLowの2値の電位をとるデジタル信号であるため、ノーマリーホワイトモードであれば、Highの電位を有する画像信号が供給されると画素部72における入射光の透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、Highの電位を有する画像信号が供給されると、画素部72における入射光の透過率が増大する。これにより、画像信号に応じたコントラストを持つ光を出射することが可能となる。
【0059】
特に、駆動装置1の動作時に、デジタル信号化された画像信号VIDのコードパターンを構成する2値データによって規定されたHigh又はLowの夫々の電位が画素電極9に供給される。画像表示領域10aでは、各画素部72における画素電極9の電位及び対向電極21の固定電位LCCOMの電位差に応じて液晶に印加された電圧と、複数の階調制御期間において画素部72に印加された電圧の組み合わせとに応じて、各画素の階調が制御可能である。蓄積容量70は、固定電位線300に電気的に接続されており、画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9と対向電極との間に形成される液晶素子50aと並列に付加されている。
【0060】
再び、図3において、選択回路550は、表示部100に表示される画像の階調に対応したコードパターンを記憶したメモリ560から読み出す。選択回路550は、画像信号VIDに基づいて表示部100に表示されるべき画像に対応したコードパターンを選択し、当該コードパターンに関するデータを変換回路570に供給する。このようなコードパターンは、1フィールドの一部を構成する、複数の階調制御期間の夫々において画素部72に表示されるべき白表示又は黒表示を規定するHigh又はLowの2値信号から構成されている。
【0061】
変換回路570は、判定回路530から供給された判定結果を含むデータに基づいて、画素部72が表示可能な黒表示及び白表示の夫々を規定する2値からなるデータ信号Dsに変換し、データ線駆動回路101に供給する。データ線駆動回路101は、走査線駆動回路104による走査タイミングに応じて画像信号を各画素部72に供給する。即ち、本発明に係る「サブフィールド駆動用のオン電圧又はオフ電圧」がデジタル信号として、変換回路570からデータ線駆動回路101を介して、表示部100へ供給される。
【0062】
次に、図5を参照しながら、変換回路570及びデータ線駆動回路101を介して表示部100に供給されるデータ信号Dsにおけるサブフィールド構成を説明する。表示部100に表示されるべき画像を表示するためのデジタル信号化されたデータ信号Dsは、1フィールドFを時間軸に沿って分割してなる複数のサブフィールド期間SFi(i=1,・・・,n:nは2以上の自然数)から構成されている。
【0063】
図5は、データ信号Dsの1フレーム中における時間軸上のサブフィールド構成と、夫々のサブフィールド期間において走査線駆動回路104によって駆動されている走査線の時間的な対応関係を示す図である。
【0064】
各サブフィールド期間は、走査線の駆動を開始するスタートパルスDYの入力タイミングによって規定される。例えば図5に示す第1サブフィールドSF1は、対応するスタートパルスDY1が入力されると同時に表示部にある走査線の駆動が開始されてから、表示部にある画面上に存在する全ての走査線を一回駆動し終えるまでの時間となっている。また、SF3やSF4のように、1つ前のサブフィールド期間が終わってから次のスタートパルスDYを入力するまでの間に、待ち時間を作ることにより、サブフィールドの期間を変化させることも可能である。
【0065】
尚、本実施形態のような線順次方式の駆動装置においては、同時に駆動される走査線が一本しかない場合、1つのサブフィールドにおいて走査線が表示部を1回走査し終えるまで、次のサブフィールドを開始することはできない。さもなければ、同一データ線を介して各行の画素部に、異なる画像信号を供給できないからである。そのため、1つのサブフィールドの期間は少なくとも画像表示領域10aを1本の走査線が走査する時間(垂直走査時間)より長く確保する必要がある。
【0066】
続いて、本発明の補償手段の動作と機能について、図6を参照して、具体的に説明する。
【0067】
図6(a)は、図5において1フレーム内に8つのサブフィールドを設けた場合(つまり、n=8とした場合)の、サブフィールド構成を示す模式図である。図6(a)はサブフィールドSFiのうち、SF6とSF7を変化補償用サブフィールドVSFiとしている。変化補償用サブフィールドVSFiは本発明における補償手段によりその期間が変更される。図6では、VSF6とVSF7の期間が変化されている。このように、補償手段は、タイミング制御回路400からのYスタートパルスDYの出力タイミングを制御することによって、変化補償用サブフィールドの期間を変化させる。
【0068】
図6(b)及び図6(c)は、変化補償用サブフィールドの期間を変更した例を具体的に示す模式図である。ここでは、変化補償用サブフィールドであるVSF6及びVSF7に対し、YスタートパルスDY6の供給タイミングをずらすことで、それらの期間を変更している。例えば、図6(b)では、図6(a)に比べてYスタートパルスDY6の入力タイミングを早めることで、VSF6の期間を短くする一方、VSF7の期間を長く変更している。そして、図6(c)では、図6(a)に比べてYスタートパルスDY6の入力タイミングを遅らせることで、VSF6の期間を長くする一方、VSF7の期間を短く変更している。
【0069】
このように、本実施形態のような線順次方式の駆動装置においては、各サブフィールドはスタートパルスDYの入力タイミングによってその期間が変更される。特に、1つのサブフィールドを変化補償用サブフィールドとして期間を変更した場合には、その変更した期間だけ他のサブフィールドの期間も変更することが必要となる。そのため、変化補償用サブフィールドは必ず2つ以上設ける必要がある。逆に言えば、2つの連続した変化補償用サブフィールドを利用することで、これらの中間に位置する境目のみを時間軸上で前後させることで、変化補償を行うことが可能となり、この際、他のサブフィールドの位置を変化させる必要は無い。
【0070】
ここで、図7を参照して、変化補償用サブフィールドを設けることによって得られる本発明の効果について具体的に説明する。
【0071】
図7は、2つの異なる温度において表示部100における光の透過率の時間的変化を図示的に示したグラフ図である。ここで、光の透過率の変化は、本発明における「応答特性変化」の一例である。実線ラインは温度A℃における透過率の変化を示しており、点線ラインは温度B℃(A℃<B℃)における透過率の変化を示している。
【0072】
図7(a)は、一般的な駆動装置(つまり、本発明のような変化補償用サブフィールドを設けていない駆動装置)における透過率の変化を示している。図7(a)に示すように、A℃からB℃へ温度が高くなると、透過率を示すラインは全体的に上方に変化していることがわかる。これは、温度変化に伴い、表示部100における液晶素子50aの特性が変化していることを表している。一方、図7(b)は、本発明における変化補償用サブフィールドを用いた場合について、透過率の変化を示している。図7(b)は、図7(a)に比べて、2つのグラフのずれが小さくなっている。このことから、変化補償用サブフィールドを設け、それらの期間を変更することによって、温度変化に対する透過率の変化、即ち、応答特性変化に伴う、階調異常や色彩異常等を防止する効果を得ることが可能となる。
【0073】
このように、時間軸上において連続する2SFを変化補償用サブフィールドとし、それらの期間を変化させることで、応答特性変化による画像表示部における階調異常や色彩異常等を防止できる。その結果、線順次方式においてもサブフィールド駆動される電気光学装置においても、サブフィールドの期間を変化させることにより、応答特性変化を補償するように駆動させることが可能になる。
【0074】
この際特に、サブフィールド構成が変更することによって(図6においては、VSF6及びVSF7)、1フレーム期間中におけるオン又はオフ駆動される期間が増減するので、階調表現に少なからず変化が生じる。本実施形態では便宜上、1フレーム中に8つのサブフィールドしか設けられていないが、実際には、要求される階調数、装置仕様、画像信号仕様等に応じて1フレーム中のサブフィールド数は十分多く設定されているので、上記サブフィールド構成の変更による階調の変化は微小である。従って、変化補償用サブフィールドの期間が温度毎に変更されても、最終的に適切な階調表示がなされる。
【0075】
変化補償用サブフィールドは、好ましくは、複数のサブフィールドのうち合計時間が最大になるように予め設定される。本願発明者の研究によれば、1フレーム中における変化補償用サブフィールドの占める期間が大きくなるほど、より大きな応答特性変化に対して表示部の透過率特性の変化を抑制できる。そのため、変化補償用サブフィールドをこのように構成すれば、同数の変化補償用サブフィールドを設けた場合において、より大きな応答特性変化を効率的に補償することが可能となる。
【0076】
具体的には、図8(a)に示すように変化補償用サブフィールドを設けることが好ましい。図8(a)では可変期間サブフィールとして、VSF6及びVSF7を選択している。一方、図8(b)ではVSF2及びVSF3を変化補償用サブフィールドとして選択している。図8(a)は図8(b)に比べて変化補償用サブフィールドの湿る割合が大きいため、より大きな温度変化に対して透過率を補償することが可能となる。このように、サブフィールド選択手段によって変化補償用サブフィールドを選択すれば、温度変化に対する透過率特性変化を抑制できるという本発明の効果を最も効果的に得ることができる。
【0077】
次に、本発明に係る駆動装置の変形例について説明する。
【0078】
<第1変形例>
上述した実施形態においては、変化補償用サブフィールドは連続した2つのサブフィールドを選択することで設けていた。この変化補償用サブフィールドは、図9に示すように、同様の連続した2つのサブフィールドを1フレーム中において、時間的に離れて複数設けてもよい。図9では、YスタートパルスDY3及びDY6の入力タイミングをずらすことによって、VSF3及びVSF4、並びにVSF6及びVSF7を変化補償用サブフィールドとしている。
【0079】
上述した通り、1フレーム中における変化補償用サブフィールドが占める期間が大きくなるほど、より大きな応答特性変化を補償できることが判明している。そのため、このようにサブフィールドを形成すれば、1フレーム中に占める変化補償用サブフィールドの割合をより多くすることができるため、より広い温度範囲における透過率特性変化を補償可能となる。
【0080】
本変形例においても、1フレーム中における変化補償用サブフィールドの合計期間が最大になるように変化補償用サブフィールドを設けるのが最も好ましい。
<第2変形例>
次に、図10に示す如く、変化補償用サブフィールド期間が3つ以上のサブフィールド期に連続するように渡って設けられていてもよい。図10では、YスタートパルスDY5及びDY6の入力タイミングを変化させることによって、変化補償用サブフィールドVSF5、VSF6及びVSF7の期間を変化させている。このように、変化補償用サブフィールドを設けることにより、前述の態様のように、夫々の変化補償用サブフィールドを対で形成していた場合に比べて、より少ない数のサブフィールドを変化補償用サブフィールドとしただけで、大きな応答特性変化を補償することが可能になる。
<第3変形例>
図11は、第3変形例に係る電気光学装置の駆動装置の電気的構成を示したブロック図である。
【0081】
コントローラ40は、クロック信号clk、垂直走査信号VS、水平走査信号HS、画像信号Dを外部から取得し、スタートパルスDYと、走査側転送クロックCLYと、イネーブル信号ENBY1、ENBY2、ENBXと、データ転送クロックCLXと、データ信号Dsと、を生成する。イネーブル信号ENBY1、ENBY2は、ハイレベル又はローレベルを示すデータであり、走査線駆動回路104から表示パネル100に対して出力すべきデータを選択するために用いられる。イネーブル信号ENBXは、データ線駆動回路101へデータ転送を開始する、及び走査線毎にデータを画素14cへ出力するタイミングを決めるパルス信号であって、走査側転送クロックCLYのレベル遷移(即ち、立ち上がり及び立ち下がり)に同期して出力される。データ転送クロックCLXは、データ線駆動回路101へデータを転送するタイミングを規定する信号である。データ信号Dsは、コントローラ40に入力された画像信号に対応するデータであり、サブフィールド期間毎に画素14cをオン状態又はオフ状態にするためのハイレベル又はローレベルを示すデータである。
【0082】
走査線駆動回路104は、コントローラ40から、スタートパルスDYと、走査側転送クロックCLYと、イネーブル信号ENBY1、ENBY2とを取得し、表示パネル100の走査線14aに対して走査信号G1、G2、G3、…、Gnを出力する。
【0083】
データ線駆動回路101は、コントローラ40から、イネーブル信号ENBXと、データ転送クロックCLXと、データ信号Dsとを取得し、表示パネル100のデータ線14bに対してデータ信号d1、d2、d3、…、dmを出力する。
【0084】
ここで、図12を参照して、走査線駆動回路104の構成と動作について具体的に説明する。図12は、走査線駆動回路104の概略構成を示す図である。走査線駆動回路104は、2つのシフトレジスタ11aa及び11abと、アンド回路11b1〜11bnととから構成されている。
【0085】
走査信号G1〜Gn/2は、走査側転送クロックCLY及びスタートパルスDYが入力され、イネーブル信号ENBY1がハイレベルに設定されることにより、シフトレジスタ11aaが順次、アンド回路11b1〜11bn/2を駆動して出力される。走査信号Gn/2+1〜Gnは、走査側転送クロックCLY及びスタートパルスDYが入力され、イネーブル信号ENBY2がハイレベルに設定されることにより、シフトレジスタ11abが順次、アンド回路11bn/2+1〜11bnを駆動して出力される。このようにして、シフトレジスタ11aaにより走査信号G1からGn/2が出力されることにより、画像表示領域10aの上半分にある走査線が駆動され、シフトレジスタ11abにより走査信号Gn/2+1からGnが出力されることにより、画像表示領域10aの下半分にある走査線が駆動される。また、2つのシフトレジスタ11aa及び11abは、走査側転送クロックCLY及びスタートパルスDYに従い、走査線G1〜Gn/2と走査線Gn/2+1〜Gnとが交互に選択されるように駆動される。従って、本変形例においては、走査信号G1〜Gnは走査側転送クロックCLY及びスタートパルスDYに従って、G1、Gn/2+1、G2、Gn/2+2、G3、Gn/2+3、・・・・、Gn/2、Gnの順で、順次駆動される(図13参照)。
【0086】
このように、画像表示領域10aを大きく2つの領域に分け、夫々の領域における走査線を交互に線順次駆動することにより一方の走査線が表示している間に、他の走査線はアドレス期間に割り当てることができる。つまり、2本の走査線を交互に走査することによって、変化補償用サブフィールドの期間を1垂直走査時間よりも短くすることが可能になる。
【0087】
図14は本変形例における、1フレーム中におけるサブフィールド構成を示した模式図である。走査線駆動回路104に供給されるYスタートパルスDY毎に、2本の走査線が交互に画面を走査している。図14において、画像表示領域10aの上方に該当するシフトレジスタ(即ち、図12においてシフトレジスタ11aa)に入力されるスタートパルスによる走査線と、画像表示領域10aの下方に該当するシフトレジスタ(即ち、図12においてシフトレジスタ11ab)に入力されるスタートパルスによる走査線を夫々、実線と一点鎖線で示している。ここでは、YスタートパルスDY6の供給タイミングを時間軸上で前後に変化させることによって、変化補償用サブフィールドVSF6及びVSF7の期間を変更している。このような走査方法を用いることにより、変化補償用サブフィールドVSF6は、1垂直走査時間よりも短く構成されている。これにより、他の実施形態に比べて、変化補償用サブフィールドの期間をより小さくすることができる。その結果、変化補償用サブフィールドの期間の可変幅を大幅に増やすことができ、よりきめ細かく応答特性変化補償することが可能になる。
【0088】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図15は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
【0089】
図15に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0090】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0091】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0092】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0093】
尚、図15を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0094】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0095】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態に係る電気光学パネルの全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置における表示部の電気的構成を示した回路図である。
【図5】一般的なデジタル画像信号の構成を図式的に示した模式図である。
【図6】本実施形態に係る液晶装置に供給される画像信号の構成を図式的に示した模式図である。
【図7】デジタル化された画像信号の階調に対する液晶装置1の光の透過率の関係を図示的に示したグラフ図である。
【図8】本実施形態に係る液晶装置に供給される画像信号の構成を図式的に示した模式図である。
【図9】第1変形例に係る液晶装置に供給される画像信号の構成を図式的に示した模式図である。
【図10】第2変形例に係る液晶装置に供給される画像信号の構成を図式的に示した模式図である。
【図11】第3変形例に係る液晶装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図12】第3変形例に係る液晶装置の走査線駆動回路の概略構成を示す図である。
【図13】第3変形例に係る液晶装置の走査線駆動回路の制御信号のタイミングチャート図である。
【図14】第3変形例に係る液晶装置に供給される画像信号の構成を図式的に示した模式図である。
【図15】電気光学装置を適用した電子機器の一例である。
【符号の説明】
【0097】
1 駆動装置、 40 コントローラ、 101 データ線駆動回路、 104 走査線駆動回路、 11a シフトレジスタ、 11b アンド回路、 100 表示部、 400 タイミング制御回路、 510 温度センサ、 520 メモリ、 530 判定回路、 550 選択回路、 560 メモリ、 570 変換回路、 700 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示領域に配列された複数の画素部を有する電気光学装置をサブフィールド駆動する電気光学装置の駆動装置であって、
前記画像表示領域で表示される一枚の画像をなす画像信号に係る1フレームが時間軸上で分割されてなる複数のサブフィールドの各々について、前記複数の画素部毎に表示すべき階調に応じたオン電圧又はオフ電圧を、前記複数の画素部に対して印加する駆動手段と、
前記複数の画素部の応答特性変化を検知する検知手段と、
前記複数のサブフィールドのうち予め設定された前記時間軸上で相隣接する2つ以上の変化補償用サブフィールドの各々について、前記検出された応答特性変化を補償するように印加期間を変化させつつ前記オン電圧又はオフ電圧を印加する補償手段と
を備えることを特徴とする電気光学装置の駆動装置。
【請求項2】
前記補償手段は、前記2つ以上の変化補償用サブフィールドの二対に対して夫々、前記2つ以上の変化補償用サブフィールドの各々について、前記印加期間を変化させつつ前記オン電圧又はオフ電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動装置。
【請求項3】
前記補償手段は、
前記2つ以上の変化補償用サブフィールドとして、前記時間軸上で連続する3つ以上の変化補償用サブフィールドのうち第1サブフィールドに対して前記オン電圧及びオフ電圧の一方を印加し、
前記3つ以上の変化補償用サブフィールドのうち前記第1サブフィールドに隣接する第2サブフィールドに対して、前記オン電圧及びオフ電圧の他方を印加し、
前記3つ以上の変化補償用サブフィールドのうち前記第2サブフィールドに隣接する第3サブフィールドに対して、前記オン電圧及びオフ電圧の他方を印加する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動装置。
【請求項4】
前記変化補償用サブフィールドは、前記複数のサブフィールドのうち合計時間が最大になるように予め設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置の駆動装置。
【請求項5】
前記変化補償用サブフィールドのうち少なくとも一つは、前記画像表示領域の一面を走査する垂直走査時間よりも短い
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気光学装置の駆動装置。
【請求項6】
前記電気光学装置は、前記画像表示領域に各交点で相交差する複数の走査線及び複数のデータ線を備え、
前記複数の画素部は、前記各交点に対応して配列されており、
前記駆動手段は、前記画像表示領域が前記走査線に沿った分割線で分割されてなる複数の領域別に交互に、走査信号を前記走査線に対して供給し、前記画像信号を前記データ線に対して前記走査信号に同期して供給し、
前記走査信号として前記複数の領域別に交互に供給される二つの走査信号が供給される時刻間における相互差が前記垂直走査時間より短い
ことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置の駆動装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記複数の画素部の温度を検出し、該検出された温度の変化を、前記応答特性変化として検知することを特徴とする
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置の駆動装置。
【請求項8】
画像表示領域に配列された複数の画素部を有する電気光学装置をサブフィールド駆動する電気光学装置の駆動方法であって、
前記画像表示領域で表示される一枚の画像をなす画像信号に係る1フレームが時間軸上で分割されてなる複数のサブフィールドの各々について、前記複数の画素部毎に表示すべき階調に応じたオン電圧又はオフ電圧を、前記複数の画素部に対して印加する駆動工程と、
前記複数の画素部の応答特性変化を検知する検知工程と、
前記複数のサブフィールドのうち予め設定された前記時間軸上で相隣接する2つ以上の変化補償用サブフィールドの各々について、前記検出された応答特性変化を補償するように印加期間を変化させつつ前記オン電圧又はオフ電圧を印加する補償工程と
を備えることを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動装置を具備してなる電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−26201(P2010−26201A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186835(P2008−186835)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】