説明

電気機械装置及びロボット及び車輪

【課題】電気機械装置の温度が高くならないようにする。
【解決手段】電気機械装置であって、第1の磁束を生じる永久磁石を有する第1の部材と、前記第1の部材と相対的に移動する第2の部材であって、前記第1の磁束部と対向するように配置され、第2の磁束を生じる電磁コイルを有する第2の部材と、前記第1の磁束を集中させるコイルバックヨークと、放熱板と、前記永久磁石と前記電磁コイルとを格納するケースと、を備え、前記コイルバックヨークは、前記第1の磁束の方向及び前記相対的移動方向の両方に垂直な方向に積層された積層鋼板で形成されており、前記電磁コイルの前記永久磁石と反対側に配置され、前記ケースの一部を形成し、前記ケースの前記コイルバックヨーク部分を除く部分は樹脂により形成されており、前記放熱板は、前記コイルバックヨークに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械装置の温度を高くさせない構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトの一端部が放熱構造を有するブラケットに支持されているモーターが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モーターをロボット内に組み込む場合、樹脂化による成型化が望まれている。しかし、特許文献1の構造では、モーターのケースにアルミなどの熱伝導性材料を用いなければならず、ケースの樹脂化が困難であった。モーターを発電機として用いる場合についても同様にケースの樹脂化が求められている。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、モーターや発電機などの電気機械装置の温度が高くならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
電気機械装置であって、第1の磁束を生じる永久磁石を有する第1の部材と、前記第1の部材と相対的に移動する第2の部材であって、前記第1の磁束部と対向するように配置され、第2の磁束を生じる電磁コイルを有する第2の部材と、前記第1の磁束を集中させるコイルバックヨークと、放熱板と、前記永久磁石と前記電磁コイルとを格納するケースと、を備え、前記コイルバックヨークは、前記第1の磁束の方向及び前記相対的移動方向の両方に垂直な方向に積層された積層鋼板で形成されており、前記電磁コイルの前記永久磁石と反対側に配置され、前記ケースの一部を形成し、前記ケースの前記コイルバックヨーク部分を除く部分は樹脂により形成されており、前記放熱板は、前記コイルバックヨークに接続されている、電気機械装置。
この適用例によれば、放熱板がコイルバックヨークに直接接続されているので電気機械装置において生ずる熱を容易に放熱することができる。なお、コイルバックヨークは、第1の磁束の方向、及び第1の部材と第2の部材との間の相対的移動方向の両方に垂直な方向に積層された積層鋼板で形成されているので、渦電流損による発熱を抑制できる。その結果、電機機械装置の温度を高くならないようにできる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載の電気機械装置において、前記電磁コイルは、前記電磁コイルにおいて前記第1の部材を相対的に移動方向に移動させる力を生じさせる有効コイル領域と、コイルエンド領域とを有しており、前記コイルバックヨークは、前記有効コイル領域を覆い、前記コイルエンド領域を覆っていない、電気機械装置。
この適用例によれば、渦電流の発生を抑えることが出来るので、渦電流損によるロスを低減し、コイルエンド領域における発熱を抑制できる。
【0009】
[適用例3]
適用例2に記載の電気機械装置において、前記有効コイル領域は、前記永久磁石から前記電磁コイルに向けて前記永久磁石を投影したときの投影領域である。電気機械装置。
この適用例によれば、永久磁石の磁束を有効に使うことが出来る。
【0010】
[適用例4]
適用例1から適用例3のうちのいずれか一つの適用例に記載の電気機械装置において、前記鋼板材の厚さは、0.1mm以下である、電気機械装置。
この適用例によれば、積層鋼板材の厚さは、0.1mm以下であるので、渦電流に発生を抑制しやすい。
【0011】
[適用例5]
適用例1から適用例3のうちのいずれか一つの適用例に記載の電気機械装置において、前記鋼板材の厚さは、約0.1mmである、電気機械装置。
この適用例によれば、積層鋼板材の厚さは、約0.1mmであってもよい。
【0012】
[適用例6]
適用例1から適用例5のうちのいずれか一つの適用例に記載の電気機械装置において、前記第1の部材は、さらに、磁性体部材を有し、前記第2の部材は、さらに、前記永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーを有しており、前記磁気センサーは、前記電磁コイルによって生じる磁束線の方向と前記磁気センサーが検知する磁束線の方向とが垂直に交わる位置に配置されており、前記磁性体部材は、前記磁気センサーと前記永久磁石の間に配置されている、電気機械装置。
この適用例によれば、電磁コイルの電流による磁気センサーの波形の歪を抑制し、かつ磁気センサーの波形を飽和させないことが出来る。その結果、コアレス電気機械装置を効率よく駆動することができる。
【0013】
[適用例7]
適用例1から適用例6のうちのいずれか一つの適用例に記載のコアレス電気機械装置において、前記第1の部材と前記第2の部材は、前記第1の部材の回転軸を中心とする同心円筒形状を有しており、前記永久磁石と前記電磁コイルは、前記第1の部材と前記第2の部材の対向する円筒面に対向して配置されており、前記磁性体部材は、前記回転軸の軸方向と平行な方向における前記永久磁石の端面に配置されている、電気機械装置。
この適用例によれば、サイドヨークにより磁石の側面方向への磁束の漏れを抑制できる。
【0014】
[適用例8]
適用例7に記載の電気機械装置において、前記磁気センサーが配置される位置は、前記電磁コイルのコイルエンドと前記回転軸の間であって、前記コイルエンドから前記回転軸に対して直角に降ろした放射線上である、電気機械装置。
この適用例によれば、磁気センサーを、電磁コイルによって生じる磁束線の方向と磁気センサーが検知する磁束線の方向とが垂直に交わる位置に配置することができる。
【0015】
[適用例9]
ロボットであって、適用例1から適用例8のいずれか一つの適用例に記載の電気機械装置と、前記電気機械装置が配置される筐体と、を備え、前記筐体は、前記電気機械装置の前記コイルバックヨークに接続されており、前記電気機械装置の放熱板として機能する、ロボット。
この適用例によれば、ロボットの筐体を放熱板として用いることが出来るので、電気機械装置に生じる熱を容易に放熱させることが出来る。
【0016】
[適用例10]
車輪であって、適用例1から適用例8のいずれか一つの適用例に記載の電気機械装置と、前記電気機械装置に接続されたホイールとタイヤと、を備える、車輪。
この適用例によれば、車輪の電機機械装置を容易に放熱させることができる。
【0017】
[適用例11]
適用例10に記載の車輪において、前記電気機械装置の前記放熱板は、ネジ形状を有している車輪。
この適用例によれば、ネジ形状に沿って空気を流すことが出来るので、電機機械装置の熱をより放熱させやすい。
【0018】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気機械装置の他、電気機械装置の放熱構造、ロボット、車輪等、様々な形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例のコアレスモーターの構成を示す説明図である。
【図2】電磁コイルの製造方法を示す説明図である。
【図3】電磁コイルに樹脂を埋めるための樹脂充填装置を示す説明図である。
【図4】電磁コイルを樹脂で固める工程を示す説明図である。
【図5】コイルバックヨーク115の構成を示す説明図である。
【図6】コイルバックヨーク115の他の構成例を示す説明図である。
【図7】渦電流の測定を模式的に示す説明図である。
【図8】本実施例の渦電流損を示す説明図である。
【図9】コイルバックヨーク115が積層構造をとる場合における、穴あき円盤115aの厚さと渦電流損の関係を示す説明図である。
【図10】磁場解析のモデルを示す説明図である。
【図11】永久磁石表面から磁気センサーまでの距離と磁束密度の関係の測定結果を示す説明図である。
【図12】本実施例によるコアレスモーターと、比較例であるコア付モーターの特性を比較する説明図である。
【図13】本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと回転数の関係を比較する説明図である。
【図14】本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと電流と、の関係を比較する説明図である。
【図15】本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと入力電力と、の関係を比較する説明図である。
【図16】本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと出力電力(仕事)と、の関係を比較する説明図である。
【図17】本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと効率(=出力電力/入力電力)と、の関係を比較する説明図である。
【図18】第2の実施例を示す説明図である。
【図19】第3の実施例を示す説明図である。
【図20】本実施例と比較例のコアレスモーターとのトルク特性を比較する説明図である。
【図21】第4の実施例のコアレスモーターの構成を模式的に示す説明図である。
【図22】中央部と電磁コイルの位置の関係を模式的に示す説明図である。
【図23】モーターの回転数と渦電流損の関係を示すグラフである。
【図24】第4の実施例における磁石と電磁コイルの磁束を示す説明図である。
【図25】従来例における磁石と電磁コイルの磁束を示す説明図である。
【図26】磁気センサーの出力を示す説明図である。
【図27】第4の実施例におけるコイルエンドにかかるローレンツ力を示す説明図である。
【図28】従来例におけるコイルエンドにかかるローレンツ力を示す説明図である。
【図29】対向するコイルのコイルエンドにかかるローレンツ力の向きを説明する説明図である。
【図30】第5の実施例を示す説明図である。
【図31】部分ケースと全覆ケースの温度変化を示す説明図である。
【図32】第6の実施例であるアキシャルギャップ型モーターの構成を示す説明図である。
【図33】第7の実施例を示す説明図である。
【図34】コイルバックヨーク115の製造方法を示す説明図である。
【図35】第8の実施例を示す説明図である。
【図36】コイルバックヨークの構成例を示す説明図である。
【図37】第9の実施例におけるモーターの回転数と渦電流損の関係を示すグラフである。
【図38】第10の実施例を示す説明図である。
【図39】第11の実施例を示す説明図である。
【図40】第12の実施例を示す説明図である。
【図41】第13の実施例を示す説明図である。
【図42】第13の実施例における磁束を示す説明図である。
【図43】第14の実施例のコアレスモーターの構成を模式的に示す説明図である。
【図44】コアレスモーターの制御ブロックの一例を示す説明図である。
【図45】第15の実施例を示す説明図である。
【図46】比較例のコアレスモーター1011を示す説明図である。
【図47】他の比較例のコアレスモーター1012を示す説明図である。
【図48】各モーターの発熱特性を比較する説明図である。
【図49】第16の実施例を示す説明図である。
【図50】第17の実施例を示す説明図である。
【図51】第17の実施例で用いることが出来る放熱装置の一例の一部を示す説明図である。
【図52】本発明の変形例によるモーターを利用したプロジェクタを示す説明図である。
【図53】本発明の変形例によるモーターを利用した燃料電池式携帯電話を示す説明図である。
【図54】本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図55】本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【図56】本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施例]
図1は、第1の実施例のコアレスモーターの構成を示す説明図である。図1(A)は、コアレスモーター10を回転軸に平行な面で切った断面であり、図1(B)は、コアレスモーター10を回転軸に垂直な面で切った断面である。コアレスモーター10は、ラジアルギャップ構造のインナーローター型モーターである。このコアレスモーター10では、ステーター15が外側に配置されている。ステーター15の内側には、略円筒状の空間が形成されており、この略円筒状の空間には、略円筒状のローター20が配置されている。
【0021】
ステーター15は、電磁コイル100と、ケーシング110と、コイルバックヨーク115と、を備える。ローター20は、回転軸230と、複数の永久磁石200と、を備える。回転軸230は、ローター20の中心軸であり、回転軸230の外周に永久磁石200が配置されている。永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう径方向(放射方向)に沿って磁化されている。永久磁石200の回転軸230と平行な方向の両側には、サイドヨーク210が配置されている。サイドヨーク210は、磁性体材料で形成されており、永久磁石200の回転軸230と平行な方向への磁束の漏れを抑制する。回転軸230は、ケーシング110の軸受け240で支持されている。
【0022】
ケーシング110は、内側が略円筒形の空間になっており、その内周に沿って複数の電磁コイル100が配置されている。なお、本実施例では、電磁コイル100は、内側に配置される電磁コイル100Aと外側に配置される電磁コイル100Bとを備えている。なお、本実施例では、電磁コイル100Aと電磁コイル100Bを区別する必要がない場合には、単に「電磁コイル100」と呼ぶ。電磁コイル100は、コアレス(空心)である。また、電磁コイル100と永久磁石200とは、ローター20とステーター15の対向する円筒面に対向して配置されている。ここで、電磁コイル100の回転軸230と平行な方向の長さは、永久磁石200の回転軸230と平行な方向の長さよりも長くなっている。すなわち、永久磁石200から放射方向に投射すると、電磁コイル100の一部は、投射領域からはみ出る。電磁コイル100のうち、このはみ出た部分を、「コイルエンド」と呼ぶ。ここで、電磁コイル100をコイルエンドと、コイルエンド以外の部分と、に分けると、コイルエンドに流れる電流により生じる力の向きは、ローター20の回転方向と異なる方向(回転軸230と平行な方向)であり、コイルエンド以外の部分に流れる電流により生じる力の向きは、ローター20の回転方向とほぼ同じ方向である。なお、コイルエンドは、コイルエンド以外の部分を挟んで2つあり、両者に生じる力は、互いに反対方向なので、電磁コイル100全体に掛かる力としては打ち消し合う。本実施例では、コイルエンドと重ならない領域を「有効コイル領域」と呼び、コイルエンドと重なる領域を「有効コイル領域外」と呼ぶ。電磁コイル100の放射方向外側であって、有効コイル領域と重なる部分には、コイルバックヨーク115が設けられている。なお、コイルバックヨーク115は、有効コイル領域外と重なっていないことが好ましい。コイルバックヨーク115が有効コイル領域外と重なっていると、コイルバックヨーク115の有効コイル領域外と重なる部分において、渦電流損(鉄損)が生じ、コアレスモーター10の効率を下げて、大トルクの実現が困難となる。
【0023】
ケーシング110は、回転軸230と平行な円筒形状部分(側面部)111と、円筒形状部分111の両端に配置された、回転軸230と垂直な円盤形状部分(端面部)112とを備える。2つの円盤形状部分112は、円筒形状部分111を挟んで配置されており、2つの円盤形状部分112と、円筒形状部分111は、取り付けネジ120により固定されている。円筒形状部分111は、有効コイル領域と重なっている。円筒形状部分111は、コイルバックヨーク115に生じた熱を放熱するために、熱伝導性の高い材料で形成されていてもよい。円盤形状部分112は、樹脂で形成されている。
【0024】
図2は、電磁コイルの製造方法を示す説明図である。本実施例では、電磁コイル100として、複数の電磁コイルを樹脂で固めて円筒形に成形したものを用いている。各電磁コイルは、円筒の側面の法線方向を軸方向として、その軸の周りを回るように巻かれている。図2(A)に示す工程では、表、裏に帯状の凹凸のある板150を準備する。板150は、樹脂により形成されており、例えば、射出成形により製造することが可能である。板150は、表に凸151、裏に凸152を備える。凸151と凸152は、交互に配置されている。また、表の両端部は、凸151より幅の狭い凸151a、151bになっている。なお、凸151a、151bの幅の和は、他の凸151の幅と同じである。凸151a、151bの幅の和が同じであれば、凸151a、151bのそれぞれの幅は、同じ、異なる、のいずれであってもよい。また、図2(B)に示すように、表面の凸151は、頂部が膨らんでいてもよく、裏面の凸152は、頂部152が凹んでいてもよい。凸151の頂部のふくらみや凸152の凹みの曲率は、板150の凸151aから凸151bまでの長さ、凸151、凸152の高さと、から定めることが可能である。
【0025】
図2(B)に示す工程では、裏面の各凸152の周りに導体を巻き、電磁コイル100A(内相コイル)を形成する。図2(C)に示す工程では、電磁コイル100Aが内側に位置するように板150を円筒形に曲げる。このとき、表面の2つの凸151a、151bを合致させて1つの凸151cとなるように曲げる。合致した凸151cの大きさは、他の凸151の大きさと同じである。また、表面の凸151の頂部が膨らんでおり、裏面の凸152の頂部が凹んでいる場合には、それぞれの頂部を滑らかに結んだ面は、滑らかな円筒形の側面となっている。滑らかな円筒形の側面であれば、後の工程において板150及び電磁コイル100A、100Bを樹脂で固めるときに、段差が生じにくい。図2(D)に示す工程では、板150から形成された円筒の外側表面の各凸151の周りに導体を巻き、電磁コイル100B(外相コイル)を形成する。図2(E)に示す工程では、円筒の内側及び外側の凹凸の間に樹脂500を埋めて円筒の内側、外側をなめらかにする。
【0026】
図3は、電磁コイルに樹脂を埋めるための樹脂充填装置を示す説明図である。図3(A)は樹脂充填装置400を下から見た図であり、図3(B)は樹脂充填装置400を横から見た図である。樹脂充填装置400は、底部401と、芯部402と、外壁403と、上蓋404と、樹脂充填管405と、を備える。図3(A)では、樹脂充填管405の記載を省略している。底部401は、略円盤形状の底部401aと、円筒形の側壁部401bと、を有している。上蓋404も同様に、底部404aと、円筒形の側壁部404bと、を有している。側壁部401bあるいは、側壁部404bの内径は、電磁コイル100の円筒の外径とほぼ同じ大きさである。芯部402は円柱形状をしている、芯部402の側面の曲率は、図2に示す凸152の頂部の凹みの曲率と同じであってもよい。また、芯部402の内部は、中空構造、充填構造いずれであってもよい。外壁403の内側面は、円筒形状をしている。本実施例では、電磁コイル100とコイルバックヨーク115とを一体成型するため、芯部402の側面と外壁403の内側面の間の間隔は、円筒形状の板150の凸151と凸152の高さの和よりも少し広くしている。なお、電磁コイル100のみ成型する場合には、芯部402の側面と外壁403の内側面の間の間隔は、円筒形状の板150の凸151の高さの2倍とほぼ同じであってもよい。樹脂充填管405は、上蓋404に接続されており、その接続位置は、芯部402の側面と外壁の内側面の間にあたる位置である。底部401と、芯部402と、外壁403と、上蓋404と、により形成される空間に、図2(D)で形成された、円筒形に変形された、コイル100A、100Bが巻かれた板150を配置する。このとき、コイルバックヨーク115を同時に配置してもよい。底部401と上蓋404との間を加圧しながら、樹脂充填管405から該空間に樹脂を注入することにより、樹脂で固められた円筒形の電磁コイル100が形成される。
【0027】
図4は、電磁コイルを樹脂で固める工程を示す説明図である。なお、本実施例では、コイルバックヨーク115も同時に樹脂で固める。図4(A)に示す工程では、底部401の上、底部401の中央に芯部402を配置する。次に、図2(D)の工程で形成された、電磁コイル100A、100Bが巻かれた円筒形に変形された板150を配置する。このとき、円筒形の板150の内側に芯部402が収まるように、板150を配置する。図4(B)に示す工程では、円筒形の板150の外側にコイルバックヨーク115を配置する。コイルバックヨーク115は、底部401の側壁部401bの上に乗るように配置される。そして、コイルバックヨーク115の円筒の長さ方向の中心と、板150の円筒の長さ方向の中心の位置はほぼ同じである。したがって、底部401の側壁部401bの高さは、板150の円筒の長さと、コイルバックヨーク115の円筒の長さの差の半分であることが好ましい。
【0028】
図4(C)に示す工程では、コイルバックヨーク115の外側に、側壁部401bの上に乗るように外壁403を配置する。外壁403の長さは、コイルバックヨーク115の長さとほぼ同じであることが好ましい。図4(D)に示す工程では、上蓋404を配置する。なお、上蓋404には、樹脂充填管405が接続されている。図4(E)に示す工程では、上蓋404と底部401との間を加圧しながら、樹脂充填管405から樹脂を充填する。
【0029】
図5は、コイルバックヨーク115の構成を示す説明図である。コイルバックヨーク115は、複数の穴あき円盤115aを備える。穴あき円盤115aは、円筒形に積層され、コイルバックヨーク115を形成する。各穴あき円盤115aは、鋼板材の平板を打ち抜くことにより、容易に製造することが可能である。隣接する穴あき円盤115a間は、無垢の場合よりも高抵抗、あるいは絶縁されているので、渦電流損を少なくする効果が大きい。
【0030】
図6は、コイルバックヨーク115の他の構成例を示す説明図である。コイルバックヨーク115は、幅より小さい厚さを有する板115bを厚さ方向に螺旋状に巻くことにより形成されている。板115bを螺旋状に巻く場合には、部材が1つであり、穴あき円盤115aを円筒形にそろえる必要がないので、コイルバックヨーク115の成形や製造が容易である。
【0031】
図7は、渦電流の測定を模式的に示す説明図である。被測定モーター11は、永久磁石200と、回転軸230と、コイルバックヨーク115とを備える。回転軸230は、カップリング310により駆動モーター300に接続されている。本実施例では、駆動モーター300により、被測定モーター11を駆動し、駆動モーターの駆動電圧及び電流、並びに被測定モーター11に発生する逆起電力電圧及び逆起電力電流を測定し、これらの測定結果を用いて被測定モーター11の渦電流損を取得する。本実施例では、コイルバックヨーク115の構造として、たとえば、無垢の構造や、板厚の異なる穴あき円盤115aを複数重ねてなる積層構造を採用し、逆起電力電圧及び逆起電力電流を測定し、それらの測定結果を用いて渦電流損の特性を取得した。
【0032】
図8は、本実施例の渦電流損を示す説明図である。ここでは、コイルバックヨーク115の構造が穴あき円盤115aの積層構造であるものと、コイルバックヨーク115が穴あき円盤115aの積層構造でない、無垢の構造であるものとを比較している。コイルバックヨーク115が無垢の構造である場合よりも、コイルバックヨーク115が積層構造を有する場合(図6参照)の方が、渦電流損が少なくなっている。
【0033】
図9は、コイルバックヨーク115が積層構造をとる場合における、穴あき円盤115aの厚さと渦電流損の関係を示す説明図である。穴あき円盤115aの厚さが薄い方が、渦電流損が少ない結果となっている。ここでは、板厚0.1mmについては、材料として、JFEスチール株式会社のJNEXコアを用いた。図9(A)に回転数−渦電流損特性を示し、図9(B)にJNEXコアのデータを掲載する。図9(B)には、JFEスチール株式会社の別の材料JNHFコアのデータも掲載している。JNEXコアは、鋼板材の全域に6.5%のSiを含有しており、JNHFコアは、鋼板材の両面域の各25%に6.5%のSiを含有しており、鋼板材の両面域を除く中心部の50%には、Siを含有していない。なお、一般的な珪素鋼板(Si含有率3.5%)では、板厚を0.1mmまで薄くすることは困難である。このJNHFコアについても同様に渦電流を求めたところ、図9(A)には掲載していないが、JNEXコアよりもやや渦電流が少ないものであり、JNEXコアの逆起電力電圧と同等以上の結果が得られている。
【0034】
上記の結果は、以下の理由によるものと考えられる。渦電流は回転する永久磁石200の磁束の移動方向と垂直の方向、すなわち2枚の穴あき円盤115aの境界が為す面と垂直な方向に発生する。したがって、薄い穴あき円盤115aを重ねてコイルバックヨーク115を形成した方が、すなわち、積層構造の方が、コイルバックヨーク115に流れる渦電流を少なくすることができ、渦電流損を小さくすることが可能となる。そして、穴あき円盤115aの積層数が多いほど、すなわち、穴あき円盤115aが薄いほどより渦電流を少なくすることが可能となる。なお、隣接する穴あき円盤115a間に絶縁物を挿入してもよい。隣接する穴あき円盤115aにおいて渦電流がより移動しにくくなる。
【0035】
図10は、磁場解析のモデルを示す説明図である。図10(A)は、回転軸230の方向と垂直な方向(x方向)から見た図であり、図10(B)は、回転軸230の方向(z方向)から見た図である。このモデルでは、6個の永久磁石200と、回転軸230と、磁気センサー300と、コイルバックヨーク115と、を備える。永久磁石200は、回転軸230の周りに配置されており、磁化の方向は、回転軸230を中心とする放射方向である。コイルバックヨーク115は、略円筒形を有しており、永久磁石200と一定の間隔を空けて配置されている。そこで、電磁コイル100が設けられる空間領域の磁束密度を計測するために、ホール素子により構成された磁気センサー300で、永久磁石200の外周表面からコイルバックヨーク115間までの距離(L1)に応じた磁束密度を観測する。
【0036】
図11は、永久磁石表面から磁気センサーまでの距離と磁束密度の関係の測定結果を示す説明図である。本実施例では、コイルバックヨーク115の材料として、JFEスチール株式会社のJNEXコア(Si含有6.5%)とパーマロイ(Fe−Ni)と珪素鋼板(Si含有3.5%)を用い、比較した。コイルバックヨーク115の材料にJNEXコアを用いた場合の磁束密度は、コイルバックヨーク115の材料にパーマロイを用いた場合、あるいは、珪素鋼板を用いた場合に比べ、大きな磁束密度が得られた。この結果は、透磁率では、パーマロイがJFEスチール株式会社のJNEXコアを上まわっているが、飽和磁束密度ではJFEスチール株式会社のJNEXコアが上まわっていることに起因すると考えられる。また、JNEXコアは、鋼板の内部がすべて均一な6.5の珪素の組成をもつ高珪素鋼板であり、従来の珪素鋼板と比較すると、シリコン含有率が大きい。磁束密度の測定結果とのシリコン含有率を考慮すれば、シリコン含有率の高い方が、磁束密度を大きくできると考えられる。また、珪素鋼板とJNEXコアのSi含有率から考慮すると、パーマロイの磁束密度を越えるためには、Si含有率が5%以上であればよいと推定される。
【0037】
本実施例で測定した磁束密度の測定空間内には、実際のモーター10では、電磁コイル100が配置され、永久磁石200と、電磁コイル100とで「フレミング左手の法則」により回転運動が発生する。したがって、コイルバックヨーク115の材料を、パーマロイからJFEスチール株式会社のJNEXコア、あるいはJNHFコアに変更することにより、磁束密度を向上させることができ、モーター10の性能(トルク、効率)を向上させることが可能となる。また、JFEスチール株式会社のJNEXコア、JNHFコアは、材料の厚さが0.1[mm]と非常に薄く形成されることができる。そのため、上述したように、モーター10の永久磁石200の回転により生じる渦電流損についても非常に少なくすることが可能である。
【0038】
図12は、本実施例によるコアレスモーターと、同体積の比較例であるコア付モーターの特性を比較する説明図である。モーター定格回転トルク特性(回転数3000rpm、トルク300mNm)では、比較例の温度上昇が65℃であるのに対し、本実施例のコアレスモーターの温度上昇は55℃であり、本実施例の方が、温度上昇、すなわち、発熱が小さい。このことは、本実施例によりロ−ター側の磁石200の磁束がコイルバックヨーク115により集中するため有効コイル領域への磁束密度が上昇するために、電磁コイル100へ流れる電流が減り電磁コイル100からの銅損失が減少した結果と、ローター側の磁石200の回転する磁界によりコイルバックヨーク115に生じる渦電流損は、渦電流損を発生させないコイルバックヨーク構造により発熱が小さくなる。更に、コアレスモーターのコイルバックヨーク115による効果は、始動トルクで136%、瞬時最大トルク(6000rpmを定回転制御させて、3秒間負荷トルクを上昇させ6000rpmが維持できなくなった時のトルク)で139%と、コア付きモーターを大きく超えた結果が得られた。従来のコアレスモーター(コイルバックヨークを備えていない)は、コア付きモーターに比べて同体積比較では、40%以下程度のトルクしか得られなかったのが現状であった。しかし、本実施例の結果では、コア付きモーター以上の特性効果を得ることができた。このことは、モーター分野にとってコアレスモーター特性の常識を塗り替え、鉄損失(ヒステリシス損、渦電流損)Zero化に向けて非常に重要な意味を持つ。
【0039】
図13は、本実施例のコアレスモーターと、同体積による比較例のコア付モーターの、トルクと回転数の関係を比較する説明図である。ここで、実線が本実施例であり、破線が比較例である(以下、図14〜17において同じ)。本実施例と比較例の無負荷回転数はほぼ同じであるが、より大きな始動トルクを得ることができる。図14は、本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと電流と、の関係を比較する説明図である。本実施例は、同じトルクであれば、比較例よりも電流が少なくて済み、同じ電流であれば、比較例よりも大きなトルクを得ることができる。
【0040】
図15は、本実施例のコアレスモーターと、同体積による比較例のコア付モーターの、トルクと入力電力と、の関係を比較する説明図である。本実施例は、同じトルクを得ようとすると、比較例よりも入力電力が少なくて済み、同じ入力電力であればすれば、より多くのトルクを得ることが出来る。図16は、本実施例のコアレスモーターと、比較例のコア付モーターの、トルクと出力電力(仕事)と、の関係を比較する説明図である。図17は、本実施例のコアレスモーターと、同体積による比較例のコア付モーターの、トルクと効率(=出力電力/入力電力)と、の関係を比較する説明図である。本実施例は、同じトルクであれば、比較例よりも効率がよい。以上のことから、本実施例のモーター(コアレスモーター)は、比較例のコア付モーターよりも高トルクで運転でき、より高性能を実現できるといえる。
【0041】
以上、第1の実施例によれば、有効コイル領域と重なる部分において、コイルバックヨーク115を配置し、さらにコイルバックヨーク115円筒形部材114に積層構造を持たせることにより、コイルバックヨーク115に生じる渦電流損を少なくすることが可能となる。そして、渦電流損は損失であるので、これを少なくすることにより、高トルクを実現することが可能となる。コイルバックヨーク115に生じる渦電流は、ローター20の回転方向と垂直な方向である。したがって、コイルバックヨーク115を構成する穴あき円盤115aは、ローター20の回転方向と平行、すなわち、ローター20の回転方向と平行な層構造を備えることが好ましい。この構造を採用することにより、渦電流が流れにくくすることが出来、結果的に渦電流損を発生させ難くすることが可能となる。
【0042】
本実施例では、コイルバックヨーク115は、有効コイル領域を覆い、コイルエンドを覆っていない。そのため、コイルエンドを流れる電流の変化による磁束変化の影響を受け難く、当該磁束の変化による渦電流の発生を抑制できる。また、永久磁石200の磁束の投射領域を有効コイル領域と一致させるように、永久磁石200を配置すれば、コイルエンド部における永久磁石200の回転による磁束の変化による渦電流も抑制できる。
【0043】
[第2の実施例]
図18は、第2の実施例のコアレスモーターを示す説明図である。図18(A)は、コアレスモーター10を回転軸に平行な面で切った断面であり、図18(B)は、コアレスモーターを回転軸に垂直な面で切った断面である。コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたインナーローター型モーターである。ステーター15は、ケーシング110の内周に沿って配列された複数の電磁コイル100A、100Bを有している。また、電磁コイル100A、100Bは二相として、コイルエンドを含んだ実配置は省略し原理上での模擬した図として説明する。なお、電磁コイル100A、100Bを合わせて電磁コイル100とも呼ぶ。ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、電磁コイル100の各相に1つずつ配置されている(図18(A))。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。ケーシング110は、樹脂で形成されている。なお、ケーシング110は、軟磁性材によるコイルバックヨークとして、軟磁性粉材を含有した樹脂で覆う構造を有していてもよい。また、ケーシング110と電磁コイル100の間に軟磁性材によるコイルバックヨークを設けてもよい。
【0044】
ローター20は、その外周に6つの永久磁石200を有しており、ローター20の中心に回転軸230が設けられている。この回転軸230は、ケーシング110の軸受け240で支持されている。各永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう径方向(放射方向)に沿って磁化されている。なお、この例では、ケーシング110の内側に、コイルバネ260が設けられており、このコイルバネ260が永久磁石200を図の左方向に押すことによって、永久磁石200の位置決めを行っている。但し、コイルバネ260は省略可能である。
【0045】
第2の実施例は、第1の実施例と比較すると、ケーシング110において円筒形状部分111を有していない点が異なっている。そして、第2の実施例は、コイルバックヨーク115が、ケーシング110の外に突出している。コイルバックヨーク115の構成は、第1の実施例と同じである。そして、突出したコイルバックヨーク115の外側には、熱伝導性樹脂510が形成されている。第2の実施例の構成であっても、コイルバックヨーク115に生じる渦電流を少なくして、コアレスモーターの効率を向上させることが可能となる。また、第2の実施例では、コイルバックヨーク115がケーシング110の外に突出しているので、渦電流損による発熱が生じても、放熱しやすい。また、本実施例では、コイルバックヨーク115の外側に、電着塗装等(膜厚20μm以下)による非伝導性(耐電圧=1.2kV以上)を兼ねた熱伝導性樹脂510を備えているので、渦電流損により生じた熱を、熱伝導性樹脂510を介して放熱し易くなっている。
【0046】
[第3の実施例]
図19は、第3の実施例を示す説明図である。第3の実施例は、コアレスブラシモーターである。第1、第2の実施例では、電磁コイル100がステーター15に設けられ、永久磁石200がローター20に設けられていた。これに対し、第3の実施例では、電磁コイル100がローター20に設けられ、永久磁石200がステーター15に設けられている。すなわち、第1、第2の実施例では、永久磁石が回転するが、第3の実施例では、電磁コイル100が回転する。第3の実施例では、回転する電磁コイル100に流れる電流の向きを変えるためのコミューター170と、コミューター170に接触するブラシ160を備えている。電磁コイル100の永久磁石200と反対側には、コイルバックヨーク115が設けられている。
【0047】
図20は、本実施例と比較例のコアレスモーターとのトルク特性を比較する説明図である。本実施例、比較例A〜Dとも、永久磁石200の磁石材として、ネオジウムを用いている。最大連続トルク300mNm超は、比較例Dまたは本実施例でしか実現することは出来ない。また、最大連続トルク300mNm超の実現時において、比較例Dでは、最大連続トルク323mNmに対し、出力が250Wと大出力を要するのに対し、本実施例では、より大きな360mNmの最大連続トルクに対し、出力が113Wで済む。本実施例では、少ない出力、すなわち、より少ない消費電力で、より高いトルクを実現できる。また、本実施例は、比較例A、Cと同様に小型である。一般に、小型のモーターでは、トルクを大きくし難い。しかし、本実施例は、小型であるにも関わらず、高トルクを実現することができる。すなわち、本実施例によれば、小型低消費電力でありながら、高トルクのモーターを実現できる。図20でも判るように、コアレスモーターにおける最大連続トルク特性は、モーターの発熱(消費電流=銅損失)とケースサイズ(体積)により決定される。このケースサイズ(体積)の値が小さく、最大連続トルクの値が大きいことは、本願のコアレスモーターの消費電流(銅損失)が如何に小さいか、ということが言える。
【0048】
[第4の実施例]
図21は、第4の実施例のコアレスモーターの構成を模式的に示す説明図である。図21(A)は、コアレスモーター10を回転軸に平行な面で切った断面であり、図21(B)は、コアレスモーターを回転軸に垂直な面(21B−21B切断面)で切った断面である。
【0049】
コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたラジアルギャップ構造のインナーローター型モーターである。ステーター15は、ケーシング110の内周に沿って配列された複数の電磁コイル100A、100Bを有している。電磁コイル100A、100Bは、コアレス(空心)である。なお、電磁コイル100A、100Bを合わせて電磁コイル100とも呼ぶ。ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、電磁コイル100の各相に1つずつ配置されている(図21(A))。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。
【0050】
ローター20は、中心に回転軸230を有し、外周に6つの永久磁石200を有している。各永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう径方向(放射方向)に沿って磁化されている。また、永久磁石200と電磁コイル100とは、ローター20とステーター15の対向する円筒面に対向して配置されている。
【0051】
回転軸230は、ケーシング110の軸受け240で支持されており、軸受け240は、ベアリングボール241を備えている。本実施例では、ケーシング110の内側に、コイルバネ260を備えている。このコイルバネ260は、永久磁石200を図の左方向に押すことによって、永久磁石200の位置決めを行っている。但し、コイルバネ260は省略可能である。
【0052】
ケーシング110は、回転軸230と平行な円筒形状部分(側面部)111と、円筒形状部分111の両端に配置された、回転軸230と垂直な円盤形状部分(端面部)112とで構成されている。円筒形状部分111と円盤形状部分112は、樹脂で形成されている。円筒形状部分111の中央部113は、磁性体部材で形成されている。中央部113は、ケーシング110のうち、永久磁石200から電磁コイル100へ向かう方向に永久磁石200を投射したときのケーシング110を投射する領域である。なお、中央部113を、「有効長領域113」とも呼ぶ。また、中央部113は、円筒形形状をしているので、「円筒形部材113」とも呼ぶ。有効長領域113を、磁性体部材で構成し、コイルバックヨークとして機能させて、磁束線201を有効長領域113に集めてもよい。この場合、磁束線201は電磁コイル100の有効コイル領域のみを通りやすくなり、コアレスモーター10の効率を良くすることが可能となる。なお、この有効長領域113は、第1の実施例で示した有効コイル領域とほぼ重なっている。
【0053】
また、有効長領域113は、コアレスモーター10の外部に露出している。そして、有効長領域113は、磁性体部材であると同時に、導電性部材でも良い。有効長領域113は、コイルバックヨークとして機能するので、永久磁石200からの磁束線201は、電磁コイル100の内側を通り、有効長領域113を貫通し易い。ここで、ローター20が回転すると、永久磁石200も回転する。これにより、有効長領域113を貫通する磁束が変化し、磁束の変化を妨げる方向に磁束を作る電流、すなわち渦電流が生じる。渦電流が流れると、電力損失(渦電流損)が生じ、熱として放出される。本実施例では、有効長領域113が、コアレスモーター10の外部に露出しているため、渦電流損による熱が生じても、その熱をコアレスモーター10の外部に容易に排出し、コアレスモーター10内部に籠もることを抑制することが可能となる。なお、有効長領域113を構成する材料として、アルミ材等の熱伝導率が大きく放熱効果がある材料で覆ってもよい。こうすれば、更に放熱効果を高め、高トルク化が可能となる。なお、有効長領域113は、第1の実施例のコイルバックヨーク115と同様に、穴あき円盤を積層した構造(図5参照)、あるいは、細長い板を螺旋に巻いた構造(図6参照)を有していてもよい。尚、高透磁率の磁性体として注目されている金属ガラスでは、厚さが0.025mmまで薄く成形できるため更なる渦電流損を軽減できる。
【0054】
図22は、中央部と電磁コイルの位置の関係を模式的に示す説明図である。中央部113(有効長領域113)は、円盤形状部分112のうち、2つのコイルエンド101A、101Bの間の領域と重なる。図21における説明では、有効長領域113の範囲(有効長領域)を、永久磁石200を放射方向に投射した領域として定めたが、このように、2つのコイルエンド101A、101Bとの関係で定めてもよい。また、有効超領域113を、永久磁石200を放射方向に投射した領域としてもよい。
【0055】
本実施例では、有効長領域113は、2つのコイルエンド101A、101Bとの関係では、2つのコイルエンド101A、101Bの間の領域と重なる領域としているが、有効長領域113は、2つのコイルエンド101A、101Bと重なる部分を有していてもよい。
【0056】
図23は、モーターの回転数と渦電流損の関係を示すグラフである。渦電流損の測定は、図7に示す方法を用いて実行した。なお、図7では、コイルバックヨーク115を用いているが、図23の結果は、図7のコイルバックヨーク115の代わりに円筒形部材113を用いたときの結果である。ここで、線Xは、円筒形部材113が積層構造を有さない無垢の構造である場合における特性を示している。線Y、Zは、円筒形部材113が、穴あき円盤が多数積層された積層構造を有する場合における特性を示している。ここで、線Yは、穴あき円盤(図5参照)の厚さが0.5mmの場合を示し、線Zは、穴あき円盤の厚さが0.1mmの場合を示している。円筒形部材113が無垢の構造である場合よりも、円筒形部材113が積層構造を有する場合の方が、渦電流損が少なくなっている。そして、穴あき円盤の厚さが薄い方が、渦電流損が少ない。この理由は、第1の実施例におけるコイルバックヨーク115についての理由と同じである。
【0057】
図24は、第4の実施例における永久磁石と電磁コイルの磁束を示す説明図である。図24(B)、(C)は、図24(A)のX部分を拡大したものである。図24(A)においては、コイルバネ260を省略している。図24(B)と(C)は、永久磁石200の磁気の向きと、電磁コイル100に流れる電流の向きが異なっている。第4の実施例では、磁気センサー300は、電磁コイル100のコイルエンド101から回転軸230側に降ろした垂線上に配置されている。永久磁石200と、磁気センサー300の間には、磁性体部材210が設けられている。この磁性体部材210は、例えば軟磁性体で構成されていてもよい。磁性体部材210は、磁束を通しやすいので、永久磁石200から出る磁束線の数が同じであれば、磁性体部材210よりも外側に出る磁束線202A、202Bの数は、磁性体部材210を通る分だけ少なくなる。その結果、磁気センサー300が永久磁石200に近接して配置されていても、磁気センサー300の出力は飽和しにくい。
【0058】
磁気センサー300の磁束の検知方向301は、回転軸230の中心から外側に向かう径方向に沿った方向である。また、この検知方向301は、コイルエンド101の流れる電流により生じる磁束102A、102Bと直角に交わる方向である。したがって、電磁コイル100に流れる電流の大きさが変わり、磁束線102A、102Bの数が変わっても、磁気センサー300の出力に変化は生じない。
【0059】
図25は、比較例における永久磁石と電磁コイルの磁束を示す説明図である。比較例では、永久磁石200と、磁気センサー300の間に、磁性体部材210が設けられていない。そのため、永久磁石200の磁場が、図24に示す磁場に比べてより遠方にまで広がっている。磁気センサー300は、出力が飽和しないように、永久磁石200からやや離れた位置に配置されている。この位置は、コイルエンド101から回転軸230側に垂線を降ろしたときの垂線上から図面左方にずれている。この位置では、磁気センサー300の磁束の検知方向301と、コイルエンド101の流れる電流により生じる磁束102A、102Bの方向は、直角に交わらない。そのため、コイルエンド101の流れる電流が変化して、磁束線102A、102Bの数が変わると、その影響を受けて、磁気センサー300の出力が歪む恐れがある。
【0060】
図26は、磁気センサーの出力を示す説明図である。図26(A)は、軽負荷時(小電流時)における磁気センサー300の出力を示している。この状態では、出力に歪みは生じていない。図26(B)は、図35(A)重負荷時(大電流時)の磁気センサー300の出力を示している。この状態では、磁気センサー300の出力に歪みが生じている。図26(C)は、図25の磁気センサー300の位置を、電磁コイル100のコイルエンド101から回転軸230側に垂線を降ろしたときの垂線上にしたときの磁気センサー300の出力を示している。なお、磁性体部材210は、配置されていない。この状態では、磁気センサー300の出力が飽和している。図26(D)は、図24に示した実施例における磁気センサーの出力を示している。本実施例では、磁気センサー300と、永久磁石200の間に、磁性体部材が設けられているので重負荷時においても、磁気センサー300の出力は、飽和もしていない。また、磁気センサー300がコイルエンド101の直下の位置に設けられているので、磁気センサー300の出力が歪むことのない正常な波形を示している。なお、磁性体部材210の厚さを、磁気センサー300がコイルエンド101の直下の位置に配置したときに磁気センサー300の出力が歪むことのない正常な波形を示すような厚さに設定しておくことが好ましい。この厚さは永久磁石200の磁場の強さに依存する。
【0061】
また、磁性体部材210は、永久磁石200が電磁コイル100に対して相対的に移動する際に、磁気センサー300の出力波形が電磁コイル100に生じる逆起電力波形(振幅−V〜+Vの正弦波)を正規化した波形(振幅0〜+Vの正弦波)と同等の波形となるように、永久磁石200の移動方向の側面に設けられており、磁気センサー300は、磁性体部材210から漏れた永久磁石200の磁束を検出し、電磁コイル100は、磁気センサー300の出力波形に対応してPWM駆動されることが好ましい。PWM駆動では、逆起電力波形と同等の波形で電磁コイルを駆動すると効率が良い。この実施例によれば、磁気センサー300の出力波形が電磁コイル100に生じる逆起電力波形(振幅−V〜+Vの正弦波)を正規化した波形(振幅0〜+Vの正弦波)と同等の波形となるので、コアレスモーターを効率よく駆動することができる。
【0062】
以上のように、比較例の場合、磁気センサー300の出力を歪ませないように、磁気センサー300をコイルエンド101の直下に配置すると出力が飽和し、一方、出力を飽和させないように磁気センサー300を永久磁石200から遠い位置に配置すると、出力が歪むという問題がある。しかし、本実施例のように、磁気センサー300を、電磁コイル100によって生じる磁束の方向と磁気センサー300が検知する磁束の方向とが垂直に交わる位置に配置し、磁気センサー300と、永久磁石200との間に磁性体材料を配置することにより、磁気センサー300の出力において歪も発生させず、飽和の発生も抑制することが可能となる。
【0063】
図27は、第4の実施例におけるコイルエンドにかかるローレンツ力を示す説明図である。図27(A)は、電磁コイル100側に永久磁石200のN極がある場合を示し、図27(B)は、電磁コイル100側に永久磁石200のS極がある場合を示している。なお、図27(A)と図27(B)では、電磁コイル100に流れる電流の向きも逆である。コイルエンド101が永久磁石200から受けるローレンツ力の大きさは、F1=I×B1で示される。ここで、Iは、コイルエンド101を流れる電流の大きさ、B1は、コイルエンド101における永久磁石200による磁束密度である。尚、磁気センサー300の実装状態は、回路基板から離れて浮いた状態となっているが、前記コイルエンド101の力F1の影響を受けるため、磁気センサー300は、樹脂、モールド材等で固定されていることが好ましい。
【0064】
図28は、比較例におけるコイルエンドにかかるローレンツ力を示す説明図である。図28(A)は、電磁コイル100側に永久磁石200のN極がある場合を示し、図28(B)は、電磁コイル100側に永久磁石200のS極がある場合を示している。同様に、コイルエンド101が永久磁石200から受けるローレンツ力の大きさは、F2=I×B2で示される。ここで、従来例では、磁性体部材210が無いため、コイルエンド101における磁束密度B2が、図36に示す場合よりも大きい。したがって、F1<F2であり、磁性体部材210を備える第4の実施例の方が、コイルエンド101にかかるローレンツ力が小さい。
【0065】
図29は、対向するコイルのコイルエンドにかかるローレンツ力の向きを説明する説明図である。図29(A)は第4の実施例をコイルエンド側から見たときの説明図、図29(B)は、第4の実施例を図29(A)の右側から見たときの説明図である。図29(B)の上部にある永久磁石200の磁束線202Aの向きが左方向、コイルエンド101Aに流れる電流の向きが出前から奥であるので、コイルエンド101Aにかかるローレンツ力は、回転軸230の中心から外に向かう方向である。一方、図29(B)の下部における永久磁石205の磁束線207Aの向きが右方向、コイルエンド106Aに流れる電流の向きが奥から手前であるので、コイルエンド106Aにかかるローレンツ力は、外から回転軸230の中心に向かう方向である。コイルエンド101Aと106Aは対向しているので、コイルエンド101Aにかかるローレンツ力とコイルエンド106Aにかかるローレンツ力は同じ方向である。ローター20は、コイルエンド101A、106Aからそれぞれローレンツ力と反対向きに力を受ける。このとき、コイルエンド101A、106Aから受ける力は同じ方向なので、打ち消し合わない。したがって、ローター20を振動させる力が働く。図29(C)は比較例をコイルエンド側から見たときの説明図、図29(D)は、比較例を図29(C)の右側から見たときの説明図である。図29(A)、(B)に示す本実施例とは、力Fの大きさが異なる。
【0066】
ところで、図29(A)、(B)に示した第4の実施例と、図29(C)、(D)に示した従来例では、ローター20がコイルエンド101A、106Aから受ける力の向きは同じである。しかし、第4の実施例では、磁性体部材210を備えているので、コイルエンドにおける磁束線202A、207Aの数が少ない。したがって、第4の実施例の方が、ローター20が振動しにくい。すなわち、磁性体部材210を備えることにより、ローター20の振動を抑制することが可能となる。なお、電磁コイル100は、永久磁石200を挟むように3組あり、それぞれの組に生じるローレンツ力F、F2、F3は、向きが120度ずれている。ここで、理想的には、ローレンツ力F、F2、F3の大きさは同じであるが、現実のモーターでは、若干異なり、ローター20の振動の原因となり得る。
【0067】
なお、本実施例では、インナーローター型のモーターを用いて説明したが、アウターローター型のモーターであってもよい。
【0068】
[第5の実施例]
図30は、第5の実施例を示す説明図である。第5の実施例は、ケース110の材料として、熱伝導性に優れたアルミニウム、アルミニウム合金を用いている。図30(A)に示す実施例は、ケース110のうち、有効長領域113と重ならない部分がアルミニウム、あるいはアルミニウム合金で形成されている部分ケースであり、図30(B)に示す例では、有効長領域113を含む全部がアルミニウム、あるいはアルミニウム合金で形成されている全覆ケースである。
【0069】
図31は、部分ケースと全覆ケースの温度変化を示す説明図である。図31から明らかなように、部分ケースよりも全覆ケースの方が、温度が上がりにくい。これは以下のように考えられる。部分ケース(図30(A))の場合、積層された鋼板材間に絶縁膜が形成されるので、鋼板の積層方向には熱が伝わりにくい。したがって、有効長領域113で発生した熱は、円盤形状部分112に伝わりにくい。一方、全覆ケース(図30(B))の場合、有効長領域113の放射方向外側はアルミニウム、あるいはアルミニウム合金で覆われている。そのため、有効長領域113で発生した熱は、有効長領域113の放射方向外側のアルミニウムあるいは、アルミニウム合金部分を経由して円盤形状部分112に伝わる。したがって、部分ケースよりも全覆ケースの方が円盤形状部分112に熱が伝わりやすく、広い面積で放熱することができる。
【0070】
[第6の実施例]
また、上記説明では、ラジアルギャップ構造のモーターを例にとって説明したが、アキシャルギャップ構造のモーターであっても同様の適用が可能である。図32は、第6の実施例であるアキシャルギャップ型モーターの構成を示す説明図である。ローター20とステーター15は、ローター20の回転軸230に垂直な第1と第2の円盤形状を有している。そして、永久磁石200と電磁コイル100は、ローター20とステーター15の対向する円盤面に対向して配置されている。永久磁石200から電磁コイル100に向かって磁束線201を投射したときの投射領域(有効長領域113)に磁性体部材を有している。なお、アキシャルギャップ構造の場合、有効長領域113は、穴あき円盤形状を有しており、端面部に設けられている。なお、有効長領域113は、電磁コイル100が有する2つのコイルエンドのうちの第1のコイルエンドと、第2のコイルエンドとの間の部分と重なっていてもよく、永久磁石200を回転させながら回転軸230と平行な方向に投射したときの投射領域と重なっていてもよい。
【0071】
[第7の実施例]
図33は、第7の実施例を示す説明図である。第7の実施例は、アキシャルギャップ型モーターである。図33(A)は、アキシャルギャップ型モーター10(以下、単に「モーター10」とも呼ぶ。)を回転軸230と平行な面で切ったときの断面図を示している。図33(B)は、ローターの平面図を示し、図33(C)は、電磁コイル100Aの平面図を示し、図33(D)は、電磁コイル100Bの平面図を示し、図33(E)は、コイルバックヨーク115Aの平面図を示している。第7の実施例は、第6の実施例で説明したアキシャルギャップ型モーターと、いくつかの異なる点を除き、ほぼ同じ構成を有している。そこで、以下の説明では、第6の実施例と同じ構成のものについては、同じ符合を付し、説明を省略する。
【0072】
以下は、第6の実施例と異なる点である。第7の実施例のモーター10は、A相用の電磁コイル100Aと、磁気センサー300Aと、回路基板310Aと、B相用の電磁コイル100Bと、磁気センサー300Bと、回路基板310Bと、を備えている。すなわち、第6の実施例のモーター10は、電磁コイル、磁気センサー、回路基板について、それぞれA相用と、B相用と、2つずつ備えている。ここで、各符合の末尾A、Bは、A相用と、B相用と、を区別するためのものである。図33(C)(D)では、磁気センサー300Aは磁気コイル100Aのコイル内に配置され、磁気センサー300Bは磁気コイル100Bのコイル内に配置されているが、A相の磁気センサー300Aが磁気コイル100Bのコイル内に配置され、B相の磁気センサー300Bが磁気コイル100Aのコイル内に配置されていてもよい。また、第7実施例は、有効長領域113の代わりにコイルバックヨーク115A、115Bを備えている。すなわち、第7の実施例のモーター10は、コイルバックヨークについても、A相用、B相用を、それぞれ備えている。なお、A相用のコイルバックヨーク115Aと、B相用のコイルバックヨーク115Bを区別しない場合には、単に「コイルバックヨーク115」と呼ぶ。また、第7実施例の電磁コイル100A(100B)の個数や永久磁石200の個数(4個)は、第6の実施例の電磁コイル100の個数や永久磁石200の個数(8個)とは異なっているが、一般にモーターは、用途に応じ、これらの個数について、様々な個数を採用可能である。
【0073】
コイルバックヨーク115Aは、穴あき円盤形状を有しており、電磁コイル100Aの、永久磁石200と反対側に配置されている。コイルバックヨーク115Aは、例えば磁性体材料で構成されている磁性体部材であることが好ましい。また、コイルバックヨーク115Aは、磁性体部材であると同時に、導電性部材でもよい。永久磁石200からの磁束は、電磁コイル100の内側を通り、コイルバックヨーク115Aを貫通し易い。ここで、ローター20が回転すると、永久磁石200も回転する。これにより、コイルバックヨーク115A有効長領域113を貫通する磁束が変化し、磁束の変化を妨げる方向に磁束を作る電流、すなわち渦電流が生じる。渦電流が流れると、電力損失(渦電流損)が生じ、熱として放出される。なお、コイルバックヨーク115Bについても同様である。また、本実施例では、第6の実施例と異なり、コイルバックヨーク115A、115Bをケースシング110と別個独立に備えているが、コイルバックヨーク115A、115Bは、ケースシング110と一体構成であってもよい。
【0074】
図34は、コイルバックヨーク115の製造方法を示す説明図である。この製造方法は、細長い平板119をゼンマイバネ状に巻くことにより、コイルバックヨーク115を、形成する。なお、このときの平板119の幅が、コイルバックヨーク115の厚さとなる。ゼンマイバネ状構造を有するコイルバックヨーク115は、平板119の重なりの間の抵抗により放射方向の抵抗が大きくなるため、放射方向の電流を少なくすることができる。したがって、放射方向の渦電流を抑制できる。なお、ゼンマイバネ状構造を有するコイルバックヨーク115については、平板119の表面に絶縁物が塗布してあってもよい。この場合、コイルバックヨーク115における平板119の重なりの間の部分に絶縁物が存在することになるので、放射方向の渦電流をさらに抑制することが可能となる。
【0075】
[第8の実施例]
図35は、第8の実施例を示す説明図である。第8の実施例は、アキシャルギャップ型モーターである。図35(A)は、アキシャルギャップ型モーター10(以下、単に「モーター10」とも呼ぶ。)を回転軸230と平行な面で切ったときの断面図を示している。図35(B)は、モーター10を回転軸と平行な方向から見た図である。
【0076】
ローター20とステーター15は、ローター20の回転軸230に垂直な円盤形状を有している。ローター20は、永久磁石200と、サイドヨーク210と、回転軸230と、を備える。永久磁石200は、図33に示すのと同様に、回転軸230の外周に沿って配置されており、磁化の向きは、回転軸230と平行な方向である。永久磁石200の放射方向外側には、サイドヨーク210が配置されている。
【0077】
ステーター15は、電磁コイル100と、コイルバックヨーク115と、軸受け240と、ケーシング110と、を備える。電磁コイル100は、回転軸230と垂直な面に沿って巻かれている(図33(C)又は(D)参照)。永久磁石200と電磁コイル100は、ローター20とステーター15の対向する円盤面に対向して配置されている。なお、電磁コイル100のコイルエンド部分は、永久磁石200からはみ出しており、永久磁石200と重なっていない。第1の実施例と同様に、電磁コイル100のコイルエンドと重なっていない領域を「有効コイル領域」とも呼び、コイルエンドと重なっている領域を「運動外領域」と呼ぶ。電磁コイル100の永久磁石200との反対側には、コイルバックヨーク115が配置されている。コイルバックヨーク115は、穴あき円盤形状を有しており、有効コイル領域と重なっている。ケーシング110は、熱伝導性を有しており、コイルバックヨーク115と接触し、渦電流損によりコイルバックヨーク115に生じた熱を外部に廃熱する。
【0078】
この実施例によれば、渦電流損によりコイルバックヨーク115に生じた熱を、ケーシング110を通じて容易に廃熱できる。また、コイルバックヨーク115は、図25に示したような、細い板をゼンマイバネ形状に巻いたものであってもよい。コイルバックヨーク115における渦電流を減らし、渦電流損による発熱を抑制することができる。
【0079】
[第9の実施例]
図36は、コイルバックヨークの構成例を示す説明図である。図36(A)に示すコイルバックヨーク115は、図34に示す方法で作成したコイルバックヨークである。図36(B)は、一方の面に切り欠き部115Sを備えるコイルバックヨークを示す。なお、モーター10へのコイルバックヨーク配置時には、この切り欠き部115Sが電磁コイル100A(100B)に隣接する面側に位置するように、コイルバックヨーク115が配置される。このコイルバックヨーク115は、図36(A)に示すコイルバックヨーク115に対して、例えば、ワイヤ放電加工機等を用いて切り込みを入れることにより製造することが可能である。図36(C)は、切り欠き部115Sが他方の面まで達している切り欠き部115Cを有するコイルバックヨークを示す。このコイルバックヨーク115は、図36(A)に示すコイルバックヨークに対して、例えば、ワイヤ放電加工機等を用いて切り込みを入れることの他、打ち抜きプレスにより製造することも可能である。図36(D)は、一方の面に切り欠き部115Sを複数備えるコイルバックヨークを示す。この場合、複数の切り欠き部115Sは、互いに回転対称となる位置に設けられていることが好ましい。なお、切り欠き部115Sと切り欠き部115Cとは、混在していてもよい。ただし、他方の面まで達している切り欠き部115Cは、1個であることが好ましい。他方の面まで達している切り欠き部115Cが複数あると、コイルバックヨーク115が2つ以上に分かれてしまうからである。
【0080】
図37は、第9の実施例におけるモーターの回転数と渦電流損の関係を示すグラフである。なお、渦電流損は、図7に示す方法により行った。ここで、線Xは、図36(A)に示すコイルバックヨーク115に切り欠き部115Cが設けられていない場合における特性を示している。線Yは、図36(B)に示すコイルバックヨーク115に切り欠き部115Sが設けられている場合における特性を示している。線Zは、図36(C)に示すコイルバックヨーク115に切り欠き部115Cが設けられている場合における特性を示している。コイルバックヨーク115に切り欠き部115Sが有る方(線Y)が、渦電流が少なく、他方の面まで達している切り欠き部115Cが有る方が、更に渦電流が少なくなっている。これは、以下の理由によるものと考えることができる。渦電流は磁束の方向と垂直の方向、すなわちコイルバックヨーク115の面方向に発生する。ここで、切り欠き部115S、115Sは、円盤形状の円周方向の渦電流を抑制する。そして、他方の面まで達している切り欠き部115Cは、円盤形状の円周方向の渦電流を遮断する。したがって、切り欠き部115S、115Cを設けることにより、渦電流損を小さくすることが可能である。
【0081】
なお、コイルバックヨーク115Aは、その切り欠き部115Sが電磁コイル100A側に位置するように配置されることが好ましい。渦電流は、電磁コイル100A側の方が発生しやすく、切り欠き部115Sが電磁コイル100A側にあると、切り欠き部115Sにより、この渦電流を抑制し易いからである。
【0082】
[第10の実施例]
図38は、第10の実施例を示す説明図である。第10の実施例は、第4の実施例の円筒形部材113に第9の実施例と同様に、切り欠き部を設けたものである。図38(A)の円筒形部材113は、第4の実施例に示す円筒形部材である。図38(B)は、図38(A)の円筒形部材113の内壁側に切り欠き部113BSを設けたものである。図38(C)は、図38(A)の円筒形部材113に対し、内壁から外壁に達する切り欠き部113BCを設けたものである。このように、円筒形部材113に切り欠き部113BS、113BCを設けてもよい。これにより、渦電流を抑制し、渦電流損を少なくすることが可能となる。なお、本実施例では、板を厚さ方向に螺旋状に巻くことにより形成されている円筒形部材113を例に取り説明したが、穴あき円盤が多数積層された積層構造を有する円筒形部材や、無垢の円筒形部材に切り欠き部113BS、113BCを設けてもよい。
【0083】
[第11の実施例]
図39は、第11の実施例を示す説明図である。第11の実施例は、リニアモーターである。リニアモーター12は、可動部16と固定部21とを備える。固定部21は、2つの磁石200と、磁石バックヨーク202と、を備える。2つの磁石200は、磁石バックヨーク202を挟むように配置されている。2つの磁石200の磁束の向きは、磁石バックヨーク202側がS極、外側(磁石バックヨーク202と反対側)がN極となっている。なお、N極、S極は逆であってもよい。また、磁石200は、移動方向と平行なスリットを備えていてもよい。
【0084】
可動部16は、電磁コイル100と、コイルバックヨーク116と、を備える。電磁コイル100は、可動部の移動方向を中心軸とする周回方向に巻かれている。コイルバックヨーク116は、電磁コイル100の磁石200と反対側に配置されている。すなわち、磁石200とコイルバックヨーク116との間に電磁コイルが位置する。コイルバックヨーク116は、複数の板が積層されて構成されており、複数の板の境界面は、可動部16の移動方向と平行である。可動部の移動方向を中心軸とする周回方向に生じる渦電流の発生を抑制できる。
【0085】
[第12の実施例]
図40は、第12の実施例を示す説明図である。第12の実施例は、シャフトモーター13である。シャフトモーター13は、磁石シャフト205と、移動体17と、を備える。磁石シャフト205は、磁石200と、非磁性体ケース250と、ストッパー260と、を備える。磁石200は、複数あり、非磁性体ケース250中に、直列に並べて配置されている。各磁石200の磁化の方向は、磁石シャフト205の長さ方向であり、交互に向きが180°入れ替わっている。すなわち、隣接する磁石200は、同じ極(N極同士、S極同士)が向かい合っている。そのため、2つの磁石200からの磁束は2つの磁束の間で反発する。結果として、隣接する磁石200の間における磁束の向きは、磁石シャフト205を中心とした放射方向となる。ストッパー260は、磁石シャフト205の両端に配置されており、移動体17が磁石シャフト205から抜けないようにする。
【0086】
移動体17は、電磁コイル100と、コイルバックヨーク116と、コイルケース117と、を備える。電磁コイル100は、磁石シャフト205の外周に沿って巻かれている。磁石200の磁束の方向は磁石シャフト205を中心とする放射方向であり、電磁コイル100を流れる電流の向きは、磁石シャフト205の外周に沿った方向であるので、電磁コイル100が受ける力の方向は、フレミングの左手の法則により、磁石シャフト205の長さ方向となる。コイルバックヨーク116は、電磁コイル100の放射方向の外側に配置されている。コイルバックヨーク116は、放射方向を第1の辺、移動体17の移動方向を第2の辺とする長方形に板を、円筒状に積層下構造を有している。このコイルバックヨーク116の構造により、円筒の円周に沿った渦電流を少なくすることができる。コイルケース117は、電磁コイル100とコイルバックヨーク116を収納するケースである。
【0087】
[第13の実施例]
図41は、第13の実施例を示す説明図である。図41(A)は、本発明の第13の実施例におけるコアレスブラシレスモーターの構成を示す断面図である。このモーター10は、略円盤状の第1と第2のステーター15A、15Bと、略円盤状のローター20とを有している。ステーター15A、15B及びローター20は、ケーシング110収められている。
【0088】
図41(B)、(C)は、それぞれステーター15A、15Bの構成を示す説明図である。ステーター15Aは、個別にリング状に導線が巻き回された複数の電磁コイル100Aを備えている。ここで、「リング状」とは、円形に限らず、図41(B)の電磁コイル100Aのような略扇形や、楕円形状などの種々の形状を含む広い意味を有している。ステーター15Bの構成はステーター15Aの構成と同じである。
【0089】
図41(D)はローター20の構成を示す説明図である。ローター20は、円環状に配置された8つの永久磁石200を有している。ローター20の中心は回転軸230に固定されている。永久磁石200の磁化方向は図39(A)の上下方向であり、図41(D)では紙面に垂直な方向である。永久磁石200の外周には、磁性体部材210が設けられている。
【0090】
図41(A)示すように、ローター20は、ステーター15A、15Bに挟まれている。ローター20の外側には、磁気センサー300A、300Bが配置されている。磁気センサー、ローター20の位置を検出するために設けられている。第1と第2のステーター15A、15B及び磁気センサー300A、300Bは、モーター10のケーシング110に固定されている。
【0091】
図42は、第13の実施例における磁束を示す説明図である。この図42は、図25,図27とほぼ同じである。第13の実施例においても、コイルエンド101Aを流れる電流による磁束102Aの方向と、磁気センサー300の検知する磁束の方向(矢印301の方向)は直交する。したがって、コイルエンド101Aを流れる電流の大きさにより、磁気センサー300の出力は、影響を受けない。また、磁気センサー300と永久磁石200の間に磁性体部材210を備えるので、磁気センサー300の出力が飽和し難い。したがって、第2の実施例によっても、磁気センサー300の出力における歪みや飽和の発生を抑制することが可能となる。
【0092】
[第14の実施例]
第1から第3の実施例では、積層構造を有するコイルバックヨーク115を有するコアレスモーター10について説明し、第4の実施例では、磁気センサー300を、電磁コイル100によって生じる磁束の方向と磁気センサー300が検知する磁束の方向とが垂直に交わる位置に配置し、磁気センサー300と、永久磁石200との間に磁性体材料を配置したコアレスモーター10について説明した。第14の実施例はこの両者の特徴を備えるコアレスモーターである。
【0093】
図43は、第14の実施例のコアレスモーターの構成を模式的に示す説明図である。ここで、図43(A)は、コアレスモーター10を回転軸に平行な面で切った断面を示しており、図43(B)は、コアレスモーターを回転軸に垂直な面(43B−43B切断面)で切った断面を示している。コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたラジアルギャップ構造のインナーローター型モーターである。ステーター15は、ケーシング110の内周に沿って配列された複数の電磁コイル100A、100Bを有している。電磁コイル100A、100Bは、コアレス(空心)である。なお、電磁コイル100A、100Bを合わせて電磁コイル100とも呼ぶ。ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、電磁コイル100の各相に1つずつ配置されている(図43(A))。磁気センサー300は、電磁コイル100のコイルエンド101から回転軸230側に降ろした垂線上に配置されている。なお、磁気センサー300は、回路基板310と接続されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。
【0094】
ローター20は、中心に回転軸230を有し、外周に6つの永久磁石200を有している。各永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう径方向(放射方向)に沿って磁化されている。また、永久磁石200と電磁コイル100とは、ローター20とステーター15の対向する円筒面に対向して配置されている。
【0095】
回転軸230は、ケーシング110の軸受け240で支持されており、軸受け240は、ベアリングボール241を備えている。本実施例では、ケーシング110の内側に、コイルバネ260を備えている。このコイルバネ260は、永久磁石200を図の左方向に押すことによって、永久磁石200の位置決めを行っている。但し、コイルバネ260は省略可能である。
【0096】
ケーシング110は、回転軸230と平行な円筒形状部分(側面部)111と、円筒形状部分111の両端に配置された、回転軸230と垂直な円盤形状部分(端面部)112とで構成されている。円盤形状部分112は、樹脂で形成されている。円筒形状部分111は、磁性体部材で形成された中央部113と、樹脂で形成された残りの部分と、を有する。中央部113は、コイルバックヨークとして機能するので、「コイルバックヨーク113」とも呼ぶ。コイルバックヨーク113は、ケーシング110のうち、永久磁石200から電磁コイル100へ向かう方向に永久磁石200を投射したときのケーシング110を投射する領域に配置されている。コイルバックヨーク113は、磁束線201を集めるので、磁束線201は電磁コイル100の内部を通りやすくなり、コアレスモーター10の効率を良くすることが可能となる。しかし、磁束線201が通りやすいと、以下に説明するように、コイルバックヨーク113に渦電流が発生し易くなる。
【0097】
本実施例では、コイルバックヨーク113は、磁性体部材であると同時に、導電性部材でもある。上述のように、コイルバックヨーク113は、永久磁石200や電磁コイルからの磁束線を通しやすい。ここで、ローター20が回転すると、永久磁石200も回転する。これにより、コイルバックヨーク113を貫通する磁束が変化し、磁束の変化を妨げる方向に磁束を作る電流、すなわち渦電流が生じる。渦電流が流れると、電力損失(渦電流損)が生じ、熱として放出される。
【0098】
ここで、コイルバックヨーク113は、例えば、図5に示したコイルバックヨーク115、あるいは図6に示したコイルバックヨーク115bと同様な積層構造を有していることが好ましい。このような積層構造を備えることにより、回転軸230と配向な方向の渦電流を抑制することが出来、渦電流損により電力損失を抑制してコアレスモーターの効率を良くし、高トルクの実現が可能となる。
【0099】
なお、コイルバックヨーク113は、図38に示すように、切り欠き部113BS、113BCを備える構成であってもよい。これにより、渦電流を抑制し、渦電流損を少なくすることが可能となる。
【0100】
次に、磁気センサー300の磁束を検知する方向について、図24(B)(C)を参照して説明する。第14の実施例における磁気センサー300の磁束を検知する方向301は、図24で示した第4の実施例と同様であり、回転軸230の中心から外側に向かう径方向に沿った方向である。また、この検知方向301は、コイルエンド101の流れる電流により生じる磁束102A、102Bと直角に交わる方向である。したがって、電磁コイル100に流れる電流の大きさが変わり、磁束線102A、102Bの数が変わっても、磁気センサー300の出力に変化は生じない。
【0101】
また、第14の実施例では、第4の実施例と同様に、永久磁石200と、磁気センサー300の間には、磁性体部材210が設けられている。この磁性体部材210は、例えば軟磁性体で構成されていてもよい。磁性体部材210は、磁束を通しやすいので、永久磁石200から出る磁束線の数が同じであれば、磁性体部材210よりも外側に出る磁束線202A、202Bの数は、磁性体部材210を通る分だけ少なくなる。その結果、磁気センサー300が永久磁石200に近接して配置されていても、磁気センサー300の出力は飽和しにくい。その結果、磁気センサー300の出力において歪も発生させず、飽和の発生も抑制することが可能となる。すなわち重負荷時であっても、磁気センサー300の出力は、図26(D)に示すような正弦波となる。一般的にモーターでは、逆誘起電力波形、すなわち正弦波で駆動すると効率がよい。第14の実施例によれば、磁気センサー300を、電磁コイル100によって生じる磁束線の方向と磁気センサー300が検知する磁束線の方向301とが垂直に交わる位置に配置し、磁性体部材210を、磁気センサー300と永久磁石200との間に配置するので、磁気センサー300の出力における歪みや飽和の発生を抑制し、きれいな正弦波を出力することができる。そして、この磁気センサーの出力を用いてコアレスモーター10の駆動信号を生成すれば、コアレスモーター10を効率的に駆動でき、高トルクが実現できる。
【0102】
第14の実施例では、ラジアルギャップ型のコアレスモーター10について説明したが、アキシャルギャップ型のコアレスモーターであってもよい。
【0103】
図44は、コアレスモーターの制御ブロックの一例を示す説明図である。このモーターシステムは、制御装置1000と、コアレスモーター10と、を備えている。コアレスモーター10は、ローターの回転角(位相)を検出するために、磁気センサー300とエンコーダー1030とを備えている。なお、エンコーダー1030は省略可能である。
【0104】
制御装置1000は、CPUを含む主制御部1110と、駆動制御回路1120と、PWM制御部1130と、ブリッジ回路1140と、電流検出部1150と、計測値算出部1160とを備えている。計測値算出部1160は、電流検出部1150から出力される検出電流信号Imesと、磁気センサー300から出力される磁気センサー信号Smagと、エンコーダー1030から出力されるエンコーダー信号Sencとに基づいて、最大電流値Imax及び平均電流値Iaveとモーター回転数Nmesとを算出する演算回路である。なお、磁気センサー信号Smagは、歪みや飽和の存在しない逆起電力電圧波形に忠実な相似関係となる電圧波形であることが好ましい。
【0105】
駆動制御回路1120とPWM制御部1130は、最大電流値Imax及び/又は平均電流値Iaveとモーター回転数Nmesとに基づいてコアレスモーター10の制御を実行する。具体的には、駆動制御回路1120は、最大電流値Imax及び/又は平均電流値Iaveとモーター回転数Nmesとに基づいてPWM制御におけるパルス幅を調整する調整値を決定し、この調整値に基づいてPWM制御部1130がPWM制御信号を生成する。ブリッジ回路1140は、複数のスイッチング素子で構成されるHブリッジ回路であり、このブリッジ回路1140からコアレスモーター10の電磁コイル100(例えば図41)に駆動電圧が供給される。これにより、コアレスモーター10が駆動される。なお、電流検出部1150は、ブリッジ回路1140に流れる電流(すなわちコアレスモーター10のコイル電流)を測定する電流センサーである。
【0106】
[第15の実施例]
図45は、第15の実施例を示す説明図である。コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたラジアルギャップ構造のインナーローター型モーターである。ステーター15は、ケーシング110の内周に沿って配列された複数のコアレスの電磁コイル100を有している。ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、配置されている。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。
【0107】
ローター20は、中心に回転軸230を有し、外周に6つの永久磁石200を有している。各永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう径方向(放射方向)に沿って磁化されている。また、永久磁石200と電磁コイル100とは、ローター20とステーター15の対向する円筒面に対向して配置されている。回転軸230は、ケーシング110の軸受け240で支持されている。
【0108】
ケーシング110は、回転軸230と平行な円筒形状部分(側面部)115と、円筒形状部分115の両端に配置された、回転軸230と垂直な円盤形状部分(端面部)112とで構成されている。円盤形状部分112は、樹脂で形成されている。円筒形状部分115は、回転軸230と平行な方向に重ねられた複数の積層鋼板で形成されている(例えば図5参照)。円筒形状部分115は、コイルバックヨークとして機能するので、この円筒形状部分115をコイルバックヨークと呼ぶ。コイルバックヨーク115は、永久磁石200から電磁コイル100へ向かう方向に永久磁石200を投射したときの投射領域と重なる。
【0109】
ステーター15のコイルバックヨーク115の放射方向外側には、放熱装置120が接続されている。放熱装置120は、アルミニウム(熱伝導率236W/(m・K))などの熱伝導性のよい材料で形成されており、熱伝導部122と、放熱板124と、を有している。放熱板124は、熱伝導部122により、コイルバックヨーク115に接続されている。コイルバックヨーク115は、コアレスモーター10が動作すると、渦電流損により発熱する。この熱は、熱伝導部122を介して、放熱板124に伝導され、放熱される。なお、アルミニウムの他に銅(熱伝導率398W/(m・K))を用いても良い。
【0110】
図46は、比較例のコアレスモーター1011を示す説明図である。図45に示すコアレスモーター10は、ケーシング110の円盤形状部分112が樹脂で形成されているのに対し、図46に示すコアレスモーター1011は、アルミニウムで形成されている点が異なる。また、図45に示すコアレスモーター10では、放熱装置120が、コイルバックヨーク115に接続されているのに対し、図46に示すコアレスモーター1011では、放熱装置120が、アルミニウム(熱伝導率236W/(m・K))の円盤形状部分112に接続されている点が異なる。
【0111】
図47は、他の比較例のコアレスモーター1012を示す説明図である。図47に示すコアレスモーター1012のケーシング110は、コイルバックヨーク115と、円盤形状部分112に加えて、アルミ円筒部材118を備える。アルミ円筒部材118は、コイルバックヨーク115の放射方向外側を覆うように配置されており、2つのアルミニウムの円盤形状部分112に接続されている。図46に示すコアレスモーター1011では、コイルバックヨーク115が剥き出しになっているが、図47に示すコアレスモーター1012では、コイルバックヨーク115が剥き出しになっていない。
【0112】
図48は、各モーターの発熱特性を比較する説明図である。なお、放熱板124の大きさは同じにしている。図45に示す第15の実施例のコアレスモーター10の温度が最も低く、次いで、図47に示すコアレスモーター1012の温度が低い。図46に示すコアレスモーター1011は、両者と比較すると、25℃から30℃高くなっている。この理由は以下のように考えられる。
【0113】
図45に示したコアレスモーター10では、コイルバックヨーク115に生じた熱は、直接放熱装置120に伝わる。一方、図46に示したコアレスモーター1011では、コイルバックヨーク115で生じた熱は、円盤形状部分112に伝わり、さらに、放熱装置120に伝わる。ここで、コイルバックヨーク115は、回転軸230と平行な方向に重ねられた複数の積層鋼板で形成されているので、回転軸230と平行な方向への熱が伝導し難い。すなわち、コイルバックヨーク115の積層方向の中央近傍で発生した熱は、円盤形状部分112に伝わり難い。したがって、コアレスモーター10に比較して、コアレスモーター1011は放熱されにくく、温度が高くなる。また、図47に示したコアレスモーター1012では、コイルバックヨーク115で生じた熱は、円盤形状部分112に伝わり、放熱装置120に伝わる他、コイルバックヨーク115からアルミ円筒部分118に伝わり、さらに、円盤形状部分112に伝わり、放熱装置120に伝わる。コイルバックヨーク115中においては、回転軸230と平行な方向へは、上述したように、熱が伝導し難いが、回転軸230と垂直な方向へは熱が伝導しやすい。そして、アルミ円筒部分118においては、回転軸230と平行な方向へ熱が伝導しやすい。したがって、図47に示すコアレスモーター1012は、図46に示すコアレスモーター1011より放熱しやすい。なお、図45に示すコアレスモーター10は、放熱装置120が直接コイルバックヨーク115に接続しているため、図47に示すコアレスモーター1012より放熱しやすい。
【0114】
以上、本実施例によれば、放熱装置120をコイルバックヨーク115に直接接続するので、コアレスモーター10の放熱性を高めることが出来る。また、円盤形状部分112に放熱装置120を設ける場合(例えばコアレスモーター1011、1012)、円盤形状部分112にアルミニウムなどの熱伝導性の良い材料を用いなければ、コアレスモーター1011、1012の放熱性を高めることが出来ない。しかし、本実施例によれば、コイルバックヨーク115に放熱装置を接続することにより、円盤形状部分112を樹脂化することが可能となる。すなわち、コアレスモーター10の樹脂ケース化を実現することができる。
【0115】
図49は、第16の実施例を示す説明図である。第16の実施例は、ロボットアーム300である。ロボットアーム300は、上腕部310と、関節部320と、前腕部330と、を備える。上腕部310は、筐体312と、コアレスモーター10と、減速機314と、を備える。コアレスモーター10は、筐体312の端部に配置されており、減速機314は、コアレスモーター10に接続されている。コアレスモーター10は、例えば実施例15で説明したコアレスモーター10を採用することができる。ここで、コアレスモーター10のコイルバックヨーク(図49では省略、図45参照)が筐体312と接続されている。筐体312は、放熱性の高い金属で構成されており、ロボットアーム300の剛性部材であるとともに、コアレスモーター10の放熱部材でもある。減速機314は、コアレスモーター10の回転軸230(図49では省略、図45参照)と接続されている。減速機314は、コアレスモーター10の回転数を減じて出力する。減速機314として、例えば遊星歯車機構を用いることが可能である。
【0116】
関節部320は、傘歯車322、324と、回転軸326と、を備える。傘歯車322は、減速機314と接続されている。と傘歯車322と傘歯車324とは、ほぼ直角に交わっている。回転軸326は、傘歯車324の回転軸である。前腕部330は、回転軸326と直角方法に伸びている。この構成によれば、コアレスモーター10を回転させると、前腕部330を上腕部310に対して旋回させることができる。なお、ここに示した例は一例であり、モーター、歯車の組み合わせにより、さらに複雑な動作をするロボットアームを構成することが可能である。
【0117】
以上、本実施例によれば、放熱性の高い金属で構成された筐体312がコアレスモーター10のコイルバックヨーク115(図45)に接続されているので、コアレスモーター10で生じた熱を容易に放熱することができる。また、筐体312が放熱装置でもあるので、放熱板を別に準備する必要がない。
【0118】
図50は、第17の実施例を示す説明図である。第17の実施例は、コアレスモーター10を車両のモーター内蔵タイヤに適用したものである。モーター内蔵タイヤ600は、コアレスモーター10と、タイヤ605と、ホイール610と、ホイールナット620と、を備える。コアレスモーター10は、第15の実施例で説明したコアレスモーター10と同様に、電磁コイル100と、永久磁石200と、コイルバックヨーク115と、回転軸230と、軸受け240と、放熱装置120と、を備える。コアレスモーター10の構成は第15の実施例と同様である。本実施例では、回転軸230は、ホイールナット620によりホイール610に接続されている。ホイール610にはタイヤ605が取り付けられている。放熱装置120は、コイルバックヨーク115の外側に接続されている。また、放熱装置120は、ホイール610の内側に収納されている。コアレスモーター10が回転してホイール610及びタイヤ605が回転すると、ホイール内部に空気が流れ、放熱装置120を冷却する。これにより、コアレスモーター10の熱は、放熱装置から放熱される。このように、コイルバックヨーク115に放熱装置を接続する構成は、モーター内蔵タイヤ600にも適用可能である。
【0119】
図51は、第17の実施例で用いることが出来る放熱装置の一例の一部を示す説明図である。放熱装置は、円筒形の筒部126と、螺旋形(ネジ形状)のフィン128とを有している。円筒形の筒部126の中にコアレスモーターが格納される。本実施例のように、螺旋形のフィン128を有すると、空気をフィン128の溝に沿って移動させることができるため、放熱装置120が単純な円盤構造であるよりも、冷却効率を高めることができる。
【0120】
変形例:
本発明は、各種の装置に適用可能である。例えば、本発明は、ファンモーター、時計(針駆動)、ドラム式洗濯機(単一回転)、ジェットコースタ、振動モーターなどの種々の装置のモーターに適用可能である。本発明をファンモーターに適用した場合には、上述した種々の効果(低消費電力、低振動、低騒音、低回転ムラ、低発熱、高寿命)が特に顕著である。このようなファンモーターは、例えば、デジタル表示装置や、車載機器、燃料電池式パソコン、燃料電池式デジタルカメラ、燃料電池式ビデオカメラ、燃料電池式携帯電話などの燃料電池使用機器、プロジェクタ等の各種装置のファンモーターとして使用することができる。本発明のモーターは、さらに、各種の家電機器や電子機器のモーターとしても利用可能である。例えば、光記憶装置や、磁気記憶装置、ポリゴンミラー駆動装置等において、本発明によるモーターをスピンドルモーターとして使用することが可能である。また、本発明によるモーターは、移動体やロボット用のモーターとしても利用可能である。
【0121】
図52は、本発明の変形例によるモーターを利用したプロジェクタを示す説明図である。このプロジェクタ3100は、赤、緑、青の3色の色光を発光する3つの光源3110R、3110G、3110Bと、これらの3色の色光をそれぞれ変調する3つの液晶ライトバルブ3140R、3140G、3140Bと、変調された3色の色光を合成するクロスダイクロイックプリズム3150と、合成された3色の色光をスクリーンSCに投写する投写レンズ系3160と、プロジェクタ内部を冷却するための冷却ファン3170と、プロジェクタ3100の全体を制御する制御部3180と、を備えている。冷却ファン3170を駆動するモーターとしては、上述した各種のモーターを利用することができる。
【0122】
図53(A)〜(C)は、本発明の変形例によるモーターを利用した燃料電池式携帯電話を示す説明図である。図53(A)は携帯電話3200の外観を示しており、図53(B)は、内部構成の例を示している。携帯電話3200は、携帯電話3200の動作を制御するMPU3210と、ファン3220と、燃料電池3230とを備えている。燃料電池3230は、MPU3210やファン3220に電源を供給する。ファン3220は、燃料電池3230への空気供給のために携帯電話3200の外から内部へ送風するため、或いは、燃料電池3230で生成される水分を携帯電話3200の内部から外に排出するためのものである。なお、ファン3220を図53(C)のようにMPU3210の上に配置して、MPU3210を冷却するようにしてもよい。ファン3220を駆動するモーターとしては、上述した各種のモーターを利用することができる。
【0123】
図54は、本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車3300は、前輪にモーター3310が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路3320と充電池3330とが設けられている。モーター3310は、充電池3330からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモーター3310で回生された電力が充電池3330に充電される。制御回路3320は、モーターの駆動と回生とを制御する回路である。このモーター3310としては、上述した各種のモーターを利用することが可能である。
【0124】
図55は、本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット3400は、第1と第2のアーム3410,3420と、モーター3430とを有している。このモーター3430は、被駆動部材としての第2のアーム3420を水平回転させる際に使用される。このモーター3430としては、上述した各種のモーターを利用することが可能である。
【0125】
図56は、本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。この鉄道車両3500は、モーター3510と、車輪3520とを有している。このモーター3510は、車輪3520を駆動する。さらに、モーター3510は、鉄道車両3500の制動時には発電機として利用され、電力が回生される。このモーター3510としては、上述した各種のモーターを利用することができる。
【0126】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0127】
10、1011、1012…モーター(コアレスモーター)
11…被測定モーター
12…リニアモーター
13…シャフトモーター
15、15A、15B…ステーター
16…可動部
17…移動体
20…ローター
21…固定部
100、100A、100B…電磁コイル
101A、101B、106A…コイルエンド
102A…磁束
110…ケーシング
111…円筒形状部分
112…円盤形状部分
113…中央部(有効長領域、円筒形部材)
113BS、113BC…切り欠き部
115a…穴あき円盤
115b…板
115C、115S…切り欠き部
115…コイルバックヨーク
116…コイルバックヨーク
117…コイルケース
115BC、115BS…切り欠き部
119…平板
120…放熱装置
122…熱伝導部
124…放熱板
126…筒部 150…板
151、151a、151b、151c、152…凸
160…ブラシ
170…コミューター
200…永久磁石
201…磁束線
202…磁石バックヨーク
202A、207A…磁束
210…磁性体部材
230…回転軸
240…軸受け
241…ベアリングボール
260…コイルバネ
300、300A…磁気センサー
301…検知方向
310…回路基板
312…筐体
314…減速機
320…関節部
322…傘歯車
324…傘歯車
326…回転軸
330…前腕部
510…熱伝導性樹脂
600…モーター内蔵タイヤ
605…タイヤ
610…ホイール
620…ホイールナット
1000…制御装置
1030…エンコーダー
1110…主制御部
1120…駆動制御回路
1130…PWM制御部
1140…ブリッジ回路
1150…電流検出部
1160…計測値算出部
3100…プロジェクタ
3110…光源
3140…液晶ライトバルブ
3150…クロスダイクロイックプリズム
3160…投写レンズ系
3170…冷却ファン
3180…制御部
3200…携帯電話
3220…ファン
3230…燃料電池
3300…自転車
3310…モーター
3320…制御回路
3330…充電池
3400…ロボット
3410…第1のアーム
3420…第2のアーム
3430…モーター
3500…鉄道車両
3510…モーター
3520…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械装置であって、
第1の磁束を生じる永久磁石を有する第1の部材と、
前記第1の部材と相対的に移動する第2の部材であって、前記第1の磁束部と対向するように配置され、第2の磁束を生じる電磁コイルを有する第2の部材と、
前記第1の磁束を集中させるコイルバックヨークと、
放熱板と、
前記永久磁石と前記電磁コイルとを格納するケースと、
を備え、
前記コイルバックヨークは、
前記第1の磁束の方向及び前記相対的移動方向の両方に垂直な方向に積層された積層鋼板で形成されており、
前記電磁コイルの前記永久磁石と反対側に配置され、前記ケースの一部を形成し、
前記ケースの前記コイルバックヨーク部分を除く部分は樹脂により形成されており、
前記放熱板は、前記コイルバックヨークに接続されている、
電気機械装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械装置において、
前記電磁コイルは、前記電磁コイルにおいて前記第1の部材を相対的に移動方向に移動させる力を生じさせる有効コイル領域と、コイルエンド領域とを有しており、前記コイルバックヨークは、前記有効コイル領域を覆い、前記コイルエンド領域を覆っていない、電気機械装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機械装置において、
前記有効コイル領域は、前記永久磁石から前記電磁コイルに向けて前記永久磁石を投影したときの投影領域である。電気機械装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の電気機械装置において、
前記鋼板材の厚さは、0.1mm以下である、電気機械装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の電気機械装置において、
前記鋼板材の厚さは、約0.1mmである、コアレス電気機械装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の電気機械装置において、
前記第1の部材は、さらに、磁性体部材を有し、
前記第2の部材は、さらに、前記永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーを有しており、
前記磁気センサーは、前記電磁コイルによって生じる磁束線の方向と前記磁気センサーが検知する磁束線の方向とが垂直に交わる位置に配置されており、
前記磁性体部材は、前記磁気センサーと前記永久磁石の間に配置されている、電気機械装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置において、
前記第1の部材と前記第2の部材は、前記第1の部材の回転軸を中心とする同心円筒形状を有しており、
前記永久磁石と前記電磁コイルは、前記第1の部材と前記第2の部材の対向する円筒面に対向して配置されており、
前記磁性体部材は、前記回転軸の軸方向と平行な方向における前記永久磁石の端面に配置されている、電気機械装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気機械装置において、
前記磁気センサーが配置される位置は、前記電磁コイルのコイルエンドと前記回転軸の間であって、前記コイルエンドから前記回転軸に対して直角に降ろした放射線上である、電気機械装置。
【請求項9】
ロボットであって、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電気機械装置と、
前記電気機械装置が配置される筐体と、
を備え、
前記筐体は、
前記電気機械装置の前記コイルバックヨークに接続されており、前記電気機械装置の放熱板として機能する、ロボット。
【請求項10】
車輪であって、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電気機械装置と、
前記電気機械装置に接続されたホイールとタイヤと、
を備える、車輪。
【請求項11】
請求項10に記載の車輪において、
前記電気機械装置の前記放熱板は、ネジ形状を有している車輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【公開番号】特開2012−125088(P2012−125088A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275447(P2010−275447)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】