説明

電気素子およびその製造方法ならびに超音波加工装置

【課題】ガラス転移点が高い樹脂基板間に素子本体を確実に封止することができる電気素子およびその製造方法ならびに超音波加工装置を提供する。
【解決手段】超音波ミシンでは、ローラを用いた樹脂基板の超音波溶着が行われる。このとき、素子本体2を取り囲むように溶着されるので、素子本体2が溶着部5によって樹脂基板間に封止される。溶着部5は、前後方向に延びる第一溶着部51と、左右方向に延びる第二溶着部52とを含む。第一溶着部51は、所定幅で左右方向に振幅する矩形波状で形成されている。第二溶着部52は、所定幅で前後方向に振幅する矩形波状で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基板間に素子本体が封止された電気素子およびその製造方法ならびに超音波加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板間に素子本体が封止された電気素子として、液晶素子、EL素子、電気泳動素子などが知られている。一対の基板として、可撓性や軽量性を向上させるために、プラスチック基板が使用されることがある。このような電気素子において、一対のプラスチック基板間で素子本体を封止するために、プラスチック基板の周囲を超音波処理で溶着することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−227450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気素子にプラスチック基板を使用する場合、電気素子の作製プロセスにおける熱耐久性を向上させるために、ガラス転移点(Tg)が高い樹脂で形成された基板が使用されることがある。ガラス転移点が高い樹脂としては、PEN(ポリエチレンナフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などが例示される。
【0005】
特許文献1に記載の例では、平面視で素子本体を取り囲む溶着部が直線状の輪郭を形成するように、プラスチック基板が超音波処理で溶着されている。しかしながら、ガラス転移点が高い樹脂基板に上記のような直線状の溶着部を超音波処理で形成した場合、素子本体の周囲における溶着幅が不十分となるおそれがあった。つまり、樹脂基板を強固に溶着するのに必要な溶着幅を確保できないため、基板間への空気や水分の侵入によって素子本体の寿命が短くなるおそれがあった。
【0006】
そこで、ガラス転移点が高い樹脂基板を強固に溶着するために、直線状の溶着部における溶着幅を大きくすることが考えられる。この場合、溶着幅全体に亘って確実に溶着させるために、超音波処理の出力強度または処理時間を大きくする必要がある。しかしながら、超音波は、その出力部から離間するのに応じて強度が小さくなる特性を有する。そのため、超音波処理の出力強度または処理時間を単純に大きくしただけでは、溶着幅全体を均等に溶着することができず、溶着部近傍で樹脂基板の変形を生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガラス転移点が高い樹脂基板間に素子本体を確実に封止することができる電気素子およびその製造方法ならびに超音波加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係る電気素子は、素子本体と、前記素子本体を挟んで対向配置される一対の樹脂基板と、前記一対の樹脂基板の対向する方向からみて前記電気素子を取り囲むように、前記一対の樹脂基板が溶着された溶着部とを備え、前記溶着部は、前記対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、前記素子本体が配置されている前記樹脂基板の平面に沿って延びることを特徴とする。
【0009】
上記電気素子によれば、電気素子を取り囲むように一対の樹脂基板が溶着されることで、電気素子が溶着部によって一対の樹脂基板間に封止される。溶着部は、連続した複数の凹凸を有するため、平面視で短い間隔で連続的に角(エッジ)が形成される線状をなす。溶着部を幅方向に振れるように蛇行させることで、溶着部全体として振幅方向の溶着幅を大きくすることができる。したがって、溶着部自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板を確実に溶着して、樹脂基板間に素子本体を封止することができる。
【0010】
上記電気素子において、前記溶着部が延びる方向である延設方向は、前記凹凸の振幅方向と直交し、隣り合う前記凹凸における凸部の頂部と凹部の底部との前記延設方向の距離は、前記振幅方向に延びる最大溶着幅よりも大であり、前記溶着部は、第一の方向に延びる第一溶着部と、前記第一の方向と交差する第二の方向に延びる第二溶着部とを含み、前記第一溶着部と前記第二溶着部とは、各々の前記延設方向に延びる部位同士で交差してもよい。この場合、第一溶着部と第二溶着部とを、最大溶着幅よりも距離が大きい延設方向の線部分で交差させやすい。つまり、第一溶着部と第二溶着部とが重複する領域の大きさを抑制しやすくなり、ひいては溶着部の重複による樹脂基板の変形を抑制しやすくできる。
【0011】
上記電気素子において、前記素子本体は、EL素子であってもよい。この場合、PENやPETなどのガラス転移点の高い樹脂基板が使用されるEL素子であっても、樹脂基板を確実に溶着してEL素子を封止することができる。
【0012】
本発明の第二態様に係る超音波加工装置は、第一態様に係る電気素子を製造する超音波加工装置であって、周面の全周に亘って連続形成された環状突起を有し、中心軸まわりに回転自在なローラと、前記ローラを前記中心軸まわりに回転させる回転駆動部と、前記環状突起から超音波を射出させる超音波駆動部とを備え、前記環状突起は、前記複数の凹凸に対応して、前記ローラの回転方向に対して交差する稜線を有してもよい。
【0013】
上記超音波加工装置によれば、周面の全周に亘って連続形成された環状突起を有するローラが回転駆動されつつ、環状突起から超音波が射出される。環状突起は、複数の凹凸に対応して、ローラの回転方向に対して交差する稜線を有する。このローラによって一対の樹脂基板の超音波溶着を行うことで、環状突起の稜線形状に応じて複数の凹凸を有する溶着部が形成される。ひいては、第一態様に係る電気素子を、ローラを素子本体に沿って回転させながら超音波溶着を行うだけで製造できる。
【0014】
本発明の第三態様に係る超音波加工装置は、第一態様に係る電気素子を製造する超音波加工装置であって、周面の全周に亘って連続して並行に形成された一対の環状突起と、前記周面に等間隔で設けられ、前記中心軸と平行に延びる列状突起とを有し、中心軸まわりに回転自在なローラと、前記ローラを前記中心軸まわりに回転させる回転駆動部と、前記一対の環状突起と前記列状突起とから超音波を射出させる超音波駆動部とを備え、前記一対の環状突起は、前記第一の方向に延びる前記複数の凹凸に対応して、前記ローラの回転方向に対して交差する第一の稜線を有し、前記列状突起は、前記第二の方向に延びる前記複数の凹凸に対応して、前記第一の稜線と交差する第二の稜線を有してもよい。
【0015】
上記超音波加工装置によれば、ローラは、周面の全周に亘って連続形成された一対の環状突起と、周面に等間隔で設けられて中心軸と平行に延びる列状突起とを有する。このローラが回転駆動されつつ、一対の環状突起および列状突起から超音波が射出される。一対の環状突起は、第一の方向に延びる複数の凹凸に対応して、ローラの回転方向に対して交差する第一の稜線を有する。列状突起は、第二の方向に延びる複数の凹凸に対応して、第一の稜線と交差する第二の稜線を有する。このローラによって一対の樹脂基板の超音波溶着を行うことで、一対の環状突起および列状突起の各稜線形状に応じて複数の凹凸を有する矩形状の溶着部が一括形成される。ひいては、第一態様に係る電気素子を、ローラを一方向に回転させながら超音波溶着を行うだけで一括して製造できる。
【0016】
本発明の第四態様に係る電気素子の製造方法は、中心軸まわりに回転自在なローラを備えた超音波加工装置で電気素子を製造する方法であって、前記ローラは、周面の全周に亘って連続形成された環状突起を有し、前記環状突起は、前記ローラの回転方向に対して交差する稜線を有しており、素子本体を挟んで前記一対の樹脂基板を配置する配置工程と、前記一対の樹脂基板に押し当てた前記ローラを回転させながら、前記環状突起から超音波を射出することで、前記一対の樹脂基板の対向する方向からみて前記電気素子を取り囲むように、前記一対の樹脂基板が溶着された溶着部を形成する溶着工程とを備え、前記溶着工程では、前記稜線に対応する前記溶着部の輪郭線が前記対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、前記素子本体が配置されている前記樹脂基板の平面に沿って延びる前記溶着部を形成してもよい。
【0017】
上記電気素子の製造方法によれば、周面の全周に亘って連続形成された環状突起を有するローラが回転駆動されつつ、環状突起から超音波が射出される。環状突起は、連続した複数の凹凸に対応して、ローラの回転方向に対して交差する稜線を有する。このローラによって一対の樹脂基板の超音波溶着を行うことで、電気素子を取り囲むように一対の樹脂基板が溶着されて、電気素子が溶着部によって一対の樹脂基板間に封止される。
【0018】
この溶着部は、環状突起の稜線形状に応じて連続した複数の凹凸を有する。つまり、溶着部は、連続した複数の凹凸を有するため、平面視で短い間隔で連続的に角(エッジ)が形成される線状をなす。溶着部を幅方向に振れるように蛇行させることで、溶着部全体として振り幅方向の溶着幅を大きくすることができる。したがって、溶着部自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板間に素子本体を確実に封止可能な電気素子を、ローラを素子本体に沿って回転させながら超音波溶着を行うだけで製造できる。
【0019】
本発明の第五態様に係る電気素子の製造方法は、中心軸まわりに回転自在なローラを備えた超音波加工装置で電気素子を製造する方法であって、前記ローラは、周面の全周に亘って連続して並行に形成された一対の環状突起と、前記周面に等間隔で設けられ、前記中心軸と平行に延びる列状突起とを有し、前記一対の環状突起は、前記ローラの回転方向に対して交差する第一の稜線を有し、前記列状突起は、前記第一の稜線と交差する第二の稜線を有しており、素子本体を挟んで前記一対の樹脂基板を配置する配置工程と、前記一対の樹脂基板に押し当てた前記ローラを回転させながら、前記一対の環状突起および前記列状突起から超音波を射出することで、前記一対の樹脂基板の対向する方向からみて前記電気素子を取り囲むように、前記一対の樹脂基板が溶着された溶着部を形成する溶着工程とを備え、前記溶着工程では、前記第一の稜線および前記第二の稜線に対応する前記溶着部の輪郭線が前記対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、前記素子本体が配置されている前記樹脂基板の平面に沿って延びる矩形状の前記溶着部を一括形成してもよい。
【0020】
上記電気素子の製造方法によれば、ローラは、周面の全周に亘って連続形成された一対の環状突起と、周面に等間隔で設けられて中心軸と平行に延びる列状突起とを有する。このローラが回転駆動されつつ、一対の環状突起および列状突起から超音波が射出される。一対の環状突起は、それぞれ連続した複数の凹凸に対応して、ローラの回転方向に対して交差する第一の稜線を有する。列状突起は、それぞれ連続した複数の凹凸に対応して、第一の稜線と交差する第二の稜線を有する。このローラによって一対の樹脂基板の超音波溶着を行うことで、電気素子を取り囲むように一対の樹脂基板が溶着されて、電気素子が溶着部によって一対の樹脂基板間に封止される。
【0021】
この溶着部は、一対の環状突起および列状突起の各稜線形状に応じて連続した複数の凹凸を有する。つまり、溶着部は、連続した複数の凹凸を有するため、平面視で短い間隔で連続的に角(エッジ)が形成される線状をなす。溶着部を幅方向に振れるように蛇行させることで、溶着部全体として振り幅方向の溶着幅を大きくすることができる。したがって、溶着部自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板間に素子本体を確実に封止可能な電気素子を、ローラを一方向に回転させながら超音波溶着を行うだけで一括して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】有機EL素子1の平面図である。
【図2】図1のA−A線矢視方向断面図である。
【図3】有機EL素子1の部分拡大平面図である。
【図4】超音波溶着前の超音波ミシン100の正面図である。
【図5】ローラ200の拡大正面図である。
【図6】有機EL素子1の製造工程を示すフローチャートである。
【図7】超音波溶着時の超音波ミシン100の正面図である。
【図8】有機EL素子10の平面図である。
【図9】超音波溶着前の超音波ミシン101の正面図である。
【図10】ローラ300の拡大正面図である。
【図11】超音波溶着時の超音波ミシン101の正面図である。
【図12】有機EL素子11の部分拡大平面図である。
【図13】有機EL素子12の部分拡大平面図である。
【図14】有機EL素子13の部分拡大平面図である。
【図15】有機EL素子14の部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具現化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置構成や製造方法などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0024】
本発明の第一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。まず図1〜図3を参照して、有機EL素子1の物理的構造について説明する。以下では、図1の上側、下側、左側、右側が、それぞれ有機EL素子1の前側、後側、左側、右側とする。図2の上側および下側が、有機EL素子1の上側および下側とする。本実施形態では、有機EL素子1の下側が発光面として機能する面側(以下、発光面側という。)とし、有機EL素子1の上側が発光面とは反対に位置する面側(以下、非発光面側という。)とする。
【0025】
図1および図2に示すように、有機EL素子1は、素子本体2と、素子本体2を挟んで対向配置される一対の樹脂基板3、4とを備える。樹脂基板3、4は、超音波で溶着可能な熱可塑性と、空気や水分を遮断するバリア性とを備えた樹脂材料で形成される。ただし、樹脂基板3、4は、バリア性を備えた樹脂材料で形成されていてもよいし、バリア性を備えた無機材料でコーティングされていてもよい。さらに、樹脂基板3、4のうち、少なくとも発光面側の樹脂基板は、光透過性の高い材料で形成される。以下では、素子本体2の下側に配置された樹脂基板を、下基板3という。素子本体2の上側に配置された樹脂基板を、上基板4という。
【0026】
本実施形態の樹脂基板3、4は、いずれも超音波溶着が可能な透光性材料で形成された透明フィルムである。また、薄膜状(例えば、厚みが100μm程度)に形成されているため、可撓性を有する。また、平面視で、前後方向(図1では上下方向)を長手方向とする長方形状に形成されている。
【0027】
樹脂基板3、4の材料としては、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリ塩化ビニルフィルム(PVCフィルム) 、ポリ塩化ビニリデンフィルム(PVDCフィルム)、ポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、ポリエステルフィルム(熱可塑性ポリエステル樹脂(PETまたはPEN))、ポリカーボネートフィルム(PCフィルム)、ポリスチレンフィルム(PSフィルム)、ポリアクリロニトリルフィルム(PANフィルム)などが例示される。
【0028】
ただし、下基板3および上基板4は、同一の材料で形成されることが好適である。また、樹脂基板3、4は、有機EL素子1の作製プロセスにおける熱耐久性を向上させるために、ガラス転移点(Tg)が高い樹脂で形成されることが好適であり、上記の材料例のなかではPETまたはPENが好ましい。
【0029】
素子本体2は、公知の有機ELと同様に、陽極層21、発光層22、陰極層23の積層構造を有する。陽極層21は、電流の印加によって正孔を発光層22に注入する、下基板3の上面に積層された電極である。発光層22は、発光材料である有機化合物で形成された有機薄膜であり、陽極層21の上面に積層されている。陰極層23は、電流の印加によって電子を発光層22に注入する、発光層22の上面に積層された電極である。陽極層21は、光透過性の高い導電性材料で形成される。
【0030】
本実施形態の素子本体2は、陽極層21、発光層22、陰極層23がいずれも薄膜状(例えば、厚みがそれぞれ150nm程度)に形成されている。また、平面視で、前後方向(図1では上下方向)を長手方向とする長方形状に形成され、且つ樹脂基板3、4よりも前後方向および左右方向の長さが小さい。
【0031】
発光面側の電極である陽極層21は、透明電極である。そのため、陽極層21は、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性酸化物など、透光性のある導電性物質を使用して形成されればよい。一方、陰極層23は、アルミニウム、フッ化リチウム(LiF)、MgAg合金、Al/LiF積層物、Al/Ca積層物、Al/Ba積層物、及びAl/MgAg積層物などを使用して形成されればよい。
【0032】
発光層22の材質としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン誘導体などの高分子発光材料、及び、TPB(テトラフェニルブタジエン)、ペリレン、クマリン、ルブレン、ナイルレッド、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−ジメチルアミノスチリル−4−ピラン)、DCJTB(4−ジシアノメチレン−6−シーピージュロリジノスチリル−2−ターシャルブチル−4H−ピラン)、スクアリリウム、アルミニウム錯体(例えばAlq3)などの低分子系材料が例示される。なお、発光層22は、公知の電子輸送層やホール輸送層などを含む多層構造でもよい。
【0033】
樹脂基板3、4の周縁には、素子本体2を取り囲むようにシールする溶着部5が形成されている。溶着部5は、後述の超音波処理が施された樹脂基板3、4の溶融部位が、その後の冷却固化によって接合することで形成される。本実施形態では、素子本体2の外側全周に亘って樹脂基板3、4が溶着されているため、平面視で溶着部5が素子本体2の全周を囲っている。つまり、素子本体2は、樹脂基板3、4と溶着部5とで囲まれた閉領域である封入部6内に収納されている。ただし、陽極層21および陰極層23の一部は、素子本体2から延設されて封入部6の外側に引き出されている。
【0034】
本実施形態の溶着部5は、前後方向(図1では上下方向)に延びる第一溶着部51と、左右方向(図1では左右方向)に延びる第二溶着部52とを含む。詳細には、有機EL素子1には、素子本体2を挟んで前後方向に延びる一対の第一溶着部51と、素子本体2を挟んで左右方向に延びる一対の第二溶着部52とが形成されている。第一溶着部51と第二溶着部52とが交差する四点が、それぞれ素子本体2の封入部6の四隅を構成する溶着重複部53である。
【0035】
溶着部5は、樹脂基板3、4が対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、素子本体2が配置されている樹脂基板3、4の平面に沿って延びている。さらに、溶着部5の延設方向は、凹凸の振幅方向と直交している。詳細には、前後方向に延びる第一溶着部51は、所定幅で左右方向に振幅する矩形波状で形成されている。左右方向に延びる第二溶着部52は、所定幅で前後方向に振幅する矩形波状で形成されている。以下では、第一溶着部51において、左側の輪郭線51Aが左側に突出する凹部の底部をなし、右側の輪郭線51Bは右側に突出する凸部の頂部をなすものとする。また、第二溶着部52において、上側の輪郭線52Aが前側に突出する凹部の底部をなし、下側の輪郭線52Bは後側に突出する凸部の頂部をなすものとする。
【0036】
つまり、溶着部5(第一溶着部51および第二溶着部52)は、連続した複数の凹凸を有するため、平面視で短い間隔で連続的に角(エッジ)が形成される線状をなす。溶着部5を幅方向に振れるように蛇行させることで、溶着部5全体として振幅方向の溶着幅を大きくすることができる。したがって、溶着部5自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板3、4を確実に溶着することができる。
【0037】
図3に示すように、溶着部5では、隣り合う凹凸における凸部の頂部と凹部の底部との延設方向の距離が、振幅方向に延びる溶着幅よりも大である。例えば、第一溶着部51では、左側の輪郭線51Aが最も左方向に振れた位置(図3に示す点P)が、凹部の底部を形成する。溶着部5は矩形波状であるため、各凹部における前後方向中心に点Pが位置している。一方、右側の輪郭線51Bが最も右方向に振れた位置(図3に示す点Q)が、凸部の頂部を形成する。溶着部5は矩形波状であるため、各凸部における前後方向中心に点Qが位置している。そして、隣り合う凹凸では、点Pと点Qとの前後方向の距離L1が、左右方向に延びる最大溶着幅L2よりも大きい。最大溶着幅L2は、溶着部5において最も大きい溶着幅である。例えば、第一溶着部51の最大溶着幅L2は、輪郭線51Aと輪郭線51Bとが最も離間する部位における左右方向長さである。
【0038】
このような距離関係によって、第一溶着部51と第二溶着部52とを、溶着幅よりも距離が大きい延設方向の線部分で交差させやすい。図3の例では、第一溶着部51および第二溶着部52は、それぞれの延設方向に延びる部位同士のみが交差して、互いが重複する範囲(つまり、溶着重複部53)を形成している。具体的には、溶着重複部53は、溶着部5(第一溶着部51および第二溶着部52)の溶着幅を四辺の長さとする正方形状である。
【0039】
図4および図5を参照して、超音波ミシン100の物理的構造について説明する。図4に示すように、超音波ミシン100は、超音波のエネルギーで熱可塑性樹脂を素材とするフィルムやシートなどを溶着または溶断する、公知の超音波ミシンである。超音波ミシン100は、ローラ保持部110、駆動ベルト120、ローラ200、支持台220などを備えている。
【0040】
ローラ200は、支持台220上の加工対象物に超音波を付与する金型である。ローラ200が有する円柱状の本体部201には、一対の回転軸202、ギア部203、環状体204が設けられている。一対の回転軸202は、本体部201の両端面中央から軸線方向に突出する軸体である。ギア部203は、本体部201を回転駆動するための動力を伝達するギアである。環状体204は、本体部201の周面の全周に亘って径外方向に突出する、所定の厚み(図4では左右方向長さ)を有するフランジ部である。
【0041】
ローラ保持部110は、図示しないミシンアームの頭部に設けられた、ローラ200を保持しつつ支持台220の上方で昇降自在な部位である。ローラ保持部110では、ローラ200が一対の回転軸202を介して回転支持される。図示しないが、ミシンアーム内には、ローラ200を回転させる動力を供給する駆動モータと、超音波を発振するホーンとが設けられている。駆動モータは、駆動ベルト120を介してギア部203と連結されている。つまり、駆動モータの動力が、駆動ベルト120を介してギア部203に伝達されて、ローラ200が一対の回転軸202を中心に回転する。また、ホーンが発振する超音波が、後述のパターン形成部205から射出される。
【0042】
支持台220は、加工対象物が載置される金属製の平板部である。本実施形態では、支持台220上に、加工対象物として樹脂基板3、4が素子本体2を挟んだ状態で載置されている。図4の例は、超音波溶着が行われる前の状態を示しているため、超音波ミシン100が処理前の待機位置に移動しており、環状体204が樹脂基板3、4から離間している。
【0043】
図5に示すように、環状体204の周面の全周に亘って、所定パターンでレール状に突出するパターン形成部205が設けられている。パターン形成部205は、ローラ200の回転方向に対して交差する稜線を有する。具体的には、パターン形成部205が有する左側の稜線205Aは、輪郭線51A、52A(図1、図3参照)と同一の矩形波状である。稜線205Aのうちで左右方向に延びる線分は、ローラ200の回転方向(図5では上下方向)と直交する。同様に、パターン形成部205が有する右側の稜線205Bは、輪郭線51B、52B(図1、図3参照)と同一の矩形波状である。稜線205Bのうちで左右方向に延びる線分は、ローラ200の回転方向(図5では上下方向)と直交する。
【0044】
図6および図7を参照して、超音波ミシン100を用いた有機EL素子1の製造工程について説明する。以下の説明では、樹脂基板3、4は、いずれもPETで形成された長尺のフィルムとする。
【0045】
図6に示すように、有機EL素子1の製造工程では、まず素子本体2を形成する素子形成工程(S1〜S5)が実行される。素子形成工程(S1〜S5)は、第一の電極形成工程(S1)と、発光層形成工程(S3)と、第二の電極形成工程(S5)とを含む。
【0046】
本実施形態では、第一の電極形成工程(S1)において、下基板3の上面に陽極層21を形成する。詳細には、下基板3の上面に、ITOを150nmの厚みで真空成膜する。成膜したITO上に露光用のポジ型レジストをダイコートによって塗布する。塗布したレジストを、所定のパターンが形成されたマスクを使用して露光する。マスク露光されたレジストを現像し、濃硝酸と濃塩酸の混合液である王水を用いてエッチングすることで、所定の電極パターンを有する陽極層21を形成する。
【0047】
次に、発光層形成工程(S3)において、陽極層21の上面に発光層22を形成する。詳細には、陽極層21の上面を、中性洗剤洗浄、アセトン洗浄、イソプロピルアルコール(IPA)洗浄、およびUVオゾン洗浄にて順次洗浄する。洗浄した陽極層21の上面に、ポリフルオレン誘導体を2wt%溶解させたシクロヘキシルベンゼン溶液をダイコートによって塗布することで、発光層22を形成する。
【0048】
次に、第二の電極形成工程(S5)において、発光層22の上面に陰極層23を形成する。詳細には、発光層22の上面にアルミニウムを蒸着することで、陰極層23を形成する。以上の素子形成工程(S1〜S5)によって、素子本体2が形成される。本実施形態では、長尺の下基板3に等間隔で複数の素子本体2を形成する。その後、素子本体2を樹脂基板3、4間に封止する封止工程(S7)を実行する。
【0049】
封止工程(S7)では、まず超音波ミシン100の支持台220上に、複数の素子本体2を等間隔で挟む樹脂基板3、4が載置される(図4参照)。このとき、環状体204が平面視で素子本体2に沿った位置を通るように、樹脂基板3、4を位置決めする。この状態で、ローラ保持部110を待機位置から降下させて、ローラ200を超音波処理の実行可能な位置(処理位置)まで移動させる。これにより、図7に示すように、環状体204の下端部が、隣り合う素子本体2の間で、上基板4を上方から加圧して下基板3に押圧する。また、パターン形成部205が上基板4に対して加圧された状態で保持される。
【0050】
なお、陽極層21および陰極層23が封入部6より外に延出している部分については、樹脂基板3、4とガラス転移点(Tg)が近似する樹脂材料を塗布して、その塗布部位上に溶着部5を形成することが好ましい。これにより、素子本体2を封入部6内に確実に封止しつつ、陽極層21および陰極層23を封入部6の外側に引き出すことができる。
【0051】
本実施形態では、溶着部5が所謂ロール・トゥ・ロール方式で形成される場合を例示する。すなわち、樹脂基板3、4は、それぞれ搬送元のロール(図示外)に巻回された状態から引き出され、支持台220上を経由して搬送先のロール(図示外)に巻き取られる。そして、支持台220上を経由するときに樹脂基板3、4が溶着されて、溶着部5が形成される。
【0052】
そこで、上記のようにローラ200が処理位置に移動している状態で、ローラ200で超音波処理を実行しつつ、ローラ200の回転駆動を行う。ローラ200の回転と同期して、樹脂基板3、4を搬送元のロールから搬送先のロールに向けて移動させる。樹脂基板3、4は支持台220上を経由するときに、パターン形成部205から付与される超音波のエネルギーによって溶着するため、素子本体2に沿って溶着部5が形成される。
【0053】
本実施形態のローラ200は、1回のロール・トゥ・ロール方式によるフィルムの送り出しで1ライン分の溶着部5を形成可能である。したがって、同一方向に複数ラインの溶着部5を形成する場合は、上記のロール・トゥ・ロール方式によるフィルムの送り出しを繰り返し実行する。溶着部5の形成方向を切り替える場合には、支持台220上を経由する樹脂基板3、4の搬送方向を変化させればよい。図1に示す例では、前後方向のロール・トゥ・ロールを2回行って、素子本体2を挟んで2つの第一溶着部51を形成している。その後、左右方向のロール・トゥ・ロール方式によるフィルムの送り出しを2回行って、素子本体2を挟んで2つの第二溶着部52を形成している。これにより、平面視で素子本体2を取り囲むように溶着部5が形成されて、素子本体2が封入部6内で完全に封止される。
【0054】
最後に、平面視で封入部6を含むような大きさおよび形状で、樹脂基板3、4を切断する。以上の封止工程(S7)によって、有機EL素子1が製造される。有機EL素子1では、パターン形成部205に対応する溶着部5が形成されている。図1に示す例では、2つの第一溶着部51が、稜線205A、205Bと同一パターンの輪郭線51A、51Bをそれぞれ有する。2つの第二溶着部52が、稜線205A、205Bと同一パターンの輪郭線52A、52Bをそれぞれ有する。つまり、第一溶着部51および第二溶着部52は、いずれもパターン形成部205と同一の矩形波状に形成されている。したがって、ローラ200を素子本体2に沿って回転させながら、樹脂基板3、4を超音波で溶着するだけで、素子本体2が封入部6内で封止された有機EL素子1を製造できる。
【0055】
ところで、上記のように複数方向にロール・トゥ・ロール方式によるフィルムの送り出しを行った場合、異なる方向に延びる溶着部5が交差する位置には、超音波処理が重複して実行される。図1に示す例では、2つの第一溶着部51と2つの第二溶着部52とが交差して、4つの溶着重複部53が形成される。各溶着重複部53では、第一溶着部51の形成時と第二溶着部52の形成時とで超音波処理が重複して実行される。そのため、溶着重複部53の形成面積が大きいほど、溶着重複部53近傍で樹脂基板3、4の変形が生じやすくなるおそれがある。
【0056】
本実施形態では、距離L1が最大溶着幅L2よりも大きくなるように、溶着部5の凹凸が形成される(図3参照)。そのため、第一溶着部51と第二溶着部52とを、最大溶着幅L2よりも距離が大きい延設方向の線部分(距離L1の範囲)で交差させやすい。つまり、第一溶着部51と第二溶着部52とが重複する領域(つまり、溶着重複部53)の形成面積を抑制しやすくなり、ひいては樹脂基板3、4の変形を抑制しやすくできる。
【0057】
以上説明した第一実施形態では、有機EL素子1を製造する超音波ミシン100において、ローラ200を用いた樹脂基板3、4の超音波溶着が行われる。このとき、素子本体2を取り囲むように溶着されるので、素子本体2が溶着部5によって樹脂基板3、4間に封止される。溶着部5は、連続した複数の凹凸を有するため、溶着部5自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板3、4間に素子本体2を確実に封止することができる。また、樹脂基板3、4の変形を抑制しやすくできる。
【0058】
本発明の第二実施形態について、図8〜図11を参照して説明する。以下の説明では、第一実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略し、第一実施形態と異なる点のみを説明する。
【0059】
図8に示すように、有機EL素子10は、第一実施形態の製造方法1と同様に、素子本体2および樹脂基板3、4を備える。また、溶着部50は、第一実施形態の溶着部5と同様に、樹脂基板3、4の周縁に設けられて、素子本体2を取り囲むようにシールする部位である。本実施形態でも、素子本体2の外側全周に亘って樹脂基板3、4が溶着されているため、平面視で溶着部5が素子本体2の全周を囲っている。ただし、溶着部50は、以下の点で溶着部5と異なっている。
【0060】
本実施形態の溶着部50は、第一縦溶着部151と、第二縦溶着部152と、一対の横溶着部153とを含む。第一縦溶着部151は、素子本体2の左側に沿って前後方向(図8では上下方向)に延びる。第二縦溶着部152は、素子本体2の右側に沿って前後方向(図8では上下方向)に延びる。一対の横溶着部153は、素子本体2を前後方向に挟んで設けられ、それぞれ第一縦溶着部151と第二縦溶着部152とに亘って左右方向(図8では左右方向)に延びる。第一縦溶着部151と一対の横溶着部153とが連結する2点と、第二縦溶着部152と一対の横溶着部153とが連結する2点とが、封入部6の四隅を構成する溶着連結部154である。
【0061】
第一縦溶着部151、第二縦溶着部152、および横溶着部153は、第一実施形態の溶着部5(第一溶着部51、第二溶着部52)と同様の形成パターンを有する(図3参照)。具体的には、第一縦溶着部151の輪郭線151A、151Bと、第二縦溶着部152の輪郭線152A、152Bと、横溶着部153の輪郭線153A、153Bとは、それぞれ第一実施形態の輪郭線51A、51Bと同一の矩形波状である。したがって、有機EL素子10は、第一実施形態と同様に、溶着部50自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板3、4を確実に溶着できる。
【0062】
図9および図10を参照して、超音波ミシン101の物理的構造について説明する。図9に示すように、超音波ミシン101は、第一実施形態の超音波ミシン100と同様の構成である。ただし、超音波ミシン101が備えるローラ300は、第一実施形態のローラ200と異なり、環状体204とは形状の異なる環状体304を備えている。環状体304は、本体部201の周面の全周に亘って径外方向に突出する、所定の厚み(図9では左右方向長さ)を有する左右一対のフランジ部と、各フランジをつなぐように左右方向に延びる突状部とを有する。
【0063】
図10に示すように、環状体304の周面には、所定パターンでレール状に突出するパターン形成部305が設けられている。パターン形成部305は、第一縦レール311と、第二縦レール312と、横レール313とを含む。第一縦レール311は、環状体304が有する左側のフランジ部の周面の全周に亘って設けられる。第二縦レール312は、環状体304が有する右側のフランジ部の周面の全周に亘って設けられる。横レール313は、環状体304が有する突状部の表面に沿って左右方向に延び、第一縦レール311および第二縦レール312に連結される。横レール313が第一縦レール311および第二縦レール312と連結される部位が、それぞれレール連結部314である。
【0064】
パターン形成部305は、第一実施形態のパターン形成部205と同様に、ローラ300の回転方向に対して交差する稜線を有する。具体的には、第一縦レール311が有する稜線311A、311Bは、第一縦溶着部151の輪郭線151A、151Bと同一の矩形波状である。第二縦レール312が有する稜線312A、312Bは、第二縦溶着部152の輪郭線152A、152Bと同一の矩形波状である。横レール313が有する稜線313A、313Bは、横溶着部153の輪郭線153A、153Bと同一の矩形波状である。これらの稜線311A、311B、312A、312B、313A、313Bのうちで左右方向に延びる線分は、ローラ300の回転方向(図10では上下方向)と直交する。なお、レール連結部314の形状は、溶着連結部154と同一である。
【0065】
図11を参照して、超音波ミシン101を用いた有機EL素子10の製造工程について説明する。本実施形態の製造工程は、第一実施形態の製造工程(図6参照)と同様であるが、封止工程(S7)の詳細が異なる。
【0066】
すなわち、封止工程(S7)では、まず超音波ミシン101の支持台220上に、複数の素子本体2を等間隔で挟む樹脂基板3、4が載置される(図4参照)。このとき、環状体304が有する一対のフランジ部が素子本体2を挟んだ両側を通るように、樹脂基板3、4を位置決めする。この状態で、ローラ保持部110を待機位置(図9参照)から降下させて、ローラ300を処理位置まで移動させる。これにより、図11に示すように、環状体304が有する一対のフランジ部が、それぞれ素子本体2を挟んだ左右両側で、上基板4を上方から加圧して下基板3に押圧する。また、パターン形成部305が上基板4に対して加圧された状態で保持される。
【0067】
上記のようにローラ300が処理位置に移動している状態で、ローラ300で超音波処理を実行しつつ、ローラ300の回転駆動を行う。ローラ300の回転と同期して、樹脂基板3、4を搬送元のロールから搬送先のロールに向けて移動させる。樹脂基板3、4は支持台220上を経由するときに、パターン形成部305から付与される超音波のエネルギーによって溶着するため、素子本体2に沿って溶着部50が形成される。
【0068】
本実施形態のローラ300は、1回のロール・トゥ・ロール方式によるフィルムの送り出しで素子本体2を取り囲む溶着部50を一括形成することができる。図1に示す例では、前後方向のロール・トゥ・ロール方式によるフィルムの送り出しを行うと、素子本体2を挟んだ左右両側に第一縦溶着部151および第二縦溶着部152が形成される。また、ローラ300が一回転するごとに横溶着部153が形成される。つまり、横溶着部153が前後方向の所定間隔ごとに形成される結果、素子本体2を挟んだ前後両側に横溶着部153が形成される。したがって、溶着部50を形成するために、支持台220上を経由する樹脂基板3、4の搬送方向を変化させる必要がない。
【0069】
最後に、平面視で封入部6を含むような大きさおよび形状で、樹脂基板3、4を切断する。以上の封止工程(S7)によって、有機EL素子10が製造される。有機EL素子10では、パターン形成部305に対応する溶着部50が形成されている。図8に示す例では、第一縦溶着部151、第二縦溶着部152、および横溶着部153は、それぞれ、パターン形成部305に含まれる第一縦レール311と、第二縦レール312と、横レール313と同一の矩形波状に形成されている。したがって、ローラ300を素子本体2に沿って一方向に回転させながら、樹脂基板3、4を超音波で溶着するだけで、有機EL素子10を一括して製造できる。
【0070】
さらに、ローラ300を一方向に回転させるだけで溶着部50が形成されるため、形成方向が異なる溶着部の交差する位置で超音波処理が重複して実行されることが抑制される。図8に示す例では、封入部6の四隅を構成する溶着連結部154も、1回の超音波処理でレール連結部314に応じて形成されるため、超音波処理の重複は生じない。したがって、レール連結部314の近傍で樹脂基板3、4の変形が生じにくい。
【0071】
以上説明した第二実施形態では、有機EL素子10を製造する超音波ミシン101において、ローラ300を用いた樹脂基板3、4の超音波溶着が行われる。このとき、素子本体2を取り囲むように溶着されるので、素子本体2が溶着部50によって樹脂基板3、4間に封止される。溶着部50は連続した複数の凹凸を有するため、第一実施形態と同様に、樹脂基板3、4間に素子本体2を確実に封止することができ、且つ、樹脂基板3、4の変形を抑制しやすくできる。さらに、有機EL素子1を正確に大量生産することができる。
【0072】
ところで、上記実施形態において、有機EL素子1、10が本発明の「電気素子」に相当する。第一縦溶着部151および第二縦溶着部152が、本発明の「第一溶着部」に相当する。横溶着部153が、本発明の「第二溶着部」に相当する。超音波ミシン100、101が、本発明の「超音波加工装置」に相当する。パターン形成部205と、第一縦レール311および第二縦レール312とが、本発明の「環状突起」にそれぞれ相当する。駆動モータ(図示外)が、本発明の「回転駆動部」に相当する。ホーン(図示外)が、本発明の「超音波駆動部」に相当する。第一縦レール311および第二縦レール312が、本発明の「一対の環状突起」に相当する。横レール313が、本発明の「列状突起」に相当する。稜線311A、311B、312A、312Bが、本発明の「第一の稜線」に相当する。稜線313A、313Bが、本発明の「第二の稜線」に相当する。ステップS1〜S7が本発明の「配置工程」に相当し、ステップS7が本発明の「溶着工程」に相当する。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更が可能である。例えば、溶着部は、連続した複数の凹凸を形成するように樹脂基板の平面に沿って延びていれば、他のパターンで形成されてもよい。図12〜図15は、別パターンの溶着部が形成された有機EL素子を例示している。
【0074】
図12に示す有機EL素子11では、前後方向に延びる正弦波状に形成された溶着部56によって、素子本体2が封止されている。正弦波状の溶着部56でも、先述の溶着部5、50と同様に、溶着部56全体として振幅方向の溶着幅を大きくすることができる。そのため、溶着部56自体の溶着幅が小さい場合でも、ガラス転移点が高い樹脂基板3、4を確実に溶着することができ、且つ樹脂基板3、4の変形を抑制しやすくできる。
【0075】
図13に示す有機EL素子12では、左右対称の凹凸が連続して形成された溶着部57によって、素子本体2が封止されている。図14に示す有機EL素子13では、前後方向に延びる中心線部分から左右交互に突出するように凸部が連続して形成された溶着部58によって、素子本体2が封止されている。図15に示す有機EL素子14では、前後方向に延びる三角波状に形成された溶着部59によって、素子本体2が封止されている。
【0076】
つまり、図12〜図15に示すいずれの溶着パターンであっても、溶着部全体として振幅方向の溶着幅を大きくすることができるため、ガラス転移点が高い樹脂基板3、4を確実に溶着することができる。また、距離L1が最大溶着幅L2よりも大きくなるように輪郭線の凹凸が形成されているため、交差する方向に延びる溶着部をその延設方向の線部分で交差させやすい。したがって、上記実施形態と同様に、ガラス転移点が高い樹脂基板3、4の変形を抑制しつつ、樹脂基板3、4間に素子本体2を確実に封止することができる。
【0077】
このように、溶着部の形成パターンは、適宜変更可能である。なお、溶着部のパターンを変更する場合には、その溶着部に対応するパターン形成部が設けられたローラを使用して、超音波ミシンで樹脂基板の溶着を行えばよい。上記変形例において、有機EL素子11〜14が本発明の「電気素子」に相当する。
【符号の説明】
【0078】
1 有機EL素子
2 素子本体
3 下基板
4 上基板
5 溶着部
6 封入部
10 有機EL素子
11 有機EL素子
12 有機EL素子
13 有機EL素子
14 有機EL素子
21 陽極層
22 発光層
23 陰極層
50 溶着部
51 第一溶着部
52 第二溶着部
56 溶着部
57 溶着部
58 溶着部
59 溶着部
100 超音波ミシン
101 超音波ミシン
151 第一縦溶着部
152 第二縦溶着部
153 横溶着部
200 ローラ
205 パターン形成部
300 ローラ
305 パターン形成部
311 第一縦レール
312 第二縦レール
313 横レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子本体と、
前記素子本体を挟んで対向配置される一対の樹脂基板と、
前記一対の樹脂基板の対向する方向からみて前記電気素子を取り囲むように、前記一対の樹脂基板が溶着された溶着部とを備え、
前記溶着部は、前記対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、前記素子本体が配置されている前記樹脂基板の平面に沿って延びることを特徴とする電気素子。
【請求項2】
前記溶着部が延びる方向である延設方向は、前記凹凸の振幅方向と直交し、
隣り合う前記凹凸における凸部の頂部と凹部の底部との前記延設方向の距離は、前記振幅方向に延びる最大溶着幅よりも大であり、
前記溶着部は、第一の方向に延びる第一溶着部と、前記第一の方向と交差する第二の方向に延びる第二溶着部とを含み、
前記第一溶着部と前記第二溶着部とは、各々の前記延設方向に延びる部位同士で交差することを特徴とする請求項1に記載の電気素子。
【請求項3】
前記素子本体は、EL素子であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電気素子を製造する超音波加工装置であって、
周面の全周に亘って連続形成された環状突起を有し、中心軸まわりに回転自在なローラと、
前記ローラを前記中心軸まわりに回転させる回転駆動部と、
前記環状突起から超音波を射出させる超音波駆動部とを備え、
前記環状突起は、前記複数の凹凸に対応して、前記ローラの回転方向に対して交差する稜線を有することを特徴とする超音波加工装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電気素子を製造する超音波加工装置であって、
周面の全周に亘って連続して並行に形成された一対の環状突起と、前記周面に等間隔で設けられ、前記中心軸と平行に延びる列状突起とを有し、中心軸まわりに回転自在なローラと、
前記ローラを前記中心軸まわりに回転させる回転駆動部と、
前記一対の環状突起と前記列状突起とから超音波を射出させる超音波駆動部とを備え、
前記一対の環状突起は、前記第一の方向に延びる前記複数の凹凸に対応して、前記ローラの回転方向に対して交差する第一の稜線を有し、
前記列状突起は、前記第二の方向に延びる前記複数の凹凸に対応して、前記第一の稜線と交差する第二の稜線を有することを特徴とする超音波加工装置。
【請求項6】
中心軸まわりに回転自在なローラを備えた超音波加工装置で電気素子を製造する方法であって、
前記ローラは、周面の全周に亘って連続形成された環状突起を有し、
前記環状突起は、前記ローラの回転方向に対して交差する稜線を有しており、
素子本体を挟んで前記一対の樹脂基板を配置する配置工程と、
前記一対の樹脂基板に押し当てた前記ローラを回転させながら、前記環状突起から超音波を射出することで、前記一対の樹脂基板の対向する方向からみて前記電気素子を取り囲むように、前記一対の樹脂基板が溶着された溶着部を形成する溶着工程とを備え、
前記溶着工程では、前記稜線に対応する前記溶着部の輪郭線が前記対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、前記素子本体が配置されている前記樹脂基板の平面に沿って延びる前記溶着部を形成することを特徴とする電気素子の製造方法。
【請求項7】
中心軸まわりに回転自在なローラを備えた超音波加工装置で電気素子を製造する方法であって、
前記ローラは、周面の全周に亘って連続して並行に形成された一対の環状突起と、前記周面に等間隔で設けられ、前記中心軸と平行に延びる列状突起とを有し、
前記一対の環状突起は、前記ローラの回転方向に対して交差する第一の稜線を有し、
前記列状突起は、前記第一の稜線と交差する第二の稜線を有しており、
素子本体を挟んで前記一対の樹脂基板を配置する配置工程と、
前記一対の樹脂基板に押し当てた前記ローラを回転させながら、前記一対の環状突起および前記列状突起から超音波を射出することで、前記一対の樹脂基板の対向する方向からみて前記電気素子を取り囲むように、前記一対の樹脂基板が溶着された溶着部を形成する溶着工程とを備え、
前記溶着工程では、前記第一の稜線および前記第二の稜線に対応する前記溶着部の輪郭線が前記対向する方向からみて連続した複数の凹凸を形成するように、前記素子本体が配置されている前記樹脂基板の平面に沿って延びる矩形状の前記溶着部を一括形成することを特徴とする電気素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−69480(P2012−69480A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215436(P2010−215436)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】