説明

電気自動車

【課題】冷房の使用による走行距離の著しい減少を抑えることができる新規電気自動車を提供する。
【解決手段】蓄電池に蓄えられた電気により走行駆動する電気自動車1に、ガスハイドレートを貯蔵するガスハイドレート貯蔵容器10と、前記ガスハイドレートの冷熱を利用して前記電気自動車内を冷却する熱交換器20と、前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを燃料とするエンジン40と、前記エンジン40を動力源として発電する発電機45と、前記発電機45により得られた電気を蓄える前記蓄電池50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレートを備えた電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
現代において環境問題への取組み等のために電気自動車の普及が期待されているところであるが、電気自動車で冷房を使用すると電気が消費されるため走行距離が著しく減少するという問題がある。従来、このような問題を解決すべく、電気自動車用のヒートポンプ式空調装置(特許文献1参照)などの装置が開発されている。
【特許文献1】特開平11−105537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、冷房の使用による走行距離の著しい減少を抑えることができる新規電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の発明は、蓄電池に蓄えられた電気により走行駆動する電気自動車において、ガスハイドレートを貯蔵するガスハイドレート貯蔵容器と、前記ガスハイドレートの冷熱を利用して前記電気自動車内を冷却する熱交換器と、前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを燃料とするエンジンと、前記エンジンを動力源として発電する発電機と、前記発電機により得られた電気を蓄える前記蓄電池と、を備えることを特徴とする電気自動車である。
本発明により、冷房の使用による走行距離の著しい減少を抑えることができる新規電気自動車を提供することができる。
【0005】
第二の発明は、第一の発明に記載の電気自動車において、前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを貯蔵するガスタンクをさらに備えることを特徴とする電気自動車である。
この発明により、ガスハイドレートから分離生成したガスを利用したいときに利用することができるようになる。
【0006】
第三の発明は、第一の発明に記載の電気自動車において、前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成される水の冷熱を利用して前記電気自動車内を冷却する熱交換器をさらに備えることを特徴とする電気自動車である。
本発明により、ガスハイドレートから分離生成される水の冷熱も有効に利用することができるようになる。
【0007】
第四の発明は、第一の発明に記載の電気自動車において、前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを燃焼することにより得られる温熱を利用して前記電気自動車内を暖める熱交換器をさらに備えることを特徴とする電気自動車である。
この発明により、寒い季節に、ガスハイドレートから分離生成されるガスを燃焼することにより得られる温熱を有効に利用して電気自動車内を暖めることができるようになる。
【0008】
第五の発明は、第一の発明に記載の電気自動車において、前記ガスハイドレート貯蔵容器を冷却する冷却装置をさらに備えることを特徴とする電気自動車である。
この発明により、ガスハイドレート貯蔵容器内のガスハイドレートの気化を抑制することができるようになる。
【0009】
第六の発明により、第一の発明に記載の電気自動車において、外部から蓄電池に電気を補充する手段をさらに備えることを特徴とする電気自動車である。
この発明により、ガスハイドレートから分離生成される燃料ガスを用いることにより得られる電気以外に、電気自動車を走行させない深夜時間帯の深夜電力を利用して蓄電池に電気を蓄えることが可能となり、電気自動車の走行距離を増加させることができるようになる。
【0010】
第七の発明は、第五の発明に記載の電気自動車において、外部から前記冷却装置に電気を供給する手段をさらに備えることを特徴とする電気自動車である。
この発明により、電気自動車を走行させない時に蓄電池の電気を使用することなく、ガスハイドレート貯蔵容器内のガスハイドレートの気化を抑制することができるようになる。
【0011】
なお、上述の電気自動車は、例えば、電気単独で走行駆動するものであっても構わないが、ガソリン、軽油、又は燃料ガスと電気とで走行駆動するものであっても構わない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷房の使用による走行距離の著しい減少を抑えることができる新規電気自動車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である電気自動車1の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態の電気自動車1は、ガスハイドレート貯蔵容器10と、第一の熱交換器20と、ガスタンク30と、エンジン40と、発電機45と、蓄電池50と、モータ55と、ハイドレート冷却装置60と、コンセント70と、第二の熱交換器80などを備えている。
【0014】
ガスハイドレート貯蔵容器10は、耐圧性及び断熱性に優れた容器であって、ガスハイドレートを貯蔵することのできる容器である。
【0015】
第一の熱交換器20は、ガスハイドレート貯蔵容器10内のガスハイドレートの冷熱を利用して電気自動車1の車内を冷却する装置である。なお、本実施の形態においては、第一の熱交換器20により、ガスハイドレートの冷熱を利用して電気自動車1の車内を冷却することとしているが、ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成される水の冷熱を利用して電気自動車1の車内を冷却する熱交換器を別途設けることとしてもよい。これにより、ガスハイドレートから分離生成される水の冷熱を有効に利用することができ、電気自動車1の車内の冷却効率を高めることが可能となる。
【0016】
ガスタンク30は、第一の熱交換器20においてガスハイドレートから分離生成したガスを貯蔵する容器である。これにより、ガスハイドレートから分離生成したガスを利用したい時に利用することができるようになる。
【0017】
エンジン40は、第一の熱交換器20において冷熱を提供することによりガスハイドレートから分離生成されるガスを燃料として駆動する装置である。なお、前記ガスハイドレートとしては、第一の熱交換器20において冷熱を提供することにより、エンジンの燃料となる燃料ガスを生成するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、天然ガスハイドレート、メタンハイドレート、エタンハイドレート、プロパンハイドレート、ブタンハイドレート、水素ハイドレート等を用いることができる。
【0018】
発電機45は、エンジン40を動力源として発電する装置である。
蓄電池50は、発電機45により得られた電気を蓄える装置である。なお、本実施の形態においては、発電機45により得られる交流の電気をコンバータ51により変換した直流の電気を蓄電池50に蓄えることとしている。
【0019】
モータ55は、蓄電池50に蓄えられた電気で車輪56を駆動することにより電気自動車1を走行させる装置である。モータ55は、電気自動車1の減速時に車輪56の動力を利用して発電することができるものであることが好ましい。これにより、発電した電気を蓄電池50に蓄えることができるようになる。なお、本実施の形態においては、モータ55を交流の電気で駆動することとしており、交流の電気は蓄電池50に蓄えられた直流の電気をインバータ52により変換することにより得ることとしている。
【0020】
上述のように、本発明に係る電気自動車1は、電気で駆動させたモータ55の動力のみによって走行駆動するものであってもよく、電気で駆動させたモータ55と、ガソリン、軽油、又は燃料ガス(例えば、プロパンガスなど)を燃料として駆動するエンジンとの動力によって走行駆動するハイブリッド自動車であってもよい。ガソリン、軽油、又は燃料ガス(例えば、プロパンガスなど)を燃料として駆動するエンジンは、上述のエンジン30とは別に設けることとしてもよいが、ガソリン、軽油、又は燃料ガスを燃料として駆動できる上述のエンジン30を用いることとしてもよい。
【0021】
ハイドレート冷却装置60は、ガスハイドレート貯蔵容器10内を冷却する装置である。この装置60を電気自動車1に備えることにより、ガスハイドレート貯蔵容器10内のガスハイドレートを冷却することができるので、ガスハイドレートの気化を抑制することが可能となる。なお、ハイドレート冷却装置60は、発電機45により得られた電気、蓄電池50に蓄えられた電気などにより運転される。
【0022】
コンセント70は、外部(例えば、電気が供給されている施設、電力会社など)から供給される電気を蓄電池50やハイドレート冷却装置60に提供するものである。これにより、電気自動車1を走行させない深夜時間帯の深夜電力を利用して蓄電池50に電気を蓄えたり、電気自動車1を走行させない時に蓄電池50の電気を使用することなく、ガスハイドレート貯蔵容器10内のガスハイドレートの気化を抑制したりすることが可能となる。
【0023】
第二の熱交換器80は、ガスハイドレートから分離生成されるガスを燃焼することにより得られる温熱を利用して電気自動車1の車内を暖める装置である。これにより、寒い季節などに、ガスハイドレートから分離生成されるガスを燃焼することにより得られる温熱を有効に利用することができるようになる。
【0024】
以上の通り、本発明に係る電気自動車1は、ガスハイドレート貯蔵容器10に貯蔵されたガスハイドレートの冷熱を利用して電気自動車1内を冷却することができるので、蓄電池50の電気を冷房に使用することによる走行距離の著しい減少を抑えることが可能となる。
【0025】
また、第一の熱交換器20において、ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを用いて発電させ、得られた電気を蓄電池50に蓄えることができ、電気自動車1の動力源として使用できるようになる。また、電気自動車1が燃料ガスと電気とで走行駆動するハイブリッド自動車である場合には、ガスハイドレートから分離生成されるガスを燃料とすることもできる。
【0026】
さらに、本発明においては液化燃料ガスを使用するのではなく、ガスハイドレートを使用することとしているので安全性の面で優れている。
【0027】
次に、本発明の他の一実施形態として、ハイブリッド自動車201を説明する。図2は、ハイブリッド自動車201の全体構成を示す図である。
ハイブリッド自動車201は、電気自動車1に、燃料タンク231と第二エンジン241とを付加した構成となっている。
【0028】
燃料タンク231は、ガソリン、軽油、又は燃料ガスが貯蔵されている。第二エンジン241は、燃料タンク231に貯蔵されたガソリン、軽油、又は燃料ガスを燃料としてハイブリッド自動車201を駆動する。すなわち、ハイブリッド自動車201は、ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを燃料とする第一エンジン40とモータ55とに加えて、前記第二のエンジン241により、ハイブリッド自動車201を駆動することができる。
【0029】
これにより、本発明をハイブリッド自動車においても実施することができる。すなわち、本発明によらないハイブリッド自動車で冷房を使用すると、冷却装置のヒートポンプは電気又はエンジンの動力により駆動されるので、その分走行距離が減少することとなる。しかし、本発明ではガスハイドレートの冷熱を利用してハイブリッド自動車201の車内を冷却するので、走行距離の減少を抑えることができる。よって、本発明はハイブリッド自動車においても有効に機能する。
【0030】
図3は、本発明において、他の一実施形態として説明するハイブリッド自動車301の全体構成を示す。
【0031】
ハイブリッド自動車301は、自動車201に、第二発電機346を付加した構成となっている。第二発電機346は、第二エンジン41の動力を利用して発電し、その電気を蓄電池50に蓄える。なお、第二エンジン41の動力は、第二発電機346での発電のみに利用することとしてもよいし、発電と併せてハイブリッド自動車301の駆動に利用してもよい。
これにより、ハイブリッド自動車301も、図2に示したハイブリッド自動車201と同様に本発明を実施することができ、同様の効果を得ることができる。
【0032】
なお、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態である電気自動車1の全体構成図である。
【図2】本発明において、他の実施形態として説明するハイブリッド自動車201の全体構成を示す図である。
【図3】本発明において、他の実施形態として説明するハイブリッド自動車301の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電気自動車
10 ガスハイドレート貯蔵容器
20 第一熱交換器
30 ガスタンク
40 エンジン
45 発電機
50 蓄電池
55 モータ
56 車輪
60 ハイドレート冷却装置
70 コンセント
80 第二熱交換器
201 ハイブリッド自動車
231 燃料タンク
241 第二エンジン
301 ハイブリッド自動車
346 第二発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池に蓄えられた電気により走行駆動する電気自動車において、
ガスハイドレートを貯蔵するガスハイドレート貯蔵容器と、
前記ガスハイドレートの冷熱を利用して前記電気自動車内を冷却する熱交換器と、
前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを燃料とするエンジンと、
前記エンジンを動力源として発電する発電機と、
前記発電機により得られた電気を蓄える前記蓄電池と、
を備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車において、
前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成される水の冷熱を利用して前記電気自動車内を冷却する熱交換器
をさらに備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項3】
請求項1記載の電気自動車において、
前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを貯蔵するガスタンク
をさらに備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項4】
請求項1記載の電気自動車において、
前記ガスハイドレートが冷熱を提供することにより分離生成されるガスを燃焼することにより得られる温熱を利用して前記電気自動車内を暖める熱交換器
をさらに備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項5】
請求項1記載の電気自動車において、
前記ガスハイドレート貯蔵容器を冷却する冷却装置
をさらに備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項6】
請求項1記載の電気自動車において、
外部から蓄電池に電気を補充する手段
をさらに備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項7】
請求項5記載の電気自動車において、
外部から前記冷却装置に電気を供給する手段
をさらに備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項8】
請求項1記載の電気自動車において、
ガソリン、軽油、又は燃料ガスと電気とで走行駆動するハイブリッド自動車であることを特徴とする電気自動車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237796(P2007−237796A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59820(P2006−59820)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】