説明

電気自動車

【課題】インサート部材の補強プレートを樹脂部の正確な位置に埋設することができるバッテリケースを備えた電気自動車を提供する。
【解決手段】 サイドメンバを含むフレーム構体と、フレーム構体に固定されるバッテリユニットとを具備した電気自動車において、バッテリユニットは、トレイ部材51を含むバッテリケースを有している。トレイ部材51は、電気絶縁性の樹脂からなる樹脂部53と、樹脂部53に埋設されたインサート部材200とを有している。インサート部材200は、仕切り壁51fに埋設される金属製の補強プレート201を含んでいる。補強プレート201に位置決め部250が設けられている。位置決め部250によって、補強プレート201の位置決めがなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを電源とするモータによって走行する電気自動車に係り、特に前記バッテリを収納するためのバッテリケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に使用されるバッテリユニットは、バッテリモジュールと、該バッテリモジュールを収納するバッテリケースなどを含んでいる。バッテリケースの一例は、バッテリモジュールを乗せるトレイ部材と、該トレイ部材の上部を覆うカバー部材などを有している。トレイ部材とカバー部材の一例は、電気絶縁性を有する材料である樹脂によって形成されている。
【0003】
特に大容量のバッテリモジュールを収納する大形のバッテリケースでは、バッテリモジュールの重量に耐えるように、また衝突時の破損を最小限度に抑えるために、大きな剛性を有していることが望まれる。このため、例えば下記特許文献1に開示されているように、バッテリケースの表面に金属プレートを設けることが提案されている。
【特許文献1】特開2007−35393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、バッテリケースの樹脂部の表面に金属プレートを設ける構成では、例えば衝突時などにバッテリケースに大きな衝撃が加わったときに、金属プレートが樹脂部の表面から剥離するおそれがある。このため金属プレートを樹脂部にインサートすることが望まれる。しかし長尺な金属プレートは、樹脂部を一体成形する際に金属プレートの位置が不安定になりやすく、金属プレートを樹脂部の所定位置に埋設させることがむずかしいことがある。樹脂部に埋設された金属プレートの一部が樹脂部の表面(特にバッテリケースの内面)に露出すると、金属プレートが電気的な短絡(ショート)の原因となることが懸念される。
【0005】
従って本発明の目的は、インサート部材の補強プレートを樹脂部の所定位置に埋設することができるバッテリケースを備えた電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体に配置される左右一対のサイドメンバを含むフレーム構体と、前記フレーム構体に固定されるバッテリユニットとを具備した電気自動車において、前記バッテリユニットはトレイ部材を含むバッテリケースを有し、前記トレイ部材は、電気絶縁性を有する樹脂によって周壁と底壁および仕切り壁を形成してなる樹脂部と、前記樹脂部に埋設されたインサート部材とを有し、前記インサート部材は前記仕切り壁に埋設される金属製の補強プレートを含み、該補強プレートに、前記仕切り壁の両側面に対する該補強プレートの厚さ方向の位置を規制するための位置決め部が設けられている。
【0007】
本発明の1つの形態では、前記位置決め部は、前記補強プレートの一部を該補強プレートの厚さ方向の両側に切り起こしてなる一対の突片であり、該突片を切り起こすことによって形成された孔に前記樹脂部の樹脂の一部が入り込んで硬化している。
前記突片が前記仕切り壁の上下方向に沿うよう形成され、かつ、前記トレイ部材の周壁(前壁、後壁、側壁)と底壁および仕切り壁がスタンピング成形によって一体成形されていてもよい。
【0008】
本発明の他の形態では、前記補強プレートに該補強プレートの厚さ方向に貫通する孔が形成され、この孔に電気絶縁性の材料からなる位置決め部材が挿入されている。
また、前記補強プレートに該補強プレートの厚さ方向に貫通する孔が形成され、この孔に前記樹脂部の樹脂の一部が入り込んで硬化していてもよい。
【0009】
前記インサート部材の一例は、前記トレイ部材の前壁に埋設されて前記車体の幅方向に延びる金属製の枠部材と、前端が前記枠部材に固定されて車体の前後方向に延びる前記補強プレートとを有し、該補強プレートの前後方向の後半部に前記位置決め部が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気自動車のバッテリケースのトレイ部材を、補強プレートを備えたインサート部材によって補強することができ、しかも補強プレートを樹脂部の所定位置に埋設することができる。このため電気絶縁性の樹脂部によって補強プレートを絶縁することができ、かつ、トレイ部材を効果的に補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の第1の実施形態について、図1から図11を参照して説明する。
図1は電気自動車10の一例を示している。この電気自動車10は、車体11の後部に配置された走行用のモータ12および充電装置13と、車体11の床下に配置されるバッテリユニット14などを備えている。車体11の前部に冷暖房用の熱交換ユニット15が配置されている。
【0012】
この自動車10の前輪20は、図示しないフロントサスペンションによって車体11に支持されている。後輪21は、図示しないリヤサスペンションによって車体11に支持されている。リヤサスペンションの一例は、トレーリングアーム式リヤサスペンションである。
【0013】
図2は、前記車体11の下部の骨格をなすフレーム構体30と、このフレーム構体30に取付けられる前記バッテリユニット14とを示している。
フレーム構体30は、車体11の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ31,32と、車体11の幅方向に延びるクロスメンバ33,34,35とを含んでいる。クロスメンバ33,34,35は、サイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。
【0014】
サイドメンバ31,32の後部にサスペンションアームサポートブラケット40,41が設けられている。サスペンションアームサポートブラケット40,41は、それぞれサイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。サスペンションアームサポートブラケット40,41に枢軸部42が設けられている。これら枢軸部42に、前記トレーリングアームの前端部が取付けられている。
【0015】
図3に示すようにバッテリユニット14はバッテリケース50を備えている。バッテリケース50は、下側に位置するトレイ部材51と、上側に位置するカバー部材52とを備えている。
【0016】
トレイ部材51は、電気絶縁性を有する樹脂によって一体成形された樹脂部53と、後述するインサート部材200(図7に示す)によって構成されている。樹脂部53の材料である樹脂は、例えばポリプロピレンからなる基材を、数mm〜数cm程度の長さの短ガラス繊維によって強化したものである。
【0017】
トレイ部材51は、前壁51aと、後壁51bと、左右一対の側壁51c,51dと、底壁51eと、仕切り壁51f,51gとを有し、上面側が開放した箱形に成形されている。前壁51aは、車体11の前後方向に関して前側に位置している。後壁51bは後側に位置している。仕切り壁51f,51gは前後方向に延びている。
【0018】
これら前壁51aと、後壁51bと、側壁51c,51dとによって、トレイ部材51の周壁が構成されている。このトレイ部材51は、後述するスタンピング成形によって、樹脂部53の内部の所定位置にインサート部材200が埋設されている。
【0019】
バッテリケース50の前半部に、前側バッテリ収納部55が形成されている。バッテリケース50の後半部に、後側バッテリ収納部56が形成されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に、中央バッテリ収納部57と、電気回路収納部58などが形成されている。
【0020】
前記バッテリ収納部55,56,57に、それぞれバッテリモジュール60(図3に一部のみ2点鎖線で示す)が収納されている。バッテリモジュール60の一例は、リチウムイオン電池からなる複数個のセルを直列に接続したものである。
【0021】
電気回路収納部58には、バッテリモジュール60の状態を検出するモニタや制御等をつかさどる電気部品61(図3と図7に一部を模式的に示す)などが収納される。電気部品61はバッテリモジュール60に電気的に接続されている。
【0022】
図4に示すように、バッテリユニット14はフロアパネル70の下面側に配置されている。フロアパネル70は車体11の前後方向と幅方向に延び、車体11の床部を構成している。フロアパネル70は、サイドメンバ31,32を含むフレーム構体30の所定位置に溶接によって固定されている。
【0023】
フロアパネル70の上方にフロントシート71(図1に示す)とリヤシート72が配置されている。フロントシート71の下方に、バッテリユニット14の前側バッテリ収納部55が配置されている。リヤシート72の下方に、バッテリユニット14の後側バッテリ収納部56が配置されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に形成されたフロアパネル70の凹部70aは、リヤシート72に着座した乗員の足元スペース付近に位置する。
【0024】
バッテリケース50のトレイ部材51の上面の周縁部に、カバー取付面80(図3に示す)が形成されている。カバー取付面80は、トレイ部材51の全周にわたって連続している。カバー取付面80の上に防水用のシール材81が設けられている。
【0025】
図7に示されるようにインサート部材200は、トレイ部材51の前半部に配置された3枚の枠部材200a,200b,200cと、トレイ部材51の後半部に配置された3枚の枠部材200d,200e,200fとを含んでいる。これら枠部材200a〜200fは、金属板(例えば鋼板)のプレス成形品である。
【0026】
前側の枠部材200a,200b,200cは、それぞれトレイ部材51の前壁51aと両側壁51c,51dに埋設されている。これら枠部材200a,200b,200cによってトレイ部材51の周壁が補強されている。前側中央の枠部材200aは車体11の幅方向に延びている。
【0027】
枠部材200aの両端に、左右一対の補強プレート201が設けられている。これら補強プレート201は互いに共通の構造であるため、一方の補強プレート201を代表して以下に説明する。
【0028】
補強プレート201はトレイ部材51の仕切り壁51fに埋設されている。図8に示すように、補強プレート201の前端201aは枠部材200aに取付けられている。補強プレート201の後端201bは車体11の後側に向かって延びている。すなわちこの補強プレート201は車体11の前後方向に延びている。
【0029】
補強プレート201には、樹脂部53との食い付きを良くするために、複数の孔202が形成されている。これらの孔202は補強プレート201の厚さ方向に貫通している。これらの孔202のそれぞれに樹脂部53の樹脂の一部が入り込んで硬化しているため、樹脂部53に対する補強プレート201の固定強度を大きくすることができている。
【0030】
図7〜図9に示すように、補強プレート201に位置決め部250が設けられている。この位置決め部250によって、仕切り壁51fの両側面251,252(図8に示す)に対する補強プレート201の厚さ方向の位置が規制されている。
【0031】
図10に示すように位置決め部250は、補強プレート201の一部を厚さ方向の両側に切り起こしてなる一対の突片255,256によって構成されている。突片255,256の間に孔257が形成されている。突片255,256は、仕切り壁51fの上下方向、すなわちスタンピング成形時に材料の流れに沿うように形成されている。
【0032】
このトレイ部材51は、図11に模式的に示す下型260と上型261によって、材料262を矢印Pで示す方向に加圧することにより、周壁(前壁51a、後壁51b、側壁51c,51d)と、底壁51eと、仕切り壁51f,51gとが、所定の形状に一体成形される。下型260には仕切り壁51f,51gを成形するためのキャビティ263,264が形成されている。一方のキャビティ263の内部に、補強プレート201がセットされる。
【0033】
位置決め部250として機能する突片255,256は、仕切り壁51fの上下方向に沿って形成されている。このため、スタンピング成形時に高温に加熱され軟化した材料262の流れが突片255,256によって妨げられることがなく、材料262がキャビティ263に行き渡ることができる。要するに突片255,256は、材料262の流れを阻害しないような向きで形成されている。
【0034】
補強プレート201に形成されている孔202に材料262の一部が入り込んで硬化するとともに、突片255,256間の孔257(図10に示す)にも材料262の一部が入り込んで硬化する。このため、樹脂部53に対する補強プレート201の固定強度を高めることができる。
【0035】
前記位置決め部250は、補強プレート201の前後方向の後半部、すなわち補強プレート201の長さ方向の中央と後端201bとの間に設けられている。このため下型260のキャビティ263にセットされた補強プレート201の後端201b寄りの部位が動いてしまうことを十分抑制することができる。
【0036】
図9に示すように仕切り壁51fの側面251,252には、突片255,256が埋設されている箇所に、電気絶縁性を有する粘着テープなどからなる絶縁部材265が設けられている。この絶縁部材265によって、突片255,256の先端を覆うことができるため、突片255,256の先端が仕切り壁51fの側面251,252に露出してしまうことを防止できる。
【0037】
なお前記実施形態では、補強プレート201に孔(貫通孔)をあけることによって突片255,256を設けたが、補強プレート201の上縁あるいは下縁に前記突片を設ける場合には、補強プレート201の上縁あるいは下縁に切欠きを形成してもよい。また、補強プレート201に複数の孔あるいは切欠きを形成する場合、一方の孔あるいは切欠きに、補強プレート201の厚み方向の一方側に突出する突片を設け、他方の孔あるいは切欠きに、補強プレート201の他方側に突出する突片を形成してもよい。
【0038】
図7に示すようにインサート部材200の枠部材200a,200b,200cに、水平方向に突出する埋込みナット203と、上方に突出するアンカーボルト204と、ねじ孔を有するナット部205が設けられている。
【0039】
トレイ部材51の後半部に埋設される枠部材200d,200e,200f(図7に示す)によって、トレイ部材51の周壁(後壁51bと両側壁51c,51d)が補強されている。枠部材200d,200e,200fの上面に、上方に突出するアンカーボルト206と、ねじ孔を有するナット部207とが設けられている。左右一対の枠部材200e,200fに、水平方向に突出する埋込みナット208が固定されている。
【0040】
バッテリケース50のカバー部材52は、繊維によって強化された合成樹脂の一体成形品からなる。カバー部材52の前部に、サービスプラグ用の開口部85と冷却風導入口86が形成されている。サービスプラグ用の開口部85に蛇腹状のゴム製ブーツ87が取付けられている。冷却風導入口86にも蛇腹状のゴム製ブーツ88が取付けられている。カバー部材52の上面に、冷却風の一部を流すためのバイパス流路部90と、冷却ファン収納部91などが設けられている。
【0041】
カバー部材52の周縁部にフランジ部95が形成されている。フランジ部95はカバー部材52の全周にわたって連続している。カバー部材52のフランジ部95をトレイ部材51のカバー取付面80の上に乗せる。そして図3に示すボルト96あるいはナット97によって、トレイ部材51とカバー部材52とが、互いにシール材81を介して水密に固定される。
【0042】
トレイ部材51の下面側に複数本(例えば4本)の桁部材101,102,103,104が設けられている。図3と図5に示されるように、桁部材101,102,103,104は、それぞれ車体11の幅方向に延びる桁本体111,112,113,114を有している。桁部材101,102,103,104は、バッテリユニット14の荷重を支えるに足る強度を有する金属材料(例えば鋼板)によって構成されている。
【0043】
前から1番目の桁本体111の両端に締結部121,122が設けられている。前から2番目の桁本体112の両端に締結部123,124が設けられている。前から3番目の桁本体113の両端に締結部125,126が設けられている。前から4番目(最後部)の桁本体112の両端に締結部127,128が設けられている。バッテリユニット14の前端部には左右一対の前側支持部材130,131が設けられている。
【0044】
前から1番目の桁部材101の両端に設けられた締結部121,122のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔143(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部121,122と対向する位置に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部145,146が設けられている。締結部121,122の下側からボルト147(図2と図4に示す)をボルト挿入孔143に挿入し、このボルト147をバッテリユニット取付部145,146のナット部材に螺合させ締付けることにより、1番目の桁部材101の締結部121,122がサイドメンバ31,32に固定される。
【0045】
前から2番目の桁部材102の両端に設けられた締結部123,124のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔153(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部123,124と対向する位置に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部155,156が設けられている。締結部123,124の下側から、ボルト157(図2と図4に示す)をボルト挿入孔153に挿入し、このボルト157をバッテリユニット取付部155,156のナット部材に螺合させ締付けることにより、2番目の桁部材102の締結部123,124がサイドメンバ31,32に固定される。
【0046】
前から3番目の桁部材103の両端に設けられた締結部125,126のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔163(図2と図3に示す)が形成されている。図4と図5に示されるように、サイドメンバ31,32に荷重伝達部材170,171がボルト172によって固定されている。これら荷重伝達部材170,171は、前から3番目の桁部材103の締結部125,126の上方に設けられている。一方の荷重伝達部材170は、一方のサスペンションアームサポートブラケット40に溶接されている。他方の荷重伝達部材171は、他方のサスペンションアームサポートブラケット41に溶接されている。
【0047】
すなわち荷重伝達部材170,171は、サイドメンバ31,32と、サスペンションアームサポートブラケット40,41とに結合されている。これら荷重伝達部材170,171は、フレーム構体30の一部をなしている。荷重伝達部材170,171に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部175,176が設けられている。
【0048】
締結部125,126の下側から、ボルト177をボルト挿入孔163に挿入し、このボルト177をバッテリユニット取付部175,176のナット部材に螺合させ締付けることにより、3番目の桁部材103の締結部125,126が、荷重伝達部材170,171を介してサイドメンバ31,32に固定される。
【0049】
前から4番目の桁部材104の締結部127,128のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔193(図2と図3に示す)が形成されている。サイドメンバ31,32には、締結部127,128と対向する位置に、延長ブラケット194,195が設けられている。延長ブラケット194,195はサイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bの下方に延びている。延長ブラケット194,195は、フレーム構体30の一部をなしている。これら延長ブラケット194,195に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部196,197が設けられている。
【0050】
締結部127,128の下側から、ボルト198(図2と図4に示す)をボルト挿入孔193に挿入し、このボルト198を延長ブラケット194,195のバッテリユニット取付部196,197のナット部材に螺合させ締付けることにより、4番目の桁部材104の締結部127,128が延長ブラケット194,195を介してサイドメンバ31,32に固定される。
【0051】
図4に示すように、桁部材101,102,103,104の下面は、トレイ部材51の平坦な下面に沿って、水平方向に延びる同一平面L上に位置している。1番目と2番目の桁部材101,102は、サイドメンバ31,32の水平部分31a,32aに設けられたバッテリユニット取付部145,146,155,156に直接固定される。
【0052】
3番目の桁部材103と4番目の桁部材104は、サイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bの下方に設けられたバッテリユニット取付部175,176,196,197に固定されている。すなわち3番目と4番目の桁部材103,104は、キックアップ部31b,32bの下方にオフセットした位置にある。このため3番目の桁部材103は、上下方向に厚みを有する荷重伝達部材170,171を介して、バッテリユニット取付部175,176に固定される。4番目の桁部材104は、キックアップ部31b,32bの下方に延びる延長ブラケット194,195によって、バッテリユニット取付部196,197に固定される。
【0053】
バッテリユニット14の前端に位置する前側支持部材130,131は、前から1番目の桁部材101の前方に突出している。前側支持部材130,131は、この桁部材101に結合されている。図2に示すように、前側支持部材130,131に設けられた締結部210,211は、ボルト212によって、クロスメンバ33のバッテリユニット取付部213,214に固定される。
【0054】
以上説明したように本実施形態の電気自動車10は、桁部材101,102,103,104が左右のサイドメンバ31,32間にわたって設けられ、これら桁部材101,102,103,104によってサイドメンバ31,32どうしが結合されている。このためバッテリユニット14の桁部材101,102,103,104がクロスメンバに相当する剛性部材として機能することができる。
【0055】
また、荷重伝達部材170,171がスペンションアームサポートブラケット40,41に固定されており、サスペンションアームサポートブラケット40,41に入力する横方向の荷重が荷重伝達部材170,171を介して桁部材103に入力される。
【0056】
このため,サスペンションアームサポートブラケット40,41付近にクロスメンバが配置されていなくても、サスペンションアームサポートブラケット40,41付近の剛性を桁部材103によって高めることができ、操縦安定性と乗り心地が向上する。言い換えると、大形のバッテリユニット14の一部を左右一対のサスペンションアームサポートブラケット40,41間のスペースに配置することが可能である。このため、大形のバッテリユニット14を搭載することが可能となり、電気自動車の走行距離を長くすることができる。
【0057】
図1と図4〜図6に示されるように、バッテリユニット14の下方にアンダーカバー400が配置されている。アンダーカバー400の上面は桁部材101,102,103,104の下面と対向している。アンダーカバー400の材料の一例は、ガラス繊維によって強化された合成樹脂である。このアンダーカバー400は、車体11の下側から、ボルト401(図6に示す)によって、フレーム構体30と桁部材101,102,103,104の少なくとも一部に固定される。
【0058】
アンダーカバー400の全長は、バッテリユニット14の全長よりも大きい。すなわちこのアンダーカバー400は、バッテリケース50の前端50aから後端50bを覆うに足る長さを有している。アンダーカバー400の幅は、バッテリユニット14の幅よりも大きい。
【0059】
図5と図6に示されるように、アンダーカバー400は、左右一対のサイドメンバ31,32間にわたって配置されている。アンダーカバー400の前部は、前側のクロスメンバ33aに前記ボルト401によって固定されている。アンダーカバー400の後部は、後側のクロスメンバ35a(図6に示す)に設けられたブラケット(図示せず)に、ボルト401によって固定されている。このアンダーカバー400は、車体11の下方から見て、バッテリユニット14の底面全体を覆うに足る面積を有している。
【0060】
図2,図5,図6に示されるように、フレーム構体30にプロテクタ部材410,411が設けられている。プロテクタ部材410,411は、サイドメンバ31,32の下面にボルト412によって取付けられている。
【0061】
プロテクタ部材410,411の前部に傾斜面410a,411aが形成されている。これら傾斜面410a,411aは、サイドメンバ31,32の後側から前側に向かって高くなってゆくように傾斜した「そり」のような形状である。走行中に車体11の前側からプロテクタ部材410,411に衝突した路面の凸部は、この傾斜面410a,411aに沿ってプロテクタ部材410,411の後方に案内される。
【0062】
自動車10が段差等の大きな凸部を通過しようとしたとき、状況によっては、路面の凸部がプロテクタ部材410,411の少なくとも一方に衝突することも想定される。その場合、プロテクタ部材410,411の傾斜面410a,411aが路面の凸部に乗り上げる。そしてプロテクタ部材410,411の傾斜面410a,411aが「そり」に相当する機能を果たすことにより、傾斜面410a,411aに当たった路面の凸部がアンダーカバー400に向かって案内される。このため路面の凸部がバッテリユニット14を直撃することを防止できる。
【0063】
アンダーカバー400の上には、剛性の高い桁部材101,102,103,104が車体11の前方から後方に向かって並んでいる。これらの桁部材101,102,103,104は、プロテクタ部材410,411の後側に配置されている。このためアンダーカバー400は、下側から入力する外力に対して大きな強度を発揮できる。このためアンダーカバー400に接した路面の凸部を、アンダーカバー400に沿って車体11の後方に案内することができる。こうしてバッテリユニット14の破損を防止できる。
【0064】
本実施形態のバッテリユニット14のバッテリケース50は、前記したように補強用のインサート部材200を備えている。そしてインサート部材200の一部である補強プレート201が位置決め部250を備えているため、トレイ部材51の仕切り壁51fの所定位置に補強プレート201を埋設することができる。
【0065】
この補強プレート201を含むインサート部材200によってトレイ部材51を補強することができるため、トレイ部材51の仕切り壁51f等が破壊されにくくなる。しかも補強プレート201は仕切り壁51fの所定位置に埋設されているため、衝突時等にトレイ部材51に大きな衝撃が加わっても、補強プレート201が仕切り壁51fから剥離したり、補強プレート201の一部がバッテリケース50の内部空間に露出したりすることを抑制できる。この補強プレート201は電気絶縁性の樹脂部53によって覆われているため、ショートの原因となることが回避される。
【0066】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る補強プレート201を示している。この実施形態の場合、突片255,256の先端に電気絶縁部材270が設けられている。電気絶縁部材270は前記樹脂部53がスタンピング成形される前に予め突片255,256に取付けられている。こうすることにより、スタンピング成形後に前記絶縁部材265(図9に示す)を仕切り壁51fに貼り付ける工程を省略することができる。それ以外の構成は、前記第1の実施形態のトレイ部材51と同様である。
【0067】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る補強プレート201を示している。この実施形態の場合、補強プレート201に形成された貫通孔271に、電気絶縁性を有する樹脂製の位置決め部材272が取付けられている。位置決め部材272の一例は、貫通孔271に挿入される樹脂クリップであり、トレイ部材51の樹脂部53と同じ材料(例えばポリプロピレン)によって構成されている。
【0068】
この位置決め部材272の両端272a,272bが補強プレート201の厚さ方向に突出することにより、仕切り壁51fに対する補強プレート201の位置決めをなすことができる。この実施形態の場合も、スタンピング成形後に前記絶縁部材265(図9に示す)を仕切り壁51fに貼り付ける工程を省略することができる。それ以外の構成は、前記第1の実施形態のトレイ部材51と同様である。
【0069】
前記各実施形態では補強プレートに孔(貫通孔)をあけたが、孔の代りに補強プレートの縁部に切欠きを形成してもよい。また、複数の孔あるいは切欠きのそれぞれに1つずつ突片を設けるようにしてもよい。
【0070】
なお前記実施形態では車体後部に走行用モータが搭載された電気自動車について説明したが、本発明は走行用モータが車体前部に配置された電気自動車にも適用することができる。また本発明を実施するに当たって、フレーム構体、モータ、トレイ部材、インサート部材、補強プレート、位置決め部をはじめとして、発明の構成要素の構造及び配置を適宜に変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバッテリユニットを有する電気自動車の斜視図。
【図2】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの斜視図。
【図3】図2に示されたバッテリユニットのバッテリケースと桁部材の斜視図
【図4】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの側面図。
【図5】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットを上方から見た平面図。
【図6】図1に示された電気自動車のフレーム構体とアンダーカバーを下方から見た斜視図。
【図7】図2に示されたバッテリケースのトレイ部材に埋設されるインサート部材の斜視図。
【図8】図2に示されたバッテリケースのトレイ部材の一部を示す平面図
【図9】図8中のF9−F9線に沿うトレイ部材の一部の断面図。
【図10】図7に示されたインサート部材の補強プレートの一部の斜視図。
【図11】図10に示された補強プレートと金型の一部の断面図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る補強プレートの一部を示す斜視図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る補強プレートの一部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0072】
10…電気自動車
11…車体
14…バッテリユニット
30…フレーム構体
31,32…サイドメンバ
50…バッテリケース
51…トレイ部材
53…樹脂部
51f…仕切り壁
200…インサート部材
200a…枠部材
201…補強プレート
202…孔
250…位置決め部
255,256…突片
272…位置決め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に配置される左右一対のサイドメンバを含むフレーム構体と、
前記フレーム構体に固定されるバッテリユニットとを具備した電気自動車において、
前記バッテリユニットはトレイ部材を含むバッテリケースを有し、
前記トレイ部材は、
電気絶縁性を有する樹脂によって周壁と底壁および仕切り壁を形成してなる樹脂部と、
前記樹脂部に埋設されたインサート部材とを有し、
前記インサート部材は前記仕切り壁に埋設される金属製の補強プレートを含み、
該補強プレートに、前記仕切り壁の両側面に対する該補強プレートの厚さ方向の位置を規制するための位置決め部が設けられていることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記補強プレートの一部を該補強プレートの厚さ方向に切り起こしてなる突片であり、該突片を切り起こすことによって形成された孔に前記樹脂部の樹脂の一部が入り込んで硬化していることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記突片が前記仕切り壁の上下方向に沿うよう形成され、かつ、前記トレイ部材の前記樹脂部がスタンピング成形によって一体成形されていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記補強プレートに該補強プレートの厚さ方向に貫通する孔が形成され、この孔に電気絶縁性の材料からなる位置決め部材が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記補強プレートに該補強プレートの厚さ方向に貫通する孔が形成され、この孔に前記樹脂部の樹脂の一部が入り込んで硬化していることを特徴とする請求項2または4に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記インサート部材は、前記トレイ部材の前壁に埋設されて前記車体の幅方向に延びる金属製の枠部材と、前端が前記枠部材に固定されて車体の前後方向に延びる前記補強プレートとを有し、該補強プレートの前後方向の後半部に前記位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項2または4に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−83600(P2009−83600A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254262(P2007−254262)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】