説明

電気貯湯容器

【課題】 共用の容器本体に対して真空二重容器タイプの内容器と一重容器タイプの内容器とに対応可能ならしめる。
【解決手段】 湯沸かし用の内容器3と、該内容器3を肩部に支持する容器本体1と、前記内容器3を加熱する加熱手段4とを備えた電気貯湯容器において、前記容器本体1を、内筒と外筒との間に真空空間を形成してなる真空二重容器からなる二重内容器を支持し得るように構成するとともに、前記容器本体1の肩部に、一重の金属製容器からなる一重内容器3Bを前記肩部との間にスペーサ26を介在させた状態で支持して、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデルを使用して、スペーサ26を介在させるだけで、安価な一重内容器3Bを支持することが可能となるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気貯湯容器に関し、さらに詳しくは外観モデルを共用し、真空二重容器タイプの内容器と一重容器タイプの内容器との二種類の製品を作り出し得るようにした電気貯湯容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種電気貯湯容器の場合、内筒と外筒との間に真空空間を形成してなる真空二重容器タイプの内容器を具備したものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−330869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている電気貯湯容器は、高性能ではあるが、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用しているため、製品も高価なものとなっている。
【0005】
一方、従来からよく知られている電気貯湯容器としては、安価な一重容器タイプの内容器を具備したものがある。
【0006】
ところで、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデル(即ち、容器本体)を用いて、安価な一重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器を構成したいという要望があるが、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデル(即ち、容器本体)と安価な一重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデル(即ち、容器本体)とでは構造的な問題があって共用できないという不具合があった。
【0007】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、共用の容器本体に対して真空二重容器タイプの内容器と一重容器タイプの内容器とに対応可能ならしめることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、湯沸かし用の内容器と、該内容器を肩部に支持する容器本体と、前記内容器を加熱する加熱手段とを備えた電気貯湯容器において、前記容器本体を、内筒と外筒との間に真空空間を形成してなる真空二重容器からなる二重内容器を支持し得るように構成するとともに、前記容器本体の肩部に、一重の金属製容器からなる一重内容器を前記肩部との間にスペーサを介在させた状態で支持している。
【0009】
上記のように構成したことにより、内筒と外筒との間に真空空間を形成してなる真空二重容器からなる二重内容器を支持し得るように構成された容器本体(即ち、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデル)の肩部に、一重の金属製容器からなる一重内容器が前記肩部との間にスペーサを介在させた状態で支持されることとなる。従って、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデルを使用して、スペーサを介在させるだけで、安価な一重内容器を支持することが可能となり、共用の容器本体に対して真空二重容器タイプの内容器と一重容器タイプの内容器とに対応が可能となる。
【0010】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた電気貯湯容器において、前記一重内容器として、前記二重内容器の内筒を用いることもでき、そのように構成した場合、内容器と容器本体の蓋体とのシール性を容易に確保することができる。
【0011】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた電気貯湯容器において、前記スペーサの高さ方向の長さを、前記容器本体の肩部を構成する肩部材の上下方向長さより長く設定することもでき、そのように構成した場合、スペーサと肩部材の内壁との接触面積を大きく確保することができ、安定性が増大する。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第4の手段として、上記第1、第2又は第3の手段を備えた電気貯湯容器において、前記スペーサを、前記容器本体の肩部と前記内容器の口部とをシールする口パッキン部と前記肩部の内周側と前記内容器の外周面とをシールするスペーサ部とを一体に連結したものとすることもでき、そのように構成した場合、1個のスペーサによって、口パッキン部とスペーサ部との両方のシールを同時に確保することができることとなり、部品点数の低減および作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の第1の手段によれば、湯沸かし用の内容器と、該内容器を肩部に支持する容器本体と、前記内容器を加熱する加熱手段とを備えた電気貯湯容器において、前記容器本体を、内筒と外筒との間に真空空間を形成してなる真空二重容器からなる二重内容器を支持し得るように構成するとともに、前記容器本体の肩部に、一重の金属製容器からなる一重内容器を前記肩部との間にスペーサを介在させた状態で支持したので、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデルを使用して、スペーサを介在させるだけで、安価な一重内容器を支持することが可能となり、共用の容器本体に対して真空二重容器タイプの内容器と一重容器タイプの内容器とに対応が可能となるという効果がある。
【0014】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた電気貯湯容器において、前記一重内容器として、前記二重内容器の内筒を用いることもでき、そのように構成した場合、内容器と容器本体の蓋体とのシール性を容易に確保することができる。
【0015】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1又は第2の手段を備えた電気貯湯容器において、前記スペーサの高さ方向の長さを、前記容器本体の肩部を構成する肩部材の上下方向長さより長く設定することもでき、そのように構成した場合、スペーサと肩部材の内壁との接触面積を大きく確保することができ、安定性が増大する。
【0016】
本願発明の第4の手段におけるように、上記第1、第2又は第3の手段を備えた電気貯湯容器において、前記スペーサを、前記容器本体の肩部と前記内容器の口部とをシールする口パッキン部と前記肩部の内周側と前記内容器の外周面とをシールするスペーサ部とを一体に連結したものとすることもでき、そのように構成した場合、1個のスペーサによって、口パッキン部とスペーサ部との両方のシールを同時に確保することができることとなり、部品点数の低減および作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の好適な実施の形態について詳述する。
【0018】
図1には、真空二重容器タイプの内容器3Aを使用した電気貯湯容器Z1が示されている。
【0019】
この電気貯湯容器Z1は、湯沸かし用の内容器3Aを備えた容器本体1と、該容器本体1の上部開口を開閉する蓋体2と、前記内容器3Aの底部を加熱する加熱手段である電気ヒータ4と、前記内容器3A内のお湯を外部へ給湯するための給湯通路5と、該給湯通路5の途中に設けられたポンプ装置である電動ポンプ6とを備えて構成されている。前記電気ヒータ4は、沸騰ヒータ4Aと保温ヒータ4Bとからなっている。
【0020】
前記容器本体1は、外側面を構成する板金製の外ケース7と、内周面を構成する前記内容器3Aと、前記外ケース7の上部と内容器3Aの上部とを結合する合成樹脂製の環状の肩部材8と、底面を構成する合成樹脂製の底板9とからなっている。
【0021】
前記内容器3Aは、ステンレス製の有底円筒形状の内筒10とステンレス製の略円筒形状の外筒11との間に真空空間12を形成してなる真空二重容器からなっており、その底部には、前記内筒10の底部のみからなる非真空部3aが形成されている。該非真空部3aの下面には、前記電気ヒータ4(例えば、雲母板に発熱体を保持させてなるマイカヒータ)が取り付けられている。
【0022】
前記蓋体2は、合成樹脂製の上板14と該上板14に対して外周縁が嵌め合いにより結合された合成樹脂製の下板15とからなっており、前記肩部材8の後部に設けられたヒンジ受け16に対してヒンジピン17を介して開閉且つ着脱自在に支持されている。符号18は蒸気排出通路である。
【0023】
前記蓋体2における下板15には、金属製のカバー部材20が固定されており、該カバー部材20の外周縁には、蓋体2の閉蓋時において前記内容器3Aの給水口21に圧接されるシールパッキン22が設けられている。
【0024】
上記構成の電気貯湯容器Z1は、保温用ヒータ4Bへの通電制御を行う通常の保温モード(換言すれば、設定保温温度制御モード)の他に、沸騰用ヒータ4Aおよび保温用ヒータ4Bへの通電を停止した状態(即ち、電源コードを取り外した状態)で保温する魔法瓶保温モードによる使用が可能となっている。
【0025】
図1において、符号23は蓋体2を容器本体1に対して閉止状態に保持するためのロック機構、24は後述する各種スイッチ類を備えた操作パネル部、25はスイッチ基板である。
【0026】
図2には、一重容器タイプの内容器3Bを使用した電気貯湯容器Z2が示されている。
【0027】
この電気貯湯容器Z2の場合、内容器3Bとして、一重容器タイプのもの(例えば、前述の真空二重容器タイプの内容器3Aにおける内筒10)が使用されている。この内筒10は、図3に示すように、上端口縁に形成されたフランジ部10aと、該フランジ部10aの下方に連続して絞り加工により形成された給水口21とを備えて構成されている。また、この場合、容器本体1の肩部を構成する肩部材8には、一重の金属製容器からなる一重内容器3Bである内筒10が前記肩部材8との間にスペーサ26を介在させた状態で支持されている。該スペーサ26は、前記容器本体1の肩部材8と前記内容器3Bの口部(換言すれば、フランジ部10a)とをシールする口パッキン部26aと前記肩部材8の内周側と前記内容器3B(即ち、内筒10)の外周面とをシールするスペーサ部26bとを一体に連結したものとされており、このスペーサ26の高さ方向の長さLは、前記容器本体1の肩部を構成する肩部材8の上下方向長さHより長く設定されている(図3参照)。また、前記スペーサ26は、図4に示すよう、例えば弾性部材からなる環状体とされており、その下端外周には、斜めにカットされた傾斜面27が形成されている。該傾斜面27は、図3に示すように、スペーサ26を内筒10の上端外周側に組みつけた状態で、肩部材8に対して組み込む際にガイド面として作用することとなり、組み込み作業性が大幅に向上する。
【0028】
容器本体1および蓋体2の構成は、図1に示す電気貯湯容器Z1の場合と同じ構造とされる。なお、一重内容器として真空二重容器の内筒10を用いているため、内筒10の底部には、支持金具28が必要となる。
【0029】
上記のように構成したことにより、内筒10と外筒11との間に真空空間12を形成してなる真空二重容器からなる二重内容器3Aを支持し得るように構成された容器本体1(即ち、高価な真空二重容器タイプの内容器を使用した電気貯湯容器の外観モデル)の肩部材8に、一重の金属製容器からなる一重内容器3Bが前記肩部材8との間にスペーサ26を介在させた状態で支持されることとなる。従って、高価な真空二重容器タイプの内容器3Aを使用した電気貯湯容器の外観モデルを使用して、スペーサ26を介在させるだけで、安価な一重内容器3Bを支持することが可能となり、共用の容器本体1に対して真空二重容器タイプの内容器3Aと一重容器タイプの内容器3Bとに対応が可能となる。しかも、前記一重内容器3Bとして、前記二重内容器3Aの内筒10を用いたことにより、内容器3Bと容器本体1の蓋体2とのシール性を容易に確保することができる。また、スペーサ26の高さ方向の長さLを、容器本体1の肩部を構成する肩部材8の上下方向長さHより長く設定したことにより、スペーサ26と肩部材8の内壁との接触面積を大きく確保することができ、安定性が増大する。
【0030】
本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器であって、内容器として真空二重容器を用いた電気貯湯容器の縦断面図である。
【図2】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器であって、内容器として一重内容器(例えば、真空二重容器の内筒)を用いた電気貯湯容器の縦断面図である。
【図3】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器であって、内容器として一重内容器(例えば、真空二重容器の内筒)を用いた電気貯湯容器における部分拡大分解断面図である。
【図4】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器におけるスペーサの半截側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1は容器本体
2は蓋体
3A,3Bは内容器
4は加熱手段(電気ヒータ)
8は肩部材
10は内筒
11は外筒
12は真空空間
26はスペーサ
26aは口パッキン部
26bはスペーサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯沸かし用の内容器と、該内容器を肩部に支持する容器本体と、前記内容器を加熱する加熱手段とを備えた電気貯湯容器であって、前記容器本体を、内筒と外筒との間に真空空間を形成してなる真空二重容器からなる二重内容器を支持し得るように構成するとともに、前記容器本体の肩部には、一重の金属製容器からなる一重内容器を前記肩部との間にスペーサを介在させた状態で支持したことを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】
前記一重内容器として、前記二重内容器の内筒を用いたことを特徴とする請求項1記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
前記スペーサの高さ方向の長さを、前記容器本体の肩部を構成する肩部材の上下方向長さより長く設定したことを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の電気貯湯容器。
【請求項4】
前記スペーサを、前記容器本体の肩部と前記内容器の口部とをシールする口パッキン部と前記肩部の内周側と前記内容器の外周面とをシールするスペーサ部とを一体に連結したものとしたことを特徴とする請求項1、2および3のいずれか一項記載の電気貯湯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279235(P2009−279235A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135415(P2008−135415)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】