説明

電気駆動式車両

【課題】バッテリを充電している電源を判別可能な電気駆動式車両を提供する。
【解決手段】電気駆動式車両1は、走行用のモータ70と、互いに電源周波数が相違する商用電源及び発電装置により選択的に充電可能でありモータ70に電力を供給するバッテリ90と、バッテリ90を充電している商用電源又は発電装置の電源周波数を検出する周波数検出部68と、周波数検出部68の検出結果に基づいてバッテリ90を充電している電源を判別するECU50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリから電力によりモータで走行する電気駆動式車両がある。特許文献1には、商用電源及び発電装置の何れを用いてもバッテリを充電できる車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両では、バッテリを充電している電源が商用電源であるのか発電装置であるのかを判別することはできない。これにより、例えば、バッテリを充電している電源の種類に応じて車両の走行状態を制御することはできない。
【0005】
そこで、バッテリを充電している電源を判別可能な電気駆動式車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、走行用のモータと、互いに電源周波数が相違する商用電源及び発電装置により選択的に充電可能であり前記モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリを充電している前記商用電源又は発電装置の電源周波数を検出する周波数検出部と、前記周波数検出部の検出結果に基づいて前記バッテリを充電している電源を判別する制御手段と、を備えた電気駆動式車両によって達成できる。バッテリを充電している商用電源又は発電装置の電源の周波数を検出することにより、バッテリを充電している電源を判別できる。
【発明の効果】
【0007】
バッテリを充電している電源を判別可能な電気駆動式車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例の電気駆動式車両を模式的に示す図である。
【図2】商用電源によりバッテリが充電されている場合の説明図である。
【図3】車両内に搭載された発電装置によりバッテリが充電されている場合の説明図である。
【図4】車両外で接地された発電装置によりバッテリが充電されている場合の説明図である。
【図5】発電装置の説明図である。
【図6】ECUが実行する制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例の電気駆動式車両1を模式的に示す図である。図1に示すように、電気駆動式車両1(以下、車両1と称する)は、インバータ20、ECU50、モータ70、バッテリ90、を有している。本実施例の車両1は、商用電源によりバッテリ90を充電可能な、いわゆるプラグイン車両である。また、バッテリ90は、後述する商用電源及び発電装置により選択的に充電可能である。
【0010】
ECU50は、CPU、ROM、RAM等を備え、各種センサからの検出値が出力される。ECU50は、各種センサの検出値に基づいて車両1全体の動作を制御する。各種センサとは、例えば、イグニッションのオン、オフを検出するイグニッションスイッチ31や、バッテリ90の充電状態(SOC)を検出するSOCセンサ91等である。ECU50は、詳しくは後述するが、バッテリ90を充電している電源が、商用電源であるのか又は発電装置であるのかを判別できる。また、ROMには上記判別の処理を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0011】
車両1は、プラグイン部61、電位差検出部62、ケーブル65、を有している。ケーブル65は、商用電源又は発電装置の電力をバッテリ90に供給するためのものである。ケーブル65の先端には発電装置又は家庭用コンセントに接続されるプラグ66が形成されている。ケーブル65の根元は、プラグイン部61に接続されている。電位差検出部62は、詳しくは後述する。警告ランプ40は、ドライバー席付近に設けられ、ECU50は、一定条件を満たす場合に警告ランプ40を点灯させる。
【0012】
バッテリ90は、インバータ20を介してモータ70に電力を供給する。モータ70は、車両を走行するために用いられる。モータ70の動力は、トランスミッション5に伝達される。トランスミッション5に伝達された動力は駆動軸を介して駆動輪2に伝えられる。インバータ20は、バッテリ90からの直流電流を交流電流に変換する。また、インバータ20は、商用電源又は発電装置からの交流電流を直流電流に変換する。
【0013】
図2は、商用電源200によりバッテリ90が充電されている場合の説明図である。商用電源200は、各過程に供給される電源である。商用電源200は、単相交流の商用電源(電圧値は100V又は200V)である。ケーブル65を各過程のコンセントに接続することにより、商用電源200からバッテリ90へ電力が供給される。これによりバッテリ90は充電される。
【0014】
図3は、車両1内に搭載された発電装置10によりバッテリ90が充電されている場合の説明図、図4は、車両1外に接地された発電装置10によりバッテリ90が充電されている場合の説明図である。発電装置10は、発電機10a、エンジン10bを含む。エンジン10bの回転動力は発電機10aに伝達されて発電機10aが駆動する。これにより、発電機10aには電力が発生する。このように発電機10aはエンジン10bの駆動力を電力に変換する。発電機10aにより生じた電力はバッテリ90に充電されるか、又はモータ70に供給される。
【0015】
発電機10aは、ロータとステータとを有する。ロータにはエンジン10bのクランク軸が接続されている。ロータは、複数の永久磁石が設けられている。ステータには、三相コイルが設けられている。エンジン10bがロータを回転させることにより、三相コイルの両端に起電力を生じる。尚、発電機10aは、エンジン10bの動力により駆動するものであればよく、上記の構造に限定されない。
【0016】
このようにエンジン10bは車両の走行のために用いられるものではなく、発電機10aを駆動するために用いられる。本実施例の車両1では、発電装置10は、車両1に搭載した場合、車両1外に置かれた場合の何れの場合でも、ケーブル65を介してバッテリ90を充電可能である。例えば、トランクルーム内に発電装置10を搭載することができるがこの場所に限定されない。
【0017】
図1〜4に示すように、周波数検出部68は、商用電源200又は発電装置10からインバータ20に流れる交流電流の周波数を検出することにより、バッテリ90を充電している電源の周波数を検出する。周波数検出部68により検出された周波数はECU50に出力される。ECU50は、周波数検出部62から出力された周波数に基づいて、バッテリ90を充電している電源が、商用電源200であるのか又は発電装置10であるのかを判別する。即ち、商用電源200、発電装置10の電源の周波数は互いに異なっている。詳しくは後述する。
【0018】
次に、発電装置10について説明する。図5は、発電装置10の説明図である。
発電装置10は、筐体12、筐体12内に配置された発電機10a、筐体12の外側に設けられたプラグイン部16、筐体12の低壁部の外側に設けられた導電部18、を含んでいる。筐体12内には、エンジン10bも収納されている。導電部18は、発電装置10を地面Gに置いた場合に導電部18が地面Gに接触する位置に設けられている。導電部18は電気導通性を有した金属材料により形成されている。電源線151は、発電機10aとプラグイン部16とを接続している。アース線152は、発電機10aと導電部18との間、及び発電機10aとプラグイン部16との間を接続している。電源線151、アース線152は、例えば半田付けにより、それぞれの箇所に接続されている。アース線152は、被覆された導線である。導電部18が地面Gに接触することにより、発電機10aが接地される。
【0019】
ケーブル65は、電源線651、アース線652を含む。ケーブル65が発電装置10のプラグイン部16に接続されると、電源線151と電源線651とが電気的に接続される。これにより、発電機10aからの車両1のバッテリ90に供給される電力の経路が確保される。また、ケーブル65がプラグイン部16に接続されると、アース線152とアース線652とが電気的に接続される。
【0020】
電位差検出部62は、アース線652と車体8との電位差を検出する。車体8は、金属製である。ここで車体8の電位は、ゼロである。また、発電装置10が地面Gに設置されている場合、導電部18は地面Gに接触しているのでアース線152、652の電位もゼロである。この場合、電位差検出部62は、両者の電位差はゼロであるとしてECU50に出力する。
【0021】
一方、発電装置10が車両1に搭載されている場合には、導電部18は地面Gに接触はしない。このため、車体8の電位はゼロであるが、アース線152、652の電位はゼロではない。この場合、電位差検出部62は、両者の電位差をECU50に出力する。ECU50は、電位差検出部62から出力される電位差の有無に基づいて、発電装置10が接地されているか否かを判定できる。即ち、ECU50は、電位差検出部62から出力される電位差がゼロの場合は、発電装置10は接地されているものと判定し、電位差検出部62から出力される電位差がある場合には、発電装置10は車両1内に搭載されているものと判定する。
【0022】
次に、ECU50が実行する制御について説明する。図6は、ECU50が実行する制御の一例を示したフローチャートである。
ECU50は、イグニッションスイッチ31からの検出値に基づいてイグニッションがオンであるか否かを検出する(ステップS1)。否定判定の場合には、ECU50は再度この処理を実行する。
【0023】
肯定判定の場合には、ECU50は、プラグイン部61に電源が入力されたか否かを検出する(ステップS2)。例えば、プラグイン部61内に電流計を設けて、この出力値に基づいてECU50がプラグイン部61に電源が入力されたか否かを検出する。これにより、ECU50は、バッテリ90が充電中であるか否かを判定できる。
【0024】
否定判定の場合には、ECU50は車両1の運転モードを通常走行モードに設定する(ステップS3)。通常走行モードとは、運転者が操作するアクセルの踏み込み量等に応じて車両1を走行させるモードである。
【0025】
肯定判定の場合には、ECU50は警告ランプ40を点灯させる(ステップS4)。バッテリ90が充電中であることを運転者に知らせるためである。
【0026】
次に、ECU50は、周波数検出部68からの出力値に基づいて、電源周波数fを検出して、電源周波数fが上限周波数fu未満であり下限周波数flを超えているか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、周波数検出部68は、充電中のバッテリ90に供給される交流電流の周波数を検出する。上限周波数fu、下限周波数flは、商用電源200の電源周波数に基づいて設定されている。日本国内の商用電源の周波数は、50Hzと60Hzとが採用されている。従って、これらを考慮して、例えば上限周波数fuは62Hz、下限周波数flは48Hzと設定する。尚、上限周波数fuから下限周波数flの範囲は、50〜60Hzを含めばよい。
【0027】
肯定判定の場合には、ECU50は走行禁止モードに設定する(ステップS6)。肯定判定の場合には、バッテリ90は商用電源200により充電中であり、この状態で車両1の走行を許可するとケーブル65が断線する恐れがあるからである。否定判定の場合には、バッテリ90は発電装置10により充電中であると判定される。
【0028】
否定判定の場合には、ECU50は、電位差検出部62からの出力に基づいてプラグイン部61にアース線652が入力されたか否かを判定する(ステップS7)。具体的には、ECU50は、電位差検出部62からの出力値がゼロであるかを判定する。電位差検出部62からの出力値がゼロの場合にはアース入力ありと判定して、ECU50は走行禁止モードに設定する(ステップS6)。アース入力ありと判定された場合には、発電装置10は車両1外に設置されているものと考えられるからである。この場合、走行禁止モードに設定することにより、ケーブル65や発電装置10の破損を防止できる。
【0029】
電位差検出部62からの出力値がゼロ以外の場合には、即ち否定判定の場合には、ECU50は退避走行モードに設定する(ステップS8)。この場合には、発電装置10は車両1内に搭載されていると判定できるからである。退避走行モードとは、退避走行に最低限必要なトルクでモータ70を駆動するモードである。退避走行モードに設定されることにより、運転者が車両1から降りることを促すことができる。これにより、車両1に搭載された発電装置10のエンジン10bからの排気により運転者が健康被害を受けることを防止できる。また、退避走行モードに設定されることにより、発電装置10によりバッテリ90を充電しつつ車両1を走行させなければならないような緊急時の場合にも対応できる。
【0030】
以上のように、ECU50は、周波数検出部68の検出結果に基づいてバッテリ90を充電している電源を判別する。これにより、バッテリ90を充電している電源の種類に応じて車両の走行状態を制御することができる。例えば、上述したように、ECU50は、バッテリ90を充電している電源の種類に応じて走行禁止モード又は退避走行モードに設定する(ステップS6、S8)。これにより、充電中での安全性等を考慮した走行モードに設定できる。
【0031】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0032】
本実施例の車両1は、パラレルハイブリッド車両、シリーズハイブリッド車両であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 電気駆動式車両
8 車体
10 発電装置
10a 発電機
10b エンジン
12 筐体
18 導電部
16 プラグイン部
31 イグニッションスイッチ
40 警告ランプ
50 ECU
61 プラグイン部
62 電位差検出部
65 ケーブル
70 モータ
90 バッテリ
91 SOCセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータと、
互いに電源周波数が相違する商用電源及び発電装置により選択的に充電可能であり前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリを充電している前記商用電源又は発電装置の電源周波数を検出する周波数検出部と、
前記周波数検出部の検出結果に基づいて前記バッテリを充電している電源を判別する制御手段と、を備えた電気駆動式車両。
【請求項2】
前記発電装置は、発電機本体、前記発電機本体を収納した筐体、前記筐体の低壁部の外側に設けられた導電部、前記発電機本体と前記導電部とを接続していると共に前記車両側に接続可能なアース線、を含み、
前記制御手段は、車体と前記アース線との電位差に基づいて前記発電装置が車両内にあるか否かを判定する、請求項1の電気駆動式車両。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電位差がある場合には、前記発電装置は前記車両内にあると判定し、前記電位差がない場合には、前記発電装置は前記車両内にはないと判定する、請求項2の電気駆動式車両。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バッテリを充電している電源は前記商用電源であると判定した場合には前記車両の走行を禁止し、前記発電装置であると判定した場合には前記車両の走行を禁止し又は前記車両を退避走行させる、請求項1乃至3の何れかの電気駆動式車両。
【請求項5】
前記制御手段は、前記発電装置が前記車両内にあると判定した場合には前記車両を退避走行させ、前記車両内にはないと判定した場合には前記車両の走行を禁止する、請求項2乃至4の何れかの電気駆動式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−223790(P2011−223790A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92012(P2010−92012)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】