電池パック真贋判定機能付き携帯端末
【課題】アンテナの多機能化を図りつつ、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できる電池パック真贋判定機能付き携帯端末を提供する。
【解決手段】電池パック(50)は、金属製の電池表面(52)に取り付けられるRFIDタグ用アンテナ(91)と、そのアンテナ部(92)と電池表面との間に敷設された第1磁性体(96)とを具備し、携帯端末本体(2)は、電池パックの真贋判定を実施可能な回路基板と、電池パックに対向する蓋内面(22b)を有した蓋部材(22)と、蓋部材に取り付けられるタグリーダ用アンテナ部(82)と、このタグリーダ用アンテナ部に対して電気的に直接に接続され、別の無線通信を行うカード用アンテナ部(42)と、蓋内面に設けられており、カード用アンテナ部のみと電池表面との間であって、この電池表面のうち第1磁性体の敷設範囲を除いた領域に敷設された第2磁性体(46)とを具備する。
【解決手段】電池パック(50)は、金属製の電池表面(52)に取り付けられるRFIDタグ用アンテナ(91)と、そのアンテナ部(92)と電池表面との間に敷設された第1磁性体(96)とを具備し、携帯端末本体(2)は、電池パックの真贋判定を実施可能な回路基板と、電池パックに対向する蓋内面(22b)を有した蓋部材(22)と、蓋部材に取り付けられるタグリーダ用アンテナ部(82)と、このタグリーダ用アンテナ部に対して電気的に直接に接続され、別の無線通信を行うカード用アンテナ部(42)と、蓋内面に設けられており、カード用アンテナ部のみと電池表面との間であって、この電池表面のうち第1磁性体の敷設範囲を除いた領域に敷設された第2磁性体(46)とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末本体に対して着脱可能な電池パックの真贋判定機能付き携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の携帯端末、例えば携帯電話などの持ち運び可能なモバイル電子機器は、二次電池(電池パック)から供給された電力で駆動することができ、そのモバイル性の発揮には電池パックが不可欠である。この電池パックは、携帯端末本体に対して着脱可能に構成されており、例えば寿命に達した電池パックを新たな電池パックに交換できる。
【0003】
この新たな電池パックが携帯端末の製造者(或いはその許可を得た者)によって正規に設計された純正品である場合には、この携帯端末の使用者は、安全性が保証された駆動用電源として当該電池パックを使用できる。
これに対し、純正品ではない場合には、その使用は携帯端末の誤動作や、その内部の電子部品を損傷させる可能性が高くなり、また、充放電時における電池パックの安全性についても保証されていない。
【0004】
よって、携帯端末使用者の安全を確保するためには、純正品ではない電池パックを使用させないことが望ましく、当該電池パックの使用を防止するか、純正品以外の電池パックの使用を監視する必要がある。そして、RFID(Radio Frequency IDentification)を用いて電池パックの真贋を判定することがある。
詳しくは、電池パックには、RFIDタグのアンテナ部やICチップが設けられ、この電池パック側のアンテナ部とリーダ/ライタ側のアンテナ部との無線通信によって電池パックの識別情報を管理し、使用者の安全を確保する。
【0005】
ここで、上述したRFIDは例えば非接触ICカードによる無線通信、具体的には交通系などの電子マネーにて既に用いられており、携帯端末に対して既知の構成である。つまり、これらICカードや電池パックの真贋判定に関する各無線通信が可能な携帯端末の内部には、複数の用途に対応できるアンテナ部が必要になる。そのため、相互干渉を抑えつつ、複数の用途に使用できるアンテナ部の技術を利用することが考えられる(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−126901号公報
【特許文献2】特開2003−85519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した電池パックは、電極などの金属部品が使用され、さらには金属製のケースが使用される場合もあり、これらの金属製の部材が上記無線通信の阻害要因になる。
より具体的には、一般に使用される13.56MHz帯や125kHz帯のRFIDでは電池パック側のアンテナ部の背面に、金属製の部材が存在すると、この金属製の部材がリーダ/ライタ側のアンテナ部から照射された電磁波を反射したり、若しくは吸収して反磁束を生じさせ、アンテナ通信感度を低下させるのである。
【0008】
この場合に、仮に、上記技術の組み合わせ構成、すなわち、大小2つのアンテナ部が電気的に直列に接続され、そのうち小さなアンテナ部の背面に、磁性材を配置した構成を利用できたとしても、無線通信が依然として困難になるという問題がある。それは、磁性材を配置しない大きなアンテナ部では金属製の部材によってアンテナ通信感度が低められるからである。
【0009】
このように、電池パックがアンテナ部に近接している場合には、その無線通信を確保するための措置が別途必要になる。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、アンテナの多機能化を図りつつ、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できる電池パック真贋判定機能付き携帯端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の発明は、電池パック側のRFIDタグと携帯端末本体側のリーダ/ライタとの無線通信を行う携帯端末であって、電池パックは、金属製の電池構成部材と、この電池構成部材の表面に取り付けられるRFIDタグのタグ用アンテナと、このタグ用アンテナのアンテナ部と電池構成部材の表面との間に敷設された第1磁性体とを具備する。
【0011】
一方、携帯端末本体は、電池パックの真贋判定を実施可能な回路基板と、装着された電池パックに対向する蓋内面を有した蓋部材と、蓋部材に取り付けられるリーダ/ライタのタグリーダ用アンテナ部と、このタグリーダ用アンテナ部に対して電気的に直接に接続され、上述した無線通信とは別の無線通信を行うカード用アンテナ部と、蓋内面に設けられており、カード用アンテナ部のみと電池構成部材の表面との間であって、この電池構成部材の表面のうち第1磁性体の敷設範囲を除いた領域に敷設された第2磁性体とを具備する。
【0012】
本発明は、無線通信の阻害要因をRFID用の磁性体で覆い隠す点に着目したものである。
第1の発明によれば、携帯端末は、携帯端末本体と、この携帯端末本体に着脱可能に構成された電池パックとを具備する。電池パックは、金属製の電池構成部材、例えば金属製のケース又は電池本体を備え、このケースの内側には電極等の二次電池として機能する電池本体が納められる。一方、この金属製のケースの表面又は電池本体の電極にはRFIDタグが取り付けられている。
【0013】
装着された電池パックが純正品であるか否かは、電池パック側のRFIDタグと携帯端末本体側のリーダ/ライタとの無線通信が行われた結果を携帯端末本体の回路基板にて判定して実施される(電池パックの真贋判定)。
ここで、RFIDタグは、そのタグ用アンテナの背面に、電池パックの外観をなす金属製のケース又は電池本体が存在し、さらに、その敷設範囲がケースの表面又は電池本体の電極の面積よりも小さくなるため、このケースの表面又は電池本体の電極によってアンテナ部のアンテナ通信感度が低められる。
【0014】
一方、蓋部材には、タグリーダ用アンテナ部とカード用アンテナ部からなるアンテナが取り付けられる。このタグリーダ用アンテナ部がタグ用アンテナとの間で電池パックの真贋判定に関する無線通信を行い、カード用アンテナ部は例えば外部のカードリーダ用アンテナとの間にてこの真贋判定とは別の無線通信を行うが、タグリーダ用アンテナ部とカード用アンテナ部とが電気的に直列に接続されており、アンテナの多機能化を図ることができ、また、端子の共通化によって端子数の削減が可能になる。
【0015】
ところで、このタグリーダ用アンテナ部もまた、タグ用アンテナに対峙することから、その敷設範囲がケースの表面又は電池本体の電極の面積よりも小さくなる。また、カード用アンテナ部の正面に、ケースの表面又は電池本体の電極が存在している。つまり、これでは、このケースの表面又は電池本体の電極によってリーダ用及びカード用のいずれのアンテナ通信感度も低められてしまう。
【0016】
しかしながら、本発明では、タグ用アンテナ側の第1磁性体の敷設範囲と、カード用アンテナ側の第2磁性体の敷設範囲とを組み合わせてケースの表面又は電池本体の電極を始めて覆い隠しており、タグリーダ用アンテナ部の通信可能方向とカード用アンテナ部の通信可能方向とを異ならせ、さらに、いずれのアンテナ通信感度の悪化も防止できる。
【0017】
詳しくは、第2磁性体を、タグリーダ用アンテナ部とケースの表面又は電池本体の電極との間ではなく、カード用アンテナ部とケースの表面又は電池本体の電極との間だけに敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、第2磁性体が磁束を引き寄せ、上述した外部カードリーダ用アンテナとカード用アンテナ部との間にも磁束が貫通するからである。
【0018】
また、第1磁性体をタグ用アンテナのアンテナ部とケースの表面又は電池本体の電極との間に敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、第1磁性体が磁束を引き寄せ、タグリーダ用アンテナ部とタグ用アンテナとの間に磁束が貫通するからである。
第2の発明は、第1の発明の構成において、タグリーダ用アンテナ部を挟んでタグ用アンテナのアンテナ部とは反対側に配置され、このタグリーダ用アンテナ部のみを覆う金属製のシートと、これら金属製のシートとタグリーダ用アンテナ部との間に敷設された第3磁性体とをさらに具備することを特徴とする。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、第3磁性体が金属製のシートとタグリーダ用アンテナ部との間に敷設されており、この金属製のシートが無線通信の阻害要因にはならず、タグリーダ用アンテナ部の通信可能方向を確保できる。そして、金属製のシートは、電池パックの真贋判定に関する通信内容が外部に漏洩するのを確実に防止できる。
【0020】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、タグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部は、電気的に直接に接続されて螺旋状に巻回されており、タグリーダ用アンテナ部がカード用アンテナ部の内側に配置されていることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、タグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部を内側と外側とで一続きに接続すれば、各アンテナを別個に設けた場合に比して螺旋状の巻き数がいずれも少なくて済むし、各アンテナの敷設範囲も小さくできる。よって、多機能省スペースのアンテナを有する携帯端末を提供することができる。
【0021】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、タグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部は、外部に露出する蓋部材の蓋外面、或いは、蓋内面に取り付けられることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、直列に接続されたタグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部が蓋部材の同一面に形成されており、各アンテナを異なる面にそれぞれ設けた場合に比して、その製造が容易になる。
【0022】
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、カード用アンテナ部は、外部のリーダ/ライタとの間にて非接触無線通信を行うことを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、直列に接続されたタグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部は、電池パックの真贋判定の他、非接触無線通信として、例えば交通系やクレジットの電子マネーなど幅広い用途の通信を担える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タグ用磁性体の敷設範囲とカード用磁性体の敷設範囲とを組み合わせてケースの表面又は電池本体の電極を覆い隠しているため、無線通信の阻害要因を排除でき、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できる電池パック真贋判定機能付き携帯端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施例における電池パックの真贋判定機能を備えた携帯電話の外観斜視図である。
【図2】図1の携帯電話を折り畳み、その裏側を上方に向けた斜視図である。
【図3】図2から電池パックカバーを取り外した図である。
【図4】図3における電池パックの取り出し状態を示す図である。
【図5】図4の電池パックの外観斜視図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う格納部周辺の断面図である。
【図7】図6の電池パックカバーの平面図であり、(a)はベースフィルム、(b)はカード用アンテナ及びリーダ用アンテナ、(c)はカード用RFID磁性部材の説明図である。
【図8】図6の電池パックの平面図であり、(a)はRFIDタグ、(b)はベースフィルム、(c)はタグ用RFID磁性部材の説明図である。
【図9】他の例における格納部周辺の断面図である。
【図10】第2実施例のカード用アンテナ及びリーダ用アンテナの説明図である。
【図11】第3実施例の電池パックカバーの平面図であり、(a)は金属シート、(b)はリーダ用RFID磁性部材の説明図である。
【図12】さらに他の例におけるカード用アンテナ及びリーダ用アンテナの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、電池パック真贋判定機能を備えた携帯電話(携帯端末)1が示されている。この携帯電話1は、ディスプレイ側と操作側とに分離された電話本体(携帯端末本体)2を備える。
詳しくは、まず、ディスプレイ側には薄型で平たいハウジング3が配置され、このハウジング3は例えば名刺よりもやや大きな内面4を有する。
【0026】
この内面4の中央にはメイン画面5が設けられており、使用者の操作内容等の各種情報を表示できる。また、図1でみてメイン画面5の上方には受話口6や照度センサ(不図示)が設けられる。
ハウジング3は内面4の裏側にて外面7に連なり、この外面7には時刻等を表示するサブ画面8が設置される。なお、ハウジング3のうち受話口6の裏側には通話時等に利用するアンテナ(不図示)が内蔵されている。
【0027】
ハウジング3は、メイン画面5を挟んで受話口6の反対側にて操作側に連結される。
この操作側にはヒンジ9を有したハウジング10が配置され、上記ハウジング3はヒンジ9を介してハウジング10に回動自在に連結される。このハウジング10は、ハウジング3よりもやや長いが、同じく薄型で平たく形成されており、例えば名刺よりもやや大きな内面14を有する。
【0028】
この内面14には使用者の各種操作に供される複数の操作キー15が配置され、図1でみて操作キー15の下方には送話口16が設置されている。
ハウジング10もまた内面14の裏側にて外面17に連なり、図1の状態からハウジング3がハウジング10に向けて回動し、内面4と内面14とが対峙すると、電話本体2は約半分の長さに折り畳まれた状態になる(図2)。
【0029】
図2に示されるように、ハウジング10の外面17のうちヒンジ9の周辺には、スピーカ18、カメラのレンズ部19やカメラ起動ランプ20が設けられる。また、ヒンジ9の裏側にも通話時等に利用するアンテナ(不図示)がハウジング10に内蔵される。なお、参照符号21は、ACアダプタやUSBケーブルなどに接続可能な外部接続端子を覆うキャップ21である。
【0030】
外面17において、このキャップ21とカメラ起動ランプ20との間には電池パックカバー(蓋部材)22が設けられている。電池パックカバー22は、図2に図3を加えると容易に理解できるように、ハウジング10に装着された電池パック50の表面を覆う。電池パックカバー22の周縁には凸部(不図示)が複数形成され、これら凸部が図3,4に示す凹部33a,34aなどに係合すると、電池パックカバー22のカバー外面(蓋外面)22aは外面17と面一になる。
【0031】
また、電池パックカバー22は充電端子23を有し(図2,3)、この充電端子23は卓上ホルダーを利用して電池パック50を充電する場合に用いられる。
一方、図3の状態、つまり、電池パックカバー22がハウジング10から取り外された状態にて、電池パック50も図4に示される如くハウジング10から取り出すと、格納部30等が外部から視認可能になる。
【0032】
詳しくは、本実施例の格納部30は、電池パックカバー22に対峙する矩形状の開口を有し、この開口には4つの格納部側面31〜34が連なり、ハウジング3に向けて窪んだ筒状の凹所を形成している。
まず、端子側の格納部側面31とタブ受容側の格納部側面32とがハウジング10の長手方向に交差して配置され(図4)、角形状の電池パック50の長さに相当する空間を挟んで対向する。
【0033】
一方、図3でみて右側の格納部側面33と左側の格納部側面34とがハウジング10の長手方向に沿って配置され、これらは角形状の電池パック50の幅に相当する空間を挟んで対向する。
より具体的には、端子側の格納部側面31は、カメラ起動ランプ20の近傍に位置し、その左右両端にて右側の格納部側面33や左側の格納部側面34にそれぞれ交差する。これら右側や左側の格納部側面33,34との交差部分には、電池パック50のための固定用穴36,36が上記ヒンジ9に向けて窪んでいる(図4)。
【0034】
また、この端子側の格納部側面31のうち図4でみて右側の格納部側面33寄りには、本体側端子37が設置される。この本体側端子37は格納部30に装着された電池パック50に電気的に接続する。さらに、端子側の格納部側面31のうち左側の格納部側面34寄りには、使用者ICカード39を収納するホルダー38が設けられている。
【0035】
次に、これら右側や左側の格納部側面33,34は、図3,4にも示される如く、その中央部分が格納部30の外側に向けて若干膨出している。これら各膨出部分の周囲には上述した凹部33a,34aが形成され、電池パックカバー22の上記凸部に係合する。
そして、右側や左側の格納部側面33,34は、ハウジング10の長手方向に延びてタブ受容側の格納部側面32にもそれぞれ交差する。
【0036】
タブ受容側の格納部側面32はキャップ21の近傍に配置されており、これら4つの格納部側面31〜34で図5の電池パック50の電池側面61〜64を囲繞する。なお、タブ受容側の格納部側面32は、端子側の格納部側面31から離間する方向に向けてやや窪んだ湾曲部32aを有し(図4)、電池パック50のタブ78を納めることができ、また、電池パック50の取り出し時には使用者の指先も受容できる。
【0037】
本実施例の電池パック50は、格納部30に着脱可能に構成されたリチウムイオン電池である。
電池パック50は、図5に示されるように、角形状のケース(電池構成部材)51を備えている。このケース51は、金属製(例えばアルミラミネート材)で構成され、その装着時には電池パックカバー22に対峙する幅広の電池表面(電池構成部材の表面)52を有する。
【0038】
ケース51は、この図5でみて電池表面52の下側にも幅広の電池裏面53も有し、この電池裏面53が、格納部30への装着時には上記凹所の底部分に対峙する。
これら電池表面52や電池裏面53の周縁は、4つの電池側面61〜64にそれぞれ連なり、その装着時には4つの格納部側面31〜34に対向する。
【0039】
具体的には、端子側の電池側面61とタブ側の電池側面62とが電池パック50の長さ方向にて対向し、一方、図3,4でみて右側の電池側面63と左側の電池側面64とが電池パック50の幅方向にて対向する。また、端子側の電池側面61やタブ側の電池側面62の両端は、右側の電池側面63や左側の電池側面64にそれぞれ交差する。
【0040】
本実施例の電池パック50は、図5にも示される如く、端子側の電池側面61からタブ側の電池側面62までの長さが、右側の電池側面63から左側の電池側面64までの幅よりも小さく形成されている。
端子側の電池側面61は、右側の電池側面63寄りに、電池側端子77を有し、格納部30への装着時には、上記端子側の格納部側面31の本体側端子37を介して格納部30の近傍に配置された回路基板(不図示)に電気的に接続される。
【0041】
さらに、端子側の電池側面61は、右側の電池側面63や左側の電池側面64との交差部分に、樹脂製の固定用爪76,76を有しており、これら固定用爪76,76は、格納部30への装着時に固定用穴36,36に係合する。
タブ側の電池側面62は、上記タブ受容側の格納部側面32の上記湾曲部32aに受容される樹脂製のタブ78を有する。
【0042】
そして、ケース51の内部には、電池本体、つまり、例えばグラファイト製の負極部材、リチウム遷移金属酸化物製(例えばマンガンとニッケルの複合材など)の正極部材や、電解質(有機溶媒、或いはゲル状や固体のポリマー電解質)が納められており、放電時には、リチウムイオンが負極から正極に向けて移動して電池反応が進む一方、充電時には、リチウムイオンが正極から負極に向けて移動して電池反応が進む。
【0043】
なお、上記のように、ケース51にアルミラミネート材を用いれば、電池パック50の製造コストを抑えることができるが、これら負極部材、正極部材や電解質を有した電池本体は、アルミニウム製や鉄製の缶に納めることも可能である。
また、ケース51には、樹脂製若しくは紙製の絶縁シール74が貼付されている(図5)。
【0044】
この絶縁シール74は、電池パック50の幅方向に沿って1周分巻き付けられており、現物で云えば電池表面52、右側の電池側面63、電池裏面53や、左側の電池側面64は、絶縁シール74に覆われていない一部分が見えている。この絶縁シール74には、電池パック50の型名、出力電圧や容量の情報の他、格納部30への装着方向なども記載される。
【0045】
ここで、この電池パック50はRFIDタグ90を備えている(図3〜5)。
詳しくは、本実施例のRFIDタグ90は、電源を有しないパッシブタイプであり、図8(a)に示される如く、その中央部分にICチップ94が埋め込まれている。当該ICチップ94は、メモリへのデータの書き換え・追記機能を有し、タグ用アンテナ91に接続されている。
【0046】
本実施例のタグ用アンテナ91は電池表面52に配置され、その一例を挙げると、この電池表面52のうち右側の電池側面63とタブ側の電池側面62との交差部分の近傍に配置されている。
このタグ用アンテナ91は、螺旋状に巻回された複数ターンの導体を有したループアンテナ(アンテナ部)92と、このループアンテナ92を載置するアンテナ用基板93とから構成される。
【0047】
ループアンテナ92は、電磁誘導方式、例えば13.56MHzの周波数帯(短波:HF帯)による無線通信を行い、後述するリーダ/ライタ80に向けて電磁波を放射する磁界型のアンテナである。ループアンテナ92は、アンテナ用基板93に転写法などで形成され、その敷設範囲は電池表面52の面積よりも小さな面積(例えば10mm×10mm)で設けられている。
【0048】
このように、本実施例のタグ用アンテナ91は、そのループアンテナ92の背面にケース51の電池表面52が配置され、かつ、その敷設範囲も電池表面52の面積よりも小さいことから、そのアンテナ通信感度はケース51によって低められるが、本実施例では、タグ用RFID磁性部材(第1磁性体)96がアンテナ通信感度の低下を防止する。
【0049】
具体的には、アンテナ用基板93は、図6や図8(b)に示される如く、ループアンテナ92を載置する絶縁性の樹脂製ベースフィルム95を有し、さらに、図6や図8(c)に示されるように、このベースフィルム95を挟んでループアンテナ92の反対側、つまり、このベースフィルム95の裏側に、タグ用RFID磁性部材96を有している。
【0050】
なお、図6は、図2や図7のVI−VI線に沿う格納部30周辺の断面図であり、この図6では、アンテナ用基板93の構造の理解を助けるために、ベースフィルム95やタグ用RFID磁性部材96の厚みを特に大きく強調して示している。
ベースフィルム95は、例えば熱可塑性樹脂で平板状に構成され、その厚さは50μm(1μm=1×10−6m)程度で形成されている。
【0051】
次に、タグ用RFID磁性部材96は、ループアンテナ92の敷設範囲に設けられ、例えば絶縁膜を2層の磁性膜の間に介在させ、平板状の膜が交互に積層されている。このタグ用RFID磁性部材96は、例えば物理蒸着法によって成膜され、10μm程度の薄さで形成される。
また、本実施例のタグ用アンテナ91は、そのループアンテナ92の上方から絶縁シール74で覆われ、電池表面52に固定されている(図6)。
【0052】
よって、このタグ用アンテナ91は、電池表面52から若干盛り上がるが、電池パック50などの情報が記載された絶縁シール74で隠されており、仮に、電池パックカバー22を取り外して電池パック50の電池表面52側を見ても、RFIDタグ90を視認できない。
なお、RFIDタグ90を絶縁シール74の上に設け、電池パックカバー22を取り外せば、RFIDタグ90を外部から見えるようにしても良い。
【0053】
ところで、上述した回路基板には、携帯電話1を動作させるCPUやメモリ、チップ等の電子部品が実装されているとともに、格納部30に装着された電池パック50が純正品であるか否かを判定する制御部も搭載されている。
具体的には、この制御部はリーダ/ライタ80の構成要素であり、このリーダ/ライタ80のタグリーダ用アンテナ81とRFIDタグ90との無線通信の結果に基づいて電池パック50の真贋判定を実施できる。
【0054】
本実施例のタグリーダ用アンテナ81は、電池パックカバー22のカバー外面22aに配置されている(図6)。
詳しくは、タグリーダ用アンテナ81は、螺旋状に巻回された複数ターンの導体を有したループアンテナ(タグリーダ用アンテナ部)82と、このループアンテナ82を載置するアンテナ用基板43とから構成される。
【0055】
ループアンテナ82も磁界型のアンテナであり、アンテナ用基板43に転写法などで形成される。また、その敷設範囲は電池表面52の面積よりも小さな面積(例えば10mm×10mm)で設けられ、ループアンテナ82は、タグ用アンテナ91のループアンテナ92に完全に重なり合う位置に配置されている(図6,図7(b),図8(a))。
【0056】
一方、このアンテナ用基板43は、上記ループアンテナ82の敷設範囲よりも広く構成され、電池パック50の長さ方向及び幅方向に沿ってさらに延びており(図6,図7(a))、カード用アンテナ41も敷設している。
本実施例のカード用アンテナ41は、外部のリーダ/ライタ(不図示)との間にて非接触無線通信を行い、例えば交通系の電子マネーに用いることができる。
【0057】
詳しくは、カード用アンテナ41は、ループアンテナ82,92と同様に、螺旋状に巻回された複数ターンの導体を有したループアンテナ(カード用アンテナ部)42を有する。これに対し、このループアンテナ42の敷設範囲は電池表面52の面積に略等しい面積(例えば40mm×30mm)で設けられている(図7(b))。
【0058】
ここで、これらカード用アンテナ41のループアンテナ42とタグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82とは、電気的に直接に接続されて一続きに連結しており、この図7(b)に示されるように、タグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82が、カード用アンテナ41のループアンテナ42の内側に配置されている。
【0059】
そして、一続きに連結したループアンテナ42の端部分やループアンテナ82の端部分は、格納部30で云えば右側の格納部側面33に向けて引き出される。よって、電池パックカバー22をハウジング10に取り付けると、電池パックカバー22のカバー内面(蓋内面)22bが電池表面52に対向するとともに、タグリーダ用アンテナ81やカード用アンテナ41は、右側の格納部側面33の配線パターン(不図示)を経由して上記回路基板の制御部や使用者ICカード39にそれぞれ電気的に接続可能になる。
【0060】
このように、本実施例のカード用アンテナ41は、そのループアンテナ42の正面に電池表面52が配置されているため、そのアンテナ通信感度もケース51によって低められるが、本実施例では、カード用RFID磁性部材(第2磁性体)46がアンテナ通信感度の低下を防止する。
具体的には、アンテナ用基板43は、図6や図7(a)に示される如く、カバー外面22aに、ループアンテナ42,82を載置する絶縁性の樹脂製ベースフィルム45を有する一方、図6や図7(c)に示されるように、このカバー外面22aの裏側、すなわち、カバー内面22bに、カード用RFID磁性部材46を有している。
【0061】
なお、ループアンテナ42,82は、カバー外面22aに印刷或いはインサートモールドで埋め込んで一体化しても良い。また、この図6でもアンテナ用基板43の構造の理解を助けるために、ベースフィルム45やカード用RFID磁性部材46の厚みを特に大きく強調して示している。
このベースフィルム45も、その厚さが50μm程度の例えば熱可塑性樹脂で平板状に構成されている。
【0062】
次に、カード用RFID磁性部材46は、タグ用RFID磁性部材96と同様に、例えば絶縁膜を2層の磁性膜の間に介在させ、平板状の膜が交互に積層されており、カバー内面22bに印刷或いはスパッタ処理にて一体化されているが、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設されており(図6や図7(c))、カード用RFID磁性部材46の敷設面積は、ベースフィルム45の敷設面積からタグ用RFID磁性部材96の敷設面積を除いた広さで形成されている。
【0063】
換言すれば、図7(c)のカード用RFID磁性部材46は、図8(c)のタグ用RFID磁性部材96とは異なり、電池表面52を直に覆っていないものの、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲とカード用RFID磁性部材46の敷設範囲とを格納部30の深さ方向で組み合わせると、電池表面52を始めて覆い隠すことができる。
【0064】
つまり、図7(c)に示されるような、電話本体2の外面17から電池パックカバー22を透かして見た平面視では、電池表面52がタグ用RFID磁性部材96とカード用RFID磁性部材46とで覆われて見えなくなるのである。
このカード用RFID磁性部材46についても、タグ用RFID磁性部材96と同様に例えば物理蒸着法によって成膜され、10μm程度の薄さで形成されており、磁性膜の多層構成によれば、各磁性膜の総厚を少なくしつつも高い通信出力を得ることが可能になる。
【0065】
すなわち、まず、RFIDタグ90においては、タグ用RFID磁性部材96がループアンテナ92と電池表面52との間に挿入され、数mmの通信距離を得ることができる。
詳しくは、タグリーダ用アンテナ81からの磁束は、タグ用RFID磁性部材96内を通り、ループアンテナ82とループアンテナ92との間で磁界結合が生じて還流磁束を形成できる。
【0066】
この結果、電池表面52に近接した微小空間にて無線通信を行っても、タグリーダ用アンテナ81とタグ用アンテナ91との間に磁気的な結合が生じ、そのループアンテナ92に誘導起電力が生じてICチップ94が起動する。
一方、このICチップ94からのアンサー信号はタグリーダ用アンテナ81で受信されて上記回路基板の制御部に向けて出力される。
【0067】
これにより、携帯電話1の内部、つまり、電話本体2側のリーダ/ライタ80と電池パック50側のRFIDタグ90との間で非接触の無線通信が可能になり、この制御部は、電池パック50のID認証によって、格納部30に装着された電池パック50が純正品であるか否かを判定できる。
さらに、カード用アンテナ41においても、カード用RFID磁性部材46がループアンテナ42と電池表面52との間に挿入され、数cmの通信距離が得られる。
【0068】
このため、上述した外部のリーダ/ライタ、つまり、カードリーダ用アンテナ(不図示)からの磁束は、カード用RFID磁性部材46内を通り、ループアンテナ42との間で磁界結合が生じて還流磁束を形成できる。
したがって、電池表面52に近接した位置にて無線通信を行っても、上記外部カードリーダ用アンテナとカード用アンテナ41との間に磁気的な結合が生じ、そのループアンテナ42に誘導起電力が生じて外部カードリーダと通信を行うことができる。
【0069】
ところで、タグリーダ用アンテナ81やカード用アンテナ41はカバー内面22bに取り付けられていても良い(図9)。
【0070】
詳しくは、この図9は、図2や図7のVI−VI線に沿う格納部30周辺の断面図に相当するが、図8までの実施例と同じ機能を奏する構成には同じ符号を付してその説明を省略すると、図9に示されたタグリーダ用アンテナ81やカード用アンテナ41は、カード用RFID磁性部材46と同じ側、すなわち、そのループアンテナ42,82もカバー内面22bに設けられている。
【0071】
そして、カード用RFID磁性部材46は、ループアンテナ42,82を載置するベースフィルム45の裏側に配置されており、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設され、これらタグ用RFID磁性部材96の敷設範囲とカード用RFID磁性部材46の敷設範囲とをハウジング10の深さ方向で組み合わせると、電池表面52を始めて覆い隠している。
【0072】
なお、この場合のループアンテナ42,82は、カバー内面22bに印刷或いはインサートモールドで埋め込んで一体化しても良く、また、これらループアンテナ42,82、ベースフィルム45、及びタグ用RFID磁性部材96を一体化してカバー内面22bにインサート成型或いは貼付しても良い。
一方、タグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82は、カード用アンテナ41のループアンテナ42の内側に配置されていなくても良い。
【0073】
つまり、ループアンテナ42とループアンテナ82とが一続きに連結され、カード用RFID磁性部材46がタグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設されていれば、図7(b)に相当する図10に示されるように、このループアンテナ82が、ループアンテナ42の一部分に構成され、上記タグ用アンテナ91のループアンテナ92に部分的に重なり合う位置に配置されていても良い。
【0074】
さらに、タグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82は金属シート(金属製のシート)87で覆われていても良い(図11)。
具体的には、この図11は、ベースフィルム45やループアンテナ42,82をカバー外面22aに備えた図6や図7(a)の例に相当する。金属シート87は、ループアンテナ82を挟んでタグ用アンテナ91の反対側、この実施例で云えば、カバー外面22aに配置したベースフィルム45の上方にて、ループアンテナ82のみを覆っている(図11(a))。
【0075】
そして、この金属シート87の裏側、つまり、これら金属シート87とループアンテナ82との間には、この金属シート87と同じ敷設面積のリーダ用RFID磁性部材(第3磁性体)86が、ベースフィルム45の上に敷設されている(図11(b))。
なお、金属シート87やリーダ用RFID磁性部材86は、ベースフィルム45やループアンテナ42,82をカバー内面22bに備えた図9の実施例にも適用可能であり、この場合には、リーダ用RFID磁性部材86がカバー外面22aの上に、金属シート87がリーダ用RFID磁性部材86の上に配置される。
【0076】
さらにまた、上述の各実施例は、いずれも電池パックカバー22が外面17とは別個に構成されている(図12(a))。
しかし、電池パック50を覆う限り、図12(b)に示されるように、電話本体2の裏側全体を覆う裏カバー(蓋部材)22Aであっても良い。この場合のカード用RFID磁性部材46は、電池表面52のうちタグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設されるが(図中に1点鎖線で示す)、カード用アンテナ41のループアンテナ42は、裏カバー22Aの全領域に亘って敷設できる。
【0077】
以上のように、上記各実施例によれば、携帯電話1は、電話本体2と、この電話本体2に着脱可能に構成された角形状の電池パック50とを具備する。電池パック50は、金属製のケース51を備え、ケース51の内側には二次電池として機能する電池本体が納められる。一方、このケース51の外側にはRFIDタグ90が取り付けられている。
【0078】
格納部30に装着された電池パック50が純正品であるか否かは、電池パック50側のRFIDタグ90と電話本体2側のリーダ/ライタ80との無線通信が行われた結果を格納部30の周辺に配置された回路基板にて判定して実施される(電池パックの真贋判定)。
しかし、RFIDタグ90は、そのループアンテナ92の背面に、電池パック50の外観をなす金属製のケース51が存在し、さらに、ループアンテナ92の敷設範囲が電池表面52の面積よりも小さいため、このケース51によってそのループアンテナ92のアンテナ通信感度が低められる。
【0079】
一方、電池パックカバー22(或いは裏カバー22A)には、ループアンテナ82やループアンテナ42が取り付けられる。このループアンテナ82がタグ用アンテナ91との間で電池パック50の真贋判定に関する無線通信を行い、ループアンテナ42は、携帯電話1の外部のカードリーダ用アンテナとの間にてこの真贋判定とは別の無線通信を行うが、ループアンテナ82とループアンテナ42とが電気的に直列に接続されており、アンテナの多機能化を図ることができ、また、端子の共通化によって端子数の削減が可能になる。
【0080】
ところで、タグリーダ用アンテナ81もまた、タグ用アンテナ91に対峙することから、そのループアンテナ82の敷設範囲が電池表面52の面積よりも小さくなる。また、カード用アンテナ41の正面に、電池表面52が存在している。つまり、これでは、この電池表面52によっていずれのループアンテナ42,82のアンテナ通信感度も低められてしまう。
【0081】
しかしながら、本実施例では、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲と、カード用RFID磁性部材46の敷設範囲とを組み合わせて電池表面52を始めて覆い隠しており、ループアンテナ82の通信可能方向とループアンテナ42の通信可能方向とを異ならせ、さらに、各アンテナ通信感度の悪化を防止できる。
【0082】
より詳しくは、外面17から電池パックカバー22を透かして見て(図7(c))、仮に、カード用RFID磁性部材46だけで電池表面52の全体を覆ってしまうと、磁束がカード用RFID磁性部材46に回り、RFIDタグ90は通信困難になる。
これに対し、本実施例の如くカード用RFID磁性部材46を、ループアンテナ82と電池表面52との間ではなく、ループアンテナ42と電池表面52との間だけに敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、まず、カード用RFID磁性部材46が磁束を引き寄せ、上述した携帯電話1の外部とループアンテナ42との間に磁束が貫通する。
【0083】
したがって、カード用RFID磁性部材46は、ループアンテナ42から見れば、携帯電話1の外部への通信方向を確保できる。
一方、タグ用RFID磁性部材96を、ループアンテナ92と電池表面52との間に敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、タグ用RFID磁性部材96が磁束を引き寄せ、ループアンテナ82とループアンテナ92との間にも磁束が貫通する。
【0084】
よって、タグ用RFID磁性部材96は、ループアンテナ82から見れば、携帯電話1の内部への通信方向を確保できる。これにより、例えば、純正品であると判定された電池パック50のみを携帯電話1の駆動用電源として使用可能になり、その使用者の安全を確保できる。
さらにまた、磁性膜を2層に分断し、その間に絶縁膜の層を挟んだカード用RFID磁性部材46やタグ用RFID磁性部材96を用いれば、上記アンテナ通信感度の向上に加え、薄いアンテナを得ることができ、携帯電話1の薄型化の要求にも対応できる。
【0085】
また、図11に示した実施例では、リーダ用RFID磁性部材86が金属シート87とループアンテナ82との間に敷設されている。
よって、この金属シート87が無線通信の阻害要因にはならず、ループアンテナ82の通信可能方向を確保できる。そして、金属シート87は、電池パック50の真贋判定に関する通信内容が携帯電話1の外部に漏洩するのを確実に防止できる。
【0086】
さらに、ループアンテナ82とループアンテナ42とを内側と外側とに配置して一続きに接続すれば、各アンテナを別個に設けた場合に比して螺旋状の巻き数がいずれも少なくて済むし、各アンテナの敷設範囲も小さくできる。したがって、多機能省スペースのアンテナを有する携帯電話1を提供することができる。
【0087】
さらにまた、一続きに連結されたループアンテナ82及びループアンテナ42が電池パックカバー22(或いは裏カバー22A)の同一面に形成されており、各アンテナを異なる面にそれぞれ設けた場合に比して、その製造が容易になる。
また、これらループアンテナ82及びループアンテナ42は、電池パック50の真贋判定の他、非接触無線通信として、例えば交通系の電子マネーなど幅広い用途の通信を担うことができる。
【0088】
本発明は、上記各実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記各実施例のループアンテナ82及びループアンテナ42は、ベースフィルム45の同一面に配置され、製造の容易化が図られているものの、直列に接続される点を条件として、ベースフィルム45の表面と裏面とに分けて別個に配置することもできる。
【0089】
また、カード用アンテナ41は、実施例で説明した交通系の電子マネーの他、クレジットに用いられても良い。
さらに、上記各実施例は、携帯電話1に具現化した例で説明されている。しかし、使用者の安全を確保するために、電池パック50のID管理が必要である限り、PHSやPDAなどのモバイル用途の電子機器にも当然に適用可能である。
【0090】
さらにまた、上記実施例では金属製のケース51を例示して説明しているが、上記正極部材、負極部材や電解質を有した電池本体(電池構成部材)を樹脂製のケースに納めても良い。
具体的には、この樹脂製のケースは開口を有したカップ状に形成されており、電池本体をそのカップ状の有底部分に配置すると、上記正極部材や負極部材をなす電極(電池構成部材の表面)がケースの開口から露出した状態で収納される。
【0091】
そして、この開口は電池パックなどの情報を記載した絶縁シールで覆われ、電極は絶縁シールで隠される。
RFIDタグは例えばこの絶縁シールの上に貼付され、絶縁シールを介して電極に取り付けられることになるが、この電極はリーダ用及びカード用のアンテナ通信感度を低める要因になる。
【0092】
このように、ケースではなく、電池本体の電極が通信阻害要因になる場合にも、タグ用RFID磁性部材の敷設範囲と、カード用RFID磁性部材の敷設範囲とを組み合わせて電池本体の電極を覆い隠している。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、アンテナの多機能化を図りつつ、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0093】
1 携帯電話(携帯端末)
2 電話本体(携帯端末本体)
22 電池パックカバー(蓋部材)
22a カバー外面(蓋外面)
22b カバー内面(蓋内面)
22A 裏カバー(蓋部材)
41 カード用アンテナ
42 ループアンテナ(カード用アンテナ部)
46 カード用RFID磁性部材(第2磁性体)
50 電池パック
51 ケース(電池構成部材)
52 電池表面(電池構成部材の表面)
80 リーダ/ライタ
81 タグリーダ用アンテナ
82 ループアンテナ(タグリーダ用アンテナ部)
86 リーダ用RFID磁性部材(第3磁性体)
87 金属シート(金属製のシート)
90 RFIDタグ
91 タグ用アンテナ
92 ループアンテナ(アンテナ部)
96 タグ用RFID磁性部材(第1磁性体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末本体に対して着脱可能な電池パックの真贋判定機能付き携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の携帯端末、例えば携帯電話などの持ち運び可能なモバイル電子機器は、二次電池(電池パック)から供給された電力で駆動することができ、そのモバイル性の発揮には電池パックが不可欠である。この電池パックは、携帯端末本体に対して着脱可能に構成されており、例えば寿命に達した電池パックを新たな電池パックに交換できる。
【0003】
この新たな電池パックが携帯端末の製造者(或いはその許可を得た者)によって正規に設計された純正品である場合には、この携帯端末の使用者は、安全性が保証された駆動用電源として当該電池パックを使用できる。
これに対し、純正品ではない場合には、その使用は携帯端末の誤動作や、その内部の電子部品を損傷させる可能性が高くなり、また、充放電時における電池パックの安全性についても保証されていない。
【0004】
よって、携帯端末使用者の安全を確保するためには、純正品ではない電池パックを使用させないことが望ましく、当該電池パックの使用を防止するか、純正品以外の電池パックの使用を監視する必要がある。そして、RFID(Radio Frequency IDentification)を用いて電池パックの真贋を判定することがある。
詳しくは、電池パックには、RFIDタグのアンテナ部やICチップが設けられ、この電池パック側のアンテナ部とリーダ/ライタ側のアンテナ部との無線通信によって電池パックの識別情報を管理し、使用者の安全を確保する。
【0005】
ここで、上述したRFIDは例えば非接触ICカードによる無線通信、具体的には交通系などの電子マネーにて既に用いられており、携帯端末に対して既知の構成である。つまり、これらICカードや電池パックの真贋判定に関する各無線通信が可能な携帯端末の内部には、複数の用途に対応できるアンテナ部が必要になる。そのため、相互干渉を抑えつつ、複数の用途に使用できるアンテナ部の技術を利用することが考えられる(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−126901号公報
【特許文献2】特開2003−85519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した電池パックは、電極などの金属部品が使用され、さらには金属製のケースが使用される場合もあり、これらの金属製の部材が上記無線通信の阻害要因になる。
より具体的には、一般に使用される13.56MHz帯や125kHz帯のRFIDでは電池パック側のアンテナ部の背面に、金属製の部材が存在すると、この金属製の部材がリーダ/ライタ側のアンテナ部から照射された電磁波を反射したり、若しくは吸収して反磁束を生じさせ、アンテナ通信感度を低下させるのである。
【0008】
この場合に、仮に、上記技術の組み合わせ構成、すなわち、大小2つのアンテナ部が電気的に直列に接続され、そのうち小さなアンテナ部の背面に、磁性材を配置した構成を利用できたとしても、無線通信が依然として困難になるという問題がある。それは、磁性材を配置しない大きなアンテナ部では金属製の部材によってアンテナ通信感度が低められるからである。
【0009】
このように、電池パックがアンテナ部に近接している場合には、その無線通信を確保するための措置が別途必要になる。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、アンテナの多機能化を図りつつ、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できる電池パック真贋判定機能付き携帯端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の発明は、電池パック側のRFIDタグと携帯端末本体側のリーダ/ライタとの無線通信を行う携帯端末であって、電池パックは、金属製の電池構成部材と、この電池構成部材の表面に取り付けられるRFIDタグのタグ用アンテナと、このタグ用アンテナのアンテナ部と電池構成部材の表面との間に敷設された第1磁性体とを具備する。
【0011】
一方、携帯端末本体は、電池パックの真贋判定を実施可能な回路基板と、装着された電池パックに対向する蓋内面を有した蓋部材と、蓋部材に取り付けられるリーダ/ライタのタグリーダ用アンテナ部と、このタグリーダ用アンテナ部に対して電気的に直接に接続され、上述した無線通信とは別の無線通信を行うカード用アンテナ部と、蓋内面に設けられており、カード用アンテナ部のみと電池構成部材の表面との間であって、この電池構成部材の表面のうち第1磁性体の敷設範囲を除いた領域に敷設された第2磁性体とを具備する。
【0012】
本発明は、無線通信の阻害要因をRFID用の磁性体で覆い隠す点に着目したものである。
第1の発明によれば、携帯端末は、携帯端末本体と、この携帯端末本体に着脱可能に構成された電池パックとを具備する。電池パックは、金属製の電池構成部材、例えば金属製のケース又は電池本体を備え、このケースの内側には電極等の二次電池として機能する電池本体が納められる。一方、この金属製のケースの表面又は電池本体の電極にはRFIDタグが取り付けられている。
【0013】
装着された電池パックが純正品であるか否かは、電池パック側のRFIDタグと携帯端末本体側のリーダ/ライタとの無線通信が行われた結果を携帯端末本体の回路基板にて判定して実施される(電池パックの真贋判定)。
ここで、RFIDタグは、そのタグ用アンテナの背面に、電池パックの外観をなす金属製のケース又は電池本体が存在し、さらに、その敷設範囲がケースの表面又は電池本体の電極の面積よりも小さくなるため、このケースの表面又は電池本体の電極によってアンテナ部のアンテナ通信感度が低められる。
【0014】
一方、蓋部材には、タグリーダ用アンテナ部とカード用アンテナ部からなるアンテナが取り付けられる。このタグリーダ用アンテナ部がタグ用アンテナとの間で電池パックの真贋判定に関する無線通信を行い、カード用アンテナ部は例えば外部のカードリーダ用アンテナとの間にてこの真贋判定とは別の無線通信を行うが、タグリーダ用アンテナ部とカード用アンテナ部とが電気的に直列に接続されており、アンテナの多機能化を図ることができ、また、端子の共通化によって端子数の削減が可能になる。
【0015】
ところで、このタグリーダ用アンテナ部もまた、タグ用アンテナに対峙することから、その敷設範囲がケースの表面又は電池本体の電極の面積よりも小さくなる。また、カード用アンテナ部の正面に、ケースの表面又は電池本体の電極が存在している。つまり、これでは、このケースの表面又は電池本体の電極によってリーダ用及びカード用のいずれのアンテナ通信感度も低められてしまう。
【0016】
しかしながら、本発明では、タグ用アンテナ側の第1磁性体の敷設範囲と、カード用アンテナ側の第2磁性体の敷設範囲とを組み合わせてケースの表面又は電池本体の電極を始めて覆い隠しており、タグリーダ用アンテナ部の通信可能方向とカード用アンテナ部の通信可能方向とを異ならせ、さらに、いずれのアンテナ通信感度の悪化も防止できる。
【0017】
詳しくは、第2磁性体を、タグリーダ用アンテナ部とケースの表面又は電池本体の電極との間ではなく、カード用アンテナ部とケースの表面又は電池本体の電極との間だけに敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、第2磁性体が磁束を引き寄せ、上述した外部カードリーダ用アンテナとカード用アンテナ部との間にも磁束が貫通するからである。
【0018】
また、第1磁性体をタグ用アンテナのアンテナ部とケースの表面又は電池本体の電極との間に敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、第1磁性体が磁束を引き寄せ、タグリーダ用アンテナ部とタグ用アンテナとの間に磁束が貫通するからである。
第2の発明は、第1の発明の構成において、タグリーダ用アンテナ部を挟んでタグ用アンテナのアンテナ部とは反対側に配置され、このタグリーダ用アンテナ部のみを覆う金属製のシートと、これら金属製のシートとタグリーダ用アンテナ部との間に敷設された第3磁性体とをさらに具備することを特徴とする。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、第3磁性体が金属製のシートとタグリーダ用アンテナ部との間に敷設されており、この金属製のシートが無線通信の阻害要因にはならず、タグリーダ用アンテナ部の通信可能方向を確保できる。そして、金属製のシートは、電池パックの真贋判定に関する通信内容が外部に漏洩するのを確実に防止できる。
【0020】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、タグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部は、電気的に直接に接続されて螺旋状に巻回されており、タグリーダ用アンテナ部がカード用アンテナ部の内側に配置されていることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、タグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部を内側と外側とで一続きに接続すれば、各アンテナを別個に設けた場合に比して螺旋状の巻き数がいずれも少なくて済むし、各アンテナの敷設範囲も小さくできる。よって、多機能省スペースのアンテナを有する携帯端末を提供することができる。
【0021】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、タグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部は、外部に露出する蓋部材の蓋外面、或いは、蓋内面に取り付けられることを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、直列に接続されたタグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部が蓋部材の同一面に形成されており、各アンテナを異なる面にそれぞれ設けた場合に比して、その製造が容易になる。
【0022】
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、カード用アンテナ部は、外部のリーダ/ライタとの間にて非接触無線通信を行うことを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、直列に接続されたタグリーダ用アンテナ部及びカード用アンテナ部は、電池パックの真贋判定の他、非接触無線通信として、例えば交通系やクレジットの電子マネーなど幅広い用途の通信を担える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タグ用磁性体の敷設範囲とカード用磁性体の敷設範囲とを組み合わせてケースの表面又は電池本体の電極を覆い隠しているため、無線通信の阻害要因を排除でき、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できる電池パック真贋判定機能付き携帯端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施例における電池パックの真贋判定機能を備えた携帯電話の外観斜視図である。
【図2】図1の携帯電話を折り畳み、その裏側を上方に向けた斜視図である。
【図3】図2から電池パックカバーを取り外した図である。
【図4】図3における電池パックの取り出し状態を示す図である。
【図5】図4の電池パックの外観斜視図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う格納部周辺の断面図である。
【図7】図6の電池パックカバーの平面図であり、(a)はベースフィルム、(b)はカード用アンテナ及びリーダ用アンテナ、(c)はカード用RFID磁性部材の説明図である。
【図8】図6の電池パックの平面図であり、(a)はRFIDタグ、(b)はベースフィルム、(c)はタグ用RFID磁性部材の説明図である。
【図9】他の例における格納部周辺の断面図である。
【図10】第2実施例のカード用アンテナ及びリーダ用アンテナの説明図である。
【図11】第3実施例の電池パックカバーの平面図であり、(a)は金属シート、(b)はリーダ用RFID磁性部材の説明図である。
【図12】さらに他の例におけるカード用アンテナ及びリーダ用アンテナの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、電池パック真贋判定機能を備えた携帯電話(携帯端末)1が示されている。この携帯電話1は、ディスプレイ側と操作側とに分離された電話本体(携帯端末本体)2を備える。
詳しくは、まず、ディスプレイ側には薄型で平たいハウジング3が配置され、このハウジング3は例えば名刺よりもやや大きな内面4を有する。
【0026】
この内面4の中央にはメイン画面5が設けられており、使用者の操作内容等の各種情報を表示できる。また、図1でみてメイン画面5の上方には受話口6や照度センサ(不図示)が設けられる。
ハウジング3は内面4の裏側にて外面7に連なり、この外面7には時刻等を表示するサブ画面8が設置される。なお、ハウジング3のうち受話口6の裏側には通話時等に利用するアンテナ(不図示)が内蔵されている。
【0027】
ハウジング3は、メイン画面5を挟んで受話口6の反対側にて操作側に連結される。
この操作側にはヒンジ9を有したハウジング10が配置され、上記ハウジング3はヒンジ9を介してハウジング10に回動自在に連結される。このハウジング10は、ハウジング3よりもやや長いが、同じく薄型で平たく形成されており、例えば名刺よりもやや大きな内面14を有する。
【0028】
この内面14には使用者の各種操作に供される複数の操作キー15が配置され、図1でみて操作キー15の下方には送話口16が設置されている。
ハウジング10もまた内面14の裏側にて外面17に連なり、図1の状態からハウジング3がハウジング10に向けて回動し、内面4と内面14とが対峙すると、電話本体2は約半分の長さに折り畳まれた状態になる(図2)。
【0029】
図2に示されるように、ハウジング10の外面17のうちヒンジ9の周辺には、スピーカ18、カメラのレンズ部19やカメラ起動ランプ20が設けられる。また、ヒンジ9の裏側にも通話時等に利用するアンテナ(不図示)がハウジング10に内蔵される。なお、参照符号21は、ACアダプタやUSBケーブルなどに接続可能な外部接続端子を覆うキャップ21である。
【0030】
外面17において、このキャップ21とカメラ起動ランプ20との間には電池パックカバー(蓋部材)22が設けられている。電池パックカバー22は、図2に図3を加えると容易に理解できるように、ハウジング10に装着された電池パック50の表面を覆う。電池パックカバー22の周縁には凸部(不図示)が複数形成され、これら凸部が図3,4に示す凹部33a,34aなどに係合すると、電池パックカバー22のカバー外面(蓋外面)22aは外面17と面一になる。
【0031】
また、電池パックカバー22は充電端子23を有し(図2,3)、この充電端子23は卓上ホルダーを利用して電池パック50を充電する場合に用いられる。
一方、図3の状態、つまり、電池パックカバー22がハウジング10から取り外された状態にて、電池パック50も図4に示される如くハウジング10から取り出すと、格納部30等が外部から視認可能になる。
【0032】
詳しくは、本実施例の格納部30は、電池パックカバー22に対峙する矩形状の開口を有し、この開口には4つの格納部側面31〜34が連なり、ハウジング3に向けて窪んだ筒状の凹所を形成している。
まず、端子側の格納部側面31とタブ受容側の格納部側面32とがハウジング10の長手方向に交差して配置され(図4)、角形状の電池パック50の長さに相当する空間を挟んで対向する。
【0033】
一方、図3でみて右側の格納部側面33と左側の格納部側面34とがハウジング10の長手方向に沿って配置され、これらは角形状の電池パック50の幅に相当する空間を挟んで対向する。
より具体的には、端子側の格納部側面31は、カメラ起動ランプ20の近傍に位置し、その左右両端にて右側の格納部側面33や左側の格納部側面34にそれぞれ交差する。これら右側や左側の格納部側面33,34との交差部分には、電池パック50のための固定用穴36,36が上記ヒンジ9に向けて窪んでいる(図4)。
【0034】
また、この端子側の格納部側面31のうち図4でみて右側の格納部側面33寄りには、本体側端子37が設置される。この本体側端子37は格納部30に装着された電池パック50に電気的に接続する。さらに、端子側の格納部側面31のうち左側の格納部側面34寄りには、使用者ICカード39を収納するホルダー38が設けられている。
【0035】
次に、これら右側や左側の格納部側面33,34は、図3,4にも示される如く、その中央部分が格納部30の外側に向けて若干膨出している。これら各膨出部分の周囲には上述した凹部33a,34aが形成され、電池パックカバー22の上記凸部に係合する。
そして、右側や左側の格納部側面33,34は、ハウジング10の長手方向に延びてタブ受容側の格納部側面32にもそれぞれ交差する。
【0036】
タブ受容側の格納部側面32はキャップ21の近傍に配置されており、これら4つの格納部側面31〜34で図5の電池パック50の電池側面61〜64を囲繞する。なお、タブ受容側の格納部側面32は、端子側の格納部側面31から離間する方向に向けてやや窪んだ湾曲部32aを有し(図4)、電池パック50のタブ78を納めることができ、また、電池パック50の取り出し時には使用者の指先も受容できる。
【0037】
本実施例の電池パック50は、格納部30に着脱可能に構成されたリチウムイオン電池である。
電池パック50は、図5に示されるように、角形状のケース(電池構成部材)51を備えている。このケース51は、金属製(例えばアルミラミネート材)で構成され、その装着時には電池パックカバー22に対峙する幅広の電池表面(電池構成部材の表面)52を有する。
【0038】
ケース51は、この図5でみて電池表面52の下側にも幅広の電池裏面53も有し、この電池裏面53が、格納部30への装着時には上記凹所の底部分に対峙する。
これら電池表面52や電池裏面53の周縁は、4つの電池側面61〜64にそれぞれ連なり、その装着時には4つの格納部側面31〜34に対向する。
【0039】
具体的には、端子側の電池側面61とタブ側の電池側面62とが電池パック50の長さ方向にて対向し、一方、図3,4でみて右側の電池側面63と左側の電池側面64とが電池パック50の幅方向にて対向する。また、端子側の電池側面61やタブ側の電池側面62の両端は、右側の電池側面63や左側の電池側面64にそれぞれ交差する。
【0040】
本実施例の電池パック50は、図5にも示される如く、端子側の電池側面61からタブ側の電池側面62までの長さが、右側の電池側面63から左側の電池側面64までの幅よりも小さく形成されている。
端子側の電池側面61は、右側の電池側面63寄りに、電池側端子77を有し、格納部30への装着時には、上記端子側の格納部側面31の本体側端子37を介して格納部30の近傍に配置された回路基板(不図示)に電気的に接続される。
【0041】
さらに、端子側の電池側面61は、右側の電池側面63や左側の電池側面64との交差部分に、樹脂製の固定用爪76,76を有しており、これら固定用爪76,76は、格納部30への装着時に固定用穴36,36に係合する。
タブ側の電池側面62は、上記タブ受容側の格納部側面32の上記湾曲部32aに受容される樹脂製のタブ78を有する。
【0042】
そして、ケース51の内部には、電池本体、つまり、例えばグラファイト製の負極部材、リチウム遷移金属酸化物製(例えばマンガンとニッケルの複合材など)の正極部材や、電解質(有機溶媒、或いはゲル状や固体のポリマー電解質)が納められており、放電時には、リチウムイオンが負極から正極に向けて移動して電池反応が進む一方、充電時には、リチウムイオンが正極から負極に向けて移動して電池反応が進む。
【0043】
なお、上記のように、ケース51にアルミラミネート材を用いれば、電池パック50の製造コストを抑えることができるが、これら負極部材、正極部材や電解質を有した電池本体は、アルミニウム製や鉄製の缶に納めることも可能である。
また、ケース51には、樹脂製若しくは紙製の絶縁シール74が貼付されている(図5)。
【0044】
この絶縁シール74は、電池パック50の幅方向に沿って1周分巻き付けられており、現物で云えば電池表面52、右側の電池側面63、電池裏面53や、左側の電池側面64は、絶縁シール74に覆われていない一部分が見えている。この絶縁シール74には、電池パック50の型名、出力電圧や容量の情報の他、格納部30への装着方向なども記載される。
【0045】
ここで、この電池パック50はRFIDタグ90を備えている(図3〜5)。
詳しくは、本実施例のRFIDタグ90は、電源を有しないパッシブタイプであり、図8(a)に示される如く、その中央部分にICチップ94が埋め込まれている。当該ICチップ94は、メモリへのデータの書き換え・追記機能を有し、タグ用アンテナ91に接続されている。
【0046】
本実施例のタグ用アンテナ91は電池表面52に配置され、その一例を挙げると、この電池表面52のうち右側の電池側面63とタブ側の電池側面62との交差部分の近傍に配置されている。
このタグ用アンテナ91は、螺旋状に巻回された複数ターンの導体を有したループアンテナ(アンテナ部)92と、このループアンテナ92を載置するアンテナ用基板93とから構成される。
【0047】
ループアンテナ92は、電磁誘導方式、例えば13.56MHzの周波数帯(短波:HF帯)による無線通信を行い、後述するリーダ/ライタ80に向けて電磁波を放射する磁界型のアンテナである。ループアンテナ92は、アンテナ用基板93に転写法などで形成され、その敷設範囲は電池表面52の面積よりも小さな面積(例えば10mm×10mm)で設けられている。
【0048】
このように、本実施例のタグ用アンテナ91は、そのループアンテナ92の背面にケース51の電池表面52が配置され、かつ、その敷設範囲も電池表面52の面積よりも小さいことから、そのアンテナ通信感度はケース51によって低められるが、本実施例では、タグ用RFID磁性部材(第1磁性体)96がアンテナ通信感度の低下を防止する。
【0049】
具体的には、アンテナ用基板93は、図6や図8(b)に示される如く、ループアンテナ92を載置する絶縁性の樹脂製ベースフィルム95を有し、さらに、図6や図8(c)に示されるように、このベースフィルム95を挟んでループアンテナ92の反対側、つまり、このベースフィルム95の裏側に、タグ用RFID磁性部材96を有している。
【0050】
なお、図6は、図2や図7のVI−VI線に沿う格納部30周辺の断面図であり、この図6では、アンテナ用基板93の構造の理解を助けるために、ベースフィルム95やタグ用RFID磁性部材96の厚みを特に大きく強調して示している。
ベースフィルム95は、例えば熱可塑性樹脂で平板状に構成され、その厚さは50μm(1μm=1×10−6m)程度で形成されている。
【0051】
次に、タグ用RFID磁性部材96は、ループアンテナ92の敷設範囲に設けられ、例えば絶縁膜を2層の磁性膜の間に介在させ、平板状の膜が交互に積層されている。このタグ用RFID磁性部材96は、例えば物理蒸着法によって成膜され、10μm程度の薄さで形成される。
また、本実施例のタグ用アンテナ91は、そのループアンテナ92の上方から絶縁シール74で覆われ、電池表面52に固定されている(図6)。
【0052】
よって、このタグ用アンテナ91は、電池表面52から若干盛り上がるが、電池パック50などの情報が記載された絶縁シール74で隠されており、仮に、電池パックカバー22を取り外して電池パック50の電池表面52側を見ても、RFIDタグ90を視認できない。
なお、RFIDタグ90を絶縁シール74の上に設け、電池パックカバー22を取り外せば、RFIDタグ90を外部から見えるようにしても良い。
【0053】
ところで、上述した回路基板には、携帯電話1を動作させるCPUやメモリ、チップ等の電子部品が実装されているとともに、格納部30に装着された電池パック50が純正品であるか否かを判定する制御部も搭載されている。
具体的には、この制御部はリーダ/ライタ80の構成要素であり、このリーダ/ライタ80のタグリーダ用アンテナ81とRFIDタグ90との無線通信の結果に基づいて電池パック50の真贋判定を実施できる。
【0054】
本実施例のタグリーダ用アンテナ81は、電池パックカバー22のカバー外面22aに配置されている(図6)。
詳しくは、タグリーダ用アンテナ81は、螺旋状に巻回された複数ターンの導体を有したループアンテナ(タグリーダ用アンテナ部)82と、このループアンテナ82を載置するアンテナ用基板43とから構成される。
【0055】
ループアンテナ82も磁界型のアンテナであり、アンテナ用基板43に転写法などで形成される。また、その敷設範囲は電池表面52の面積よりも小さな面積(例えば10mm×10mm)で設けられ、ループアンテナ82は、タグ用アンテナ91のループアンテナ92に完全に重なり合う位置に配置されている(図6,図7(b),図8(a))。
【0056】
一方、このアンテナ用基板43は、上記ループアンテナ82の敷設範囲よりも広く構成され、電池パック50の長さ方向及び幅方向に沿ってさらに延びており(図6,図7(a))、カード用アンテナ41も敷設している。
本実施例のカード用アンテナ41は、外部のリーダ/ライタ(不図示)との間にて非接触無線通信を行い、例えば交通系の電子マネーに用いることができる。
【0057】
詳しくは、カード用アンテナ41は、ループアンテナ82,92と同様に、螺旋状に巻回された複数ターンの導体を有したループアンテナ(カード用アンテナ部)42を有する。これに対し、このループアンテナ42の敷設範囲は電池表面52の面積に略等しい面積(例えば40mm×30mm)で設けられている(図7(b))。
【0058】
ここで、これらカード用アンテナ41のループアンテナ42とタグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82とは、電気的に直接に接続されて一続きに連結しており、この図7(b)に示されるように、タグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82が、カード用アンテナ41のループアンテナ42の内側に配置されている。
【0059】
そして、一続きに連結したループアンテナ42の端部分やループアンテナ82の端部分は、格納部30で云えば右側の格納部側面33に向けて引き出される。よって、電池パックカバー22をハウジング10に取り付けると、電池パックカバー22のカバー内面(蓋内面)22bが電池表面52に対向するとともに、タグリーダ用アンテナ81やカード用アンテナ41は、右側の格納部側面33の配線パターン(不図示)を経由して上記回路基板の制御部や使用者ICカード39にそれぞれ電気的に接続可能になる。
【0060】
このように、本実施例のカード用アンテナ41は、そのループアンテナ42の正面に電池表面52が配置されているため、そのアンテナ通信感度もケース51によって低められるが、本実施例では、カード用RFID磁性部材(第2磁性体)46がアンテナ通信感度の低下を防止する。
具体的には、アンテナ用基板43は、図6や図7(a)に示される如く、カバー外面22aに、ループアンテナ42,82を載置する絶縁性の樹脂製ベースフィルム45を有する一方、図6や図7(c)に示されるように、このカバー外面22aの裏側、すなわち、カバー内面22bに、カード用RFID磁性部材46を有している。
【0061】
なお、ループアンテナ42,82は、カバー外面22aに印刷或いはインサートモールドで埋め込んで一体化しても良い。また、この図6でもアンテナ用基板43の構造の理解を助けるために、ベースフィルム45やカード用RFID磁性部材46の厚みを特に大きく強調して示している。
このベースフィルム45も、その厚さが50μm程度の例えば熱可塑性樹脂で平板状に構成されている。
【0062】
次に、カード用RFID磁性部材46は、タグ用RFID磁性部材96と同様に、例えば絶縁膜を2層の磁性膜の間に介在させ、平板状の膜が交互に積層されており、カバー内面22bに印刷或いはスパッタ処理にて一体化されているが、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設されており(図6や図7(c))、カード用RFID磁性部材46の敷設面積は、ベースフィルム45の敷設面積からタグ用RFID磁性部材96の敷設面積を除いた広さで形成されている。
【0063】
換言すれば、図7(c)のカード用RFID磁性部材46は、図8(c)のタグ用RFID磁性部材96とは異なり、電池表面52を直に覆っていないものの、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲とカード用RFID磁性部材46の敷設範囲とを格納部30の深さ方向で組み合わせると、電池表面52を始めて覆い隠すことができる。
【0064】
つまり、図7(c)に示されるような、電話本体2の外面17から電池パックカバー22を透かして見た平面視では、電池表面52がタグ用RFID磁性部材96とカード用RFID磁性部材46とで覆われて見えなくなるのである。
このカード用RFID磁性部材46についても、タグ用RFID磁性部材96と同様に例えば物理蒸着法によって成膜され、10μm程度の薄さで形成されており、磁性膜の多層構成によれば、各磁性膜の総厚を少なくしつつも高い通信出力を得ることが可能になる。
【0065】
すなわち、まず、RFIDタグ90においては、タグ用RFID磁性部材96がループアンテナ92と電池表面52との間に挿入され、数mmの通信距離を得ることができる。
詳しくは、タグリーダ用アンテナ81からの磁束は、タグ用RFID磁性部材96内を通り、ループアンテナ82とループアンテナ92との間で磁界結合が生じて還流磁束を形成できる。
【0066】
この結果、電池表面52に近接した微小空間にて無線通信を行っても、タグリーダ用アンテナ81とタグ用アンテナ91との間に磁気的な結合が生じ、そのループアンテナ92に誘導起電力が生じてICチップ94が起動する。
一方、このICチップ94からのアンサー信号はタグリーダ用アンテナ81で受信されて上記回路基板の制御部に向けて出力される。
【0067】
これにより、携帯電話1の内部、つまり、電話本体2側のリーダ/ライタ80と電池パック50側のRFIDタグ90との間で非接触の無線通信が可能になり、この制御部は、電池パック50のID認証によって、格納部30に装着された電池パック50が純正品であるか否かを判定できる。
さらに、カード用アンテナ41においても、カード用RFID磁性部材46がループアンテナ42と電池表面52との間に挿入され、数cmの通信距離が得られる。
【0068】
このため、上述した外部のリーダ/ライタ、つまり、カードリーダ用アンテナ(不図示)からの磁束は、カード用RFID磁性部材46内を通り、ループアンテナ42との間で磁界結合が生じて還流磁束を形成できる。
したがって、電池表面52に近接した位置にて無線通信を行っても、上記外部カードリーダ用アンテナとカード用アンテナ41との間に磁気的な結合が生じ、そのループアンテナ42に誘導起電力が生じて外部カードリーダと通信を行うことができる。
【0069】
ところで、タグリーダ用アンテナ81やカード用アンテナ41はカバー内面22bに取り付けられていても良い(図9)。
【0070】
詳しくは、この図9は、図2や図7のVI−VI線に沿う格納部30周辺の断面図に相当するが、図8までの実施例と同じ機能を奏する構成には同じ符号を付してその説明を省略すると、図9に示されたタグリーダ用アンテナ81やカード用アンテナ41は、カード用RFID磁性部材46と同じ側、すなわち、そのループアンテナ42,82もカバー内面22bに設けられている。
【0071】
そして、カード用RFID磁性部材46は、ループアンテナ42,82を載置するベースフィルム45の裏側に配置されており、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設され、これらタグ用RFID磁性部材96の敷設範囲とカード用RFID磁性部材46の敷設範囲とをハウジング10の深さ方向で組み合わせると、電池表面52を始めて覆い隠している。
【0072】
なお、この場合のループアンテナ42,82は、カバー内面22bに印刷或いはインサートモールドで埋め込んで一体化しても良く、また、これらループアンテナ42,82、ベースフィルム45、及びタグ用RFID磁性部材96を一体化してカバー内面22bにインサート成型或いは貼付しても良い。
一方、タグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82は、カード用アンテナ41のループアンテナ42の内側に配置されていなくても良い。
【0073】
つまり、ループアンテナ42とループアンテナ82とが一続きに連結され、カード用RFID磁性部材46がタグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設されていれば、図7(b)に相当する図10に示されるように、このループアンテナ82が、ループアンテナ42の一部分に構成され、上記タグ用アンテナ91のループアンテナ92に部分的に重なり合う位置に配置されていても良い。
【0074】
さらに、タグリーダ用アンテナ81のループアンテナ82は金属シート(金属製のシート)87で覆われていても良い(図11)。
具体的には、この図11は、ベースフィルム45やループアンテナ42,82をカバー外面22aに備えた図6や図7(a)の例に相当する。金属シート87は、ループアンテナ82を挟んでタグ用アンテナ91の反対側、この実施例で云えば、カバー外面22aに配置したベースフィルム45の上方にて、ループアンテナ82のみを覆っている(図11(a))。
【0075】
そして、この金属シート87の裏側、つまり、これら金属シート87とループアンテナ82との間には、この金属シート87と同じ敷設面積のリーダ用RFID磁性部材(第3磁性体)86が、ベースフィルム45の上に敷設されている(図11(b))。
なお、金属シート87やリーダ用RFID磁性部材86は、ベースフィルム45やループアンテナ42,82をカバー内面22bに備えた図9の実施例にも適用可能であり、この場合には、リーダ用RFID磁性部材86がカバー外面22aの上に、金属シート87がリーダ用RFID磁性部材86の上に配置される。
【0076】
さらにまた、上述の各実施例は、いずれも電池パックカバー22が外面17とは別個に構成されている(図12(a))。
しかし、電池パック50を覆う限り、図12(b)に示されるように、電話本体2の裏側全体を覆う裏カバー(蓋部材)22Aであっても良い。この場合のカード用RFID磁性部材46は、電池表面52のうちタグ用RFID磁性部材96の敷設範囲を除いた領域に敷設されるが(図中に1点鎖線で示す)、カード用アンテナ41のループアンテナ42は、裏カバー22Aの全領域に亘って敷設できる。
【0077】
以上のように、上記各実施例によれば、携帯電話1は、電話本体2と、この電話本体2に着脱可能に構成された角形状の電池パック50とを具備する。電池パック50は、金属製のケース51を備え、ケース51の内側には二次電池として機能する電池本体が納められる。一方、このケース51の外側にはRFIDタグ90が取り付けられている。
【0078】
格納部30に装着された電池パック50が純正品であるか否かは、電池パック50側のRFIDタグ90と電話本体2側のリーダ/ライタ80との無線通信が行われた結果を格納部30の周辺に配置された回路基板にて判定して実施される(電池パックの真贋判定)。
しかし、RFIDタグ90は、そのループアンテナ92の背面に、電池パック50の外観をなす金属製のケース51が存在し、さらに、ループアンテナ92の敷設範囲が電池表面52の面積よりも小さいため、このケース51によってそのループアンテナ92のアンテナ通信感度が低められる。
【0079】
一方、電池パックカバー22(或いは裏カバー22A)には、ループアンテナ82やループアンテナ42が取り付けられる。このループアンテナ82がタグ用アンテナ91との間で電池パック50の真贋判定に関する無線通信を行い、ループアンテナ42は、携帯電話1の外部のカードリーダ用アンテナとの間にてこの真贋判定とは別の無線通信を行うが、ループアンテナ82とループアンテナ42とが電気的に直列に接続されており、アンテナの多機能化を図ることができ、また、端子の共通化によって端子数の削減が可能になる。
【0080】
ところで、タグリーダ用アンテナ81もまた、タグ用アンテナ91に対峙することから、そのループアンテナ82の敷設範囲が電池表面52の面積よりも小さくなる。また、カード用アンテナ41の正面に、電池表面52が存在している。つまり、これでは、この電池表面52によっていずれのループアンテナ42,82のアンテナ通信感度も低められてしまう。
【0081】
しかしながら、本実施例では、タグ用RFID磁性部材96の敷設範囲と、カード用RFID磁性部材46の敷設範囲とを組み合わせて電池表面52を始めて覆い隠しており、ループアンテナ82の通信可能方向とループアンテナ42の通信可能方向とを異ならせ、さらに、各アンテナ通信感度の悪化を防止できる。
【0082】
より詳しくは、外面17から電池パックカバー22を透かして見て(図7(c))、仮に、カード用RFID磁性部材46だけで電池表面52の全体を覆ってしまうと、磁束がカード用RFID磁性部材46に回り、RFIDタグ90は通信困難になる。
これに対し、本実施例の如くカード用RFID磁性部材46を、ループアンテナ82と電池表面52との間ではなく、ループアンテナ42と電池表面52との間だけに敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、まず、カード用RFID磁性部材46が磁束を引き寄せ、上述した携帯電話1の外部とループアンテナ42との間に磁束が貫通する。
【0083】
したがって、カード用RFID磁性部材46は、ループアンテナ42から見れば、携帯電話1の外部への通信方向を確保できる。
一方、タグ用RFID磁性部材96を、ループアンテナ92と電池表面52との間に敷設すれば、無線通信の阻害要因が近接していても、タグ用RFID磁性部材96が磁束を引き寄せ、ループアンテナ82とループアンテナ92との間にも磁束が貫通する。
【0084】
よって、タグ用RFID磁性部材96は、ループアンテナ82から見れば、携帯電話1の内部への通信方向を確保できる。これにより、例えば、純正品であると判定された電池パック50のみを携帯電話1の駆動用電源として使用可能になり、その使用者の安全を確保できる。
さらにまた、磁性膜を2層に分断し、その間に絶縁膜の層を挟んだカード用RFID磁性部材46やタグ用RFID磁性部材96を用いれば、上記アンテナ通信感度の向上に加え、薄いアンテナを得ることができ、携帯電話1の薄型化の要求にも対応できる。
【0085】
また、図11に示した実施例では、リーダ用RFID磁性部材86が金属シート87とループアンテナ82との間に敷設されている。
よって、この金属シート87が無線通信の阻害要因にはならず、ループアンテナ82の通信可能方向を確保できる。そして、金属シート87は、電池パック50の真贋判定に関する通信内容が携帯電話1の外部に漏洩するのを確実に防止できる。
【0086】
さらに、ループアンテナ82とループアンテナ42とを内側と外側とに配置して一続きに接続すれば、各アンテナを別個に設けた場合に比して螺旋状の巻き数がいずれも少なくて済むし、各アンテナの敷設範囲も小さくできる。したがって、多機能省スペースのアンテナを有する携帯電話1を提供することができる。
【0087】
さらにまた、一続きに連結されたループアンテナ82及びループアンテナ42が電池パックカバー22(或いは裏カバー22A)の同一面に形成されており、各アンテナを異なる面にそれぞれ設けた場合に比して、その製造が容易になる。
また、これらループアンテナ82及びループアンテナ42は、電池パック50の真贋判定の他、非接触無線通信として、例えば交通系の電子マネーなど幅広い用途の通信を担うことができる。
【0088】
本発明は、上記各実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記各実施例のループアンテナ82及びループアンテナ42は、ベースフィルム45の同一面に配置され、製造の容易化が図られているものの、直列に接続される点を条件として、ベースフィルム45の表面と裏面とに分けて別個に配置することもできる。
【0089】
また、カード用アンテナ41は、実施例で説明した交通系の電子マネーの他、クレジットに用いられても良い。
さらに、上記各実施例は、携帯電話1に具現化した例で説明されている。しかし、使用者の安全を確保するために、電池パック50のID管理が必要である限り、PHSやPDAなどのモバイル用途の電子機器にも当然に適用可能である。
【0090】
さらにまた、上記実施例では金属製のケース51を例示して説明しているが、上記正極部材、負極部材や電解質を有した電池本体(電池構成部材)を樹脂製のケースに納めても良い。
具体的には、この樹脂製のケースは開口を有したカップ状に形成されており、電池本体をそのカップ状の有底部分に配置すると、上記正極部材や負極部材をなす電極(電池構成部材の表面)がケースの開口から露出した状態で収納される。
【0091】
そして、この開口は電池パックなどの情報を記載した絶縁シールで覆われ、電極は絶縁シールで隠される。
RFIDタグは例えばこの絶縁シールの上に貼付され、絶縁シールを介して電極に取り付けられることになるが、この電極はリーダ用及びカード用のアンテナ通信感度を低める要因になる。
【0092】
このように、ケースではなく、電池本体の電極が通信阻害要因になる場合にも、タグ用RFID磁性部材の敷設範囲と、カード用RFID磁性部材の敷設範囲とを組み合わせて電池本体の電極を覆い隠している。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、アンテナの多機能化を図りつつ、金属製の部材に近接した微小空間でも電池パックの識別情報を確実に管理できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0093】
1 携帯電話(携帯端末)
2 電話本体(携帯端末本体)
22 電池パックカバー(蓋部材)
22a カバー外面(蓋外面)
22b カバー内面(蓋内面)
22A 裏カバー(蓋部材)
41 カード用アンテナ
42 ループアンテナ(カード用アンテナ部)
46 カード用RFID磁性部材(第2磁性体)
50 電池パック
51 ケース(電池構成部材)
52 電池表面(電池構成部材の表面)
80 リーダ/ライタ
81 タグリーダ用アンテナ
82 ループアンテナ(タグリーダ用アンテナ部)
86 リーダ用RFID磁性部材(第3磁性体)
87 金属シート(金属製のシート)
90 RFIDタグ
91 タグ用アンテナ
92 ループアンテナ(アンテナ部)
96 タグ用RFID磁性部材(第1磁性体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パック側のRFIDタグと携帯端末本体側のリーダ/ライタとの無線通信を行う携帯端末であって、
電池パックは、
金属製の電池構成部材と、
この電池構成部材の表面に取り付けられる前記RFIDタグのタグ用アンテナと、
このタグ用アンテナのアンテナ部と前記電池構成部材の表面との間に敷設された第1磁性体とを具備する一方、
携帯端末本体は、
前記電池パックの真贋判定を実施可能な回路基板と、
装着された前記電池パックに対向する蓋内面を有した蓋部材と、
前記蓋部材に取り付けられる前記リーダ/ライタのタグリーダ用アンテナ部と、
このタグリーダ用アンテナ部に対して電気的に直接に接続され、前記無線通信とは別の無線通信を行うカード用アンテナ部と、
前記蓋内面に設けられており、前記カード用アンテナ部のみと前記電池構成部材の表面との間であって、この電池構成部材の表面のうち前記第1磁性体の敷設範囲を除いた領域に敷設された第2磁性体と
を具備することを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記タグリーダ用アンテナ部を挟んで前記タグ用アンテナのアンテナ部とは反対側に配置され、このタグリーダ用アンテナ部のみを覆う金属製のシートと、
これら金属製のシートとタグリーダ用アンテナ部との間に敷設された第3磁性体と
をさらに具備することを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記タグリーダ用アンテナ部及び前記カード用アンテナ部は、電気的に直接に接続されて螺旋状に巻回されており、
前記タグリーダ用アンテナ部が前記カード用アンテナ部の内側に配置されていることを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記タグリーダ用アンテナ部及び前記カード用アンテナ部は、外部に露出する前記蓋部材の蓋外面、或いは、前記蓋内面に取り付けられることを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記カード用アンテナ部は、外部のリーダ/ライタとの間にて非接触無線通信を行うことを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項1】
電池パック側のRFIDタグと携帯端末本体側のリーダ/ライタとの無線通信を行う携帯端末であって、
電池パックは、
金属製の電池構成部材と、
この電池構成部材の表面に取り付けられる前記RFIDタグのタグ用アンテナと、
このタグ用アンテナのアンテナ部と前記電池構成部材の表面との間に敷設された第1磁性体とを具備する一方、
携帯端末本体は、
前記電池パックの真贋判定を実施可能な回路基板と、
装着された前記電池パックに対向する蓋内面を有した蓋部材と、
前記蓋部材に取り付けられる前記リーダ/ライタのタグリーダ用アンテナ部と、
このタグリーダ用アンテナ部に対して電気的に直接に接続され、前記無線通信とは別の無線通信を行うカード用アンテナ部と、
前記蓋内面に設けられており、前記カード用アンテナ部のみと前記電池構成部材の表面との間であって、この電池構成部材の表面のうち前記第1磁性体の敷設範囲を除いた領域に敷設された第2磁性体と
を具備することを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記タグリーダ用アンテナ部を挟んで前記タグ用アンテナのアンテナ部とは反対側に配置され、このタグリーダ用アンテナ部のみを覆う金属製のシートと、
これら金属製のシートとタグリーダ用アンテナ部との間に敷設された第3磁性体と
をさらに具備することを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記タグリーダ用アンテナ部及び前記カード用アンテナ部は、電気的に直接に接続されて螺旋状に巻回されており、
前記タグリーダ用アンテナ部が前記カード用アンテナ部の内側に配置されていることを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記タグリーダ用アンテナ部及び前記カード用アンテナ部は、外部に露出する前記蓋部材の蓋外面、或いは、前記蓋内面に取り付けられることを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池パック真贋判定機能付き携帯端末であって、
前記カード用アンテナ部は、外部のリーダ/ライタとの間にて非接触無線通信を行うことを特徴とする電池パック真贋判定機能付き携帯端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−134796(P2012−134796A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285617(P2010−285617)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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