説明

電池パック

【課題】携帯端末機器を長時間に亘って連続動作させることが可能で、かつ充電時間を飛躍的に激減できる電池パックを提供する。
【解決手段】携帯端末機器に予め内蔵された専用電池パックと交換可能に装填され、前記携帯端末機器の電源として使用される電池パックであって、専用電池パックに内蔵された二次電池と同種の主二次電池と、3分間以内で80%容量の充電が可能な補助二次電池と、補助二次電池の起電力が供給され、その起電力を所定値以下の電流に制限して前記主二次電池側に出力する電流制限回路、およびこの電流制限回路からの前記補助二次電池の起電力の電圧レベルを前記主二次電池の電圧レベルまで昇圧する昇圧回路を有する第1マイクロコンピュータで制御される第1充電制御回路と、第1充電制御回路での前記主二次電池への充電により貯蔵された電力を前記携帯端末機器に供給するための供給回路とを備えることを特徴とする電池パック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機のような携帯端末機器に利用される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話機のような携帯端末機器は、専用電池パックが装填されて動作する。専用電池パックの二次電池が放電して携帯端末機器への動作に充分な電池容量が獲られなくなると、通常、付属している専用の充電器を用いて商用AC電源を用いて1〜2時間程度を要して専用電池パックへ充電を行なっている。
【0003】
しかしながら、専用電池パックに内蔵された例えば負極活物質に炭素材料を使用したリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池またはニッケルカドミウム二次電池のような二次電池は充電に時間がかかるため、短時間での携帯端末機器の使用ができない。
【0004】
このようなことから、外出先でも携帯端末機器の専用電池に供電できるような乾電池(一次電池)を内蔵した簡易型充電器が市販されている。
【0005】
また、特許文献1,2には充放電可能なリチウムイオン二次電池が内蔵された充電器(予備用二次電池パック)が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には携帯端末機器の専用電池パックと交換可能で一次電池が内蔵された電池パックが開示されている。
【0007】
しかしながら、従来の簡易型充電器および特許文献3記載の電池パックはいずれも充電不可で、使い捨ての一次電池を使用するため、携帯端末機器の利用頻度によっては廃棄する電池量が多くなって環境負荷を高める。
【0008】
前記特許文献1,2に記載された充電器(予備用二次電池パック)で使用されるリチウムイオン電池は、黒鉛などの炭素材料からなる負極活物質材料を含む負極を備えた構造であるため、急速充電すると負極の炭素材に金属リチウムが析出し、容量の低下や安全性の低下を招く問題があった。
【特許文献1】特開2004−112909
【特許文献2】特開2004−297974
【特許文献3】特開2003-346750
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、携帯端末機器の専用電池パックの専用二次電池が放電したときでも、直ちに携帯端末機器を長時間に亘って連続動作させることが可能で、かつ充電時間を飛躍的に激減でき、さらに簡易充電器に組み込まれた市販の乾電池の購入回数を激減することが可能な電池パックを提供しようとするものである。
【0010】
本発明は、携帯端末機器の専用二次電池が放電したときでも、直ちに携帯端末機器を動作させることが可能で、かつ充電時間を飛躍的に激減でき、さらに市販の乾電池の購入回数を皆無にすることが可能な電池パックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、携帯端末機器に予め内蔵された専用電池パックと交換可能に装填され、前記携帯端末機器の電源として使用される電池パックであって、
専用電池パックに内蔵された二次電池と同種の主二次電池と、
3分間以内で80%容量の充電が可能な補助二次電池と、
前記補助二次電池の起電力が供給され、その起電力を所定値以下の電流に制限して前記主二次電池側に出力する電流制限回路、およびこの電流制限回路からの前記補助二次電池の起電力の電圧レベルを前記主二次電池の電圧レベルまで昇圧する昇圧回路を有する第1マイクロコンピュータで制御される第1充電制御回路と、
前記第1充電制御回路での前記主二次電池への充電により貯蔵された電力を前記携帯端末機器に供給するための供給回路と
を備えることを特徴とする電池パックが提供される。
【0012】
また本発明によると、専用二次電池を有する専用電池パックが装填され、かつこの専用電池パックに接続された接続端子を備えた携帯端末機器の前記専用二次電池への充電を可能にする電池パックであって、
3分間以内で80%容量の充電が可能な急速充電型二次電池と、
前記携帯端末機器の接続端子に着脱可能に接続されるコネクタと、
前記急速充電型二次電池と前記コネクタの間に介装され、前記急速充電型二次電池から前記専用二次電池への充電を可能にする定電圧充電補正用の昇圧DC/DCコンバータを有する第1マイクロコンピュータで制御される第1充電制御回路と
を備えることを特徴とする電池パックが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの利便性が高く、安全で環境にやさしい電池パックを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る電池パックを図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に適用される携帯端末機器(例えば携帯電話機)を示す斜視図、図2は専用電池パックおよびこれに交換可能な第1実施形態に係る電池パックが装填される図1の携帯電話機の背面側を示す斜視図である。
【0016】
携帯電話機1は、図1および図2に示すように主面側に表示部2、テンキーボタン等の入力操作部3を備え、アンテナ4、さらに背面側に端子5を有する電池パック装填部6を備えている。この端子5は、後述する内部回路に接続されている。前記携帯電話機1前面には、開閉可能なカバー7が取り付けられ、この内側に後述する多機能コネクタが配置されている。通常のリチウムイオン二次電池を内蔵した専用電池パック8は、前記電池パック装填部6に装填され、その電池パック8の端子(図示せず)は前記端子5に接続される。図2中の21は、前記専用電池パック8の二次電池が放電した際にその電池パック8と交換可能に前記電池パック装填部6に装填される第1実施形態に係る電池パックである。
【0017】
このような電池パック21の構成(携帯電話機1の電池パック装填部6に装填した状態での構成)を図3に示すブロック図を参照して説明する。
【0018】
電池パック21は、前記携帯電話機1の端子5に第1接続端子22を通して接続される供給制御回路23を備えている。なお、前記端子5は携帯電話機1に内蔵された内部回路9に接続されている。この供給制御回路23は、主二次電池24、第1充電制御回路25、補助二次電池26および第2充電制御回路27にこの順序で接続されている。この第2充電制御回路27は、第2接続端子28を通して前記携帯電話機1の多機能コネクタ10に接続されている。また、電池パック21には、前記主二次電池24の充電表示ランプ、前記補助二次電池26の要充電表示ランプおよび充電表示ランプがそれぞれ設けられている。
【0019】
充電器31は、第3接続端子32を通して商用電源40に接続される充電用アダプタ33と、このアダプタ33に接続されるAC/DCコンバータ34を備えている。このコンバータ34は、第4接続端子35を通して前記携帯電話機1の多機能コネクタ10に接続される。
【0020】
前記供給制御回路23は、前記主二次電池24から直流電力を前記携帯電話1の内部回路9に安定的に供給するための制御と、過電流遮断機能を有する。
【0021】
前記主二次電池24は、前記専用電池パック8に内蔵された二次電池と同種のものが用いられる。この主二次電池24としては、例えば炭素材料を負極活物質として含む負極と、コバルト酸リチウムを正極活物質として含む正極と、非水溶媒にリチウム系非水電解質を溶解した電解液とを備えた3.7V、630mAhのリチウムイオン二次電池が用いられる。また、この主二次電池24は、前記補助二次電池26よりも大きな電池容量を有する。
【0022】
前記補助二次電池26は、3分間以内で80%容量の充電が可能、つまり急速充電が可能な二次電池で、前記主二次電池24が放電して一定の電圧レベル以下になるとその主二次電池24を充電するために用いられる。この補助二次電池26としては、例えばリチウムチタン酸化物を負極活物質として含む負極と、コバルト酸リチウムを正極活物質として含む正極と、非水溶媒にリチウム系非水電解質を溶解した電解液とを備えた約2.4V、500mAhのリチウムイオン二次電池が用いられる。活物質である前記リチウムチタン酸化物は、特開2005−123183に開示されるとおり、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、リチウムイオンの挿入・離脱が1.4Vから1.7V/Li付近で行われる。このため、この二次電池は大電流での急速充電を行っても、従来の負極活物質に炭素材料を用いた場合と比べてリチウムの析出が起こらずに安全性を確保できる。また、リチウムの吸蔵放出に伴う膨張収縮が生じるのを抑制することができるため、20C電流の急速充電を繰り返し行った際にも負極活物質の構造破壊を抑えることができる。その結果、充放電を繰り返し行った場合においても長い寿命を維持できる。
【0023】
具体的には、以下のような方法で組み立てたリチウムイオン二次電池は20Cで3分間充電することにより約80%の電池容量まで充電することが可能な急速充電二次電池であることを確認した。ここで、『C』は充放電率を表す単位であり、完全放電から完全充電(または完全充電から完全放電)までを定電流充電した場合に計算上1時間で行えるレートを1Cとして表現する。1/10時間の場合、10Cと表現する。したがって、例えば20C充電とは、1C充電の20倍の電流が必要になる。
【0024】
<負極の作製>
活物質として、平均粒子径5μmでLi吸蔵電位が1.55V(vs.Li/Li+)のチタン酸リチウム(Li4Ti512)粉末と、導電剤として平均粒子径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で90:7:3となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散してスラリーを調製した。
【0025】
なお、活物質の粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社 型番SALD−300)を用いた。まず、ビーカー等に試料約0.1gを入れた後、界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌し、攪拌水槽に注入した。2秒間隔で、64回光強度分布を測定し、粒度分布データを解析し、累積度数分布が50%の粒径(D50)を平均粒子径とした。
【0026】
次いで、厚さ10μmのアルミニウム箔(純度99.99%)を負極集電体に前記スラリーを塗布し、乾燥した後、プレスを施すことにより電極密度2.4g/cm3の負極を作製した。
【0027】
<正極の作製>
活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)と、導電材として黒鉛粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で87:8:5となるように配合し、これらをn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させてスラリーを調製した。厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99%)にスラリーを塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極密度3.5g/cm3の正極を作製した。
【0028】
<二次電池の組み立て>
容器(外装部材)の形成材料として、厚さが0.1mmのアルミニウム含有ラミネートフィルムを用意した。このアルミニウム含有ラミネートフィルムのアルミニウム層は、膜厚約0.03mmであった。アルミニウム層を補強する樹脂には、ポリプロピレンを使用した。このラミネートフィルムを熱融着で貼り合わせることにより、容器(外装部材)を得、さらに金属アルミニウムの容器に収めた。
【0029】
次いで、前記正極に帯状の正極端子を電気的に接続すると共に、前記負極に帯状の負極端子を電気的に接続した。厚さ12μmのポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを正極に密着させて被覆した。セパレータで被覆された正極に負極を対向するように重ね、これらを渦巻状に捲回して電極群を作製した。この電極群をプレスして扁平状に成形した。容器(外装部材)に扁平状に成形した電極群を挿入した。
【0030】
エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチルラクトン(GBL)が体積比(EC:GBL)で1:2の割合で混合された有機溶媒にリチウム塩であるLiBF4を1.5mol/L溶解させ、液状の非水電解質を調製した。得られた非水電解質を前記容器内に注液し、リチウム二次電池を組み立てた。得られた非水電解質を前記容器内に注液し、リチウム二次電池を組み立てた。この二次電池は、満充電時電圧2.8V、放電終止電圧1.5Vで使用できた。
【0031】
前記第1充電制御回路25は、第1マイクロコンピュータで制御され、前記主電池24が放電して所定の電圧レベル以下になると、前記補助二次電池26から直流電力を主二次電池24に供給して充電する機能を有する。すなわち、この第1充電制御回路25は前記補助二次電池の起電力(直流電力)が供給され、その起電力を所定値以下の電流に制限して前記主電池側に出力する電流制限回路、およびこの電流制限回路からの前記補助二次電池の起電力の電圧レベルを前記主二次電池の電圧レベルまで昇圧する例えばDC/DCコンバータのような昇圧回路を有する。
【0032】
前記第1充電制御回路25は、また前記主二次電池24の電圧、温度を検出する監視機能、主二次電池24の過放電防止機能、補助二次電池26から主二次電池24への充電時の過充電防止機能、ダイオードのような逆流防止機能を有する。前記第1充電制御回路25は、さらに前記主二次電池24の電池電圧を前記監視機能で検出し、過放電域になる前に前記補助二次電池26から直流電力を主二次電池24に供給して充電する機能を有する。このような制御は、前記第1マイクロコンピュータによってなされる。
【0033】
このような第1充電制御回路25の具体的な作用を説明する。
【0034】
主二次電池24の起電力(直流電力)が携帯電話機1の内部回路9に供給(放電)されて、第1充電制御回路25の監視機能により例えばその電圧レベルが3.7Vから過放電域になる前の電圧(例えば3.3V)に低下することを検出すると、第1マイクロコンピュータから前記補助二次電池26の起電力を前記主二次電池24に供給する充電指令がなされる。この充電指令に基づいて第1充電制御回路25の電流制限回路により補助二次電池26からの起電力を所定値以下(例えば主二次電池24の容量が630mAhの場合には120mAを超えない値)に電流に制限する。さらに、電流制限された補助二次電池26の起電力はDC/DCコンバータにより2.4Vから例えば5Vに昇圧される。この昇圧された起電力により前記主二次電池24が充電される。このとき、主二次電池24の充電表示ランプが点灯され、目視で主二次電池24の充電が確認される。また、充電時には前記第1マイクロコンピュータで制御される過充電防止機能が働き、主二次電池24が例えば4.2V圧以上充電されるのを防ぐ。
【0035】
なお、主二次電池24の終止電圧が例えば3.0Vである場合、前記第1充電制御回路25による電圧検出において、主二次電池24が3.0Vを下回ると、過放電状態として判定し、前記第1マイクロコンピュータからの充電指令がなされなくなる。
【0036】
前記第2充電制御回路27は、第2マイクロコンピュータで制御され、前記急速充電可能な補助二次電池26が放電して所定の電圧レベル以下になったときの前記充電器31による充電を制御する機能を有する。
【0037】
前記第2充電制御回路27は、また前記補助二次電池26の電圧、温度を検出する監視機能、補助二次電池26の過放電防止機能、充電器31から補助二次電池26への充電時の過充電防止機能、ダイオードのような逆流防止機能を有する。
【0038】
前記第2マイクロコンピュータは、前記携帯電話機1との接続においてこの携帯電話機1の入力操作部3のテンキーボタンで入力されるユーザが指定した認識番号(例えば4桁の数字)が記憶されている。前記第2充電制御回路27は、この認識番号の入力により前記補助二次電池26への充電をロックしたり、解除したりする充電ロック・解除機能をさらに備える。この認識番号は、充電ロック時と充電解除時と同じであっても、異ならせてもよい。
【0039】
このような第2充電制御回路27の具体的な作用を説明する。
【0040】
補助二次電池26から主二次電池24への充電(放電)がなされ、第2充電制御回路27の監視機能によりその補助二次電池26の電圧レベルが所定値以下に下がることを検出すると、第2マイクロコンピュータからの指令により要充電表示ランプが点灯する。この点灯により、商用電源40に第3接続端子32を通して接続された充電器31の第4接続端子35を前記携帯電話機1の多機能コネクタ10に接続して充電の準備を行う。この状態で、前記携帯電話機1のテンキーボタン3で予め第2充電制御回路27の第2マイクロコンピュータに記憶された4桁の数字(認識番号)を入力すると、第2マイクロコンピュータからの指令に基づいて充電ロック・解除機能による充電解除がなされる。このとき、入力操作部3のテンキーボタンで入力した認識番号が第2マイクロコンピュータに予め入力された認識番号と相違すると、充電の解除がなされない。充電解除後において、第2充電制御回路27の監視機能による補助二次電池26の電圧検出値が過放電(例えば2.0V)域に達しないことを確認すると、充電器31のAC/DCコンバータ34を通して直流電力が補助二次電池26に供給されて充電が開始される。充電は、3分間で、補助二次電池26の容量の80%(200mAh)まで充電される。つまり、急速充電がなされる。このとき、補助二次電池26の充電表示ランプが点灯され、目視で補助二次電池26の充電が確認される。また、充電時には前記第1マイクロコンピュータで制御される過充電防止機能が働き、補助二次電池26が例えば3V以上充電されるのを防ぐ。充電完了後、前記携帯電話機1の入力操作部3のテンキーボタンで再度、予め第2充電制御回路27の第2マイクロコンピュータに記憶された4桁の数字(認識番号)を入力すると、第2マイクロコンピュータからの指令に基づいて充電ロック・解除機能による充電ロックがなされる。
【0041】
このような構成によれば、携帯電話機1の専用電池パックの専用二次電池が放電した場合、図1、図2に示すように携帯電話機1の電池パック装填部6から専用電池パック8を取り外し、ユーザが予め携帯した電池パック21を電池パック装填部6に装填する、つまり交換する。図3に示すように電池パック21の装填により、主二次電池24から起電力(直流電力)が供給制御回路23、第1接続端子、22、端子5を通して携帯電話機1の内部回路9に供給され、携帯電話機1の使用が可能になる。
【0042】
主二次電池24を電源とした携帯電話機1の使用において、その主二次電池24が放電し、所定の電圧レベルにまで下がると、第1充電制御回路25が前述したように作動して補助二次電池26から主二次電池24への充電がなされ、再び、主二次電池24を電源とした携帯電話機1の使用が可能になる。
【0043】
補助二次電池26から主二次電池24への充電により、その補助二次電池26が放電し、所定の電圧レベルにまで下がると、第2充電制御回路27が前述したように作動して要充電ランプが点灯する。この点灯において、商用電源40に接続された充電器31の第4接続端子35の携帯電話機1の多機能コネクタ10への接続による充電準備、前記携帯電話機1の入力操作部3のテンキーボタンでの認識番号の入力、第2充電制御回路27の第2マイクロコンピュータからの指令に基づく充電ロック・解除機能による充電解除を行うことにより補助二次電池26を充電する。この補助二次電池26は、急速充電可能な二次電池であるため、3分間で、容量の80%の充電が可能になる。このような補助二次電池26の短時間の充電により、再び、主二次電池24への充電(つまり主二次電池24を電源とした携帯電話機1の使用)が可能になる。充電完了後、前記携帯電話機1の入力操作部3のテンキーボタンでの再度の認識番号の入力、第2マイクロコンピュータからの指令に基づく充電ロック・解除機能による充電ロックを行う。
【0044】
したがって、携帯電話機1に装填された専用電池パック8の専用二次電池が放電したときでも、主二次電池24および補助二次電池26を備えた第1実施形態に係る電池パック21と交換することによって、直ちに携帯電話機1を使用することができる。しかも、簡易充電器に組み込まれた市販の乾電池の購入回数を皆無または減少できる。その結果、廃棄物による環境負荷を低減できる。
【0045】
また、第1充電制御回路25の制御により補助二次電池26の起電力で携帯電話機1の電源として働く主二次電池24を充電し、かつ補助二次電池26が急速充電可能な二次電池であるため、充電時間を飛躍的に激減でき、放電後に短時間での携帯電話の使用が可能になる。すなわち、主二次電池24の電池容量が携帯電話機1を動作するに不足した場合には補助二次電池26から主二次電池24へ電力を供給することによって、携帯電話機1の動作を長時間化することが可能となる。その上、補助二次電池26の電池容量が消費され場合においても3分で急速充電が可能になることから、携帯電話機1の利用者にとっては従来に比べ充電時間を気にすることなく利用可能となる。
【0046】
さらに、携帯電話機1のテンキーボタン3の操作で第2充電制御回路27の第2マイクロコンピュータに記憶され、ユーザが指定した認識番号を入力することによって、急速充電可能な補助二次電池26の充電の解除、ロックを行うことができる。その結果、本人以外のユーザの無闇な充電による誤使用を防止でき、保安性の高い電池パックを提供できる。
【0047】
なお、充電器は商用電源に接続されるものに限らず、3V仕様の市販の乾電池またはアルカリ乾電池を内蔵した充電器を用いてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
図4は、携帯端末機器(例えば携帯電話機)に適用される第2実施形態に係る電池パックを示す正面図、図5は図4の電池パックのブロック図である。
【0049】
電池パック51は、後述する第1充電制御回路、急速充電型二次電池および第2充電制御回路を内蔵するパック本体52を備えている。多機能コネクタ53は、前記パック本体52に取り付けられている。この多機能コネクタ53は、前記第1実施形態で説明した図2に示す携帯電話機1の多機能コネクタに接続される。充電コネクタ54は、前記パック本体52に取り付けられ、充電器のコネクタが接続される。前記急速充電型二次電池の要充電表示ランプ55および充電表示ランプ56は、前記パック本体52に設けられている。
【0050】
このような電池パック51の構成を図5に示すブロック図を参照して説明する。
【0051】
電池パック51は、前記多機能コネクタ53に接続された第1充電制御回路57を備えている。なお、前記多機能コネクタ53は携帯電話機1の多機能コネクタ10に接続され、この多機能コネクタ10は携帯電話機1に内蔵された専用電池パック8および内部回路9にこの順序で接続されている。この専用電池パック8に内蔵された二次電池は、例えば炭素材料を負極活物質として含む負極と、コバルト酸リチウムを正極活物質として含む正極と、非水溶媒にリチウム系非水電解質を溶解した電解液とを備えた3.7V、630mAhのリチウムイオン二次電池が用いられる。
【0052】
前記第1充電制御回路57は、急速充電型二次電池58および第2充電制御回路59にこの順序で接続されている。この第2充電制御回路59は、前記充電コネクタ54に接続されている。
【0053】
充電器61は、接続端子62を通して商用電源70に接続される充電用アダプタ63と、このアダプタ63に接続されるAC/DCコンバータ64を備えている。このコンバータ64は、コネクタ65を通して前記充電コネクタ54に接続される。
【0054】
前記急速充電型二次電池58は、3分間以内で80%容量の充電が可能ある。この二次電池58としては、例えばリチウムチタン酸化物を負極活物質として含む負極と、コバルト酸リチウムを正極活物質として含む正極と、非水溶媒にリチウム系非水電解質を溶解した電解液とを備えた約2.4V、500mAhのリチウムイオン二次電池が用いられる。活物質である前記リチウムチタン酸化物は、特開2005−123183に開示されるとおり、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、リチウムイオンの挿入・離脱が1.4Vから1.7V/Li付近で行われる。このため、この二次電池は大電流での急速充電を行っても、従来の負極活物質に炭素材料を用いた場合と比べてリチウムの析出が起こらずに安全性を確保できる。また、リチウムの吸蔵放出に伴う膨張収縮が生じるのを抑制することができるため、20C電流の急速充電を繰り返し行った際にも負極活物質の構造破壊を抑えることができる。その結果、充放電を繰り返し行った場合においても長い寿命を維持できる。
【0055】
前記リチウムイオン二次電池は、具体的には前記第1実施形態で説明したように20Cで3分間充電することにより約80%の電池容量まで充電することが可能な急速充電二次電池であることを確認した。ここで、『C』は充放電率を表す単位であり、完全放電から完全充電(または完全充電から完全放電)までを定電流充電した場合に計算上1時間で行えるレートを1Cとして表現する。1/10時間の場合、10Cと表現する。したがって、例えば20C充電とは、1C充電の20倍の電流が必要になる。
【0056】
前記第1充電制御回路57は、第1マイクロコンピュータで制御され、多機能コネクタ53を前記携帯電話機1の多機能コネクタ10に接続してその専用電池パック8の専用二次電池を正常に充電する機能を有する。すなわち、この第1充電制御回路57は前記急速充電型二次電池58から前記専用電池パック8の専用二次電池への充電を可能にする定電圧充電補正用の昇圧DC/DCコンバータを有する。
【0057】
前記第1充電制御回路57は、また前記専用二次電池の電圧、温度を検出する監視機能、急速充電型二次電池58から専用二次電池への充電時の過充電防止機能、ダイオードのような逆流防止機能を有する。このような機能の制御は、前記第1マイクロコンピュータによってなされる。
【0058】
このような第1充電制御回路57の具体的な作用を説明する。
【0059】
携帯電話機1の専用電池パック8の専用二次電池が放電され、携帯電話機1が使用できないときに、電池パック51の多機能コネクタ53を携帯電話1の多機能コネクタ10に接続する。このとき、第1充電制御回路57の監視機能により例えば専用二次電池の電圧レベルが3.7Vから過放電域になる前の電圧(例えば3.3V)に低下することを検出すると、第1充電制御回路57の第1マイクロコンピュータから前記急速充電型二次電池58の起電力を前記専用二次電池に供給する充電指令がなされる。この充電指令に基づいて急速充電型二次電池58の起電力は、第1充電制御回路57の定電圧充電補正用の昇圧DC/DCコンバータにより2.4Vから例えば5Vに昇圧される。この昇圧された起電力により前記専用二次電池が充電される。この充電時には前記第1マイクロコンピュータで制御される過充電防止機能が働き、専用二次電池が例えば4.2V圧以上充電されるのを防ぐ。
【0060】
なお、専用二次電池の終止電圧が例えば3.0Vである場合、前記第1充電制御回路57による電圧検出において、専用二次電池が3.0Vを下回ると、過放電状態として判定し、前記第1マイクロコンピュータからの充電指令がなされなくなる。
【0061】
前記第2充電制御回路59は、第2マイクロコンピュータで制御され、前記急速充電型二次電池58が放電して所定の電圧レベル以下になったときの前記充電器61による充電を制御する機能を有する。
【0062】
前記第2充電制御回路59は、また前記急速充電型二次電池58の電圧、温度を検出する監視機能、急速充電型二次電池58の過放電防止機能、充電器61から急速充電型二次電池58への充電時の過充電防止機能、ダイオードのような逆流防止機能を有する。
【0063】
前記第2マイクロコンピュータは、前記携帯電話機1との接続においてこの携帯電話機1のテンキーボタンで入力されるユーザが指定した認識番号(例えば4桁の数字)が記憶されている。前記第2充電制御回路59は、この認識番号の入力により前記急速充電型二次電池58への充電をロックしたり、解除したりする充電ロック・解除機能をさらに備える。この認識番号は、充電ロック時と充電解除時と同じであっても、異ならせてもよい。
【0064】
このような第2充電制御回路59の具体的な作用を説明する。
【0065】
急速充電型二次電池58から携帯電話機1の専用二次電池への充電(放電)がなされ、第2充電制御回路59の監視機能によりその急速充電型二次電池58の電圧レベルが所定値以下に下がることを検出すると、第2マイクロコンピュータからの指令により要充電表示ランプ55が点灯する。この点灯により、商用電源70に接続端子62を通して接続された充電器61のコネクタ65を前記電池パック51の充電コネクタ54に接続して充電の準備を行う。この状態で、前記携帯電話機1の入力操作部のテンキーボタンで予め第2充電制御回路59の第2マイクロコンピュータに記憶された4桁の数字(認識番号)を入力すると、第2マイクロコンピュータからの指令に基づいて充電ロック・解除機能による充電解除がなされる。このとき、入力操作部のテンキーボタンで入力した認識番号が第2マイクロコンピュータに予め入力された認識番号と相違すると、充電の解除がなされない。充電解除後において、第2充電制御回路59の監視機能による急速充電型二次電池58の電圧検出値が過放電(例えば2.0V)域に達しないことを確認すると、充電器61のAC/DCコンバータ64を通して直流電力が急速充電型二次電池58に供給されて充電が開始される。充電は、3分間で、急速充電型二次電池58の容量の80%(200mAh)まで充電される。つまり、急速充電がなされる。このとき、充電表示ランプが点灯され、目視で急速充電型二次電池58の充電が確認される。また、充電時には前記第1マイクロコンピュータで制御される過充電防止機能が働き、急速充電型二次電池58が例えば3V以上充電されるのを防ぐ。充電完了後、前記携帯電話機1の入力操作部のテンキーボタンで再度、予め第2充電制御回路59の第2マイクロコンピュータに記憶された4桁の数字(認識番号)を入力すると、第2マイクロコンピュータから指令に基づいて充電ロック・解除機能による充電ロックがなされる。
【0066】
このような構成によれば、携帯電話機1の専用電池パック8の専用二次電池が放電した場合、電池パック51の多機能コネクタ53を携帯電話機1の多機能コネクタ10に接続すると、第1充電制御回路57が前述したように作動して急速充電型二次電池58から起電力(直流電力)が専用二次電池に充電され、再び、専用二次電池を電源とした携帯電話機の使用が可能になる。
【0067】
急速充電型二次電池58から専用二次電池への充電により、その急速充電型二次電池58が放電し、所定の電圧レベルにまで下がると、第2充電制御回路59が前述したように作動して要充電ランプ55が点灯する。この点灯において、商用電源70に接続された充電器61のコネクタ65の電池パック51の充電コネクタ54への接続による充電準備、前記携帯電話機1の入力操作部のテンキーボタンでの認識番号の入力、第2充電制御回路59の第2マイクロコンピュータからの指令に基づく充電ロック・解除機能による充電解除を行うことにより急速充電型二次電池58を充電する。この急速充電型二次電池58は、3分間で、容量の80%の充電が可能になる。このような急速充電型二次電池58の短時間の充電により、再び、携帯電話機1の専用二次電池への充電(つまり専用二次電池を電源とした携帯電話機の使用)が可能になる。充電完了後、前記携帯電話機1の入力操作部のテンキーボタンでの再度の認識番号の入力、第2充電制御回路59の第2マイクロコンピュータからの指令に基づく充電ロック・解除機能による充電ロックを行う。
【0068】
したがって、携帯電話機1に装填された専用電池パック8の専用二次電池が放電したときでも、第1、第2の充電制御回路57,59および急速充電型二次電池58を備えた第2実施形態に係る電池パック51を携帯電話機1に接続することにより、直ちに携帯電話機1を使用することができる。しかも、この電池パック51は充電が可能であるため、簡易充電器に組み込まれた市販の乾電池の購入回数を皆無にできる。その結果、廃棄物による環境負荷を低減できる。
【0069】
また、内蔵された急速充電型二次電池58は充電時間を飛躍的に激減できるため、放電後、短時間での携帯電話の使用が可能になる。
【0070】
さらに、携帯電話機1の入力操作部のテンキーボタンの操作で第2充電制御回路59の第2マイクロコンピュータに記憶され、ユーザが指定した認識番号を入力することによって、急速充電型二次電池58の充電の解除、ロックを行うことができる。その結果、本人以外のユーザの無闇な充電による誤使用を防止でき、保安性の高い電池パックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に適用される携帯電話機を示す斜視図。
【図2】専用電池パックおよびこれに交換可能な第1実施形態に係る電池パックが装填される図1の携帯電話機の背面側を示す斜視図。
【図3】第1実施形態に係る電池パックが携帯電話機本体に装填された状態を示すブロック図。
【図4】携帯電話機に適用される第2実施形態に係る電池パックを示す正面図。
【図5】図4の電池パックのブロック図。
【符号の説明】
【0072】
1…携帯電話機、3…入力操作部、6…電池パック装填部、8…専用電池パック、21…電池パック、23…供給制御回路、24…主二次電池、25…第2充電制御回路、26…補助二次電池、31,61…充電用アダプタ、51…電池パック、57…第2充電制御回路、58…急速充電型二次電池、59…第2充電制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末機器に予め内蔵された専用電池パックと交換可能に装填され、前記携帯端末機器の電源として使用される電池パックであって、
専用電池パックに内蔵された二次電池と同種の主二次電池と、
3分間以内で80%容量の充電が可能な補助二次電池と、
前記補助二次電池の起電力が供給され、その起電力を所定値以下の電流に制限して前記主二次電池側に出力する電流制限回路、およびこの電流制限回路からの前記補助二次電池の起電力の電圧レベルを前記主二次電池の電圧レベルまで昇圧する昇圧回路を有する第1マイクロコンピュータで制御される第1充電制御回路と、
前記第1充電制御回路での前記主二次電池への充電により貯蔵された電力を前記携帯端末機器に供給するための供給回路と
を備えることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記補助二次電池は、リチウムチタン酸化物を負極活物質として有するリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記補助二次電池は、電池容量が前記主二次電池のそれより小さいことを特徴とする請求項1または2記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1充電制御回路は、前記主二次電池の電池電圧を検出して過放電域になる前に前記補助二次電池から電力を供給する機能をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項5】
充電器の端子に接続される接続端子と、一端がこの接続端子に接続され、他端が前記補助二次電池に接続される第2マイクロコンピュータで制御される第2充電制御回路とをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項6】
前記第2マイクロコンピュータは、前記携帯端末機器との接続においてこの機器のテンキーボタンで入力される認識番号が記憶され、かつ前記第2充電制御回路はこの認識番号の入力により前記補助二次電池への充電をロックしたり、解除したりする充電ロック・解除機能をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の電池パック。
【請求項7】
前記認識番号が、ロック時と解除時で異なることを特徴とする請求項6記載の電池パック。
【請求項8】
専用二次電池を有する専用電池パックが装填され、かつこの専用電池パックに接続された接続端子を備えた携帯端末機器の前記専用二次電池への充電を可能にする電池パックであって、
3分間以内で80%容量の充電が可能な急速充電型二次電池と、
前記携帯端末機器の接続端子に着脱可能に接続されるコネクタと、
前記急速充電型二次電池と前記コネクタの間に介装され、前記急速充電型二次電池から前記専用二次電池への充電を可能にする定電圧充電補正用の昇圧DC/DCコンバータを有する第1マイクロコンピュータで制御される第1充電制御回路と
を備えることを特徴とする電池パック。
【請求項9】
前記急速充電型二次電池は、リチウムチタン酸化物を負極活物質として含む負極を有するリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項8記載の電池パック。
【請求項10】
商用AC電源用充電器のコネクタが着脱可能に接続される接続端子と、一端がこの接続端子に接続され、他端が前記急速充電型二次電池に接続される第2マイクロコンピュータで制御される第2充電制御回路とをさらに備えることを特徴とする請求項8または9記載の電池パック。
【請求項11】
前記第2マイクロコンピュータは、前記携帯端末機器との接続においてこの機器のテンキーボタンで入力される認識番号が記憶され、かつ前記第2充電制御回路はこの認識番号の入力により前記急速充電型二次電池への充電をロックしたり、解除したりする充電ロック・解除機能をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の二次電池パック。
【請求項12】
前記認識番号が、ロック時と解除時で異なることを特徴とする請求項11記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242500(P2007−242500A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65309(P2006−65309)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】