説明

電池及び電池の製造方法

【課題】電池外接続端子の締結の際に、ボルトの軸線周りの回転を規制し続けると共に、ボルトの頭部を外部接続部に確実に当接させることができる電池等を提供すること。
【解決手段】電池100は、ボルト155の頭部155fに被覆され、第1樹脂よりも線膨張率が大きい第2樹脂からなる樹脂被覆層180と、ボルト155及び樹脂被覆層180等と一体成形された、第1樹脂からなる絶縁樹脂部材170とを備える。そして、少なくとも電池外接続端子GTの締結の際に、絶縁樹脂部材170は、ボルト155の軸線BX回りの回転を規制してなり、かつ、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは、ボルト155が軸線BX方向に移動可能に分離してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースと、これに収容された電極体と、電池ケースの内部で電極体に接続する一方、電池ケースを貫通して電池ケースの外部に延出する延出端子部材と、この延出端子部材と電池ケースとの間を絶縁する絶縁部材と、延出端子部材と係合し、電池外接続端子を延出端子部材に締結するボルトとを備える電池、及び、この電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池ケースと、これに収容された電極体と、電池ケースの内部で電極体に接続する一方、電池ケースを貫通して電池ケースの外部に延出する延出端子部材と、この延出端子部材と電池ケースとの間を絶縁する絶縁部材と、この延出端子部材と係合し、電池外接続端子を延出端子部材に締結するボルトとを備える電池が知られている。例えば特許文献1に、このような電池が開示されている(特許文献1の図2〜5等を参照)。図13及び図14に、この電池900の要部を示す。
【0003】
この電池900は、電池ケース910と、これに収容された電極体(図示しない)と、電池ケース910の内部で電極体に接続する一方、電池ケース910(そのケース蓋部材913)を貫通して電池ケース910の外部(ケース蓋部材913上)に延出する延出端子部材950とを備える。また、この電池900は、この延出端子部材950と電池ケース910との間を絶縁する絶縁部材970と、延出端子部材950に係合し、電池外の接続端子である電池外接続端子(バスバーやケーブルの先端に取り付けた圧着端子など)を、図示しないナット等を用いて延出端子部材950に締結するボルト955とを備える。
【0004】
このうち延出端子部材950は、2種類の金属部材(要素接続部材951及び外部配置端子部材953)から構成されている。このうち要素接続部材951は、電池ケース910の内部からケース蓋部材913を貫通し、ケース蓋部材913上に延出している。一方、外部配置端子部材953は、その全体がケース蓋部材913上に配置されている。要素接続部材951と外部配置端子部材953とは、要素接続部材951の先端に形成された加締部951gにより互いに接続されている。なお、図14に示す要素接続部材951は、加締部951gを形成する前の状態を記載してある。
【0005】
また、外部配置端子部材953は、基部953eと立上部953fと外部接続部953gとを含んでクランク状(Z字状)をなす。このうち基部953eは、ケース蓋部材913に沿って延び、後述する絶縁部材970(その外部絶縁部材971)を介してケース蓋部材913に固定され、前述の要素接続部材951の加締部951と接続されている。
外部接続部953gは、電池外接続端子が接続される部位であり、基部953eに平行に延びる。この外部接続部953gには、ネジ挿通孔953ghが設けられ、ボルト955の雄ネジ部955eが挿通されている。また、この外部接続部953gは、ボルト955の頭部955fがケース蓋部材913側から係合する形態とされている。
【0006】
絶縁部材970は、3種類の部材(外部絶縁部材971、シールゴム973及び内部絶縁部材975)から構成されている。このうち外部絶縁部材971は、電池ケース910の外部(ケース蓋部材913上)において、外部配置端子部材953及びボルト955とケース蓋部材913との間に配置されて、これらの間を絶縁している。シールゴム973は、円環板状をなし、電池ケース910の内部において、ケース蓋部材913と要素接続部材951との間に厚み方向に圧縮された状態で狭持されている。内部絶縁部材975は、電池ケース910の内部において、シールゴム973の径方向外側に配置されると共に、ケース蓋部材913と要素接続部材951との間に配置されて、これらの間を絶縁している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−192595号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の電池900では、延出端子部材950を構成する各部材(要素接続部材951及び外部配置端子部材953)と、ボルト955と、ケース蓋部材913と、絶縁部材970を構成する各部材(外部絶縁部材971、シールゴム973及び内部絶縁部材975)をそれぞれ別に形成した後に、これら7種類の部材を組み付けている。このため、部品点数が多く、電池の製造工程が複雑になりがちであった。更に、部品の洗浄を個々の部品毎に行うため、工数が多くなっていた。また、金属部品(要素接続部材951、外部配置端子部材953、ボルト955)の取り扱い時には、この金属部品から金属粉などの金属異物が発生する場合があるが、この金属異物を完全に除去するのが難しかった。
【0009】
そこで、本発明者は、延出端子部材950を1つの部材とする(要素接続部材951と外部配置端子部材953を一体化させる)ことを考えた。また、絶縁部材970を1つの部材とする(外部絶縁部材971とシールゴム973と内部絶縁部材975を一体化させる)と共に、この絶縁部材を、延出端子部材、ボルト955及びケース蓋部材913を用いた射出成形によって形成することを考えた。このようにすれば、電池の製造が従来よりも容易になり、また、部品の洗浄も容易になる。また、金属部品から生じる金属異物の量も抑制できる。
【0010】
しかしながら、ボルト955がその軸線回りに回転する(共回りする)のを防止するために、絶縁部材がボルト955の頭部955fを保持する形態とすると、外部接続部953gにバスバー等の電池外接続端子を当接させ、ボルト955の雄ネジ部955eにナット等を締結した際に、ボルト955の頭部955fを外部接続部953gに当接させられない場合が生じる得る。絶縁部材がボルト955の頭部955fを強固に保持しているために、ナット等の締結時に軸力が掛かっても、ボルト955がその軸線方向に移動できない場合である。
【0011】
この場合、外部接続部953g及びバスバー等の電池外接続端子を、ボルト955の頭部955fとナット等との間で確実に挟持できないので、外部接続部953gと電池外接続端子との導通不良が生じたり、また、使用時にナット等が緩むことにより接触抵抗が上がり延出端子部材等が発熱するなどのおそれがある。従って、バスバー等の電池外接続端子を締結する際に、ボルト955がその軸線回りに回転するのを規制し続けながら、ボルト955の頭部955fを外部接続部953gに確実に当接させて、バスバー等の電池外接続端子を外部接続部953gに確実に接続することが望まれる。
【0012】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、第1ケース部材、延出端子部材、ボルト及び絶縁樹脂部材を一体成形でき、電池を安価で信頼性の高いものとしつつも、電池外電極端子を、ボルトの軸線回りの回転を規制し続けながら、延出端子部材の外部接続部に確実に接続できる電池を提供することを目的とする。また、この電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、第1ケース部材と第2ケース部材とを接合してなる電池ケースと、前記電池ケース内に収容された電極体と、前記電池ケースの内部で前記電極体に接続する一方、前記第1ケース部材を貫通して前記第1ケース部材の外側に延出してなる延出端子部材と、第1樹脂からなり、前記延出端子部材と前記第1ケース部材との間を絶縁しつつ、前記延出端子部材を前記第1ケース部材に固定してなる絶縁樹脂部材と、前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記延出端子部材と係合し、電池外の接続端子である電池外接続端子を前記延出端子部材に締結するボルトと、を備える電池であって、前記ボルトは、外周に雄ネジが形成された雄ネジ部と、前記雄ネジ部よりも径大な頭部と、を有し、前記ボルトの前記頭部の表面のうち、少なくとも前記絶縁樹脂部材に対向する対向面に被覆され、前記第1樹脂の線膨張率α1よりも大きい線膨張率α2を有する第2樹脂からなる樹脂被覆層を備え、前記延出端子部材は、前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記ボルトの前記雄ネジ部が貫通するネジ挿通孔を含み、前記ボルトの前記頭部が係合し、前記電池外接続端子が接続される外部接続部を有し、前記絶縁樹脂部材は、前記第1ケース部材、前記延出端子部材、前記ボルトの前記頭部及び前記樹脂被覆層と一体成形されてなり、少なくとも前記電池外接続端子を締結する際に、前記絶縁樹脂部材は、前記ボルトの前記頭部がその軸線回りに回転するのを規制してなり、かつ、前記樹脂被覆層と前記絶縁樹脂部材とは、前記ボルトがその軸線方向に移動可能に分離してなる電池である。
【0014】
この電池では、絶縁樹脂部材が、第1ケース部材、延出端子部材、ボルトの頭部及び樹脂被覆層と一体成形されているので、電池の製造工程を簡素化できるなど、電池の製造が従来に比して容易である。従って、この電池は、従来に比して安価にすることができ、また、電池の信頼性を向上させることができる。
【0015】
更に、この電池では、ボルトの頭部の表面のうち、少なくとも絶縁樹脂部材との対向面に、樹脂被覆層が形成されている。そして、少なくとも電池外接続端子を締結する際に、絶縁樹脂部材は、ボルトの頭部がその軸線回りに回転するのを規制してなり、かつ、樹脂被覆層と絶縁樹脂部材とは、ボルトがその軸線方向に移動可能に分離してなる。このため、延出端子部材の外部接続部に電池外接続端子(バスバーや圧着端子など)を当接させ、ボルトの雄ネジ部にナット等を締結する際に、ボルトの軸線周りの回転(ボルトの共回り)を防止しつつ、ボルトをその軸線方向に移動させることができる。そして、ボルトの頭部を外部接続部に確実に当接させて、外部接続部及び電池外接続端子を、ボルトの頭部とナット等との間で確実に挟持できる。従って、電池外接続端子を延出端子部材の外部接続部に確実に接続できる。
【0016】
このように、この電池は、第1ケース部材、延出端子部材、ボルトの頭部、樹脂被覆層及び絶縁樹脂部材を一体成形でき、電池を安価で信頼性の高いものとしつつも、電池外電極端子を、ボルトの軸線回りの回転を規制し続けながら、外部接続部に確実に接続できる。
【0017】
また、他の態様は、第1ケース部材と第2ケース部材とを接合してなる電池ケースと、前記電池ケース内に収容された電極体と、前記電池ケースの内部で前記電極体に接続する一方、前記第1ケース部材を貫通して前記第1ケース部材の外側に延出してなる延出端子部材と、第1樹脂からなり、前記延出端子部材と前記第1ケース部材との間を絶縁しつつ、前記延出端子部材を前記第1ケース部材に固定してなる絶縁樹脂部材と、前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記延出端子部材と係合し、電池外の接続端子である電池外接続端子を前記延出端子部材に締結するボルトと、を備え、前記ボルトは、外周に雄ネジが形成された雄ネジ部と、前記雄ネジ部よりも径大な頭部と、を有し、前記ボルトの前記頭部の表面のうち、少なくとも前記絶縁樹脂部材に対向する対向面に被覆され、前記第1樹脂の線膨張率α1よりも大きい線膨張率α2を有する第2樹脂からなる樹脂被覆層を備え、前記延出端子部材は、前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記ボルトの前記雄ネジ部が貫通するネジ挿通孔を含み、前記ボルトの前記頭部が係合し、前記電池外接続端子が接続される外部接続部を有し、前記絶縁樹脂部材は、前記第1ケース部材、前記延出端子部材、前記ボルトの前記頭部及び前記樹脂被覆層と一体成形されてなり、少なくとも前記電池外接続端子を締結する際に、前記絶縁樹脂部材は、前記ボルトの前記頭部がその軸線回りに回転するのを規制してなり、かつ、前記樹脂被覆層と前記絶縁樹脂部材とは、前記ボルトがその軸線方向に移動可能に分離してなる電池の製造方法であって、前記ボルトの前記頭部の前記表面のうち、少なくとも前記対向面に、前記第2樹脂からなる前記樹脂被覆層を形成する樹脂被覆層形成工程と、前記樹脂被覆層形成工程の後、前記第1樹脂を射出して前記絶縁樹脂部材を形成し、前記第1ケース部材と前記延出端子部材と前記ボルトの前記頭部と前記樹脂被覆層とを一体化させる射出工程と、前記射出工程の後、一体化された前記第1ケース部材、前記延出端子部材、前記ボルトの前記頭部、前記樹脂被覆層及び前記絶縁樹脂部材を常温に向けて冷却し、前記第2樹脂からなる前記樹脂被覆層を、前記第1樹脂からなる前記絶縁樹脂部材よりも大きく熱収縮させて、前記樹脂被覆層と前記絶縁樹脂部材とを分離させる冷却工程と、を備える電池の製造方法である。
【0018】
この電池の製造方法では、樹脂層被覆工程において、ボルトの頭部の表面(その少なくとも対向面)に、予め樹脂被覆層を形成しておく。そして、射出工程において、絶縁樹脂部材を形成すると共に、第1ケース部材と延出端子部材とボルトの頭部と樹脂被覆層とを一体化させる。この時点では、ボルトの頭部を被覆する樹脂被覆層と絶縁樹脂部材とが互いに結合している。
【0019】
しかしその後、冷却工程を行うことにより、線膨張率α2が大きい第2樹脂からなる樹脂被覆層を、線膨張率α1が小さい第1樹脂からなる絶縁樹脂部材よりも大きく熱収縮させて、樹脂被覆層と絶縁樹脂部材とを分離させる。
このようにすることで、第1ケース部材、延出端子部材、ボルトの頭部、樹脂被覆層及び絶縁樹脂部材を一体成形し、電池を安価で信頼性の高いものとしながらも、電池外電極端子を外部接続部に確実に接続できる前述の電池を、容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池を示す縦断面図である。
【図2】実施形態1に係り、電極体を示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、正極板及び負極板をセパレータを介して互いに重ねた状態を示す部分平面図である。
【図4】実施形態1に係り、ケース蓋部材、延出端子部材、ボルト、樹脂被覆層、絶縁樹脂部材等を示す分解斜視図である。
【図5】実施形態1に係り、外部配置端子部、ボルト、樹脂被覆層、絶縁樹脂部材等の近傍を示す部分縦断面図である。
【図6】実施形態1に係り、外部配置端子部の外部接続部にバスバーを当接させてナットで締結した様子を示す説明図である。
【図7】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、ボルトを示す縦断面図である。
【図8】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、樹脂被覆層形成工程において、ボルトの頭部に樹脂被覆層を形成した様子を示す説明図である。
【図9】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、射出工程において、射出成形用の金型に、ケース蓋部材、延出端子部材、ボルト及びこれに形成された樹脂被覆層を配置した様子を示す説明図である。
【図10】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、射出工程において、第1樹脂を射出して絶縁樹脂部材を形成し、ケース蓋部材と延出端子部材とボルトの頭部と樹脂被覆層とを一体化させた様子を示す説明図である。
【図11】実施形態2に係る車両を示す説明図である。
【図12】実施形態3に係るハンマードリルを示す説明図である。
【図13】従来技術に係る電池について、外部配置端子部材、ボルト、絶縁樹脂部材等の近傍を示す部分縦断面図である。
【図14】従来技術に係る電池について、ケース蓋部材、延出端子部材、ボルト、絶縁樹脂部材等を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池(電池)100(以下、単に電池100とも言う)を示す。また、図2及び図3に、この電池100を構成する捲回型の電極体120及びこれを展開した状態を示す。また、図4及び図5に、ケース蓋部材113、延出端子部材150,160、ボルト155、樹脂被覆層180、絶縁樹脂部材170等の詳細を示す。また、図6に、延出端子部材150,160の外部接続部153gにバスバーGTをナットNTで締結した様子を示す。なお、図1,図4〜図6における上方を電池100の上側、下方を電池100の下側として説明する。
【0022】
この電池100は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両や、ハンマードリル等の電池使用機器に搭載される角型電池である。この電池100は、角型の電池ケース110、この電池ケース110内に収容された捲回型の電極体120、電池ケース110に支持された延出端子部材(正極延出端子部材150及び負極延出端子部材160)、電池ケース110と延出端子部材150,160との間を絶縁する絶縁樹脂部材170,170等から構成されている。更に、この電池100は、延出端子部材150,160に、バスバーGTなどの電池外接続端子を締結するためのボルト155及びこのボルト155の頭部155fを被覆する樹脂被覆層180を備える。また、電池ケース110内には、非水系の電解液117が保持されている。
【0023】
このうち電池ケース110は、金属(具体的にはアルミニウム)により形成されている。この電池ケース110は、上側のみが開口した箱状のケース本体部材(第2ケース部材)111と、このケース本体部材111の開口111hを閉塞する形態で接合(具体的には溶接)された矩形板状のケース蓋部材(第1ケース部材)113とから構成されている。このうちケース蓋部材113には、電池ケース110の内圧が所定圧力に達した際に破断する安全弁113jが設けられている(図1及び図4参照)。
【0024】
また、このケース蓋部材113には、注液孔113eが設けられ、封止部材114で気密に封止されている。また、ケース蓋部材113のうち、その長手方向(図4中、左右方向)の両端近傍の所定位置には、このケース蓋部材113を貫通する端子挿通孔113h,113hがそれぞれ形成されている。一方の端子挿通孔113h(図4中、左側)には、後述する正極延出端子部材150が挿通され、他方の端子挿通孔113h(図4中、右側)には、後述する負極延出端子部材160が挿通されている。
【0025】
次に、電極体120について説明する。この電極体120は、絶縁フィルムを上側のみが開口した袋状に形成した絶縁フィルム包囲体115内に収容され、横倒しにした状態で電池ケース110内に収容されている(図1参照)。この電極体120は、帯状の正極板121と帯状の負極板131とを、帯状のセパレータ141を介して互いに重ねて(図3参照)、軸線AX周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである(図2参照)。
【0026】
正極板121は、芯材として、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔122を有する。この正極集電箔122の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上には、それぞれ正極活物質層123,123が長手方向(図3中、左右方向)に帯状に設けられている。これらの正極活物質層123,123は、正極活物質、導電剤及び結着剤から形成されている。
【0027】
正極板121のうち、自身の厚み方向に正極集電箔122及び正極活物質層123,123が存在する帯状の部位が、正極部121wである。この正極部121wは、電極体120を構成した状態において、その全域がセパレータ141を介して負極板131の後述する負極部131wと対向している(図3参照)。また、正極板121に正極部121wを設けたことに伴い、正極集電箔122のうち、幅方向の片方の端部(図3中、上方)は、長手方向に帯状に延び、自身の厚み方向に正極活物質層123が存在しない正極集電部121mとなっている。この正極集電部121mの幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の一方側SAに渦巻き状をなして突出しており、後述する正極延出端子部材150と接続している(図1,図2参照)。
【0028】
また、負極板131は、芯材として、帯状の銅箔からなる負極集電箔132を有する。この負極集電箔132の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上には、それぞれ負極活物質層133,133が長手方向(図3中、左右方向)に帯状に設けられている。これらの負極活物質層133,133は、負極活物質、結着剤及び増粘剤から形成されている。
【0029】
負極板131のうち、自身の厚み方向に負極集電箔132及び負極活物質層133,133が存在する帯状の部位が、負極部131wである。この負極部131wは、電極体120を構成した状態において、その全域がセパレータ141と対向している。また、負極板131に負極部131wを設けたことに伴い、負極集電箔132のうち、幅方向の片方の端部(図3中、下方)は、長手方向に帯状に延び、自身の厚み方向に負極活物質層133が存在しない負極集電部131mとなっている。この負極集電部131mの幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の他方側SBに渦巻き状をなして突出しており、後述する負極延出端子部材160と接続している(図1,図2参照)。
【0030】
また、セパレータ141は、樹脂、具体的にはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)からなる多孔質膜であり、帯状をなす。
【0031】
次に、延出端子部材(正極延出端子部材150及び負極延出端子部材160)について説明する(図1,図4〜図6を参照)。正極延出端子部材150と負極延出端子部材160は、基本的に同様な構成であるので、これらを構成する各部材には、正極延出端子部材150と負極延出端子部材160とで同一の符号を付して説明する。
【0032】
正極延出端子部材150は、前述のように電池ケース110内において電極体120の正極集電部121mに接続する一方、電池ケース110(ケース蓋部材113)を貫通して(端子挿通孔113hを通じて)、電池ケース110の外部(ケース蓋部材113上)に延出している。また、負極延出端子部材160は、前述のように電池ケース110内において電極体120の負極集電部131mに接続する一方、電池ケース110(ケース蓋部材113)を貫通して(端子挿通孔113hを通じて)、電池ケース110の外部(ケース蓋部材113上)に延出している。
【0033】
これらの延出端子部材150,160は、金属からなる板材をその厚み方向に屈曲成形したものであり、要素接続部151と外部配置端子部153とからなる。なお、正極延出端子部材150は、電極体120の正極集電箔122(アルミニウム箔)との溶接を考慮して、アルミニウムにより形成されており、負極延出端子部材160は、電極体120の負極集電箔132(銅箔)との溶接を考慮して、銅により形成されている。
このうち要素接続部151は、本体部151eと挿通部151fとからなる。本体部151eは、電池ケース110の内部に配置されて、電極体120(その正極集電部121mまたは負極集電部131m)に接続(溶接)されている。
また、挿通部151fは、後述する絶縁樹脂部材170を貫通すると共に、ケース蓋部材113の端子挿通孔113hに挿通されて、電池ケース110の内部から外部に延出し、後述する外部配置端子部153の基部153eに連なっている。
【0034】
また、外部配置端子部153は、基部153eと立上部153fと外部接続部153gとを含んでクランク状(Z字状)をなし、電池ケース110の外部(ケース蓋部材113上)に配置されている。
このうち基部153eは、板状をなし、ケース蓋部材113に沿って延び、後述する絶縁樹脂部材170を介してケース蓋部材113に固定されている。この基部153eは、前述のように、要素接続部151の挿通部151fと連なっている。
【0035】
立上部153fは、矩形板状をなし、基部153eの端部から屈曲して立ち上がり、ケース蓋部材113から離れる方向に延びている。
外部接続部153gは、板状をなし、立上部153fの端部から屈曲して、基部153eと平行に延びている。この外部接続部153gには、後述するボルト155の雄ネジ部155eが貫通するネジ挿通孔153ghが設けられており、後述するボルト155の頭部155fが係合する。また、この外部接続部153gには、電池外の接続端子である電池外接続端子が接続される。電池外接続端子としては、例えば、後述するバスバーGT(図6参照)やケーブルの先端に取り付けた圧着端子など挙げられる。
【0036】
次に、ボルト155について説明する(図1,図4〜図6を参照)。ボルト155は、延出端子部材150,160の外部配置端子部153の外部接続部153gにバスバーGTをナットNTで締結する際、外部接続部153gに接続可能(当接可能)に、ケース蓋部材113上に配置されている。このボルト155は、自身の外周に雄ネジが形成された雄ネジ部155eと、これよりも径大な頭部155fとからなる。
【0037】
このうち雄ネジ部155eは、外部接続部153gのネジ挿通孔153ghに挿通されており、ケース蓋部材113に直交する方向(上下方向)に延びている。
頭部155fは、円形鍔付きの六角柱状をなし、その表面155fhは、ケース蓋部材113側(下側)を向く六角形状の頂面155fh1と、ケース蓋部材113とは逆側(上側)を向く略円環状の当接面155fh3と、これら頂面155fh1と当接面155fh3との間を結ぶ6つの側面155fh2とを有する。
【0038】
頭部155fの表面155fhのうち、後述する絶縁樹脂部材170に対向する対向面155hfaをなす頂面155fh1及び側面155fh2には、厚み0.10mmの樹脂被覆層180が形成されている。一方、頭部155fの表面155fhのうち、当接面155fh3には、樹脂被覆層180を形成していない。この樹脂被覆層180は、後述する絶縁樹脂部材170をなす第1樹脂の線膨張率α1よりも大きい線膨張率α2を有する第2樹脂からなる。具体的には、樹脂被覆層180は、株式会社SMPテクノロジーズ社製の形状記憶ポリマー「ダイアリィ MS type」からなる。線膨張率(平均線膨張率)α2は、α2=18500×10-5/Kである。
【0039】
この平均線膨張率α2は、常温(20℃)における線膨張率α2(20℃)と、110℃における線膨張率α2(110℃)をそれぞれ求め、これを平均することにより得た。
α2={α2(20℃)+α2(110℃)}/2
なお、110℃は、後述する樹脂絶縁部材170を射出成形する際に、樹脂被覆層180に掛かる温度である。
【0040】
樹脂被覆層180が被覆した頭部155fは、外部接続部153gよりもケース蓋部材113側(下側)に配置されており、後述する絶縁樹脂部材170(その頭部用凹部170fn)に嵌合して、絶縁樹脂部材170に仮保持されている。これにより、ボルト155がその軸線BX周りに回転不能な状態となっている。
【0041】
次に、絶縁樹脂部材170,170について説明する(図1,図4〜図6を参照)。この絶縁樹脂部材170は、線膨張率α1を有する第1樹脂により形成されている。具体的には、この絶縁樹脂部材170は、線膨張率α1=2.4×10-5/KのPPS(ポリフェニレンスルファイド)からなる。
【0042】
この絶縁樹脂部材170は、後述するように射出成形により、ケース蓋部材113、延出端子部材150,160、ボルト155(その頭部155f)及び樹脂被覆層180と一体成形されている。この絶縁樹脂部材170は、電池ケース110の外部(ケース蓋部材113上)と、ケース蓋部材113の端子挿通孔113h内と、電池ケース110の内部に配置されており、延出端子部材150,160とケース蓋部材113との間を絶縁すると共に、これらの間をシールしつつ、延出端子部材150,160をケース蓋部材113に固定している。また、絶縁樹脂部材170は、ボルト155の頭部155f及びこれを被覆する樹脂被覆層180とケース蓋部材113との間を絶縁しつつ、これら頭部155f及び樹脂被覆層180を仮保持している。
【0043】
具体的には、延出端子部材150,160のうち外部配置端子部153の基部153eが、絶縁樹脂部材170に設けられた平面視矩形状の基部用凹部170fm内に配置された状態で、基部153eと絶縁樹脂部材170とが互いに接合している。また、延出端子部材150,160のうち要素接続部151の挿通部151fが、絶縁樹脂部材170を貫通した状態で、挿通部151fと絶縁樹脂部材170とが互いに接合している。これにより、延出端子部材150,160を絶縁樹脂部材170を介してケース蓋部材113に固定している。
【0044】
また、ボルト155の頭部155f及び樹脂被覆層180が、絶縁樹脂部材170に設けられた平面視六角形状の頭部用凹部170fnに嵌合しており、これにより、ボルト155の頭部155f及び樹脂被覆層180を、絶縁樹脂部材170に仮保持させている。但し、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは、互いに接合することなく分離しており、次述するようにボルト155に軸力を掛けることで、ボルト155をその軸線BX方向に移動させることができる。
【0045】
図6に示すように、延出端子部材150,160の外部接続部153gにバスバーGTを当接させ、ボルト155の雄ネジ部155eにナットNTを締結したとき、ボルト155はその軸線BX方向の先端側(上側)に移動する。前述のように、ボルト155の頭部155f及び樹脂被覆層180は、絶縁樹脂部材170(その頭部用凹部170fn)に仮保持されているが、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは分離しているために、ナットNTの締結によりボルト155に軸力を掛けることで、ボルト155を軸線BX方向の先端側に移動させることができる。
【0046】
その際、ボルト155が軸線BX方向の先端側に移動しても、ボルト155の頭部155f及び樹脂被覆層180の一部は、絶縁樹脂部材170の頭部用凹部170fnに嵌合した状態にあるので、ボルト155の軸線BX周りの回転(ボルト155の共回り)が規制された状態が維持され続ける。そして、ボルト155の頭部155fの当接面155fh3が、外部接続部153gに当接する。これにより、外部接続部153g及びバスバーGTを、ボルト155の頭部155fとナットNTとの間で確実に挟持できるので、バスバーGTを外部接続部153gに確実に接続できる。
【0047】
以上で説明したように、本実施形態1に係る電池100は、第1ケース部材(ケース蓋部材)113と第2ケース部材(ケース本体部材)111とを接合してなる電池ケース110と、電池ケース110内に収容された電極体120と、電池ケース110の内部で電極体120に接続する一方、第1ケース部材113を貫通して第1ケース部材113の外側に延出してなる延出端子部材150,160とを備える。
また、この電池100は、第1樹脂からなり、延出端子部材150,160と第1ケース部材113との間を絶縁しつつ、延出端子部材150,160を第1ケース部材113に固定してなる絶縁樹脂部材170と、第1ケース部材113の外側に配置されてなり、延出端子部材150,160と係合し、電池外の接続端子である電池外接続端子(バスバー)GTを延出端子部材150,160に締結するボルト155とを備える。
【0048】
そして、ボルト155は、外周に雄ネジが形成された雄ネジ部155eと、この雄ネジ部155eよりも径大な頭部155fとを有する。
また、この電池100は、ボルト155の頭部155fの表面155fhのうち、少なくとも絶縁樹脂部材170に対向する対向面155fhaに被覆され、第1樹脂の線膨張率α1よりも大きい線膨張率α2を有する第2樹脂からなる樹脂被覆層180を備える。
また、延出端子部材150,160は、第1ケース部材113の外側に配置されてなり、ボルト155の雄ネジ部155eが貫通するネジ挿通孔153ghを含み、ボルト155の頭部155fが係合し、電池外接続端子GTが接続される外部接続部153gを有する。
【0049】
また、絶縁樹脂部材170は、第1ケース部材113、延出端子部材150,160、ボルト155の頭部155f及び樹脂被覆層180と一体成形されてなる。そして、少なくとも電池外接続端子GTを締結する際に、絶縁樹脂部材170は、ボルト155の頭部155fがその軸線BX回りに回転するのを規制してなり、かつ、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは、ボルト155がその軸線BX方向に移動可能に分離してなる。
【0050】
この電池100では、絶縁樹脂部材170が、ケース蓋部材113、延出端子部材150,160、ボルト155(その頭部155f)及び樹脂被覆層180と一体成形されているので、後述する電池100の製造工程を簡素化できるなど、電池100の製造が従来に比して容易である。従って、この電池100は、従来に比して安価にすることができ、また、電池100の信頼性を向上させることができる。
【0051】
更に、この電池100では、ボルト155の頭部155fの表面155fhのうち、絶縁樹脂部材170に対向する対向面155fhaに、樹脂被覆層180が形成されている。そして、バスバーGTを締結する際に、絶縁樹脂部材170は、ボルト155の頭部155fがその軸線BX回りに回転するのを規制してなり、かつ、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは、ボルト155がその軸線BX方向に移動可能に分離してなる。
【0052】
このため、延出端子部材150,160の外部接続部153gにバスバーGTを当接させ、ボルト155の雄ネジ部155eにナットNTを締結する際に、ボルト155の軸線BX周りの回転(ボルト155の共回り)を防止しつつ、ボルト155をその軸線BX方向に移動させることができる。そして、ボルト155の頭部155fを外部接続部153gに確実に当接させて、外部接続部153g及びバスバーGTを、ボルト155の頭部155fとナットNTとの間で確実に挟持できる。従って、バスバーGTを延出端子部材150,160の外部接続部153gに確実に接続できる。
【0053】
このように、この電池100は、ケース蓋部材113、延出端子部材150,160、ボルト155の頭部155f、樹脂被覆層180及び絶縁樹脂部材170を一体成形でき、電池100を安価で信頼性の高いものとしつつも、バスバーGTを、ボルト155の軸線BX回りの回転を規制し続けながら、外部接続部153gに確実に接続できる。
【0054】
次いで、上記電池100の製造方法について説明する。まず、別途形成した帯状の正極板121及び負極板131を、帯状のセパレータ141を介して互いに重ね(図3参照)、巻き芯を用いて軸線AX周りに捲回する。その後、これを扁平状に圧縮して電極体120を形成する(図2参照)。
【0055】
また、ボルト155を用意する(図7参照)。そして、樹脂被覆層形成工程において、ボルト155の頭部155fの表面155fhのうち、対向面155fha(頂面155fh1及び側面155fh2)に、第2樹脂からなる樹脂被覆層180を形成する(図8参照)。具体的には、ボルト155を射出成形用の金型内にセットし、この金型内に第2樹脂を射出して、頭部155fの対向面155fhaに厚み0.1mmの樹脂被覆層180を形成する。前述のように、本実施形態1では、第2樹脂として、線膨張率(平均線膨張率)α2=18500×10-5/Kである、株式会社SMPテクノロジーズ社製の形状記憶ポリマー「ダイアリィ MS type」を用いる。
【0056】
次に、延出端子部材150,160とケース蓋部材113を用意する。そして、射出工程において、第1樹脂を射出して絶縁樹脂部材170を形成し、ケース蓋部材113と延出端子部材150,160とボルト155の頭部155fと樹脂被覆層180とを一体化させる(図9及び図10参照)。
【0057】
具体的には、ケース蓋部材113と、延出端子部材150,160と、頭部155fに樹脂被覆層180が被覆したボルト155とを、射出成形用の金型KG内にセットする(図9参照)。そして、この金型KG内に第1樹脂を射出し、絶縁樹脂部材170を形成して、ケース蓋部材113と延出端子部材150,160とボルト155の頭部155fと樹脂被覆層180とを絶縁樹脂部材170を介して一体化させる。前述のように、本実施形態1では、第1樹脂として、線膨張率α1=2.4×10-5/KであるPPSを用いる。なお、この射出成形時においては、絶縁樹脂部材170と樹脂被覆層180とは、互いに結合した状態にある。また、この射出成形時に、絶縁樹脂部材170及び樹脂被覆層180は、前述のように110℃まで加熱される。
【0058】
次に、冷却工程において、この一体化されたケース蓋部材113、延出端子部材150,160、ボルト155の頭部155f、樹脂被覆層180及び絶縁樹脂部材170を常温に向けて自然冷却する。その際、第2樹脂は第1樹脂よりも線膨張率が大きいので、第2樹脂からなる樹脂被覆層180が、第1樹脂からなる絶縁樹脂部材170よりも大きく熱収縮し、この熱収縮の違いにより樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とが分離する。これにより、バスバーGTを締結する際に、絶縁樹脂部材170は、ボルト155の頭部155fがその軸線BX回りに回転するのを規制する形態となると共に、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは、ボルト155がその軸線BX方向に移動可能に分離した形態となる。
【0059】
次に、正極延出端子部材150の要素接続部材151を電極体120の正極集電部121mに溶接すると共に、負極延出端子部材160の要素接続部材151を電極体120の負極集電部131mに溶接する。
その後、ケース本体部材111及び絶縁フィルム包囲体115を用意し、ケース本体部材111内に絶縁フィルム包囲体115を介して電極体120を収容すると共に、ケース本体部材111の開口111hをケース蓋部材113で塞ぐ。そして、レーザ溶接により、ケース本体部材111とケース蓋部材113とを溶接して、電池ケース110を形成する。
次に、注液孔113eから電池ケース110内に電解液117を注液し、その後、封止部材114で注液孔113eを気密に封止する。かくして、電池100が完成する。
【0060】
以上で説明したように、この電池100の製造方法は、ボルト155の頭部155fの表面155fhのうち、少なくとも対向面155fhaに、第2樹脂からなる樹脂被覆層180を形成する樹脂被覆層形成工程を備える。
また、この電池100の製造方法は、樹脂被覆層形成工程の後、第1樹脂を射出して絶縁樹脂部材170を形成し、第1ケース部材(ケース蓋部材)113と延出端子部材150,160とボルト155の頭部155fと樹脂被覆層180とを一体化させる射出工程を備える。
また、この電池100の製造方法は、射出工程の後、一体化された第1ケース部材113、延出端子部材150,160、ボルト155の頭部155f、樹脂被覆層180及び絶縁樹脂部材170を常温に向けて冷却し、第2樹脂からなる樹脂被覆層180を、第1樹脂からなる絶縁樹脂部材170よりも大きく熱収縮させて、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とを分離させる冷却工程を備える。
【0061】
この電池100の製造方法では、樹脂層被覆工程において、ボルト155の頭部155fの表面155fh(その対向面155fha)に、予め樹脂被覆層180を形成しておく。そして、射出工程において、絶縁樹脂部材170を形成すると共に、ケース蓋部材113と延出端子部材150,160とボルト155の頭部155fと樹脂被覆層180とを一体化させる。この時点では、ボルト155の頭部155fを被覆する樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とは、互いに結合している。
【0062】
しかしその後、冷却工程を行うことにより、線膨張率α2が大きい第2樹脂からなる樹脂被覆層180を、線膨張率α1が小さい第1樹脂からなる絶縁樹脂部材170よりも大きく熱収縮させて、樹脂被覆層180と絶縁樹脂部材170とを分離させる。
このようにすることで、ケース蓋部材113、延出端子部材150,160、ボルト155の頭部155f、樹脂被覆層180及び絶縁樹脂部材170を一体成形し、電池100を安価で信頼性の高いものとしながらも、バスバーGTを外部接続部153gに確実に接続できる前述の電池100を、容易に製造できる。
【0063】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2に係るハイブリッド自動車(車両)700(以下、単に自動車700とも言う)は、上記実施形態1に係る電池100を搭載し、この電池100に蓄えた電気エネルギを、駆動源の駆動エネルギの全部または一部として使用するものである(図11参照)。
【0064】
この自動車700は、電池100を複数組み合わせた組電池710を搭載し、エンジン740、フロントモータ720及びリアモータ730を併用して駆動するハイブリッド自動車である。具体的には、この自動車700は、その車体790に、エンジン740と、フロントモータ720及びリアモータ730と、組電池710(電池100)と、ケーブル750と、インバータ760とを搭載する。そして、この自動車700は、組電池710(電池100)に蓄えられた電気エネルギを用いて、フロントモータ720及びリアモータ730を駆動できるように構成されている。
【0065】
前述のように、電池100は、安価で信頼性の高いものでありながら、バスバーGT等の電池外接続端子を外部接続部153gに確実に接続できる。従って、これを搭載した自動車700を安価にできると共に、自動車700の信頼性を向上させることができる。
【0066】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。本実施形態3のハンマードリル800は、上記実施形態1に係る電池100を搭載した電池使用機器である(図12参照)。このハンマードリル800は、本体820の底部821に、電池100を含むバッテリパック810が収容されており、このバッテリパック810を、ドリルを駆動するためのエネルギー源として利用している。
【0067】
前述のように、電池100は、安価で信頼性の高いものでありながら、バスバーGT等の電池外接続端子を外部接続部153gに確実に接続できる。従って、これを搭載したハンマードリル800を安価にできると共に、ハンマードリル800の信頼性を向上させることができる。
【0068】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態1では、「電池ケース」として、角型のものを例示したが、これに限られない。電池ケースは、例えば円筒型としてもよい。
また、上記実施形態1では、開口111hを有する箱状のケース本体部材(第2ケース部材)111と、この開口111hを閉塞するケース蓋部材(第1ケース部材)113とからなる電池ケース110のうち、ケース蓋部材113に、延出端子部材150,160を固設した電池100を例示したが、これに限られない。延出端子部材150,160は、例えばケース本体部材111の底面や側面に固設してもよい。この場合、ケース本体部材が前述の「第1ケース部材」に、ケース蓋部材が前述の「第2ケース部材」に相当する。
【0069】
また、上記実施形態1では、「電極体」として、各々帯状をなす正極板121及び負極板131をセパレータ141を介して重ねて捲回してなる捲回型の電極体120を例示したが、これに限られない。例えば、電極体を、各々所定形状(例えば矩形状など)をなす正極板及び負極板をセパレータを介して複数積層してなる積層型としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態1では、「延出端子部材」として、金属板材を所定形状に屈曲加工したものと例示したが、これに限られない。また、「外部配置端子部」をクランク状としているが、この形状も適宜変更できる。また、正極延出端子部材150と負極延出端子部材160を同形状としているが、互いに異なる形状とすることもできる。
【0071】
また、上記実施形態1では、「絶縁樹脂部材」をなす「第1樹脂」として、PPSを例示したが、これに限られない。第1樹脂としては、その線膨張率α1が第2樹脂の線膨張率α2よりも小さくなる限りにおいて適宜選択することができ、例えば、PEやPPなどの樹脂や、複数種の樹脂からなる樹脂を用いることができる。
【0072】
また、上記実施形態1では、「ボルト」として、その頭部155fが円形鍔付きの六角柱状をなすものを例示したが、頭部の形状はこれに限られない。また、樹脂被覆層180を、頭部155fの表面155fhのうち、頂面155fh1及び側面155f2に形成しているが、これに限られない。例えば、頭部155fの頂面155fh1が、絶縁樹脂部材170に触れない形態(頂面155fh1と絶縁樹脂部材170との間に隙間が存在する形態)に成形する場合には、頭部155fの側面155f2にのみ樹脂被覆層180を形成してもよい。
また、上記実施形態1では、「樹脂被覆層」をなす「第2樹脂」として、形状記憶ポリマーを例示したが、これに限られない。第2樹脂としては、その線膨張率α2が第1樹脂の線膨張率α1よりも大きくなる限りにおいて適宜選択することができる。
【0073】
また、上記実施形態1では、ボルト155の頭部155f及びこれを被覆する樹脂被覆層180が、絶縁樹脂部材170に仮保持された電池100を例示したが、これに限られない。例えば、樹脂被覆層と絶縁樹脂部材との間に隙間を設けることにより、電池外接続端子の締結前においても、ボルトの頭部及び樹脂被覆層が、絶縁樹脂部材に仮保持されない形態とすることもできる。
【0074】
また、上記実施形態1では、「樹脂被覆層形成工程」として、射出成形により樹脂被覆層180を形成する場合を例示したが、これに限られない。例えば、刷毛やスプレー等で第2樹脂を塗布することにより、樹脂被覆層を形成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態2では、本発明に係る電池100を搭載する車両として、ハイブリッド自動車700を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する車両としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータなどが挙げられる。
【0076】
また、上記実施形態では、本発明に係る電池100を搭載する電池使用機器して、ハンマードリル800を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する電池使用機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の電動工具、無停電電源装置など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。
【符号の説明】
【0077】
100 リチウムイオン二次電池(電池)
110 電池ケース
111 ケース本体部材(第2ケース部材)
113 ケース蓋部材(第1ケース部材)
113h 端子挿通孔
120 電極体
150 正極延出端子部材(延出端子部材)
160 負極延出端子部材(延出端子部材)
151 要素接続部
153 外部配置端子部
153g 外部接続部
153gh ネジ挿通孔
155 ボルト
155e 雄ネジ部
155f 頭部
155fh (頭部の)表面
155fha 対向面
155fh1 頂面
155fh2 側面
155fh3 当接面
170 絶縁樹脂部材
180 樹脂被覆層
700 ハイブリッド自動車(車両)
800 ハンマードリル(電池使用機器)
BX (ボルトの)軸線
GT バスバー(電池外接続端子)
NT ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケース部材と第2ケース部材とを接合してなる電池ケースと、
前記電池ケース内に収容された電極体と、
前記電池ケースの内部で前記電極体に接続する一方、前記第1ケース部材を貫通して前記第1ケース部材の外側に延出してなる延出端子部材と、
第1樹脂からなり、前記延出端子部材と前記第1ケース部材との間を絶縁しつつ、前記延出端子部材を前記第1ケース部材に固定してなる絶縁樹脂部材と、
前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記延出端子部材と係合し、電池外の接続端子である電池外接続端子を前記延出端子部材に締結するボルトと、を備える
電池であって、
前記ボルトは、
外周に雄ネジが形成された雄ネジ部と、
前記雄ネジ部よりも径大な頭部と、を有し、
前記ボルトの前記頭部の表面のうち、少なくとも前記絶縁樹脂部材に対向する対向面に被覆され、前記第1樹脂の線膨張率α1よりも大きい線膨張率α2を有する第2樹脂からなる樹脂被覆層を備え、
前記延出端子部材は、
前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記ボルトの前記雄ネジ部が貫通するネジ挿通孔を含み、前記ボルトの前記頭部が係合し、前記電池外接続端子が接続される外部接続部を有し、
前記絶縁樹脂部材は、
前記第1ケース部材、前記延出端子部材、前記ボルトの前記頭部及び前記樹脂被覆層と一体成形されてなり、
少なくとも前記電池外接続端子を締結する際に、
前記絶縁樹脂部材は、前記ボルトの前記頭部がその軸線回りに回転するのを規制してなり、かつ、
前記樹脂被覆層と前記絶縁樹脂部材とは、前記ボルトがその軸線方向に移動可能に分離してなる
電池。
【請求項2】
第1ケース部材と第2ケース部材とを接合してなる電池ケースと、
前記電池ケース内に収容された電極体と、
前記電池ケースの内部で前記電極体に接続する一方、前記第1ケース部材を貫通して前記第1ケース部材の外側に延出してなる延出端子部材と、
第1樹脂からなり、前記延出端子部材と前記第1ケース部材との間を絶縁しつつ、前記延出端子部材を前記第1ケース部材に固定してなる絶縁樹脂部材と、
前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記延出端子部材と係合し、電池外の接続端子である電池外接続端子を前記延出端子部材に締結するボルトと、を備え、
前記ボルトは、
外周に雄ネジが形成された雄ネジ部と、
前記雄ネジ部よりも径大な頭部と、を有し、
前記ボルトの前記頭部の表面のうち、少なくとも前記絶縁樹脂部材に対向する対向面に被覆され、前記第1樹脂の線膨張率α1よりも大きい線膨張率α2を有する第2樹脂からなる樹脂被覆層を備え、
前記延出端子部材は、
前記第1ケース部材の外側に配置されてなり、前記ボルトの前記雄ネジ部が貫通するネジ挿通孔を含み、前記ボルトの前記頭部が係合し、前記電池外接続端子が接続される外部接続部を有し、
前記絶縁樹脂部材は、
前記第1ケース部材、前記延出端子部材、前記ボルトの前記頭部及び前記樹脂被覆層と一体成形されてなり、
少なくとも前記電池外接続端子を締結する際に、
前記絶縁樹脂部材は、前記ボルトの前記頭部がその軸線回りに回転するのを規制してなり、かつ、
前記樹脂被覆層と前記絶縁樹脂部材とは、前記ボルトがその軸線方向に移動可能に分離してなる
電池の製造方法であって、
前記ボルトの前記頭部の前記表面のうち、少なくとも前記対向面に、前記第2樹脂からなる前記樹脂被覆層を形成する樹脂被覆層形成工程と、
前記樹脂被覆層形成工程の後、前記第1樹脂を射出して前記絶縁樹脂部材を形成し、前記第1ケース部材と前記延出端子部材と前記ボルトの前記頭部と前記樹脂被覆層とを一体化させる射出工程と、
前記射出工程の後、一体化された前記第1ケース部材、前記延出端子部材、前記ボルトの前記頭部、前記樹脂被覆層及び前記絶縁樹脂部材を常温に向けて冷却し、前記第2樹脂からなる前記樹脂被覆層を、前記第1樹脂からなる前記絶縁樹脂部材よりも大きく熱収縮させて、前記樹脂被覆層と前記絶縁樹脂部材とを分離させる冷却工程と、を備える
電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−4443(P2013−4443A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137095(P2011−137095)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】