説明

電波反射装置、及び、光軸調整方法

【課題】レーダ装置の光軸を調整するための作業スペースを縮小する。
【解決手段】電波反射装置2は、レーダ装置1と対向させて配設され、レーダ装置1から送出された電波信号を反射するものであって、レーダ装置1から送出された電波信号を受信する受信アンテナ21と、受信アンテナ21によって受信された電波信号を、予め設定された遅延時間ΔTだけ遅延させて、遅延信号を生成する遅延回路22と、遅延回路によって生成された遅延信号を、レーダ装置1に向けて送出する送信アンテナ23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する際に、該レーダ装置と対向させて配設され、該レーダ装置から送出された電波信号を反射する電波反射装置に関する。また、本発明は、例えば、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置を介して検出された相対位置及び相対速度は、対向車両等の物体との衝突判断等に利用されるため、レーダ装置の光軸(又は、電波軸)を予め設定した所定の向きに正しく向けて配設する必要がある。一方、レーダ装置の光軸を調整するためには、その検出原理から、レーダ装置と基準反射体との距離が充分に大きい(例えば、5m以上離れている)必要がある(詳細は、図4等を用いて後述する)。また、基準反射体の周囲に、他の物体が存在しないことが要求される。
【0003】
そこで、レーダ装置の光軸を調整するためには、広大な作業スペースが必要となるが、広大な作業スペースが確保できない場合がある。そこで、レーダ装置の光軸を調整するために必要な作業スペースを縮小するための種々の方法、装置等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の検知軸調整方法では、基準反射体Rの更に前方に電磁波吸収体としての複数のタイヤTを積み重ね、レーダ装置から電磁波を放射して基準反射体Rがレーダ装置の検知エリアの基準位置となるようにレーダ装置の物体検知軸Arを調整する。そこで、電磁波を反射する物体が存在しない広い作業スペースを基準反射体Rの前方に確保する必要がなくなり、充分な広さの作業スペースが確保できない場合にも正確な調整作業を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−240837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検知軸調整方法では、電磁波吸収体を配設によって基準反射体の周囲に存在する他の物体の影響が軽減されるが、依然として、レーダ装置と基準反射体との距離が充分に離間している必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、レーダ装置の光軸を調整するための作業スペースを縮小することの可能な電波反射装置、及び、光軸調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有している。第1の発明は、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する際に、該レーダ装置と対向させて配設され、該レーダ装置から送出された電波信号を反射する電波反射装置であって、前記レーダ装置から送出された電波信号を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナによって受信された電波信号を、予め設定された遅延時間だけ遅延させて、遅延信号を生成する遅延手段と、前記遅延手段によって生成された遅延信号を、前記レーダ装置に向けて送出する送信アンテナと、を備える。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記遅延手段が、前記遅延時間に応じた長さを有する遅延電線を備える。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、前記遅延手段が、前記受信アンテナと前記遅延電線との間に介設され、前記受信アンテナによって受信された電波信号の周波数を低減し、低周波信号を生成する第1周波数変換器と、前記遅延電線と前記送信アンテナとの間に介設され、前記遅延電線によって遅延された低周波信号を、前記受信アンテナによって受信される電波信号に対応する高周波信号に変換する第2周波数変換器と、を備える。
【0011】
第4の発明は、上記第3の発明において前記遅延手段が、前記レーダ装置から送出される電波信号の周波数に基づいて予め設定された周波数の正弦波を生成する発振器を備え、前記第1周波数変換器が、前記受信アンテナで受信された電波信号を、前記発振器で生成された正弦波と重畳することによって、前記低周波信号を生成し、前記第2周波数変換器が、前記遅延電線で遅延された前記低周波信号を、前記発振器で生成された正弦波と重畳することによって、前記高周波信号に変換する。
【0012】
第5の発明は、上記第1の発明において、前記遅延時間が、前記レーダ装置によって検出可能な物体との最短距離に基づいて設定される。
【0013】
第6の発明は、上記第1の発明において、前記遅延手段が、前記遅延時間に応じた長さを有する導波管を備える。
【0014】
第7の発明は、上記第1の発明において、前記遅延手段が、前記受信アンテナによって受信された電波信号を増幅する第1増幅器を備える。
【0015】
第8の発明は、上記第1の発明において、前記遅延手段が、前記遅延信号を増幅する第2増幅器を備える。
【0016】
第9の発明は、上記第1の発明において、前記遅延手段が、前記レーダ装置から送出された電波信号に対応する周波数の信号を通過させると共に、前記レーダ装置から送出された電波信号に対応する周波数から離間した周波数の信号を遮断するフィルタを備える。
【0017】
第10の発明は、上記第1の発明において、前記レーダ装置が、FMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式のレーダ装置である。
【0018】
第11の発明は、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する光軸調整方法であって、前記レーダ装置に、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電波反射装置に向けて電波信号を送出させ、前記レーダ装置に、前記電波反射装置から送出される信号を反射信号として受信させ、該反射信号に基づいて前記レーダ装置の光軸を調整する。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明によれば、受信アンテナによって、レーダ装置から送出された電波信号が受信される。そして、遅延手段によって、受信された電波信号が、予め設定された遅延時間だけ遅延されて、遅延信号が生成される。更に、送信アンテナによって、生成された遅延信号が、前記レーダ装置に向けて送出される。従って、前記レーダ装置から受信された電波信号が、予め設定された遅延時間だけ遅延されて遅延信号が生成され、生成された遅延信号が前記レーダ装置に向けて送出されるため、該レーダ装置の光軸を調整するための作業スペースを縮小することができる。
【0020】
すなわち、前記遅延時間を適正な値に設定することによって、前記レーダ装置にて受信される反射波を、前記レーダ装置から適正な距離(例えば、5m)だけ離間した反射体からの反射波と略同一の特性(例えば、周波数特性等)を有する反射波とすることができるため、前記電波反射装置を前記レーダ装置から離間させる必要がなくなるのである。
【0021】
例えば、前記レーダ装置が、FMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式のレーダ装置である場合には、送信波と受信波とのビート信号がノイズ(DCノイズ等)に埋もれないために(=正確な検出をするために)、該ビート信号が、所定の周波数以上である必要がある。そこで、前記遅延時間を適正な値に設定することによって、送信波と受信波とのビート信号の周波数を適正な値とすることができる(図7参照)ので、前記電波反射装置を前記レーダ装置から離間させる必要がなくなるのである。
【0022】
上記第2の発明によれば、前記遅延時間に応じた長さを有する遅延電線によって、前記レーダ装置から受信された電波信号が前記遅延時間だけ遅延されるため、簡素な構成で、前記遅延信号を生成することができる。
【0023】
上記第3の発明によれば、前記受信アンテナと前記遅延電線との間に介設された第1周波数変換器によって、前記受信アンテナによって受信された電波信号の周波数が低減されて、低周波信号が生成される。また、前記遅延電線と前記送信アンテナとの間に介設された第2周波数変換器によって、前記遅延電線によって遅延された低周波信号が、前記受信アンテナによって受信される電波信号に対応する高周波信号に変換される。そこで、前記遅延電線によって遅延される信号の周波数を低減することができるので、前記レーダ装置から受信された電波信号を遅延することに伴う信号の減衰を抑制することができる。従って、前記レーダ装置の光軸調整を正確に行うことができる。
【0024】
すなわち、高周波信号を前記遅延電線によって遅延する場合には、表皮効果によって前記遅延電線を伝搬することに伴う信号の減衰が大きい。従って、前記遅延電線によって遅延する信号の周波数を低減することによって、前記遅延電線を伝搬することに伴う信号の減衰を抑制することができるのである。
【0025】
上記第4の発明によれば、発振器によって、前記レーダ装置から送出される電波信号の周波数に基づいて予め設定された周波数の正弦波が生成される。また、前記第1周波数変換器によって、前記受信アンテナで受信された電波信号が、前記発振器で生成された正弦波と重畳されて、前記低周波信号が生成される。更に、前記第2周波数変換器によって、前記遅延電線で遅延された前記低周波信号が、前記発振器で生成された正弦波と重畳されて、前記高周波信号に変換される。従って、簡素な構成で、周波数を変換することができる。
【0026】
上記第5の発明によれば、前記遅延時間が、前記レーダ装置によって検出可能な物体との最短距離に基づいて設定されるため、前記遅延時間を適正な値に設定することができる。従って、前記レーダ装置の光軸調整を、狭い作業スペースで正確に行うことができる。
【0027】
すなわち、例えば、前記レーダ装置が、FMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式のレーダ装置である場合には、送信波と受信波とのビート信号がノイズ(DCノイズ等)に埋もれないために(=正確な検出をするために)、該ビート信号が、所定の周波数以上である必要がある。そこで、前記レーダ装置によって検出可能な物体との最短距離に基づいて前記遅延時間を設定することによって、送信波と受信波とのビート信号の周波数を適正な値とすることができる(図7参照)のである。
【0028】
上記第6の発明によれば、前記遅延時間に応じた長さを有する導波管によって、前記レーダ装置から受信された電波信号が前記遅延時間だけ遅延されるため、前記レーダ装置から受信された電波信号を遅延することに伴う信号の減衰を抑制することができる。従って、前記レーダ装置の光軸調整を更に正確に行うことができる。
【0029】
上記第7の発明によれば、第1増幅器によって、前記レーダ装置から受信された電波信号が増幅されるため、前記レーダ装置から受信された電波信号を遅延することに伴う信号の減衰を補完することができる。従って、前記レーダ装置の光軸調整を正確に行うことができる。
【0030】
上記第8の発明によれば、第2増幅器によって、前記遅延信号が増幅されるため、前記レーダ装置から受信された電波信号を遅延することに伴う信号の減衰を補完することができる。従って、前記レーダ装置の光軸調整を、狭い作業スペースで更に正確に行うことができる。
【0031】
上記第9の発明によれば、フィルタによって、前記レーダ装置から送出された電波信号に対応する周波数の信号が通過されると共に、前記レーダ装置から送出された電波信号に対応する周波数から離間した周波数の信号が遮断される。従って、遅延信号を生成する際に、該遅延信号に混入するノイズを除去することができるので、前記レーダ装置の光軸調整を、狭い作業スペースで更に正確に行うことができる。
【0032】
上記第10の発明によれば、前記レーダ装置が、FMCW方式のレーダ装置であるため、簡素な構成で物体の相対位置、及び、相対速度を検出することができるレーダ装置において、その光軸調整を、狭い作業スペースで更に正確に行うことができる。
【0033】
上記第11の発明によれば、前記レーダ装置によって、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電波反射装置に向けて電波信号が送出される。また、前記レーダ装置によって、前記電波反射装置から送出される信号が反射信号として受信される。更に、この反射信号に基づいて前記レーダ装置の光軸が調整される。従って、前記レーダ装置の光軸を調整するための作業スペースを縮小することができる。
【0034】
すなわち、前記電波反射装置において、前記レーダ装置から受信された電波信号が、予め設定された遅延時間だけ遅延されて遅延信号が生成され、生成された遅延信号が前記レーダ装置に向けて送出されるため、該レーダ装置の光軸を調整するための作業スペースを縮小することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】レーダ装置によって検出される相対位置及び相対速度の一例を示す平面図
【図2】レーダ装置が、距離R0及び相対速度Vd0を検出する方法の一例を説明するグラフ
【図3】レーダ装置の光軸を調整する光軸調整方法の一例を示す平面図
【図4】電波反射装置に換えて反射板が配設されている場合に、レーダ装置によって検出される検出信号の一例を示すグラフ
【図5】電波反射装置の構成の一例を示すブロック図
【図6】図5に示す遅延回路の一例を示すブロック図
【図7】図3に示すレーダ装置によって検出される検出信号の一例を示すグラフ
【図8】レーダ装置において対向車両VR2の相対位置を規定する角θを検出する方法の一例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明に係る電波反射装置の実施形態について説明する。本発明に係る電波反射装置は、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する際に、該レーダ装置と対向させて配設され、該レーダ装置から送出された電波信号を反射する電波反射装置である。まず、図1、図2を用いて、車両に搭載されたレーダ装置の検出方法の一例について説明する。
【0037】
図1は、レーダ装置によって検出される相対位置及び相対速度の一例を示す平面図である。レーダ装置1は、図の上側へ走行している自車両VR1に搭載されており、その検出範囲内に、対向車両VR2が存在している。対向車両VR2は、自車両VR1の進行方向(図の上向き)に対して、角θだけ右側の位置を、ベクトルVの向き(図の左下向き)に走行している。
【0038】
レーダ装置1から送出された電波信号は、直線WLに沿って空気中を伝搬して、対向車両VR2の捕捉点DPで反射する。そして、反射波が、再度、直線WLに沿って空気中を伝搬して、レーダ装置1で検出される。この場合に、レーダ装置1で検出される対向車両VR2(捕捉点DP)の相対位置を規定する距離R0は、図に示すように、レーダ装置1と、捕捉点DPとの間の距離である。なお、レーダ装置1で検出される対向車両VR2(捕捉点DP)の相対位置を規定する角θは、図8を用いて後述する方法で検出される。
【0039】
また、レーダ装置1で検出される対向車両VR2(捕捉点DP)の相対速度Vd0は、次の(1)式で規定される。
Vd0=V×cosφ (1)
ここで、速度Vは、自車両VR1に対する対向車両VR2の相対速度であり、角φは、対向車両VR2の進行方向(速度ベクトルVの向き)と、直線WLとのなす角である。
【0040】
図2は、レーダ装置1が、距離R0及び相対速度Vd0を検出する方法の一例を説明するグラフである。本実施形態では、レーダ装置1が、FMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式のレーダ装置である場合について説明する。図2(a)は、レーダ装置1によって送信及び受信される信号の周波数の一例を示すグラフであり、横軸は時間Tであって、縦軸は周波数Fである。図2(b)は、受信信号及び送信信号によって生成されるビート信号の周波数の一例を示すグラフG20であり、横軸は時間Tであって、縦軸はビート信号の周波数FBである。
【0041】
図2(a)において実線で示すグラフG0は、レーダ装置1から送出される送信波の一例を示すグラフである。図に示すように、レーダ装置1から送出される送信波は、周波数Fが直線状に増加及び減少を繰り返す変調波である。図2(a)において破線で示すグラフG10は、物体(ここでは、対向車両VR2:図1参照)によって反射された反射波の一例を示すグラフである。図に示すように、反射波(=受信波)は、距離R0だけ離間した位置にある物体(ここでは、対向車両VR2:図1参照)から反射された場合には、送信波に対して、2R0/c(ここで、光速c)だけ遅延するため、両者を混合すると、ビート波が生じる。そのビート波の周波数Frは、次の(2)式で求められる。
【0042】
Fr0=2R0/c×a (2)
ただし、変調度aは、単位時間当たりの周波数の変化量である周波数変調度の絶対値であって、三角波で上下に変調する周波数差Fm、及び、その周波数差だけ掃引するのに要する時間Tmを用いて、次の(3)式で与えられる。
【0043】
a=Fm/Tm (3)
一方、物体(ここでは、対向車両VR2:図1参照)が、レーダ装置1(自車両VR1)に対して相対的に移動している場合には、上記(2)式で示す距離R0による周波数ズレに加えて、ドップラー効果によって周波数シフトFvが生じ、周波数シフトFvは次の(4)式で与えられる。
【0044】
Fv0=2Vd0/c×Fc (4)
ただし、Vd0:相対速度、Fc:送信波の中心周波数である。従って、三角波で周波数変調された送信波と受信波とを混合することによって、(2)式及び(4)式で、それぞれ、表される距離R0と相対速度Vd0とによるビート波を生じる。
【0045】
例えば、三角波の上り勾配のとき(図2の時間T2〜時間T3の期間)のビート周波数Fu0は、次の(5)式で与えられる。
Fu0=Fr0−Fv0 (5)
一方、三角波の下り勾配のとき(図2の時間T0〜時間T1の期間)のビート周波数Fd0は、次の(6)式で与えられる。
Fd0=Fr0+Fv0 (6)
【0046】
上記(2)〜(6)式を、距離R0及び相対速度Vd0について解くことによって、次の(7)式、(8)式が求められる。
R0=(Fd0+Fu0)/4/a×c (7)
Vd0=(Fd0−Fu0)/4/Fc×c (8)
そこで、レーダ装置1は、三角波による周波数変調の上り勾配と下り勾配との、それぞれのビート波の周波数Fu0、Fd0を検出することによって、それぞれ、(7)式及び(8)式を用いて、距離R0及び相対速度Vd0を求めることができる。
【0047】
また、受信信号及び送信信号によって生成されるビート波の周波数Fu0、Fd0は、ビート波をDFT(Discrete Fourier Transform)法等を用いて周波数解析することによって求められる。図2(c)は、受信信号及び送信信号によって生成されるビート信号の周波数特性の一例を示すグラフG30であり、横軸はビート信号の周波数FBであって、縦軸は信号強度である。
【0048】
図2(c)に示すように、ビート周波数Fu0及びFd0は、それぞれ、ビート信号の周波数特性におけるピークPu0、Pd0の周波数として検出される。なお、図2(c)に示すように、ビート信号には、いわゆるDC(直流)ノイズと呼ばれる、低周波のノイズ信号D0が含まれている。
【0049】
このように、レーダ装置1が、FMCW方式のレーダで装置であるため、簡素な構成で物体(ここでは、対向車両VR2)との距離R0、及び、相対速度Vd0を検出することができる。また、本実施形態においては、レーダ装置1が、FMCW方式のレーダ装置である場合について説明するが、レーダ装置1が、他の方式(例えば、パルス方式等)のレーダ装置である形態でも良い。
【0050】
図3は、レーダ装置1の光軸を調整する光軸調整方法の一例を示す平面図である。図3(a)は側面図であり、図3(b)は平面図である。図に示すように、レーダ装置1からは、上下方向の拡がり角θ1、左右方向の拡がり角θ2の電波信号が前方(図の右側)に照射される。すなわち、レーダ装置1の検出範囲DAは、上下方向に拡がり角θ1、左右方向に拡がり角θ2で規定されるレーダ装置1を頂点とする楕円錐状の領域である。図の一点鎖線で示すレーダ装置1の光軸は、拡がり角θ1、θ2の中心軸である。
【0051】
また、図に示すように、本発明に係る光軸調整方法を行う場合には、レーダ装置1の前方に、レーダ装置1と対向する位置に、本発明に係る電波反射装置2が配設される。なお、電波反射装置2は、レーダ装置1から送出された電波信号を反射する装置である。ここでは、電波反射装置2が、レーダ装置1から距離R1の位置に配設されている。また、電波反射装置2の高さ方向の位置、及び、左右方向の位置は、レーダ装置1の光軸の基準位置と一致する位置に予め調整されて、配設されている。すなわち、図の一点鎖線で示すレーダ装置1の光軸上に、電波反射装置2が配設される。
【0052】
そして、レーダ装置1に、電波反射装置2に向けて電波信号を送出させ、レーダ装置1に、電波反射装置2から送出される信号を反射信号として受信させ、この反射信号に基づいてレーダ装置1の光軸を調整する。すなわち、光軸の基準位置に配設された電波反射装置2からの反射信号が最大となる、又は、位相特性の中心が光軸方向と一致するように、レーダ装置1の送出する電波信号の向きを調整するのである。
【0053】
図4は、図3に示す電波反射装置2の位置に電波反射装置2に換えて、レーダ装置1(自車両VR1)に対して固定された反射板が配設されている場合に、レーダ装置1によって検出される検出信号の一例を示すグラフである。図4(a)は、レーダ装置1によって送信及び受信される信号の周波数の一例を示すグラフであり、横軸は時間Tであって、縦軸は周波数Fである。図4(b)は、受信信号及び送信信号によって生成されるビート信号の周波数の一例を示すグラフG21であり、横軸は時間Tであって、縦軸はビート信号の周波数FBである。
【0054】
図4(a)において実線で示すグラフG0は、レーダ装置1から送出される送信波の一例を示すグラフである。図4(a)において破線で示すグラフG11は、反射板によって反射された反射波の一例を示すグラフである。図に示すように、反射波(=受信波)は、レーダ装置1から距離R1だけ離間した位置にある反射板(図3参照)で反射された場合には、送信波に対して、2R1/c(ここで、光速c)だけ遅延するため、両者を混合すると、ビート波が生じる。そのビート波の周波数Fr1は、次の(9)式で求められる。
【0055】
Fr1=2R1/c×a (9)
ただし、変調度aは、単位時間当たりの周波数の変化量である周波数変調度の絶対値であって、三角波で上下に変調する周波数差Fm、及び、その周波数差だけ掃引するのに要する時間Tmを用いて、次の(10)式(便宜上、上記(3)式を再掲)で与えられる。
【0056】
a=Fm/Tm (10)
一方、反射板は、レーダ装置1(自車両VR1)に対して固定されているため、ドップラー効果による周波数シフトは発生しない。従って、三角波で周波数変調された送信波と受信波とを混合することによって、上記(9)式で表される距離R1によるビート波を生じる。
【0057】
また、三角波の上り勾配のときのビート周波数Fu1、三角波の下り勾配のときのビート周波数Fd1は、次の(11)式で与えられる。
Fu1=Fd1=Fr1 (11)
そこで、レーダ装置1は、三角波による周波数変調の上り勾配と下り勾配との、それぞれのビート波の周波数Fu1、Fd1を検出することによって、距離R1を求めることができる。
【0058】
図4(c)は、受信信号及び送信信号によって生成されるビート信号の周波数特性の一例を示すグラフG31であり、横軸はビート信号の周波数FBであって、縦軸は信号強度である。図4(c)に示すように、ビート周波数Fu1及びFd1は、それぞれ、ビート信号の周波数特性におけるピークPu1、Pd1に対応している。しかしながら、図4(c)に示すように、ビート信号には、いわゆるDC(直流)ノイズと呼ばれる、低周波のノイズ信号D0が含まれており、ノイズ信号D0の影響を受けてピークPu1、Pd1を検出することができない。
【0059】
すなわち、距離R1が、検出可能な最短距離(例えば、5m)より小さい(例えば、2mである)ため、ビート周波数Fu1及びFd1が小さく(=低周波数であり)、ノイズ信号D0が存在することに起因して、ピークPu1、Pd1を検出することができない。このため、従来は、レーダ装置1の光軸を調整するためには、広大な作業スペースが必要であった。すなわち、従来は、レーダ装置1と反射体との距離が充分に大きい(例えば、5m以上離れている)必要があったのである。
【0060】
次に、図5、図6を用いて本発明に係る電波反射装置2の構成の一例を説明する。図5は、電波反射装置2の構成の一例を示すブロック図である。図に示すように、電波反射装置2は、受信アンテナ21、遅延回路22、及び、送信アンテナ23を備えている。受信アンテナ21は、レーダ装置1から送出された電波信号を受信するアンテナであって、受信された電波信号を遅延回路22へ出力する。
【0061】
遅延回路22(遅延手段に相当する)は、受信アンテナ23によって受信された電波信号を、予め設定された遅延時間ΔTだけ遅延させて、遅延信号を生成する回路である。遅延回路22によって生成された遅延信号は、送信アンテナ23へ出力される。送信アンテナ23は、遅延回路22によって生成された遅延信号を、レーダ装置1に向けて送出するアンテナである。なお、遅延時間ΔTは、図7を用いて後述するように、レーダ装置1によって検出可能な物体との最短距離(例えば、5m)に基づいて設定される。
【0062】
図6は、図5に示す遅延回路22の一例を示すブロック図である。遅延回路22は、発振回路221、第1周波数変換器222、遅延電線223、及び、第2周波数変換器224を備えている。発振回路221(発振器に相当する)は、レーダ装置1から送出される電波信号の周波数(例えば、中心周波数Fc=76GHz:図4参照)に基づいて予め設定された周波数(例えば、75GHz)の正弦波を生成する回路である。生成された正弦波は、第1周波数変換器222及び第2周波数変換器224へ出力される。
【0063】
第1周波数変換器222は、受信アンテナ21と遅延電線223との間に介設され、受信アンテナ21によって受信された電波信号の周波数を低減し、低周波信号を生成する。具体的には、第1周波数変換器222は、受信アンテナ21で受信された電波信号を、発振回路221で生成された正弦波と重畳することによって、低周波信号を生成する。ここでは、受信アンテナ21よって受信された電波信号の中心周波数Fcが76GHzであり、発振回路221で生成される正弦波の周波数が75GHzであるため、第1周波数変換器222によって、1GHz(=76GHz−75GHz)の低周波信号が生成される。
【0064】
遅延電線223は、同軸ケーブル等からなる電線であって、第1周波数変換器222から出力される低周波信号を、予め設定された遅延時間ΔTだけ遅延させて、遅延信号を生成するものである。ここで、遅延電線223は、遅延時間ΔTに応じた長さを有している。遅延電線223によって生成された遅延信号は、第2周波数変換器224へ出力される。
【0065】
第2周波数変換器224は、遅延電線223と送信アンテナ23との間に介設され、遅延電線223によって遅延された低周波信号を、受信アンテナ21によって受信される電波信号に対応する高周波信号に変換する。具体的には、第2周波数変換器224は、遅延電線223で遅延された低周波信号を、発振回路221で生成された正弦波と重畳することによって、高周波信号に変換する。ここでは、遅延電線223によって遅延された低周波信号の周波数が1GHzであり、発振回路221で生成される正弦波の周波数が75GHzであるため、第2周波数変換器224によって、76GHz(=1GHz+75GHz)の高周波信号が生成される。
【0066】
このようにして、遅延時間ΔTに応じた長さを有する遅延電線223によって、レーダ装置1から受信された電波信号が遅延時間ΔTだけ遅延されるため、簡素な構成で、遅延信号を生成することができる。
【0067】
また、高周波信号を遅延電線223によって遅延する場合には、表皮効果によって遅延電線223を伝搬することに伴う信号の減衰が大きい。そこで、第1周波数変換器222によって、遅延電線223において遅延する信号の周波数を低減することができるので、遅延電線223を伝搬することに伴う信号の減衰を抑制することができる。
【0068】
更に、第1周波数変換器222によって、受信アンテナ21で受信された電波信号が、発振回路221で生成された正弦波と重畳されて、低周波信号が生成され、第2周波数変換器224によって、遅延電線223で遅延された低周波信号が、発振回路221で生成された正弦波と重畳されて、高周波信号に変換されるため、簡素な構成で、周波数を変換することができる。
【0069】
本実施形態では、電波反射装置2(遅延回路22)が、レーダ装置1から受信された電波信号を遅延時間ΔTだけ遅延させる遅延電線223を備える場合について説明するが、電波反射装置2が、遅延電線223に換えて、レーダ装置1から受信された電波信号を遅延時間ΔTだけ遅延させる導波管を備える形態でも良い。この場合には、レーダ装置1から受信された電波信号を遅延することに伴う信号の減衰を抑制することができるため、発振回路221、第1周波数変換器222、及び、第2周波数変換器224の配設を省略することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、第1周波数変換器222からの低周波信号が遅延電線223に出力される場合について説明したが、低周波信号を増幅する増幅器(第1増幅器に相当する)が、第1周波数変換器222と遅延電線223との間に介設されている形態でも良い。この場合には、遅延電線223において信号を遅延させる(=遅延電線223を信号が伝搬する)ことに伴う信号の減衰を補完することができるため、レーダ装置1の光軸調整を更に正確に行うことができる。なお、第1周波数変換器222と遅延電線223との間に介設される増幅器に換えて(又は、加えて)、遅延電線223と第2周波数変換器224との間に増幅器(第2増幅器に相当する)が介設されている形態でも良い。
【0071】
更に、本実施形態では、第1周波数変換器222からの低周波信号が遅延電線223に出力される場合について説明したが、低周波信号を通過させ、高周波信号を遮断するローパスフィルタ(LPF:Low−Pass Filter)、又は、バンドパスフィルタ(BPF:Band−Pass Filter)(フィルタに相当する)が、第1周波数変換器222と遅延電線223との間に介設されている形態でも良い。この場合には、遅延信号を生成する際に、該遅延信号に混入するノイズを除去することができるため、レーダ装置1の光軸調整を更に正確に行うことができる。なお、第1周波数変換器222と遅延電線223との間に介設されるローパスフィルタ(又は、バンドパスフィルタ)に換えて(又は、加えて)、遅延電線223と第2周波数変換器224との間にローパスフィルタ(又は、バンドパスフィルタ)が介設されている形態でも良い。
【0072】
図7は、図3に示すレーダ装置1によって検出される検出信号の一例を示すグラフである。図7(a)は、レーダ装置1によって送信及び受信される信号の周波数の一例を示すグラフであり、横軸は時間Tであって、縦軸は周波数Fである。図7(b)は、受信信号及び送信信号によって生成されるビート信号の周波数の一例を示すグラフG22であり、横軸は時間Tであって、縦軸はビート信号の周波数FBである。
【0073】
図7(a)において実線で示すグラフG0は、レーダ装置1から送出される送信波の一例を示すグラフである。図7(a)において太い破線で示すグラフG12は、図5、図6に示す電波反射装置2によって反射された反射波の一例を示すグラフである。図7(a)において細い破線で示すグラフG11は、図4(a)に示す反射板によって反射された反射波の一例を示すグラフである。図に示すように、反射波(=受信波)は、距離R1だけレーダ装置1から離間した位置にある電波反射装置2(図3参照)で反射された場合には、送信波に対して、(2R1/c+ΔT)(ここで、光速c)だけ遅延するため、両者を混合すると、ビート波が生じる。そのビート波の周波数Fr2は、次の(12)式で求められる。
【0074】
Fr2=(2R1/c+ΔT)×a (12)
ただし、変調度aは、単位時間当たりの周波数の変化量である周波数変調度の絶対値であって、三角波で上下に変調する周波数差Fm、及び、その周波数差だけ掃引するのに要する時間Tmを用いて、次の(13)式(便宜上、上記(3)式を再掲)で与えられる。
【0075】
a=Fm/Tm (13)
一方、電波反射装置2は、レーダ装置1(自車両VR1)に対して固定されているため、ドップラー効果による周波数シフトは発生しない。従って、三角波で周波数変調された送信波と受信波とを混合することによって、上記(12)式で表される距離R1及び遅延時間ΔTによるビート波を生じる。
【0076】
また、三角波の上り勾配のときのビート周波数Fu2、三角波の下り勾配のときのビート周波数Fd2は、次の(14)式で与えられる。
Fu2=Fd2=Fr2 (14)
そこで、レーダ装置1は、三角波による周波数変調の上り勾配と下り勾配との、それぞれのビート波の周波数Fu2、Fd2を検出することによって、距離R1を求めることができる。
【0077】
図7(c)は、受信信号及び送信信号によって生成されるビート信号の周波数特性の一例を示すグラフG32であり、横軸はビート信号の周波数FBであって、縦軸は信号強度である。図7(c)に示すように、ビート周波数Fu2及びFd2は、それぞれ、ビート信号の周波数特性におけるピークPu2、Pd2に対応している。また、図4に示す場合とは異なり、ピークPu1、Pd1の周波数Fu2及びFd2が充分に高いので、ノイズ信号D0によって、その検出が妨げられることはない。
【0078】
すなわち、距離R1が、検出可能な最短距離(例えば、5m)より小さい(例えば、2mである)場合であっても、電波反射装置2によって信号が遅延時間ΔTだけ遅延されるため、ビート周波数Fu1及びFd1が充分大きく、ノイズ信号D0によってピークPu1、Pd1の検出が妨げられることはない。従って、反射板に換えて電波反射装置2を用いることによって、レーダ装置1の光軸を調整するため必要な作業スペースを狭くすることができる。
【0079】
ここで、遅延時間ΔTは、レーダ装置1によって検出可能な物体との最短距離RM(例えば、5m)に基づいて設定される。例えば、光軸調整時にレーダ装置1で検出されるビート波の周波数Fr2(上記(12)式参照)が、最短距離RMだけ離間した物体を検出する場合にレーダ装置1で検出されるビート波の周波数Fr以上となるように設定すれば良い。すなわち、次の(15)式を満たすべく、遅延時間ΔTを設定すれば良い。
(2R1/c+ΔT)≧2RM/c (15)
例えば、光軸調整時のレーダ装置1と電波反射装置2との距離R1が2mであり、レーダ装置1によって検出可能な物体との最短距離RMが5mである場合には、次の(16)式を満たすべく、遅延時間ΔTを設定すれば良い。
ΔT≧2×(RM−R1)/c=0.02μsec (16)
【0080】
このように、遅延時間ΔTを、レーダ装置1によって検出可能な物体との最短距離RM(例えば、5m)に基づいて設定することによって、遅延時間ΔTを適正な値に設定することができる。すなわち、レーダ装置1によって検出可能な物体との最短距離RMに基づいて遅延時間ΔTを設定することによって、図7に示すように、送信波と受信波とのビート信号の周波数(ビート周波数Fu2及びFd2)を適正な値とすることができるのである。
【0081】
図8は、レーダ装置1において対向車両VR2の相対位置を規定する角θ(図1参照)を検出する方法の一例を示す概念図である。図に示すように、レーダ装置1には、特性が略同一である受信アンテナ111、112が、図3に示す光軸と直交する方向に間隔Δd1だけ離間した状態で並べて配設されている。すなわち、受信アンテナ111、112は、略鉛直方向(又は、略水平方向)に並べて配設されている。ここでは、図1に示す角θを検出する場合について説明するため、受信アンテナ111、112は、略水平方向に並べて配設されている。
【0082】
受信アンテナ111、112には、図の一点鎖線で示す光軸から角θをなす左側上方から対向車両VR2からの反射波が入射される。この場合には、受信アンテナ112に入射される反射波は、受信アンテナ111に入射される反射波に対して距離Δd2だけ遅れて入射される。ここで、距離Δd2は、受信アンテナ111、112の間隔Δd1を用いて次の(17)式で表される。
Δd2=Δd1×sinθ (17)
【0083】
また、受信アンテナ112に入射される反射波は、受信アンテナ111に入射される反射波に対して、上記距離Δd2及び反射波の波長λを用いて、次の(18)式で表される位相差Δψだけ遅延して入射される。
Δψ=2π×Δd2/λ (18)
【0084】
上記(17)式を(18)式に代入することによって、次の(19)式が得られる。
Δψ=2π×Δd1×sinθ/λ (19)
そこで、受信アンテナ112に入射される反射波の、受信アンテナ111に入射される反射波に対する位相差Δψを検出することによって、上記(19)式を用いて角θを求めることができる。なお、この方式は、位相比較モノパルス方式と呼ばれている。
【0085】
なお、本発明に係る電波反射装置2及びレーダ装置1の光軸調整方法は、上記実施形態に限定されず、下記の形態でも良い。
(A)本実施形態においては、遅延手段が、遅延回路22からなる場合について説明したが、遅延手段が、回路以外の形態によって実現されている形態でも良い。例えば、遅延手段が導波管等である形態でも良い。また、遅延手段が、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置がソフトウェアを実行することによって、機能的に実現される形態でも良い。
【0086】
(B)本実施形態においては、レーダ装置1が、車両VR1の前方にある物体(ここでは、対向車両VR2)を検出する場合について説明したが、レーダ装置1が、車両VR1の周囲にある物体を検出する形態であれば良い。例えば、レーダ装置1が、車両VR1の後方にある物体を検出する形態でも良いし、レーダ装置1が、車両VR1の側方にある物体を検出する形態でも良い。
【0087】
(C)本実施形態においては、レーダ装置1がFMCW方式のレーダ装置である場合について説明したが、レーダ装置1がその他の方式(例えば、パルス方式等)のレーダ装置である形態でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する際に、該レーダ装置と対向させて配設され、該レーダ装置から送出された電波信号を反射する電波反射装置に適用することができる。また、本発明は、例えば、車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する光軸調整方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 レーダ装置
111、112 受信アンテナ
2 電波反射装置
21 受信アンテナ
22 遅延回路(遅延手段)
221 発振回路(発振器)
222 第1周波数変換器
223 遅延電線
224 第2周波数変換器
23 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する際に、該レーダ装置と対向させて配設され、該レーダ装置から送出された電波信号を反射する電波反射装置であって、
前記レーダ装置から送出された電波信号を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナによって受信された電波信号を、予め設定された遅延時間だけ遅延させて、遅延信号を生成する遅延手段と、
前記遅延手段によって生成された遅延信号を、前記レーダ装置に向けて送出する送信アンテナと、を備える電波反射装置。
【請求項2】
前記遅延手段は、前記遅延時間に応じた長さを有する遅延電線を備える、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項3】
前記遅延手段は、
前記受信アンテナと前記遅延電線との間に介設され、前記受信アンテナによって受信された電波信号の周波数を低減し、低周波信号を生成する第1周波数変換器と、
前記遅延電線と前記送信アンテナとの間に介設され、前記遅延電線によって遅延された低周波信号を、前記受信アンテナによって受信される電波信号に対応する高周波信号に変換する第2周波数変換器と、を備える、請求項2に記載の電波反射装置。
【請求項4】
前記遅延手段は、
前記レーダ装置から送出される電波信号の周波数に基づいて予め設定された周波数の正弦波を生成する発振器を備え、
前記第1周波数変換器は、前記受信アンテナで受信された電波信号を、前記発振器で生成された正弦波と重畳することによって、前記低周波信号を生成し、
前記第2周波数変換器は、前記遅延電線で遅延された前記低周波信号を、前記発振器で生成された正弦波と重畳することによって、前記高周波信号に変換する、請求項3に記載の電波反射装置。
【請求項5】
前記遅延時間は、前記レーダ装置によって検出可能な物体との最短距離に基づいて設定される、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項6】
前記遅延手段は、前記遅延時間に応じた長さを有する導波管を備える、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項7】
前記遅延手段は、前記受信アンテナによって受信された電波信号を増幅する第1増幅器を備える、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項8】
前記遅延手段は、前記遅延信号を増幅する第2増幅器を備える、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項9】
前記遅延手段は、前記レーダ装置から送出された電波信号に対応する周波数の信号を通過させると共に、前記レーダ装置から送出された電波信号に対応する周波数から離間した周波数の信号を遮断するフィルタを備える、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項10】
前記レーダ装置は、FMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)方式のレーダ装置である、請求項1に記載の電波反射装置。
【請求項11】
車両に搭載されたレーダ装置の光軸を調整する光軸調整方法であって、
前記レーダ装置に、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電波反射装置に向けて電波信号を送出させ、
前記レーダ装置に、前記電波反射装置から送出される信号を反射信号として受信させ、
該反射信号に基づいて前記レーダ装置の光軸を調整する、光軸調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−185720(P2010−185720A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28866(P2009−28866)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】