説明

電波式液面計の校正装置

【課題】校正に必要な基準を十分長く取ることができて高精度で信頼性の高い校正が可能であり、校正に必要な基準を設けるために構築物を設置する必要がなく、スペースが制限されず、低コストの電波式液面計の校正装置を得る。
【解決手段】送信回路と、アンテナと、受信回路と、電波を送信した時点から受信する時点までの時間差を測定する時間差測定手段と、を有し、時間差に基づいて液面までの距離を測定する。液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外であってアンテナから送り出される電波の一部を受信することができる結合手段18と、結合手段と一体につながれ既知の基準長さを有する基準ケーブル16と、電波を送信した時点から結合手段18と基準ケーブル16を通じて電波を受信するまでの時間に基づいて求められる基準長さ実測値と基準長さに基づいて校正値を求め、液面までの距離の実測値を校正値によって校正する校正手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を送信した時点から、液面で反射された電波を受信する時点までの時間差を測定することによって液面レベルを測定する電波式液面計に関するものであり、特に、温度変動、経時変化などを要因とする測定誤差を校正することができる校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばタンカーの貯油槽に貯蔵されている原油などの液面レベルを測定する液面計として、電波を送信した時点から、液面で反射された電波を受信する時点までの時間差を測定することによって液面レベルを測定する電波式液面計が提案されている。電波式液面計によれば、フロートや、このフロートの上下移動をガイドするガイド支柱、このガイド支柱内に一定間隔で配置されたリードスイッチなどからなるセンサなど、物理的な構成部材を配置する必要がないため、施工が簡単であることなどの利点がある。また、電波式液面計は、気圧式液面計よりも測定精度ないしは分解能が高いという利点もある。
【0003】
しかし、電波式液面計によれば、温度変動の影響を受けやすく、温度変動によって測定結果が変動するという難点がある。例えば、タンカーなどの大型の貯油槽における液面測定値に5/1000(m)の誤差が生じたとすると、この誤差に見合う液体量の誤差は大きなものになり、取引上の利害関係に大きな影響を及ぼすことになる。温度変動のみでなく、回路素子などの経時的な変化によっても測定値に誤差が生じる。
【0004】
そこで、送信回路と受信回路との間の結合によって、送信回路からアンテナに向かうことなく受信回路に向かって漏れる送信漏れ信号を利用して温度補償を行うことができる電波式距離計が提案されている。これは、上記送信漏れ信号が温度変化の影響を受けてその送信漏れ信号の位置及び強度が変化し、また、受信信号も変化するため、送信漏れ信号の位置または強度の基準値をメモリにあらかじめ記録しておき、実測された送信漏れ信号の位置または強度と比較し、比較結果に基づいて補正するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8は、特許文献1記載の発明の要部を概略的に示す。図8において、送信回路1は、送信トリガの入力によって送信マイクロ波パルス信号S1を出力する。この送信マイクロ波パルス信号S1の大部分は結合回路2からアンテナ4に伝送され、アンテナ4から測定対象5、例えば液面に向かって放射される。測定対象5は上記マイクロ波パルス信号を反射し、この反射波はアンテナ4で受信され、受信マイクロ波信号S2となり、結合回路2において送信回路1と受信回路3に等分されて伝送される。受信回路3はサンプリング回路を備えており、受信マイクロ波信号S2に対して、図示されないタイミング回路から出力された受信トリガ信号によって等価サンプリングを実行し、低周波受信信号S3に変換する。低周波受信信号S3はさらに包絡線検波回路、A/D変換回路、演算回路等を経て処理され、低周波受信信号S3に対応した測定対象5までの距離L2を測定するようになっている。
【0006】
上記送信回路1から出力される送信マイクロ波パルス信号S1の一部は送信漏れ信号となり、アンテナに向かうことなく受信回路に向かって漏れる。この漏れ信号波形は、図示されないタイミング回路、受信回路3などにおける回路素子の温度特性の影響を受けて、温度変動により変化する。図9は温度変動による漏れ信号波形の変化を示している。図9(a)のW11は常温時の送信漏れ信号波形を、図9(b)のW21は高温時の送信漏れ信号波形を示す。常温時と高温時では、送信漏れ信号の位置とピーク値が変化する。また、常温時と高温時で、それぞれの送信漏れ信号波形の位置P1,P2のずれP11が生じる。また、図9(a)のW12は常温時の受信信号波形を、図9(b)のW22は高温時の受信信号波形を示す。受信信号波形に関しても、送信漏れ信号波形と同様の傾向を示す。図9から、常温時の受信信号波形W12のピークレベルL12と高温時の受信信号波形W22のピークレベルL22の比率と、常温時における送信漏れ信号波形W11のピークレベルL11と高温時における送信漏れ信号W21のピークレベルL21の比率は等しいことがわかる。さらに、常温時における受信信号波形と高温時における受信信号波形との位置ずれP12も、常温時における送信漏れ信号波形と高温時における送信漏れ信号波形との位置ずれP11に等しくなる。
【0007】
そこで、図示されないメモリに、送信漏れ信号の位置または強度の基準値をあらかじめ記録しておき、実測された送信漏れ信号の位置または強度を上記基準値と比較し、比較結果に基づいて、実測された前記距離L2を補正し、これによって温度補償その他測定誤差の校正を行うようになっている。
【0008】
【特許文献1】実開2001−318142号公報
【0009】
特許文献1記載の発明のほかに、図10に示すような温度補償装置も知られている。図10において、タンク15にはその天井板を貫通して筒体40が垂直に設置されていて、筒体40の上端には電波式液面計10が取り付けられている。筒体40の内壁面からは、電波式液面計10の位置から基準となる距離だけ離れた位置に、基準突起42が設けられている。タンク15に貯蔵されている液体20の液面に向けて電波式液面計10から電波、例えばマイクロ波パルス信号を放射すると、液面で反射された電波を電波式液面計10内の受信回路によって受信することができる。電波の送信時点から、液面で反射されてこれを受信した時点までの時間差を計測することにより、液面までの距離を測定することができる。また、送信された電波の一部は基準突起42で反射されて受信回路で受信される。電波式液面計10から基準突起42までの距離は予めわかっており、電波が送信された時点から基準突起42で反射されて受信回路で受信されるまでの時間は温度変動などの要因で変動するので、電波が送信された時点から基準突起42で反射されて受信回路で受信されるまでの時間の変動に応じて液面までの距離測定値を補正することにより、各種要因による測定誤差を校正することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1記載の発明によれば、理論上は温度補償その他各種要因による測定誤差の校正を行うことができる。しかしながら、送信回路からアンテナに向かうことなく受信回路に向かって漏れる送信漏れ信号を利用して校正するものであるから、一つの液面計内に組み込まれている送信回路と受信回路の相互間の距離はせいぜい10cm程度であり、このわずか10cm程度の距離間に生じる電波の伝播時間差を判別するのは至難の業である。現実には伝播時間差の判別は不可能に近い。加えて、極めて微小な時間差において温度変動などの要因による時間差変動を検出しなければ測定値の校正を行うことはできないが、現実にはさらに技術的な壁を越えなければならず、ますます判別不可能に近い。
【0011】
図10に示す従来例によれば、電波式液面計10から十分離れた位置に基準突起42を設置することができるから、かかる校正装置をそなえるための技術的な壁は低い。しかしながら、基準突起42を設置するために、筒体40のような構築物を設置する必要がある。電波式液面計は、タンクなどに構築物を設置する必要がないことが利点であるが、校正装置を組み込むために筒体40を設置するのでは、液面計を電波式とする意味がなくなり、筒体40を設置することによってスペースの制約を受けること、コスト高になること、などの問題がある。
【0012】
本発明は、以上説明したような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、校正に必要な基準を十分長く取ることができて高精度で信頼性の高い校正が可能であること、校正に必要な基準を設けるためにタンクなどの内部に構築物を設置する必要がなく、もって、スペースが制限されず、低コストの電波式液面計の校正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、計測対象である液面に向けて送信すべき電波を生成する送信回路と、送信回路で生成された電波を液面に向けて送り出すアンテナと、液面から反射される電波を受信する受信回路と、電波を送信した時点から受信する時点までの時間差を測定する時間差測定手段と、を有し、上記時間差に基づいて液面までの距離を測定する電波式液面計において、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外であって上記アンテナから送り出される電波の一部を受信することができる結合手段と、結合手段と一体につながれ既知の基準長さを有する基準ケーブルと、電波を送信した時点から結合手段と基準ケーブルを通じて上記電波を受信するまでの時間に基づいて求められる基準長さ実測値と基準長さに基づいて校正値を求め、液面までの距離の実測値を上記校正値によって校正する校正手段と、を有することを最も主要な特徴とする。
基準ケーブルは、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外に配置するとよい。
結合手段と基準ケーブルは、電波式液面計の取り付け台内に収納するとよい。
【発明の効果】
【0014】
既知の基準長さを有する基準ケーブルが、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外であってアンテナから送り出される電波の一部を受信することができる結合手段と一体につながれているため、基準ケーブルを十分な長さにすることによって、高精度で信頼性の高い校正が可能な電波式液面計の校正装置を得ることができる。アンテナから送り出される電波の一部を受信することができる結合手段は、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外に配置されているため、結合手段が液面までの距離測定の障害になることはない。
基準ケーブルを、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外に配置することによって、基準ケーブルが、液面までの距離測定の障害になることを回避することができる。
結合手段と基準ケーブルを、電波式液面計の取り付け台内に収納することによって、特に基準ケーブルを電波式液面計の外部に引き出す必要がなく、校正装置を備えた電波式液面計を、コンパクトにまとめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図を参照しながら説明する。図1において、原油その他の液体20が貯留されるタンク15の上端には、電波式液面計10を取り付けるための取り付け台12が一体に取り付けられており、取り付け台12の上端に電波式液面計10が取り付けられている。取り付け台12は円筒形状の部材を上下方向に向けた形になっていて、電波式液面計10から下向きに放射された電波、例えばマイクロ波パルス信号電波が取り付け台12内を下向きに進み、液体20の液面で反射された電波が取り付け台12内を上向きに進んで電波式液面計10で受信されるようになっている。
【0016】
電波式液面計10の内部回路の一部は、図8を参照して説明した従来の電波式液面計の内部回路の一部と同じである。すなわち、送信回路1は、送信トリガの入力によって送信マイクロ波パルス信号S1を出力する。この送信マイクロ波パルス信号S1は結合回路2からアンテナ4に伝送され、アンテナ4から測定対象すなわち液面に向かって放射される。液面は上記マイクロ波パルス信号を反射し、この反射波はアンテナ4で受信され、受信マイクロ波信号S2となり、結合回路2において送信回路1と受信回路3に等分されて伝送される。受信回路3はサンプリング回路を備えており、受信マイクロ波信号S2に対して、図示されないタイミング回路から出力された受信トリガ信号によって等価サンプリングを実行し、低周波受信信号S3に変換する。低周波受信信号S3はさらに包絡線検波回路、A/D変換回路、演算回路等を経ることによって、低周波受信信号S3に対応した液面までの距離L2を測定するようになっている。上記A/D変換回路、演算回路等を含む部分は、電波を送信した時点から受信する時点までの時間差を測定する時間差測定手段を構成している。
【0017】
上記取り付け台12内には、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外であって上記アンテナ4から送り出される電波の一部を受信することができる結合手段18が配置されている。結合手段18として、この実施例では小型のすなわち受信面積の狭い平面アンテナが用いられている。結合手段18には、既知の基準長さ、例えば10mの長さを有する基準ケーブル16が一体につながれている。
【0018】
図4(a)は基準ケーブル16の横断面形状を示しており、導線26を中心にしてその回りが商品名「テフロン」のような誘電体28で覆われ、さらに、誘電体28の外表面は銅製のパイプ30で覆われている。換言すれば、銅製のパイプ30内に誘電体28が充填され、誘電体28の中心線に沿って導線26が引きとおされている。このように構成された基準ケーブル16は可撓性を有しているが、図1に示す実施例では、基準ケーブル16の大半が直線状に伸びている。上記取り付け台12の側面には、タンク15の上端より上側において内部メンテナンス用筒14が一体に結合されている。内部メンテナンス用筒14は円筒形の部材からなり、これを水平方向に向けて取り付け台12と一体に、かつ、取り付け台12の内部空間と連通させて結合されている。内部メンテナンス用筒14は、本来電波式液面計10を取り付け台12内からメンテナンスする際に、図示されない蓋を開いて使用されるものである。図1に示す実施例では、基準ケーブル16が内部メンテナンス用筒14を通して外部に直線状に引き出されている。したがって、基準ケーブル16も、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外に配置されていることになる。基準ケーブル16の先端は、図4(b)に示すように、導電板32が基準ケーブル16を直径方向に横切って配置され、この導電板32が導線26とパイプ30に半田付けされることにより、導線26とパイプ30が導電板32で電気的に短絡されている。もっとも、導線26とパイプ30が導電板32で短絡されることは必須ではなく、導線26とパイプ30が電気的に開放されていても、基準ケーブル16が一定のインピーダンスを持っていれば、基準ケーブル16を通じて電波が跳ね返ることができる。
なお、基準ケーブルに代わる誘電体を用い、これを電波の遅延手段とすることもできる。上記誘電体の誘電率が高いほどその長さを短くすることができる。誘電率の高い材料の例として水晶がある。
【0019】
すでに説明したように、送信回路で生成した電波を、アンテナから計測対象である液面に向けて送り出すと、電波は液面で反射され、反射された電波は受信回路で受信される。電波式液面計10の位置から液面までの距離に応じて、電波を送信した時点から受信する時点までの時間差が異なるので、この時間差を時間差測定手段で測定することにより、液面までの距離を測定することができる。
【0020】
図1に示す実施例では、電波式液面計10のアンテナから送り出される電波の一部を結合手段18で受信することができ、受信した電波は基準ケーブル16を伝播する。基準ケーブル16を伝播した電波は基準ケーブル16に沿って戻り、結合手段18が電波式液面計10のアンテナ及び受信回路と電磁的に結合して上記基準ケーブル16に沿って戻ってきた電波を受信する。したがって、電波式液面計10から電波を送信した時点から、上記結合手段18と基準ケーブル16を通じて上記電波を受信するまでに時間差が生じる。この時間差は、温度その他の要因が一定であれば一定であるが、温度変動などに伴って上記時間差も変動する。基準ケーブル16は基準長さ、例えば10mに予め設定されて既知であるから、常温ないしは基準温度であれば上記時間差から求められる距離は基準長さと一致することになる。しかし、温度その他の要因が変動すると、上記時間差から求められる距離は基準長さとは異なった距離になる。そこで、基準ケーブル16を通じて求められる基準長さ実測値と上記既知の基準長さ(例えば10m)に基づいて校正値を求めることができ、校正手段によって、液面までの距離の実測値を上記校正値によって校正することができる。
【0021】
図5は、上記校正の原理を波形で示している。図5において、左側のピーク状の波形は基準反射点を表す波形で、基準ケーブル16を通じて求められる基準長さ実測値を示している。右側のピーク状の波形は液面反射を表す波形で、液面までの距離の実測値を示している。基準ケーブル16の既知の基準長さは10mであるのに対し、基準長さ実測値は温度変動などの要因で10.005mとなっている。そこで、基準長さをS、基準長さ実測値をDとしたとき、校正手段は校正値CをS/Dで演算する。図5では、S=10.000(m)、D=10.005(m)であるから、校正値Cは、
C=10.000/10.005
となる。液面までの実測値は20.000(m)であるから、これを上記校正値で校正すれば、
20.000×10.000/10.005=19.990(m)
となり、温度変動その他の要因による測定誤差が補正される。
【0022】
以上説明した実施例によれば、十分な長さを有する基準ケーブル16と結合手段18を用いて、各種要因による液面までの測定値誤差を校正することができるため、校正が容易で、信頼性及び精度の高い校正が可能である。また、結合手段18は電波式液面計10を取り付ける取り付け台12内に配置し、基準ケーブル16は取り付け台12と一体の内部メンテナンス用筒14に引き通しているため、基準ケーブル16の配置が容易であり、基準ケーブル16が邪魔な存在になることを避けることができる。液面までの距離測定と、この距離測定結果を校正するための基準ケーブル16による基準長さの実測は、常時または必要に応じていつでも行うことができるため、いつでも補正済みの測定値を得ることができる。
【0023】
タンク15内はほぼ気密の状態に保たれるので、内部メンテナンス用筒14の開口は、メンテナンス時以外は密閉される。内部メンテナンス用筒14の開口を密閉するには、基準ケーブル16が内部メンテナンス用筒14の開口から外部に引き出されないようにするのが望ましい。そこで、基準ケーブル16は、結合手段18とともに電波式液面計10の取り付け台12内に収納されているのが望ましい。基準ケーブル16は可撓性を有しているので、これを例えば円弧を描きながら幾重にも巻いてまとめ、取り付け台12内の、液面までの距離測定に必要な電波の照射範囲外に収納するとよい。
【0024】
次に、本発明にかかる電波式液面計の校正装置の各種変形例について説明する。
図2、図3は、基準ケーブル16と一体の結合手段の各種変形例を示す。図2に示す例は、基準ケーブル16の基端に、結合手段として、直線状の結合素子22を一体につないだ例である。図3に示す例は、基準ケーブル16の基端に、結合手段として、ループ状の結合素子24を一体につないだ例である。いずれの例も、電波式液面計の送信回路からアンテナを経て放射される電波と電磁的に結合して電波の一部を取り込むことができるようになっている。上記電波と電磁的に結合して電波の一部を取り込むことができるものであれば、図1ないし図3に示す結合手段の例に限定されるものではない。
【0025】
図6に示す例は、基準ケーブル16をコイル状に巻いて、内部メンテナンス用筒14内に収納したものである。この例によれば、基準ケーブル16が内部メンテナンス用筒14内に収まっているため、内部メンテナンス用筒14の開口に蓋を被せてタンク15内を気密に保つのに好都合である。図7に示す例は、基準ケーブル16を内部メンテナンス用筒14から外部に引き出した後、基準ケーブル16を内部メンテナンス用筒14の外周面にコイル状に巻き付けたものである。この例によれば、基準ケーブル16の処理が容易であるという利点がある。また、図6、図7に示す例によれば、基準ケーブル16が電波式液面計10の近傍で、内部メンテナンス用筒14の内部または外周にコンパクトに納められるため、基準ケーブル16の存在が邪魔にならないという利点がある。
【0026】
基準ケーブル16の先端を電波式液面計の受信回路に接続してもよい。この例によれば、電波が基準ケーブル16を一方向に伝播することによって、したがって基準ケーブル16の先端で反射されるのではなく、直接そのまま受信されるので、基準ケーブル16はループを描いて電波を受信回路に戻すことになる。よって、この例では、基準ケーブル16の往復長さの1/2を基準長さとする。
基準ケーブルを伝播する電波の速度は、基準ケーブルの導線の周りに充填されている誘電体の誘電率によって影響を受ける。したがって、通常は、誘電率の低い材質を用いる。誘電体の誘電率が高い場合は基準ケーブルを伝播する電波の速度が遅くなる。そこでこの特性を利用し、高誘電率材料を充填した基準ケーブルを使用してもよい。このような基準ケーブルによれば、物理的な長さを実質的な基準長さよりも短かくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、タンカーの貯油槽に設置して貯蔵されている油の液面レベルを測定する液面計として、船舶のバラスとタンクの液面レベルを測定する液面計として、地上に設置された各種タンク内の液面レベルを測定する液面計として、その他各種液面のレベルを測定する液面計として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる電波式液面計の校正装置の実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明に適用可能な基準ケーブルと結合手段の変形例を示す正面図である。
【図3】本発明に適用可能な基準ケーブルと結合手段の別の変形例を示す正面図である。
【図4】本発明に適用可能な基準ケーブルを示す(a)は横断面図、(b)は先端側の端面図である。
【図5】本発明にかかる電波式液面計の校正装置の校正原理を説明するための波形図である。
【図6】本発明にかかる電波式液面計の校正装置の変形実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明にかかる電波式液面計の校正装置のさらに別の実施例を示す縦断面図である。
【図8】従来の電波式液面計における電気回路の主要部を示す回路図である。
【図9】従来の電波式液面計の校正装置の校正原理を説明するための波形図である。
【図10】従来の電波式液面計の校正装置の別の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 電波式液面計
12 取り付け台
14 内部メンテナンス用筒
16 基準ケーブル
18 結合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象である液面に向けて送信すべき電波を生成する送信回路と、送信回路で生成された電波を液面に向けて送り出すアンテナと、液面から反射される電波を受信する受信回路と、電波を送信した時点から受信する時点までの時間差を測定する時間差測定手段と、を有し、上記時間差に基づいて液面までの距離を測定する電波式液面計において、
液面までの距離測定に必要な電波強度の照射範囲外であって上記アンテナから送り出される電波の一部を受信することができる結合手段と、
上記結合手段と一体につながれ既知の基準長さを有する基準ケーブルと、
電波を送信した時点から上記結合手段と基準ケーブルを通じて上記電波を受信するまでの時間に基づいて求められる基準長さ実測値と上記基準長さに基づいて校正値を求め、液面までの距離の実測値を上記校正値によって校正する校正手段と、を有することを特徴とする電波式液面計の校正装置。
【請求項2】
基準長さをS、基準長さ実測値をDとしたとき、校正手段は校正値CをS/Dで演算する請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項3】
基準ケーブルは、液面までの距離測定に必要な電波強度の照射範囲外に配置されている請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項4】
結合手段と基準ケーブルは、電波式液面計の取り付け台内に収納されている請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項5】
結合手段は電波式液面計の取り付け台内に配置され、基準ケーブルは上記取り付け台と一体構造の収納箱内に収納されている請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項6】
結合手段は電波式液面計の取り付け台内に配置され、基準ケーブルは上記取り付け台と一体構造の収納箱から外部に引き出され収納箱の外周に巻き付けられている請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項7】
結合手段は電波式液面計の取り付け台内に配置され、基準ケーブルは上記取り付け台と一体構造の収納箱から外部に引き出されて外部収納体に収納されている請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項8】
基準ケーブルの先端が受信回路に結合され、基準ケーブルの長さの1/2を基準長さとした請求項1記載の電波式液面計の校正装置。
【請求項9】
基準ケーブルは、高誘電率材料が充填されることによって、物理的な長さが基準長さよりも短い請求項1記載の電波式液面計の校正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−3211(P2006−3211A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179805(P2004−179805)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(391014631)ムサシノ機器株式会社 (14)
【Fターム(参考)】