説明

電流源回路

【課題】プロセスによる抵抗のバラツキの影響を受けにくい電流源回路を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、電流源回路100に、MOSトランジスタQ6とQ7のドレイン電圧を入力としそれらの比較の結果を制御部104に出力するコンパレータ103と、コンパレータ103の出力に応じたデジタル制御信号を可変抵抗R1およびR2に出力して両抵抗値を変更する制御部104と、を有する抵抗値制御回路101を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VCO(Voltage control Oscillator)等に使用する電流源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LC共振によるVCOは共振インピーダンスが温度により大きく変動する。共振インピーダンスが変動すると、VCOの発振振幅が変動する。この場合、VCOにとって重要な特性である位相雑音特性が劣化してしまう。
【0003】
そこで、当該温度特性と逆の温度特性をVCOの電流源回路に持たせることにより、温度変化による共振インピーダンスの変動を打ち消してVCOの発振振幅を一定に保持し、位相雑音特性の劣化を防止している。
【0004】
図5は、VCOに使用する電流源回路の従来例を示す図である。
図5に示す電流源回路500は、トランジスタQ1とQ2およびQ3とで構成されるカレントミラー回路と、トランジスタQ4とQ5とで構成されるカレントミラー回路と、を備える電流源回路である。トランジスタQ1〜Q3のソースは電源と接続され、トランジスタQ1−Q4間とQ2−Q5間はドレインとコレクタとで接続され、トランジスタQ4とQ5のエミッタは接地されている。
【0005】
電流源回路500は、温度特性を持たせるために、トランジスタQ5のエミッタ側に抵抗Rが接続されている。これにより、電流源回路500に接続するVCOの温度特性と逆の温度特性を持たせることが可能となる。しかし、プロセスによる抵抗バラツキの影響を受け易いという問題を持っている。
【0006】
そこで、一般的に、図5に示した抵抗Rを外付けにすることで、プロセスによる抵抗のバラツキの影響を受けないようにしている。
しかし、抵抗Rを外付けにすると、端子や外部パターンからのノイズを拾いやすくなってしまう。電流源回路500がノイズを拾うと、ノイズが電流源回路500からVCOに流入するため、VCOの位相雑音特性を劣化させてしまうという問題があった。
【0007】
上記技術に関連して、特許文献1には、IC製造プロセスにおいて生じるR誤差を検出するとともに、検出した値を用いて、R誤差により生じる定数のばらつきを自動調整する時定数自動調整回路について開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、半導体装置内部基準抵抗と半導体装置外部基準抵抗とを用いて半導体装置内部抵抗の抵抗値のばらつきを検出し、抵抗値のばらつき量に応じて当該抵抗値を自動補正する抵抗値ばらつき自動補正回路について開示されている。
【特許文献1】特開平04−340244号公報
【特許文献2】特開2001−203574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、プロセスによる抵抗のバラツキの影響を受けにくい電流源回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本電流源回路は、LC共振を用いた電圧制御発振回路に一定の電流を供給する電流源回路であって、前記電圧制御発振回路が有する温度特性と逆の温度特性を持つ電流源回路として第1の可変抵抗を有し、該電圧制御発振回路に一定の電流を供給する電流供給回路と、所望の温度特性を持つ外付け抵抗の抵抗値と前記第1の可変抵抗の抵抗値とが一致または略一致となるように該第1の可変抵抗の抵抗値を変更する抵抗値制御回路と、を備える。
【0011】
本電流源回路によると、抵抗値制御回路が外付け抵抗の抵抗値と第1の可変抵抗の抵抗値とが一致または略一致となるように第1の可変抵抗の抵抗値を調整する。その結果、外付け抵抗値が持つ温度特性を本電流源回路に与えることが可能となる。したがって、第1の可変抵抗にプロセスによる抵抗バラツキが生じでも、当該抵抗バラツキの影響を受けにくくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明によると、プロセスによる抵抗のバラツキの影響を受けにくい電流源回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る電流源回路100の実施例を示す図である。
図1に示す電流源回路100は、p型MOSトランジスタQ1、Q2およびQ3と、npn型バイポーラトランジスタQ4およびQ5と、抵抗rと、可変抵抗R1と、可変抵抗R1の抵抗値を制御する抵抗値制御回路101と、を備える。なお、可変抵抗R1と以下に示す可変抵抗R2はVCO105の温度特性と逆の温度特性を電流源回路100に与える抵抗値を有する。また、可変抵抗R1とR2は、プロセスによるバラツキの傾向を同じにするために隣接して配置することが望ましい。
【0014】
ここで、MOSトランジスタQ1とQ2およびQ3はカレントミラー回路を構成する。また、MOSトランジスタQ1−バイポーラトランジスタQ4間は、ドレインとコレクタとが抵抗rを介して接続され、MOSトランジスタQ2−バイポーラトランジスタQ5間は、ドレインとコレクタとが直接接続される。また、MOSトランジスタQ1、Q2およびQ3のソースは電源と接続され、バイポーラトランジスタQ4のエミッタは接地される。また、バイポーラトランジスタQ5のエミッタは可変抵抗R1を介して接地される。
【0015】
抵抗値制御回路101は、可変抵抗R2と、外付け抵抗R3と、ソースが電源と接続されドレインが可変抵抗R2を介して接地されたp型MOSトランジスタQ6と、ソースが電源と接続されドレインが外付け抵抗R3を介して接地されたp型MOSトランジスタQ7と、基準電圧VrefとMOSトランジスタQ7のドレイン電圧とを入力としそれらの比較の結果をMOSトランジスタQ6およびQ7のゲートに出力するコンパレータ102と、MOSトランジスタQ6とQ7のドレイン電圧を入力としそれらの比較の結果を制御部104に出力するコンパレータ103と、コンパレータ103の出力に応じたデジタル制御信号(以下、「制御信号」という)を可変抵抗R1およびR2に出力して両抵抗値を変更する制御部104と、を備える。
【0016】
VCO105は、n型MOSトランジスタQ10〜Q13と、バリキャップC1およびC2と、インダクタL1およびL2と、を備えるクロスカップル型発振回路である。
ここで、MOSトランジスタQ10とQ11はカレントミラー回路を構成する電流源回路である。このMOSトランジスタQ10のドレインは、MOSトランジスタQ3のドレインと接続される。また、MOSトランジスタQ11のドレインは、MOSトランジスタQ12およびQ13のソースと接続される。また、MOSトランジスタQ10およびQ11のソースは接地される。
【0017】
一方、MOSトランジスタQ12とQ13は互いのゲートとドレインとが接続され、トランジスタQ12およびQ13のドレインには、それぞれインダクタL1の一端およびバリキャップC1のカソード、インダクタL2の一端およびバリキャップC2のカソードが接続される。 また、インダクタL1およびL2の他端は電源と接続され、バリキャップC1およびC2のアノードは制御電圧Vtの入力端子と接続されている。
【0018】
以上の構成において、VCO105は、制御電圧Vtが印可されるとバリキャップC1およびC2のキャパシタが変化するので、制御電圧Vtに応じて発振周波数を変化させることができる。
【0019】
なお、図示したVCO105は、一般的なVCOを示したものなので詳細な説明は省略する。本実施例に係る電流源回路100に接続するVCOは、図示したVCO105に限定するものではなく、LC共振によるVCOであれば本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0020】
抵抗値制御回路101のコンパレータ102に基準電圧Vrefが与えられると、コンパレータ102は、MOSトランジスタQ7のドレイン電圧が基準電圧Vrefと同じになるようにMOSトランジスタQ6およびQ7のゲートに出力電圧を印加する。その結果、両トランジスタのソース−ドレイン間に同じ電流が流れる。
【0021】
コンパレータ103は、MOSトランジスタQ6とQ7のドレイン電圧を比較し、比較結果を制御部104に出力する。制御部104は、コンパレータ103の出力に応じて、両電圧が一致又は略一致となるように制御信号を生成し、当該制御信号を可変抵抗R1およびR2に出力して可変抵抗R1およびR2の抵抗値を増減させる。
【0022】
この時、例えば、制御部104は、コンパレータ103の出力が0から1、または1から0に切り替わるタイミングを監視し、当該タイミングを検出した時に、両電圧が一致又は略一致したと判断すればよい。
【0023】
ここで、一般に、同一セル内のプロセスによる抵抗バラツキの傾向は同じなので、抵抗R1とR2のバラツキの傾向は同じとなる。
したがって、上述した動作により、可変抵抗R1(R2)は外付け抵抗R3と同じ抵抗値となるように調整される。その結果、抵抗R1にプロセスによる抵抗バラツキが生じた場合でも、その影響を受けることなく所望の温度特性を電流源回路100に持たせることが可能となる。
【0024】
また、制御部104はデジタル信号によって可変抵抗R1およびR2の制御を行なうので、抵抗値制御回路101に外付け端子や外部パターン等からノイズが流入した場合であっても、制御部104から可変抵抗R1およびR2に流入することはない。
【0025】
その結果、電流源回路100に温度特性を持たせる抵抗を外付け抵抗にしても、外付け端子や外部パターン等からのノイズを拾ってVCOに流入することを防止することが可能となる。その結果、当該ノイズにより電流源回路100に接続するVCOの位相雑音特性の劣化を防止することが可能となる。
【0026】
以上の構成において、例えば、電流源供給部は、図1に示したp型MOSトランジスタQ1、Q2およびQ3と、npn型バイポーラトランジスタQ4およびQ5と、抵抗rと、可変抵抗R1と、により実現でき、抵抗値制御部は、抵抗値制御回路101により実現できる。
【0027】
図2は、本発明の実施例に係る可変抵抗R1およびR2の構成例を示す図である。なお、両抵抗とも同じ構成なので、以下、可変抵抗R1について説明する。
図2に示す可変抵抗R1は、抵抗r1、r2、r3、r4およびr5とスイッチSW1、SW2、SW3およびSW4とを備える。抵抗r1、r2、r3、r4およびr5は直列に接続され、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4はそれぞれ抵抗r1、r2、r3、r4に対して並列に接続される。
【0028】
なお、スイッチSW1、SW2、SW3およびSW4には、例えば、図2に示すようにn型MOSトランジスタQr1、Qr2、Qr3およびQr4を使用すればよい。この場合、MOSトランジスタQr1、Qr2、Qr3およびQr4のドレイン−ソース間にそれぞれ抵抗r1、r2、r3およびr4を接続し、各トランジスタのゲートに対して制御部104からの制御信号を(ビット毎に)印加すればよい。
【0029】
図3は、本実施例に係る制御部104の動作を説明するフローチャートである。
抵抗値制御回路101が動作を開始すると、制御部104は、処理をステップS301に移行する。
【0030】
ステップS301において、制御部104は、コンパレータ103の出力信号を読み込む。そして、処理をステップS302に移行する。
ステップS302において、制御部104は、ステップS301で読み出したコンパレータ103の出力信号が0か否かを判別する。そして、当該出力信号が0の場合、制御部104は処理をステップS303に移行する。
【0031】
ステップS303において、制御部104は、制御部104が内部に備えるカウンタレジスタ(以下、「レジスタ」という)を1だけ繰り上げる。そして、処理をステップS301に移行する。
【0032】
一方、ステップS302において、当該出力信号が0でない場合、制御部104は処理をステップS304に移行する。
ステップS304において、制御部104は、制御部104が内部に備える記憶部にレジスタの値を記憶する。そして、ステップS305において、制御部104は、当該レジスタの値を、各ビットが図2に示したスイッチSW1〜SW4に接続されたバイアス回路に設定する。これにより、レジスタカウンタの値に応じてスイッチSW1〜SW4のON/OFFが切り替えられる。
【0033】
例えば、抵抗r1〜r5の抵抗値がr1<r2<r3<r4<r5の関係にある場合、スイッチSW1、SW2、SW3およびSW4に、それぞれ制御信号の第1ビット(LSB(Least Significant Bit))、第2ビット、第3ビット、第4ビット(MSB(Most Significant Bit))を割り当てれば、カウント値が大きくなるに応じて可変抵抗R1の抵抗値を大きくすることができる。
【0034】
なお、ステップS302では、コンパレータ103の出力信号が0に一致するか否かを判別しているが、例えば、0と一致または略一致(例えば、0±0.1の範囲)であるか否かを判別してもよい。
【0035】
また、本実施例では、制御信号のデータ長が4ビットである場合について説明したが、データ長を4ビットに限定する趣旨でないのは当然である。例えば、可変抵抗値R1を構成する抵抗の数(抵抗値の可変範囲、変更可能な抵抗値の単位)に応じて適宜制御信号のデータ長を決定すればよい。
【0036】
以上に説明したように、本実施例に係る電流源回路100は、プロセスによる抵抗バラツキの傾向が同じ可変抵抗R2の抵抗値と、外付け抵抗R3の抵抗値と、が一致(または略一致)するように抵抗制御回路101が可変抵抗R2を調整するので、可変抵抗値R1にプロセスによる抵抗バラツキがあっても、電流源回路100が当該バラツキの影響を受けないようにすることが可能となる。その結果、電流源回路100に所望の温度特性を持たせることが可能となる。
【0037】
また、制御部104から可変抵抗値R1への制御信号は、デジタル信号であるので、例えば、外付け抵抗R3を接続する外付け端子や外部パターンなどからノイズを拾った場合でも、可変抵抗R1に流入することがない。その結果、図4に示すように、外付け端子や外部パターンからのノイズを拾って電流源回路100からVCOに流入しVCOの位相雑音特性を劣化させることを防止できる。
【0038】
また、制御部104から可変抵抗値R1への制御信号には、デジタル信号を使用しているので、抵抗値制御回路101を電流源回路100に追加しても電流源回路100におけるノイズの増加を防止することができる。
【0039】
なお、図4に示す特性グラフは、横軸が電流源回路100を構成する抵抗のバラツキ率を示し、縦軸が電流源回路100をVCOの電流源に使用した場合における位相雑音を示している。本実施例に係る電流源回路100は、プロセスによる抵抗バラツキを一定に保持し(図4ではバラツキ率5%に保持)、さらに、外部抵抗を使用した場合でも内部抵抗を使用した場合と同様の位相雑音となることを示している(図中の矢印)。
【0040】
したがって、電流源回路100をVCOの電流源として使用することにより、VCOの振幅値を一定に保つことができるので、位相雑音特性を最適な状態で保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る電流源回路の実施例を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る可変抵抗R1およびR2の構成例を示す図である。
【図3】本実施例に係る制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本実施例に係る電流源回路をVCOに使用した場合の効果を説明する図である。
【図5】VCOに使用する電流源回路の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
100 ・・・ 電流源回路
101 ・・・ 抵抗値制御回路
102 ・・・ コンパレータ
103 ・・・ コンパレータ
104 ・・・ 制御部
105 ・・・ VCO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LC共振を用いた電圧制御発振回路に一定の電流を供給する電流源回路であって、
前記電圧制御発振回路が有する温度特性と逆の温度特性を持つ第1の可変抵抗を有し、該電圧制御発振回路に一定の電流を供給する電流供給回路と、
所望の温度特性を持つ外付け抵抗の抵抗値と前記第2の可変抵抗の抵抗値とが一致または略一致となるように該第2の可変抵抗の抵抗値を制御する抵抗値制御回路と、
を備える電流源回路。
【請求項2】
前記抵抗値制御回路は、前記第1の可変抵抗と同じ構成の第2の可変抵抗を有し、該第2の可変抵抗の抵抗値と前記外付け抵抗の抵抗値とが一致または略一致となるように、前記第2の可変抵抗の抵抗値を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流源回路。
【請求項3】
前記第1および第2の可変抵抗は、前記抵抗値制御部が生成するデジタル制御信号に応じて抵抗値が制御される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流源回路。
【請求項4】
LC共振を用いた電圧制御発振回路であって、
前記電圧制御発振回路が有する温度特性と逆の温度特性を持つ第1の可変抵抗を有し、該電圧制御発振回路に一定の電流を供給する電流供給回路と、
所望の温度特性を持つ外付け抵抗の抵抗値と前記第2の可変抵抗の抵抗値とが一致または略一致となるように該第1の可変抵抗の抵抗値を制御する抵抗値制御回路と、
を備える電流源回路を電流源として使用する電圧制御発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−182523(P2009−182523A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18346(P2008−18346)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】