説明

電源システム

【課題】車両の今回停止時および次回発進時における環境因子が著しく異なる状況においても、当該次回発進時に車両の円滑な加速を図ることができる電源システムを提供する。
【解決手段】電源システムは、燃料電池1と、燃料電池1と並列に接続されたキャパシタ2と、燃料電池1およびキャパシタ2に接続され、車両を駆動するための電動機5と、電動機5に電圧変換手段7を介して並列に接続された二次電池6と、車両の停止時に、次回発進時の推定環境因子に応じた燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6の総出力の推移を予測し、予測した総出力の推移が発進期間において電動機5による該車両の安定した加速性能を維持するという第1要件を満たさない場合に、電圧変換手段7を介して二次電池6からキャパシタ2への充電を実行する電力供給制御手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電源システムであって、特に、燃料電池と二次電池とキャパシタとを備える燃料電池電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される電源システムは、下記特許文献1に示すように、車両を駆動するための電動機と、該電動機にいずれも並列に接続された燃料電池およびキャパシタと、DC/DCコンバータを介して該電動機に並列に接続された二次電池とを備え、電動機に供給する必要がある要求供給電力と、燃料電池、キャパシタおよび二次電池から出力可能な出力可能電力との差分電力に基づいて、燃料電池の発電電力を制御する。
【特許文献1】特開2006−59685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電源システムでは、次回の走行開始時には、燃料電池の温度の低下、キャパシタの自己放電、温度低下に伴う二次電池の出力電圧の低下等により、これらの出力が走行終了時と相違していることがある。このような場合には、IGN−ON後、すぐに走行を開始すると、本来車両が想定している加速性能を実現することができないという問題がある。
【0004】
特に、燃料電池は、補機を駆動して、燃料水素および酸素を燃料電池に供給し、燃料電池の発電が安定するまでに一定の時間(例えば、10秒程度)を要する。そのため、IGN−ON後、すぐに走行を開始した場合には、燃料電池の発電電力が乏しく、キャパシタおよび二次電池からの電力供給を行っても、要求供給電力を満たすことができず、車両に要求される加速性能を実現することができない場合がある。
【0005】
さらに、低温時のように、放電下限電圧の制限により二次電池の出力可能電力が小さくなっている場合には、図6に示されているように、二次電池の出力(X3)が約10kwに制限されるため、燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力可能電力(Y)は、キャパシタの出力(X2)が、発進時から約15kwの一定レベルとなるまでは要求供給電力を満たすことができるが、その後、横ばいとなり、キャパシタの出力(X2)が低下すると、燃料電池の出力(X1)が立ち上がるまでの間に一時的な落込みを生じる。このように、車両の発進期間において一時的に要求供給電力を満たすことができたとしても、キャパシタからの供給電力の低下により、(二次電池からの供給電力が小さいために)、要求供給電力を満たさなくなってしまう。
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、車両の今回停止時および次回発進時における環境因子が著しく異なる状況においても、当該次回発進時に車両の円滑な加速を図ることができる電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の電源システムは、車両に搭載される電源システムであって、燃料電池と、前記燃料電池と並列に接続されたキャパシタと、前記燃料電池および前記キャパシタに接続され、前記車両を駆動するための電動機と、前記電動機に電圧変換手段を介して並列に接続された二次電池と、前記車両の停止時に、該車両の次回発進時の推定環境因子に応じて推定される前記燃料電池、前記キャパシタおよび前記二次電池の総出力が、該車両の次回の発進期間において前記電動機による該車両の安定した加速性能を維持するという第1要件を満たさない場合に、該第1要件を満たすように前記電圧変換手段を介して前記二次電池から前記キャパシタへの充電を実行する電力供給制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明の電源システムによれば、車両の次回の発進時の推定環境因子に応じた燃料電池とキャパシタと二次電池との総出力が推定される。前記のように燃料電池の冷媒温度の低下、キャパシタの自己放電、温度低下に伴う二次電池の出力電圧の低下等により、車両の次回発進時には今回走行終了時と比較した場合に燃料電池、キャパシタおよび二次電池の一部または全部の出力特性が相違している場合がある。これに鑑み、次回発進時の推定環境因子に応じて予測される総出力の推移が、発進期間において安定した加速性能を維持するという第1要件を満たすように、二次電池からキャパシタへの充電が実行される。これにより、車両の次回発進時に第1要件を満たさない事態、すなわち、当該車両の次回発進期間において電動機による車両の安定した加速性能が低下する事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している状況においても、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0009】
第2発明の電源システムは、第1発明の電源システムにおいて、前記電力供給制御手段は、前記車両の次回発進時の推定環境因子に応じた前記燃料電池、前記キャパシタおよび前記二次電池のそれぞれの出力の推移パターンを表す推移曲線を重ね合わせた前記総出力の推移の総出力曲線が、次回の発進期間において一時的な落込みがないことを前記第1要件とすることを特徴とする。
【0010】
第2発明の電源システムによれば、車両の次回発進時に燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が第1要件を満たさない事態、すなわち、当該車両の次回発進期間において燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が一時的に落ち込んで電動機による当該車両の加速が不十分になる事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している場合にも、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0011】
第3発明の電源システムは、第1発明の電源システムにおいて、前記電力供給制御手段は、前記第1要件を満たさない場合に、前記推定環境因子に基づき、該第1要件を満たすように定められた関数にしたがって前記充電の態様を決定することを特徴とする。
【0012】
第3発明の電源システムによれば、車両の次回発進時に燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が第1要件を満たさない事態が生じると予測される場合、当該次回発進時における推定環境因子に基づき、関数にしたがって二次電池によりキャパシタの充電態様が調節される。これにより、当該車両の次回発進期間において燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が一時的に落ち込んで電動機による当該車両の加速が不安定になる事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している場合にも、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0013】
第4発明の電源システムは、第1〜第3発明のいずれかの電源システムにおいて、前記車両の発進時刻および停止時刻を記憶する使用履歴データベースを備え、前記電力供給制御手段は、前記使用履歴データベースに記憶された前記車両の過去における発進時刻および停止時刻、ならびに、前記車両の今回停止時刻に基づき、前記車両の次回発進時刻を予測し、予測した次回発進時刻における当該システムの内部温度を前記推定環境因子として推定することを特徴とする。
【0014】
第4発明の電源システムによれば、過去における車両の発進時刻および停止時刻から把握される動作履歴または発進および停止の繰り返しパターンに基づくことにより、車両の今回停止時刻から次回発進時刻の推定精度の向上が図られる。このため、車両の当該次回発進時における推定環境因子の推定精度、および、第1要件の充足性の判定精度の向上が図られる。これにより、当該車両の次回発進期間において燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が一時的に落ち込んで電動機による当該車両の加速が不安定になる事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している場合にも、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0015】
第5発明の電源システムは、第4発明の電源システムにおいて、当該システムの内部温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段で測定された温度を逐次記憶する温度履歴データベースとを備え、前記電力供給制御手段は、前記温度履歴データベースに記憶された温度履歴、ならびに、前記車両の今回停止時における内部温度に基づき、予測した次回発進時刻の前記内部温度を推定することを特徴とする。
【0016】
第5発明の電源システムによれば、過去における当該システムの内部温度の推移パターンに基づくことにより、車両の今回停止時刻における内部温度から次回発進時刻における内部温度の推定精度の向上が図られる。このため、車両の当該次回発進時における第1要件の充足性の判定精度の向上が図られる。これにより、当該車両の次回発進期間において燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が一時的に落ち込んで電動機による当該車両の加速が不安定になる事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している場合にも、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0017】
第6発明の電源システムは、第4発明の電源システムにおいて、次回発進時刻における前記車両の外気温を予測する外気温予測手段を備え、前記電力供給制御手段は、外気温予測手段により予測された次回発進時刻における前記車両の外気温から、該時刻の前記内部温度を推定することを特徴とする。
【0018】
第6発明の電源システムによれば、次回発進時刻が予測されると、その時刻における外気温は、外気温センサの測定履歴に基づいて、若しくは、車両に搭載された通信機器を介して外部から取得すること等により予測可能となる。かかる次回発進時刻に予測された外気温に基づくことにより、次回発進時刻における内部温度の推定精度の向上が図られる。このため、車両の当該次回発進時における第1要件の充足性の判定精度の向上が図られる。これにより、当該車両の次回発進期間において燃料電池、キャパシタおよび二次電池の総出力が一時的に落ち込んで電動機による当該車両の加速が不十分になる事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している場合にも、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0019】
第7発明の電源システムは、第5発明の電源システムにおいて、前記電力供給制御手段は、推定された前記内部温度が、前記二次電池からの放電が制限される下限温度以上であるという第2要件を満たさない場合に前記温度履歴データベースに記憶された温度履歴から前記内部温度が前記下限温度となる下限温度到達時刻を予測し、予測した下限温度到達時刻より前に、前記二次電池から前記キャパシタへの充電を実行することを特徴とする。
【0020】
第7発明の電源システムによれば、車両の次回発進時を基準として二次電池からキャパシタへの充電が実行されても、当該車両の次回発進時における推定環境因子に鑑みて該充電が適切に実行されない蓋然性が高い場合に、前以て該充電を実行しておくことで、二次電池からキャパシタへの充電が適切に実行され、車両の次回発進時に安定した発進を図ることができる。
【0021】
第8発明の電源システムは、第1〜第7発明のいずれかの電源システムにおいて、入力部が前記燃料電池および前記キャパシタに並列に接続されると共に、出力部が前記電動機および前記電圧変換手段に接続された昇降圧手段を備え、前記電力供給手段は、前記電圧変換手段および前記昇降圧手段を制御することにより、前記二次電池から前記キャパシタへの充電を実行することを特徴とする。
【0022】
第8発明の電源システムによれば、キャパシタと二次電池との間に、電圧変換が双方向の昇降圧手段を備える。これにより、昇降圧手段を二次電池側からキャパシタ側へ充電手段として機能させることで、昇圧率を高めてキャパシタの高出力化を測ることができ、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、図1〜図2を参照して説明する。図1は、本実施の形態における電源システムの全体構成図、図2は、電源システムにおける二次電池の充電処理を示すフローチャートである。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態の電源システムは、車両に搭載されるものであって、燃料電池1、燃料電池1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(以下、単にキャパシタ2という)、一方が燃料電池1およびキャパシタ2に接続されると共に、他方がPDU4(Power Drive Unit)を介して電動機5に接続された昇降圧手段3(Voltage Boost Unit)、および一方が昇降圧手段3に接続されると共に他方が二次電池6(本実施形態では、リチウムイオンバッテリを使用)に接続された電圧制御手段7を備えている。
【0025】
燃料電池1は、例えば燃料電池スタックを250個直列に接続して構成され、出力電圧が約225V(出力電流0A)〜180V(出力電流300A)の範囲で変動するものである。また、キャパシタ2は電気二重層キャパシタであり、出力電圧が200Vを中心とした範囲(約下限150V〜上限250Vの範囲)で変動するものである。また、二次電池6の出力電圧は約300V〜500Vの範囲で変動する。
【0026】
昇降圧手段3は、例えば、定格70kwで昇降圧比1.0〜3.0のDC/DCコンバータである。また、電圧制御手段7は、例えば、定格30kwで昇圧比1.0〜3.0のDC/DCコンバータである。また、昇降圧手段3および電圧制御手段7は少なくとも一方が、電流フィードバック制御を行い昇圧後の電流値を設定した電流値以下に制限する。
【0027】
さらに、電源システムは、二次電池6と電圧制御手段7との間で、二次電池6と電圧制御手段7とに並列に接続された補機8とを備える。補機8は、燃料電池1に水素ガス等の反応ガスを供給するためのポンプ等であって、補機8は、PDU9(Power Drive Unit)を介して、二次電池6および電圧制御手段7に直結する第2電力供給ラインL2に接続されている。
【0028】
燃料電池1およびキャパシタ2に直結する第1電力供給ラインL1には、燃料電池1と第1電力供給ラインL1との接続をON/OFFする第1コンタクタ11A,11Bが設けられ、キャパシタ2と第1電力供給ラインL1との接続をON/OFFする第2コンタクタ12A,12Bが設けられている。また、二次電池6に直結する第2電力供給ラインL2には、二次電池6と第2電力供給ラインL2との接続をON/OFFする第3コンタクタ13A,13Bが設けられている。第1〜第3コンタクタ11〜13は、後述する電力供給制御手段20によりON/OFFの切り替えが制御される。
【0029】
なお、本実施形態の説明の都合上、昇降圧手段3および電圧変換手段7に直結する電力供給ラインを第3電力供給ラインL3としている。
【0030】
また、電源システムは、二次電池6に隣接する位置に取り付けられて、本システムの内部温度を検出する温度センサ10a(本発明の温度検出手段に相当する)と、車両のフロントグリル等に取り付けられて車両外部の外気温を測定する外気温センサ10bとを備える。なお、本実施形態で、温度センサ10aは、本システム内部の代表温度を検出しているが、二次電池6のセルの内部温度を検出し、検出したセルの内部温度に基づいて、以下の制御を実行するようにしてもよい。
【0031】
さらに、電源システムは、電力供給制御手段20を備え、電力供給制御手段20は、燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6の各々に設けられた図示しない電圧センサおよび電流センサの検出信号を取得し、燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6から出力される電圧、電流および電力を検知する。
【0032】
また、電力供給制御手段20は、キャパシタ2の出力電圧と出力電流とから該キャパシタ2の開路電圧を推定し、推定したキャパシタ2の開路電圧と残容量(以下、SOCという)との関係を規定したマップやデータテーブル(以下、マップ等という)を参照して、キャパシタ2のSOCを推定する。また、電力供給制御手段20は、キャパシタ2のSOCを簡易的に見積もるための出力電圧とSOCとの関係を規定したマップ等を参照して、キャパシタ2の出力電圧からSOCを簡易的に推定する。
【0033】
同様に、電力供給制御手段20は、二次電池6の出力電圧と出力電流とから該二次電池6の開路電圧を推定し、推定した二次電池6の開路電圧とSOCとの関係を規定したマップ等から二次電池6のSOCを推定する。また、電力供給制御手段20は、二次電池6のSOCを簡易的に見積もるための出力電圧とSOCとの関係を規定したマップ等を参照して、二次電池6の出力電圧からSOCを簡易的に推定する。
【0034】
さらに、電力供給制御手段20は、燃料電池1の温度値及び反応ガスの供給状態等と燃料電池1の出力可能電力を規定したマップ等を備え、燃料電池1の状態からマップ等を参照することにより、燃料電池1の出力可能電力を算出する。
【0035】
また、電力供給制御手段20は、温度とキャパシタ2のSOCとキャパシタ2の出力可能電力との関係を規定したマップ等を備え、当該システムの内部温度とSOCから出力可能電力を算出する。
【0036】
同様に、電力供給制御手段20は、温度と二次電池6のSOCと二次電池6の出力可能電力との関係を規定したマップ等を備え、当該システムの内部温度(二次電池6のセルの内部温度)とSOCから出力可能電力を算出する。
【0037】
さらに、電力供給制御手段20は、燃料電池1の出力、キャパシタ2および二次電池6の各SOCに基づいて、燃料電池1の作動制御と、昇降圧手段3または電圧制御手段7の作動制御とを実行し、燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6から電動機5への電力供給と、燃料電池1からキャパシタ2および二次電池6への充電とを行う。
【0038】
電力供給制御手段20は、電動機5は車両が減速する際には発電機として機能するため、車両の減速時に電動機5で生じる回生電力を回収して、該回生電力によりキャパシタ2および二次電池6の充電を実行する。尚、このとき、電力供給制御手段20は、PDU4に備えられた電圧センサおよび電流センサ(図示しない)により、電動機5の回生電力を検知して昇降圧手段3または電圧制御手段7の作動制御を実行し、電動機5からキャパシタ2および二次電池6への充電とを行う。
【0039】
また、電力供給制御手段20は、温度センサ10aと接続されて、当該システムの内部温度(二次電池6のセルの内部温度)を取得し、取得した温度に基づいて、後述するように、第1コンタクタ11A,11BをOFFすると共に、第2および第3コンタクタ12A,12B,13A,13BをONし、昇降圧手段3および電圧制御手段7の作動を制御し、二次電池6からキャパシタ2への充電を行う。
【0040】
さらに、電源システムは、電力供給制御手段20に接続された使用履歴データベース30を備える。使用履歴データベース30は、内部クロックを備え、少なくともIGN−ONおよびIGN−OFFを含む車両に発生したイベントの日時を、そのイベントコードと共に逐次記憶する。
【0041】
また、電源システムは、電力供給制御手段20に接続された温度履歴データベース40を備える。温度履歴データベースには、少なくともIGN−ONおよびIGN−OFFのタイミングで温度センサ10aから取得した当該システムの内部温度(二次電池6のセルの内部温度)と、外気温センサ10bから取得した外気温とを、それぞれ時間情報(日時)と対応づけて記憶する。
【0042】
なお、本実施形態の電源システムにおいて、燃料電池1と第1電力供給ラインとの間には、ダイオードDが設けられており、ダイオードDにより燃料電池1への電流の流入が禁止されている。また、ダイオードDに替えてトランジスタ等の他の整流素子を用いることにより、燃料電池1への電流の流入を禁止してもよい。
【0043】
以上が、本実施の形態における電源システムの全体構成である。
【0044】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、本実施形態の電源システムにおける二次電池6からキャパシタ2への充電動作について説明する。
【0045】
まず、電力供給制御手段20は、車両が停止して燃料電池1が停止を続けているか否かを判定する(STEP11)。具体的に、電力供給制御手段20は、燃料電池1の出力電圧から、その各燃料電池スタック当りの出力が0.5[V]以下となっているか否かに基づいて、燃料電池1の停止を判定する。
【0046】
そして、燃料電池1が停止していないと判定した場合には(STEP11でNO)、この処理を終了し、燃料電池1が停止していると判定した場合には(STEP11でYES)、温度センサ10aから当該システムの内部温度を一定の周期で所定時間取得する(STEP12)。
【0047】
次に、電力供給制御手段20は、車両の停止直前にキャパシタ2の出力電圧と出力電流に基づいて推定したキャパシタ2のSOCを取得すると共に、二次電池6の出力電圧と出力電流とに基づいて推定した二次電池6のSOCを取得する(STEP13)。なお、簡易的に、車両停止時におけるキャパシタ2および二次電池6の出力電圧からこれらのSOCを簡易的に推定した値を用いてもよい。
【0048】
そして、電力供給制御手段20は、推定したキャパシタ2のSOCから、現時点(現在の温度)におけるキャパシタ2の出力可能電力を算出すると共に、推定した二次電池6のSOCから、現時点(現在の温度)における二次電池6の出力可能電力を算出し、これらの出力可能電力を合算した総出力可能電力を算出する(STEP14)。
【0049】
次いで、電力供給制御手段20は、使用履歴データベース30の過去のIGN−ONタイミングから、車両の次回発進時刻を予測する(STEP15)。例えば、電力供給制御手段20は、使用履歴データベース30から、前日〜10日前までの使用履歴を取得し、これに基づいて次回(例えば翌朝)車両が発進される次回発進時刻を予測する。
【0050】
具体的な予測手法としては、種々のものが採用可能であり、例えば、平日・土曜日・日曜日(祝日)のそれぞれにおける過去10日間の平均を次回発進時刻するもののほか、予測された次回発進時刻とそのマッチング率を学習させて予測精度を高めるように補正を行うものなどが採用される。
【0051】
このように、過去における車両の発進時刻および停止時刻から把握される動作履歴または発進および停止の繰り返しパターンに基づくことにより、車両の今回停止時刻から次回発進時刻の推定精度の向上が図られる。
【0052】
そして、電力供給制御手段20は、推定した次回発進時刻における内部温度を推定する(STEP16)。内部温度の推定手法としては、以下の種々のものが採用され得る。
【0053】
例えば、第1の手法としては、STEP12で取得した所定時間の内部温度の時間変化から、車両停止時からの経過時間と内部温度との関係を示す近似曲線(その演算式)を求め、該近似曲線から次回発進時刻における内部温度を推定する推定手法が採用される。
【0054】
また、第2の推定手法としては、温度履歴データベース40に記憶された前日〜10日前までのIGN−ONおよびIGN−ONタイミングの内部温度の変化の推移パターンに基づいて、STEP12で取得した今回停止時おける内部温度から、次回発進時における内部温度を推定する手法も採用される。この場合には、過去における当該システムの内部温度の推移パターンに基づくことにより、車両の今回停止時刻における内部温度から次回発進時刻における内部温度の推定精度の向上が図られる。
【0055】
さらに、第3の手法としては、温度履歴データベース40に記憶された前日〜10日前までのIGN−ONおよびIGN−ONタイミングの外温度の変化の推移パターンに基づいて、現時点における外気温から次回発進時における外気温を推定し、外気温と内部温度との関係を規定したマップ等を参照することにより、該推定した外気温から更にその内部温度を推定する手法も採用される。この場合には、過去における外気温の推移パターンに基づくことにより、車両の今回停止時刻における外気温から次回発進時刻における内部温度の推定精度の向上が図られる。
【0056】
さらに、第4の手法としては、第2の手法により推定された次回発進時刻における内部温度を、第3の手法により推定された次回発進時刻における外気温で補正する手法も採用される。この場合には、過去における当該システムの内部温度の推移パターンに基づいて推定された内部温度を、過去における外気温の推移パターンに基づいて補正することができ、内部温度を高精度で推定することができる。
【0057】
また、第5の手法としては、車両に搭載された通信機器(図示省略)を介して、外部サーバ(気象データサーバ)にアクセスし、外部サーバから次回発進時時刻における外気温の予想温度を取得し、取得した外気温から、外気温と内部温度との関係を規定したマップ等を参照することにより、更にその内部温度を推定する手法も採用される。
【0058】
さらに、第6の手法としては、第2の手法により推定された次回発進時刻における内部温度を、第5の手法により予測される次回発進時刻における外気温で補正する手法も採用される。この場合には、過去における当該システムの内部温度の推移パターンに基づいて推定された内部温度を、外部サーバにより取得した外気温の予想温度に基づいて補正することができ、内部温度を高精度で推定することができる。
【0059】
次に、電力供給制御手段20は、STEP14で算出した出力可能電力を、STEP16で推定した内部温度に基づいて補正する(STEP17)。キャパシタ2および二次電池6の出力電圧は、温度低下に伴う内部抵抗の上昇により低下する。そのため、キャパシタ2の温度とSOCと出力可能電力との関係を規定したマップ等(図4)を参照して、今回停止時おけるキャパシタ2の出力可能電力を補正する。同様に、二次電池6の温度とSOCと出力可能電力との関係を規定したマップ(図4)を参照して、今回停止時における二次電池6の出力可能電力を補正する。そして、これら2つの補正後の出力可能電力を合算して補正後の総出力可能電力を算出する。
【0060】
次いで、電力供給制御手段20は、算出した補正後の総出力可能電力が車両の発進時に要求される要求供給電力の閾値(例えば、30kw)以上か否か(第1要件)を判定する(STEP18)。
【0061】
ここで、要求供給電力の閾値(例えば、30kw)は、キャパシタ2および二次電池6の出力可能電力を合算した総出力可能電力が、車両の次回の発進期間の間(走行開始後例えば約10秒間)、電動機5による車両の安定した加速性能を維持することができる値として設定される。
【0062】
すなわち、キャパシタ2および二次電池6のトータルの出力可能電力が車両の発進時に要求される要求供給電力以上の場合には、これらの総出力の推移が燃料電池1の発電出力の立ち上がり(安定化)に要する時間の間(約10秒間)、電動機5への安定した電力供給が可能であり、車両の安定した安定した加速性能を維持できる。すなわち、車両の走行開始時に電動機5に電力を供給することができ、走行開始後に加速性能が落ち込むこともない。
【0063】
そのため、出力可能電力が要求駆動力以上である場合には(STEP18でYES)、この処理を終了し、出力可能電力が要求駆動力未満である場合には(STEP18でNO)、後述するキャパシタ充電処理(STEP20)を実行して一連の処理を終了する。
【0064】
次に、図3を参照して、キャパシタ充電処理の詳細について説明する。
【0065】
まず、電力供給制御手段20は、STEP16で予測した次回発進時刻における内部温度からキャパシタ2の充電目標電圧を設定する(STEP21)。
【0066】
具体的に、充電目標電圧の設定は、下表1に一例を示すデータテーブルまたはこれ相当する内部温度と充電目標電圧との関係を規定したマップに基づいて、次回発進時刻における内部温度毎に決定される。
【0067】
【表1】

【0068】
上表1に示すデータテーブルでは、内部温度が低下するに従って、充電目標電圧を高く設定している。かかる設定値は、温度の低下に伴う内部抵抗の上昇によりキャパシタ2の出力可能電力が低下することを回避するように、予めキャパシタ2の温度特性に基づいて定められている。このように、温度に対応して充電目標電圧を高めることで、常に上限電圧での充電が行われることのよるキャパシタ2の寿命低下を防止することができる。
【0069】
具体的に上表1に基づいて、内部温度が10℃の場合に、充電電圧を212.5[V]にすることにより、充電目標電圧を高めない場合(表中の括弧書き25kw)に比して出力可能電力を29kwに高めることができる。
【0070】
同様に、内部温度が0℃の場合に、充電電圧を216.75Vにすることにより、充電目標電圧を高めない場合(表中の括弧書き21kw)に比して出力可能電力を25kwに高めることができる。
【0071】
さらに、内部温度が、−10℃,−20℃,−30℃の場合には、充電目標電圧を高めない場合に出力可能電力が20kwを下回るのに対して、25kwを維持することができ、これに二次電池6からの出力可能電力を加算することにより、車両の安定した加速性能を維持するのに必要な要求供給電力の閾値(30kw)以上とすることができる。
【0072】
次に、電力供給制御手段20は、STEP16で予測した次回発進時刻における内部温度が、二次電池6の放電が制限される下限温度(0℃)を下回るか否か(第2要件)を判定する(STEP22)。
【0073】
そして、内部温度が下限温度を下回る場合には(STEP22でYES)、下限温度を下回る低温における二次電池6からキャパシタ2への充電を回避すべく、以下の処理が行われる。下限温度を下回る低温で、二次電池6からキャパシタ2への充電を行うと、二次電池6からの充電が十分に行うことができない。
【0074】
まず、電力供給制御手段20は、下限温度における充電電流の検索と設定を行う(STEP23)。ここで、電力供給制御手段20は、温度とキャパシタ2のSOCの上限値(以下、上限SOCという)との関係を規定したマップ等を参照することにより、下限温度(0℃)におけるキャパシタ2の上限SOCを検索し、検索した上限SOCから充電可能な空き容量(wh)に基づく充電電流を設定する。
【0075】
次に、電力供給制御手段20は、内部温度が下限温度(0℃)に到達する下限温度到達時刻を予測する(STEP24)。の推定手法としては、以下の種々のものが採用され得る。
【0076】
例えば、前記第1の手法により、車両停止時からの経過時間と内部温度との関係を示す近似曲線(その演算式)を求め、該近似曲線から、内部温度が0℃となる下限温度到達時刻を予測する手法が採用される。
【0077】
また、前記第2の推定手法により、温度履歴データベース40に記憶された前日〜10日前までのIGN−ONおよびIGN−ONタイミングの内部温度の変化の推移パターンに基づいて、STEP12で取得した今回停止時おける内部温度から、内部温度が0℃となる下限温度到達時刻を予測する手法も採用される。
【0078】
さらに、前記第3の手法により、温度履歴データベース40に記憶された前日〜10日前までのIGN−ONおよびIGN−ONタイミングの外温度の変化の推移パターンに基づいて、現時点における外気温から外気温が0℃となる時刻を予測し、該時刻を簡易的に内部温度が0℃となる下限温度到達時刻とする手法が採用される。
【0079】
さらに、他の手法として、車両に搭載された通信機器(図示省略)を介して、外部サーバ(気象データサーバ)にアクセスし、外気温が0℃となる下限温度到達時刻を取得する手法も採用される。
【0080】
次いで、電力供給制御手段20は、予測した下限温度到達時刻から、上表1の右欄に示す充電時間(充電時間+補償時間)だけ前倒しした時刻を、充電開始時刻として設定する(STEP25)
そして、電力供給制御手段20は、上記処理で設定された条件で二次電池6からキャパシタ2への充電を実行する(STEP28)。具体的に、電力供給制御手段20は、STEP25で設定した充電開始時刻に、STEP21で設定した充電目標電圧およびSTEP23で設定した充電電流で二次電池6からキャパシタ2への充電を実行する。
【0081】
ここで、二次電池6からキャパシタ2への充電を実行する際には、第1〜第3コンタクタ11A,11B〜13A,13BがOFFされている状態において、(i)二次電池6の放電リミット電流を設定した上で、(ii)第3コンタクタ13A,13BをONして、二次電池6を第2電力供給ラインL2に接続する。そして、(iii)第3電力供給ラインL3から第1電力供給ラインL1への昇圧比がSTEP21で設定した充電目標電圧およびSTEP23で設定した充電電流となるように、昇降圧手段3および電圧変換手段7の昇圧比を制御した上で、(iv)第2コンタクタ12A,12BをONして、キャパシタを第1電力供給ラインL1に接続して、充電を実行する。なお、充電の実行時に内部温度を測定し、測定した内部温度に基づいて設定した充電電流を適宜補正するようにしてもよい。
【0082】
これにより、車両の次回発進時を基準として二次電池6からキャパシタ2への充電が実行されても、当該車両の次回発進時における推定環境因子である温度変化に鑑みて該充電が適切に実行されない蓋然性が高い場合に、前以て該充電を実行しておくことで、二次電池6からキャパシタ2への充電が適切に実行され、車両の次回発進時に安定した発進を図ることができる。
【0083】
一方、内部温度が下限温度(0℃)以下とならない場合には(STEP22でNO)、内部温度が下限温度を下回ることがないため、二次電池6からキャパシタ2への充電は、以下のように、予測した次回発進時刻の直前になされることが好ましい。キャパシタ2の自己放電によりキャパシタ2の出力可能電力が低下することを抑制するためである。
【0084】
まず、電力供給制御手段20は、次回発進時の内部温度(STEP16)に対する充電電流の検索と設定を行う(STEP27)。ここで、電力供給制御手段20は、STEP23と同様に、温度とキャパシタ2の上限SOCとの関係を規定したマップ等を参照することにより、次回発進時の内部温度におけるキャパシタ2の上限SOCを検索し、検索した上限SOCから充電可能な空き容量(wh)に基づく充電電流を設定する。
【0085】
次に、電力供給制御手段20は、次回発進時刻(STEP15)から、上表1の右欄に示す充電時間(充電時間+補償時間)だけ前倒しした時刻を、充電開始時刻として設定する(STEP27)
そして、電力供給制御手段20は、上記処理で設定された条件で二次電池6からキャパシタ2への充電を実行する(STEP28)。具体的に、電力供給制御手段20は、STEP27で設定した充電開始時刻に、STEP21で設定した充電目標電圧およびSTEP26で設定した充電電流で二次電池6からキャパシタ2への充電を実行する。なお、充電の実行時に内部温度を測定し、測定した内部温度に基づいて設定した充電電流を適宜補正するようにしてもよい。
【0086】
以上が、キャパシタ充電処理の詳細である。これにより、図4に示すように、低温下で出力可能電力の低下が著しい二次電池6から、予めキャパシタ2への充電を実行しておくことで、当該車両の次回発進期間において電動機5による車両の安定した加速性能が低下する事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子としての温度が著しく変化している状況においても、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0087】
さらに、図5にシミュレーション結果を示す。図5は、内部温度が−20℃における燃料電池1の出力(X1)と、キャパシタ2の出力(X2)と、二次電池6の出力(X3)と、これらを合算した電動機5への供給電力(Y,総出力可能電力)の時間変化を示す。
【0088】
図5では、二次電池6の出力(X3)の上限が約10kwに制限されるが、予め二次電池6からキャパシタ2への充電を実行してキャパシタ2の出力(X1)を高めておくことで、燃料電池1の出力(X1)の立ち上がりを待つまでもなく、電動機5への供給電力(Y,総出力可能電力)を発進時に必要な要求駆動電力以上とすることができ、IGN−ON後、早期に走行を開始することができる。さらに、燃料電池1の出力(X1)の立ち上がりまでに、電動機5への供給電力(Y,総出力可能電力)に一時的な落込み(図6参照)が生じることを回避することができる。このように、当該車両の発進期間において、加速が不十分になる事態が生じる可能性を低減できる。
【0089】
尚、本実施形態では、二次電池6の出力可能電力が温度低下に伴って低下する場合について説明したが、これに限らず、常温の場合には、IGN−ON後の補機8の駆動や燃料電池1への暖気運転等より、二次電池6の出力可能電力が低下する場合にも、これらの要素を推定環境因子として、燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6の総出力が、車両の次回の発進期間において電動機5による車両の安定した加速性能を維持するという第1要件を満たすように、二次電池6からキャパシタ2への充電を実行することで、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している状況においても、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、電動機5に印加される電圧に対して、燃料電池1およびキャパシタ2の定格電圧を小さくすることができる、昇降圧手段3を備える電源システムについて説明したが、燃料電池1およびキャパシタ2の出力電圧が電動機5の印加電圧と等しい場合には、昇降圧手段3を省略してもよい。この場合、電圧変換手段7の昇圧比を制御することにより、上記充電目標電圧(STEP21)および充電電流(STEP26)で二次電池6からキャパシタ2への充電を実行することで、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している状況においても、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【0091】
さらに、本実施形態では、STEP18で、キャパシタ2および二次電池6の総出力可能電力が車両の発進時に要求される要求供給電力(30kw)以上であることを第1要件としたが、これに代えて、燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6の出力の推移パターンを表す推移曲線を重ね合わせた、これら3つの総出力の推移の総出力曲線が、次回発進期間において一時的な落込みがないことを第1要件としてもよい。
【0092】
具体的に、電力供給制御手段20は、燃料電池1の次回発進時に予測される内部温度(STEP16)および反応ガスの供給状態(暖気時間)等から、燃料電池1の出力可能電力およびその時間変化を表す推移曲線(図5のX1)を推定する。また、電力供給制御手段20は、次回発進時に予測される内部温度(STEP16)と推定されたキャパシタ2のSOC(STEP13)からキャパシタ2の出力可能電力およびその時間変化を表す推移曲線(図5のX2)を推定する。同様に、電力供給制御手段20は、次回発進時に予測される内部温度(STEP16)と推定された二次電池6のSOC(STEP13)から二次電池6の出力可能電力およびその時間変化を表す推移曲線(図5のX3)を推定する。そして、これら3つの推移曲線(X1〜X3)を重ね合わせた総出力曲線(図5のY)が、次回発進期間において一時的な落込みがないように、二次電池6からキャパシタ2への充電をフィードバック的またはフィードフォワード的に実行するようにしてもよい。
【0093】
これにより、車両の次回発進時に燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6の総出力が第1要件を満たさない事態、すなわち、当該車両の次回発進期間において、これらの総出力が一時的に落ち込んで電動機5による当該車両の加速が不安定になる事態が生じる可能性を低減できる。したがって、今回の車両の停止時と比較して次回の車両の発進時の環境因子が著しく変化している場合にも、車両の次回発進時に円滑な加速を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施の形態における電源システムの全体構成図。
【図2】二次電池からキャパシタへの充電処理を示すフローチャート。
【図3】キャパシタ充電処理を示すフローチャート。
【図4】二次電池からキャパシタへの充電の様子を示す説明図。
【図5】走行開始後の出力電力の変化を示す説明図。
【図6】従来の電源システムにおける走行開始後の出力電力の変化を示す説明図。
【符号の説明】
【0095】
1…燃料電池、2…キャパシタ、3…昇降圧手段(第1昇圧手段)、4…PDU、5…電動機、6…二次電池、7…電圧制御手段(第2昇圧手段)、8…補機、9…PDU、10a…温度センサ、10b…外気温センサ、20…電力供給制御手段、30…使用履歴データベース、40…温度履歴データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池と並列に接続されたキャパシタと、
前記燃料電池および前記キャパシタに接続され、前記車両を駆動するための電動機と、
前記電動機に電圧変換手段を介して並列に接続された二次電池と、
前記車両の停止時に、該車両の次回発進時の推定環境因子に応じて推定される前記燃料電池、前記キャパシタおよび前記二次電池の総出力が、該車両の次回の発進期間において前記電動機による該車両の安定した加速性能を維持するという第1要件を満たさない場合に、該第1要件を満たすように前記電圧変換手段を介して前記二次電池から前記キャパシタへの充電を実行する電力供給制御手段と
を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の電源システムにおいて、
前記電力供給制御手段は、前記車両の次回発進時の推定環境因子に応じた前記燃料電池、前記キャパシタおよび前記二次電池のそれぞれの出力の推移パターンを表す推移曲線を重ね合わせた前記総出力の推移の総出力曲線が、次回の発進期間において一時的な落込みがないことを前記第1要件とすることを特徴とする電源システム。
【請求項3】
請求項1記載の電源システムにおいて、
前記電力供給制御手段は、前記第1要件を満たさない場合に、前記推定環境因子に基づき、該第1要件を満たすように定められた関数にしたがって前記充電の態様を決定することを特徴とする電源システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の電源システムにおいて、
前記車両の発進時刻および停止時刻を記憶する使用履歴データベースを備え、
前記電力供給制御手段は、前記使用履歴データベースに記憶された前記車両の過去における発進時刻および停止時刻、ならびに、前記車両の今回停止時刻に基づき、前記車両の次回発進時刻を予測し、予測した次回発進時刻における当該システムの内部温度を前記推定環境因子として推定することを特徴とする電源システム。
【請求項5】
請求項4記載の電源システムにおいて、
当該システムの内部温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段で測定された温度を逐次記憶する温度履歴データベースと
を備え、
前記電力供給制御手段は、前記温度履歴データベースに記憶された温度履歴、ならびに、前記車両の今回停止時における内部温度に基づき、予測した次回発進時刻の前記内部温度を推定することを特徴とする電源システム。
【請求項6】
請求項4記載の電源システムにおいて、
次回発進時刻における前記車両の外気温を予測する外気温予測手段を備え、
前記電力供給制御手段は、外気温予測手段により予測された次回発進時刻における前記車両の外気温から、該時刻の前記内部温度を推定することを特徴とする電源システム。
【請求項7】
請求項5記載の電源システムにおいて、
前記電力供給制御手段は、推定された前記内部温度が、前記二次電池からの放電が制限される下限温度以上であるという第2要件を満たさない場合に、前記温度履歴データベースに記憶された温度履歴から前記内部温度が前記下限温度となる下限温度到達時刻を予測し、予測した下限温度到達時刻より前に、前記二次電池から前記キャパシタへの充電を実行することを特徴とする電源システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項記載の電源システムにおいて、
入力部が前記燃料電池および前記キャパシタに並列に接続されると共に、出力部が前記電動機および前記電圧変換手段に接続された昇降圧手段を備え、
前記電力供給手段は、前記電圧変換手段および前記昇降圧手段を制御することにより、前記二次電池から前記キャパシタへの充電を実行することを特徴とする電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154652(P2010−154652A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329903(P2008−329903)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】