説明

電源スタック交換方法、制御装置及び制御プログラム

【課題】電源スタックが並列接続された電源装置の電源スタック交換方法、制御装置及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】電源スタックを電気的に並列接続した電源装置の各電源スタックそれぞれのSOCが所定値になるまで放電又は充電するステップと、充電又は放電により各SOCが所定値となった電源スタックのうち交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換するステップと、を含む電源スタック交換方法により、電源スタックを交換した後の電源装置の効率的な使用及びスタック交換作業の安全性の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源スタックを複数備えた電源装置の電源スタックの交換方法、制御装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等には、複数の電池スタックが搭載されることがある。電池スタックは、複数の単電池を一方向に並べることによって構成されており、車両の走行に用いられるエネルギーを出力する。
【0003】
電池パックは、複数の電池スタックを電気的に並列又は直接に接続することで構成されているが、複数の電池スタックの一部に性能劣化や故障等の不具合が発生すると、電池パック全体の性能が低下し、電池スタックの交換が必要となる。
【0004】
しかしながら、スタック交換後、交換された電池スタックと交換していない他の電池スタックとのSOC(充電電気容量;State of Charge)に差があると、電池パックの電気エネルギーによる走行距離が減少する課題がある。
【0005】
従来、このような電池スタック間にSOC差が存在する場合、車両走行時の放電/充電制御における均等化制御(均等化回路)により所定の電流値で均等化を行っているが、均等化に使用される電流値が小さいと、交換された電池スタックのSOCと交換していない他の電池スタックのSOCとが均等になるまでに多くの時間を要する。
【0006】
このため、複数の電池スタックが並列接続された電池パックの電池スタックを交換する際に、並列接続された電池スタック間にSOC差(電圧差)が存在していると、電池スタック交換後のSOCの均等化が図れるまでの間、電池パックの性能を十分に生かしきれず、電気エネルギーによる走行距離の減少や電気エネルギーによる走行ができなくなってしまう課題があった。
【0007】
また、走行に用いられる電池スタックは、近年、高エネルギー化が進んでおり、電池スタック間にSOC差がある状態で交換を行うと、そのSOC差によって交換作業の安全性が低下するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−15781号公報
【特許文献2】特開2010−172142号公報
【特許文献3】特許第3820184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電源スタックが並列接続された電源装置の電源スタック交換方法、制御装置及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態の電源スタック交換方法は、電源スタックを電気的に並列接続した電源装置において、その一部の交換対象の電源スタックを、交換用電源スタックと交換する電源スタック交換方法であり、並列に接続された各電源スタックそれぞれの充電電気容量(SOC)が所定値になるまで放電又は充電するステップと、充電又は放電により各SOCが所定値となった電源スタックのうち交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換するステップと、を含む。
【0011】
上記放電又は充電するステップは、並列に接続された電源スタック全体を放電又は充電するステップと、SOCが所定値に達した一方の電源スタックの放電又は充電を中断し、所定値に達していない他方の電源スタックのSOCが所定値に達するまで他方の電源スタックを放電又は充電するステップと、を含むことができる。
【0012】
さらに、上記放電又は充電するステップは、並列に接続された電源スタックのうち任意の電源スタックの充電電気容量が所定値となるまで放電又は充電するステップと、任意の電源スタックの充電電気容量が所定値に達した後に、並列に接続された他方の電源スタックの充電電気容量が所定値となるまで放電又は放電するステップと、を含むことができる。他の実施形態の上記放電又は充電するステップは、並列に接続された電源スタックのうちSOCが低い電源スタックのSOCが所定値となるまで放電するステップと、SOCが低い電源スタックのSOCが所定値に達した後に、並列に接続された他方の電源スタックのSOCが所定値となるまで放電するステップと、を含むことができ、また、並列に接続された電源スタックのうちSOCが高い電源スタックのSOCが所定値となるまで充電するステップと、SOCが高い電源スタックのSOCが所定値に達した後に、並列に接続された他方の電源スタックのSOCが所定値となるまで充電するステップと、を含むことができる。
【0013】
車両に搭載された電力消費機器に上記並列に接続された電源スタックの放電電流を出力したり、外部充電器から供給される電力を電源スタックに充電するように構成することができる。
【0014】
並列に接続された電源スタック間の充電電気容量の差の有無を判別するステップをさらに含むことができ、上記所定値を交換用電源スタックのSOCとすることができる。
【0015】
また、他の実施形態の電源スタック交換方法は、電源スタックを電気的に並列接続した電源装置において、その一部の交換対象の電源スタックを、交換用電源スタックと交換する電源スタック交換方法であり、交換用電源スタックを、並列に接続された電源スタック間の一方の電源スタックの充電電気容量(SOC)と同じになるまで放電又は充電するステップと、並列に接続された電源スタック間の他方の電源スタックを、一方の電源スタックのSOCと同じになるまで放電又は充電するステップと、放電又は充電された交換用電源スタックを並列に接続された電源スタックのうち交換対象の電源スタックと交換するステップと、を含む。
【0016】
さらに、他の実施形態の電源スタック交換方法は、複数の電源スタックを電気的に接続した電源ユニットが電気的に並列接続された電源装置において、電源ユニットに含まれる一部の交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換する電源スタック交換方法であり、電源ユニットの充電電気容量(SOC)が所定値になるまで電源ユニットそれぞれを放電又は充電するステップと、充電又は放電によって各SOCが所定値となった電源ユニットに含まれる電源スタックのうち交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換するステップと、を含む。
【0017】
また、本発明の一実施形態の制御装置は、電源スタックを電気的に並列接続した電源装置の一部の交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換する際の、電源スタック間の充電電気容量(SOC)の制御を遂行し、並列に接続された電源スタック間のSOCの差の有無を判別するスタック交換制御部と、電源スタック間にSOCの差が有る場合に、電源スタックの各SOCが所定値になるまで所定の電力消費機器を通じた放電制御又は外部充電器からの充電制御を行う充放電制御部と、を含む。
【0018】
さらに、本発明の一実施形態のプログラムは、電源スタックを電気的に並列接続した電源装置の一部の交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換するメンテナンスモードを実行する、電源装置に接続される制御装置の制御プログラムであり、並列に接続された電源スタック間の充電電気容量の差の有無を判別する機能と、電源スタック間に充電電気容量の差が有る場合に、電源スタックの各充電電気容量が所定値になるまで所定の電力消費機器を通じた放電制御又は外部充電器からの充電制御を行う機能と、を制御装置に実現させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、電気的に並列接続された電池スタック間のSOC調節を行う電源スタック交換方法により、電源スタック交換後の電源装置の電気エネルギーによる走行距離の減少を抑制し、スタック交換後の電源装置の効率的な使用及び安全なスタック交換作業を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】複数の電池スタックで構成された電池パックの模式図である。
【図2】電池パックの回路構成を示す図である。
【図3】メインコントローラの機能ブロックを示す図である。
【図4】電源スタック交換方法の処理フローを示す図である。
【図5】電源スタック交換方法の処理フローを示す図である。
【図6】電源スタック交換方法の処理フローを示す図である。
【図7】電源スタック交換方法の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
【0022】
本発明の実施例1の電池パック(電源装置に相当する)は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載される。ハイブリッド自動車は、車両を走行させる動力源として、電池パック1の他に内燃機関又は燃料電池を備えた車両である。電気自動車は、車両の動力源として、電池パックのみを備えた車両である。
【0023】
本実施例の電池パック1は、車両のフロアパネルの下面に取り付けられ、フロアパネルの上面側の車室(乗員が乗車するスペース)とフロアパネルとの間の車室外スペースに配置されたり、座席の下や座席間、トランクスペースとフロアパネルとの間などに配置される。
【0024】
電池パック1は、モータ・ジェネレータ(不図示)に接続されており、モータ・ジェネレータは、電池パック1の出力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギーを生成する。モータ・ジェネレータの回転力は、動力伝達機構を介して、車輪に伝達される。
【0025】
電池パック1およびモータ・ジェネレータの間に、昇圧回路やインバータを配置することができる。昇圧回路を配置すれば、電池パック1の出力電圧を昇圧することができる。インバータを用いれば、電池パック1から出力された直流電力を交流電力に変換でき、モータ・ジェネレータとして、三相交流モータを用いることができる。モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、電池パック1に出力する。電池パック1は、モータ・ジェネレータからの電力を蓄える。
【0026】
また、電池パック1は、昇圧回路やインバータを介して補機又は外部充電器に接続される。補機とは、電池パック1から出力される電力を消費して動作する機器(電力消費機器)であり、例えば、車両に搭載されたエアコン、AV機器、照明装置等である。なお、補機は、車両に搭載されない外部接続可能な機器を含むことができる。
【0027】
外部充電器は、車両走行に基づく電気エネルギーによる充電以外の車両外部の電気エネルギーを電池パック1に供給する電源(電力供給源)であり、家庭用電源や充電専用電源からの電力が電池パック1に供給される。外部充電器と電池パック(車両)は、例えば、車両の搭載された充電アダプタに接続可能な充電ケーブルを用いて接続することができる。
【0028】
図1は、複数の電池スタックで構成された電池パックの模式図である。電池パック1は、5つの電池スタック(電源スタックに相当する)11〜15と、電池スタック11〜15を収容するケース20とを有する。電池スタック11〜15は、アッパーケース(不図示)およびロアーケース21によって覆われる。アッパーケースは、ボルト等によってロアーケース21に固定される。ロアーケース21は、車両のフロアパネルにボルト等で固定され、電池パック1が車両に固定される。また、電池スタック11〜15は、ロアーケース21内に4つの電池スタック11〜14が並んで配置され、これら4つの電池スタック11〜14の上に、電池スタック15が配置される。
【0029】
各電池スタック11〜15の構成について説明する。電池スタック11は、一方向に並んで配置された複数の単電池を有する。単電池としては、いわゆる角型の単電池を用いている。単電池としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。本実施例の電池スタック11〜15では、複数の単電池を一方向に並べているが(図2参照)、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池を用いて1つの電池モジュールを構成し、複数の電池モジュールを一方向に並べた電池スタック11とすることもできる。
【0030】
単電池の内部には、発電要素(例えば、正極素子、負極素子、正極素子及び負極素子の間に配置されるセパレータ(電解液を含む)を積層して構成することができる)を含み、隣り合う2つの単電池がバスバーによって電気的に接続される。電池スタック11の両端には、一対のエンドプレートが配置され、一対のエンドプレートが拘束部材によって拘束されることによって、一方向に並べされた複数の単電池を拘束している。
【0031】
5つの電池スタック11〜15は、ワイヤーハーネス(不図示)を介して電気的に接続されている。また、後述する電流遮断器22が固定されている。電流遮断器22は、電池スタック11〜15の電流経路を遮断するために用いられる。電流遮断器22は、プラグと、プラグに差し込まれるグリップとで構成でき、グリップをプラグから抜くことにより、電流経路を遮断することができる。
【0032】
次に、電池パック1の回路構成について、図2を用いて説明する。
【0033】
本実施例では、5つの電池スタック11〜15を用いて、2つの組電池(電源ユニット)30,31を構成しており、組電池30,31、電気的に並列に接続している。組電池30,31を構成する単電池の数は、互いに等しく、組電池30、31は複数の電池スタックを含む。
【0034】
図2に示す2つの電池監視装置40の一方は、組電池30の状態を監視するために用いられ、他方の電池監視装置40は、組電池31の状態を監視するために用いられる。組電池30,31の状態には、電流、電圧、温度が含まれる。電圧には、各組電池30,31の電圧、単電池の電圧、組電池30,31を構成する複数の単電池を複数のブロックに分けたときの電圧が含まれる。各ブロックには、2つ以上の単電池が含まれる。温度には、各組電池30,31を1箇所又は複数箇所で測定したときの温度が含まれる。
【0035】
電池監視装置40で監視される電流、電圧および温度は、電池スタック11〜15の充放電を制御するために用いられる。例えば、電流等は、電池スタック11〜15のSOCを推定(算出)するために用いたり、電池スタック11〜15の劣化状態を推定するために用いたりする。また、電圧等は、電池スタック11〜15の過充電や過放電を抑制するために用いられる。電池監視装置40は、監視(検出)された電流、電圧および温度の監視情報を、メインコントローラ100に出力する。
【0036】
組電池30は、2つの電池スタック11,15と、電池スタック13の一部とで構成されており、電池スタック11,15,13は電気的に直列に接続されている。組電池31は、2つの電池スタック12,14と、電池スタック13の一部とで構成されており、電池スタック12,14,13は電気的に直列に接続されている。
【0037】
各電池スタック11〜15には、ヒューズ21が設けられている。電池スタック11および電池スタック15の間には、電流遮断器22が設けられており、電池スタック12および電池スタック14の間には、電流遮断器22が設けられている。2つの電流遮断器22は、一体的に構成されており、電流遮断器22のグリップを引き抜くことにより、各組電池30,31の電流経路を同時に遮断することができる。
【0038】
組電池30のプラス端子には、システムメインリレーSMR_B1が接続されており、組電池31のプラス端子には、システムメインリレーSMR_B2が接続されている。組電池30,31のマイナス端子には、システムメインリレーSMR_Gが接続されている。システムメインリレーSMR_Pおよび抵抗23は、システムメインリレーSMR_Gと並列に接続されている。システムメインリレーSMR_B1,B2,G,Pは、後述するメインコントローラ100によってON/OFFの制御がなされる。システムメインリレーSMR_B1等は、例えば、リレースイッチである。
【0039】
組電池30,31および負荷(補機又は外部充電器を含む)を電気的に接続するためには、まず、システムメインリレーSMR_B1,B2およびシステムメインリレーSMR_Pを、オフからオンに切り替える。次に、システムメインリレーSMR_Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR_Pをオンからオフに切り替える。これにより、組電池30,31の充放電を行うことができる。一方、組電池30,31を、直流電源又は交流電源等の外部充電器と接続することにより、組電池30,31の充電を行うことができる。
【0040】
図3は、電池パック1の制御回路(メインコントローラ)100の機能ブロック図である。
【0041】
メインコントローラ100は、モータ・ジェネレータ、昇圧回路及びインバータを介した電池パック1の充放電制御、システムメインリレーSMR_B1,B2,G,PのON/OFF制御、電源監視装置40の監視制御、電池パック1から補機への放電制御、外部充電器を介した電池パック1への充電制御を行うとともに、後述するメンテナンスモードにおいてSOC均等化制御(SOC調節制御)を遂行する。このため、本実施例のメインコントローラ100は、スタック交換制御部101を含み、スタック交換制御部101は、機器放電制御部1011、外部充電制御部1012、及びリレー制御部1013を含む。
【0042】
また、メインコントローラ(バッテリーコントローラを含む)100は、電源監視装置40から出力される監視情報に基づいて、電池パック1、組電池30、31及び各電池スタック11〜15の充電電気容量(SOC)や劣化状態などの管理を行い、交換が必要な電池スタック(交換対象の電池スタック)を検出したり、交換が必要な電池スタックが検出された場合に所定の表示装置や出力装置にスタック交換アラーム等を出力することができる。
【0043】
組電池30,31のSOCは、例えば、メインコントローラ100が電源監視装置40から出力される監視情報に基づいて所定の演算処理を遂行して取得することができ、電池パック1、組電池30、31及び各電池スタック11〜15の各SOCを不図示のメモリ等の記憶させることができる。
【0044】
そして、本実施例のメインコントローラ100は、メンテナンスモードを有し、所定の制御信号に基づいてメンテナンスモードを遂行する。メインコントローラ100は、メンテナンスモードにおいて検出された交換対象の電池スタックを交換するスタック交換モードを実行し、電気的に並列に接続された電池スタック間のSOC均等化制御を遂行する。
【0045】
図4は、本実施例の電源スタック交換方法の処理フローを示す図であり、メインコントローラ100が実行するスタック交換モードの処理フローを含む。以下の説明では、交換対象の電池スタックを検出した後のメインコントローラ100の処理フローを示しているが、これに限らず、メインコントローラ100による交換対象の電池スタック検出処理を含むように構成することもできる。
【0046】
電池スタックを交換する作業者は、車両に設けられた所定の接続アダプタを介して情報処理装置をメインコントローラ100に接続する。作業者は、情報処理装置からメンテナンスモード指示信号(入力制御信号)を入力する。メンテナンス指示信号を受信したメインコントローラ100は、メンテナンスモード(スタック交換モード)に移行する(S1)。
【0047】
メインコントローラ100(スタック交換制御部101)は、並列接続された組電池30,31の各SOCをメモリから抽出し、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有るか否かを判別する(S2)。図4の左側に示したグラフは、組電池30(電源ユニット1)及び組電池31(電源ユニット2)の各電池スタックのSOCを示すグラフA〜Cであり、組電池30の電池スタック15、11,13の一部が、横軸の電池スタックE,D,C2それぞれに対応し、組電池31の電池スタック14,12,13の一部が横軸の電池スタックA,B,C1それぞれに対応する。
【0048】
組電池30,31は、複数の電池スタックが電気的に直列に接続され、組電池30,31間が電気的に並列に接続されているので、組電池30を構成する電池スタック15、11,13の一部の各SOCは、同じSOCとなるように制御され、組電池31を構成する電池スタック14,12,13の一部の各SOCも同じSOCとなっている。
【0049】
メインコントローラ100(機器放電制御部1011)は、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有ると判別されると(S2のYES,グラグA)、組電池30,31に充電されている電気エネルギーを補機に出力させる放電制御を遂行する(S3)。具体的には、メインコントローラ100(リレー制御部1013)は、組電池30,31および補機を電気的に接続するためには、システムメインリレーSMR_B1,B2およびシステムメインリレーSMR_Pをオフからオンに切り替え、システムメインリレーSMR_Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR_Pをオンからオフに切り替える。これにより、組電池30,31は、エアコン等の補機に充電されている電気エネルギーを放電することができる。
【0050】
メインコントローラ100は、並列接続された組電池30,31全体を放電させ、組電池30,31の各SOCが所定値となるまで放電させる。この所定値は、例えば、交換用電池スタックのSOC値や電池パック1の電気エネルギーによる走行可能なSOCの下限値を適用することができ、また、任意のSOC値であってもよい。
【0051】
メインコントローラ100(スタック交換制御部101)は、補機への放電による各SOCの変動を監視する。図4の例では、グラフBに示すように、補機への放電により組電池30,31の各SOCが同時に減少している。メインコントローラ100は、組電池31のSOCが所定値に到達したか否かを検出する(S4)。図4の例では、組電池31のSOCが組電池30のSOCよりも低いので、組電池31のSOCが先に所定値に到達する。組電池31のSOCが所定値に到達していない場合は放電を継続する。
【0052】
組電池31のSOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、システムメインリレーを制御して補機への放電を停止し、組電池30のみ放電制御に切り替える。具体的には、メインコントローラ100は、並列接続された組電池30,31全体の補機への放電制御を停止し、組電池31側のシステムメインリレーSMR_B2をオンからオフに切り替え、組電池30側のシステムメインリレーSMR_B1のオン状態を維持する(S5)。メインコントローラ100は、システムメインリレーSMR_B1、Gがオンされた状態で放電制御を開始し、組電池30のみを対象とした補機への放電を開始する(S6)。
【0053】
メインコントローラ100は、組電池30の補機への放電によるSOCの変動を監視する。図4のグラフCに示すように、メインコントローラ100は、組電池30のSOCが所定値に到達したか否かを検出する(S7)。組電池30のSOCが所定値に到達していない場合は放電を継続し、組電池30のSOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、システムメインリレーを制御して補機への放電を停止し、電池パック1全体の補機への放電制御を終了する(S8)。
【0054】
その後、メインコントローラ100は、図4のグラフCに示すように、組電池30及び組電池31の各SOCが、同じ所定値である状態、すなわち、組電池30及び組電池31の各SOCが所定値に均等化された状態であるか否かを判別し、電気的に並列に接続された組電池30及び組電池31の各SOCが所定値に均等化された状態の電池パック1の全システムメインリレーSMR_B1,B2,G,Pをオフにして(S9)、SOC調節制御を終了する。
【0055】
一方、ステップS2において、メインコントローラ100は、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が無いと判別されると(S2のNO)、組電池30,31の各SOCが同じSOC値を有するので、そのSOC値が所定値であるか否かを判別する(S10)。メインコントローラ100は、組電池30,31のSOCが所定値よりも大きい場合、組電池30,31および補機を電気的に接続するためには、ステップS3と同様に、システムメインリレーSMR_B1,B2およびシステムメインリレーSMR_Gをオフからオンに切り替え、並列接続された組電池30,31全体を放電させ、組電池30,31の各SOCが所定値となるまで放電させる(S11)。
【0056】
メインコントローラ100は、組電池30,31の補機への放電によるSOCの変動を監視する。図4のグラフCに示すように、メインコントローラ100は、組電池30,31の各SOCが所定値に到達したか否かを検出する(S13)。SOCが所定値に到達していない場合は放電を継続し、SOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、ステップS8に進むことになる。
【0057】
SOC調節制御完了後、メインコントローラ100は、電池スタックの交換作業を行う作業者に、交換準備が完了した旨の表示等を出力する制御を行うことができる。作業者は、交換対象である電池スタックと交換用電池スタックを交換する。
【0058】
電気的に並列に接続された電池スタックで構成された電池パック1では、例えば、電池パック1内の電池スタックに不具合が生じた場合、メインコントローラ100は、不具合が生じた電池スタック(不具合が生じた電池スタックを含む電源ユニット)の充放電を停止し、不具合の生じていない電池スタック(不具合が生じていない電源ユニット)のみに対する充放電を行って、電池パック1の電気エネルギーによる走行を可能にする制御を行う。この場合、不具合が生じた時点から電池スタック間(電源ユニット間)に大きなSOC差が生じる。
【0059】
このため、不具合が生じた交換対象の電池スタックを交換用電池スタックと交換する際、並列接続された電池スタック間の電圧差が大きくなり、交換後も電池スタック間の電圧差が大きいと、その電圧差分のエネルギーロスが生じる。
【0060】
例えば、図4のグラフAに示すように電源ユニット2のSOCが65%,電源ユニット1のSOCが38%である場合、そのSOC差は27%である。SOC調節制御を行わずに不具合が生じた電池スタックを交換した場合、電源ユニット1と電源ユニット2間のSOC差27%は、そのまま維持されるので、電池パック1の放電時において電源ユニット1のSOCが先に下限値である20%に到達し、電源ユニット2のSOCが47%の状態であっても放電制御が停止され、電源ユニット2のSOC27%分の電気エネルギーが使用できなくなる。
【0061】
また、電池パック1への充電時において電源ユニット2のSOCが先に上限値である80%に到達し、電源ユニット1のSOCが53%の状態であっても充電制御が停止され、電源ユニット1のSOC27%分の電気エネルギーを蓄えることができなくなる。
【0062】
このため、並列接続される電源ユニット1、2間にSOC差が生じると、電池スタック交換後の電気エネルギーによる走行距離が電源ユニット1、2間にSOC差分減少することになる。
【0063】
本実施例では、電気的に並列に接続された電池スタックの交換作業において、並列接続される電池スタック間のSOC均等化制御を遂行することで、電池スタック交換後の電池パック1の電気エネルギーによる走行距離の減少又は走行不可状態を好適に抑制することができる。これにより、スタック交換後の電池パック1の効率的な使用を実現できる。
【0064】
また、交換用電池スタックのSOC値をSOC均等化制御の所定値とした場合、スタック交換後の電池パック1の組電池30,31全体のSOCが交換用電池スタックのSOC値に均等化され(SOCが一定の同じ所定値に均一化され)、スタック交換後の電池パック1のより効率的な使用を実現できる。
【0065】
また、SOC調節制御の所定値を電池パック1の電気エネルギーによる走行可能な下限値とすることで、組電池30,31間のSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池30又は組電池31の複数の電池スタック間のSOC値とがより低いSOC状態で均等化されているので、組電池間又は電池スタック間の電圧差による放電等を防止することができ、交換対象の電池スタックを取り外し作業及び取り付け作業の安全性をより向上させることができる。
【0066】
なお、交換用電池スタックのSOC値を予め取得できる場合には、情報処理装置からメンテナンスモード指示信号と共に、又は個別にメインコントローラ100に入力し、メンテナンスモードにおけるSOC調節制御の所定値を情報処理装置から入力したSOC値とすることができる。また、交換用電池スタックのSOC値が電池スタックのSOC下限値である場合、予めそのSOC値を保持しておき、SOC調節制御の所定値として使用することができる。また、交換用電池スタックのSOC値をSOC調節制御の所定値に合わせるために、又は交換用電池スタックのSOC値を任意の所定値にするために、交換用電池スタックに対して充放電を予め行うこともできる。
【0067】
図5は、電源スタック交換方法の処理フローを示す図であり、図4に示した電源スタック交換方法の変形例である。図4と同じ処理については同符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図5に示すように、組電池30,31に充電されている電気エネルギーを補機に出力させる放電制御において、並列接続された組電池30,31全体を放電させて組電池30,31の各SOCが所定値となるまで放電するのではなく、組電池30,31を個別に放電させて各組電池30,31それぞれのSOCが所定値に達するまで個別に放電制御を行う。
【0069】
ステップS2において、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有ると判別されると、メインコントローラ100は、組電池30,31の各SOCが参照し、所定値であるか否かを判別する。この判別処理は組電池30,31に対して個別にかつ任意の順序で行うことができる。例えば、組電池31のSOC値が所定値でないと判別された場合、組電池31と補機とを電気的に接続する。システムメインリレーSMR_B2をオンからオフに切り替える。これにより、組電池31が、エアコン等の補機に充電されている電気エネルギーを放電することができる(S101)。
【0070】
メインコントローラ100は、並列接続された組電池31の一方のみを放電させ、例えば、組電池31のSOCが所定値となるまで放電させる(S103)。このとき、組電池30の放電は行われない。
【0071】
メインコントローラ100は、補機への放電による組電池31のSOCの変動を監視し、組電池31のSOCが所定値に到達したか否かを検出する(S103)。組電池31のSOCが所定値に到達していない場合は放電を継続する。
【0072】
組電池31のSOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、システムメインリレーを制御して補機への放電を終了し(S104)、並列接続された各組電池のSOCをチェックし、電池パック1の並列接続される全ての組電池(電池スタック)のSOC値が所定値であるか否かを判別する(S105)。SOC値が所定値に達していない組電池がある場合、ステップS101に戻り、SOCが所定値に達していない組電池のシステムメインリレーをオンし、それ以外の組電池のシステムメインリレーをオフにして、SOCが所定値に達していない組電池のSOCを所定値になるまで放電する。電池パック1の並列接続される全ての組電池のSOC値が所定値となるまで、ステップS101〜S105を繰り返し行い、並列接続される全ての各組電池のSOC値を所定値に均等化する。
【0073】
図5の例では、各組電池のSOCを個別に放電制御し、SOC値が所定値に達していない組電池を対象に放電制御を行うので、SOC均等化制御の時間を短縮することができる。
【0074】
図6は、電源スタック交換方法の処理フローを示す図であり、図4に示した電源スタック交換方法が補機への放電制御により、電池スタックのSOCを所定値まで下げていたが、図6の例では、逆に、並列接続された電池スタックへの充電制御によりSOCの均等化を行う。
【0075】
図4に示した例と同様に、電池スタックを交換する作業者は、車両に設けられた所定の接続アダプタを介して情報処理装置をメインコントローラ100に接続する。作業者は、情報処理装置からメンテナンスモード指示信号(入力制御信号)を入力する。メンテナンス指示信号を受信したメインコントローラ100は、メンテナンスモード(スタック交換モード)に移行する(S201)。なお、上述したように外部充電器と電池パック1(車両)とは、車両の搭載された充電アダプタに接続可能な充電ケーブル等を用いて接続される。
【0076】
メインコントローラ100は、並列接続された組電池30,31の各SOCをメモリから取得し、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有るか否かを判別する(S202)。
【0077】
メインコントローラ100(外部充電制御部1013)は、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有ると判別されると(S202のYES)、外部充電器から組電池30,31に電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行する(S203)。具体的には、メインコントローラ100(リレー制御部1013)は、組電池30,31および外部充電器を電気的に接続するためには、システムメインリレーSMR_B1,B2およびシステムメインリレーSMR_Gをオフからオンに切り替える。これにより、組電池30,31は、外部充電器から電力の供給を受けて電気エネルギーを充電することができる。
【0078】
メインコントローラ100は、並列接続された組電池30,31全体に対して充電を行い、組電池30,31の各SOCが所定値となるまで外部充電器から充電させる。
【0079】
メインコントローラ100(スタック交換制御部101)は、外部充電器からの充電による各SOCの変動を監視する。図6の例では、図4同様に、外部充電器からの充電により組電池30,31の各SOCが同時に増加する。メインコントローラ100は、組電池30のSOCが所定値に到達したか否かを検出する(S204)。図4の例では、組電池30のSOCが組電池31のSOCよりも高いので、組電池30のSOCが先に所定値に到達する。組電池30のSOCが所定値に到達していない場合は放電を継続する。
【0080】
組電池30のSOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、システムメインリレーを制御して組電池30への充電を停止し、組電池31のみの充電制御に切り替える。具体的には、メインコントローラ100は、並列接続された組電池30,31全体の補機への充電制御を停止し、組電池30側のシステムメインリレーSMR_B1をオンからオフに切り替え、組電池31側のシステムメインリレーSMR_B2のオン状態を維持する(S205)。メインコントローラ100は、システムメインリレーSMR_B2、Gがオンされた状態で充電制御を開始し、組電池31のみを対象とした外部充電器からの充電を開始する(S206)。
【0081】
メインコントローラ100は、組電池31の外部充電器からの充電によるSOCの変動を監視する。メインコントローラ100は、組電池31のSOCが所定値に到達したか否かを検出する(S207)。組電池31のSOCが所定値に到達していない場合は充電を継続し、組電池31のSOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、システムメインリレーを制御して外部充電器からの充電を停止し、電池パック1全体の外部充電器からの充電制御を終了する(S208)。
【0082】
その後、メインコントローラ100は、組電池30及び組電池31の各SOCが同じ所定値に均等化された状態であるか否かを判別し、電気的に並列に接続された組電池30及び組電池31の各SOCが所定値に均等化された状態の電池パック1の全システムメインリレーSMR_B1,B2,G,Pをオフにして(S209)、SOC均等化制御を終了する。
【0083】
ステップS2において、メインコントローラ100は、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が無いと判別されると(S202のNO)、組電池30,31の各SOCが同じSOC値を有するので、そのSOC値が所定値であるか否かを判別する(S210)。メインコントローラ100は、組電池30,31のSOCが所定値よりも小さい場合、組電池30,31および外部充電器を電気的に接続するためには、ステップS203と同様に、システムメインリレーSMR_B1,B2およびシステムメインリレーSMR_Gをオフからオンに切り替え、並列接続された組電池30,31全体を充電し、組電池30,31の各SOCが所定値となるまで外部充電器から電気エネルギーを充電させる(S211)。
【0084】
メインコントローラ100は、組電池30,31の外部充電器からの充電によるSOCの変動を監視し、組電池30,31の各SOCが所定値に到達したか否かを検出する(S213)。SOCが所定値に到達していない場合は充電を継続し、SOCが所定値に達した場合は、メインコントローラ100は、ステップS208に進むことになる。
【0085】
SOC均等化制御終了後、メインコントローラ100は、電池スタックの交換作業を行う作業者に、交換準備が完了した旨の表示等を出力する制御を行うことができる。作業者は、交換対象である電池スタックと交換用電池スタックを交換する。
【0086】
図6の例では、電気的に並列に接続された電池スタックの交換作業において、並列接続される電池スタック間のSOC均等化を充電により行うので、電池パック1のSOCが高い状態で均等化される。このため、電池パック1の電気エネルギーによる走行に対して十分な電気エネルギーを蓄えた状態が電池スタック交換後に維持され、電池スタック交換後の外部充電器等による充電時間が短縮され、又は充電が不要となる。
【0087】
図7は、電源スタック交換方法の処理フローを示す図であり、交換対象の電池スタックを交換用電池スタックと交換した後に、並列接続された電池スタック間のSOC均等化制御を行う。なお、図7の例では、充電制御を一例に説明しているが、放電制御であってもよい。
【0088】
電池スタックを交換する作業者は、車両に設けられた所定の接続アダプタを介して情報処理装置をメインコントローラ100に接続する。作業者は、情報処理装置からメンテナンスモード指示信号を入力する。メンテナンス指示信号を受信したメインコントローラ100は、メンテナンスモード(スタック交換モード)に移行する(S301)。
【0089】
また、作業者は、交換用電池スタックを外部充電器と接続するとともに、外部充電器と電池パック(車両)とを充電ケーブルを用いて接続する。さらに作業者は、メインコントローラ100と交換用電池スタックとを所定の通信線を用いて接続する。つまり、交換用電池スタックをメインコントローラ100による充放電制御の対象に組み込むために、交換用電池スタックとメインコントローラ100とを接続する。メインコントローラ100は、接続された交換用電池スタックのSOCを検出する(S302)。
【0090】
なお、交換用電池スタックのSOC値が取得されている場合には、ステップS302は、情報処理装置から接続された交換用電池スタックのSOC値の入力を受ける処理を遂行する。また、交換用電池スタックを電池パック1と個別に外部充電器に接続する以外に、例えば、電池パック1に設けられたメンテナンス用ケーブルで交換用電池スタックを接続し、外部充電器と交換用電池スタックとの接続を電池パック1を介して行い、かつ交換用電池スタックをメインコントローラ100による充放電制御の対象に組み込むことができる。
【0091】
次に、メインコントローラ100は、並列接続された組電池30,31の各SOCをメモリから取得し、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有るか否かを判別する(S303)。
【0092】
メインコントローラ100(外部充電制御部1013)は、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が有ると判別されると(S303のYES)、ステップS304に進み、交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池30又は31のSOC値が等しいか否か(SOC差が有るか否か)を判別する(S304)。
【0093】
交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池30又は31のSOC値が等しくない場合には、外部充電器から交換用電池スタック又は、交換対象の電池スタックを含む組電池30又は31に電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行する(S305)。
【0094】
ここで、交換対象の電池スタックを含む組電池が組電池31であるとし、また、交換用電池スタックのSOCを交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOCになるまで充電する場合について説明する。
【0095】
メインコントローラ100は、交換用電池スタックに対して充電を行い、交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値とが等しくなるまで、外部充電器から電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行する。なお、交換用電池スタックのSOC値が交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値よりも高い場合、外部充電器から組電池31に電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行したり、交換用電池スタック及び補機をリレー制御により電気的に接続して、交換用電池スタックから電気エネルギーを補機に放電させる放電制御を遂行することもできる。
【0096】
メインコントローラ100(スタック交換制御部101)は、外部充電器からの充電によるSOCの変動を監視する。ステップS305において交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値とが等しいと判別された場合、ステップS306に進み、充電制御を停止してステップS307に進む。
【0097】
ステップS307では、交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値とが等しい状態で、電池パック1の全システムメインリレーSMR_B1,B2,G,Pをオフにし、交換用電池スタックと外部充電器との接続をオフにする(S307)。メインコントローラ100は、電池スタックの交換作業を行う作業者に、交換準備が完了した旨の表示等を出力する制御等を行い、作業者は、交換対象である電池スタックと交換用電池スタックを交換する。
【0098】
メインコントローラ100は、交換用電池スタックが交換されたか否かを判別する(S308)。作業者は、スタック交換作業が完了した後に情報処理装置からメインコントローラ100に電池スタック交換完了を示す制御信号を入力し、メインコントローラ100は、この入力信号に基づいて交換用電池スタックが交換されたか否かを判別することができる。
【0099】
交換用電池スタックに交換された後、メインコントローラ100は、組電池30,31の各SOCのうち、高いSOCを有する組電池側のシステムメインリレーをオフに制御し、低いSOCを有する組電池側のシステムメインリレーをオンにする(S309)。図7の例では、組電池31のSOCが組電池30のSOCよりも高いので、組電池30および外部充電器を電気的に接続するためには、システムメインリレーSMR_B1をオフに制御しつつ、システムメインリレーSMR_B2およびシステムメインリレーSMR_Gをオフからオンに切り替える。
【0100】
メインコントローラ100は、組電池30に対して充電を行い(S310)、組電池30のSOCが組電池31のSOCに達するまで、外部充電器から電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行する。
【0101】
メインコントローラ100は、外部充電器からの充電によるSOCの変動を監視し、組電池30と31の各SOC値が等しくなるまで充電制御を行い(S311)、組電池30と31の各SOC値が等しいと判別された場合に、充電制御を停止する(S312)。
【0102】
そして、メインコントローラ100は、電池パック1の全システムメインリレーSMR_B1,B2,G,Pをオンにする(S313)。
【0103】
ステップS303において、組電池30,31間にSOC差(電圧差)が無いと判別されると(S303のNO)、メインコントローラ100は、ステップS304に進み、交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値が等しいか否かを判別する(S314)。
【0104】
交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値が等しくない場合、外部充電器から交換用電池スタックに電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行する(S315)。なお、この場合においても上述したように、交換用電池スタックのSOC値が交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値よりも高い場合、外部充電器から組電池31に電気エネルギーを充電させる充電制御を遂行したり、交換用電池スタック及び補機をリレー制御により電気的に接続して、交換用電池スタックから電気エネルギーを補機に放電させる放電制御を遂行することもできる。
【0105】
メインコントローラ100は、外部充電器からの充電によるSOCの変動を監視し、交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値とが等しいと判別された場合(S316)、充電制御を停止する(S317)。
【0106】
メインコントローラ100は、交換用電池スタックのSOC値と交換対象の電池スタックを含む組電池31のSOC値とが等しい状態で、電池パック1の全システムメインリレーSMR_B1,B2,G,Pをオフにし、交換用電池スタックと外部充電器との接続をオフにする(S318)。メインコントローラ100は、電池スタックの交換作業を行う作業者に、交換準備が完了した旨の表示等を出力する制御等を行い、作業者は、交換対象である電池スタックと交換用電池スタックを交換する。そして、メインコントローラ100は、ステップ313に進む。
【0107】
図7の例では、交換用電池スタックのSOCを交換対象の電池スタックを含む組電池のSOCに均等化してスタック交換を行った後に、電気的に並列に接続される組電池30,31間のSOC均等化制御を遂行するので、電池パック1の電気エネルギーによる走行に対して十分な電気エネルギーを蓄えた状態が電池スタック交換後に維持され、電池スタック交換後の外部充電器等による充電時間を短縮することができる。
【0108】
以上、本発明を実施例に則して説明したが、例えば、メインコントローラ100によるSOC均等化制御は、作業者が操作する情報処理装置で行うことができ、メインコントローラ100と個別のSOC均等化制御を遂行する制御装置として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0109】
1:電池パック(電源装置)
11〜15:電池スタック
20:ケース
21:ロアーケース
22:電流遮断器
23:ヒューズ
30,31:組電池(電源ユニット)
40:電池監視装置
100:メインコントローラ(制御装置)
101:スタック交換制御部
1011:機器放電制御部
1012:外部充電制御部
1013:リレー制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源スタックを電気的に並列接続した電源装置において、その一部の交換対象の電源スタックを、交換用電源スタックと交換する電源スタック交換方法であって、
前記並列に接続された各電源スタックそれぞれの充電電気容量が所定値になるまで放電又は充電するステップと、
前記充電又は放電により各充電電気容量が前記所定値となった電源スタックのうち前記交換対象の電源スタックを前記交換用電源スタックと交換するステップと、
を含むことを特徴とする電源スタック交換方法。
【請求項2】
前記放電又は充電するステップは、
前記並列に接続された電源スタック全体を放電又は充電するステップと、
充電電気容量が前記所定値に達した一方の電源スタックの放電又は充電を中断し、前記所定値に達していない他方の電源スタックの充電電気容量が前記所定値に達するまで前記他方の電源スタックを放電又は充電するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の電源スタック交換方法。
【請求項3】
前記放電又は充電するステップは、
前記並列に接続された電源スタックのうち任意の電源スタックの充電電気容量が前記所定値となるまで放電又は充電するステップと、
前記任意の電源スタックの充電電気容量が前記所定値に達した後に、前記並列に接続された他方の電源スタックの充電電気容量が前記所定値となるまで放電又は放電するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の電源スタック交換方法。
【請求項4】
車両に搭載された電力消費機器に前記並列に接続された電源スタックの放電電流を出力することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電源スタック交換方法。
【請求項5】
外部充電器から供給される電力を前記電源スタックに充電することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電源スタック交換方法。
【請求項6】
並列に接続された電源スタック間の充電電気容量の差の有無を判別するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の電源スタック交換方法。
【請求項7】
前記所定値は、前記交換用電源スタックの充電電気容量であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の電源スタック交換方法。
【請求項8】
電源スタックを電気的に並列接続した電源装置において、その一部の交換対象の電源スタックを、交換用電源スタックと交換する電源スタック交換方法であって、
前記交換用電源スタックを、前記並列に接続された電源スタック間の一方の電源スタックの充電電気容量と同じになるまで放電又は充電するステップと、
前記並列に接続された電源スタック間の他方の電源スタックを、前記一方の電源スタックの充電電気容量と同じになるまで放電又は充電するステップと、
前記放電又は充電された交換用電源スタックを、前記並列に接続された電源スタックのうち前記交換対象の電源スタックと交換するステップと、
を含むことを特徴とする電源スタック交換方法。
【請求項9】
複数の電源スタックを電気的に接続した電源ユニットが電気的に並列接続された電源装置において、前記電源ユニットに含まれる一部の交換対象の電源スタックを、交換用電源スタックと交換する電源スタック交換方法であって、
前記電源ユニットの充電電気容量が所定値になるまで前記電源ユニットそれぞれを放電又は充電するステップと、
前記充電又は放電によって各充電電気容量が前記所定値となった電源ユニットに含まれる電源スタックのうち前記交換対象の電源スタックを前記交換用電源スタックと交換するステップと、
を含むことを特徴とする電源スタック交換方法。
【請求項10】
電源スタックを電気的に並列接続した電源装置の一部の交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換する際の、電源スタック間の充電電気容量の制御を遂行する制御装置であって、
並列に接続された電源スタック間の充電電気容量の差の有無を判別するスタック交換制御部と、
前記電源スタック間に充電電気容量の差が有る場合に、前記電源スタックの各充電電気容量が所定値になるまで所定の電力消費機器を通じた放電制御又は外部充電器からの充電制御を行う充放電制御部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項11】
電源スタックを電気的に並列接続した電源装置の一部の交換対象の電源スタックを交換用電源スタックと交換するメンテナンスモードを実行する前記電源装置に接続される制御装置の制御プログラムであって、前記制御装置に、
並列に接続された電源スタック間の充電電気容量の差の有無を判別する機能と、
前記電源スタック間に充電電気容量の差が有る場合に、前記電源スタックの各充電電気容量が所定値になるまで所定の電力消費機器を通じた放電制御又は外部充電器からの充電制御を行う機能と、
を実現させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−113856(P2012−113856A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259944(P2010−259944)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】