説明

電源装置

【課題】電源装置自体が接続される携帯機器の駆動可能電圧を自動で検知する技術を提供する。
【解決手段】接続されている機器に電力を供給する電源装置であって、電源と、電源から入力された電圧を所定の電圧に可変して機器へと出力する変圧手段と、電源装置の出力電流値を測定する電流計と、変圧手段による電圧の可変を制御する制御部と、を備え、制御部は、電源から出力される電圧を段階的に昇圧させ、出力電流値の変化を検出することで、変圧手段により昇圧された電源装置の出力電圧が機器の駆動可能電圧に達したことを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。より具体的には、電源として燃料電池を用いた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、携帯機器を利用する人が増えている。こうした携帯機器が必要とする電源電圧は機器ごとに異なることが多い。外部電源と携帯機器とを接続する際、外部電源の電圧をその携帯機器が駆動可能な電圧に調整する必要がある。外部電源と携帯機器との間に電圧指令機器を接続することで電圧の調整を容易にする技術が提案されている(特許文献1参照)。この電圧指令機器には対応する携帯機器の駆動可能電圧の情報があらかじめ記憶されている。電圧指令機器が外部電源に対してその情報を送信することにより外部電源は携帯機器が必要とする電圧を検知し、出力電圧を調整できる。
【特許文献1】特開2004−319367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電圧指令機器を用いる場合、対応する電圧指令機器をそれぞれの携帯機器ごとに用意する必要があり、ユーザにとって利便性がよいものとはいえない。また、外部電源として燃料電池が用いられる場合、出力電力が変動するため携帯機器を安定して稼働させることが困難であった。
【0004】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源装置自体が接続される携帯機器の駆動可能電圧を自動で検知する技術の提供にある。また、外部電源として燃料電池が用いられる場合、接続される携帯機器の安定的な稼働を容易にする技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、接続されている機器に電力を供給する電源装置である。当該電源装置は、電源と、電源から入力された電圧を所定の電圧に可変して機器へと出力する変圧手段と、電源装置の出力電流値を測定する電流計と、変圧手段による電圧の可変を制御する制御部と、を備え、制御部は、電源から出力される電圧を段階的に昇圧させ、出力電流値の変化を検出することで、変圧手段により昇圧された電源装置の出力電圧が機器の駆動可能電圧に達したことを検知することを特徴とする。
【0006】
上記態様の電源装置によれば、接続される機器の駆動可能電圧を自動で検知しやすくなり、駆動可能電圧が異なる様々な機器に電力を容易に供給できる汎用電源として使用しやすくなる。ユーザは、接続する機器の駆動可能電圧を意識する必要もなくなりやすい。
【0007】
上記態様の電源装置において、制御部は、機器が駆動可能電圧に達したことを検知した後、昇圧させた電圧を徐々に降圧させ、出力電流値の変化を検出することによりその機器の駆動可能電圧の下限を検知してもよい。
【0008】
上記態様の電源装置によれば、接続される機器の駆動可能電圧の下限を自動で検知しやすくなる。また、駆動可能電圧の下限を知ることができるため、電圧を昇圧させたことにより検知した駆動可能電圧と、降圧させたことにより検知した駆動可能電圧の下限との範囲内において電圧を調整できれば、接続されている機器を安定的に稼働させやすくなる。
【0009】
上記態様の電源装置において、制御部は、電源装置に関する情報を機器に送信するため、検出された機器の駆動可能電圧と検出されたその機器の駆動可能電圧の下限との範囲内において変圧手段により電源装置の出力電圧を変化させてもよい。
【0010】
上記態様の電源装置によれば、接続される機器の駆動可能電圧の範囲内において電圧を変化させるため機器が稼働した状態のまま機器に情報を送信しやすくなる。また、電圧の変化により情報を送信しているため、情報を送信するための新たな配線や装置等を不要となる。
【0011】
上記態様の電源装置において、二次電池と、二次電池からの電力の出力、または電源の電力を用いて二次電池の充電を可能とする充放電手段と、電源から変圧手段への入力電圧値を測定する電圧計と、を更に備え、制御部は、入力電圧値と所定の電圧値とを比較し、電圧値が所定の電圧値より大きいときには機器の要求電力に対して電源装置の出力電力が不足していると判定し、充放電手段を制御することにより二次電池からの電力の補充を可能とし、入力電圧値が所定の電圧値より小さいときには機器の要求電力に対して電源装置の出力電力が不足していないと判定し、充放電手段を制御することにより電源からの電力を用いて二次電池の充電を可能としてもよい。
【0012】
上記態様の電源装置によれば、二次電池からの出力電力を用いて電源の出力電力を補充しやすくなるため、電源装置は接続されている機器に対して安定的に電力を供給しやすくなる。また、電源から出力電力を用いて二次電池が自動で充電されやすくなるため、ユーザの利便性が高くなりやすい。
【0013】
上記態様の電源装置において、電源装置の出力電圧値を測定する別の電圧計と、を更に備え、制御部は、電圧計における入力電圧値と所定の電圧値とを比較し、入力電圧値が所定の電圧値を上回っている状態から所定の電圧値を下回った際、電流計のその際の出力電流値と別の電圧計のその際の出力電圧値とを参照して電源装置の出力電力を算出してもよい。
【0014】
上記態様の電源装置によれば、実際の使用環境における電力値を電源装置の出力電力の上限目安として用いやすくなるため、より正確な出力電力の上限を取得しやすくなる。
【0015】
上記態様の電源装置において、二次電池の出力電流値を測定する別の電流計と、電源装置の出力電圧値を測定する別の電圧計と、を更に備え、制御部は、充放電手段を制御することにより電源からの電力を用いて二次電池からの出力を可能とした後、別の電流計における出力電流値と所定の電流値とを比較し、その出力電流値が所定の電流値を下回っている状態から所定の電流値を上回った際、電流計のその際の出力電流値と別の電圧計のその際の出力電圧値とを参照して電源装置の出力電力を算出してもよい。
【0016】
上記態様の電源装置によれば、実際の使用環境における電力値を電源装置の出力電力の上限目安として用いやすくなるため、より正確な出力電力の上限を取得しやすくなる。
【0017】
制御部は、算出された出力電力の値を機器に送信するため、算出された出力電力の値を出力電圧を変化させる周期の値に所定の関数を用いて変換し、その周期の値を用いて電源装置の出力電圧を変化させてもよい。
【0018】
上記態様の電源装置によれば、算出された出力電力の値を電圧変化の周期として送信できるため電源装置側ではより容易に送信しやすくなり、機器側では受信した情報をより容易に取得しやすくなる。
【0019】
上記態様の電源装置において、電源は、燃料電池であってもよい。
【0020】
上記態様の電源装置によれば、燃料電池のように出力電力が変動する電源であってもユーザは機器を安心して使用しやすくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電源装置自体が接続される携帯機器の駆動可能電圧を検知しやすくなる。また、外部電源として燃料電池が用いられる場合、接続される携帯機器の安定的な作動を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、実施の形態に係る電源装置100の構成を模式的に示す図である。電源装置100は、燃料電池110、二次電池120、電流計130、充放電手段140、電圧計150、変圧手段160、電流計170、電圧計180および制御部190を備える。電源装置100は、接続される機器200に対して電力を供給する。機器200はノート型パソコン、携帯電話、PDAなどの携帯用機器が考えられるが、電源装置100からの電力を使用可能であればそれ以外の機器であってもよい。
【0023】
燃料電池110は、電源装置100の主電源として電源装置100に接続される機器200に電力を出力する。二次電池120は、電流計130を介して充放電手段140と接続されており、機器200が必要とする電力に対して燃料電池110の出力電力が不足する場合、二次電池120の電力を用いて補充することにより機器200を安定的に稼働させることができる。電流計130は、二次電池120から出力され充放電手段140に入力される電流値を測定する。測定された電流値は制御部190に送信される。
【0024】
充放電手段140は、機器200が必要とする電力に対して燃料電池110の出力電力が不足する場合、制御部190からの指令により放電モードへと切り替わり、二次電池120の電力を用いて補充させる。逆に、機器200が必要とする電力に対して燃料電池110の出力電力が超過する場合、制御部190からの指令により充放電手段140は充電モードへと切り替わり、燃料電池110の電力を用いて二次電池120を充電させる。
【0025】
充放電手段140は放電モードへと切り替わった後、二次電池120の出力電圧を昇圧させて出力する。充電モードへと切り替わった後、充放電手段140は燃料電池110からの出力電圧を降圧させて二次電池120に出力する。
【0026】
次に、機器200の要求電力に対する燃料電池110の出力電力の不足・超過を制御部190がどのように判定しているかについて説明する。図2は、本実施の形態に係る燃料電池110の電流−電力特性TI−Pおよび電流−電圧特性TI−Vを示す図である。T(I−P)1は、燃料電池110が安定稼働している状態の電流−電力特性を示す。T(I−P)2は、起動時など燃料電池110の出力が一時的に低下している状態の電流−電力特性を示す。T(I−P)3は、長期に渡り使用され、出力性能が劣化している状態の燃料電池110の電流−電力特性を示す。T(I−V)1はT(I−P)1に対応し、燃料電池110が安定稼働している状態の電流−電圧特性を示す。同様に、T(I−V)2はT(I−P)2に、T(I−V)3はT(I−P)3に対応する電流−電圧特性を示す。
【0027】
燃料電池110が安定稼働している状態を例に説明する。まず、T(I−P)1上において出力電圧が最大となるPmaxの値が測定される。次に、燃料電池110が安全に稼働できるよう、Pmaxの値よりやや低い出力電力POP1の値が決定される。例えば、Pmaxの8割に当たる値をPOP1としてもよく、実験によって最適な値が求められてもよい。出力電力がPOP1時の出力電流はT(I−P)1からIOP1であることがわかり、出力電圧はT(I−V)1からVOPであることがわかる。
【0028】
燃料電池110に要求される電力がPOP1より大きい場合、燃料電池の出力電流がIOP1より大きくなり(電流−電力特性T(I−P)1参照)、出力電圧はVOPより低くなる(電流−電圧特性T(I−V)1参照)。いいかえれば出力電圧がVOPより低くなると、出力電力はPOP1より大きくなるため、燃料電池110が安定的に稼働できない虞が生じる。そのため、燃料電池110の出力電圧がVOPより低くなった時、機器が要求する電力に対して燃料電池の出力電力が不足していると判定される。逆に燃料電池の出力電圧がVOPより高くなった時、要求される電力に対して燃料電池の出力電力が超過していると判定される。
【0029】
燃料電池110の出力が一時的に低下している状態でも、VOPの値に基づいて出力電力の不足・超過が判定される。要求される電力がPOP2より大きい場合、出力電流はIOP2(電流−電力特性T(I−P)2参照)より大きくなり、出力電圧はVOPより低くなる(電流−電圧特性T(I−V)2参照)。出力電力がVOPより低くなった時、出力電力が不足していると判定され、出力電力がVOPより高くなった時、出力電力が超過していると判定される。燃料電池110の出力性能が劣化している状態であっても、同様にVOPの値に基づいて出力電力の不足・超過が判定される。安定稼働中の燃料電池110の出力電力が基準とされることで、燃料電池110は出力性能を最も発揮できるからである。
【0030】
燃料電池110のVOPに該当する電圧値はあらかじめ取得され、VOPは制御部190に記憶される。電圧計150は、燃料電池110の出力電圧を測定する。制御部190は、電圧計150から送信される電圧値とVOPに該当する電圧値とを比較することにより、機器200の要求電力に対する燃料電池110の出力電力の不足・超過を判定する。
【0031】
図3は、充放電手段140の構成例を示す図である。充放電手段140は、二次電池120(図2において図示せず)に接続される端子10と、コイル12と、コンデンサ14と、放電用スイッチング素子16と、充電用スイッチング素子18と、コンデンサ20と、燃料電池110(図2において図示せず)及び変圧手段160(図2において図示せず)に接続される端子22を備える。
【0032】
放電用スイッチング素子16は、MOSFET(絶縁ゲート型の電界効果トランジスタ)及びコイル12側をカソードとしたダイオードからなる。また、充電用スイッチング素子18は、MOSFET及びコイル12側をアノードとしたダイオードからなる。端子10は、コイル12の一端及びコンデンサ14の一端に接続される。コイル12の他端は、放電用スイッチング素子16の一端及び充電用スイッチング素子18の一端に接続される。
【0033】
コンデンサ14の他端及び放電用スイッチング素子16の他端は二次電池120及び燃料電池110の負極と同電位である。充電用スイッチング素子18の他端はコンデンサ20の一端及び端子22に接続され、コンデンサ20の他端は二次電池120及び燃料電池110の負極と同電位である。
【0034】
放電モード時には、放電用スイッチング素子16を構成するMOSFETがオンで且つ充電用スイッチング素子18を構成するMOSFETがオフの状態で、二次電池120(図2において図示せず)の出力電圧によってコイル12にエネルギーが蓄えられる。その後、放電用スイッチング素子16を構成するMOSFETがオフに切り換えられると共に充電用スイッチング素子18を構成するMOSFETがオンに切り換えられると、コイル12に蓄えられたエネルギーが、充電用スイッチング素子18を構成するMOSFETのソース−ドレイン間及び整流素子としてのダイオードを経て、コンデンサ20によって安定化されたのち端子22に接続される変圧手段160(図2において図示せず)に供給される。この様にして昇圧放電動作が実行される。
【0035】
一方、充電モード時には、充電用スイッチング素子18を構成するMOSFETがオンで且つ放電用スイッチング素子16を構成するMOSFETがオフ状態で、燃料電池110(図2において図示せず)から出力される電力がコイル12を経て二次電池120(図2において図示せず)に供給され、充電が行われる。その後、充電用スイッチング素子18を構成するMOSFETがオフに切り換えられると共に放電用スイッチング素子16を構成するMOSFETがオンに切り換えられると、コンデンサ14並びに、放電用スイッチング素子16を構成するMOSFETのソース−ドレイン間及び整流素子としてのダイオードに電流が流れて、コイル12に蓄えられたエネルギーがキャンセルされる。この様にして降圧充電動作が実行される。
【0036】
図1に戻り電源装置100の説明を続ける。電圧計150は、燃料電池110(放電モード時には燃料電池110及び二次電池120)から出力され変圧手段160に入力される電圧値を測定する。測定された電圧値は制御部190に送信される。
【0037】
変圧手段160は、燃料電池110(放電モード時には燃料電池110及び二次電池120)から入力された電圧を所定の電圧に可変して出力する。本発明の実施の形態では変圧手段160としてDC/DCコンバータを使用している。なお、DC/DCコンバータには電圧の可変の程度、つまり入力された電圧を昇圧または降圧できる範囲に限界がある。制御部190からの指令に応じて変圧手段160は電圧可変の程度を調整する。
【0038】
電流計170は、変圧手段160から出力される電流値を測定する。変圧手段160から出力された電流は機器200へと供給されるため、電流計170は電源装置100の出力電流値を測定することになる。測定された電流値は制御部190に送信される。
【0039】
電圧計180は、変圧手段160から出力される電圧値を測定する。変圧手段160から出力された電圧は機器200へと供給されるため、電圧計180は電源装置100の出力電圧値を測定することになる。測定された電流値は制御部190に送信される。
【0040】
制御部190は、電源装置100を構成する各部材と図示しない配線により接続されている。制御部190は電流計や電圧計から送信された情報を参照し、充放電手段140に対して放電・充電モードの切換指令を送信したり、変圧手段160に対して電圧可変の程度を決定するための指令を送信したりする。また、電源装置100の起動・停止に対応して燃料電池110の起動・停止の制御、二次電池の充電完了を検知して充電モードの終了指令などについても制御を行う。
【0041】
図4は、電源装置におけるの一連の処理過程の概要を示すフローチャートである。最初にユーザが電源装置100の起動スイッチをONにすることにより、電源装置100が起動される(S10)。電源装置100の起動に伴い、制御部190は燃料電池110を起動させる。電源装置100の起動方法は別の方法であってもよく、制御部190は、電源装置100の機器200への接続を検出し、燃料電池110を起動させてもよい。
【0042】
制御部190は変圧手段160を制御することにより燃料電池110から出力された電圧を段階的に昇圧させ、接続されている機器の駆動可能電圧に昇圧させた電圧が適合するかを調査する(S12)。昇圧された電圧が駆動可能電圧の範囲内であり機器への電力供給が可能である場合(S14のY)、制御部190は電力供給を開始させる(S16)。一方、昇圧された電圧が駆動可能電圧の範囲外であり機器への電力供給が不可能である場合(S14のN)、制御部190は電源装置100の稼働を停止させる(S22)。S12における適合電圧の調査およびS14の電力供給の判定の詳細については図5と図6にて後述する。
【0043】
電源装置100が機器への電力供給を開始した後、制御部190は電源装置100の出力電力を監視する(S18)。制御部190は、機器200の要求電力に対して電源装置100の出力電圧が十分であると判定した場合(S20のY)、電源装置100の出力電圧を引き続き監視する。一方、機器200の要求電力に対して電源装置100の出力電圧が不足していると判定した場合(S20のN)、接続されている機器200を安定的に稼働させることができないため制御部190は電源装置を停止させる(S22)。S18における出力電圧の監視およびS20における出力電圧の判定の詳細については図7にて後述する
【0044】
図5は、接続されている機器の駆動可能電圧を調査する際の処理過程を示すフローチャートである。図6は、機器の駆動可能電圧を調査する際の電源装置の出力電圧の推移を示す図である。電源装置100が起動された後、制御部190は変圧手段160に指令を送信し、燃料電池110の出力電圧を所定の電圧値Vに昇圧させる(S24)。制御部190は、電流計170から送信される電流値を所定の範囲と比較する(S26)。
【0045】
ここで所定の範囲について説明する。電源装置100の出力電圧が機器の駆動可能電圧に達していなくても電流計170に微量な電流が流れることがある。所定の範囲の下限に該当する電流値は、電流計170で測定される電流をこうした微量な電流と区別するための電流値である。つまり測定される電流が所定範囲の下限以上であれば、微量な電流の測定値ではないということである。下限に該当する電流値はあらかじめ実験を行うことにより決定できる。
【0046】
所定範囲の上限に該当する電流値は、電源装置100の上限電力と対応して決定される。電源装置100は燃料電池110を電源とし、燃料電池110から出力された電圧を変圧手段160を用いて可変し出力している。そのため、電源装置100の電流−電力特性および電流−電圧特性は図2に示される形状と同様の形状となる。燃料電池110の安定稼働中に電源装置100の出力電力が最大となるときの電流をI、電圧をVとして説明する。
【0047】
接続されている機器200の要求電力が電源装置100の最大出力より大きい場合、電源装置100の出力電流がIより大きくなる。その場合、出力電圧はVより低くなるため電源装置100の出力電力が低下し、機器200を安定的に稼働させることができなくなる。電源装置100の出力電圧がVより低くなるということは、電源装置100の電源である燃料電池110の出力電圧もVOPより低くなっていると考えられる。制御部190はこの状況を検知すると充放電手段140を放電モードに切り換え、二次電池120から電力を補充させる。
【0048】
二次電池120はあくまで燃料電池110を補助するための電源であり、燃料電池110と二次電池120との両電源を持続的に併用することは困難である。つまり、電源装置100の出力電流がIを下回っている状態にあれば、電源装置100は接続されている機器に安定的に電力を供給できる。そのため、制御部190は電流値Iを所定範囲の上限としてあらかじめ記憶し、電流計170の出力電流値を所定の範囲と比較する(S26)。
【0049】
図5に戻り説明を続ける。電流計170の測定値が所定の範囲より小さい場合(S26の右方向)、制御部190は変圧手段160の昇圧可能な上限電圧を調査する。上述したように変圧手段160の電圧可変には限界があるからである。Vの値が上限電圧ではない場合(S28のN)、制御部190は変圧手段160に指令を送信し、燃料電池110から入力される電圧をVに昇圧させる(S24)。再度、制御部190は電流計170の値を所定の範囲と比較する(S26)。電流計170の値が所定の範囲に該当するまでこの処理が繰り返され、電圧はV、V、V、V・・・と段階的に昇圧される。
【0050】
一般に、外部電源に接続され使用される機器の駆動可能電圧の種類はそれ程多くない。そのため、電源装置100の出力電圧を段階的に昇圧して機器200の駆動可能電圧を調査する方が電圧を連続的に昇圧して調査するよりも効率的である。
【0051】
また、本実施の形態に係る二次電池120は、一つの二次電池から構成される場合以外にも複数の二次電池から構成されることも可能である。二次電池120が複数の二次電池から構成される場合、燃料電池110からの電圧供給を停止させた上で複数の二次電池を段階的に直列に接続することにより変圧手段160を用いることなく、電源装置100の電圧を段階的に昇圧させてもよい。機器200は一般的な乾電池を外部電源として使用する場合も多く、機器200の駆動可能電圧は乾電池の電圧1.5Vの倍数に設定されていることが多い。そのため、複数の二次電池のそれぞれの電圧を1.5Vとすることにより機器の駆動可能電圧を調査できる。
【0052】
ある電圧に昇圧させた後、次の電圧へと昇圧させるまでの時間(図6で説明するとVに昇圧させてからVに昇圧させるまでの時間)はできる限り短い方が望ましい。電源装置100は、より短時間で機器200の可能電圧を検知できる。本発明の実施の形態では、上述したように昇圧の段階を乾電池の倍数に設定してもよいし、機器の駆動可能電圧の種類を意識して設定してもよい。前者の場合は3V、6V、9V、12V、15V、18V、21V、24Vの順で段階的に昇圧させる。後者の場合は5V、10V、15V、20V、25Vの順で段階的に昇圧させる。
【0053】
段階的に昇圧した電圧が駆動可能電圧VSTに達すると、所定の範囲に該当する電流が電流計170に流れる。制御部190は昇圧させた電圧が機器の駆動可能電圧に達したことを検知し(S26の左方向)、図6に示されるように昇圧させた電圧を徐々に降圧させる。降圧される電圧がVより低くなると、電流計170で測定される電流値が所定の範囲に該当する状態から所定の範囲より小さい状態へと変化する。制御部190はこの変化を検出し、機器の駆動可能電圧の下限であるVを検知する(S34)。
【0054】
こうした処理を行うことにより、接続されている機器を駆動させるためには電源装置100からの出力電圧がVSTとVとの範囲内であればよいことがわかる。その後、制御部190は機器をより安全に稼働させるため電圧をVSTまで昇圧させる(S36)。
【0055】
一方、電流計170の測定値が所定の範囲より大きい場合(S26の下方向)、制御部190は図1に図示されないモニターを用いて電源装置100の使用継続の意思確認をユーザに問い合わせる。この状況のままで電源装置100の使用を続けると機器200に安定的に電力を供給できない場合があるからである。安定的に電力を供給できないとしてもユーザが使用継続を要求する場合(S32のY)、駆動可能電圧の下限の調査(S34)の後、可能な限り電力供給を継続する(S36)。一方、ユーザが使用継続を要求しない場合(S32のN)、制御部190は電源装置100の停止させる(S30)。
【0056】
図7は、電源装置の出力電力を監視する際の処理過程を示すフローチャートである。制御部190は、二次電池120の出力電流を測定する電流計130の値を所定の値と比較する。
【0057】
ここで所定の値について説明する。まず燃料電池110と同様に、二次電池120の最大出力があらかじめ測定される。図2で示したように燃料電池110では、状態に応じて最大出力が変化する。例えば安定稼働中の最大出力はPmaxであるが、起動時の最大出力はPmaxより低い。一方、二次電池120の最大出力は燃料電池110に比べそれ程変化しない。そのため二次電池120の最大出力はある程度一意的に決定される。
【0058】
二次電池120が安全に稼働できるよう、その最大出力の値よりやや低い出力電圧の値PACCが決定される。例えば、その最大出力の値の8割に当たる値をPACCとしてもよく、実験によって最適な値が求められてもよい。出力電力がPACCである時の出力電流IACCが測定され、IACCが所定の値として用いられる。
【0059】
要求される電力に対して燃料電池110の電力が不足すると、二次電池120からの電力出力が開始される。二次電池120からの電力供給により、VOPを上回っていた燃料電池110の出力電圧はVOPへと戻される。電流計130の測定値が所定の値を上回っていない場合(S38のN)、制御部190は引き続き電流計130の値を監視する。
【0060】
電流計130の値が所定の値を上回ったとき(S38のY)、つまり要求される電力が二次電池が安全に供給できる電力を上回ったとき、制御部190は、電流計170と電圧計180のその際の値を用いて電源装置100の出力電力を算出する(S40)。算出された出力電力は、燃料電池110と二次電池120とが安全に供給できる限界の電力であるため、電源装置100から安全に出力できる電力の上限目安とすることができる。制御部190は、算出された上限目安の値を変圧手段160を用いて機器200に送信する(S42)。
【0061】
なお、変圧手段160が既に昇圧可能な上限電圧に達している場合(S28のY)、電源装置100は、機器を駆動するための電圧を供給できない。制御部190は電源装置を停止させる。
【0062】
図8は、電力の上限目安の値を機器に送信する際の電源装置の出力電圧の推移を示す図である。制御部190は、接続されている機器の駆動可能電圧VSTと機器の駆動可能電圧の下限Vを既に検知している。また、制御部190は、変圧手段160を用いて電源装置100の出力電圧を可変することができる。そのため、制御部190は、VSTとVとの範囲内において電源装置100の出力電圧を周期的に可変することにより機器200に情報を送信できる。
【0063】
図8に示されるt〜t間、t〜t間、t〜t間の間隔は全て同じ値に統一されている。いいかえれば、この間隔が電圧の変圧周期となる。制御部190は電力の上限目安値と変圧周期とを対応させる関数を用いることにより、電力の上限目安値を対応する変圧周期に変換できる。機器200がこの関数の逆関数の情報を有していれば、電源装置100から入力された電圧の変化からその変圧周期を検出した後、逆関数を用いて変圧周期を電源装置100の電力の上限目安値に変換できる。なお、変圧手段160は20msほどで電圧を可変できる。
【0064】
機器200が、機器200内で使用される電力を管理する機能を有していれば、電源装置100から送信された上限目安値を越えないよう使用電力を管理できる。これにより、電源装置100は機器200へ電力を安定的に供給でき、ユーザは機器200を安心して使用できる。
【0065】
ここまでは燃料電池110と二次電池120とが安全に電力を供給できる限界の電力を電源装置100の出力電力の上限目安値としたが、別の方法により求められる値を電力の上限目安値としてもよい。以下に別の方法を説明する。
【0066】
図2では燃料電池110の電流−電力特性および電流−電圧特性を示し、安定稼働中の燃料電池110の出力電力がPOP1となる時の出力電流がIOP、出力電圧がVOPになることを説明した。燃料電池110に要求される電力がPOP1より大きい場合、燃料電池の出力電流がIOPより大きくなる。その場合、出力電圧はVOPより低くなるため燃料電池の出力電力が低下し、燃料電池に接続されている機器を安定的に稼働させることができなくなる。
【0067】
制御部190は、電圧計150に測定される値とVOPとを比較し、測定される電圧がVOPより低くなったときに機器200の要求電力に対して燃料電池の出力電力が不足していると判定し、充放電手段140を放電モードに切り換える。上述したように電源装置100は燃料電池110を電源としているため、電源装置100の電流−電力特性および電流−電圧特性は図2に示される燃料電池110の形状と同様の形状となる。
【0068】
燃料電池110の出力電圧がVOPを上回っている状態からVOPを下回った際の電流計170と電圧計180の値を用いて、制御部190は電源装置100の出力電力を算出する。図7で算出された出力電圧は、燃料電池110と二次電池120とが安全に供給できる限界の電力であり、今回算出された出力電力は、燃料電池110が安全に供給できる限界の電力である。二次電池の出力電力はあくまで補助的な電力であると考えると、今回算出された出力電力を電源装置100から安全に出力できる電力の上限目安とすることができる。
【0069】
電源装置100は接続されている機器200に対して電力の上限目安以外の情報を送信してもよい。例えば、制御部190は、燃料電池の燃料が不足していることをセンサにより検出し、燃料が不足している旨の情報を機器200に送信してもよい。この場合、機器にモニタが設けられている場合には、そのモニタに燃料不足の警告を表示させることでユーザは素早く対応できる。電源装置100が情報を提示するためのモニタやLED等を有していてもよい。また、燃料電池の燃料量以外にも、二次電池を充電する必要があることを示す情報や燃料電池内の異常など、燃料電池に関する情報を送信してもよい。
【0070】
図9は、電源装置に接続される機器の一般的な構成を模式的に示す図である。機器200は、コネクタ210、電圧検査部220、電力制御部230、電力消費部240および二次電池250を備える。コネクタ210は機器200を外部電源と接続するための機能を有する。コネクタ210は電圧検査部220と接続されている。
【0071】
電圧検査部220は、外部電源からコネクタ210を介して入力された電圧が機器200の駆動可能電圧に適合するか否かを検査する。適合する場合、外部電源からの電力を電力制御部230へと出力し、適合しない場合、機器200の故障を防止するため外部電源からの電力を電力制御部230へ出力しない。
【0072】
電力制御部230は、外部電源から入力された電圧を電力消費部240内の各部材に適合した電圧に変換して、それらの各部材に電力を供給する。電力消費部240は機器200内において電力を使用する各部材の総称であり、仮に機器200がノート型パソコンであれば電力消費部240内の各部材としてCPU(Central Processing Unit)やDVDドライブ等が挙げられる。
【0073】
二次電池250は機器200に外部電源が接続されていない場合、電力制御部230に電力を供給する役割を果たす。
【0074】
上述の通り、本発明の実施の形態に係る電源装置100は、出力電圧を変化させることにより電力の上限目安値となる情報を接続されている機器に送信できる。機器200は電圧検査部220を有するため入力された電圧の変化を検出できる。しかし、電圧が所定の周期で可変されていることを検出することはできない。また、逆関数を用いて所定の周期から電力の上限目安値を取得することもできない。
【0075】
機器200がノート型パソコンである場合、電力制御部230の管理はソフトウエアによって行われることが多い。そのため、電圧の変化から所定の周期を検出し、電力の上限目安値を取得するための機能を有するソフトウエアを機器200にインストールすることが可能である。電力制御部230を管理するソフトウエアに新しい機能を追加することで、機器200は電源装置100の電力の上限目安値を取得できる。
【0076】
このようにソフトウェアの更新によって電力制御部230に機能を追加できる場合、新機能を有するデバイスを必要とせず、機器200を使用するユーザの利便性が高まる。また、電力制御部230は二次電池250の電力を有効に使用するため、電力消費部240内の各部材に供給する電力を管理する機能を有することがある。電力制御部230がこのような機能を有する場合、電力の上限目安値を取得できれば接続されている電源装置100の電力をその値に応じて有効に使用できる。
【0077】
電源装置100の電力の上限目安値が機器200の要求電力よりも少ない場合、電力消費部240内の幾つか部材(DVDドライブ等の必然的な使用を要求されない部材)の使用を禁止することが考えられる。このような処理によりユーザは電源装置100の供給電力を安心して使用できる。
【0078】
しかし、電源装置100に接続される全ての機器に新機能を有するソフトウエアをインストールできる訳ではない。例えば、電力制御部の管理がソフトウエアで行われていないためソフトウエアを更新することによって電力の上限目安値を取得できない場合である。このような場合、機器200の要求電力に対して電源装置100の出力電力が十分であれば、ユーザは機器200を問題なく使用できる。
【0079】
機器200の要求電力に対して電源装置100の出力電力が不足する場合、図4のフローチャートで示したように制御部190は電源装置100の稼働を停止させる。この場合、機器200は電源装置100からの電力を使用できず、二次電池250の電力を使用することになる。
【0080】
燃料電池は、アクティブ型燃料電池であってもよい。以下に、燃料電池がアクティブ型燃料電池である場合の電源装置の一例を説明する。特に燃料電池の構成について詳述する。
【0081】
図10は、電源装置100の構成を表した上面模式図である。電源装置100は、アノードにメタノール水溶液あるいは純メタノールを供給することにより発電するDMFC1010と16mol/L以上の高濃度のメタノール水溶液あるいは純メタノールが入ったメタノールタンク1020と、メタノールタンク1020からのメタノールを0.1〜2.0mol/L程度の濃度に希釈し、DMFC1010へ供給するメタノール水溶液(燃料)を貯めておくバッファタンク1030と、電力変換装置や補機類の制御を行う制御部1040と、熱交換器1050と、軸流ファン1060と、筐体1070と、を備えている。制御部1040は、図1に示される制御部190の処理する機能も備える。図示されていないが、電源装置100は図1に示される充放電手段、変圧手段、電流計、電圧計も当然に備えている。
【0082】
バッファタンク1030へは、メタノールタンク1020から定期的に、あるいは、バッファタンク1030内のメタノール水溶液の濃度を監視し、所定の閾値、例えば1.0mol/Lを下回ったことを検出したときに、高濃度のメタノール水溶液または純メタノールが補給される。メタノールタンク1020は、内部に、柔軟性が有って、かつ、耐メタノール(アルコール)性を有する材料で構成されたパック1021が収納されている。柔軟性かつ耐メタノール性を有するパック1021の材料としては、内側にポリエチレンまたはテフロン(登録商標)、外側に補強材としてナイロンなどの合成繊維を配した2層構造の材料が適している。メタノールタンク1020の壁面1022(平面1022a、側面1022b、背面1022c)は筐体1070の一部を構成しており、背面1022cに設けられた空気口1074は、メタノールタンク1020中のメタノールが消費され、内部のパック1021の容積が小さくなったときに、メタノールタンク1020の内部であってパック1021外の部分が電源装置100外との差圧が生じないようにすると共に、メタノールタンク1020を電源装置100に着脱するときの滑り止めとしても機能するものである。パック1021の底面には、メタノール取出口1025が設けられており、このメタノール取出口1025とジョイント1026とが取出配管1027によって接続されている。取出配管1027はパック1021より肉厚の透明配管となっており、材料としては取出配管1027はシリコンゴム、ジョイント1026はポリプロピレンで作製するのが適している。
【0083】
バッファタンク1030の上部の筐体1070には空気口1073が設けられており、バッファタンク1030は、メタノールタンク1020からのメタノールを所定の濃度(本実施の形態では1.2±0.3mol/L程度)に希釈する希釈用タンクとして用いると共に、熱交換器1050にて充分に冷却されて流入した空気、生成水、メタノール水溶液、二酸化炭素などの気液分離手段として用いられる。即ち、バッファタンク1030にて気相の空気や二酸化炭素が空気口1073から排出される。空気口1073には、図示しないフィルタが設けられており、蟻酸やホルムアルデヒドなどの副生成物は、空気口1073から空気や二酸化炭素が排出される際にフィルタに吸着される。
【0084】
DMFC1010のカソードへはエアポンプ1080から空気(酸化剤)が供給され、アノードへはバッファタンク1030から第1液体ポンプ1083を介してメタノール水溶液が供給される。1081はエアポンプ1080の空気取込口であり、本電源装置100の中央部に設けられている。エアポンプ1080の空気取込口1081から取り込まれた空気は、空気吐出口1082からDMFC1010のカソード入口1012に送り込まれる。一方、第1液体ポンプ1083は、バッファタンク1030から1.2mol/L程度の濃度に希釈されたメタノール水溶液を液体取込口1084から取込み、液体吐出口1085からDMFC1010のアノード入口1014に送り出す構成となっている。また、第2液体ポンプ1086は、定期的あるいはバッファタンク1030内のメタノール濃度が所定の閾値濃度を下回ったときに、高濃度のメタノール水溶液あるいは純メタノールを液体取込口1087を介してメタノールタンク1020から取り込み、液体吐出口1088を介してバッファタンク1030へ供給する。
【0085】
DMFC1010のカソードから排出される空気と生成水はカソード出口1016から排出され、DMFC1010のアノードから排出されるメタノール水溶液と二酸化炭素はアノード出口1018から排出される。カソード出口1016及びアノード出口1018から排出された排出物は、熱交換器1050に導入され、合流してバッファタンク1030に入る。空気取込口1081及び熱交換器1050へは、DMFC1010の作動温度(60±3℃)より5〜15℃程度低い温度の空気が供給される。従って、DMFC1010から排出された70℃程度の空気、生成水、メタノール水溶液、二酸化炭素などは、熱交換器1050にて充分に凝縮されるので、外部から水分を補給する必要性がなくなり、メタノールが外部へ放出されて消費量が増加してしまうことを防止することができる。
【0086】
DMFC1010が発電する際の反応は発熱反応であるため、DMFC1010へ空気とメタノール水溶液を供給することにより、DMFC1010の温度が上昇する。そこで、DMFC1010には図示しないサーミスタあるいはリミッタを取り付けて、DMFC1010の温度が作動温度(60±3℃)まで−5℃程度(本実施例の場合55℃)のところまで近づいたときから軸流ファン1060の運転を開始する。筐体1070の、軸流ファン1060と対向する位置に空気口1071が設けられており、DMFC1010を回り込む位置に空気口1072が設けられているので、軸流ファン1060の運転を開始すると、DMFC1010の周囲を空気が流通し、DMFC1010は空冷される。これにより、DMFC1010の温度を60±3℃に設定することができる。なお、1075は空気口である。
【0087】
制御部1040は、図11に示すように燃料電池部1090と切り離せるよう(分離可能)に構成されている。1041は燃料電池部1090と制御部1040とを電気的に接続する通信部である。通信部1041は水蒸気などの出入のないように、燃料電池部1090の中で密閉された空間となっている。また、通信部1041は、コネクタ1042を介して制御部1040と通信および電力の授受が可能となっており、コネクタ1042は制御部1040側の挿入部1043に挿し込むようになっている。制御部1040は、本発明の電源装置100が電力を供給する対象によって、交換することが可能であり、本実施の形態の場合、図12に示すように、ノート型PC1500に電力を供給するためにノート型PC1500の底面を制御部1040上に載せ、電源ケーブル(図示せず)をノート型PC1500の電源ケーブル挿入部に挿し込むことで、ノート型PC1500に電力を供給できるようになっている。また、メタノールタンク1020には残量表示窓1024が設けられている。
【0088】
また、図13に示すように、ノート型PC1500が制御部1040よりも大きい場合(特に、Lの寸法が大きい場合)やノート型PC1500の電源ケーブル挿入部がノート型PC1500の側面ではなく背面に設けられているような場合、ノート型PC1500を制御部1040上に載せたときに、ノート型PC1500の底部に隙間ができて不安定な設置となるので、スライド式の支持部1045を手前に引出し、ノート型PC1500を支持させる。1047は電源装置100の電源スイッチとなっており、電源装置100がノート型PC1500などの電力供給対象へ電力を供給するときには、まずこの電源スイッチ1047を押して電源装置100を立ち上げる。また、1028はメタノールタンク1020をはずすときに、メタノールタンク1020と電源装置100とのロック状態を解除するロック解除ボタン1028となっている。
【0089】
このように燃料電池部1090と制御部1040とを分離可能、あるいは、制御部1040を電力供給対象に合わせて交換可能に構成することにより、発電を行う燃料電池部1090を共通化して、様々なアプリケーションに対応させることが可能となる。特に、本発明の電源装置100は、電源ケーブル1044を介して、ノート型PC1500などの電力供給対象へ電力を供給できるだけではなく、制御部1040に設けられた二次電池挿入部1046に二次電池を挿入することにより、二次電池の充電器としても利用することができる。
【0090】
二次電池充電用端子1048は、電源装置100にACアダプタを接続するための端子である。上述したように燃料電池が稼働し電力に余裕がある場合、電源装置100内の二次電池は燃料電池の電力を用いて充電されるが、燃料電池が起動していない場合、二次電池を充電することができない。二次電池充電用端子1048にACアダプタを接続することにより、燃料電池の稼働に関係なく二次電池を充電できるため電源装置100はより安定的に電力を供給できる。
【0091】
また、電源装置100の起動時、制御部1040は二次電池の電力を用いて燃料電池を起動させる。そのため二次電池の電力が不足していると電源装置100を起動できないことがある。このような場合、二次電池充電用端子1048にACアダプタを接続することにより、制御部に直接電力を供給することにより電源装置100を起動させてもよい。
【0092】
電源ケーブル1044は電力供給対象である機器へ接続される。こうした機器はACアダプタなどの外部電源が接続されるための外部電源用の入力端子を備える。電源ケーブル1044の先端には外部電源用入力端子の形状に適合する出力端子が設けられている。二次電池充電用端子1048もACアダプタを接続される端子であるため、電源ケーブル1044の出力端子を二次電池充電用端子1048に差し込むことが可能である。このような誤接続を防止するため電源ケーブル1044の長さを調整し、電源ケーブル1044の出力端子を二次電池充電用端子1048に差し込めないようにすることが望ましい。
【0093】
燃料電池がアクティブ型燃料電池である場合の電源装置の別の例についてに説明する。特に燃料電池の構成について詳述する。
【0094】
図14は電源装置100の斜視図、図15は電源装置100の構成図を示している。電源装置100は、液体燃料としてメタノールを用い、このメタノールと酸化剤としての空気とを燃料電池において電気化学反応させることにより発電を行う、所謂、ダイレクトメタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)システムであり、携帯可能なノート型パソコンの電源として使用できるように全体寸法はコンパクトに構成されている。
【0095】
電源装置100は、図14に示すようなケース2010内の長手方向の一側に燃料電池(スタック)2020が搭載され、その反対側には電源装置100から着脱可能に接続された燃料カートリッジ2030が、略中央部に補機ユニット2040が設けられている。また、ノート型パソコンを載せるクレイドル2050内には制御部(図示せず)と二次電池(図示せず)とが設けられている。この制御部は、図1に示される制御部190の処理する機能も備える。同様に図示されていないが、電源装置100は図1に示される充放電手段、変圧手段、電流計、電圧計も当然に備えている。
【0096】
燃料カートリッジ2030に隣接して燃料サブタンク(第2の燃料貯蔵部)2080とバッファタンク(第3の燃料貯蔵部)2090とが設けられており、燃料カートリッジ2030内の燃料バッグ(第1の燃料貯蔵部)2032に貯蔵される純メタノールまたは高濃度のメタノール水溶液は、燃料サブタンク2080を介してバッファタンク2090に導入され、バッファタンク2090にて所定の濃度(1mol/L)に希釈される。即ち、燃料サブタンク2080は、燃料バッグ2032内の燃料残量が0となったことを検出すると共に、燃料カートリッジ2030を着脱するときに、燃料供給路2034、2082に混入してしまう空気(気体成分)を脱泡する機能を有し、バッファタンク2090は、燃料の濃度を調整すると共に、燃料電池2020から排出される気体成分を本電源装置100の外部へ排出する(詳細は後述する)気液分離器の機能を有する。
【0097】
補機ユニット2040は、燃料バッグ2032から燃料サブタンク2080へ燃料を供給するメタノールポンプ(第1の液体ポンプ)2041と、燃料サブタンク2080からバッファタンク2090へ燃料を供給するメタノールポンプ(第2の液体ポンプ)2042と、バッファタンク2090から燃料電池2020へ燃料を供給するメタノールポンプ(第3の液体ポンプ)2043と、燃料電池2020へ酸素(本実施の形態では空気)を供給するエアポンプ2044と、を含み、これらは燃料貯蔵部である燃料カートリッジ2030、燃料サブタンク2080およびバッファタンク2090と燃料電池2020との間に搭載されている。これは、燃料供給路2034、2082、2084、2091、2092をできる限り短くし、省スペース化を図ると共に、間欠的に供給される高濃度メタノールを速やかに燃料電池2020へ供給するためである。
【0098】
さらに補機ユニット2040は、燃料電池2020のアノード2021側から排出される液体を主成分とするアノード排出物(排メタノール+二酸化炭素)とカソード2022側から排出される気体を主成分とするカソード排出物(排空気+生成水)とを混合し、気体成分と液体成分とに分離する気液分離器2045と、気液分離器2045にて分離された気体成分と液体成分とを異なる配管(2046b、2046a)に流通させ、電源装置100内部の空気を排出する冷却ファン2047により燃料電池2020の排出物を冷却する冷却器2046と、を含み、これらは燃料電池2020とバッファタンク2090との間に搭載されている。このように、気液分離機能を有するバッファタンク2090(冷却器2046)の前段において気液分離器2045を搭載することにより、液体と気体とが混在するアノード排出物とカソード排出物とを合流させて、液体成分と気体成分とを、それぞれ液体成分流通路2046aと気体成分流通路2046bとへ流通させて冷却することができ、気液が混在する流体を冷却するより冷却器2046での熱交換効率を向上させることができる。
【0099】
バッファタンク2090にて回収された燃料電池2020の排出物のうち気体成分は、気体成分排出路2093を通って、電源装置100外部へ排出される。このとき、気体成分排出路2093は、液体成分を外部へ排出しないように、できる限り長く配置し、さらに出口に排気フィルタ2094を設ける方が良い。また、バッファタンク2090から排出される水蒸気量よりも燃料電池2020にて生成される生成水の量が多く、電源装置100内を循環する燃料(メタノール水溶液)がバッファタンク2090からオーバーフローする可能性を考慮して、バッファタンク2090と燃料サブタンク2080とを、その上部において配管(タンク連通路2095)接続し、バッファタンク2090からオーバーフローするときには、燃料サブタンク2080がバッファタンク2090のバッファの役割を果たすと共に、燃料カートリッジ2030から燃料サブタンク2080へ燃料が供給され、一時的に燃料サブタンク2080内の圧力が上がったときには、バッファタンク2090が燃料サブタンク2080の圧力を逃がす役割を果たす。燃料サブタンク2080とバッファタンク2090との間には、逆止弁2096が設けられ、燃料供給路2091から燃料供給路2084へ、即ち、バッファタンク2090から燃料サブタンク2080へは、タンク連通路2095を介してオーバーフローしない限り、希釈されたメタノール水溶液が逆流しないように構成されている。また、燃料バッグ2032と燃料サブタンク2080との間には、カートリッジジョイント2036、2086が設けられ、このカートリッジジョイント2036、2086を介して、燃料供給路2034と燃料供給路2082とが接続される。この部分は、カートリッジ着脱するときの燃料の漏れを回収するための安全機構やジョイントのロック機構など本体側に持たせるため、燃料カートリッジ2030側のカートリッジジョイント2036がオス、燃料サブタンク2080側のカートリッジジョイント2086がメスとなっている。メスの方が複雑な機構を組み込みやすく、燃料カートリッジ2030側を簡単な構造とすることにより、サイズおよびコストの面を考慮すると有利となる。
【0100】
さらに、燃料カートリッジ2030の着脱状態を検知するため、燃料カートリッジ2030と接触する電源装置100の本体部分にはリミッタLTが設けられている。これにより、燃料カートリッジ2030が電源装置100に正常な状態で嵌め込まれているか検知し、使用中にカートリッジジョイント2036、2086部から燃料漏れがないようにすることができる。燃料カートリッジ2030の着脱を検知する手段は、リミッタLTに限らず、燃料カートリッジ2030の所定の位置にICチップなどを埋め込み、ICチップの位置を検出すると共に、燃料カートリッジ2030の情報、例えば、容量、濃度、燃料の種類、シリアルナンバーなどの情報を電源装置100の制御部との間で授受できるようにしても良い。
【0101】
燃料カートリッジ2030の燃料供給路2034は、燃料バッグ2032の底部にその導入口を有し、燃料カートリッジ2030内壁の辺に沿って上昇するように配設されてからカートリッジジョイント2036に接続される。また、燃料カートリッジ上部(上辺の一部)には、燃料供給路2034が目視可能な燃料確認窓2038が開設されている。この燃料確認窓2038から燃料供給路2034内部を確認するため、燃料供給路2034はテフロン(登録商標)チューブのような透明な素材を用いることが望ましい。燃料バッグ2032を容積変化可能な容器とし、内部に予め燃料と共に少量の気体(空気)を封入しておくことにより、燃料バッグ2032内に貯蔵されていた燃料が残り少なくなったときに、燃料確認窓2038から液相と気相が境界を目視確認することができる。燃料には予め色をつけておくと、さらに確認しやすくなる。
【0102】
以上の燃料の流れをまとめると、燃料バッグ2032内の高濃度のメタノール(あるいは純メタノール)は燃料供給路2034を流通して電源装置100の本体へ供給される。燃料カートリッジ2030と電源装置100本体とは、カートリッジジョイント2036、2086によって接続されており、燃料バッグ2032内の高濃度メタノールは、カートリッジジョイント2086から燃料サブタンク2080に繋がる燃料供給路2082に設けられているメタノールポンプ2041の吸引力によって、燃料サブタンク2080に供給される。燃料カートリッジ2030を着脱するときに、カートリッジジョイント2036、2086部から燃料供給路2034、2082に気体が混入してしまった場合には、この燃料サブタンク2080にて脱泡できるため、燃料サブタンク2080からバッファタンク2090側へは、このような気泡は混入しない構成となっている。
【0103】
なお、2023は、エアポンプ2044から供給される空気をエアフィルタ2024に送るための酸化剤供給路である。2024は、空気中の有機物を触媒燃焼により除去する、あるいは、カチオンを吸着するためのエアフィルタである。2025は、燃料電池2020のアノード2021側から排出された排メタノールと二酸化炭素とを気液分離器2045へ排出するためのアノード排出路である。2026は、燃料電池2020のカソード2022側から排出された排空気と生成水とを気液分離器2045に排出するためのカソード排出路である。2097は、バッファタンク2090から供給されるメタノール水溶液中に混入した不純物(コンタミやカチオンなど)を除去(吸着)するための燃料フィルタである。
【0104】
燃料サブタンク2080には、図16に示すように、タンク高さaの1/2以上の高さbの位置に燃料切れを検知する液面センサ2081が設けられており、燃料サブタンク2080内の燃料の水位が液面センサ2081以下になったことを検知すると、メタノールポンプ2041が駆動し、燃料バッグ2032から高濃度の燃料を燃料サブタンク2080に追加する構成となっている。所定時間メタノールポンプ2041が駆動しても燃料サブタンク2080の燃料の水位が回復しない場合は、ユーザに燃料切れを示す表示(アラーム)をするようになっている。ユーザに燃料切れを示す表示(アラーム)を発報後、燃料カートリッジ2030の交換用に設定した交換時間を経過しても、燃料カートリッジ2030の燃料水位が回復しない場合は、システムが退避行動をとるようになっている。この液面センサ2081は、ユーザが燃料切れのアラームに気づいてから、燃料カートリッジ2030を交換可能に必要な時間の運転を可能にする量の燃料(本実施の形態では、交換時間:約5分間、交換時間の運転可能にする燃料量:約5ccと設定)を保持できる位置に設ける必要があり、本実施の形態では、タンク高さ(容器中に燃料を収容できる高さ)の1/2以上の位置に液面センサを設置する。燃料サブタンク2080内の高濃度メタノールは、燃料供給路2084に設けられたメタノールポンプ2042の吸引力によって、バッファタンク2090へ供給される。燃料供給路2084は逆止弁2096を介して燃料供給路2091と接続されており、逆止弁2096からバッファタンク2090側の希釈されたメタノール水溶液は、定常的には燃料サブタンク2080へ戻らない構成となっている。
【0105】
また、燃料サブタンク2080には、タンク連通路2095と連通するガス吸排気口2101が容器天面に設けられており、容器内のガスが自由に出入り可能な構造となっている。この構造により、容器内の燃料の液面が変動しても、容器内の圧力が加圧または負圧状態にならないため、燃料サブタンク2080の安全性が高められる他、液体燃料が燃料供給路2082に逆流したり、所定のタイミング以外で液体燃料が燃料供給路2084に流入するなどの動作異常を抑制することができる。なお、2102は、燃料供給路82の端部に当たる燃料注入口である。2104は、燃料供給路84の端部に当たる燃料排出口である。
【0106】
図15に示すように電源装置100は複数のセンサを有する。TSは燃料電池の温度異常を検出するための温度センサである。FCVは燃料電池の電圧異常を検出するための電圧検出手段である。LS1は燃料サブタンク2080の液面の位置を検出するための液面センサである。LS2はバッファタンク2090の液面の位置を検出するための液面センサである。LTは燃料カートリッジ2030が電源装置100に正常な状態で嵌め込まれているか検出するためのリミッタである。
【0107】
上述したように、電源装置100は出力する電圧を変化させることで接続されている機器に情報を送信できる。これらのセンサにより取得した燃料電池の情報を電源装置100は機器に送信してもよい。機器にモニタが設けられている場合には、そのモニタに燃料電池の状況を表示させることでユーザは燃料電池の異常に素早く対応できる。
【0108】
燃料電池は、パッシブ型燃料電池であってもよい。以下に、燃料電池がパッシブ型燃料電池である場合の電源装置の一例を説明する。
【0109】
図17は本発明の電源装置100の内部構成を示す上面図であり、図18は図17におけるA−A線断面図である。以下に本発明の電源装置100について、図18を用いて詳細に説明する。電源装置100は、上部筐体3012aと下部筐体3012bとからなる筐体3012の内部に、大きく分けて制御部3014、蓄電部3016、発電部3018が配置される。筐体3012の内部には、図示しないが図1に示される電流計、電圧計も当然に備えている。
【0110】
電源装置100の制御部3014は、発電部3018によって発電された電力を、蓄電部3016に蓄電するか、図示しない外部の負荷へ直接供給するかを選択するといった電源装置100全体の運転制御を行う。制御部3014は、図1に示される制御部190の処理する機能も備える。
【0111】
電源装置100の蓄電部3016は、充電と放電とが可能な二次電池から構成されており、本実施の形態ではリチウムイオン電池(以下、「LIB」(Litium Ion Battery)と記載する)3020を用いる。
【0112】
電源装置100の発電部3018は、燃料電池3022から構成されており、図示しないアノードにメタノール水溶液、或いは、純メタノール(以下、「メタノール燃料」と記載する)が供給される直接メタノール供給形燃料電池(以下、「DMFC」(Direct Methanol Fuel Cell)と記載する)である。
【0113】
(1)内部の構成
制御部3014の制御基板3024、LIB3020、及び、燃料電池3022は、これらを保持するホルダ3026によって位置を固定されており、ホルダ3026が上部筐体3012aに固定されることにより、制御基板3024、LIB3020、及び、燃料電池3022の各部品は筐体3012内部に固定される。各部品は、電源装置100が安定的に配置されるときに、制御基板3024、及び、LIB3020がホルダ3026の上側、燃料電池3022がホルダ3026の下側となるように配置される。ここで、安定的に配置(安定配置)とは、図18のように脚が有れば、水平、或いは、略水平(±10°)な台の上に電源装置100を置くときに、この脚が台に接地するように電源装置100を置く状態をいい、脚がない場合であれば、振動を受けたときに転びにくい比較的面積の広い面であって、ボタンや表示装置のようなユーザーインターフェイスが無い面を底面として台に接地するように置く状態とする。
【0114】
制御基板3024を電源装置100の上側に配置するのは、ユーザーインターフェイスが上部に有る方が電源装置100の使用者にとって使いやすく、制御基板3024はユーザーインターフェイスに近いところに配置した方が配線スペースを小さくすることができるためである。また、燃料電池3022は、できるだけ電極面積が大きい方が発電能力を高くすることができるので望ましい。燃料電池3022は基本的には一定の電力を発電するように運転されるが、負荷から大きな電力を要求されたときにも対応可能な上、負荷から要求される電力量が燃料電池3022の発電能力と比べて小さいときも安定して発電するので、過負荷による燃料電池3022の劣化を防止することができる。したがって、筐体3012内部でできるだけ電極面積が大きく取れる位置に、燃料電池3022を配置することが好ましい。そこで、電源装置100では、筐体3012の上側に制御基板3024を配置したので、下側に燃料電池3022を配置している。
【0115】
図19は、燃料電池3022の具体的な構成を示す(a)上面図、(b)右側面図、(c)左側面図、及び、(d)B−B線断面図である。電源装置100に用いられる燃料電池3022は、平面型モジュールと呼ばれる、一枚の電解質膜3028に複数組の電極が配されて直列に接続される燃料電池モジュール3030が用いられている。燃料電池3022のアノード3032は、液体のメタノール燃料が供給され、生成物として二酸化炭素(気体)が発生するので、安定配置されたときに燃料の供給と生成物の排出とが重力を利用して円滑に行われるように、電解質膜3028の上面に配置される。一方、カソード3034は、酸化剤として空気が供給され、生成物として水が発生する。このとき、メタノール1分子に対して、1.5倍の酸素分子が必要となるので、カソード3034側はアノード3032側よりも筐体3012b、或いは、ホルダ3026との隙間を大きく、具体的には、10d≧d>dの範囲に設定すると良い。
【0116】
燃料電池3022を運転する(発電させる)か否か、具体的には燃料電池3022を負荷に接続するか否かの直接的な運転指令は、燃料電池制御部3036によって行われる。燃料電池制御部3036も配線スペースを考慮して、電源装置100の制御部3014の近傍、実施例の燃料電池3022の場合には制御部3014の真下であって、燃料電池モジュール3030の上部に配置している。また、燃料電池モジュール3030の上部であって燃料電池制御部3036のない空間には、燃料タンク3038を配置し、空間の有効活用を行うと共に、燃料電池制御部3036、及び、燃料タンク3038によって燃料電池モジュール3030から制御基板3024やLIB3020への熱の伝導を遮蔽している。更に、燃料電池3022とホルダ3026とはdの隙間を設け、ホルダ3026と制御基板3024との間にも空間を配し、LIB3020は熱が伝わりにくい燃料タンク3038の上に配置され、ホルダ3026は配線のためのスペースを除いての略全周に渡って上部筐体3012aに固定されているので、ホルダ3026の上側と下側とは熱的に分離された構成をされている。
【0117】
図17、及び、図19からも明らかなように、電源装置100、及び、燃料電池3022は、X軸に対して略対称となる配置となるのに対し、Y軸に対しては非対称な内部構成としている。これは長手方向について非対称な配置とした方が、筐体3012内部で温度差がつき易く、その温度勾配によって対流を起こして下部筐体3012bに設けられた通風孔3166から空気が出入りし易いようにするためである。
【0118】
(2)外部の構成
次に、以上のような内部構成を有する電源装置100の外部構成について説明する。
図20は、電源装置100の外観を示す(a)上面図、(b)右側面図、及び、(c)左側面図である。電源装置100は、一側面に外部負荷へ電力を供給する給電コネクタ3150と、他側面に商用電源から電力の供給を受ける受電コネクタ3152とを備えている。3154はチェックボタンであり、チェックボタン3154を押したときに、表示装置(LED)3156が点灯すれば、電源装置100が外部負荷に対し給電可能であることを示しており、LED3156が点滅したとき、或いは、点灯しないときには、LIB3020の残量が少なく、充電した方がよい。更には外部負荷に対し給電不可能であることを示し、チェックボタン3154を押すことにより、電源装置100の状態を確認することができる。
【0119】
右側面のスライド式スイッチは燃料電池モジュール3030と燃料電池制御部3036との間に介挿される主電源スイッチ3158であり、燃料電池モジュール3030を負荷に電気的に接続するスイッチである。また、プッシュ式スイッチは燃料電池3022を起動させる起動スイッチ3160であり、起動スイッチ3160を押すことにより、燃料電池3022は発電を開始し、LED3162が点灯する。即ち、起動スイッチ3160を押したときに、LED3162が点灯すれば、燃料電池3022は発電可能な状態で、LIB3020が所定の電圧を下回っているときは充電を行う状態を示しており、LED3162が点灯しないときには、燃料電池3022が燃料欠状態であり、燃料タンク3038へメタノール燃料を補充する必要があることを示している。
【0120】
上記のようにLED3162が点灯しないときには、メタノール燃料を補充する必要があり、メタノール燃料を補充するために、左側面には燃料補給孔3164が設けられている。この燃料補給孔3164は内部の燃料タンク3038に連通しており、注射器のような燃料補給手段により燃料補給孔3164を介して燃料タンク3038へメタノール燃料を供給することができる。また、上側面、及び、下側面は図示しないが、下部筺体3012bの四面には通風孔3166が設けられており、通風孔3166を通って電源装置100の外部から空気が流入すると共に、内部から二酸化炭素や水が流出する。3168は下部筺体3012bの底面に設けられた脚であり、机のような台の上に電源装置100を安定配置すると、下部筺体3012bの底面と机との間に空間ができる。その空間を空気が流通することにより、燃料電池3022からの熱を奪うことができる構成とされている。なお、3201は照度センサである。3202はタッチパネルである。3204はディスプレイである。
【0121】
(3)制御回路
次に、上記動作を実現する回路構成を説明する。図21は本実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。SW1は主電源スイッチ3158と連動し、燃料電池モジュール3030とDC/DCコンバータ3170とを接続するスイッチ機構であり、DC/DCコンバータ3170は起動スイッチ3160が押されることにより動作を開始する。スイッチ機構SW1が閉じ、DC/DCコンバータ3170を含む燃料電池制御部3036と燃料電池モジュール3030とが電気的に接続されると、燃料電池制御部3036は、燃料電池モジュール3030の総電圧VFCを検出し、VFCの値からメタノール燃料が充填されているか、燃料欠状態かを判断する。即ち、燃料欠状態となるとVFCは低下するので、下限閾値予め設定しておき、検出したVFCが下限閾値を上回っている場合、起動スイッチ3160が押されたときにLED3162は点灯し、検出したVFCが下限閾値を下回っている場合には、起動スイッチ3160が押されたときにLED3162は点灯しない。
【0122】
燃料電池モジュール3030は、スイッチ機構SW1、DC/DCコンバータ3170、及び、整流素子(ダイオード)3172を通り、本発明における充電制御手段としての充放電回路3174を介してLIB3020に接続されると共に、DC/DCコンバータ3176を介して外部負荷に接続される。DC/DCコンバータ3176は、制御部3014からの指令に基づいて電圧を可変できる。充放電回路3174は、燃料電池3022により発電された電力を、LIB3020の電圧Vが設定電圧V1より低く、且つ、外部負荷が接続されるときは外部負荷へ供給し、LIB3020の電圧Vが設定電圧V1より低く、且つ、外部負荷が接続されていないときはLIB3020を充電するためにLIB3020へ供給する。また、充放電回路3174は、LIB3020を充電して電圧Vが上限電圧V2より高くなったときと、外部負荷が接続された場合にLIB3020の電圧Vが設定電圧V1以上であったときとは、燃料電池3022を給電可能な状態ではあるが、燃料電池3022からLIB3020、又は、外部負荷へ電力は供給しない待機状態とする。
【0123】
電圧Vは、チェックボタン3154、及び、LED3156とも連携しており、チェックボタン3154が押されたときに、電圧VがV1以上であればLED3156は点灯し、電圧VがV1より低く、下限電圧V3以上であればLED3156は点滅し、電圧VがV3より低いとLED3156は点灯しない。また、本実施の形態は、商用電源からLIB3020への充電も可能なように受電コネクタ3152を備えており、携帯電話充電用のACアダプタ(AC/DCコンバータ)付ケーブルを接続することもできる。電圧Vの値によって燃料電池3022からの給電を適宜行うように、主電源スイッチ3158(スイッチ機構SW1)は常に入っている方が使用者の利便性は高いが、給電可能な状態(負荷に接続された状態)での発電のための反応をすすめない状態が長期間にわたって続くのは電解質膜の劣化の要因となるので、LIB3020が十分に充電されているときには主電源スイッチ3158を切る(SW1:開)ことが望ましい。更に、通風孔3166(空気開口部)も閉じることが望ましい。
【0124】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えたり、実施形態を組み合わせたりすることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施の形態に係る電源装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】燃料電池の電流−電力特性および電流−電圧特性を示す図である。
【図3】充放電手段の構成例を示す図である。
【図4】電源装置におけるの一連の処理過程の概要を示すフローチャートである。
【図5】接続されている機器の駆動可能電圧を調査する際の処理過程を示すフローチャートである。
【図6】機器の駆動可能電圧を調査する際の電源装置の出力電圧の推移を示す図である。
【図7】電源装置の出力電力を監視する際の処理過程を示すフローチャートである。
【図8】電力の上限目安の値を機器に送信する際の電源装置の出力電圧の推移を示す図である。
【図9】電源装置に接続される機器の一般的な構成を模式的に示す図である。
【図10】燃料電池がアクティブ型燃料電池である場合の電源装置の構成を模式的に示した構成図である。
【図11】電源装置を燃料電池部と制御部とに分離した構成を模式的に示した構成図である。
【図12】電源装置をノート型パーソナルコンピュータに取り付けた状態の全面斜視図である。
【図13】電源装置のスライド式支持部を引出した状態の全面斜視図である。
【図14】燃料電池がアクティブ型燃料電池である場合の電源装置の斜視図である。
【図15】電源装置の構成を模式的に示すシステム構成図である。
【図16】電源装置のサブタンクの構成を詳細に示す構成図である。
【図17】燃料電池がパッシブ型燃料電池である場合の電源装置の内部構成を示す上面図である
【図18】図17のA−A線断面図である。
【図19】図17の電源装置の構成を示す(a)上面図、(b)右側面図、(c)左側面図、及び(d)B−B線断面図である。
【図20】図17の電源装置の外観を示す(a)上面図、(b)右側面図、及び、(c)左側面図である。
【図21】図17の電源システムの回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
10 端子、 12 コイル、 14 コンデンサ、 16 放電用スイッチング素子、 18 充電用スイッチング素子、 20 コンデンサ、 22 端子、 100 電源装置、 110 燃料電池、 120 二次電池、 130 電流計、 140 充放電手段、 150 電圧計、 160 変圧手段、 170 電流計、 180 電圧計、 190 制御部、 200 機器、 210 コネクタ、 220 電圧検査部、 230 電力制御部、 240 電力消費部、 250 二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続されている機器に電力を供給する電源装置であって、
電源と、
前記電源から入力された電圧を所定の電圧に可変して前記機器へと出力する変圧手段と、
前記電源装置の出力電流値を測定する電流計と、
前記変圧手段による電圧の可変を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電源から出力される電圧を段階的に昇圧させ、前記出力電流値の変化を検出することで、前記変圧手段により昇圧された前記電源装置の出力電圧が前記機器の駆動可能電圧に達したことを検知することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記機器が駆動可能電圧に達したことを検知した後、昇圧させた電圧を徐々に降圧させ、前記出力電流値の変化を検出することによりその機器の駆動可能電圧の下限を検知すること特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電源装置に関する情報を前記機器に送信するため、検出された前記機器の駆動可能電圧と検出されたその機器の駆動可能電圧の下限との範囲内において前記変圧手段により前記電源装置の出力電圧を変化させることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
二次電池と、
前記二次電池からの電力の出力、または前記電源の電力を用いて前記二次電池の充電を可能とする充放電手段と、
前記電源から前記変圧手段への入力電圧値を測定する電圧計と、
を更に備え、
前記制御部は、前記入力電圧値と所定の電圧値とを比較し、
入力電圧値が所定の電圧値より大きいときには前記機器の要求電力に対して前記電源装置の出力電力が不足していると判定し、前記充放電手段を制御することにより前記二次電池からの電力の補充を可能とし、
入力電圧値が所定の電圧値より小さいときには前記機器の要求電力に対して前記電源装置の出力電力が不足していないと判定し、前記充放電手段を制御することにより前記電源からの電力を用いて前記二次電池の充電を可能とすることを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源装置の出力電圧値を測定する別の電圧計と、
を更に備え、
前記制御部は、前記電圧計における入力電圧値と所定の電圧値とを比較し、入力電圧値が所定の電圧値を上回っている状態から所定の電圧値を下回った際、前記電流計のその際の出力電流値と前記別の電圧計のその際の出力電圧値とを参照して前記電源装置の出力電力を算出することを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記二次電池の出力電流値を測定する別の電流計と、
前記電源装置の出力電圧値を測定する別の電圧計と、
を更に備え、
前記制御部は、前記充放電手段を制御することにより前記電源からの電力を用いて前記二次電池からの出力を可能とした後、前記別の電流計における出力電流値と所定の電流値とを比較し、その出力電流値が所定の電流値を下回っている状態から所定の電流値を上回った際、前記電流計のその際の出力電流値と前記別の電圧計のその際の出力電圧値とを参照して前記電源装置の出力電力を算出することを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、算出された出力電力の値を前記機器に送信するため、算出された出力電力の値を出力電圧を変化させる周期の値に所定の関数を用いて変換し、その周期の値を用いて前記電源装置の出力電圧を変化させることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記電源は、燃料電池であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−219981(P2008−219981A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50771(P2007−50771)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】