説明

電源装置

【課題】車両の停止時に、キャパシタに蓄えられた電力を効率的にバッテリに回収させつつ、必要に応じて処理時間を短縮する。
【解決手段】電源装置100は、モータ21を備える車両1に搭載され、該モータに、昇圧回路120を介して電気的に接続されたバッテリ110と、該モータに、昇降圧回路140を介して電気的に接続されたキャパシタ130と、車両に係るイグニッションキーがオフされた際に、キャパシタに蓄積された電力を、昇降圧回路及び昇圧回路を介して、バッテリに回収させる場合、キャパシタに係る電圧を降圧するように、昇降圧回路及び昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御する制御手段150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド車両、電気自動車等の車両に搭載される電源装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、モータ・ジェネレータに昇降圧コンバータを介して接続された蓄電装置と、モータ・ジェネレータに充電用昇降圧コンバータを介して接続されると共に、蓄電装置に昇降圧コンバータ及び充電用昇降圧コンバータを介して接続されるキャパシタとを備える装置が提案されている(特許文献1参照)。ここでは特に、蓄電装置が過充電状態にあると判定された場合、モータ・ジェネレータによって発電された電力がキャパシタに蓄えられること、並びに、キャパシタに蓄えられた電力が、蓄電装置の充電及びモータ・ジェネレータの力行のために使用されること、が記載されている。
【0003】
或いは、モータ・ジェネレータ及びキャパシタの各々に昇圧コンバータを介して接続されるバッテリを備える装置が提案されている(特許文献2参照)。ここでは特に、イグニッションキーがオフされた場合、キャパシタの端子間電圧を、昇圧コンバータによりバッテリの直流電圧まで降圧して、キャパシタからバッテリに対して放電動作を行う(即ち、バッテリを充電する)ことが記載されている。
【0004】
或いは、平滑用コンデンサを有するインバータを介してモータに接続されたメインバッテリと、該メインバッテリと並列に接続された大容量コンデンサとを備える装置が提案されている(特許文献3参照)。ここでは特に、キースイッチがオフされた時に、大容量コンデンサ及び平滑用コンデンサに残っている電荷エネルギーを、メインバッテリに回収させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114973号公報
【特許文献2】特開2006−158173号公報
【特許文献3】特開平10−164709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャパシタに蓄えられた電力を蓄電装置に回収させる場合、充電用昇降圧コンバータ及び昇降圧コンバータのうちどちらのコンバータで降圧を行うのかは考慮されていない。すると、例えばスイッチング損失に起因して比較的大きなエネルギー損失が発生する可能性があるという技術的問題点がある。また、特許文献2及び3に記載の技術では、キャパシタに蓄えられた電力をバッテリに回収させる際の処理時間を短縮することが困難である可能性があるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、キャパシタに蓄えられた電力を効率的にバッテリに回収させつつ、必要に応じて処理時間を短縮することが可能な電源装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、上記課題を解決するために、モータを備える車両に搭載され、前記モータに、昇圧回路を介して電気的に接続されたバッテリと、前記モータに、昇降圧回路を介して電気的に接続されたキャパシタと、前記車両に係るイグニッションキーがオフされた際に、前記キャパシタに蓄積された電力を、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路を介して、前記バッテリに回収させる場合、前記キャパシタに係る電圧を降圧するように、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御する制御手段とを備える。
【0009】
本発明の電源装置によれば、当該電源装置は、モータを備える車両に搭載される。尚、車両は、モータのみを備える電気自動車であってもよいし、モータ及びエンジンを備えるハイブリッド車両であってもよい。
【0010】
ここで、「モータ」は、車両の駆動モータであってもよいし、例えばハイブリッド車両におけるエンジン制御のモータであってもよい。或いは、モータ・ジェネレータ(電動発電機)において実現されるモータであってもよい。即ち、モータとして機能し得る限りにおいて、典型的にはハイブリッド車両に用いられるモータ・ジェネレータを意味してもかまわない。
【0011】
当該電源装置は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等であるバッテリと、キャパシタとを備えて構成されている。尚、本発明に係る「キャパシタ」は、バッテリに電力が過剰に入力されることを抑制するためのキャパシタであり、バッテリに電力が過剰に入力されると予測される場合に、電力の一部を一時的に蓄えることが可能である。
【0012】
バッテリは、モータに昇圧回路を介して電気的に接続されている。他方、キャパシタは、モータに昇降圧回路を介して電気的に接続されている。そして、バッテリ及びキャパシタは、昇圧回路及び昇降圧回路を介して、互いに電気的に接続されている。
【0013】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、車両に係るイグニッションキーがオフされた際に、キャパシタに蓄積された電力を、昇降圧回路及び昇圧回路を介して、バッテリに回収させる場合、キャパシタに係る電圧を降圧するように、昇降圧回路及び昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御する。
【0014】
「車両に係るイグニッションキーがオフされた際」とは、車両の運転者によりイグニッションキーがオフされた際を意味し、車両に係る駆動システムの停止が指示された時点から所定の停止処理が終了する時点までの少なくとも一部の期間を意味する。
【0015】
「キャパシタに係る電圧」とは、キャパシタの端子間電圧を意味する。「スイッチング損失」とは、昇圧回路及び昇降圧回路の各々における、例えばトランジスタ等のスイッチング素子がオン又はオフされる際の過渡時に、回路の動作周波数に応じて生じるエネルギー損失を意味する。
【0016】
駆動システムの停止時には、安全上、キャパシタに蓄えられた電力を放電させるか、キャパシタを電気的に切り離す必要がある。本発明では、キャパシタに蓄えられた電力をバッテリに回収させることにより、キャパシタに蓄えられた電力を放電させている。尚、バッテリが満充電状態となった場合には、キャパシタに蓄えられた電力を、例えば放電抵抗やモータ等で使用して熱として消費すればよい。
【0017】
本発明では特に、車両に係るイグニッションキーがオフされた際に、キャパシタに蓄積された電力を、昇降圧回路及び昇圧回路を介して、バッテリに回収させる場合、制御手段により、キャパシタに係る電圧を降圧するように、昇降圧回路及び昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路が制御される。
【0018】
このため、キャパシタに蓄えられた電力をバッテリに回収させる場合のエネルギー損失を抑制することができる。従って、キャパシタに蓄えられた電力を効率的にバッテリに回収させることができる。
【0019】
バッテリが満充電状態となった場合には、例えば昇降圧回路及び昇圧回路の少なくとも一方のスイッチング損失を意図的に大きくすれば、キャパシタに蓄えられた電力が放電されるまでの期間を比較的短くすることができる。
【0020】
本発明の電源装置の一態様では、前記スイッチング損失が小さい回路は、前記昇降圧回路である。
【0021】
この態様によれば、イグニッションキーがオフされた際に、昇降圧回路によりキャパシタに係る電圧が降圧され、キャパシタに蓄積された電力がバッテリに回収される。
【0022】
本発明の電源装置の他の態様では、前記車両は、ユーザが操作可能であり、且つ前記ユーザにより操作されることにより前記車両の燃費が向上するような制御処理が実施される、燃費向上操作手段を更に備え、前記燃費向上操作手段が前記ユーザにより操作された場合であって、前記イグニッションキーがオフされた際に、前記キャパシタに蓄積された電力を前記バッテリに回収させる場合、前記制御手段は、前記キャパシタに係る電圧を降圧するように、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御し、前記燃費向上操作手段が前記ユーザにより操作されない場合であって、前記イグニッションキーがオフされた際に、前記キャパシタに蓄積された電力を前記バッテリに回収させる場合、前記制御手段は、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路の少なくとも一方の回路のスイッチング損失が最大となるように、前記少なくとも一方の回路を制御する。
【0023】
この態様によれば、当該電源装置が搭載される車両には、ユーザ(典型的には、運転者)が操作可能であり、且つ該ユーザにより操作されることにより車両の燃費が向上するような制御処理が実施される、燃費向上操作手段が備えられている。
【0024】
「車両の燃費が向上するような制御処理」とは、投入されたエネルギーに対して得られる効果が可能な限り大きくなるような制御処理を意味する。具体的には、車両がハイブリッド車両である場合、例えば、エンジンの回転数が低めに抑えられるように、変速段の早めのシフトアップが実施される処理である。或いは、例えばエアコンディショナを内気循環にすると共に風量を抑制する処理である。
【0025】
燃費向上操作手段がユーザにより操作された場合、制御手段は、ユーザが燃費効率を重視していると推定し、イグニッションキーがオフされた際に、キャパシタに蓄積された電力をバッテリに回収させる場合、キャパシタに係る電圧を降圧するように、昇降圧回路及び昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御する。
【0026】
他方、燃費向上操作手段がユーザにより操作されない場合、制御手段は、ユーザが停止処理にかかる時間の短縮を望んでいると推定し、イグニッションキーがオフされた際に、キャパシタに蓄積された電力をバッテリに回収させる場合、昇降圧回路及び昇圧回路の少なくとも一方の回路のスイッチング損失が最大となるように、少なくとも一方の回路を制御する。すると、昇降圧回路及び昇圧回路の少なくとも一方の回路で消費される電力が大きくなるので、比較的早期に、キャパシタに蓄えられた電力を放電することができる。
【0027】
この結果、ユーザの意思を反映させることができるので、実用上非常に有利である。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る電源装置が搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図2】車両システムの停止に係る一連の処理の一例を示す概念図である。
【図3】第1実施形態に係るキャパシタ電圧の時間変動の一例を示す概念図である。
【図4】第1実施形態に係るスイッチング素子の動作の時間変動の一例を示す概念図である。
【図5】第1実施形態に係るエネルギー回収処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の変形例に係るエネルギー回収処理を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係るキャパシタ電圧の時間変動の一例を示す概念図である。
【図8】第2実施形態に係るエネルギー回収処理を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態の変形例に係るエネルギー回収処理を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態に係るエネルギー回収処理を示すフローチャートである。
【図11】第4実施形態に係るエネルギー回収処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の電源装置に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0031】
<第1実施形態>
本発明の電源装置に係る第1実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0032】
先ず、本実施形態に係る電源装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電源装置が搭載される車両の構成を示すブロック図である。尚、図1では、本実施形態に直接関係のある部材のみを示し、その他の部材については図示を省略している。
【0033】
図1において、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等である車両1は、モータ21、エコモードスイッチ22、電源装置100及び制御装置150を備えて構成されている。ここで、「エコモードスイッチ22」は、本発明に係る「燃費向上操作手段」の一例であり、該エコモードスイッチ22が、例えば運転者等のユーザにより操作されることによって、車両1の燃費が向上するような制御処理が制御装置150により実施される。
【0034】
電源装置100は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池である電池110、昇圧コンバータ120、キャパシタ130、バッファ回路140、インバータ160、平滑コンデンサ170、キャパシタ130の電圧を検出する電圧センサ31、平滑コンデンサ170の電圧を検出する電圧センサ32、並びに、昇圧コンバータ130、バッファ回路140及びインバータ160を夫々制御する制御装置150を備えて構成されている。
【0035】
インバータ160は、モータ21に電気的に接続されている。該インバータ160と並列に、電圧の変動を抑制するための平滑コンデンサが電気的に接続されている。電池110は、昇圧コンバータ120を介して、インバータ160に電気的に接続されている。キャパシタ130は、バッファ回路140を介して、インバータ160に電気的に接続されている。
【0036】
電池110の陽極と昇圧コンバータ120とは、スイッチSMR1及び充電抵抗Rを有する回路、並びにスイッチSMR2を有する回路によって、電気的に接続されている。他方、電池110の陰極と昇圧コンバータ120とは、スイッチSMR3を有する回路によって電気的に接続されている。
【0037】
昇圧コンバータ120は、スイッチ素子Q1及びQ2、リアクトル121並びにフィルタコンデンサ122を備えて構成されている。制御装置150は、スイッチ素子Q1及びQ2を夫々高速でオン/オフすることによって、リアクトル121においてエネルギーの蓄積/放出を繰り返させる。その結果、電池110の電圧よりも高い電圧が平滑コンデンサ170に生じる。尚、スイッチ素子Q1及びQ2各々のオン/オフ比が変更されることによって、昇圧後の電圧が変更される。
【0038】
バッファ回路140は、スイッチ素子Q3、Q4、Q5及びQ6、並びにリアクトル141を備えて構成されている。制御装置150は、スイッチ素子Q3、Q4、Q5及びQ6を夫々高速でオン/オフすることによって、リアクトル141においてエネルギーの蓄積/放出が繰り返させる。その結果、キャパシタ130の電圧が、平滑コンデンサ170に対して昇圧又は降圧される。
【0039】
本実施形態に係る「電池110」、「昇圧コンバータ120」、「バッファ回路140」及び「制御装置150」は、夫々、本発明に係る「バッテリ」、「昇圧回路」、「昇降圧回路」及び「制御手段」の一例である。
【0040】
上記のように構成された車両1では、運転者によりイグニッションキー(図示せず)がオフされた際に、車両システムの停止に係る一連の処理が実施される。具体的には、図2に示すように、時刻t1にイグニッションキーがオフされたとすると、時刻t2において、電池110と昇圧コンバータ120との間に存在するスイッチSMR1、SMR2及びSMR3が遮断される。そして、時刻t3において、制御装置150(Electronic Control Unit:ECU)の電源がオフされ、車両システムが停止される。この際、キャパシタ130に蓄えられた電力が放電される。図2は、車両システムの停止に係る一連の処理の一例を示す概念図である。
【0041】
本実施形態では特に、イグニッションキーがオフされた際に、キャパシタ130に蓄えられた電力は、バッファ回路140及び昇圧コンバータ120を介して、電池110に回収される。
【0042】
この際、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcを降圧するように、昇圧コンバータ120及びバッファ回路140のうちスイッチング損失が小さい回路を制御する。つまり、制御回路150は、昇圧コンバータ120及びバッファ回路140のうちスイッチング損失が小さい回路に降圧動作をさせる。
【0043】
ここで、「昇圧コンバータ120及びバッファ回路140のうちスイッチング損失が小さい回路」とは、キャパシタ130の上限電圧が平滑コンデンサ170の上限電圧よりも小さい場合は、バッファ回路140であり、キャパシタ130の上限電圧が平滑コンデンサの上限電圧よりも大きい場合は、昇圧コンバータである。これは、昇圧コンバータ120及びバッファ回路140各々を構成するスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6の耐電圧に起因している。
【0044】
本実施形態では、キャパシタ130の上限電圧が平滑コンデンサ170の上限電圧よりも小さい場合について、即ち、バッファ回路140により降圧する場合について、図3乃至図5を参照して説明する。図3は、本実施形態に係るキャパシタ電圧の時間変動の一例を示す概念図である。図4は、本実施形態に係るスイッチング素子の動作の時間変動の一例を示す概念図である。尚、図3は、図4における時刻t14までの時間変動を示している。
【0045】
ここでは、キャパシタ130の端子間電圧Vcが250V、電池110の直流電圧Vbが200Vである時に、キャパシタ130に蓄えられた電力が電池110に回収される場合を例に挙げる。尚、車両1の走行時には、平滑コンデンサの170の端子間電圧VHは、650Vであるとする。
【0046】
図5のフローチャートにおいて、運転者によりイグニッションキーがオフされた場合(図3における“IGOFF”及び図4における時刻t11参照)、制御装置150は、平滑コンデンサ170の端子間電圧VHを降圧するように、昇圧コンバータ120のスイッチング素子Q1及びQ2を夫々制御する(図4における時刻t12乃至t13参照)。この過程で、平滑コンデンサ170に蓄えられた電力が電池110に回収される(ステップS101)。尚、図4において、時刻t13までは、制御装置150により、スイッチング素子Q1及びQ2は、夫々高速でオン/オフされている。
【0047】
次に、制御装置150は、電圧センサ32により検出された平滑コンデンサ170の端子間電圧VHが、電池110の直流電圧Vb(ここでは、200V)と等しいか否かを判定する(ステップS102)。平滑コンデンサ170の端子間電圧VHが、電池110の直流電圧Vbと等しくないと判定された場合(ステップS102:No)、制御装置150は、ステップS101の処理を実施する。
【0048】
平滑コンデンサ170の端子間電圧VHが、電池110の直流電圧Vbと等しいと判定された場合(ステップS102:Yes)、制御装置150は、昇圧コンバータ120のスイッチング素子Q1をオンに、スイッチング素子Q2をオフにして、昇圧コンバータ120に係るスイッチング制御を停止する(図4における時刻t13参照)(ステップS103)。
【0049】
これにより、平滑コンデンサ170の端子間電圧VHが、電池110の直流電圧Vbに固定される(図3(b)及び図4の最上段参照)。加えて、昇圧コンバータ120におけるスイッチング損失が極めて少なくなる(図3(b)下から2段目、及び図4最下段参照)。尚、この場合、昇圧コンバータ120におけるスイッチング損失は、スイッチング素子Q1がオンであることに起因するスイッチング損失のみである。
【0050】
次に、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcを昇圧又は降圧するように、バッファ回路140のスイッチング素子Q3、Q4、Q5及びQ6を夫々制御する(図示せず)。この過程で、キャパシタ130に蓄えられた電力が電池110に回収される(ステップS104)。
【0051】
次に、制御装置150は、電圧センサ31により検出されたキャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しいか否かを判定する(ステップS105)。ここで、「所定値」は、バッファ回路140によりキャパシタ130の端子間電圧Vcを、電池110の直流電圧Vbまで昇圧させることが困難になる値として設定されている。
【0052】
キャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しくないと判定された場合(ステップS105:No)、制御装置150は、ステップS104の処理を実施する。他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しいと判定された場合(ステップS105:Yes)、制御装置150は、スイッチSMR1、SMR2及びSMR3、並びに昇圧コンバータ120のスイッチング素子Q1を全てオフにし、エネルギー回収処理を終了する(図4における時刻t14参照)。
【0053】
尚、制御装置150は、スイッチSMR1、SMR2及びSMR3を全てオフした後、キャパシタ130及び平滑コンデンサ170各々の残留電力を放電させるために、例えばモータ21やバッファ回路140等を制御する(図4における時刻t14乃至t15参照)。
【0054】
上述の如く、本実施形態では、イグニッションキーがオフされた際に、キャパシタ130に蓄えられた電力をバッテリ110に回収させる場合、制御手段により、キャパシタ130の端子間電圧Vcを降圧するように、昇圧コンバータ120及びバッファ回路140のうちスイッチング損失が小さい回路が制御される。このため、キャパシタ130に蓄えられた電力を、効率良くバッテリ110に回収させることができる。
【0055】
<変形例>
次に、第1実施形態に係る電源装置1の変形例について、図6のフローチャートを参照して説明する。本変形例では、エネルギー回収処理中に電池110が満充電となる場合の処理について説明する。
【0056】
図6において、上述したステップS104の処理の後、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しいか否か、又は電池110が満充電状態であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0057】
キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しいと判定された場合、及び電池110が満充電状態であると判定された場合(ステップS201:Yes)、制御装置150は、スイッチSMR1、SMR2及びSMR3、並びに昇圧コンバータ120のスイッチング素子Q1を全てオフにし、エネルギー回収処理を終了する。
【0058】
他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しくなく、且つ電池110が満充電状態でないと判定された場合(ステップS201:No)、制御装置150は、ステップS104の処理を実施する。
【0059】
<第2実施形態>
本発明の電源装置に係る第2実施形態を、図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態では、制御装置が実施する処理が異なっている以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図7及び図8を参照して説明する。
【0060】
本実施形態では特に、イグニッションキーがオフされた際に、キャパシタ130に蓄えられた電力の一部が電池110に回収されると共に、キャパシタ130に蓄えられた電力の他の部分がモータ21で消費される。このように構成すれば、例えば外気温が氷点下等である低温時において、電池110の入出力電力が制限されているような場合に、キャパシタ130に蓄えられた電力を比較的速やかに放電することができる。
【0061】
以下、本実施形態において、運転者によりイグニッションキーがオフされた際に、制御装置150が実施する処理について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、図3と同趣旨の、本実施形態に係るキャパシタ電圧の時間変動の一例を示す概念図である。
【0062】
図8のフローチャートにおいて、運転者によりイグニッションキーがオフされた場合(図7における“IGOFF”参照)、制御装置150は、平滑コンデンサ170の端子間電圧VHを可能な限り昇圧するように、昇圧コンバータ120、バッファ回路140及びインバータ160を夫々制御する(ステップS301)。
【0063】
ここで、「平滑コンデンサ170の端子間電圧VHを可能な限り昇圧」とは、典型的には、車両1において予め定められている最大電圧まで昇圧させることを意味するが、例えば電池110やキャパシタ130等の状態に起因して、該最大電圧まで昇圧させることが困難な場合には、例えば電池110やキャパシタ130等の状態に応じた条件下で昇圧可能な電圧の最大値を意味する。
【0064】
続いて、制御装置150は、例えばキャパシタ130に蓄えられた電力の一部が、電池110が受け入れ可能な最大電力レートで、電池110に回収されるように、昇圧コンバータ120を制御すると共に、モータ21におけるエネルギー消費が最大となるようにインバータ160を制御する(ステップS302)。
【0065】
この際、平滑コンデンサ170の端子間電圧VHが可能な限り昇圧されているので、図7の下から3段目に示すように、昇圧コンバータ120におけるスイッチング損失は最大となっている。また、図7の最下段に示すように、インバータ160におけるスイッチング損失も最大となっている。更に、図7の下から2段目に示すように、バッファ回路140におけるスイッチング損失も最大となっている。
【0066】
このように、昇圧インバータ120、バッファ回路140及びインバータ160各々におけるスイッチング損失が最大となっているので、キャパシタ130に蓄えられた電力の放電に係る処理を比較的速やかに完了することができる。従って、イグニッションキーがオフされてから、車両1のシステムの停止に係る一連の処理が終了するまでの期間を短縮することができる。
【0067】
次に、制御装置150は、電圧センサ31により検出されたキャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しいか否かを判定する(ステップS303)。キャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しくないと判定された場合(ステップS303:No)、制御装置150は、ステップS301の処理を実施する。
【0068】
他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しいと判定された場合(ステップS303:Yes)、制御装置150は、スイッチSMR1、SMR2及びSMR3を全てオフにする(ステップS304)。
【0069】
次に、制御装置150は、キャパシタ130及び平滑コンデンサ170各々の残留電力が放電されるように、バッファ回路140等を制御する(ステップS305)。続いて、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcがゼロであり、且つ平滑コンデンサ170の端子間電圧VHがゼロであるか否か(即ち、キャパシタ130及び平滑コンデンサ170各々の残留電力の放電が完了したか否か)を判定する(ステップS306)。
【0070】
キャパシタ130の端子間電圧Vcがゼロであり、且つ平滑コンデンサ170の端子間電圧VHがゼロであると判定された場合(ステップS306:Yes)、制御装置150は処理を終了する。他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcがゼロでない、又は平滑コンデンサ170の端子間電圧VHがゼロでないと判定された場合(ステップS306:No)、制御装置150は、ステップS305の処理を実施する。
【0071】
<変形例>
次に、第2実施形態に係る電源装置1の変形例について、図9のフローチャートを参照して説明する。本変形例では、エネルギー回収処理中に電池110が満充電となる場合の処理について説明する。
【0072】
図9において、上述したステップS302の処理の後、制御装置150は、電池110が満充電状態であるか否かを判定する(ステップS401)。電池110が満充電状態であると判定された場合(ステップS401:Yes)、制御装置150は、スイッチSMR1、SMR2及びSMR3を全てオフにする(ステップS402)。
【0073】
続いて、制御装置150は、平滑コンデンサ170の端子間電圧VHを可能な限り昇圧するように、インバータ160等を制御して(ステップS403)、キャパシタ130に蓄えられた電力をモータ21で消費させる(ステップS404)。
【0074】
次に、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しいか否かを判定する(ステップS405)。キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しくないと判定された場合(ステップS405:No)、制御装置150は、ステップS403の処理を実施する。
【0075】
他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcが、所定値と等しいと判定された場合(ステップS405:Yes)、制御装置150は、キャパシタ130及び平滑コンデンサ170各々の残留電力が放電されるように、バッファ回路140等を制御する(ステップS408)。
【0076】
続いて、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcがゼロであり、且つ平滑コンデンサ170の端子間電圧VHがゼロであるか否かを判定する(ステップS409)。キャパシタ130の端子間電圧Vcがゼロであり、且つ平滑コンデンサ170の端子間電圧VHがゼロであると判定された場合(ステップS409:Yes)、制御装置150は処理を終了する。他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcがゼロでない、又は平滑コンデンサ170の端子間電圧VHがゼロでないと判定された場合(ステップS409:No)、制御装置150は、ステップS408の処理を実施する。
【0077】
ステップS401の処理において、電池110が満充電状態でないと判定された場合(ステップS401:No)、制御装置150は、キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しいか否かを判定する(ステップS406)。
【0078】
キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しくないと判定された場合(ステップS406:No)、制御装置150は、ステップS301の処理を実施する。他方、キャパシタ130の端子間電圧Vcが所定値と等しいと判定された場合(ステップS406:Yes)、制御装置150は、スイッチSMR1、SMR2及びSMR3を全てオフにする(ステップS407)。
【0079】
<第3実施形態>
本発明の電源装置に係る第3実施形態を、図10のフローチャートを参照して説明する。第3実施形態では、制御装置が実施する処理が異なっている以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第3実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図10を参照して説明する。
【0080】
本実施形態では特に、運転者により、シフト操作装置(図示せず)におけるシフトポジションが、P(パーキング)レンジに切り替えられた際に(即ち、イグニッションキーがオフされるより前に)、制御装置150により、キャパシタ130に蓄えられた電力の少なくとも一部が電池110に回収されるように、昇圧コンバータ120等が制御される。これは、シフトポジションがPレンジに切り替えられた場合、運転者は、次にイグニッションキーをオフする可能性が高いことに起因している。
【0081】
図10において、制御装置150は、シフトポジションがPレンジに切り替えられたか否かを判定する(ステップS501)。シフトポジションがPレンジに切り替えられたと判定された場合(ステップS501:Yes)、制御装置150は、図5又は図6のフローチャートに示された処理を実施して、キャパシタ130に蓄えられた電力の少なくとも一部を電池110に回収させる(ステップS502)。
【0082】
他方、シフトポジションがPレンジに切り替えられていないと判定された場合(ステップS501:No)、制御装置150は、車両1の走行状態に応じて、昇圧コンバータ120等を制御する(ステップS503)。
【0083】
このように、イグニッションキーがオフされる前から、キャパシタ130に蓄えられた電力を電池110に回収させることにより、イグニッションキーがオフされた後のキャパシタ130に蓄えられた電力の放電に係る処理を比較的速やかに完了することができると共に、キャパシタ130に蓄えられた電力の少なくとも一部を、効率良くバッテリ110に回収させることができる。
【0084】
<第4実施形態>
本発明の電源装置に係る第4実施形態を、図11のフローチャートを参照して説明する。第4実施形態では、エコモードスイッチの状態に応じて、制御装置が実施する処理が異なるが、車両の構成は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第4実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図11を参照して説明する。
【0085】
本実施形態では特に、運転者により、エコモードスイッチ22がオン状態である場合には、エネルギー効率が向上するような処理が実施され、エコモードスイッチ22がオフ状態である場合には、キャパシタ130に蓄えられた電力の放電に係る処理が比較的速やかに完了するような処理が実施される。
【0086】
図11において、制御装置150は、エコモードスイッチ22がオン状態であるか否か(即ち、運転者にエネルギー効率向上の意思があるか否か)を判定する(ステップS601)。
【0087】
エコモードスイッチ22がオン状態であると判定された場合(ステップS601:Yse)、制御装置150は、図5又は図6のフローチャートに示された処理を実施して、キャパシタ130に蓄えられた電力の少なくとも一部を電池110に回収させる(ステップS602)。
【0088】
他方、エコモードスイッチ22がオフ状態であると判定された場合(ステップS601:No)、制御装置150は、図8又は図9のフローチャートに示された処理を実施して、比較的速やかに、キャパシタ130に蓄えられた電力を放電させる(ステップS603)。
【0089】
尚、エコモードスイッチ22がオン状態の場合は、イグニッションキーがオフされてから、車両1のシステムの停止に係る一連の処理が終了するまでの期間が、エコモードスイッチ22がオフ状態の場合よりも長くなるので、その旨が、例えば画像や音声等により運転者に報知されることが望ましい。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電源装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…車両、21…モータ、22…エコモードスイッチ、100…電源装置、110…電池、120…昇圧コンバータ、130…キャパシタ、140…バッファ回路、150…制御装置、160…インバータ、170…平滑コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを備える車両に搭載され、
前記モータに、昇圧回路を介して電気的に接続されたバッテリと、
前記モータに、昇降圧回路を介して電気的に接続されたキャパシタと、
前記車両に係るイグニッションキーがオフされた際に、前記キャパシタに蓄積された電力を、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路を介して、前記バッテリに回収させる場合、前記キャパシタに係る電圧を降圧するように、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記スイッチング損失が小さい回路は、前記昇降圧回路であることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記車両は、ユーザが操作可能であり、且つ前記ユーザにより操作されることにより前記車両の燃費が向上するような制御処理が実施される、燃費向上操作手段を更に備え、
前記燃費向上操作手段が前記ユーザにより操作された場合であって、前記イグニッションキーがオフされた際に、前記キャパシタに蓄積された電力を前記バッテリに回収させる場合、前記制御手段は、前記キャパシタに係る電圧を降圧するように、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路のうちスイッチング損失が小さい回路を制御し、
前記燃費向上操作手段が前記ユーザにより操作されない場合であって、前記イグニッションキーがオフされた際に、前記キャパシタに蓄積された電力を前記バッテリに回収させる場合、前記制御手段は、前記昇降圧回路及び前記昇圧回路の少なくとも一方の回路のスイッチング損失が最大となるように、前記少なくとも一方の回路を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−95428(P2012−95428A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239924(P2010−239924)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】